2018年5月7日 11:00
角野栄子さん『魔女の宅急便』は12歳の娘の絵から生まれた
「もともと絵やイラストを描くのが好きな子でした。12歳のころ、ふと机の上を見たら魔女の絵がポンと置いてありました。ほうきやリボンにラジカセも付いていて、そんな12歳くらいの魔女が空を飛ぶ話はおもしろいなと思って。最初に決めたのは、魔女は空を飛ぶ一つだけということ。小さいときに読んでいたアラジンの魔法は、ちょっと便利すぎたかなと思ったのね(笑)」(角野さん・以下同)
すぐに続編もできたこの物語には、角野さん自身の体験が込められていた。キキが13歳になって、魔女として独り立ちの決心をするシーンのことである。
《今は、贈り物のふたをあけるときみたいにわくわくしてるわ》
「キキがジジに言うセリフは、私がブラジルに行ったときの気持ちそのまま。もちろん、すごく不安でした。
でも、不安は憧れに近いと思うの。そして憧れからは、思いがけない力が生まれる」
ブラジルへ夫婦で渡ったのは結婚の翌年、24歳のときだった。
「外国を見てみたいというのは、当時の若い人は誰もが思うことじゃないかしら。小田実さんの『何でも見てやろう』の時代ですね。