【連載小説】この恋は幸せになれない?好きになってしまったのは、奥さんのいる人。
小指を立てて頷くと、悠真さんは優しいキスをくれた。
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どっちが大事?
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「本当に帰らなくていいの?」
「うん、綾香には仕事のトラブルで朝まで帰れないと言ってきたから」
「嬉しい」
悠真さんの首筋に腕を回し、ギュッと抱きつく。綾香が流産してからあまり会えてなかったし、お泊りをするのも久しぶり。
ホテルに行くことも考えたけど、私の家の方が近いので招待することにした。最近まで母が居たから、悠真さんがここに来るのは初めてだ。
「へぇ、ここが千紗の部屋か。キレイにしてるね」
「あんまりジロジロ見ないで適当に座ってて。今、コーヒー淹れる」
「いや、コーヒーよりも……」
背後からお腹の辺りに腕を回され、耳元にキスをされた。
「千紗が欲しい」
されるままに悠真さんのキスを受けていると、それだけで心が満たされていく。ベッドへ移動した私たちは、服を脱ぐ間ももどかしくお互いの体を密着させた。
「悠真さん、愛してる」
「僕も。ずっと一緒にいようね」
唇を重ねようとした瞬間、悠真さんのスマホから着信音が鳴った。1度は無視したものの、しつこく何度もコールされる。