91歳の現役記者 赤ちゃんをおんぶして取材にいそしみ、今年で40年
「新聞作りは山あり谷ありでしたが、これまで一度も休刊してないのが、私の記者としての誇り。
いちばん好きなのは、選挙取材。地域密着のローカル紙だからこそ、必ず全立候補者の事務所を回ります。今じゃ、候補者の背中を見ると当落がわかるなんて話してたら、ある議員さんから『おっかねえ』なんて言われました(笑)」
と、涌井さん。
前出の次女の久美子さんが新聞作りをサポートするようになってもう20年になる。ずっと同居もしており、すでに記者として母の後を継ぐことも表明している。
「母は話したがりませんが、父が亡くなったあと、新聞だけでは私たち4人姉妹を食べさせることができなくて、2度ほど生命保険の外交員をしていた時期もありました。三足のわらじだったわけです。
最近も、私が母の代わりに取材に行くと、『あの、おんぶされていた赤ちゃんが、とうとう一人で取材に来るようになったか』と言われることも。実は、それは末の妹のことなんですが(笑)」
今では、新聞制作もデジタル化しており、パソコンへの記事の入力や割り付けを久美子さんが担っている。
「記事は母、入稿は私という二人三脚です。父は、私たち家族にお金は残してくれませんでしたが、母にローカル新聞という生きがいを残してくれた。