【『ファーストペンギン!』感想 最終回】それでも最初に飛び込むんだ!・ネタバレあり
結果として悪い一つの事象に対して、安易にこれだけを壊して取り除けば良いという『悪者』など本来いないのだろうと思う。
それも理解した上で、やはり守旧の側から新しい価値観への対話の余地がもっとあるべきだと痛感した。
資金が尽きれば会社は死ぬ。リーダーは、部下や組織に関わる人々を大切に思えばこそ会社が死なないために、どんな藁かも見ないで掴む。
そこまでに追い込んだのは、「話してもどうせ分かるまい」と相手を侮って対話を持たずに突き落とした側だろう。
その前に、五十年、百年先の未来を見据えた対話は考えられなかったものか。
政治家の辰海は和佳のリーダーとしての資質を認めつつも、浜で仕事を続けることは許さず、和佳は辰海相手に自分が去った後のさんし船団丸の仕事の安寧を願って膝を折り土下座する。
分かりやすい勧善懲悪の物語なら、最終話に膝を折るのは敵対する側だったろう。
あるいは、敵のボスが去ったなら、主人公は立派に凱旋するだろう。
けれども、『ファーストペンギン!』は、そのどちらもしなかった。
和佳は直販事業の引き継ぎを果たした後は、浜の繁栄を願い去っていく。
浜に残った漁師達や和佳が関わった人々は、さざ波が広がるように幸福になり生きていくが、和佳はそこにいない。