2021年10月4日 11:00
元日本2位の女性サーファーは71歳。還暦で海に戻ってきた理由
鵠沼海岸で鈴木さんと笈川さん
若いころは自分の好きなことしかやらなかった。強烈に惹かれたサーフィンで、猛練習、全日本で2位に輝いた。結婚で海は引退と決めたが、体調の悪化、夫との不仲、入門し直した猿若流でしごかれて、悔し涙を流したことも。師範となり、サーフィンを再開したいまだからわかる。自分の半生は、決して“無駄足”ではなかったと――。
神奈川県藤沢市鵠沼海岸。
湘南エリアでも屈指の人気サーフスポットだけあって、沖ではこの日もボードに跨がった大勢のサーファーたちが、ころ合いの波を待ってプカリプカリと浮いていた。やがて、少し大きなうねりが沖から打ち寄せてくると、彼らは慣れた様子で、次々と波に乗って──。
「おおっ、笈川さん、やるなー!」
砂浜から沖を眺めていた記者の隣で、不意に大きな声を上げたのは、日本を代表する老舗サーフブランド「GODDESS(以下・ゴッデス)」の社長・鈴木正さん(79)。
その視線の先には、しっかりとボードの上に立ち、両手を広げ見事、波に乗る女性の姿が。
「はぁ~、楽しかったー」
満面の笑みを浮かべながら、重たいサーフボードを引きずるようにして浜に上がってきたその女性は、笈川孝子さん。