2023年2月27日 12:24
全盲の母が「1回限り」といって、頼んできたのは…?
と、たゆまぬ努力を重ねた母は、マラソンが生き甲斐となり、いつしか「一回限り」を「一生走る」に言い換えていた。
「美智子、ホノルルマラソン走ろう。一生一度だろうから」と、走り出して三年目、母は初フルマラソンの舞台をホノルルに決める。
高校受験の年で迷う私に、「一週間学校休んで落ちるなら、休まなくても落ちる」と母はきっぱり言い、共に参加、想像を超える苦しみと、それを遥かに超える感動を味わった。
ホノルルマラソンに魅了された母は、一回では済まず、亡くなる半年前の大会まで、三十二回の参加を続けた。
市民ランナーの目標である、フルマラソンの四時間切り『サブ4』も達成し、次に母が掲げたのは、走歴十周年を記念し、過酷な百キロウルトラマラソンへの挑戦。
「お母さん、百キロ走ってみたい。この十年でどれだけ力がついたか試したい。
一生一度の思い出作りに」と、自己の限界に挑んだ。結果は時間外完走。
母は勿論翌年リベンジし、時間内完走を果たす。ウルトラマラソンの魅力にも触れた母は、計八回の百キロレースを走破した。
「一回限り」という言葉で始まる母の全力でのチャレンジ。母が次々と自己の限界に挑戦し、それをクリアする姿は、私をワクワクさせ、「不可能なんて無いのでは」