コロナで職を失った派遣社員 ある社員の『ひと言』に、息をのんだ
ということ、そして、売り上げを伸ばして「また戻す」ということを言ってくれた。
それはとても嬉しいことで、こんなに優しい人たちに囲まれていたんだと嬉しい気持ちになった。
そんな中、ひとりだけ違う反応を見せた。その人は、社員の中でも特に仲の良い人だった。私が派遣社員として配属されたばかりの頃、よく話しかけてくれ、なぜか私のことを
「感性が独特で面白いねえ」
と言ってくれた。その人がかけてくれた言葉は、「また戻ってきてほしい」という類のものではなかった。
「君はここでやっているように一生懸命働けば、出版社でももっと働ける日数を増やしてくれるはずだよ。そうしたら、こんなところに戻ってこないで、そっちに行くんだよ。」
息が止まる思いだった。
私は、「本当はそうしたほうがいい」ということを本当は分かっていたからだ。アルバイトでもなんでも、一生懸命仕事をして、契約社員の試験を受けて、社員の試験を受けられるように頑張りたいと思っていた。
だけど寂しさのあまり、また戻ってきたいなあ、出版社と掛け持ちをすればいいよね。と、みんなの優しさにおんぶに抱っこだったのだ。だから、目を見られなかった。
胸の奥がグっと熱くなり、こらえていないと涙が溢れてしまいそうだった。