くらし情報『僧侶で医師――対本宗訓さんが病院で経験した“不思議な体験”』

2020年2月21日 11:00

僧侶で医師――対本宗訓さんが病院で経験した“不思議な体験”

しかしたとえば解剖実習では、人体を系統的に解剖しながら、その機能や構造を徹底的に勉強します。献体していただいた故人の志に思いを寄せ、心の中で合掌しつつメスを進めました。今でこそ“医療倫理”という言葉をよく耳にしますが、約20年前の医学部には、哲学的なテーマとして『命』を扱っている教科書や講義はほとんどありませんでした。だからこそ、宗教者としての経験を医療現場でも生かさなければならない、と感じました」

“スーパードクター”でも、“ゴッドハンド”でもないが、僧侶として、心を開いて“傾聴”することが自分にはできるーー。

秋田弁が聞き取れないときは看護師に通訳をしてもらいながら、日常診療をこなす対本さん。患者との信頼関係を築いていくなかで、普通の医師ではできないような“不思議な体験”も病棟ではしばしばある。

「あるとき病室を通りかかると、昏睡状態が続いていたはずの患者さんが、弱々しく半身を起こすようにしていらっしゃるんです。それで、私に向かって合掌してくださる。
ご自身の死期を悟り、外来通院のときから診ていた私へのお別れをしたかったのだろうと思います。患者さんは、その晩に亡くなりました」

高齢者の長期療養入院者が多いため、穏やかな死を迎え、次の世界につなぐことが、僧医としての役割でもある、と力強く話す対本さん。

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