くらし情報『宝来館女将 亡くなった従業員の分も「生きっぺし」W杯誘致へ』

2019年3月11日 11:00

宝来館女将 亡くなった従業員の分も「生きっぺし」W杯誘致へ

「津波で屋外に投げ出された上澤くんは、電線につかまって、奥さんと手をつないでいたけれど、奥さんの手が離れると『ちくしょー』と叫んで、後を追ったそうです。生き残ったのは娘さんだけでした」

ほかにも、2人の仲居さんが津波の犠牲になっている。

「従業員だけではありません。この根浜の村だけで14人が亡くなっています」

震災の夜、岩崎さんは宝来館の屋上から懐中電灯で海を照らした。

「誰かが砂に埋まって助けを求めているかもしれない。まだ、生きている人がいるかもしれない。途端に怖くなったんです。でも、『ごめん』としか言えなかった……」

電気は遮断されたまま、海は陸との境もわからない暗黒だった。


「そしてまた、思うんです。生きっぺし、と。自分たちは生きている。だったら、生きっぺし。生き抜くことが使命。義務なんです」

震災から2カ月後の5月3日、2人の男性が宝来館を見舞いに訪れた。新日鐵釜石ラグビー部を受け継いだクラブチーム「釜石シーウェイブス」の事務局長だった増田久士さんと岩手県出身で元日本代表のラガーマン・笹田学さんだ。3人で海岸を歩いた。
震災前の根浜海岸は、日本白砂青松100選に指定された景勝地だった。

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