【連載小説】この恋は幸せになれない?好きになってしまったのは、奥さんのいる人。
「危なっかしくて放っておけないよ」
「ごめんなさい」
「謝るのは僕の方だよ。ごめん、すぐに駆けつけられなくて」
いいの……。こうして来てくれただけでも、嬉しい。
「でもどうして、あそこにいるって分かったの?」
「電話してもでないから取りあえず千紗が住んでる駅に来てみたら、偶然見つけたんだ」
そうだったんだ。ガラス張りのお店に居て良かった。見つけてくれた嬉しさがこみ上げ胸の真ん中が温かくなる。
「あれからまたインターフォンが鳴ったの? 警察に連絡した?」
「それは……」
嘘だったなんて、いまさら言えない。悠真さんの気を引くため咄嗟に嘘を吐いてしまったのだ。
「ただの酔っ払いだったのかも。上の階の人が部屋を間違えたのかな」
「だったらいいけど。念の為、管理人さんには話した方がいいよ」
「分かった、そうする」
ごめんね、悠真さん。私、平気で嘘を吐く最低な人間なの。最低だけど、あなたのことが好きすぎてどうにかなりそうなの。私には悠真さんしかいない……。
「来てくれて、ありがとう」
「お礼なんか言わなくていいよ。でも、約束して。
僕以外の男に付いて行かないって」
「うん、約束する」