【『最愛』感想 3話】 会話の余白が描き出す複雑な感情・ネタバレあり
と泣く。「わたしのせいで優が不幸になった」ではなくて「幸せじゃなくなった」という言葉が印象的である。
あの夜、自分がしっかりしていれば、我が身を守れていれば、弟を今でも幸せな環境の中にいさせてあげられたのにという、梨央自身が被害者でありながら、あまりにも残酷で理不尽な悲しみである。
梨央はそんな断片にしかならない言葉で泣く以外、複雑で痛切な悲しみを他の誰に語ることも、共有させることも出来ない。
そして、事業説明会の騒動で梨央を刃物から庇って怪我をおった加瀬が、救急車の中で苦笑気味に呟く「給料に見合いませんよね」。
第2話で、加瀬は「この家では、わたしがあなたを守ります」と言ったあとに、慌てたように「梓さんから、そう言われているので」と、仕事の延長であるように誤魔化す。
加瀬の梨央への献身は、職務とそれ以上の感情の境界線を常に行き来しているが、その上で今回の冒頭、モノローグで「人に見返りを求めてはいけない」と信条を淡々と語った言葉があるからこそ、見合わない『給料でない』部分の大きさが垣間見える言葉である。
最後に、加瀬の治療を待つ病院で梨央と大輝が交わす言葉。
「今でも、走ってるの」