【連載小説】この恋は幸せになれない?好きになってしまったのは、奥さんのいる人。
第一、綾香との離婚が成立したからといって、すぐに私と結婚できるわけじゃないでしょう。
「もちろん、すぐにとは言わない。でも、千紗と結婚したい気持ちがあることはちゃんと伝えたいと思って」
「悠真さん……」
「綾香と別れたいから、とか、現実逃避とかじゃなくて、純粋に千紗を好きになったんだ。それだけは、分かってね」
「うん、ありがとう」
福岡旅行は、とても楽しかった。一緒にいることで悠真さんのことが好きだという気持ちが増した。けれど、それと同時に、「こんなことをして本当に良いのかな?」と後ろめたさも募る。そんな旅でもあった。
◆
予想外の知らせ
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「結婚を仄めかす男なんて、ろくなやつじゃない!」
グサッと胸に何かが刺さった。
「それを本気にとる女もバカ!」
痛い痛い、傷口をぐりぐりされてるみたいに痛い。思わず胸を押さえた私を見て、赤城さんが不思議そうに首を傾げた。
「どうしたの? 具合悪いの?」
「いえ、特には」
自分のことを言われているようで胸が痛い、とは言えない。赤城さんが「ロクなやつじゃない」と怒っていたのは、妹さんの旦那のことだ。