【連載小説】この恋は幸せになれない?好きになってしまったのは、奥さんのいる人。
周りに人がいなくて、落ち着ける場所が良いなと考えていると、1人の男性と目が合った。すると、その男性はゆっくり立ち上がり、私のところに向かって来る。
「なつみさん?」
「え?」
「たかあきです。ほらこれ、目印の帽子」
もしかして、出会い系で待ち合わせしてる人と間違われた?たかあきと名乗った男性は、私が持っているトレイを持ち席へ誘導しようとする。
「違うんです」と言いかけて、やめた。どうせ1人だし、話し相手ができるならいいか。そう思った瞬間だった。
「すみません、彼女を返してもらいますね」
私と男性の間に突然現れた人物に、我が目を疑った。
嘘でしょ……。悠真さんが、どうして?
有無を言わせないきっぱりとした口調でそう言った悠真さんは、私の腕を引いてカフェを出た。そのまま人気のない路地へと進んで行く。たまらず、声をかけた。
「悠真さん、あの」
「僕が来なかったら、あの男とどこか行く気だった?」
足を止めた悠真さんは、私に背中を向けたまま質問をする。問いかけに答えられないでいると、
「良かった、間に合って」
大きなため息を漏らした悠真さんは、こちらに体を向けて私を抱きしめた。