■“自由”を奪われた産後、支えとなったものは?
――忙しくお仕事をされているなかでの妊娠。不安はありませんでしたか?
それは、なかったですね。
――実際にお子さんを出産されて、“自由が奪われることがつらかった”という西さんのインタビューを拝読しました。
本当につらかったのは産後1ヶ月。「外に出られへん」と。それ以降は、子どもを連れてどこにでも行けたので、気持ちは変わりました。
――つらかった時期、何が西さんを支えていたのでしょう?
友だちですね。ほぼ毎日、友だちに来てもらって、話をしたり、聞いたりしていました。
――気持ちを吐き出せる場所があることは、大事ですよね。
あとは、聞くことも大事。自分に自由がないので、「今どんな仕事してるの?」とか「どんなレストランに行ったの?」といった友だちの外での生活を聞くことが、とても慰めになりました。
――自分で体験したわけではないけれど、話を聞いて心を豊かにする。少し読書にも近い気がしますね。
そうですね。赤ちゃんとずっと2人きりでいるのは行き詰まるので、友だちの話を聞きながら、その社会性も一緒にもらう感じでした。
いまは保育園にも助けてもらい、ベビーシッターさんにもたまに来てもらっています。
親も友だちもいる、夫ももちろん育児してくれる。自分ひとりだけで子育てをしているわけではないので、すごく安心感がありますし、楽しいです。
■女性にどれだけ求めているの!というプレッシャーが怖い
――現在は、どのようなペースでお仕事をされているのですか?
子どもを保育園に預けている間とか、できるときに執筆するという感じで、あまり決めないようにしているんです。
――あえて決めていないんですか?
決めちゃうと、できなかったときに悔しいじゃないですか(笑)。だから、「できるとき」に書くことにしています。
――なるほど(笑)。お子さんの存在が、執筆のモチベーションにつながるようなことはありますか?
時間が物理的にむちゃくちゃ貴重になったので、集中力は上がりました(笑)。昔はダラダラできたけど、「この時間に書かないと、夜は絶対書かれへん!」と。
――時間は本当に貴重ですよね。ちなみに、母になって気づいた自身の一面はありますか?
「自由を奪われるのが一番イヤなんだ」、と気づいたのは大きかったですね。「絶対に罪は犯さんとこう」と思いましたもん(笑)。
子どものためにとかではなくて、自分のために「刑務所入るようなことはせんとこう」と。「自分で稼げるようにしよう」とか、「自分ひとりで動けるように体を大切にしよう」とか、“自由でいられるように”という気持ちは強くなりました。
――ウーマンエキサイトの読者には、仕事に育児にがんばっているママがたくさんいます。母になっても、女性として輝き続ける秘訣(ひけつ)を教えてください。
私、そういう考えが好きじゃなくて(笑)。
「母である上に女性として輝く」って、なんか怖いというか、プレッシャーになるんですよね。「どれだけ求められんねん!」と(笑)。
自然でいいと思います。お母さんとしてがんばっているならそれで充分だし、ボロボロでもいいと思う。
――そのお言葉、すごく励まされますし、読者にも響く気がします(笑)。
よかった(笑)。お母さんは、家事や仕事、育児をやっていらっしゃるだけで、ほんっっっまにすごいと思います。ドえらい賞を何個ももらっているのと同じなので、ご自身を褒めてあげてほしい。
「自分すごい!」って、毎日100回くらい言ってもいいと思いますよ!
映画『まく子』
©2019「まく子」製作委員会/西加奈子(福音館書店)
小さな温泉街に住む小学生5年生のぼく(サトシ)は、子どもと大人のはざまにいる。ぼくは、猛スピードで「大人」になっていく女子たちがおそろしかった。女の人とみれば、とたんにだらしなく笑う、父ちゃんみたいには絶対になりたくなかった。だから、否応なしに変わっていく自分の身体に抗おうとしていた。そんなとき、コズエが突然やってきた。コズエはとても変で、とてもきれいで、なんだって「撒く」ことが大好きで、そして彼女には秘密があった…。
原作:「まく子」西加奈子(福音館書店 刊)
監督・脚本:鶴岡慧子
出演:山崎光、新音、須藤理彩/草なぎ剛
主題歌:高橋 優「若気の至り」(ワーナーミュージックジャパン/unBORDE)
2019年3月15日(金) テアトル新宿ほか全国ロードショー
公式サイト:
http://makuko-movie.jp/
※山崎光さんの「崎」は立つ崎(たつさき)が正式表記となります。
※草なぎ剛さんの「なぎ」は弓へんに前の旧字体、その下に刀が正式表記となります。
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