スターダムへの戸惑いと苦悩……「久保田早紀」は引退、音楽伝道師の道へ
という詞が浮かんだ。
当初、『白い朝』と題されていたフォークロック調の曲は、プロのプロデューサーやアレンジャーによって、1年の準備期間を経て『異邦人』として生まれ変わり、芸名も著名な占い師の助言で『久保田早紀』と決まって、デビューへ。
小さなライブハウスでこつこつと実績を重ね、いつか大ホールでコンサートができたら……。そんな少女の夢を振り落とすように、早々にCMタイアップも決まり、彼女を乗せた列車は、始発駅から猛スピードで走り出す。
’79年10月、『異邦人』リリース。発売3週目でオリコン9位、人気歌番組『ザ・ベストテン』でも3週連続1位を達成するなど、新人としては異例の快進撃が続いていく。
「スタジオで収録を終えて楽屋に戻ると、ずっと憧れていた歌手の方々が隣にいて。まだ学生気分も抜けていなくて『サイン、ください』と言いたくなるのを我慢してたり。
憧れだったユーミンさん(松任谷由実)にご挨拶したのも、デビュー10カ月目でした」
いきなり大ホールでのコンサートの準備が始まるなど、自分を置き去りに、周囲はどんどん突き進んでいく。