「そうなの?」
「俺なりに反省してたの。ガキみたいなヤキモチ妬いて、拗ねて、挙句の果てにしおちゃんを置き去りにして」
そう言えば先に帰られたんだよね。お互いに頭を冷やすべきだと思ってお店でゆっくりしてたけど、外に出たらもう大和の姿はなかった。あれはなかなかショックだったと言うと、大和が項垂れる。
「俺、しおちゃんの理想に近づけるように頑張る」
「いいよ、別にそんなの」
「やる気になってるんだから、水差さないでよ」
「そのままの大和が好きなのに、無理して変わることないんだって」
「しおちゃん……」
理想がどうとか、将来がどうとか、こだわっていた自分は一体何だったんだろう?思い通りになんてならなくていい。背伸びをしなきゃいけない恋なんていらない。
「大和が傍で笑っててくれたら、それでいいの」
好きって気持ちさえあれば、理想じゃなくても始められる。大和が私に教えてくれたんだよ。
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理想じゃない恋のはじめ方
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「大和、そろそろ起きて」
「んー」
眠そうな声で返事をした大和は、瞼を開けることなくまたすぐ寝息を立てた。