2018年3月20日 17:00
ディズニーランド・パリで14歳誕生日のお祝いを(辻仁成「ムスコ飯」エッセイ)
パパ、ありがとう。寒いのにずっと待っていてくれて」と言いました。嬉しい瞬間ですね。「誕生日、おめでとう」と私は言いました。
実はちょっと気になっていたことがあったのです。前の日、彼にとっては13歳最後の日。ワインを取りにキッチンに顔を出すと息子が食堂にいてぼんやりと携帯を覗き込んでいたのです。私に気が付くと「パパ、人生の目的って何?」と呟きました。
私は驚きましたが、ここは即座に答えを返す必要があると思ったのです。なぜでしょう?親の意地?45年も長く生きた人間がこのくらいの質問に狼狽えてはいけないと咄嗟に思ったのでしょうか?しかし、この問いかけほどに人間の本質をつく難題はありません。私は珍しく慌ててしまいました。とにかく何か自分なりの目的を捻りださなければと必死で考え、「パパの場合は幸せになることだよ」と告げたのです。息子は返事をしませんでした。
そして、ディズニーランドの帰り、家のドアを開けようと鍵を探していると、息子が私の背中に向かってこうはっきりと告げたのです。「パパ、素晴らしい仲間たちと共に生きること、共に夢を追いかけることがぼくの人生の目標になったよ」