天気予報を見る習慣のないわたしには、そんな先のことはわからないんだもの。
玄関横にしまわれたビニール傘は、優に15本を超えてしまっている。スエードのヒールは、雨で何度もだめにしてしまったけれど、やっぱり「これ以外は嫌だ」と毎朝身につけるものを選んでしまうのだった。
小さい頃こそ、母も「今日はだめ」「それは夏のスカート!」と必死に止めてくれていたし、わたしが季節感のないトンチンカンなものを着たがらないよう、似たようなサマーニットと冬物のニットを揃いで編んでくれたりもした。
だけどいつからか、防寒のカーディガンなんかをカバンに押し込みながら、「寒くなったら着るのよ」と自由にさせるようになる。
もはや、娘の洋服への強いこだわりにほとほと愛想を尽かし、疲れていたのだろう。なんだか、ずいぶん可哀想なことをしてしまったように思う。
■そのコートとの出会い
「洋服へのこだわり」なんて言うけれど、人から見たとき、わたしが決しておしゃれではないだろうことは、自分でもよくわかっている。
特にブランドへのこだわりもなく、ただ「いいなあ」と思ったものをバラバラと買い揃えている。1900円のワンピースを着て、頭には6万円の帽子を乗せていることだってよくある話で、そのどちらも同じくらい、わたしにとってはお気に入りなのだ。