【連載小説】この恋は幸せになれない?好きになってしまったのは、奥さんのいる人。
「また振られたの」
「うるさいわね、あんたまで私をバカにする気!?」
噛みつかんばかりに勢いで喚き散らす母は、ずかずかと部屋に入り冷蔵庫からビールを取り出した。
「ムカつく! ふざけんな!」
「お母さん……」
「うるさい!うるさい!」
ヒステリックに叫ぶ母は、ビールを飲みながら嗚咽を漏らして泣き始めた。その姿が、数時間前の自分と重なりゾッとした。私、お母さんと同じようになってしまっている……。
◆
決意
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悠真さんからの連絡は、しばらく途絶えた。綾香のSNSには、「旦那くんがマッサージしてくれた」や「気晴らしに映画を観に連れて行ってくれた」などが書かれていて、私の心は荒れる一方だった。
そんなある日、母方の従兄弟から祖母が入院したという連絡が入った。
「お祖母ちゃん!」
駆けつけた私に、祖母は目を丸くして「どこのお嬢さんかと思ったわ」と笑った。
電話はよくしていたものの、祖母に会うのは10年振りくらいかな?祖母も随分老けていて、私の記憶にある祖母とは全然違う。
「身体は大丈夫なの?」
「検査入院みたいなものだから大丈夫よ」