2021年10月24日 06:00
レジ打ちからホテル社長へ 元専業主婦社長が語る「埋もれた人材」
それで、インターネットで60歳以上の求人を調べたんです。出てくるのは、清掃、介護、保育、それに小売りの4つ。私にできるのは小売りだ、そう決めて、新規開店のスーパーの求人に応募し、レジ打ちのパートを始めたんです」
華やかな経歴を誇る薄井さん。スーパーの時給1千200円のパート仕事に就くことへ、何も思うところはなかったのか。
「抵抗感なんてまったくない。それこそが無駄なプライドです。そんなことで前に進めない、なんてことがあるとしたら、実績や経験は、ただのお荷物でしかない」 こう言って、声をあげて笑った。そして、こう続けた。
「それにね、レジ打ちって、思ってた以上に、私が体験したなかでもいちばん大変な仕事だった。会計だけでもすごく大変。現金、カード、電子マネー、扱い方がみんな違う。そのうえ、ポイントカードも。それらを全部、覚えないと、仕事にならないんですよ」
職場で出会った同僚のなかには、“埋もれる才能”と思える人材も。
「その難しいレジ打ちを苦もなくこなす人がいる。『ああ、もったいないな』『この人、もう一歩踏み出せば、違う世界があるのにな』って人が、いっぱいいた」
主婦たちの可能性に気づいた、ちょうどそのころだった。