【連載小説】この恋は幸せになれない?好きになってしまったのは、奥さんのいる人。
こんな格式の高そうな旅館に泊まるのは初めてだなぁとソワソワしていると、仲居さんと目が合った。
「お客様はどちらからお越しですか?」
「東京からです」
「まぁ、東京ですか。私の娘も東京にいるんですよ」
「そうですか」
どうやらこの仲居さんはお喋り好きのようで、他愛のない世間話が部屋に入るまで続いた。
「夕食は19時にお部屋へお持ちしますね。奥様、好き嫌いやアレルギー等はございますか?」
「えっ!あ、大丈夫です」
「旦那様は、いかがでしょう?」
「僕も大丈夫です」
『奥様』と呼ばれて、びっくりしちゃった。仲居さんが部屋から出て行った後、そのことを悠真さんに言うと、彼は私を抱き寄せた。
「僕は離婚が成立したら、千紗と一緒になりたいと思ってるよ」
「悠真さん、私は……」
「千紗が結婚に対してマイナスな気持ちしかないことは分かってる。恋愛に対してもそう。
だけど、1歩踏み出せたよね」
それは、確かにそう。誰とも恋愛しないって決めていたけど、いつの間にか悠真さんを好きになっていた。これがいわゆる本気の恋なんだろうと自覚している。
でも、だからってそれと結婚はイコールじゃない。