イラスト:ありま
「『老後2000万円問題』で不安や疑問を覚えた今こそ、年金について学び始めるチャンスです」と言うのは、ファイナンシャルプランナーの横山光昭さん。
学び始めると言われても、何をどうやって考え始めればいいの? 最初の1歩がわかりません!! そんな人のために、「2000万円より必要な人、少なくて済む人」の具体例を教えてもらいました。
この記事は、
第1回「『老後が不安』で終わらせていいの?」
第2回「じつは『老後に2000万円必要』とは報告されてなかった!?」の続きです。
■そもそも「2000万円が不足」って、何?
前回の記事で、
「2000万円問題は、ある一組の夫婦の資産の(例)にすぎない」と、書きました。(例)となっている家計は、下記です。ポイントを3つあげておきましょう。
●「2000万円問題」のモデルとなった家計のポイント3つ
1)夫が65歳以上で妻も60歳以上。二人とも無職
2)年金収入が約21万円なのに対し、支出は約26万円
3)月額5万円の赤字が出る
筆者作成
家計の内訳は、次のとおりです。
ご自身の家計と比べてみて、いかがですか? たとえば、この家計の住居費は、月額13,656円です。この金額ですと「家賃」というよりは、「持ち家でローンは完済。固定資産税などを月額割にした数字」なのではないでしょうか?
出典:金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書 「高齢社会における資産形成・管理」P10/(出所)総務省「家計調査」(2017年)
■「どんな生活をしたいか?」で必要な金額は変わる
こんなふうに、モデルとなった家計と、「わが家の家計」を照らし合わせてみる作業を、まず始めてみると良いと思います。その上で、「では、自分自身の老後をどんなふうにしたいか?」を、考え始めてみましょう。
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「まずは自分の老後のビジョンを決めることから始めましょう。そうでないと老後の必要額はわかりません」(横山さん)
そう言われても、多くの人は「心配のない老後にしたい」というくらいしか、イメージが沸かないかもしれませんね…。
そこで、23,000件以上の家計をみてきた、家計のプロ横山さんの出番です! 今回は、「2000万円」を基準にして、2000万円以上老後資金が必要な人、2000万円までなくても大丈夫な人の、「ありがちな収支パターン」を教えていただきました。
●ありがちな収支パターン4例
ここで、今回の「試算の条件」のポイント整理しておきましょう
●今回試算条件
1)「将来の収支予想の収入」は年金のみの収入で、年金のみで生活した場合
2)年金受給額は、今後の加入状況や収入の状況を予測した概算
3)予備費用は、リフォーム、介護、病気、旅行費用に充てるための金額
筆者作成
▼パターン1)Aさん 2000万円では全然たりない人
【診断】 高支出メタボ家計
夫43歳(会社員)、妻41歳(専業主婦)、子・高1、子・中2、子・中1
出典:『横山先生! 老後までに2000万円ってほんとうに貯められますか? 人生100年時代でも豊かに暮らす、資産と年金への向き合い方』
Aさんは、こんな人 → ちょっといいもの症候群
Aさんは、現役時代の年収が1100万円と非常に高いので、いわば「ちょっといいもの症候群」です。
消費では、「ちょっといいもの」を選びがちなので、生活コストがかかります。また、資産形成は、「賢くできるはず!」という気持ちで堅実路線とは言い難いチョイスをしていますが、思うような結果は得られていません。
▼パターン2)Bさん 2000万円までなくても足りる人
【診断】 無駄のない節約家計
夫48歳(会社員)、妻48歳(パート」)、子・高2、子・高1
出典:『横山先生! 老後までに2000万円ってほんとうに貯められますか? 人生100年時代でも豊かに暮らす、資産と年金への向き合い方』
Bさんは、こんな人 → 堅実な生活者
Bさんの現役時代の年収は500万円で、「堅実な生活者」です。
そもそも、現役時代に使えるお金が特別高いわけではないので、消費は、「地に足がついた感じ」です。普通の収入なので、生活もごく質素です。もっとも「質素」と「貧乏くさい感じ」は、まったく違います。家計の収支について、きちんと考えています。