手に障がいのある女性 食堂で出されたスプーンを見て、胸がいっぱいになったワケ
と感じたのかもしれない。本当のことは、マスターの口から聞いていないので知ることはできない。でも、少なくともマスターの観察力と無言の気遣いに、私は心が温かくなった。
マスターは何も言わなかった。いつも通りの髭を生やした顔で「ありがとうございました」と一言言っただけだった。
大学を卒業して4年経つが、卒業以来あの食堂に行けていない。あの食堂はまだ営業しているだろうか。マスターもあの人のままだろうか。
今度、有給休暇を取って、久しぶりに行ってみよう。その時には、マスターにお礼を言いたい。そして、「また食べに来ます」と伝えたいと思う。
grape Award 2020 応募作品
テーマ:『心に響いた接客エッセイ』
タイトル:『銀のスプーン』
作者名:白石 真寿美
エッセイコンテスト『grape Award 2020』開催中!
2017年から続く、一般公募による記事コンテスト『grape Award』。
第4回目となる2020年は、例年通りの『心に響く』というテーマと、『心に響いた接客』という2つのテーマから自由に選べます。
今回も、みなさんにとって「誰かに伝えたい」と思う素敵なエピソードをお待ちしております。
『grape Award 2020』詳細はこちら
[構成/grape編集部]