【連載小説】この恋は幸せになれない?好きになってしまったのは、奥さんのいる人。
「本当に?」
「本当、本当。わざわざ飛行機に乗って駆け付けてくれたのね。ありがとう」
「当たり前でしょ、お祖母ちゃんに何かあったら私……生きていけないよ」
「大げさね」
私は幼い頃、お祖母ちゃんと一緒に暮らしていた。しつけには厳しかったけど、私の母とは違って優しくて笑顔の絶えない人。
当時はたまにしか様子を見に来ない母のことを姉、祖母を本当の母だと思っていた。母が上京する際に私も連れて行くことに、最後まで反対してくれた人でもある。
「千紗はどうなの? 元気にしてる?」
「うん、元気だよ」
「こんなにやつれているのに? 無理なダイエットをしているんじゃないでしょうね」
祖母は心配そうに、私の頬を撫でた。実はここ最近、あんまり食欲がなく2キロ痩せてしまった。
「違うよ」
「千紗が幸せになる姿を見るまで、死ねないわ」
「お祖母ちゃん……」
「木綿子(ゆうこ)はね、どういうわけか幸せに縁のない子でね。千紗にも苦労をかけたでしょう」
木綿子というのは、私の母だ。
「私の育て方が間違っていたんだろうね。親として娘が不幸せなのは見ていて辛い。だからせめて、孫娘の千紗は幸せな姿を私に見せてね」