5ヶ月ぶりの歌舞伎座公演『八月花形歌舞伎』が開幕、初の四部制で『連獅子』『棒しばり』ほか上演
また随所で狐を思わせる忠信のしぐさも見逃せない。こちらは市川猿之助、市川猿弥、中村七之助の出演。
第四部はお芝居の演目。『与話情浮名横櫛(よわなさけうきなのよこぐし)』。男女の不思議なめぐりあいを描く傑作だ。鎌倉の源氏店に住む和泉屋の大番頭、多左衛門の妾宅で、湯上りの化粧をしているお富。そのお富に番頭の藤八がしつこく付きまとっている。そこへ小遣いをたかりにやってきたのは蝙蝠の安五郎と相棒の与三郎。
この与三郎、かつて芸者お富と密会を重ねた伊豆屋の若旦那だ。当時お富を囲っていた旦那に知られてしまい、お富は身投げ、与三郎も全身に三十四か所もの傷を負わされる。互いに死んだと思っていたのに、こんなところでまさかの再会。与三郎の「しがねえ恋の情けが仇」という名セリフが聞きどころだ。松本幸四郎、中村児太郎、片岡亀蔵、市川中車、坂東彌十郎が出演する。8月26日(水)まで。
文:五十川晶子