「anan」1987号1/13発売は「愛され力強化ドリル」特集。今週の表紙作成ストーリーを紹介します。その可愛さ、もはや罪!な綾瀬はるかさん。綾瀬はるかさんが可愛いということは、薄々、いや十分わかっているつもりでいました。ただ、実物は想像のはるか数千倍を上回る可愛さで、いかに綾瀬さんが可愛かったかをこれから報告しようかと思うのですが、私のつたない文章から感じとってもらったものなんかじゃまるで足りない可愛さだということを先に伝えておきます。今回の撮影が行われたのは、12月頭。1月15日にスタートする綾瀬さん主演のドラマ『わたしを離さないで』に絡んで、綾瀬さんが原作者のカズオ・イシグロさんに会いにイギリスに行って帰国後間もなくというタイミングでした。帰国してすぐにCM撮影が控えていたりで、ちょっとお疲れ気味かもと心配していた中、スタジオに現れた綾瀬さんは疲れを微塵も感じさせない、超絶ハッピーオーラを振りまいてくれました。第一声の挨拶も気持ちいいし、零れ落ちそうな大きな瞳をパチクリさせながら、やや早口で一生懸命話す綾瀬さんを目の前にすると「うっわー、生綾瀬、ちょーーーかわいいーーーーっ!!」と同性ながら内心大興奮。撮影中もスタイリストさんのニット帽をいじりながら甘え口調で話したり、ふなっしーばりに手足をバタつかせてはしゃいだり…。一挙一動がもはや罪!スタジオ内のスタッフ全員を漏れなくメロメロにした綾瀬さんの恐るべき可愛さ、ぜひ誌面でご確認ください。(N)
2016年01月12日綾瀬はるか、三浦春馬、水川あさみが1月11日(月・祝)、TBSの新ドラマで英国の作家カズオ・イシグロの名作を実写化した「わたしを離さないで」の完成披露試写会に出席し、作品について語った。英国で100万部を超えるベストセラーとなり、映画化もされた衝撃作を、舞台を日本に置き換えて連ドラ化。世間から隔絶された施設で、良質な教育を与えられてきた子どもたちが大人になり、自分たちが背負ったある特別な運命を知り、もがきながらも自分たちが生まれてきた意味、生きる意味を模索していくさまを描く。綾瀬さんは、自身が演じる恭子、三浦さん演じる友彦、水川さんが演じる美和らについて「ある残酷な運命を背負っている」と説明するが、それが何かは物語の核心でもあるため、話せないとあって、もどかしそう。綾瀬さんは、イギリス在住のイシグロさんに会うためにロンドンに飛び、いろんな話をしたというが「どうしてこの小説を書かれたのか?ドラマ化についてどう思っているか?それぞれの役について…質問してきました。『(ドラマ化で)新しい扉が開くのが楽しみです。自信をもってやってください』と言っていただけました」と明かす。このほかロンドンでは「公園にリスがたくさんいて、追っかけ回してました」と笑顔を見せた。三浦さんが演じる友彦はサッカー好きという設定で、三浦さんも元サッカー部だが「リフティングが3回しかできなくて…。これは迷惑をかけることになると、正月3が日は練習してました」と秘密特訓を明かした。水川さんは、自身が演じる美和を「わがまま」なタイプと評するが、この3人の中で、普段最もわがまま、もしくはマイペースなのは誰?という問いに、水川さん、三浦さんは迷わず綾瀬さんを指し、これには綾瀬さん自身も納得のよう。水川さんは「迷惑をかけるマイペースではなく、和みます!」とポジティブに語り、三浦さんも「現場に良く作用してます」とうなずいた。綾瀬さんについては、スタッフから、座長として現場を引っ張っているという評価も聞こえるが、自身は「全然(座長という意識・自覚は)ないですけど…(笑)」とまさにマイペースな様子を見せ、笑いを誘っていた。他にも、現場の様子について話が及ぶと、水川さんが「春馬くんが、誰かれ構わず『今年やめたいこと』『やりたいこと』を質問しまくってた」と暴露し、綾瀬さんもその様子を「怪しかった」とうなずく。これは、三浦さんがTBSの「王様のブランチ」でのインタビューにおける「現場で盛り上がっていること」という質問に答えるための“伏線”だったそうだが、綾瀬さんからは、そんな三浦さんの行動について「いやらしいですね(笑)」と非難(?)の声も挙がり、会場は再び笑いに包まれていた。綾瀬さんは最後に改めて本作について「設定は不思議で特別ですが、運命に向き合い、もがきながら人を愛すること、友情、何が自分に大事かと問いかけていて、普遍的でみなさんに共感してもらえると思います。心震えることを突きつけます」と仕上がりに自信をのぞかせていた。「わたしを離さないで」は1月15日(金)、22時より放送開始。(text:cinemacafe.net)
2016年01月12日綾瀬はるか、三浦春馬、水川あさみという豪華キャストにより、1月15日(金)からスタートする金曜ドラマ「わたしを離さないで」。このほど、綾瀬さんたっての希望で、英国のベストセラー作家にして最高の文学賞「ブッカー賞」受賞作家でもある本作の原作者カズオ・イシグロ氏との対談がロンドンで実現していたことが分かった。世間から隔離された施設・陽光学苑で“良質な”教育を与えられ、育てられてきた恭子(綾瀬はるか)、友彦(三浦春馬)、美和(水川あさみ)の3人。子どもらしい生活、子どもらしい教育を享受し、“普通の子ども”であったはずの彼らはある日、生まれながらにある使命を与えられた“特別な子ども”であると教えられ、自分たちの“本当の運命”を知らされる…。キャリー・マリガン、アンドリュー・ガーフィールド、そしてキーラ・ナイトレイという英国の若手実力派俳優が集結し、2010年に映画化もされた「わたしを離さないで」。イシグロ氏によるこの原作は、英国で100万部を超えるベストセラーとなっており、本作が世界で初めてのドラマ化となる。「生まれてきた意味・生きる意味」を問いかけるテーマとあって、出演者・スタッフとも真摯に物語に向き合いたいとクランクイン前から準備を進めてきたという本作。主演を務める綾瀬さんが「この作品を、この役を、より深いレベルで理解したい」と考えていることを知ったプロデューサーが、イシグロ氏とコンタクトを取ったところ、「ぜひロンドンへいらっしゃい。会って話をしましょう」と返事をもらい、綾瀬さんは急遽、初めてのロンドンへ。以前、イシグロ氏が来日した際に、ごく簡単な挨拶を交わしていた2人だったが、その後、イシグロ氏が綾瀬さんの出演作品を観て彼女に興味を持ったのだという。こうして、1週間のスケジュールがほぼ決まっているという超多忙のベストセラー作家と、日本の国民的女優の奇跡の対談が実現した。「イシグロ先生に聞きたいことがたくさんある」という綾瀬さん。「わたしを離さないで」が生み出された経緯やキャラクターの作り方などを次々と質問し、イシグロ氏もその想いに応えて、熱いトークが繰り広げられた。「キャシー(ドラマでは恭子)のキャラクターについてイシグロ先生はどう思っていらっしゃるのですか?」との質問には、「映像作品は(脚本の)森下さんやはるかさんのそれぞれの解釈が合わさってコラボレーションで作ることがエキサイティングなところ」と語りながらも、「キャシーは現実の人物に近いんじゃないかな」と具体例を挙げて説明。また、綾瀬さんがこの作品の持つメッセージ性について質問をすると、執筆過程の秘話を明かした上で、「人生は短いということを書きたかった。すべての人は死を迎える。その短い人生の中で避けられない死に直面したときに何が重要なのか、そういうテーマについて書きたいと思った」と話し、それを聞いた綾瀬さんがじっと考え込むような様子も見られた。一方で、イシグロ氏もすでにドラマの脚本を読んでおり、「森下さんが原作の中から新しい部分を探し出して、まるで、そこにあった開けていなかった新しいドアを開けて、何かを探してくれているようだ。それぞれの役に、役者さんが自分の解釈を加えて新しいものにしていく、というプロセスが映像作品の面白さ」と、世界で初めてドラマ化される今回の「わたしを離さないで」への期待感を伝えた。また、日本での短い対面の後、綾瀬さんが出演した「JIN-仁―」(’09)のVTRをわざわざ取り寄せて見たというイシグロ氏は、その演技力を絶賛。「時代設定という制限のある中で、医師に対する言葉にならない愛情を表情やボディランゲージでうまく伝えてらっしゃったところは綾瀬さんの演技力の素晴らしさだと思った」と話すと、綾瀬さんが「Thank you very much.」と照れた表情を浮かべる場面も。さらに、ドラマの話題から“役者と作家という表現者としての違い”など深いテーマにも対談は及び、最後は、綾瀬さんがどうしても聞こうと思っていたという、「わたしを離さないで」というタイトルにこめられた意味をイシグロ氏が明かし、予定時間を大幅に超える4時間にも及んだ対談は終了した。対談後、綾瀬さんは「充実したお話ができて、来てよかったです。“自分が思うようにやってください”とイシグロ先生がおっしゃってくださったので、自分が思う恭子という役を素直に演じられたらと思います。ロンドンは初めてだったのですが、街並みや公園もとても落ち着いていて、すごく好きな街です。また来たいと思いました」と嬉しそうに語り、撮影に向けて確かな手応えを感じた様子だった。綾瀬さんとイシグロ氏の対談の模様は、1月8日発売の月刊「文藝春秋」(2月号)、またドラマのメイキング番組内で放送されるという。「わたしを離さないで」は2016年1月15日(金)より、毎週金曜22:00~TBS系にて放送(初回は15分枠大)。(text:cinemacafe.net)
2015年12月23日日系英国人作家のカズオ・イシグロによる「わたしを離さないで」がTBSで連続ドラマ化されることがこのほど決定。綾瀬はるかが主演を務め、三浦春馬、水川あさみが共演することが分かった。世間から隔離された施設・陽光学苑で「良質な」教育を与えられ育てられてきた恭子、友彦、美和。子どもらしい生活、子どもらしい教育を享受し「普通の子ども」であったはずの彼らはある日、生まれながらに ある使命を与えられた「特別な子ども」であると教えられ、自分たちの「本当の運命」を知らされる…。2005年の発表直後から話題になり、英国で100万部を超えるベストセラーを記録した原作の初のテレビドラマ化に挑む本作。2010年にはキャリー・マリガン、アンドリュー・ガーフィールド、キーラ・ナイトレイが共演し映画化されたが、今回ドラマ化にあたって舞台をイギリスから日本に置き換え、物語が展開していく。主演を務めるのは、「世界の中心で、愛をさけぶ」「白夜行」「JIN―仁―」など、多くのTBSドラマ出演歴のある綾瀬さん。TBS連続ドラマの単独主演初となる本作では、かつては人望も厚く非常に優しい素直な少女だったが、大人になり、疲れとあきらめに満ちてしまっている保科恭子役を演じる。そんな恭子と共に、不器用に希望を追い求める土井友彦役を、『永遠の0』『進撃の巨人』と注目作への出演が続く三浦さんが務め、恭子や友彦と一緒に陽光学苑で過ごし、勝ち気で他人を支配下に置きたがり、誰よりも強く愛を求める酒井美和役を水川さんが演じる。ほかにも、学苑の子どもたちの現実を知るに従って悩みを深めていく教師・堀江龍子役に伊藤歩、しばしば学苑を訪問する正体不明の“マダム”役に真飛聖、学苑の理念の実現のために熱心に子どもたちを指導する教師・山崎次郎役に甲本雅裕、陽光学苑の校長で子どもたちを厳しく管理する神川恵美子役を麻生祐未と、実力派俳優陣の出演が脇を固めている。脚本を手がけたのは、2017年放送のNHK大河ドラマ「おんな城主 直虎」を手がけることも決定している森下佳子。カズオ・イシグロによる原作をどのように描き直すかに注目が集まる。<以下、キャストコメント>■綾瀬はるか(保科恭子役)(原作を読んで)静かに穏やかに心に問いかけてくるのですが、受ける衝撃はとても強くて、それは物語の中で運命に翻弄されていく人たちの思いが響いてくるんだなと思いました。 私が演じる恭子はシリアスな役どころで、私自身もとても楽しみにしています。■三浦春馬(土井友彦役)原作を読み終えたとき、“生きることは常に欲求だ”と伝えられた気がしました。 そしてその欲求は、残酷で生々しく、とても美しいことだと僕は感じました。 そんな世界観を共演者、スタッフの皆さんと支え合いながら作っていきたいです。■水川あさみ(酒井美和役)台本を読んで、絶望に満ちた話でなかなか感情がザラつき心が重たくなりますが、残酷な中に描かれる希望 というものはより一層輝かしく美しく目に映ると思いました。良くも悪くもそれぞれの未来が尊く詰まった内容です。このドラマは、いまこの時代に当てはまる普遍的なストーリーだと思います。綺麗事ではなく命の尊さや、未来の為に今日を生きる意味、大切なテーマが詰まった、しっかりと皆さんの心に届くドラマにしたいと思います。■カズオ・イシグロこの物語が私の生まれた国で、新しくより広い範囲の視聴者に楽しんでいただけるということで深い満足感を覚えます。原作の背景は現代イギリスの悲観的な別世界を想定していますが、この物語を書いているときに私の作品の中でも最も『日本的』な話だとよく感じていました。ドラマという形式がどのような新しい要素を原作から引き出してくれるのか大変興味があります。このTBSのドラマは物語の中でこれまで光の当たっていなかった部分、奇妙で興味をそそるような角やくぼみ、時々はこれまで気づいていたけれども開けたことのなかったドアを開けて新しい部屋をまるまる見つけるような、原作の新しい部分を発見して、光を当ててくれると自信を持って言えます。「わたしを離さないで」は2016年1月TBSにてスタート。(text:cinemacafe.net)
2015年11月19日『日の名残り』『わたしを離さないで』など、多くの作品で世界中の読者を魅了してきたカズオ・イシグロさんが、新作を発表。作品が発表されるまでの舞台裏についてお話を伺いました。* **――10年ぶりの長編ですね。イシグロ:よくそう言われるのですが、丸まる10年かかったわけではありませんよ(笑)。ただ、時間をかけることが悪いことだとは思っていません。これまで誰も書いていないような新しいものを生み出すためには、時間をかけて取り組みたいと思っていますから。確か『忘れられた巨人』を書き始めたのは2004年ごろ、『わたしを離さないで』を書き終わった直後でした。私は人に執筆途中の作品を読ませるようなことはあまりないんですが、妻のローナには折にふれ見せています。この作品も40~50ページくらい書いたときに読んでもらったんです。すると「これは全然ダメ。初めからやり直さないと」とけんもほろろに言われました。すぐには取りかかる気になれず、その間に『夜想曲集』を書き、2本の映画にも関わりました。うち1本では脚本も務めています。そののち、妻のアドバイス通り、最初の草稿を全部捨てて書き始めてみると、前とはまったく違うアプローチになったんです。この本に限らず、妻にはいろいろ意見を聞くのですが、本作では特に、妻の影響は大きかったですね。――イシグロさんは常に、その作品にとって最も効果的な舞台を用意し、物語を綴ってきたように思います。とはいえ、本作では、これまでとはまったく違う時代が舞台になっていて驚いたという読者の声もよく聞きました。6世紀、あるいは7世紀のブリテン島(現在のイングランド)、ブリトン人とサクソン人の血なまぐさい戦いの後という設定ですよね。イシグロ:私の中にまず生まれたのは、「いろいろな人々が記憶喪失に直面している」というアイデアでした。次に、どうしたらそうしたシチュエーションを作れるかと考え、古い時代に赴いて、神話的な世界観を作ってしまうのが面白そうだと。私は、ストーリーはつかめていても、物語にとって最適な世界を模索するプロセス―つまり、舞台設定をどうするかに長い時間を使います。作家としては少しめずらしいかもしれません。◇カズオ・イシグロ作家1954年、長崎県生まれ。5歳で渡英。1982年に『遠い山なみの光』でデビューし、1989年に『日の名残り』で英国最高の文学賞「ブッカー賞」に輝く。約5年に1作というペースで作品を発表し続け、ノーベル文学賞に最も近い作家のひとりともいわれる。映像化、舞台化された作品も多数。◇記憶を曖昧にする<奇妙な霧>に覆われた世界で、息子を訪ねる旅に出た老夫婦。勇敢な若い騎士と少年の2人組や、伝説の老騎士と出会い、彼らが挑む雌竜退治に巻き込まれることに。最新刊『忘れられた巨人』は早川書房より発売中。今回、行われたミニ講義の一部が、『カズオ・イシグロ 文学白熱教室』(7月17日、NHK Eテレ23:00~23:54)にて放送予定。※『anan』2015年7月22日号より。写真・小笠原真紀インタビュー、文・三浦天紗子
2015年07月18日『日の名残り』『わたしを離さないで』などで知られる英国の作家カズオ・イシグロが、2009年に発表した初の短編集『夜想曲集』。この中から「老歌手」「夜想曲」「チェリスト」の3編を選んで1本の戯曲に再構築した同名の舞台が東京・天王洲 銀河劇場で上演中だ。主人公の旧共産圏出身の青年ヤンを演じるのは、連続テレビ小説「ごちそうさん」でブレイクし、現在はNHK大河ドラマ「花燃ゆ」にも出演中の東出昌大。安田成美や近藤芳正、中嶋しゅうといった共演のベテラン勢に支えられ、初舞台ならではの瑞々しい姿を見せている。舞台『夜想曲集』チケット情報旧共産圏からやってきた無名のチェリスト・ヤン(東出)は、ベネツィアの広場でアメリカの往年の歌手トニー・ガードナー(中嶋)と出会う。今夜ゴンドラから妻のリンディ(安田)にセレナーデを歌う予定だと言うガードナーに、ギター伴奏の役目を買ってでるヤン。幸運な出会いから、一度は手放したはずの“自分の音楽”に再び向き合おうとするヤンの脳内に、以前レッスンを受けた女性エロイーズ(渚あき)との記憶がよみがえる。その光景に、リンディとサックス奏者のスティーブン(近藤)が過ごした不思議な夜など、才能を持つ者と持たざる者との物語が交差していき…。短い髪に簡素な白シャツでたたずむ東出は、いかにも純朴な青年といった風情。だが、ふと立ち止まって風に耳を澄ますシーンでは、“才能を持つ者”を表す、まっすぐで強い目力が印象的だ。さらにエロイーズから個人レッスンを受けるシーンは、昨年から実際にチェロの練習を重ねてきたというだけあって、楽器を抱えるポーズがピタリと決まっていた。またエロイーズとの哲学めいた会話のやりとりはまだ硬さが見られたものの、身のこなしの美しさは抜群。グレーの壁に白い家具、弱くゆらめくシャンデリアといった抑制されたセットと違和感なくなじみ、原作の静謐な空気を上手く伝えていた。一方の、“才能もないのに有名であり続ける女”リンディと、“才能はあるのに売れない”スティーブンとの会話は赤裸々だ。ビバリーヒルズのホテルでたまたま隣り合ったふたりは、どちらも整形手術後の療養中で、顔にグルグルと包帯を巻いている。妻に逃げられ自棄になって手術を受けたスティーブンを演じる近藤の声音には自嘲がにじむが、進んで手術を受けたらしいリンディ役の安田の声は、屈託なく可憐だ。最初はそんなリンディを毛嫌いしていたスティーブンだが、口論の末に彼女の本当の姿を知る過程が興味深い。ベネツィア、ビバリーヒルズ、アドリア海沿いの小さな町と、物語は舞台を変え、それぞれの人生に通奏低音のようにチェロの音色を響かせながら展開してゆく。本と音楽を愛する人にこそ、観てほしい1本だ。東京公演は5月24日(日)まで。その後、5月30日(土)・31日(日)大阪・梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティで上演。チケットは発売中。取材・文佐藤さくら
2015年05月19日ドラマや映画での活躍目覚ましい東出昌大が初めて舞台に挑戦する。原作はイギリスの文学界における最高の栄誉といわれるブッカー賞、さらに大英帝国勲章を獲得し、日本での人気も高い作家、カズオ・イシグロが初めて手掛けた短篇集。独立しながらもテーマと状況がつながる5篇のうちから、「老歌手」「夜想曲」「チェリスト」の3篇をひとつに組み立て直して舞台の上に描き出す。脚本はてがみ座の長田育恵。演出を手掛けるのは、ここ数年立て続けに良作を手掛け、3度の読売演劇大賞優秀演出家賞を獲得する小川絵梨子だ。本番を2週間後に控えたなかで行われた公開稽古を覗いた。舞台『夜想曲集』チケット情報稽古場には二階建てのセットが組み上げられ、ところどころに椅子が置かれている。稽古場に入ってきた東出は、報道陣が稽古場を埋め尽くさんばかりの様子を見て「すっごい空気!」と笑う。キャスト同士、いい空気ができあがっているようで、通常とは明らかに違うこの状況に対しても過剰に意識することなく、笑い合いながら稽古開始を待っている。やがて稽古がスタート。東出演じる旧共産圏出身のヤンが、彼の亡き母がかつて大ファンだった往年の歌手、トニー・ガードナー(中嶋しゅう)とカフェで遭遇するシーン。静謐な空気の中で言葉がやり取りされる。その静けさを破るように登場したのが安田成美演じるトニーの妻リンディ。ロングコートに幅広のハットをかぶり、意識的か無意識か、やや無礼なところもあるマダムをそのしゃべり方と空気感で見事に体現。素朴な青年の雰囲気をまとった東出との対比が鮮明に見える。稽古の切れ目で緊張がほどけたような笑い声がセットの裏から聞こえてくる。長身の東出はチェロを構える姿、青いギターを構える姿が実にしっくりくる。稽古の中ではギターを持った東出がベネツィアのゴンドラに揺られるシーンや、近藤芳正によるサックスプレイが披露されるシーンもあり、物語の断片を観ただけでも幻想と現実の合間をたゆたうような、不思議な世界がそこに広がる。初舞台ながらこの物語の空気の中にすっと溶け込んでいる東出。彼が本番でどんな姿を披露するのか、期待が募る。公演は5月11日(月)から24日(日)まで東京・天王洲 銀河劇場、5月30日(土)・31日(日)大阪・梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティにて。その後広島・富山でも上演。チケットは発売中。取材・文/釣木文恵
2015年04月28日東出昌大が、『夜想曲集』で舞台に初挑戦する。原作は、英国の作家、カズオ・イシグロの短篇集。演出を、気鋭の小川恵理子が担う。俳優の仕事を始めてから、いつかは立ちたいと思っていたというその場所で、東出はどんな姿を見せるのだろうか。「夜想曲集」チケット情報舞台には興味があった。出演作が相次ぐなか、「数えてみたらこの3年で30本位観ていた」のだという。やってみたかったのは、「映像と違う何かが求められる場所」だと思ったからだ。「舞台を経験したことのある方からよく聞いていたんです。舞台をやると自由に動けるようになるよと。それはたぶん、何回も同じ芝居を繰り返すことで、想像力とか演技の説得力というようなものがつくからだろうと思ったので。自分がどれくらい柔軟に自由に動けるようになるのか、怖くもあり、楽しみでもあるというところなんです」。実際、初舞台として挑むのは、想像力も説得力も大いに求められる作品となった。原作は、人生の晩年を迎えて心を揺らす人々の音楽をめぐる5篇の物語。そこから、「老歌手」「夜想曲」「チェリスト」の3篇がひとつの戯曲に再構築され、そのうち2篇に登場する若者を、東出はひとりの人物として演じることになる。すでにチェロの練習も開始。「弦に対して垂直に弓を引くだけで5年かかると言われたんですけど(笑)、だからといってあきらめるのではなく、ちゃんとお見せできるものにしたい」と意気込む。また、演じる人物には“旧共産圏の生まれのヤン”といった限られた情報しかないが、「ちゃんと生きている人間として演じられるようにその人物の背景を勉強したい」と下調べも始めている。「さらに難題だなと思うのが、どの人物もみんなストレートな感情表現をしないこと。言葉の裏にあるものをしっかり読み取って表現しないと伝わらないと思うので、課題は多いです」。舞台に立つまでに越えなければならない壁はいくつもある。それでも怯まないのは、「いい役者になりたい」という思いがあるからだ。「ありがたいことに、役者を始めてからいろんな新人賞もいただきました。でも、それで喜んでいられないというか。やり続けること、観てよかったと思っていただける役者になっていくことが大事だと思うんです。とくに舞台は、チケット代を払っていただいて足を運んでいただくんですから、緊張感を持って臨みたいと思います」。覚悟した役者は強い。東出昌大の初舞台、期待していい。公演は5月11日(月)から24日(日)まで東京・天王洲 銀河劇場、5月30日(土)・31日(日)大阪・梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティにて。その後広島・富山でも上演。チケットは発売中。取材・文:大内弓子
2015年04月17日「日の名残り」「わたしを離さないで」で世界的に著名な英国の作家、カズオ・イシグロの自身初となる短編集「夜想曲集」が世界初舞台化されることが決定。この度、『桐島、部活やめるってよ』から一気に注目を集め、主演作が相次ぐ最旬俳優・東出昌大が本作で舞台デビューを果たすことが明らかになった。「ブッカー賞」に輝いたイシグロ氏の初短編集に収められている5編は、どれもが独立した作品としての完成度、面白さを持ちつつも、テーマと状況はつながっていて全体で一つの世界を形成している。この5編の中から、「老歌手」「夜想曲」「チェリスト」の3編を選び、一つの戯曲として“井上ひさし最後の弟子”と言われ、確かな筆の力で注目を集める劇作家・長田育恵が再構築。2度の読売演劇大賞優秀演出家賞に輝く新進気鋭の演出家・小川絵梨子が人生の夕暮れに直面し心揺らす人々を切なくユーモラスに描いていく。主演に抜擢されたのは、NHK連続テレビ小説「ごちそうさん」や、『アオハライド』『寄生獣』など今年最も活躍したといっても過言ではない東出昌大。本作が初舞台という東出さんの演技に注目が集まる。東出さんの脇を固めるキャストには、小川演出作2作目となる安田成美を始め、近藤芳正、長谷川寧、中嶋しゅうなど演技俳優陣が集結している。舞台「夜想曲集」は2015年5月11日(月)より天王洲 銀河劇場にて公演予定。(text:cinemacafe.net)
2014年12月03日2010年に映画化もされたカズオ・イシグロの傑作『わたしを離さないで』が、蜷川幸雄演出により舞台化される。そこで日本語版の脚本を手がけることになった、ペンギンプルペイルパイルズの倉持裕に話を訊いた。舞台『わたしを離さないで』チケット情報「カズオ・イシグロさんに最初に触れたのは、映画『日の名残り』(=原作がカズオ・イシグロ)です。その主人公スティーブンスの生真面目さを強調したコメディを作りたいと思い、鎌塚シリーズ(=倉持が作・演出を務める舞台)が生まれました。カズオ・イシグロ作品の魅力のひとつは、その冷静で客観的な筆致。作家の主観が抑えられている、あるいは巧妙に隠されているために、読者は何にも縛られずに想像を膨らませることができる。作品全体に紳士的な態度や品を感じ、とても惹かれます」そんな縁もあり、『鎌塚氏、放り投げる』(2011年)の公演中に今回のオファーがあった際は「運命を感じた」と言う。そして本作『わたしを離さないで』は、日本語訳小説の発売後すぐに購入。そのまま一気に読み終えてしまったらしい。「話が進むにつれ、怒りを覚える対象がまるで別方向へとシフトしていくところに魅力を感じました。始めは、語り部キャシーに意地悪をし続けるルースに、次に、ルースの欠点ばかりを語り続けるキャシーに、最後に、彼女たちを取り囲む社会に対して激しい怒りを覚えます。読書中、ここまで激しい感情の振幅を繰り返した作品は他にありません」もちろん倉持はオリジナル作品を書き下ろす作家でもある。それだけに、原作のある作品を脚本化する上ではこんなことを肝に銘じている。「まず、自分が原作に対して感じている魅力を整理して、純化することです。そうすることで自分の原作に対する個人的な思いに自信が持てます。また今回、原作では語り部のキャシーを客観的に描くことが、最も楽しかったところです。その作業こそが、自分のオリジナリティを発揮できる最大の点だったと思います」また本作の演出を蜷川が手がけること。それは倉持にとって大きな楽しみのひとつだ。「この作品は誰もやったことのない方法で“生きること”について言及しています。そして蜷川さんの演出によって、主人公の3人を始め、登場人物たちは、舞台上で生命力をみなぎらせると思います。そうして生身の生命を見せつけることで、小説よりも映画よりも、このテーマについて強く訴えることができるかもしれません」公演は4月29日(火・祝)から5月15日(木)まで彩の国さいたま芸術劇場大ホール、5月23日(金)・24(土)に愛知県芸術劇場大ホールにて、5月30日(金)から6月3日(火)まで大阪・梅田芸術劇場にて。チケットは発売中。取材・文:野上瑠美子
2014年04月07日昨年末に5年間交際していたルパート・フレンドと破局したキーラ・ナイトレイだが、最近は新しい恋人との仲むつまじい姿があちこちで目撃されている。新しいお相手はロック・バンド「クラクソンズ」のシンセサイザーを担当しているジェイムズ・ライトン。キーラより1つ年上の27歳で、共通の友人であるモデルのアレクサ・チャンの紹介で、3月頃から交際が始まった。キーラは現在カリフォルニア州マリブで新作『Seeking a Friend for the End of the World』(原題)を撮影中で、共演のスティーヴ・カレルやアダム・ブロディと和気あいあいと過ごす様子が伝えられている。オフの日はジェームズとヴェニス・ビーチを散歩しているそうで、パパラッチがカメラを向けても意に介さず、肩を組んで互いの指と指を絡ませたまま、堂々としたもの。いまが一番楽しい時期の2人なのだろう。(text:Yuki Tominaga)写真は『Seeking a Friend for the End of the World』(原題)撮影中の様子。© Splash/AFLO■関連作品:わたしを離さないで 2011年3月26日よりTOHOシネマズ シャンテ、Bunkamuraル・シネマほか全国にて公開© 2010 Twentieth Century Fox■関連記事:『わたしを離さないで』連続動画インタビューvol.4カズオ・イシグロ『わたしを離さないで』連続動画インタビューvol.3キーラ・ナイトレイ『わたしを離さないで』連続動画インタビューvol.2アンドリュー・ガーフィールド『わたしを離さないで』連続動画インタビューvol.1キャリー・マリガン愛する人とどう過ごす?『わたしを離さないで』に考える“愛”のかたち
2011年05月31日美しい田園地帯に佇む寄宿学校、ヘールシャムを舞台に、共に“特別な存在”として育った3人の男女の、切ない恋と友情の物語『わたしを離さないで』。本作の公開を記念して、シネマカフェではキャスト、原作者の特別動画インタビューを4回連載にて掲載中。最終回となる今回は、イギリス最高の文学賞、ブッカー賞受賞作家であり、本作の原作者であるカズオ・イシグロの動画インタビューをお届け!ある定められた運命の中で、友情を築き、愛情を知っていく3人、キャシー、ルース、トミーのひたむきな姿が、観る者に“生とは?”、“愛とは?”を問いかける本作。一見、3人が置かれている状況は、別世界の物語であるが、決して近未来の物語ではなく、そこには普遍なラブストーリーがしっかりと存在する。イシグロ氏も彼らのたどる運命について、「僕たちが年を重ねて、本当の意味で人間の条件に気づくのと非常によく似ている」と語る。本作について、既に数多くの映画化のオファーを受けていたイシグロ氏だったが、今回、友人であり、脚本家・小説家として信頼を寄せるアレックス・ガーランドに脚本を託すことで映像化が遂に実現。イシグロ氏は全面的にバックアップする形で製作にも参加している。そして、イシグロ氏の作品に流れる“侘び寂び”の世界観を、美しく切ない映像、そしてキャストのキャリー・マリガン、アンドリュー・ガーフィールド、キーラ・ナイトレイの見事な調和により紡いでいる本作。イシグロ氏本人がこのキャスティングについて抱いた率直な感想とは…?『わたしを離さないで』はTOHOシネマズ シャンテ、Bunkamuraル・シネマほか全国にて公開中。※こちらのインタビュー映像はMOVIE GALLERYにてご覧いただけます。MOVIE GALLERY第1回:キャリー・マリガン動画インタビュー第2回:アンドリュー・ガーフィールド動画インタビュー第3回:キーラ・ナイトレイ動画インタビュー■関連作品:わたしを離さないで 2011年3月26日よりTOHOシネマズ シャンテ、Bunkamuraル・シネマほか全国にて公開© 2010 Twentieth Century Fox■関連記事:『わたしを離さないで』連続動画インタビューvol.3キーラ・ナイトレイ『わたしを離さないで』連続動画インタビューvol.2アンドリュー・ガーフィールド『わたしを離さないで』連続動画インタビューvol.1キャリー・マリガン愛する人とどう過ごす?『わたしを離さないで』に考える“愛”のかたち儚い青春と切ない運命に涙『わたしを離さないで』独占試写会に25組50名様ご招待
2011年04月08日世界中で読まれている、カズオ・イシグロの傑作小説を原作に、悲しき運命の中に生きる3人の若者の“愛”と“友情”を描く、切ないラブストーリー『わたしを離さないで』。本作の公開を記念して、シネマカフェではキャスト、原作者の特別動画インタビューを4回連載にてお届け中。第2回目となる今回は、純粋でナイーブな青年・トミーを演じたアンドリュー・ガーフィールドが登場!一躍脚光を浴びた『ソーシャル・ネットワーク』への出演や『新スパイダーマン』(仮題) の新作での主演抜擢、さらにスパイク・ジョーンズ監督の短編映画「I’M HERE」(原題)に出演するなど、いま最も期待されている若手実力派俳優のひとりであるアンドリュー。本作では、控えめで受身的なキャシー(キャリー・マリガン)と、孤独ゆえに強気で独善的な行動に出るルース(キーラ・ナイトレイ)という2人の幼なじみの女性に、二様の愛情を受けながら、過酷な運命に翻弄されていく青年、トミーを繊細かつ瑞々しく演じている。時に感情を爆発させ、生きることへの純粋なる渇望を見せるトミーという役柄について、アンドリューはこう分析する。「彼は喜びを求めている。楽しい経験をしたがっている。僕らみんなと同じようにね。そして、彼は嘘みたいに直感的で本能的で、ほとんど動物的。あらゆることを、心だけじゃなく全てを通して、体の毛穴を通して感じ取ってるんだ」。そんなトミーの目を通して、アンドリューは本作で描かれる“愛”についてどう受け止めているのだろうか?そして「トミーならどうするか?と考えていないときに、良い仕事ができている感じがする。もうそんな思いはなくて、僕ならどうする?と考えている。その状況に完全に入り込んでいるんだ」と語るアンドリュー。このインタビューでは、その言葉通り“トミー”としてのアンドリューの姿を感じられるはず。『わたしを離さないで』はTOHOシネマズ シャンテ、Bunkamuraル・シネマほか全国にて公開中。※こちらのインタビュー映像はMOVIE GALLERYにてご覧いただけます。MOVIE GALLERY第1回:キャリー・マリガン動画インタビュー■関連作品:新スパイダーマン (仮題) 2012年7月、公開ソーシャル・ネットワーク 2011年1月15日より丸の内ピカデリーほか全国にて公開© 2010 Sony Pictures Digital Inc. All Rights Reserved.わたしを離さないで 2011年3月26日よりTOHOシネマズ シャンテ、Bunkamuraル・シネマほか全国にて公開© 2010 Twentieth Century Fox■関連記事:アンジェリーナ・ジョリーがクレオパトラ役に挑戦。相手役にふさわしい男優は誰?『わたしを離さないで』連続動画インタビューvol.1キャリー・マリガン愛する人とどう過ごす?『わたしを離さないで』に考える“愛”のかたち茂木健一郎、Facebookを引き合いに、京大の姿勢を批判儚い青春と切ない運命に涙『わたしを離さないで』独占試写会に25組50名様ご招待
2011年04月01日世界中で読まれている、カズオ・イシグロの傑作小説を原作に、悲しき運命の中に生きる3人の若者の“愛”と“友情”を描く、切ないラブストーリー『わたしを離さないで』。本作の公開を記念して、シネマカフェではキャスト、原作者の特別インタビュー動画を4回連載にてお送りします。第1回は、主人公・キャシーを演じたキャリー・マリガンのインタビュー動画をお届け!本作の一幕目の舞台となるのは、外界から完全に隔絶された寄宿学校、ヘールシャム。ここで“特別な存在”としてこの世の生を受けた男女3人、キャシー、ルース、トミーは普遍的な絆を分かち合いながら、それぞれに定められた過酷すぎる“運命”に、時に抗いながらも懸命に生を全うしていく。キャリーが演じるのは、本作のストーリーテラーであり、複雑な三角関係に翻弄されるキャシー。控えめながらも凛とした逞しさを兼ね備え、キーラ・ナイトレイ扮するルースとの対照的なたたずまい、生き方を見事に体現している。運命に翻弄される3人の物語を「本当に仲良しの3人のラブストーリーでもあり、定めによって決して一緒になれない2人の物語」と語るキャリー。では、3人の複雑な関係について抱いた感想は…?さらに、初共演したアンドリュー・ガーフィールド、5年来の友人でもあるキーラという同世代のキャストたちとの撮影についてもふり返る。『わたしを離さないで』はTOHOシネマズ シャンテ、Bunkamuraル・シネマほか全国にて公開中。※こちらのインタビュー映像はMOVIE GALLERYにてご覧いただけます。MOVIE GALLERY■関連作品:わたしを離さないで 2011年3月26日よりTOHOシネマズ シャンテ、Bunkamuraル・シネマほか全国にて公開© 2010 Twentieth Century Fox■関連記事:愛する人とどう過ごす?『わたしを離さないで』に考える“愛”のかたち儚い青春と切ない運命に涙『わたしを離さないで』独占試写会に25組50名様ご招待【シネマモード】2010年のオスカー、その後…『わたしを離さないで』原作者カズオ・イシグロが来日白鵬と一緒にテレビ出演で笑顔キャリー・マリガンら実力派俳優陣が紡ぐ哀しい運命『わたしを離さないで』予告編到着
2011年03月28日観終わった後、あふれるほど様々な感情がこみ上げてくるのに、それを言葉にできない──『わたしを離さないで』は、息が詰まるほどの想いとはこういうことなのだと実感する映画だ。主人公のキャシー、ルース、トミーの3人は美しい田園地帯にある寄宿学校ヘールシャムの生徒。そして、観客は物語が始まってまもなく、そのヘールシャムが現実世界ではない異世界だと気づかされる。外界から完全に隔離されたその施設で一体何が起こっているのか?特別な存在だと教えられて育った子どもたちの身に何が起きるのか?その疑問は意外にも前半で明らかになる。であるのに、この作品に深くとらわれてしまう理由は、社会的、倫理的、SF的になりがちなテーマでありながらも、あえてそこを映し出すのではなく、3人の若き男女の恋愛、友情、絆に焦点をあてているから。現実とは違う世界であるからこそ、その世界に興味が湧き、興味を持つからこそ、普遍的な愛をより実感する。悔しいけれど、いつの間にか自分も映画の中に入り込み、等身大で物事を見ているような体験を味わうのだ。イギリス最高の文学賞、ブッカー賞に輝くカズオ・イシグロが紡ぎ出すストーリーの面白さはもちろん、キャスティングに違和感がないこと、それも大きな魅力のひとつだ。小さな頃から一緒に育ってきたキャシー、ルース、トミーを演じるのは、『17歳の肖像』でアカデミー賞にノミネートされたキャリー・マリガン、『プライドと偏見』で同賞ノミネートのキーラ・ナイトレイ、『ソーシャル・ネットワーク』への出演などでジワジワと注目を集める実力派アンドリュー・ガーフィールド。彼らの繊細な演技が涙を誘うという表現が安易に聞こえるほど、それぞれが心の葛藤を素晴らしく演じている。互いに想いを寄せているキャシーとトミー、その想いに気づき3人の関係が壊れることを恐れトミーを奪ってしまうルース。3人3様に異なる愛のかたちと選択は誰もが共感するだけに、彼らに待ち受けている切なすぎる運命がより一層やるせなくなってしまうのだ。逃れられない運命、限られた時間のなか愛する人とどう過ごすのか…。涙と共に自分にとって何が大切なのかを考えさせられる、深い深いラブ・ストーリーなのだ。(text:Rie Shintani)■関連作品:わたしを離さないで 2011年3月26日よりTOHOシネマズ シャンテ、Bunkamuraル・シネマほか全国にて公開© 2010 Twentieth Century Fox17歳の肖像 2010年4月17日よりTOHOシネマズ シャンテほか全国にて公開ソーシャル・ネットワーク 2011年1月15日より丸の内ピカデリーほか全国にて公開© 2010 Sony Pictures Digital Inc. All Rights Reserved.■関連記事:茂木健一郎、Facebookを引き合いに、京大の姿勢を批判儚い青春と切ない運命に涙『わたしを離さないで』独占試写会に25組50名様ご招待【オスカー総括】『英国王…』が横綱相撲30〜40代監督席巻で世代交代の波?【アカデミー賞】『ソーシャル・ネットワーク』脚色賞受賞でまず1冠!【ハリウッドより愛をこめて】アカデミー賞のアフターパーティの一部を紹介!
2011年03月24日1年が過ぎるのは早いなと、思うこの時期。お正月、クリスマスなどもそんな風に思いますが、やはり映画業界にいると、オスカーをひとつの区切りとすることもしばしば。ですから、そろそろ今年のオスカーの話題でも書いてくださいとお声がかかると、「もうそんな時期ですか…」と思うのです。そのわりに、去年の話題作、つまり受賞作やノミネート作品については、すっかり“過去の映画”のような気もしたりして(失礼!)。でも、オスカー受賞者やオスカー候補者の場合は、その後の活躍次第で、旬が続いていたりもするもの。決して“過去の人”にならない俳優もいるものです。ちなみに、前回のオスカー受賞者&ノミニーは覚えていますか?主演男優賞は、ジェフ・ブリッジス、ジョージ・クルーニー、コリン・ファースにモーガン・フリーマン、ジェレミー・レナー。ほとんどが、言うまでもなく引き続き第一線で大活躍している人ばかり。コリン・ファースとジェフ・ブリッジスに至っては、今年もそれぞれ『英国王のスピーチ』と『トゥルー・グリット』(右写真)で印象深い演技を見せ、同賞を競います。前回はブリッジスの勝利となりましたが、今回はどうなるでしょうか。もうひとつ気になる部門が主演女優賞。勝者はサンドラ・ブロックでしたが、こちらもオスカーを獲ろうが獲るまいが、その後の活躍に何ら変わりはなさそうなメリル・ストリープとへレン・ミレンに肩を並べてノミネートされたのが、『17歳の肖像』のキャリー・マリガンと『プレシャス』のガボレイ・シディベでした。どちらもフレッシュな顔ぶれで、その後の活躍が期待される若手ですが、キャリー・マリガンは期待以上の成長を見せています。オリヴァー・ストーン監督作『ウォール・ストリート』でもなかなかの評判を得ていますが、素晴らしかったのが『わたしを離さないで』(上写真)の彼女。寄宿舎で育った幼なじみ、2人の女性と1人の男性との間に生まれた切ない恋物語のようでいて、もっともっと壮大な愛を語ったお話です。また、物語を推し進めていくのが3人の人生に埋め込まれた痛ましいまでの秘密。カズオ・イシグロの小説が原作なので、物語はドラマティックでありながら淡々としていて、主人公たちの切なすぎる運命を、神のような慈悲深い視点で見つめているのです。非現実的とも、SF的とも思える物語ですが、人々の感情をデリケートに切り取ったこの作品は、極めて現実的な情感にあふれています。そんな作品だからこそ、キャスティングはひときわ大きな意味を持っていたことでしょう。過酷な運命を静かに受け入れていく様子を表現するには、諦めの中にも魂や愛を感じさせる力を持っている俳優でなければすべてが台無しに。若くしてそれが出来る人はそう多くはないはずです。でも、「キャリー・マリガンなら」と、製作陣が語り手であるヒロインに、彼女を選んだわけは本編が始まってすぐにわかることでしょう。彼女の演技について、いろいろ語ることはできるのですが、私が強烈にキャリーの才能を確信した理由について書くことで、その代わりとしたいと思います。それは、終演後のこと。彼女が随所で見せてきた表情が、作品の余韻として脳裏に深く刻まれていたことに気づいたのです。映画を観終わってから数時間は、その余韻を味わうたびに、涙がこぼれそうになって困ったほど。『17歳の肖像』でも素晴らしい演技を見せていましたが、『わたしを離さないで』で彼女が見せたのは、数段に奥が深く力強い才能だったのです。オスカー候補者としての誇りをいまも見せ続けているキャリーですから、本作で再度ノミネートされても不思議ではないのですが、今年は残念ながらノミネートなし。こうなると、もう何が基準なのかワケが分からなくなってしまうのですが、今年の主演女優賞候補者はまた凄腕ぞろい。ちょっと怖すぎる顔ぶれなので、キャリーには来年再度狙ってもらいましょう。もう1人のガボレイ・シディべですが、かなり個性が強いだけに、キャリーのように出演作が続々…というわけにはいかないと思いますが、その個性と才能を放っておくほどハリウッドも野暮ではありません。『ラッシュアワー』でおなじみのブレット・ラトナー監督の最新作『Tower Heist』(原題)に出演するそう。エディ・マーフィー、ベン・スティラー、マシュー・ブロデリック、アラン・アルダら個性派の大物が登場する作品の中で、ガボレイがどう光るかが見ものですね。出来上がりが楽しみ!このように、オスカーを機に注目される俳優たちは多いですが、引き続き活躍できるかどうかは本人次第。運も才能なのだとすれば、良い作品、製作陣と出会う運命をフルに使って、「オスカーを獲ったけど、その後見ないね」とか「その後、作品に恵まれないね」と言われない道を歩んでほしいものです。せっかくの才能ですからね。(text:June Makiguchi)特集「2011年 第83回アカデミー賞」■関連作品:わたしを離さないで 2011年3月26日よりTOHOシネマズ シャンテ、Bunkamura ル・シネマにて公開© 2010 Twentieth Century Foxウォール・ストリート 2011年2月4日よりTOHOシネマズ日劇ほか全国にて公開© 2010 TWENTIETH CENTURY FOXプレシャス 2010年4月24日よりシネマライズほか全国にて公開© PUSH PICTURES, LLC 17歳の肖像 2010年4月17日よりTOHOシネマズ シャンテほか全国にて公開トゥルー・グリット 2011年3月18日よりTOHOシネマズ 六本木ヒルズほか全国にて公開© 2010 PARAMOUNT PICTURES. All Rights Reserved.英国王のスピーチ 2011年2月26日よりTOHOシネマズ シャンテ、Bunkamuraル・シネマほか全国にて順次公開© 2010 See-Saw Films. All rights reserved.■関連記事:毎年恒例オスカー候補者の昼食会が開催。話題の中心は、映画よりもファッション!?オスカー最多ノミネート作『英国王のスピーチ』再編集の動きに、G・ラッシュが猛反発働き女子の心得vol.1『英国王のスピーチ』に見る、尊敬&憧れの英国レディアカデミー賞最多部門ノミネート!『英国王のスピーチ』試写会に20組40名様ご招待オリヴァー・ストーン監督インタビュー「お金?危険な麻薬だね(笑)」
2011年02月09日日本生まれの英国人作家カズオ・イシグロ氏が1月24日(月)、東京・千代田区の駐日英国大使館で行われた自著の映画化作『わたしを離さないで』(マーク・ロマネク監督)の来日会見に出席した。5歳のときに父親の仕事の都合で渡英し、その後、英国に帰化。1989年には長編第3作「日の名残り」でイギリス最高の文学賞、ブッカー賞を受賞した。来日は10年ぶりで「昨日、日本に着いたばかり。その日は早川書房の早川さんに、相撲を見に連れて行ってもらいました。相撲を生で見たのは初めて。その様子がテレビ中継に映っていたみたいで、白鵬と一緒にテレビに出られて嬉しかったです」と軽妙なトークで挨拶。「日本に来ていろいろなものを見ると、5歳より前の、昔見た懐かしい記憶、深く潜んでいた思いが蘇ります。例えば、小学館の『小学一年生』という雑誌で読んだ、大好きだった漫画の主人公が力士だったなぁ、とか」と郷愁にかられるひと幕もあった。本作は、英国の全寮制学校を舞台に、実は悲劇的な秘密を背負って生きていた男女3人が、運命を受け入れて生きていく姿を描く物語。「彼らは境遇を受け入れ、生きる意味を見いだそうとして人生をベストなものにしようと選択をしていく。それはほとんどの人がすること。そこにとても惹かれます」とひたむきな人生観をうかがわせた。約1時間の会見のシメには「最後にみなさんにお詫びを言いたい。日本語がもうちょっとできたらこんなに時間をかけないで直接、お話できたのにすみません」と苦笑い。MCから、でも日本語は聞いていてお分かりになるんですよね?と聞かれると、「5歳まで母の日本語を聞いていたので、女性が話す日本語は分かりますが、男性の日本語はまったく分からない」と言い、会場の笑いを誘っていた。『わたしを離さないで』は3月26日(土)よりTOHOシネマズ シャンテ、Bunkamura ル・シネマにて公開。(photo/text:Yoko Saito)■関連作品:わたしを離さないで 2011年3月26日よりTOHOシネマズ シャンテ、Bunkamura ル・シネマにて公開© 2010 Twentieth Century Fox■関連記事:キャリー・マリガンら実力派俳優陣が紡ぐ哀しい運命『わたしを離さないで』予告編到着キーラ・ナイトレイ、5年間交際のルパート・フレンドと破局していたキャリー・マリガンら主要3人が揃った『わたしを離さないで』ポスター解禁!キーラ・ナイトレイ、3年前に引退を考えていたキーラ・ナイトレイ、ローマ滞在中にロンドンの留守宅が空き巣被害に
2011年01月24日ブッカー賞作家カズオ・イシグロの同名小説を映画化した話題作『わたしを離さないで』の予告編が到着した。主演は実力派の若手3人。『17歳の肖像』で絶賛を浴び、『ウォール・ストリート』の公開も控えるキャリー・マリガンに、今年のオスカー候補No.1と言われる『ソーシャル・ネットワーク』への出演、さらに『新スパイダーマン』(仮題)での主役への抜擢と、いまもっとも注目を集める若手俳優のひとり、アンドリュー・ガーフィールド、そして『パイレーツ』シリーズで世界的人気を集め、その後も『つぐない』、『ある公爵夫人の生涯』とその高い演技力をいかんなく発揮し続けているキーラ・ナイトレイが美しくも哀しい、ある青春の物語を紡ぎ出す。キャシー(キャリー)、ルース(キーラ)、トミー(アンドリュー)は小さい頃から自然に囲まれた寄宿学校ヘールシャムで育った。だが、この外界と完全に隔絶され、保護官と呼ばれる先生の下で学ぶこの学校にはある秘密が…。やがて18歳になり学校を出て、共同生活を始めた3人は、初めて外の世界に触れ、その中でルースとトミーが愛を育む一方で、キャシーは孤独を覚えるのだった。その後、離れ離れになった3人だが、逃れることのできない過酷な“運命”を全うしようとする。“特別な存在”として生を享け、見知らぬ誰かの命のために育てられた若者たち――。やがて2人と再会し、互いの絆を取り戻したキャシーは、ヘールシャムの真実を確かめようとする。今回到着した予告編でも、繊細で美しい映像世界が展開するが、その美しさは同時に彼らの背負う哀しみ、儚さが強く感じさせてくれる。痛切な運命を背負いながらも日々を懸命に生きる若者たち。彼女たちを繋ぐ“秘密”の真実とは――?『わたしを離さないで』は3月26日(土)よりTOHOシネマズ シャンテ、Bunkamura ル・シネマにて公開。※こちらの予告編映像はMOVIE GALLERYにてご覧いただけます。MOVIE GALLERY■関連作品:わたしを離さないで 2011年3月26日よりTOHOシネマズ シャンテ、Bunkamura ル・シネマにて公開© 2010 Twentieth Century Fox17歳の肖像 2010年4月17日よりTOHOシネマズ シャンテほか全国にて公開ソーシャル・ネットワーク 2011年1月15日より丸の内ピカデリーほか全国にて公開© 2010 Sony Pictures Digital Inc. All Rights Reserved.ウォール・ストリート 2011年2月4日よりTOHOシネマズ日劇ほか全国にて公開© 2010 TWENTIETH CENTURY FOX新スパイダーマン (仮題) 2012年7月、公開パイレーツ・オブ・カリビアン/生命の泉 2011年5月20日より丸の内ピカデリーほか全国にて公開© Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved.つぐない 2008年4月12日より新宿テアトルタイムズスクエア、日比谷シャンテ シネほか全国にて順次公開©2007 Universal Studios. All Rights Reserved.ある公爵夫人の生涯 2009年4月11日よりBunkamuraル・シネマ、銀座テアトルシネマ、新宿テアトルタイムズスクエアほか全国にて公開© 2008 Paramount Vantage,a Division of Paramount Pictures.All Rights Reserved.■関連記事:英国アカデミー賞ノミネーション発表、『英国王のスピーチ』が最多14部門で候補にJ・ギレンホールは新恋人同伴?M・ダグラスは完全復活。G・グローブ賞こぼれ話杏、ゴールデン・グローブ賞に感激!父・渡辺謙に続いて海外進出!?『ソーシャル・ネットワーク』ゴールデン・グローブ賞4冠N・ポートマン主演女優賞新スパイダーマンのコスチュームが全世界同時解禁!顔に傷…いきなりピンチ?
2011年01月21日映画『わたしを離さないで』の新たなポスタービジュアルが解禁。主演の3人の姿がはっきりと写ったデザインに仕上がっており、先日より全国の劇場でも掲出されている。アンソニー・ホプキンス主演で映画化され、アカデミー賞8部門にノミネートされた『日の名残り』の原作小説で英国最高の文学賞ブッカー賞を受賞したカズオ・イシグロ。彼の最高傑作と称される長編小説を映画化したのが本作『わたしを離さないで』である。小さい頃から一緒に、ある寄宿学校で教育を受け、外部の世界とは完全に遮断された形で育てられた3人の子供たち。ほかの子供たちとは違う“特別な存在”として生を享け、成人した彼らを待ち受ける残酷なまでの運命、傷つきながらも愛や友情を育んでいく姿が繊細で美しい映像と共に綴られる。『17歳の肖像』で世界中の絶賛を浴び『ウォール・ストリート』の公開も控えるキャリー・マリガン、新生スパイダーマンとして注目を集めるアンドリュー・ガーフィールド、すでに大女優の風格すら感じさせるキーラ・ナイトレイが共演することも大きな話題を呼んでいる。これまでに紹介されてきたポスターでは、主人公たちが背中を向けて走る姿が写し出されていたが、今回の新しいポスターではキャリー、アンドリュー、キーラが真っ直ぐこちらを見据えているという構図に。3人の前には格子のようなものが張り巡らされており、見方によっては3人が檻に捕らわれているようにも見える。そして「この命は、誰かのために。この心は、わたしのために。」という意味深なコピーが…。果たしてその意味するところは?『わたしを離さないで』は2011年春、TOHOシネマズ シャンテ、Bunkamuraル・シネマほか全国にて公開。■関連作品:わたしを離さないで 2011年春、TOHOシネマズ シャンテ、Bunkamura ル・シネマにて公開© 2010 Twentieth Century Fox■関連記事:キーラ・ナイトレイ、3年前に引退を考えていたキーラ・ナイトレイ、ローマ滞在中にロンドンの留守宅が空き巣被害に
2010年12月07日今年も東京・六本木ヒルズをメイン会場に、世界各国から選りすぐりの作品を集めて開催される東京国際映画祭(TIFF)。つい先日、コンペティション部門に出品される日本映画『海炭市叙景』の監督、キャスト陣が出席して公式記者会見が行われたが、さらにその後、中国映画『ブッダ・マウンテン』のコンペティション出品が発表され、コンペティション全15本が出揃った。ここでは邦画および話題作を中心にコンペティション部門の行方、さらにその他の部門に出品されている注目作品などをご紹介!まずはコンペ!まずは邦画!ということで、今年、「東京 サクラ グランプリ」獲得の期待を背負って日本からコンペティション部門に出品されるのは、先述の『海炭市叙景』と『一枚のハガキ』の2作品。『海炭市叙景』は、村上春樹らと並び称されるほどの文才を持ちつつも生前、不遇を囲った函館出身の作家・佐藤泰志の幻の小説を映画化した作品。海炭市という、函館を思わせる架空の街を舞台に、そこで暮らす様々な人々の日常のドラマを映し出し、函館市と市民の協力の下、函館で撮影が行われた。監督は『空の穴』、『ノン子36歳(家事手伝い)』の熊切和嘉。規模の大きな作品とは言えないが谷村美月、加瀬亮、小林薫、南果歩といった錚々たる顔ぶれが函館に集い、市井の人々の生きる様子を静かに、そして確かに演じている。もうひとつの邦画『一枚のハガキ』は脚本家および監督として数々の名作を世に送り出してきた新藤兼人が98歳にして「映画人生最後の作品」として挑んだ作品。戦争末期に召集された兵士と、彼が戦友から託された手紙に関するある頼みにまつわる物語を通じて、庶民の視点から見た戦争の惨禍が浮き彫りにされる。こちらも豊川悦司、大竹しのぶ、六平直政、大杉漣、柄本明、倍賞美津子と現在の邦画界になくてはならない名優たちがズラリと名を連ねる。時代背景は違えど市井の人々の姿を描き出す2作が邦画代表に!派手さはないものの静かな感動を呼び起こす。第1回(1985年)の『台風クラブ』(相米慎二監督)、第18回(2005年)の『雪に願うこと』(根岸吉太郎監督)に続く邦画の最高賞受賞なるか?両作に期待がかかる。邦画以外でコンペで注目を集めているのは、名作『日の名残り』の原作者カズオ・イシグロの小説を映画化した『わたしを離さないで』。謎めいた寄宿施設で育てられた3人の若者たちの絡み合う愛憎、痛切な運命を儚く描き出したラブストーリー。『17歳の肖像』で世界中の称賛を浴びたキャリー・マリガンに、“新スパイダーマン”アンドリュー・ガーフィールド、そして『パイレーツ・オブ・カリビアン』シリーズのキーラ・ナイトレイという豪華キャストが揃っており、東京 サクラ グランプリ最有力候補と言えそう。それ以外の作品で、日本でも知名度の高い俳優の出演作としてはマイケル・シーン主演で大学構内で起こった銃乱射事件がある家族にもたらす悲劇を通じて家族の絆を問い直す『ビューティフル・ボーイ』に、海辺の町を舞台にした文豪グレアム・グリーンの名作を映画化した、サム・ライリーとヘレン・ミレン出演作『ブライトン・ロック』などが出品されている。とはいえ、過去の最高賞受賞作を見ても、知名度の高い俳優が出演している話題作が受賞するとは限らないのがTIFF。何より、いずれの作品もかなりの倍率を突破してこのコンペティションに名を連ねているだけに粒揃い。どの作品が受賞しても不思議はない。この映画祭を機にこれから世界へ羽ばたいていく監督も多いだけに、決して事前の注目度の高くない作品を見て回るのも一興?そしてコンペ以外にも話題作が続々と日本上陸!いまだ謎多き『トロン:レガシー』は全世界初公開となるフッテージ映像の上映が行われるほか、デヴィッド・フィンチャー監督最新作『ソーシャル・ネットワーク』がオープニングを飾り、そしてベン・アフレックが自ら監督・主演を務める『ザ・タウン』がトリを務める。また、「WORLD CINEMA」部門にも話題の作品が続々。9月に急逝したヌーヴェルヴァーグの巨匠クロード・シャブロルの遺作でジェラール・ドパルデュー主演の『刑事ベラミー』に、今年のヴェネチア国際映画祭で絶賛を浴び、ヴィンセント・ギャロに主演男優賞をもたらした『エッセンシャル・キリング』(原題)。ユアン・マクレガー扮するゴーストライターが、政治を巡るある陰謀に巻き込まれる『ゴースト・ライター』、フィリップ・シーモア・ホフマンの初監督作『ジャック、舟に乗る』、そして鬼才ミシェル・ゴンドリーが自らの叔母にカメラを向けたドキュメンタリー作品『心の棘』など気になる作品があちらこちら。ほかにも「アジアの風」、「日本映画・ある視点」、「natural TIFF」ほか部門もジャンルも多彩!会期は9日間。何を観るべきか?そして東京 サクラ グランプリの行方は――?東京国際映画祭は10月23日(土)より開催。特集「東京国際映画祭のススメ2010」■関連作品:第23回東京国際映画祭 [映画祭] 2010年10月23日から10月31日まで六本木ヒルズをメイン会場に都内各所にて開催© 2010 TIFF■関連記事:映画のヒロインに変身!「TIFF」ヘアデザインショーモデル体験に1名様ご招待早くもオスカー最有力?『ソーシャル・ネットワーク』北米初登場1位!来日も決定函館から世界へ!谷村美月、南果歩ら東京国際映画祭コンペ出品会見
2010年10月13日“オードリー・ヘプバーンの再来”――図抜けた演技力と透明感あふれる美しさを持つ彼女を、人々は往年の名女優を引き合いに、そう形容した。キャリー・マリガン、現在24歳。彼女が生まれる20年以上前――“ビートルズ以前”のロンドンを舞台に、ある年上の男性との出会いをきっかけに大人の世界の入口に立ち、時に傷つき、切なさや甘酸っぱい思いを抱えながら一歩ずつ成長していく少女の姿を描いた『17歳の肖像』でオスカー主演女優賞にノミネートされた。この原稿が出る時点でオスカー授賞式まで数日。結果は神のみぞ知るといったところだが、受賞のいかんにかかわらず言えることがひとつ。今回のノミネートは、今後も続くであろう彼女の“輝かしい”女優人生における、序章に過ぎないということ。称賛と共に数々の映画賞が届けられたのと同時に、彼女を取り巻く環境はガラリと変わったわけだが、当のキャリーは“いま”の状況をどのように受け止めているのか?映画の公開、そして授賞式を前に話を聞いた。「仕事の量も増えたし、こういう映画に出なければかなわなかった人々との共演のチャンスが与えられるという面では、本当に素晴らしいことだけど、それは仕事の面での変化。私自身の普段の生活はほとんど変わっていないわ」。“狂騒”と言っても過言ではない現在の状況にも、彼女は静かにそう語る。もう一度、彼女に本作への出演に至る経緯、撮影の様子をふり返ってもらった。「かなり長いプロセスね。撮影の2年ほど前に初めて脚本を読んで、オーディションに参加しました。でも、インディペンデント映画ということで難しい部分もあって、撮影の1か月前くらいまで資金調達が出来なかったの。ピーター・サースガードやエマ・トンプソンは最初から映画に参加することは決まっていたけど、映画として実現できるかどうかハッキリしていなかった。そんな状況で監督が演じたスタッブス先生(※劇中ではオリヴィア・ウィリアムズが演じた)を相手に4回目のオーディションに臨んだの」。撮影は2年前。当時、この映画がのちにここまでの注目を集める作品になると思った?「6週間半の撮影期間の低予算で撮った作品だし、撮影中はいろいろあってそんなこと考える余裕もなかったわ。サンダンス(国際映画祭)で買い手がついたのは幸運なことだったけど、こんなに注目されることになるなんて想像もしてなかった」。自身が演じた16歳の高校生・ジェニーに対し共感した部分を尋ねると、彼女の持っていた“憧れ”を挙げた。「ジェニーがパリに憧れていたように、私もいま自分がいる場所に満足できなくて『とにかくニューヨークに行きたい!ブロードウェイの舞台に立ちたい』という気持ちを持っていました。彼女の、“ここではないどこか”に行きたいと切望する気持ちは理解できたわ」。キャリー自身、劇中当時のロンドンについて「若者が楽しめるような街になったのはこの(映画の設定の)数年後で、この頃は退屈な街だったと思う」と語るが、劇中のジェニーはまさに、ロンドンに希望を見出せず、対照的に年上の恋人に連れられて訪れたパリに自らの輝ける未来を投影する。そうしたキャリーの変化は、彼女のファッションにも表れる。60年代のファッションに身を包んだ感想は?「やはり衣裳というものは役作りをする上で、非常に重要なもの。パリを訪れたシーンで着ていた服や、彼女自身の服、ヘレン(ロザムンド・パイク)に借りる服やデイヴィッド(ピーター・サースガード)に買ってもらう服など、ファッションは考えるのも着るのもとっても楽しかった。当時の男性のファッションもすごく魅力的で、いまの男性たちにも、汚い格好ではなくてああいう格好いい服を着てくれたらいいなと思います!唯一、6年間着ていなかった(高校の)制服だけはちょっと変な感じがしました」。先述のように「普段の生活に変化はない」と語る彼女だが、では、“女優”として、この作品を通じて自分の中で感じる変化は?「以前は、失敗してはいけないとプレッシャーを感じたり、心配することが多かったけど、緊張せずにリラックスして、楽しんで仕事をするということをピーター・サースガードから学びました。彼は色んなことを試してみて、それがうまくいかなくてもまた別のことをやればいいという考え方の人で、私に楽しんで仕事をすることを教えてくれた人なんです」。映画の原題は“An Education(=教育)”。学校の勉強とはまた違った経験をピーターが演じる年上の恋人との出会い通じて学んでいく姿が描かれるが、まさしく映画と同じように本作を通じて“教育”を受け、成長を遂げたというキャリー。今後も、シャイア・ラブーフとの共演作で80年代の名作の続編『ウォール・ストリート』にカズオ・イシグロの小説「離さないで」を原作にキーラ・ナイトレーと共演した『Never Let Me Go』(原題)など出演作が目白押し。これから、スクリーンの中でどんな表情を見せてくれるのか楽しみに待ちたい。特集:2010アカデミー賞© Reuters/AFLO© Kazuko WAKAYAMA■関連作品:第82回アカデミー賞 [アワード]© Omelette/AMPAS17歳の肖像 2010年4月17日よりTOHOシネマズ シャンテほか全国にて公開ウォール・ストリート 2010年、全国にて公開© 2010 TWENTIETH CENTURY FOX■関連記事:NAACP(全国有色人種向上協会)イメージ・アワードで『プレシャス』6冠!年を重ねてもハリウッド最前線で輝く秘訣メリル・ストリープに習う“女の手本”『ハート・ロッカー』のプロデューサーがあり得ない失態で、オスカー規則違反【どちらを観る?】大人への道開く、輝けるヒロイン『17歳の肖像』&『プレシャス』ザックにマイリー、『トワイライト』コンビも!アカデミー賞プレゼンター追加発表
2010年03月04日