白石和彌監督が映画界に問う、起用する側の責任とは? 中嶋しゅうさんの遺作から伝わる役者愛
起用する側は、役者の将来性も踏まえてちゃんと考えてあげた方がいいと思います。
●少女漫画映画の「恋」頼りを憂う
――表現は正しくないのかもしれませんが、心理テストを受けているような映画でした。つまり、登場人物に対して自分がどのような印象を抱いているのか。そこがとても肝となるストーリー展開でした。
そうですか(笑)。原作の流れには基本的に沿っていますが、陣治についても阿部さんから「どうやって演じたらいいですか?」と聞かれると、「さっき人を殺してきたような顔で」とお願いしていました。
○連日の不倫報道と世間の「愛」
――最近の映画は恋を描く作品が多くて、愛を描く作品が少ない。そんなこともプロダクションノートに書かれていました。
今回の映画では、その「愛」を描こうとしている。
少女漫画を原作にした映画がたくさん作られてますが、そのほとんどが恋の映画。また、そういう映画でしかヒット作を生み出せない日本の現状を憂いているというか、愛は愛でも気軽に口に出せる愛ではなくて、口に出すこと自体が軽く感じてしまうようなものをせめて作ろうよと。
――そういう点での「無償の愛」は、とても覚悟のいるテーマですね。