純愛映画の逆を行く『ナラタージュ』 観客に「傷ついてほしい」行定勲監督の思い
もしくは、非常に仲間内で「俺たちのセンスはこれだ!」と言えるような作品ですよね。
――ちょっと皮肉が(笑)。ポップな作品をよく観るなかで、久しぶりにずっしりとした恋愛映画を観たなと思いました。
昔、僕が少女漫画原作の企画を持っていった時は、見向きもされてなかったんですよ! なのに今、あのころぜひやりたかった漫画家さんの作品もガンガン映画化されていて!(笑) 不思議なもので、観客が実は映画を生み出しているんですよね。だけど観客も麻痺していくから、何を観たらいいのかわからなくなっていく。だから僕らはあえて、昔はあったけど今にないものを出したいんです。ただ、商業的に成功するかどうか見極められないから、実現するまでに10年もかかってしまいました。
今回実現できたのは、奇跡的にも松本潤くんが「やる」と言ってくれたことが大きいです。
それから、まだ10年前に存在していなかった有村架純さんが今輝いていて、彼女もやりたいと言ってくれたこと。そして坂口健太郎くんがいたこと。今作られるべきだから、10年間作れなかったんでしょうね。これまで企画にあがっていたキャストをイメージしても、圧倒的に今の形が良いと思います。