2023年2月27日 12:24
「姉ちゃん頼む!」と泣きながら頭を下げる弟 理由に、胸が締め付けられる
そんなある日隣に男の子が入院してきた。中学生くらいの風貌で、母親が頻繁に出入りする。ちょうど昼食が終わった頃だった。
「なんで半分しか食べないの?」
母親が強く叱った。見れば唐揚げしか食べていない。さらに宿題のドリルを見せれば「半分も終わってないじゃない」と口を尖らせる。
それを見て急に懐かしくなった。半分しかやっていない宿題。
半分しか食べないおかず。半分も払えない家賃。
それを肩代わりした時、彼は必ず「ねえちゃん、ありがとう」と笑った。「姉ちゃんが母ちゃんのかわりでよかった」とも言った。
それがあったから救われた。「ちきしょう!私ばっかり」と思っても、最後には「お前もがんばれよ」と背中を押すことができた。
やっぱり『ありがとう』かな。
遺言は、最後、感謝で終わった。
数日後、終活雑誌を読んでいると看護師がやって来た。どうやら誰か面会に来たらしい。私が慌てて机にしまうとジーパン姿の男性が現れた。弟だ。弟はかけ寄るなり、いきなり頭を下げた。
「姉ちゃん、頼む!」
ああ、これはお金だな。久々の慌てっぷりにピンときた。
「お金なら生きてるうちはやらないよ」
私が言い放った瞬間だ。