白石和彌監督が映画界に問う、起用する側の責任とは? 中嶋しゅうさんの遺作から伝わる役者愛
さんという高校の大先輩がいらっしゃるのですが、小玉さんが『凶悪』を観て僕の存在に気づいてくださり、食事に誘ってもらって、それ以降かわいがっていただいてたんです。小玉さんが出版社問わず映画化したい本を数冊持ってきてくださって、その中の一冊が『彼女がその名を知らない鳥たち』でした。
――『凶悪』がなければ、今回の作品も生まれなかったと。
そうですね。『凶悪』問わず、すべての作品はそうやっていろいろなことに繋がっているんだと思います。
――「無償の愛を描きたい」という思いが一致した作品だったと聞きました。
映画化しづらい原作だと思います。過去の話が重要な要素を占めていますし、ラストの描き方もとても難しい。
原作を読み終わって、1週間ぐらいそのあたりが引っかかっていました。でも、繰り返し考えているうちに、「好きかも」となってきて(笑)。そう思ってしまうと「もう、やるしかない」。
――物語の起承転結も含めて、そうやって冷静に判断されてから決断されるんですね。
もちろん。『凶悪』や『日本で一番悪い奴ら』もそうでしたが、「この原作と心中できるか」という覚悟がないと。もう少し手軽に撮っちゃえばいいのかもしれないですけど、「そうはいかん」