2021年8月30日 11:00
今日がいちばん元気――ALSの声優語った闘病は「妻に甘えてた」
津久井さんと妻・雅子さん
渋谷の公園通りのゆるやかな坂道を上って、NHKに向かう介護タクシーの車窓からは、いつものように多くの若者が行き交う景色が見える。月に2回ほどある『ニャンちゅう!宇宙!放送チュー!』(NHK Eテレ)の収録は、闘病中の声優・津久井教生さん(きょうせい・60)にとってワクワクできる日だ。
その番組は、92年にスタートした前身番組『ニャンちゅうといっしょ』『ニャンちゅうワールド放送局』などを経て、現在は世界の魅力を伝え、国際理解を促す幼児番組だ。お姉さんと番組を進行する、セリフすべてに濁点が入っているかのような“ダミ声”の人形キャラ・ニャンちゅうは、お母さんたちにとってもおなじみのはず。
番組開始以来、約30年、ニャンちゅうの声を担当している津久井さんは、通い慣れたNHKに到着すると、車いすに乗りながら付き添いの妻・雅子さん(55)と共に、入念にアルコールで手を消毒し、スタジオに向かう。
収録では、お姉さんやニャンちゅうの動きを、セットから5mほど離れたアクリル板に囲まれた専用ブースから見て、胸元につけたマイクに声を吹き込む。
以前は、画面に腕の影が映り込んでしまうほど、セットの近くで録音に臨んでいたのだが──。