【『ファイトソング』感想・1話】ハードモードな一人の人生と、ただ一つの歌
と同情していた周囲からも、今やその堕落ぶりを失望されている。
このとき、児童養護施設の後輩から、「あなたのようになりたくない」と辛辣な言葉を投げつけられても、花枝が全く意に介さないやりとりが印象的だ。
花枝自身、もう他人が自分に投影する物語のレールに乗ることにうんざりしているようである。
※写真はイメージ
それでも、旺盛な食欲や養護施設の施設長である磯部直美(稲森いずみ)との口の減らない会話から、花枝の根っこにある生命力はまだすり減っていないことがわかる。
そんな花枝と出会うのが、落ちぶれたミュージシャンの芦田春樹(間宮祥太朗)である。
いわゆる『一発屋』であり、10年以上前の一曲の大ヒット以来は鳴かず飛ばずで、所属事務所からは見放される寸前になっている。
(このただ一つのヒット曲が、花枝の人生を支えてきた、いわゆる『勝負曲』である)
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10年以上、新しいものを生み出せない苦しみの中で、春樹は自室のあるビルの屋上から夜中に何度も下を見下ろしている。時に手をたたいてその反響で高さを実感してみたり、手すりに乗り出してその瞬間に遠くの救急車のサイレン音で驚いて、乗り出した体を慌てて戻したりする。