【『大奥 Season2』感想10話】 岸井ゆきのと志田彩良が紡ぐ名前を越えた愛情
を取り出して一緒にいたいと怒る場面である。原作では、この宸翰は家茂の死後に届けられている。
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今回のドラマではその順番を変えることで、家茂の和宮への愛情がよりはっきりとした輪郭をもって、家茂の主体的なものとして描かれている。
更に、互いに相手の服を着て甘い物を食べて楽しもうという家茂の提案もドラマのオリジナルである。
互いの服を交換する思いつきが、まだ年若い家茂の少女らしさの希有な発露でもあるし、同時に私はあなたであり、あなたもまた私であるという一心同体を示唆するかのようでもある。
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そして、家茂が能登に語る最後の言葉が「大奥に帰りたい」。
これも原作では「江戸城に帰りたい」であり、その小さな違いが、私人としての家茂の魂が帰る場所を示していて、更に胸が締め付けられた。
ドラマでは原作に加えて、家茂を人間としてより魅力的に見せる工夫があちこちに散りばめられている。
200年の時を描き通してきた豪華絢爛な物語も、ついに次回で幕をおろす。
映像化にあたって、常に原作のエッセンスを余さず汲み上げ、更に『今』に応じたエピソードを加えてきた今作が、最後に私たちの心に何を残すのか。