2021年10月24日 06:00
レジ打ちからホテル社長へ 元専業主婦社長が語る「埋もれた人材」
先方から不採用の明確な理由を、告げられることはなかった。
「ほぼ間違いなく、52歳という年齢が理由だったと思う。それと長い期間、専業主婦だったことも」
薄井さんの履歴書には、30代初めから17年間の空白があった。
「でも、その間、何もしていなかったわけじゃないのにね……。世の中から『いらない』と言われてる、そんな気持ちになった」
心の奥にふつふつと湧いてくるものがあった。それは1人の人間を育て上げたという矜持。そして、強い怒り……。
「それでも、なんとか会員制クラブの電話受付、時給1千300円の仕事に就くことができました」
薄井さんは持ち前の真面目さ、そして主婦時代に培った能力をフル稼働。
1年後には全体の売り上げの4割を、彼女が1人で稼ぐまでになった。13年には知人を介してオファーを受け、ANAインターコンチネンタルホテル東京に転職を果たす。ここでもわずか3年で、営業開発担当副支配人に抜擢されるまでに。その後も、ラグジュアリーホテルとして名高いシャングリ・ラ東京に転職。そして18年。薄井さんは日本コカ・コーラにヘッドハンティングされる。
「同社は、東京オリンピックとパラリンピックの大スポンサーですから。