くらし情報『91歳の現役記者 赤ちゃんをおんぶして取材にいそしみ、今年で40年』

2023年2月19日 06:00

91歳の現役記者 赤ちゃんをおんぶして取材にいそしみ、今年で40年

涌井さん自身も、

「長い間、手伝いこそしていましたが、新聞作りは、いわばド素人。ですから、主人の記者仲間や印刷所などの関係者、それに購読者の方たちも、廃刊になるのだろうと考えているようでした。私も、仕方ない、と諦めていたというのが正直な気持ちです」

ところが、四十九日の法要の席だった。夫の遺影を眺めていて、涌井さんは、ふと思う。

「夢だった新聞を創刊して、たった8年ですからね。最期までベッドでペンを握っていた姿を思い出して、さぞ無念だったろうと。やっぱり、私が後を継いでやらないと、主人も、この新聞もかわいそうと思ったんです」

周囲にその気持ちを告げると、意外なことに、ほとんどの人が、

「記事は下手でもいいから、かあちゃん新聞でいいから、続けてよ」

ああ、夫は、この新聞は、中野の人たちに本当に愛されていたんだ、と改めて思い知らされるのだった。そして、その決意は、夫の死後に発行された新聞の一隅に「社告」として表明された。


〈『週刊とうきょう』の営業は引き続き涌井友子が主人の遺志を継ぎ継続させて頂きたく存じますので、今後ともよろしくご指導ご鞭撻頂きたく伏してお願い申し上げます涌井友子〉

こうして、夫の残したニコンFを首からぶら下げて、4人姉妹を育てながら、かあちゃん記者となった。

関連記事
新着くらしまとめ
もっと見る
記事配信社一覧
facebook
Facebook
Instagram
Instagram
X
X
YouTube
YouTube
上へ戻る
エキサイトのおすすめサービス

Copyright © 1997-2024 Excite Japan Co., LTD. All Rights Reserved.