純愛映画の逆を行く『ナラタージュ』 観客に「傷ついてほしい」行定勲監督の思い
必然というものが、あるんだと思います。
●「松本潤に傷つけてほしい」という望みも
○葉山はダメなやつ
――松本さんの壮絶な美しさも印象的でした。
葉山は、ダメなやつですけどね(笑)。でも、男ってこうだから、僕は1番葉山に感情移入するんです。昨今の世の中では不倫とか、言い訳が効かないような恋愛感情に喜んで飛びついているけど、人って、みんな言い訳のできないものを持っているわけで。恋愛も楽しい部分だけ取るといいんですが、苦しい部分も積み重なっているのが『ナラタージュ』なんです。人を狂わせてしまう要因にもなるし、そんなこと望んでもないのに、好きだった相手に息苦しい思いをさせてしまうとか。
葉山が「ごめん」と謝りはするけど、何も変わろうとしないところも、すごく現実的ですよね。
それでも忘れられない人だと言えるのが、割り切れなくて、生々しくて、純愛なんだな。
――かなり閉塞感にあふれていますよね。2人で歩くシーンも曇天で、打ち上げられたゴミが散乱している海岸で。現場についたら真っ先にスタッフが「ゴミ回収するの大変だなー」と言っていたけど、「これはまんまでいい。ゴミが気に入ってるんだよ」と言って、そのまま撮影しました。