その後、烈しくなる戦争で両親を失った少年たちは雪乃に魅かれていくが、啓太は母への恋しさから、おばばに母の姿を重ねていく。そして、16年後、成人した豊は、疎開先で消息を絶った啓太と再会するが……。
海尊の妻と称すおばば役は、蜷川版にも同役で出演した白石加代子。その白石も「一筋縄ではいかない作品」と言うが、長塚との信頼関係から今回、自ら出演を希望している。また、おばばの孫で、その魔性で男たちを翻弄する雪乃には中村ゆり。そして疎開児童の啓太に平埜生成、豊に尾上寛之。ほか個性豊かな実力派キャストに加え、音楽は、ソロプロジェクトFPM(ファンタスティック・プラスチック・マシーン)をはじめ、DJ、プロデューサーとして国内外で活躍する田中知之が担当。田中が舞台音楽を手がけることにも期待が集まる。
「生半可な劇ではない。しかし、険しい道の先にはきっと眩い光があるという確信に突き動かされる。これは現在の私たちの社会に痛烈に響く現代劇です」と話す長塚。初演から半世紀余を経た名作は、演劇界にふたたび衝撃を与えるか。
12月22日(日)までKAAT 神奈川芸術劇場 ホール、1月11日(土)・12日(日)に兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール、1月16日(木)に岩手県民会館 大ホール、1月25日(土)に新潟市民芸術文化会館 劇場にて上演。
文:伊藤由紀子
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