2歳息子とバスに乗ったら… 運転手の『行動』に、母親が涙こらえた理由
息子のお気に入りは一番前の、普通乗用車で言えば助手席に当たる席だ。乗客や運転手、すれ違う様々な車にバイク、景色も良く見えるその席は、座れると私もわくわくした気持ちになる。
だが、その日いつものバス停にやって来たのは新型のフルフラットバス。乗車口に一番近い席は、エンジンが収納されており座席が無い。あいにく、運転手の真後ろの席も埋まっている。
「一番前の席は無いから座れないね。今日は後ろに座ろうね。」
息子がぐずる前に、私は必死でなだめる。息子は、一瞬残念そうな顔をしたが、初めて乗るフルフラットバスを見渡していつもの違うバスだということを理解したようだった。
私たち親子は、目的地も無いのでいつも終点の新宿駅西口まで行く。
バスが10分ほど走ったところで途中のバス停に着いた。降車口は開くが、一番前の乗車口は開かない。いつもなら同時に開くのにどうしたのだろうかと思っていると運転手さんがアナウンスをした。
まずは、バス停で待つお客さんに「少々お待ちください」と。そして次は車内に。
「お母さん、一番前が空きましたからどうぞ」
私はその意味を理解するに少々の時間を要した。けれど、運転手さんの真後ろの席のお客さんが降りたことに気づき、有り難いような申し訳ないような気持ちでいっぱいになった。