2021年10月24日 06:00
レジ打ちからホテル社長へ 元専業主婦社長が語る「埋もれた人材」
海外のエージェントを通して、外資系企業から「日本で新規開業するホテルの経営を任せたい」というオファーが舞い込んだのだ。
熟考の末、薄井さんは2つの条件を出した。
「1つは肩書。支配人ではダメ、日本法人の社長にしてほしいと言った」
理由は、同ホテルのブランド力の弱さだった。
「まだ、日本ではあまり知られていないホテルだったからね。それなら『給食のおばちゃんが14年で社長に』と、自分を前面に出したほうが、各方面から注目を集められる、そう思った」
もう1つの条件は「スタッフの採用は、自分に一任してくれること」だった。
「私はね、たくさんのチャンスをいただいてここまで来れたんですね。もちろん、運もよかったと思う。
でも、運のよし悪しで片付けてしまうのは不公平ですし、それは私もいや。だから、本気で頑張る、そういう人にね、公平にチャンスをあげたいと思ったんです」
念頭にあったのは、理不尽な仕打ちに、ただ悔し涙に暮れることしかできなかった子供時代、それに、年齢や経歴だけで門前払いされ続け唇をかんだ10年前の自分の姿だった。そしてつい先日、目の当たりにした、埋もれる才能たちのことも。
先方は薄井さんの条件を、すべてのんだ。