2021年12月19日 06:00
仕事就けず娘と心中も考えた“無戸籍者”のSOS 支援NPOが見た貧困
「普通に生活してきた人が、1枚の書類が取れないだけで、この世にいないものとされる。その理不尽にふれ、ほっとけなくなって。その後は、(アルバイトの女性の)弟さんにも協力してもらい、アルバム写真など、彼女がたしかに一緒に育ってきたという証拠集めから始めました」
市役所の戸籍課や奈良地方法務局と交渉を繰り返し、1年半かけて戸籍を取得することができた。
「ラッキーだったのは、このときの行政の担当者がみなさん“いい人”で、交渉がスムーズに進んだこと。これが厳しい対応だったら『二度と来るか』で、今の私はいなかったかも(笑)」
しかし、本格的に無戸籍者支援に乗り出すまでには、まだ2年の歳月が必要だった。
「ひとたび関わったら、その人の人生がかかっていることで、『ごめん、できなかった』ではすまされない問題だと、その責任の重さを感じました。そのうちに、あのバイトの女のコが戸籍を得て、銀行口座もカードも作れて無事に社会に旅立つんです。その姿を見て、やっぱり私は知らん顔はできひん、と思って。
だから、あの2年間は、私にとっての助走期間だと思っています」
16年7月、「無戸籍の人を支援する会」を立ち上げた。