正直で純真だからこその残酷さ。そんな年下の男性の魅力に思わずキュンとなる文学作品を、イラストレーター&漫画家の菜々子さんが選んでくれました!■『燃えよ剣』司馬遼太郎「沖田総司がツボ。仲間が死んでいくなかでも、どこか明るくひょうひょうとした様が眩しいです。土方歳三と共に浪人と闘って相手を瀕死の状態にさせるのですが、“お前、息はあるのかい?”と気の毒がって応急手当てをする姿にキュン。“道徳!正義!”とか暑苦しい感じではなく自然とやるのがいい。刺し身のツマばかり食べる偏食ぶりも子どもっぽくてかわいくて、無防備ななかにある、自然体の色気を感じます」■『愛と幻想のファシズム』村上 龍「冬二は体が強くて迷いがなく、徹底した弱肉強食主義を、そのまま地でいけちゃう姿に憧れます。一方、ゼロはクリエイティブで頭がよくて、パワーもみなぎっている。でも、どこか弱くて危うい部分があり、そこになんともいえない色気が漂います。2人の相反する魅力がぶつかりあってエネルギーが膨張していく疾走感がたまらない。私のタイプはゼロですが、あくまで冬二あってのゼロで、その逆もまたしかりだなと」■『グレート・ギャツビー』フィッツジェラルド、野崎 孝 訳「最初、ギャツビーは好きじゃなかったんです。“バカな男”と感じていて(笑)。それが、自分が大人になってみて、初恋のために命をかけて成り上がる彼のエネルギーに切なさと愛しさを覚えるようになりました。好きな人に気づいてもらうために豪華なパーティを開いて、その噂が届くように願うなんて奥ゆかしくて泣ける。その図々しさと奥ゆかしさのギャップがいいし、こんなに一途に愛されたいと思います」「透明感や清潔感がある若い男性を見ていると、自分も一緒に若返る感じがします。もちろん、お世辞を言ったりできないところや気が使えないなど、正直ゆえに残酷なところもあると思うのですが、そこもまた、おいしい魅力のひとつだと感じますね。いろいろと察してくれる疲れたおじさんと“ほっこり”過ごすのもいいけど、ときには未完成な男子との純情な恋愛気分を楽しめれば最高です」◇ななこイラストレーター&漫画家。女性誌を中心に活躍中。著書に『センスがいいと思われる 贈りもの美人の作法』(KADOKAWA)など。◇幕末の動乱期を新撰組副長として剣に生き、剣に死んだ男・土方歳三。その華麗な生涯と、激動の時代を共にした新撰組の生きざまを描いた幕末もの長編小説。新潮文庫上・下各¥790◇カナダで狩猟を生活の一部としていた鈴原冬二は、ゼロに誘われて政治結社「狩猟社」の独裁者に。そこに学者やテロリストが結集するようになっていく。講談社文庫上¥820下¥800◇絢爛たる栄華を生きる謎の男・ギャツビー。その胸のなかには、一途に愛を捧げ、そして失った恋人・デイズィを取り戻そうとする異常な執念が育っていた。新潮文庫¥520※『anan』2016年8月10日号より。写真・中島慶子文・重信 綾
2016年08月04日アート・カルチャーの発信拠点であるパルコミュージアムが9月1日、渋谷から池袋パルコ本館7階に移転オープン。オープニングとして9月1日から26日まで、漫画家・安野モヨコの代表作を網羅した大規模個展「安野モヨコ展『STRIP!』PORTFOLIO 1996-2016」展を開催する。パルコミュージアムは、「スペース・パート3」として1981年、渋谷パルコ パート3のオープンと同時に誕生したアート・カルチャーの発信拠点。その後も「パルコギャラリー」、「パルコファクトリー」、「パルコミュージアム」と名称を変えながら、時代時代の空気を捉え、新たな取り組みを行ってきた。今回は、渋谷パルコ(パート1、パート3)が8月7日をもって一時休業することに伴い、池袋パルコに移転。移転後も機能はそのままに、アート、デザイン、カルチャー、ファッションなど、枠にとらわれない多種多様な企画を実施していく。オープニングを飾るのは、『働きマン』や『さくらん』、『ハッピー・マニア』、『シュガシュガルーン』、『オチビサン』などで知られる漫画家の安野モヨコ。20年超にも及ぶ画業から、代表作のトビラ絵や名シーンを網羅し、一堂に展示。同時に画集も発表し、画集のために筆を執った描きおろし作品も初披露。さらに、単行本未収録につきファンの間で“幻の”と称されてきた、『さくらん』第二部の原稿も展示される。なお、同時刊行の作品集は展覧会場先行発売となっている。【イベント情報】安野モヨコ展『STRIP!』PORTFOLIO 1996-2016会場:パルコミュージアム住所:東京都豊島区南池袋1-28-2池袋パルコ本館7階期間:9月1日~26日時間:10:00~21:00(9月26日は18:00まで、入場は閉場の30分前まで)料金:一般500円、学生400円、小学生以下無料
2016年07月22日X-girl(エックスガール)は、漫画家・岡崎京子とコラボレーションしたカプセルコレクションを2016年5月17日(火)より発売する。フォーカスを当てたのは、1990年12月号から1992年12月号までの2年間、 宝島社『CUTiE』で連載をしていた『東京ガールズブラボー』。1980年代前半の東京を舞台に、岡崎が先だって発表した『くちびるから散弾銃』の主人公3人が、パンク、テクノポップ、ニュー・ウェーブ、自販機本といった、サブカルチャーに染まる高校時代を描いた作品だ。店頭には、コミックのカバーをプリントしたiPhoneカバー、印象的なシーンを切り取ったトートバッグ、主人公・サカエを始めとした登場人物たちを描いたTシャツなどがラインナップ。どれもポップなデザインで、90年代の空気感にあふれている。ぜひ店頭でチェックしてみて。【アイテム詳細】X-girl×岡崎京子 カプセルコレクション発売日:2016年5月17日(火)取り扱い店舗:全国のX-girl店舗および公式オンラインショップ【問合せ先】X-girl storeTEL:03-5772-2020
2016年05月20日『忍者ハットリくん』『怪物くん』『笑ゥせぇるすまん』などの人気漫画を生み出してきた藤子不二雄A氏をはじめとする漫画家が、4月12日スタートのTBS系ドラマ『重版出来!』(毎週火曜22:00~)の小道具としてオリジナル漫画を描いていることが29日、わかった。『月刊!スピリッツ』で連載中の松田奈緒子作の同名漫画を女優の黒木華主演で連続ドラマ化した本作の舞台は、コミック雑誌『週刊バイブス』の編集部。新人編集者・黒沢(黒木)が、一癖も二癖もある編集部員や漫画家、営業担当、書店スタッフたちを巻き込み、ライバル雑誌に打ち勝とうと奮闘する姿を描く。ドラマの小道具として使われる架空の週刊誌や雑誌など、何気ない小道具にもこだわり、劇中に登場する漫画は本物の売れっ子漫画家陣がドラマのためにオリジナル漫画を制作。原作者・松田奈緒子氏自らが手がけたネームをもとに、漫画家陣がオリジナルの世界観を膨らませてリアルに制作し、ぜいたくすぎる劇中漫画作品が出来上がった。藤子氏のほか、『モンキーターン』『とめはねっ!鈴里高校書道部』の河合克敏氏、『星守る犬』『ぱじ』『青い鳥~わくらば~』の村上たかし氏、『アフロ田中』シリーズののりつけ雅春氏、『最強!都立あおい坂高校野球部』『BE BLUES!~青になれ~』の田中モトユキ氏、『鉄腕バーディー』『機動警察パトレイバー』のゆうきまさみ氏、『かわれて候。』の白川蟻氏が参加。ゆうき氏は「楽しい経験でしたが、自分の原稿より緊張しましたね。このドラマの場合は主に漫画の現場が中心になっているんだと思いますが、多分原作者の松田奈緒子さんが知っている、いろんなタイプの漫画家さんが出てくるかと思いますので、その辺にリアリティがあるんじゃないかと思います。そこを楽しんでもらいたいと思いますね」と話している。そして、主演の黒木は「このドラマのために、こんなぜいたくな方々に作品提供やオリジナル漫画を描いていただきありがたいです。私自身も楽しみにしています」と喜んでいる。本作では漫画家役として、三蔵山龍役に小日向文世、高畑一寸役に滝藤賢一、成田メロンヌ役に要潤、中田伯役に永山絢斗が決定。劇中の漫画は放送後ホームページで公開する予定だ。
2016年03月30日漫画家の創作現場に密着し、作品が生まれる貴重な瞬間を見せてくれるテレビ番組『漫勉』。超人気漫画家たちの創作過程のVTRを見ながら、漫画家自身が浦沢直樹さんと共にオーディオコメンタリーのように語り合う。企画の発案者である浦沢さんに話を聞いた。「漫画の本当の凄みを伝えたい」という長年の思いを形にした。「日本は、週刊の漫画雑誌がある、他に類を見ない国。膨大なページ数の連載漫画が、毎週滞りなく読者の手元に届けられる。あまりに身近だからか、漫画ってどこか軽んじられていて、パラパラ見られてはポイッと捨てられる存在。そういうふうに消費されてありがたいんだけど、一方で『みんな、漫画のこと本当にわかってるのかな?』という気持ちもずっとあったんです。僕は、子供の頃から漫画を描いてきたから、漫画家の目の前で起きていることを想像して、作品を深いところで味わって楽しめてきた。みなさんにも創作の瞬間を映像で見てもらえば、どれだけ芳醇な文化に浸かっていたのか知ってもらえて、漫画の楽しみ方が増えるんじゃないかと思ったんです」浦沢さんは連載を抱えながらもキャスティングに始まり、撮影、台本チェック、ナレーション録り、音楽、編集など―すべてに力を注ぐ。「これまでの漫画に関するテレビ出演では、0から一生懸命伝えようとしても、1にも届かず終わっていたんです。その体験から、番組をつくるには制作から携わらないとダメだということがわかった。でも、民放各局に企画を提案したけどダメだったらしいです。地でエンタメとして成立しないと。だけど、漫画が立ち上がる過程の面白さがいざ放映されたら『ウチでやりたかった』と皆さん言っていたそうです」一連の番組作りでいちばんネックなのは人選だ。「漫画家は顔出しNGの人が多いんです。なので、顔をその漫画家さんの作品のキャラクターで隠したりして顔を出さなくても成立する回を実現させてみたいですね。登場した方々のあまりに凄い仕事ぶりに心折れる人もいたそうですが、一方で、漫画家に限らず多くの人から『漫勉を見るとやる気になる』『自分も頑張ろう』という声があがったのがうれしかったですね」番組を見るほど伝わる、画家の試行錯誤と創造力、情熱。しかし創作過程をつまびらかにすることへの怖さはないのだろうか?「僕も、他の漫画家さんの技に驚いてますし、影響もうけます。いいところはどんどん参考にしてほしい。でもね、本当に大事なところは、盗もうとしてもなかなか盗めるものじゃないですからね」◇東村アキコさんは、ペンが速いといわれる浦沢さんも驚く執筆スピード。下描きなしでペンを走らせることも。納得いくまで描き直す妥協しない姿勢は、職種を問わず学びたい。◇デジタル処理した写真をベースに、手で細かく背景を描き込む浅野いにおさん。アナログ的作業を加えることで「読者が入ってくる隙を作っている」と浦沢さんは鋭く指摘。◇うらさわ・なおき1960年、東京都生まれ。代表作に『YAWARA!』『20世紀少年』など。現在『BILLYBAT 』(ストーリー共同制作・長崎尚志)を『モーニング』にて連載中。世田谷文学館で初の個展「浦沢直樹展 描いて描いて描きまくる」を開催中(~3/31)。ミュージシャンとしての顔も持ち、アルバム『漫音』を2月に発表したばかり。※『anan』2016年3月9日号より。写真・小笠原真紀インタビュー、文・小泉咲子
2016年03月08日今回のテーマは「兼業漫画家の体調管理」である。風邪などの疾病などに見舞われないためにしている食生活、生活習慣などの工夫について講釈を垂れろ、ということらしい。しかし、結論から言うと何もしていない。特に食生活など、依然として主食はペペロンチーノなので、ムチャクチャとしか言いようがない。○人生というクソゲーをやり抜くためにじゃあ不健康なんじゃないか?と言われると、もちろん不健康だし、早死にするだろう。さらには突然死も十分あり得る。そして私の急逝の報がツイッターなどで23リツイートぐらいされ、ブラックサンダーを主食とする作家が「やっぱ健康に気をつけなきゃダメだよね」と感化されて主食をわさビーフに変える(芋+わさび=サラダの感覚)ぐらいで、すぐ忘れられるだろう。つまりこのお題は、童貞に女体の神秘について語ってくれと言っているようなものなのだ。とはいえ、そう簡単に体調を崩していては、仕事が出来ず、今度はご飯が食べられないという理由で人生が終わってしまう。そのため、健康に気を付け、一番健康を害す原因である仕事をするという、自分にホイミをかけながらイオナズンを落とすようなことをしながら、毎日ご飯を食べているわけだが、毎日頑張ってご飯を食べ続けた結果どうなるかというと、今度は寿命などで死ぬ。つまり人生というのはどっちに進んでも最終的にデッドエンドというクソゲーであり、文字通りそれを死ぬまでプレイしなければいけない。だが、終わりが決まっていてもその過程を出来るだけ悲惨じゃなくするために、とりあえず健康を保ち、目の前の原稿を期日通り仕上げなければならない。その為に私が実践している健康法は「病気にならない法」である。○カレー沢氏が実践する「健康法」病気になっては、仕事が出来ぬ。ならば病気にならないようにする。まさにシンプルイズベストな方法が「病気にならない法」だ。この「法」の特徴として、病気にならないための対策は特にとらない。期日に間に合いそうになければ飯も食わずに徹夜をするだろうが、とにかく病気にならないようにするのだ。読者の中には「いや、なるだろう」と思われる方もいるかもしれない。確かに毎日「病気にならない法」を欠かさず実践していても、謎の咳、くしゃみ、発熱、めまい、腹痛、心肺停止など起こってしまうことがある。しかし、体調管理に細心の注意を払っている作家はもちろん、そんな時のリスクヘッジも用意している。そうなった際、次に用いられるのは「これは病気じゃない法」である。発熱やめまいを覚えるが、これは断じて病気ではないということにする健康法である。病気でなければ仕事はできる。確かに立っていられないほどのめまいを覚えるが、原稿は立ってやる必要はないので、いつも通り原稿を描くのである。もちろん病院になど行かない。そんなところへ行ったら病名がついてしまい「病気じゃない法」が使えなくなる。一番やってはいけないことだ。最終的に死ぬにしても、その過程を楽しい物にしたいと思って生きていたはずが、これらの「健康法」を実践した結果として、楽しくない物の代表格である仕事を最優先した上に死期まで早めるという、ただでさえクソゲーなものを、高タイム・低スコアクリアしてしまうことになるのだが、日本には作家のみならず、こういうプレイヤーが数多く存在すると思う。そして私自身は、極限状態に類するような無理をしたことはない。健康体の時の絵と40度の高熱がある状態で描いた絵の質がほとんど変わらないという安定した低クオリティのため、多少の熱があっても休みはしないが、徹夜はしたことがない。しかし、徹夜しなければ間に合わないという状況になれば、やはりしてしまうと思う。なぜなら「期日を守れない」というのは最も避けたいことだからだ。もし私が作家を使う立場だとして、期日を守らない奴には仕事を回したくないと思うだろうし、そもそも原稿を落としたら、その原稿料は支払われない。結局、健康を犠牲に仕事をしても鬼籍に入るし、健康を優先して仕事をしなくても彼岸の人になるのである。ならば、どうせ結末が同じなのだから、病気の時ぐらい休むのが正しいという結論になりそうだが、困ったことに自分の休養が他人のデッドにつながることもある。例えば漫画家の絵が上がるのを待っていたデザイナーは、漫画家が急きょ休んだ上に納期が変わらなければ完全に「完」なのである。このように、個人の人生のみならず世界は全て死につながっており、大手が孫孫孫孫孫孫孫請会社に作らせたクソプログラミングのような代物なので、だったらもう自分の好きなようにやる、となって、私は毎日ペペロンチーノを食べてしまうのである。しかし、好きにやったため健康を害したり急死したりすれば、やはり後悔はすると思う。だが、特に健康関係というのは痛い目にあわないと大切さがわからないものなのだ。もし私の訃報がTwitterなどに流れてきたら、どうかたくさんリツイートして欲しい。三度の飯よりTwitterとエゴサを愛した故人への一番の手向けである。<作者プロフィール>カレー沢薫漫画家・コラムニスト。1982年生まれ。会社員として働きながら二足のわらじで執筆活動を行う。デビュー作「クレムリン」(2009年)以降、「国家の猫ムラヤマ」、「バイトのコーメイくん」、「アンモラル・カスタマイズZ」(いずれも2012年)、「ニコニコはんしょくアクマ」(2013年)、「負ける技術」(2014年)、Web連載漫画「ヤリへん」(2015年)など切れ味鋭い作品を次々と生み出す。連載作品「やわらかい。課長起田総司」単行本は1~2巻まで発売中。10月15日にエッセイ「負ける技術」文庫版を発売した。「兼業まんがクリエイター・カレー沢薫の日常と退廃」、次回は2016年2月23日(火)掲載予定です。
2016年02月16日猫を愛する人は職業もさまざま。漫画家のいくえみ綾さんも大の愛猫家のひとり。猫愛炸裂マンガ『そろえてちょうだい?』にも登場する“いくえみニャンコ”の愛らしすぎる生態を紹介します。「何をするわけでもなく、一緒にまったりしていられる時、とても幸せな気分になります」と、猫との生活について語る漫画家のいくえみ綾さん。現在は北海道の家で5匹と暮らしている。家猫のみならず外猫もかわいがるいくえみさんが関係した猫は数知れず。猫と仲良くするコツは?「急な動きはしない。必要以上に大きな音を立てないことも大事。あと個別に『かわいいね攻撃』を日々繰り出していますね」早速、いくえみさんを魅了する、愛すべきにゃんこたちをご紹介。■ブン(♂ 8歳)「心の狭い甘えん坊。過ぎたことはすぐ忘れます」(いくえみさん)。『そろえてちょうだい?』のタイトルはブンの揃った前髪のような模様が由来。マンガのセンター的ポジションの猫。■きなこ(♀ 12歳)「ほかの猫にまったく興味ナシ。自分の幸せが一番!とにかく抱かれたい&くっつきたいタイプ」。ブンが家に来た2か月後、近所をウロウロしているところを家に招き入れ、晴れて家族に。■ロン(♀ 4歳)「運動神経抜群で賢い!コカブをつけ狙ってはいじめ倒す。甘え上手で、私のストーカー」。ロシアンブルーのようだけど、ただのグレーのクセ毛さん。■コカブ(♂ 2歳)「甘えん坊で小心者。ロンにいつもイジられています。要領の悪いおバカさん加減がまたかわいい!」。元は外猫。里親探しをしていたけど、いつのまにかいくえみニャンコに。■ヒゲちゃん(♂ 5歳)いくえみ家のニューフェイス。「猫があまり好きじゃないみたいです…。遊び好き。お腹がすくとすぐ『ごは~ん』と鳴きます」。立派なアゴ髭があるから、ヒゲちゃんと命名された。◇いくえみ・りょう「潔く柔く」「プリンシパル」…独特な世界観と、繊細な人物描写で人気を集める漫画家。いくえみ漫画に登場するリアルで色気のある男子はファンから“いくえみ男子”と呼ばれている。◇『そろえてちょうだい?』猫まみれな生活をユモラスに描いた人気シリーズ。3/8に待望の第4巻が発売。『そろえてちょうだい?』(1巻¥843、2~4巻 各¥864*税込み祥伝社)※『anan』2016年2月17日号より。写真・山越昭仁(C)いくえみ綾/祥伝社
2016年02月16日京都府・烏丸御池の「京都国際マンガミュージアム」では、漫画家・望月三起也氏の代表作「ワイルド7(セブン)」の原画を展示する「望月三起也漫画家デビュー55周年記念!『ワイルド7』原画展」を開催する。会期は1月14日~2月9日(水曜休館)。開館時間は10:00~18:00(最終入館は17:30)。場所は同ミュージアム 1Fエントランス。観覧料は無料(ただし、マンガミュージアム入場料として大人800円、中高生300円、小学生100円が別途必要)。同展は、巨匠・望月三起也氏の漫画家デビュー55周年を記念して、同氏の代表作である「ワイルド7(セブン)」の「少年キング」連載時および単行本に使用した原画16点が初公開されるほか、「ワイルド7」限定オリジナル複製原画も初展示されるという。また、同館ミュージアムショップでは、「ワイルド7」限定オリジナルプリントシリーズ 全7種複製原画(小全紙サイズ660×505mm、望月三起也氏の直筆サイン入り、専用箱入り)が、各200部ずつ限定販売されるということだ。価格は、作品No.1~5(連載漫画原画および背表紙複製)が額あり:各5万4,000円、額なし:各4万3,200円。作品No.6~7(描き下ろし原画複製)が額あり:各7万5,600円、額なし:各6万4,800円。なお、望月三起也氏は1938年、神奈川県生まれ。1960年「少年クラブ増刊号」にて「特ダネを追え」でデビュー。1964年「少年キング」にて「秘密探偵 JA」を連載。大ヒットとなりその後数多くの作品を少年誌に発表。1969年からは「ワイルド7」を足かけ11年に亘って連載。単行本は増刷を重ね、その合計は800万部を超える。主な著作は「秘密探偵JA」、「最前線」、「ケネディ騎士団」、「狂い犬(マッドドッグ)シリーズ」、「ワイルド7」、「夜明けのマッキー」、「俺の新選組」、「優しい鷲 JJ」、「新ワイルド7」、「続・新ワイルド7」、「飛葉」、「ワイルド7R」など。
2016年01月12日今回のテーマは「兼業漫画家がはじめてコラムを書いた日」である。私は現在、このように漫画家の傍ら文章の仕事もさせてもらっているが、そもそもコラムを書き始めたきっかけはなんだったのか、という話だ。○コラムニスト・カレー沢薫の誕生簡単に言えば、私を漫画家デビューさせた週刊モーニング初代担当が、私のブログなどを見て「文章も面白いからコラムの連載をしてはどうか」と言い出したのが始まりである。それを真に受けて、連載用のコラムを書き貯め始めたのだが、それから1年ぐらい経っても連載は始まらなかった。その頃にはコラムを書くのは止めて、サバイバルナイフを研ぎ、色とりどりの重火器を集めることに終始していたのだが、それが担当に向かって火を噴く前に、その後任の担当の尽力により初コラム連載がスタートした。(今もモーニングはこの二人が担当である)そこから、他のところでも文章の仕事がもらえるようになった、というわけだ。つまり漫画家になれたのもライターになれたのも、全部モーニング担当らのおかげ、ということだ。ならば平素から「担当殺す」などとうそぶくのは恩知らずも良いところではないかと思われるかもしれないが、私は担当に対し感謝すべきことは非常に感謝しており、ポイントにすると5億点ほど感謝している。しかし殺意ポイントが2兆点あるので、トータルで「殺す」という結論になっているだけである。性格と顔が100点満点のイケメンでも、年収ゼロ・借金100万なら結婚相手としてはマイナス99万9千8百点になるのと同じである。何事もトータルが肝心なのだ。作家と担当の軋轢と言えば、担当に原稿を紛失された、無断使用された、原稿料を横領された、追及したら逆切れされたなど、全く笑えないものも散見される。それに比べれば私の担当がしたことなど全く大したことではなく、むしろ私の逆恨みであることも多いだろう。そして何より、私の担当はこちらが苦言を呈すれば言い訳せずに謝罪してくれるし、刺せば血が出ると思うので、それだけでも有能だ。また、今まで担当に横柄な態度を取られたこともない。不真面目な担当は一人もおらず、真面目すぎてふざけているより性質が悪い人ばかりだ。このように、私は漫画の才能には恵まれなかった分、担当には非常に恵まれている。担当全員を生贄に捧げるので、神は今すぐ私に漫画の才能を授けてほしい。○カレー沢氏のJK時代と「褒め仲間」コラムの仕事を始めたきっかけは、漫画の担当が私に文章の才能を見出したという幻覚症状のおかげだったわけだが、そもそも文章を書き始めたのはいつからかというと、古くは高校生の時に始めたホームページからだと思う。ホームページの内容に関してはもはや説明いらずの「乙女ゲーの二次創作サイト」だが、そこで日記も書いていたのだ。書いている内容は多分今と大差ないと思うが、そこはJKである。顔文字を使ったり、笑って欲しいところではフォントを赤字特大にしたり、語尾に(爆)をつけたりと、今読み返したらリアルに(爆)するものであることは間違いない。当時もその日記を「面白い」と言ってくれる人がいたため、漫画と並行して文章も書き続けてきたのだと思う。しかし、皆さんも「どう見てもカワイくない女同士がお互いを『カワイイカワイイ』と褒め合っている怪奇現象」を1度は見たことがあると思うが、アマチュア創作界隈にも同じ文化がある。自分の作品を読んでもらい、褒めてもらうために、まず相手の作品を読み褒めるのだ。何もしなくても褒めてもらえる上手い人ならともかく、そうでもない者にとってこの褒め仲間というのは大切なものであり、ギブアンドテイクとしては実に正しい。よって、日記を褒められたと言っても、「カレー沢殿!昨夜うpされた新作イラスト爆萌えでござったぞ(核爆)」「いやいやエリザベス閣下(仮名)の裏創作もドチャシコで拙者続きを全裸待機(><)」みたいな褒め合いの中で、「しかしカレー沢殿は日記も面白いでござるな、それがし噴飯ものの腹筋崩壊で候!」みたいなノリで言われた可能性が高く、端的に言えば「そんなに面白くないけどギブアンドテイクのために言った」か、むしろ肝心の二次創作に褒めるところがなかったので、苦し紛れにそこを褒めたと考える方が妥当である。しかし、現に私はそれを真に受けて、漫画だけでなく文章を書き続けていたわけである。そもそも絵を描き始めたのだって、小学二年生の時に絵画コンクールで特選を取り、すごく褒められたため、自分には絵の才能があると錯覚したためだ。教育に携わる方は、「褒めて伸びるタイプもいるが、褒めることによりドンドン道を踏み外す奴もいる」ということをご留意いただければ幸いである。ちなみに担当が面白いと言ってくれたブログだが、ニートだったため、アフィリエイトで稼ぐためにやっていたものである。原動力は常に金と承認欲求、これだけは一貫してブレていない。<作者プロフィール>カレー沢薫漫画家・コラムニスト。1982年生まれ。会社員として働きながら二足のわらじで執筆活動を行う。デビュー作「クレムリン」(2009年)以降、「国家の猫ムラヤマ」、「バイトのコーメイくん」、「アンモラル・カスタマイズZ」(いずれも2012年)、「ニコニコはんしょくアクマ」(2013年)、「負ける技術」(2014年)、Web連載漫画「ヤリへん」(2015年)など切れ味鋭い作品を次々と生み出す。連載作品「やわらかい。課長起田総司」単行本は1~2巻まで発売中。10月15日にエッセイ「負ける技術」文庫版を発売した。「兼業まんがクリエイター・カレー沢薫の日常と退廃」、次回は2016年1月12日(火)掲載予定です。
2016年01月05日11月30日、93歳でこの世を去った漫画家・水木しげる。この度、フジテレビにて水木さん追悼特別番組として、ウエンツ瑛士が主人公を務めた実写映画『ゲゲゲの鬼太郎 千年呪い歌』が12月4日(金)21時より放送されることが決定した。「ゲゲゲの鬼太郎」をはじめ「河童の三平」「悪魔くん」など日本漫画界への多大なる功績を残してきた水木さん。中でも「ゲゲゲの鬼太郎」は1968年にアニメ化されてから度々アニメ版が制作され、さらにテレビドラマや映画など様々な形で幅広く愛されてきた。今回放送されるのは、「ゲゲゲの鬼太郎」をウエンツさんを主人公に迎えた2008年公開の実写映画『ゲゲゲの鬼太郎 千年呪い歌』。物語は、小雨の降る夜に“かごめの歌”を聴いてしまった若い女性が失踪する怪事件が連続して発生するところから始まる。その事件に巻き込まれてしまった一人、女子高生の楓(北乃きい)とともに謎の解明に乗り出す鬼太郎(ウエンツ瑛士)。千年の時を経て蘇った悪霊の呪いが原因であることを突き止める。その呪いを封印するための儀式には古の楽器が必要なことから、鬼太郎と仲間たちは古地図に記された場所、“天”“地”“海”へと手分けして向かう。楓にかけられた呪いの期限が迫る中、呪いに秘められた驚くべき真実が次第に明らかとなっていくが…。実写映画シリーズ2作目となった本作には、前作から引き続き、鬼太郎役のウエンツさんや、猫娘役に田中麗奈、ねずみ男役に大泉洋、砂かけ婆役に室井滋、子なき爺役に間寛平、一反木綿の声に柳沢慎吾、ぬり壁の声に伊集院光、目玉おやじの声に1968年のTVアニメシリーズから同役を担当してきた田の中勇らが集結。さらに、物語のカギを握るヒロインを北乃きいが、ぬらりひょん役を緒形拳が演じており、緒形さんにとっては本作が遺作となる。また、本来放送が予定されていた桐谷美玲主演「アンダーウェア」は関東地区では12月5日(土)15時5分より放送予定。金曜プレミアム「水木しげるさん追悼特別番組映画『ゲゲゲの鬼太郎 千年呪い歌』」は12月4日(金)21時より放送。(text:cinemacafe.net)
2015年12月04日11月30日、93歳でこの世を去った漫画家・水木しげる。この度、水木さんの逝去を偲んで、向井理、松下奈緒ら豪華俳優陣を迎えて放送されたNHK連続テレビ小説「ゲゲゲの女房」の総集編(全3回)が再放送されることが決定した。水木さんの妻・武良布枝の著書「ゲゲゲの女房」を原案に、本作が連続テレビ小説初出演となった松下さん、向井さんをはじめ、竹下景子、松坂慶子、野際陽子、大杉漣、杉浦太陽、風間杜夫、有森也実など豪華俳優陣を迎えて映像化されたドラマ「ゲゲゲの女房」。原案者夫妻が生活する東京都調布市をメイン舞台に、好きなマンガに命懸けで打ち込む夫を支え、おおらかに、そして朗らやかに生きていくヒロインとその家族を描いた昭和の青春物語は、社会現象をも巻き起こす大きな反響を呼び、主題歌を担当した「いきものがかり」の「ありがとう」は空前の大ヒット、松下さんは2010年の「NHK紅白歌合戦」にて司会を務めた。連続テレビ小説としては82作品目であり、2010年3月29日から9月25日まで26週、全156回にわたり放送された本作を、全3回にまとめた総集編の再放送が決定。第1回「旅立ちの風」を12月5日(土)16時40分より、第2回「来るべき時が来た」は12月12日(土)16時05分より、第3回「ありがとう」は12月13日(日)16時05分より、それぞれ放送される。(text:cinemacafe.net)
2015年12月02日今回のテーマは、「兼業漫画家からの、漫画家志望者へのアドバイス」である。前のコラムにも書いたが、私は同業者とあまり関わりたくないと思っている。現時点で売れている作家なら当然ねたむし、出会った時はそうでもなかった作家がその後売れたら、「あの時利き腕を折っておけばこんなことには」と一生後悔するからだ。まだ会ったこともない作家のサクセス情報なら一日下痢嘔吐に苦しむ程度で済むので、あえて面識を作る必要はないと考えるのは当然だろう。だが、それ以上に関わりたくないのは漫画家志望の人間(以下、漫画家志望者とする)だ。○カレー沢氏が漫画家志望と断固として交流しない理由漫画家志望者に会うと、おそらく私のアドバイスなど1ミリも欲しいと思っていないだろうに、「どうやったら漫画家になれますか」などと社交辞令的に聞いてくるのだ。こちらも、相手がまだ漫画家になっていないことに油断して、「漫画家になるのは大変だよー。まあなってからの方が大変なんだけどね(笑)」と、ついついアドバイス風の苦労自慢をしてしまったりする。しかし、そう答えた相手がその後漫画家になって、デビュー作から大ヒットを飛ばしでもしたら、「あの時、今すぐ投稿作を燃やして公務員を目指せとアドバイスしておけば…」などと、一生後悔するはめになるのだ。漫画の世界のみならず、先輩風を吹かした相手がやすやすと自分を越えるというのはきついことなのである。私がどれだけ忙しくてもアシスタントを雇わないのも、アシスタントというのは漫画家志望者が多いため、自分のところへ手伝いに来た人間が、その後成功したら嫌だからである。もしそうなったら、「あの時、私の部屋から一生出さなければ良かった」と後悔しなければならない。よって、どうしてもアシスタントを使わなければいけなくなった場合は、漁師とか、漫画とは全然関係ない分野の人間を連れてこようと思う。もちろん、作画能力などなくていい。背景に極太サインペンでサバの絵とかを好きに描いてくれれば、それで構わない。そのぐらい漫画家志望とは関わりたくない。砂漠で遭難している時、向かいから漫画家志望者と、エナメルのホットパンツにサスペンダーのオッサンがやってきたとしたら、迷わずオッサンに助けを求める。漫画家志望に関わると、その後「あの時砂漠で死んでいれば良かった」と思うような目に遭うからだ。○兼業漫画家が絞り出した志望者へのアドバイスしかし、今回は先月行ったお題募集キャンペーン経由で、「兼業漫画家から、漫画家志望へのアドバイス」というテーマが来てしまった。だが、どうせアドバイスを求めるなら、「兼業」漫画家より「専業」漫画家に聞いたほうが良くないだろうか。社会人としての心構えを聞きたいなら、バイトをふたつかけもちしているフリーターより正社員に聞いた方が良いのと同じだ。それに、アドバイスというのは基本的に成功者に聞くものではないだろうか。明らかに成功していない人間に「成功の秘訣は?」と聞いても、答えの代わりにパンチが返ってくるだけだろう。確かに、成功するために失敗談を聞くことも大切だ。しかし、それは「なんで失敗したかわかっている奴」に聞かなければ意味がない。私など、「失敗した」ことはわかっているが、「何で失敗したか」についてはいまだにわかっていないので、どうしたらいいかもわからないままなのである。仮に家が全焼してしまったとして、その原因は「自分が室内でたき火をしたこと」ではなく、「消防車が来るのが遅かったから」だと思っている奴は、また家を全焼させるに決まっているのである。もしかして、「自分も兼業漫画家になりたい」という人へのアドバイスが欲しいという話なのかもしれないが、だとしたら最初から志が低すぎやしないかと思う。もうその時点でサクセスの臭いがしない。とはいえ、漫画家として成功したいなら保険は捨てて漫画に専念しろと言うのも無責任である。「バンジージャンプをするのにヒモをつけるなんて、ただの甘え」と言っているようなものだ。それで激突死しても、飛んだ人間が自分の手でヒモを外したのなら、誰も責任をとりはしない。サクセスにはハングリー精神が必要とは言うが、電気、水を止められ、しょうゆをかけたティッシュを噛んでいる状態で人を楽しませる漫画が描けるかというと、おそらく描けないと思う。だから私は、漫画家を目指すなら、「漫画がダメでもなんとかなる保険を持つこと」、もしくは「石油王になってから漫画家を目指すこと」を推奨している。こうアドバイスした相手が本当に石油王になった上に漫画家になって成功したら、「いっそあの時息の根を止めておけば良かった」と思うだろう。だが、そういう人は私が何も言わなくても、石油王兼漫画家になるものである。ここまで色々と(主に漫画家志望者と関わり合いになりたくないという意志について)語ってきたが、実際に漫画家や仕事関係者が集う場にいくことはほぼない。というか、意図的に避けている。そのため、漫画家志望者に遭うことはほぼないのだが、もしどうしても漫画家志望者に何か言わなければいけなくなったら、「君は漫画家になれる、そして売れる」と言おうと思う。こう言っておけば、本当に売れたら「予想通り」と己を納得させることができるし、漫画家になることができなかったり、なったけど売れなかったりしたら、単純に「やったー!」と喜ぶことが可能となるからだ。カレー沢薫漫画家・コラムニスト。1982年生まれ。会社員として働きながら二足のわらじで執筆活動を行う。デビュー作「クレムリン」(2009年)以降、「国家の猫ムラヤマ」、「バイトのコーメイくん」、「アンモラル・カスタマイズZ」(いずれも2012年)、「ニコニコはんしょくアクマ」(2013年)、「負ける技術」(2014年)、Web連載漫画「ヤリへん」(2015年)など切れ味鋭い作品を次々と生み出す。連載作品「やわらかい。課長起田総司」単行本は1~2巻まで発売中。10月15日にエッセイ「負ける技術」文庫版を発売した。「兼業まんがクリエイター・カレー沢薫の日常と退廃」、次回は11月3日(火)昼掲載予定です。
2015年10月27日タムくんの愛称でおなじみの漫画家でアーティストの、ウィスット・ポンニミット氏の展覧会「REFRESH! Mamuang」が、六本木ヒルズで2015年11月13日~12月13日に開催。「リフレッシュ! マムアン」をテーマに新作のドローイング作品と版画作品がお目見えする。タイ、日本を始めアジアで人気のタムくんことウィスット・ポンニミット氏ウィスット・ポンニミット氏は1976年バンコク生まれの漫画家でアーティスト。「タムくん」の愛称で親しまれている。2003年~2006年に神戸に在住経験があり、この間にキャラクター「Mamuang(マムアンちゃん)」を生み出した。この「マムアン」シリーズの他、『ブランコ』(小学館)、『ヒーシーイット』 (ナナロク社)などの多数の漫画作品を日本で出版。2009年には『ヒーシーイットアクア』が文化庁メディア芸術祭マンガ部門奨励賞受賞した。アニメーションや音楽制作も行い、音楽作品に原田郁子との共作「Baan」なども。「マムアン」はタイ語でマンゴー!今回展示されるキャラクター「マムアンちゃん」は、愛らしい素直な女の子。頭の形がマンゴーに似ていることから、タイ語でマンゴーの意味のMamuang(マムアン)がネーミングの由来。LINEスタンプやファッションブラントどのコラボレーションをしたり、雑誌「BIG ISSUE」や「翼の王国」で連載をしたりと、日本でも人気のキャラクターだ。ライブドローイングやトークショーも開催予定会期中には、ウィスット・ポンニミット氏による来場者を描くライブドローイングや、女優・臼田あさ美さんとのトークライブも予定。この機会に、マムアンちゃんの温かくて優しい世界感、さらにはタムくんの人柄にも触れてみてはいかがだろうか。ウィスット・ポンニミット展覧会「REFRESH! MAMUANG」(リフレッシュ!マムアン)【日 時】2015 年11 月13 日(金)~12月13日(日)12:00~20:00会期中無休※11/15 15:00-17:00はトークイベント開催のため会場内の作品観覧は不可。【会 場】六本木ヒルズ A/D ギャラリー(六本木ヒルズウエストウォーク3F 六本木ヒルズアート&デザインストア内 03-6406-6875)【参 加 費】 無料【主 催】森ビル株式会社 森美術館 森アーツセンターミュージアムショップ【後援】タイ王国大使館【オープニングパーティー】 11月13日(金)18:00~20:00【イベント】■ドローイングマムアン!タムくんがご来場のお客様を描くライブドローイング。自由観覧。11月13日 (金) 16:00-18:0014日 (土) 12:30-14:3015日 (日) 12:30-14:30■マムアンちゃんTALK!タムくんと女優・臼田あさ美さんによるトークイベント。11月15日 (日) 開場 15:00 開演15:30参加ご希望の方は下記アドレスにメールで申し込み。11月5日 (木) 締切。抽選の上、11月8日(木)までにご当選者のみに連絡。ad_gallery@macmuseumshop.com件名「マムアンちゃんTALK!」観覧希望・名前(複数名の場合、全員の名前)・電話番号(日中連絡のつく連絡先)イベントの詳細は六本木ヒルズ A/D ギャラリー(03-6406-6875)、または作家ウェブサイトへ
2015年10月26日デザイナーの悲哀をリアルに描いた人気連載「デザイナー哀の劇場」「デザイナー哀の劇場R」を生み出した漫画家・まずりんさん。漫画原稿の作成はこれまでIntuos5、いわゆる「板」のペンタブレットで行ってきたといいます。周囲の同業者たちの多くが「液晶ペンタブレット」を導入していると知ったまずりんさんですが、漫画の制作がラクになるなら使ってみたい!と思ったものの、慣れたペンタブレットからの移行は、連載を抱えている中ではなかなか厳しい……。そう思っていたところ、「レクチャーしますので、試しに触ってみませんか?」とワコム社からのお誘いが。そんなこんなで液晶ペンタブレットに初挑戦するまずりんさんの様子を、「デザイナー哀の劇場」の哀ちゃん&アデ子さんがレポートします!○登場人物前回のあらすじ:これまでペンタブレットで漫画を描いてきたまずりんさんが、ワコム東京本社ではじめての液晶ペンタブレットに挑戦。これから先の連載のことを考え始めたまずりんさんに、(連載終了している作品に出ている)アデ子さんはご機嫌ななめ。そんなアデ子さんをなぐさめるために、まずりんさんが液晶ペンタブレットで渾身のアデ子さん像を描いたことで場は収まりましたが、どうもそろそろ最終回ということで…?~ワコムの会議室の中~~完~
2015年10月22日今回のテーマは、「前(昔)の方が良かった」という心無い発言と、それに対する対処についてである。○漫画家の「絵の変化」と「ファンの反応」何年も漫画を描き続けていると絵も内容も変わってきてしまうもので、ファンの中にはその変化を良しとしない人もいる。「アンチは最大のファン」と言うが逆もまたしかりで、それまで好意的だった人が、手のひらを返したように批判的になることもある。 別の業界の例でいえば、好きなアイドルの熱愛が発覚した途端、山ほど買ったCDやDVDを木材粉砕機にかけて海に撒いてしまったりすることもある。好きだった分、「裏切られた」という気持ちが大きいのだろう。自分の意にそぐわなくなったものは全て「劣化だ」だと言うのはいささか乱暴だと感じるが、変化に対して「前の方が良かった」と思うのは仕方ないし、自由である。とは思っているものの、直接「前の方が良かった」と言われたりすると、正直なところ暴力で黙らせたくなる。非力な私でも、遠くから攻撃できる武器を入手すればイケるはずだ。吹き矢つきのドローンの登場を心待ちにしている。しかし、法治国家の国民として、物理的な攻撃を行うのはあまり好ましいことではない。よって、暴力は抜きで、「前のほうが良かった」と言われた時のスマートな対処法を考えてみる。「前の方が(略)」と言われた作家は、くわえていた葉巻を灰皿に押し付け、「これが今のオレのベストだ。それに君がついて来られなかったと言うなら、残念だが仕方がない」と細い煙を吐きながら言い残し、マントを翻しながら読者に背を向け颯爽と去ることで、穏便に場を収めることができるだろう。これが、己の作品に自信とプライドを持った一般的な作家の態度である。では、私が「前の方が(略)」と言われてどうするかというと、「今すぐ前の作風に戻すから、ファンを辞めないでくれ」と言う。実を言うと、「お前らに言われなくても、俺が一番前の方が良かったんじゃないかと思っている」のである。現に、数字の上でもデビュー作が一番売れているため、一刻も早く初期の作風に戻すべきだとさえ考えている。しかし、はっきり言ってしまえば、作風というのは「前のものに戻そう」と思って戻せるものではないのである。アラフォー女が「ハタチのころの方が良かったから、ハタチに戻る」と言ったところで戻れないのと同じである。20代の頃の発想力を取り戻すのはもちろん無理だし、絵に関しても、当時の絵をマネして描いたとしても、場数を踏んだことで変に小手先の技術が上がってしまっているため、「デビュー作の劣化コピー」などという凄惨な評価を受けることになりかねない。今思えば、初代担当の「絵は上手くならなくていい」というアドバイスは、かなり的を射ていた助言だったのかもしれない。だが内容はともかく、少なくとも絵は描いていくうちに変わっていってしまうものだ。急に絵を上手くすることはできないが、急に下手にすることもできない。わざと下手に描いても、読者には見透かされてしまうだろう。そのため、わざとらしくなく、絵を当時のレベルに戻そうとしたら利き手を負傷するしかない。毎回ブレが出てはいけないので、連載中は常に一定のレベルで利き手を負傷する必要がある。軽すぎてもいけないし、勢い余って骨を折ったり、作家生命を絶ってしまったりしてもダメだ。○連載漫画が「迷走」する”しくみ”しかし、昔に固執しても先がないというのも確かだ。デビュー時の方が売れていたと言っても、それは今が「極端に売れてない」からであり、それに比べれば「普通に売れてない」デビュー作の方がマシだった、というだけだ。では、今のままではダメだと思った作家が何をするかというと、とりあえず今の作品には無い要素を取り入れようとするだろう、それは「美少女」だったり「イケメン」だったり、はたまた「パンチラ」だったりするが、こうした行いこそが、既存読者に「前の方が良かった」と言われてしまう一番の原因なのだ。何せ作家も試行錯誤の段階であるから、要素の追加が正しい判断だったのかは分からない。そこで読者に「前の方が良かった」と言われてしまったら、「やっぱそうっスよね、自分もそう思ってました!」と、慌てて前に戻そうとしてしまったりする。だが、その時点ですでに「美少女」や「イケメン」、「パンチラ」は作中に登場してしまっているため、そこからまた前に戻そうとすると、まさに「迷走」という言葉がぴったりな惨状になってしまうのだ。やはり商業漫画というのは人気商売なので、「読者の意見は気にせず。自分の信じる物を描く」というのは、余程の自信と鉄の意志がなければ不可能なのである。では、変に新しいことに挑戦などせず、同じ物をずっと描きつづけていれば問題なかったのかと言うと、それはそれで、絶対に「飽きた」と言う人間が出てくるのだ。漫画家でも芸能人でも、人気商売で世に出ている以上、ガタガタ言われる運命なのである、全くガタガタ言われなかったら、誰もそいつのことを知らないだけだ。なので、「前のほうが良かった」という感想に限らず、作風について何か言われた時の対処法は「とにかく落ち着く」ことである。まず仕事場の窓を開け、シーブリーズを裸の胸にパーンと一発叩きつけ、ここは六本木ヒルズの最上階で、自分はIT企業の若き社長だと思うようにしている。IT企業の社長はシーブリーズを使わないかもしれないが、それだけクールになれということだ。確かに「前の方が良かった」と思っている人はいるだろうが、その意見一つで読者全員がそう思っていると思いこんでしまったり、焦るあまり描きかけの原稿に意味のないパンチラを入れてしまったりしてはいけない、ということである。逆に、読者は悪意がなくても「前の方が良かった」と作家に言わない方が良い。私のように病み気味の作家の場合、勢いあまって利き腕を負傷しに手近な車道に飛び出したり、あるいは吹き矢付きドローンを読者めがけて発進させたりするからだ。カレー沢薫漫画家・コラムニスト。1982年生まれ。会社員として働きながら二足のわらじで執筆活動を行う。デビュー作「クレムリン」(2009年)以降、「国家の猫ムラヤマ」、「バイトのコーメイくん」、「アンモラル・カスタマイズZ」(いずれも2012年)、「ニコニコはんしょくアクマ」(2013年)、「負ける技術」(2014年)など切れ味鋭い作品を次々と生み出す。連載作品「やわらかい。課長起田総司」単行本は1~2巻まで発売中、9月18日よりWeb連載漫画「ヤリへん」を公開開始。「兼業まんがクリエイター・カレー沢薫の日常と退廃」、次回は10月20日(火)昼掲載予定です。
2015年10月13日デザイナーの悲哀をリアルに描いた人気連載「デザイナー哀の劇場」「デザイナー哀の劇場R」を生み出した漫画家・まずりんさん。漫画原稿の作成はこれまでIntuos5、いわゆる「板」のペンタブレットで行ってきたといいます。周囲の同業者たちの多くが「液晶ペンタブレット」を導入していると知ったまずりんさんですが、漫画の制作がラクになるなら使ってみたい!と思ったものの、慣れたペンタブレットからの移行は、連載を抱えている中ではなかなか厳しい……。そう思っていたところ、「レクチャーしますので、試しに触ってみませんか?」とワコム社からのお誘いが。そんなこんなで液晶ペンタブレットに初挑戦するまずりんさんの様子を、「デザイナー哀の劇場」の哀ちゃん&アデ子さんがレポートします!○登場人物前回のあらすじ:これまでペンタブレットで漫画を描いてきたまずりんさんが、ワコム東京本社ではじめての液晶ペンタブレットに挑戦。ペン先のちょっとしたズレが気になったまずりんさん、哀ちゃんのアドバイスで調整し直して、使いやすい状態に。ようやく本題のイラスト描画に突入か?~ワコムの会議室の中~~15分後~次回はいよいよ最終回。お楽しみに!
2015年09月24日今回のテーマは「作業中の飲み物」についてである。○兼業漫画家にとっての「神の雫」基本的には水を飲んでいる、もちろん、ミネラルウォーターなどというしゃらくさい物は飲んでいない。まじりっ気なし100%の水道水だ。冬はストレート。夏はそのままだとぬるいので、これまた同じ水道水で作った氷でロックとシャレこむ。原料が同じなだけに、実に親和性が高い仕上がりとなっている。私にとっての神の雫だ。なぜ水道水を飲むのかというと、まず蛇口をひねれば出てくる、というところが大きい。やれ自動販売機だのコンビニだのにわざわざ出向いて飲料を買い求めていては、その間に干からびて死ぬおそれがある。人間の体は6~7割が水分なのだ。水分補給は常に一刻を争い、一秒の遅れが死を招く。もちろん自宅で麦茶を作るなどもってのほかであり、作っている間に確実に手遅れになるに決まっている。このように平日は大体水道水を飲んでいるが、休日は趣向を変える。休日と言っても会社が休みなだけであり、逆に言えば「長時間原稿を描く日」である。長丁場を耐え抜くための飲み物を摂取せねばならない。まず、一番多く飲むのがコーヒーだ。コーヒーが好きかと言われたら、正直そんなに好きではなく、ただ苦いと思う。しかし、ここでミルクココアなどを淹れてしまったら「甘~い!うま~い!もう一杯!」とか言って3秒で飲み干すに決まっている。あくまで作業中の飲み物だ、まんじりと減らないぐらいでちょうどいい。コーヒーを飲むのは、もちろんその眠気覚まし機能に期待しているからだ。あまりに期待しすぎて、村上春樹が言うところの「新聞紙を煮たようなコーヒー」を作ってしまうほどだ。とにかく濃すぎてコーヒーなのになぜかトロみがついている、もはやコーヒーというよりドブと形容していい一品である。日曜の朝から一日中ドブをすすりながら漫画を描く姿はスタイリッシュさの欠片もないので、もっとスマートにコーヒーの粉だけ食べる、もしくは淹れたてのコーヒーを頭からロックに浴びるなどの検討が必要である。現代の漫画家の仕事風景はもっとクールでなくてはいけないのだ。○エナジードリンクのクールな"効能"現代と言えば、「エナジードリンク」もここ数年で台頭してきた飲み物だろう。コンビニに行けば、レッドブルを筆頭にたくさんのエナジードリンクが置かれている。昔からあるオロナミンCやリアルゴールドに似ているが、それよりは割高なので、おそらく成分も高いのだろう。私も、このエナジードリンクの類をたまに飲む。どういう時に飲むかと言うと、ここが山場とか、もうひと踏ん張りしたい時などではない。「忙しい自分がカッコ良くて仕方がない時」だ。日本には「忙しい自慢」という文化がある。「寝てない」「休みがない」などをさも自分が有能であるがゆえのことのように、自慢げに言うことだ。漫画を描く人間にもこの文化はあり、それがいわゆる「修羅場自慢」である。昨今の「修羅場自慢」はTwitterを使って行われることが多く、「締め切りまであと…3日!」、「白紙があと10Pもある」などとでつぶやいたり、「原稿をやれ」と言うbotの発言をリツイートした後「ひえええええ!」などとポストしてしまったりする行為を指す。Twitterをしている時点で忙しくないだろうと思われるかもしれないかもしれないが、「修羅場自慢」をする人(私も含む)は、本当に忙しくはあるのだと思う。ただ、どうせ忙しいなら、このオレの忙しい雄姿を見てくれという気にもなってしまい、その誘惑にはなかなか勝てないものだ。よって、SNSをやっていながら原稿の進捗には一切触れず、もちろん「修羅場自慢」をすることもなく、延々と食った飯など別の話をしている作家業の人を私は尊敬する。ともかく、「忙しい自慢」をするのに、エナジードリンクは最適のアイテムなのである。ただ「忙しい」と言うのではなく、「今日レッドブル3本目…」とコメントすると、かなりの忙しさが演出できる。ソークールだ。また、エナジードリンクの長所は飲みやすいところだ。ほとんどの物がジュースと変わらない味をしている。本当に本気を出したいなら、もっと高価な栄養ドリンクを飲めばいいのだが、あの手の物は高値になるほどまずいので飲みたくない。その点、レッドブルはジュースを飲むだけで「俺頑張っている感」が出せるので最高なのである。だが、それでも満足できないほど自意識がスパークした場合は「こんなまずいものを飲んで頑張る俺」という臥薪嘗胆ムードを出すために、ユンケルや眠々打破を投入する時もある。そうした時はもちろん、飲んだユンケルの写真つきでツイートする。ちなみに、エナジードリンクにしろ栄養ドリンクにしろ、それらの効果自体については良くわかっていない。とにかく自分のテンションが上がって、みんなに自分のガンバリを見せられればそれでいい。あとは、ちょっとイエローが濃い目の尿を出すためだとでも思っている。自分がエナジードリンクなどを飲む目的は上述したようなことだが、みんながみんなそうと言うわけではないし、実際にがんばっている人が飲んでいる場合もある。しかし、やっぱりそんなに頑張ってない奴も多く飲んでいるのがエナジードリンクと言う物であろう。だからこそ、それらを飲んでいる人を見ると、「頑張っているアピールに精が出ますな!」と肩を叩きたくなってしまうのだ。カレー沢薫漫画家・コラムニスト。1982年生まれ。会社員として働きながら二足のわらじで執筆活動を行う。デビュー作「クレムリン」(2009年)以降、「国家の猫ムラヤマ」、「バイトのコーメイくん」、「アンモラル・カスタマイズZ」(いずれも2012年)、「ニコニコはんしょくアクマ」(2013年)、「負ける技術」(2014年)など切れ味鋭い作品を次々と生み出す。連載作品「やわらかい。課長起田総司」単行本は1~2巻まで発売中。「兼業まんがクリエイター・カレー沢薫の日常と退廃」、次回は9月22日(火)昼掲載予定です。
2015年09月15日デザイナーの悲哀をリアルに描いた人気連載「デザイナー哀の劇場」「デザイナー哀の劇場R」を生み出した漫画家・まずりんさん。漫画原稿の作成はこれまでIntuos5、いわゆる「板」のペンタブレットで行ってきたといいます。周囲の同業者たちの多くが「液晶ペンタブレット」を導入していると知ったまずりんさんですが、漫画の制作がラクになるなら使ってみたい!と思ったものの、慣れたペンタブレットからの移行は、連載を抱えている中ではなかなか厳しい……。そう思っていたところ、「レクチャーしますので、試しに触ってみませんか?」とワコム社からのお誘いが。そんなこんなで液晶ペンタブレットに初挑戦するまずりんさんの様子を、「デザイナー哀の劇場」の哀ちゃん&アデ子さんがレポートします!○登場人物前回のあらすじ:これまでペンタブレットで漫画を描いてきたまずりんさんが、ワコム東京本社ではじめての液晶ペンタブレットに挑戦。コンパクトなOS入り機種「Cintiq Companion 2」のファンクションキーの活用を哀ちゃんから教わったものの、年上のまずりんさん&アデ子さんを逐一煽る小生意気な言い方に怒ったまずりんさんが、ついに作者の権力を振るって哀ちゃんの顔に落書きを! 液晶ペンタブレットになれてきて絶好調のまずりんさん、今回はついに作画完成なるか?~ワコムの会議室の中~次回は、Cintiq Companion 2を漫画家・まずりんさんが実際に使う想定で使う様子に迫ります!(のんびり待て!)
2015年08月21日今回のテーマは「タスク管理」についてである。○"やればできる"タスクを掲げる漫画家というのは、実はとてもタスク管理をしやすい職業だ。連載であれば毎月あるいは毎週、締め切り日というのは大体決まっている。今月はダーツで締め切りを決める、などということはまずない。中には、お盆進行、年末進行(盆暮れに印刷所か休みになるため、締め切りが前倒しになること。ネット連載でも同じような進行を求められることがあるが、それは編集が休むためのものなので無視していい)というイレギュラーもあるが、毎年盆と正月が来ることはわかりきったことなので問題はない…と言いたいのだが、毎年連休進行をやっているのに毎回忘れるのが、漫画家七不思議のひとつでもある。よって連載分に関しては、締め切り日に向けて何日までにネームを出す、何日までに完成稿を出すというルーティンをこなしていけば何の問題もないのだ。このように書くと、とても計画性がある生真面目な人間のように見えるかもしれない。だが、私が提出しているのは、もはや描いた本人ですらおもしろいかどうかわからなくなっている、締め切りを守っている以外は長所が見当たらない原稿である。「面白くて売れる漫画を締め切り内で描く方法」が知りたい場合は他を当たってほしい。では、具体的にどのように仕事を計画通り進めているかというと、とにかく1日でやることを決め、それを必ず実行するようにしている。つまり、「今日中にネームを描く」と決めたら、親が死んだとか、自分が死んだとか、よほどの事が起こらない限りは何を差し置いてでも描くのだ。もちろん、「モテたいから今日中に15歳若返って顔面をぱるるにする」というような目標は立ててはいけない。あくまでノルマは「やればできる」範囲にすることが重要である。逆に、やると決めたことは必ずやるが、それ以外のことはまったくしない。予想より早く終わったからといって、明日の仕事を前倒しでやるということはしない。たとえ他にやることがまったくなく、虚空を見つめるしかなかったとしても、仕事だけは絶対しない。つまり、「今日やること」を終えてしまえば後は自由時間であり、早く終わらせれば終わらせるほど、その時間は長くなる。なので毎日「よし、こいつを早くやっつけて思う存分虚空を見つめるぞ!」という高いモチベーションを持って仕事にあたることができるのだ。しかし、繰り返しになるが本当にやると決めた以外のことはやらない。それは原稿に限ったことだけではないので、「部屋の掃除」が一日のノルマに入ってない場合は、どんなに汚れていてもやらない。そのため、ゴミに囲まれて虚空を見つめているという、端から見れば「お前他にやることあるだろ」という状態になってしまうこともままある。これが怠けているのではなく「一日の戦いを終えた戦士の休息」であると理解されないのが、非常に残念なところだ。○先々のタスクが生む「無間地獄」早く終わったなら、次回のネタでも考えた方が後々楽になるのではないかと思われるかもしれないが、あんまり先のことを考えすぎるのも良くない。漫画家にとって一番つらいのは、志半ばで連載が打ち切りになってしまうことだが、その次につらいのが連載を続けることである。続けさせてもらえることがいかにありがたいことかはわかっているが、続けていく内にどうしてもネタ切れが起こる。そこを何とかひねりだして脱稿した後に「来月も同じことをしなきゃいけないんだよな」と思うと暗澹たる気持ちになるのだ。今回が早く終わったからと言って、次回、次々回のことまで考えていると、脳裏に「無間地獄」という言葉が浮かんでくる。結局漫画の連載も会社と同じで、続けなければいけない内は「会社爆発しねえかな」と思ってしまうのだ。もちろん、実際に爆発(打ち切り)したら困るのはわかっている。もし瓦礫と化した会社の前で小躍りしているやつがいたら本物のノイローゼであり、むしろそいつが爆破した本人であろう。つまり、「どうせ明日も行くんだから」と連日会社に泊まりこんだりはしないように、漫画の仕事もどこかで区切らないとエンドレスになってしまい、その内自宅を爆破してその前で踊り狂うことになる。次のことは、次の締め切りまでに考えればいいのだ。また、あまり先のことまで考えすぎると、担当編集から突然「あと3回で終われ」と言われたとして、まったく対処できないという事態も起こり得る。こちらがいくら完璧な計画を立てそれを実行していても、他人の都合でそれが狂う場合もある。漫画家の場合は「担当がネームの返事をなかなかよこさない」というのが一番多いのではないだろうか。担当のOKが出ないと作画には入れないし、独断で進めたあとに修正が入ったら完全な二度手間である。幸い、私の担当編集は一様に返事が早い、中には「お前本当に読んだのか?」と疑いたくなるようなスピードで「これで良いです」と返信してくる担当もいる。しかし、返事が早いのはこちらも助かるので「OKしてくれるなら読んでなくても良い」と考えている。この「必ずしも読む必要はない」というのは私の全作品に言えることなので、読者の皆さまもこの夏、私の本を読まなくていいから買ってみてはどうだろうか。カレー沢薫漫画家・コラムニスト。1982年生まれ。会社員として働きながら二足のわらじで執筆活動を行う。デビュー作「クレムリン」(2009年)以降、「国家の猫ムラヤマ」、「バイトのコーメイくん」、「アンモラル・カスタマイズZ」(いずれも2012年)、「ニコニコはんしょくアクマ」(2013年)、「負ける技術」(2014年)など切れ味鋭い作品を次々と生み出す。2015年2月下旬に最新作「やわらかい。課長起田総司」単行本第1巻が発売され、全国の書店およびWebストアにて展開されている。「兼業まんがクリエイター・カレー沢薫の日常と退廃」、次回は8月18日(火)昼掲載予定です。
2015年08月11日デザイナーの悲哀をリアルに描いた人気連載「デザイナー哀の劇場」「デザイナー哀の劇場R」を生み出した漫画家・まずりんさん。漫画原稿の作成はこれまでIntuos5、いわゆる「板」のペンタブレットで行ってきたといいます。周囲の同業者たちの多くが「液晶ペンタブレット」を導入していると知ったまずりんさんですが、漫画の制作がラクになるなら使ってみたい!と思ったものの、慣れたペンタブレットからの移行は、連載を抱えている中ではなかなか厳しい……。そう思っていたところ、「レクチャーしますので、試しに触ってみませんか?」とワコム社からのお誘いが。そんなこんなで液晶ペンタブレットに初挑戦するまずりんさんの様子を、「デザイナー哀の劇場」の哀ちゃん&アデ子さんがレポートします!○登場人物前回のあらすじ:これまでペンタブレットで漫画を描いてきたまずりんさんが、ワコム東京本社ではじめての液晶ペンタブレットに挑戦。コンパクトなOS入り機種「Cintiq Companion 2」に触れてから1時間足らずで、操作にも慣れてきた様子。試し書きにと描いてきたアデ子さんの顔も、いよいよ連載当時の美貌(?)に近づくのか…?~ワコムの会議室の中~次回は、Cintiq Companion 2はじめ、液晶ペンタブレットの見逃しがちな設定に注目します。乞うご期待!
2015年07月30日今回のテーマは「夏のレジャー」である。○漫画家ならではの「夏の風物詩」そう言われても、基本的に春夏秋冬、部屋から出ない。それに現在、すべての原稿を締切通りに終わらせていたら1カ月経っているし、それを12回やったら1年が終わっているという生活で、年々季節感というものがなくなってきている。去年は一応花火など見に行ったのだが、花火が始まるまでずっとスマホでエゴサーチしていたし、始まったら始まったで、花火の写真をTwitterにアップしてリプライ待ちし、その待ち時間の間エゴサーチをしていた。とにかくエゴサができない所には1秒たりとも行きたくないので、海などもっての他である、水中エゴサはエクストリームすぎるし、そもそもスマホがぶっ壊れる。よって、もはや「アイスが美味いのが夏」「甘いパンが美味いのが冬」「ペペロンチーノは年中美味い」というぐらいの基準しかないのだが、唯一漫画家だからこそ感じる夏というものがある。「液晶タブレットが猛烈に熱くなってきたら夏」なのである。これは当方が使っている機種が相当古いため余計にそう感じるのかもしれないが、 冗談ではなくアツアツの鉄板に長時間向かい合うのと変わらない状態になるため、ただ漫画を描いているだけの奴が、まるでお好み焼きを100枚焼いたかの様な姿になるのが、漫画家にとっての夏なのである。すべての作業をパソコンで行っているが故の弊害だが、出た汗が直に原稿を汚すことがないという点は、やはりデジタルの利点だ。○フルデジタルが起こした"漫画革命"常日頃から「パソコンで漫画を描ける時代じゃなかったら私は漫画家になれなかった」と言っているが、具体的にどうなれなかったかというと、まず汚損してない原稿を作れなかったと思う。漫画雑誌には多種多様な漫画が掲載されていて、私のようにどうかと思うぐらい絵が下手な作品だって載っていることもまれにある。しかし、余白に作者の指紋が縦横無尽についているという、個人情報丸出しな漫画に出くわしたことはおそらくないだろう。自分は何をするにも不器用で、集中力及び注意力がない。たとえば料理をしろと言えば、全身血まみれか火だるまになっているタイプなのであるが、そういう人間に液状であるインクを持たせると、3歳児に生卵を3パック持たせるのと同じぐらいの惨事が起きる。もちろん、汚すのは原稿だけではない。完成する頃には、実際にやったことはないが「Splatoon(スプラトゥーン)ってこんな感じかな?」という部屋ができ上がっているのである。それに、書き損じをしたとしてもデジタルなら簡単に消せるが、アナログだとホワイト(修正液)を用いて間違ったところを修正しなければいけない。しかし、こういう人間に間違ったところにだけホワイトを塗れというのも無理な相談なのである。消してはいけないところまで塗ってしまうのはもちろん、またしても原稿と言う枠を飛び越え、黒一色だったスプラトゥーン部屋に白が加わり、ますます喪に服しているような状態になってしまう。何度も間違いを犯し、繰り返しホワイトを塗るうちに、その部分だけ3Dな原稿ができるというハプニングも当然起こるだろう。さらに、それをカッターで削ろうとして原稿にでかい穴があくと言うのも想定の範囲内だ。作画以前に、枠線がうまく引けないという問題もある。私がデビューまで原稿を完成させたことがないというのは以前書いたが、大体の場合、枠線で挫折していた。まっすぐ直線を書くというのは案外難しく、4コマ漫画の枠線を書くだけでも徐々にズレて行き、最終的に「自分の人生か」というぐらい右肩下がりな枠ができたのは良い思い出だ。もちろん、その原稿は黒い指紋だらけだった。漫画作成ツールがいくら発達したと言っても、最終的には使う者の腕、というのは確かだ。しかし、「それ以前の問題」だった奴が、印刷できる程度の原稿を完成させることができるようになったというのは、革命と言わざるを得ない。それゆえに、本人がますます進歩できなくなったとも言えるが、仕事である以上使える物は使うべきである。こう書くといかにもデジタルが最高の手段であるように見えるかもしれない。確かに、デジタルであれば、書き損じなどは一瞬にして消してくれる。しかし、データそのものも一瞬で消してくれるというミラクルもたまに起こるし、停電やマシントラブルで手も足も出なくなることもしばしばだ。去年、液晶ペンタブレット(略して液タブ)がウンともスンとも言わなくなり、作業が完全にストップしてしまったことがある。締め切りがあるので、修理に出すなど悠長なことはしていられなかった。よって、約10万円ほどする新品の液タブを即決で購入するはめになってしまった。次の日、液タブは無事に届いたのだが、それが届いたと同時に、死んだはずの旧マシンが息を吹き返すという奇跡が起こった。全米が泣く展開だと思うので、映画化したいという方はご一報いただければと思う。このように、デジタルはデジタルでアナログ時代にはなかった危機管理をしなければいけないのである。ちなみに、その時死んだはずの液タブは今も現役で、今年の夏もその熱で私の顔面を焼いてくれている。カレー沢薫漫画家・コラムニスト。1982年生まれ。会社員として働きながら二足のわらじで執筆活動を行う。デビュー作「クレムリン」(2009年)以降、「国家の猫ムラヤマ」、「バイトのコーメイくん」、「アンモラル・カスタマイズZ」(いずれも2012年)、「ニコニコはんしょくアクマ」(2013年)、「負ける技術」(2014年)など切れ味鋭い作品を次々と生み出す。2015年2月下旬に最新作「やわらかい。課長起田総司」単行本第1巻が発売され、全国の書店およびWebストアにて展開されている。「兼業まんがクリエイター・カレー沢薫の日常と退廃」、次回は8月4日(火)昼掲載予定です。
2015年07月28日デザイナーの悲哀をリアルに描いた人気連載「デザイナー哀の劇場」「デザイナー哀の劇場R」を生み出した漫画家・まずりんさん。漫画原稿の作成はこれまでIntuos5、いわゆる「板」のペンタブレットで行ってきたといいます。周囲の同業者たちの多くが「液晶ペンタブレット」を導入していると知ったまずりんさんですが、漫画の制作がラクになるなら使ってみたい!と思ったものの、慣れたペンタブレットからの移行は、連載を抱えている中ではなかなか厳しい……。そう思っていたところ、「レクチャーしますので、試しに触ってみませんか?」とワコム社からのお誘いが。そんなこんなで液晶ペンタブレットに初挑戦するまずりんさんの様子を、「デザイナー哀の劇場」の哀ちゃん&アデ子さんがレポートします!○登場人物前回のあらすじ:ワコム東京本社でついに液晶ペンタブレット「Cintiq Companion 2」に触れたまずりんさん。数々の苦難(蛍光灯の映り込みや解像度設定)を乗り越えて、試しに描いてみたアデ子さんの顔が、連載当時とちょっと違う…? とにかく慣れようとトライするまずりんさんと応援する哀ちゃん、うなだれるアデ子さん。さて、今回はどうなる?~ワコムの会議室の中~次回はCintiq Companion 2に搭載されているファンクションキーに注目します。乞うご期待!
2015年07月15日今回のテーマは「親、兄弟、友人などが、兼業漫画家である自分をどう思っているか」についてだ。○漫画は妄想を加工した産物商業漫画と言うのは、「大勢の人に読まれてなんぼ」の世界だ。しかし商業作品と言えど漫画というのは元は個人の妄想であり、それを人様にも楽しんでもらえるように加工して、世に出しているにすぎない。そのため、人に見せる用だとしても、自分の妄想を近しい人に見せるというのは恥ずかしいもので、久しぶりに会った人などに「漫画いつも読んでるよ」などと言われたら、「今すぐやめろ」と言いたくなるのである。そもそも、私は自分から自分の漫画について話すことがほぼない。恥ずかしいから、というのもあるが、「明るい話題がゼロ」だからというのが最も大きい。私とて、漫画が上手くいっていれば、調子にのって今後の構想とかをベラベラ喋るだろうが、漫画家になってからこの方、調子に乗れる状況が一度もなかったし、年々それは悪化している。なので、周囲もそれを察して、私の漫画の話はしなくなった。すでに私が漫画家であることは話題ではなく地雷となっている。そうは言っても、友人知人ぐらいまでなら、私が漫画家をやっていることに関して、いい意味で面白がってくれていると思う。しかし、家族、特に自分の子どもが漫画家をやっている(もしくは漫画家を目指している)と言う状況は、親としては面白がってばかりはいられないと言うか、はっきり言って「笑えない」ものだったと思う。○カレー沢氏の進路選択6歳児が「将来は公務員になる」と言ったら、夢がないと親は心配するかもしれないが、実際は進路を決める段階になっても「漫画家になる」と言っているやつの方が、もっと悩みの種なのである。事実、95%が大学に行く高校に進学しておきながら、3者面談で「漫画家になるから、漫画専門学校に行く」と言い張る私は、親にとって相当の頭痛物件だったと思うし、私も当時のことを思いだすと、ロキソニンを箱食いしたくなる。その後も、若かりし頃の私は「漫画専門学校は諦めるが、大学進学はしたくない(受験勉強したくなかった)」とごね続けた上、「じゃあ、漫画家じゃなくてデザイナーになるわ」と親を煙に巻いて、グラフィックデザイン専門学校に進学することになった。このように、「漫画専門学校は反対されたので、とりあえずデザイン系学校に入った」という経歴を持つ人間は結構いるのだ。「漫画にくらべればデザイン業の方が安定している気がする」という錯覚を親に覚えさせ進学を許可させるという手管なので、親御さんは注意してほしい。そして、まんまと美術系の専門学校に行ったは良いが、初回コラムに描いた通り、在学中は1本も漫画を描かなかった。卒業後は印刷会社に就職するも、勉強したデザインを生かすどころか、総務課に8カ月在籍しただけで退職。その後5年、全くデザインにも漫画にも関係ない仕事に就いたり辞めたり、クビになったり、派遣切りに遭ったりしていた。その間、一度も「お前、グラフィックデザインはどうしたの?」と言わなかった親を、私はマジでリスペクトしている。○親から見た兼業漫画家・カレー沢薫の印象は?その後、間口ガバガバの漫画賞に応募したことを機に漫画家となった私だが、親は、娘が漫画を描いていることを応援してくれてはいる。だが、私のことは兼業漫画家というより、兼業会社員と思っている。もし私が「会社を辞めて、漫画1本にする」と言いだしたら、それは親にとってみれば「本業を辞めてアルバイトで食っていく」と言われたようなものであり、おそらく止められるであろう。漫画家などのいわゆる人気商売は、一見華やかそうに見える。私も、友人にそういう職業の人間がいるとしたら、面白がるし応援もするだろう。しかし、親にとってみれば子供がそういう職業を目指すのは止めたいし、なってからも心配の種と思われているケースが多いと思う。しかし、時勢の変化とともに「漫画家を目指す子供と親」情勢は変わってきているようで、今では漫画家を目指す子供を止めず、漫画学校へ通うことも許し、卒業後も就職を促すことなく、デビューまで面倒を見てくれる親が増えてきているという。あまりに世の中が不安定なので、「どうせ安定した職がないなら、夢を追った方がいい」と考えている親が増えてきているのかもしれない。反対されるよりはバックアップしてくれる方が良いには決まっているが、経験上、漫画というのは、いくら時間と描ける環境がそろっていても、描かない奴は描かない。そのため、気づけば子供が「自称漫画家志望」という、幾重にもわからない職業についている場合があるので注意が必要である。先ほど、親からは漫画について応援されていると書いたが、実をいうと、両親は私がもう漫画の仕事をしていないと思っている。現在、親が把握していた漫画の連載は全て終わっており、新しく始まったものに関しては一切言っていないので、親は私の連載はもう一本もないと思っているのだ。ある日、母に「もう漫画の仕事は全部ないの?」と聞かれたので、私はちょっと考えてから、元気に「うん」と言った。母はそれに対し「さみしいけど、まあ、よくもった方かもね」と言った。親の期待に応えるのも確かに親孝行だが、それが無理なら「早めに諦めさせる」というのも立派な親孝行だと私は思っている。カレー沢薫漫画家・コラムニスト。1982年生まれ。会社員として働きながら二足のわらじで執筆活動を行う。デビュー作「クレムリン」(2009年)以降、「国家の猫ムラヤマ」、「バイトのコーメイくん」、「アンモラル・カスタマイズZ」(いずれも2012年)、「ニコニコはんしょくアクマ」(2013年)、「負ける技術」(2014年)など切れ味鋭い作品を次々と生み出す。2015年2月下旬に最新作「やわらかい。課長起田総司」単行本第1巻が発売され、全国の書店およびWebストアにて展開されている。「兼業まんがクリエイター・カレー沢薫の日常と退廃」、次回は7月21日(火)昼掲載予定です。
2015年07月14日デザイナーの悲哀をリアルに描いた人気連載「デザイナー哀の劇場」「デザイナー哀の劇場R」を生み出した漫画家・まずりんさん。漫画原稿の作成はこれまでIntuos5、いわゆる「板」のペンタブレットで行ってきたといいます。周囲の同業者たちの多くが「液晶ペンタブレット」を導入していると知ったまずりんさんですが、漫画の制作がラクになるなら使ってみたい!と思ったものの、慣れたペンタブレットからの移行は、連載を抱えている中ではなかなか厳しい……。そう思っていたところ、「レクチャーしますので、試しに触ってみませんか?」とワコム社からのお誘いが。そんなこんなで液晶ペンタブレットに初挑戦するまずりんさんの様子を、「デザイナー哀の劇場」の哀ちゃん&アデ子さんがレポートします!○登場人物前回のあらすじ:ワコム東京本社のぴかぴかの会議室にめまいを起こしながらも、三人は目的の液晶ペンタブレット「Cintiq Companion 2」とご対面。OS搭載の機種を選んだ理由を「旅する漫画家」(演劇やアーティストのおっかけ)と力説するまずりんさんに、圧倒されるアデ子さん。まずりんさんは液晶ペンタブレットを使いこなして無事「旅する漫画家」になれるのか?~ワコムの会議室の中~次回はCintiq Companion 2に搭載されている、あの便利な機能に3人が注目。乞うご期待!
2015年06月26日デザイナーの悲哀をリアルに描いた人気連載「デザイナー哀の劇場」「デザイナー哀の劇場R」を生み出した漫画家・まずりんさん。漫画原稿の作成はこれまでIntuos5、いわゆる「板」のペンタブレットで行ってきたといいます。周囲の同業者たちの多くが「液晶ペンタブレット」を導入していると知ったまずりんさんですが、漫画の制作がラクになるなら使ってみたい!と思ったものの、慣れたペンタブレットからの移行は、連載を抱えている中ではなかなか厳しい……。そう思っていたところ、「レクチャーしますので、試しに触ってみませんか?」とワコム社からのお誘いが。そんなこんなで液晶ペンタブレットに初挑戦するまずりんさんの様子を、「デザイナー哀の劇場」の哀ちゃん&アデ子さんがレポートします!○登場人物前回のあらすじ : ワコム東京本社に到着したまずりんさん&哀ちゃん&アデ子さん。ハイテクな高層ビルに圧倒されながらもたどり着いた先で出会った液晶ペンタブレットは…?~部屋の中にはいった3人~~ドアを開けて会議室の中へ~次回、いよいよ実際の操作に挑戦。乞うご期待!
2015年06月12日デザイナーの悲哀をリアルに描いた人気連載「デザイナー哀の劇場」「デザイナー哀の劇場R」を生み出した漫画家・まずりんさん。漫画原稿の作成はこれまでIntuos5、いわゆる「板」のペンタブレットで行ってきたといいます。周囲の同業者たちの多くが「液晶ペンタブレット」を導入していると知ったまずりんさんですが、漫画の制作がラクになるなら使ってみたい!と思ったものの、慣れたペンタブレットからの移行は、連載を抱えている中ではなかなか厳しい……。そう思っていたところ、「レクチャーしますので、試しに触ってみませんか?」とワコム社からのお誘いが。そんなこんなで液晶ペンタブレットに初挑戦するまずりんさんの様子を、「デザイナー哀の劇場」の哀ちゃん&アデ子さんがレポートします!○登場人物次回、いよいよまずりんさんが初めての液晶ペンタブレットにご対面。まずりんさんが液晶ペンタブレット導入を検討する壮大な目的も明らかに? 乞うご期待!
2015年05月29日今回のテーマは、「兼業でやっていてよかったこと」である。漫画家兼会社員生活の最大の利点は「健康でいられる」ことだ。よく、「そんなに仕事したら体を壊すのではないか」と言われるが、正直、専業漫画家になった方が体と心を壊す自信がある。○二足のわらじを履くことの「利点」まず、会社勤めをしていると、規則正しい生活が送れる。毎日定時に出社するため、朝6時半に起き、夜12時前には寝るようにしている、そして、原稿は12時には寝られるようにスケジュールを立て進行させる。また、締切りを破ったことはない(仕事自体をすっかり忘れていたことはある)。「そう上手く行くか」と思われるかもしれないが、「会社に遅刻したら怒られる」、「締め切りを破ったら怒られる」等、多方面から叱責されることを考えると、どんなに怠惰な人間でも割とキッチリやるようになるのである。これが、遅刻、締め切り破り当たり前、怒られても平気、という状態になったら、もはや漫画家、会社員以前に社会に向いていない。よほど厳しく自らを律することが出来る人間以外でもないかぎり、規則正しい生活を送ろうと思ったら「定時出社」「締め切り」などの強制力が必要だ。しかし、漫画家という職業はその強制力が弱い。ハッキリ言って、締め切りさえ守れば、あとはどう生活してもいいいのだ。特に私はアシスタントなしの一人作業なので、専業作家になったら日中家に一人きりである。これは非常に危険な状況で、起きている間ずっと物を食っているか、連続飲酒状態になる姿が容易に想像できる。現在、会社では同僚たちとの人間関係構築に見事失敗したため、誰とも会話せず、ひとりで仕事をしているようなものだが、やはり人の目があるというのは大きい。デスクでネバーエンドに菓子を食ったり、胸ポケットからウィスキーを出して煽ったりはもちろん、全裸で仕事をすることもできない。つまり、私にとって、生活リズム的には、兼業状態がベストということになり、専業で健康的な生活を送ろうと思ったら、酒瓶を握ろうとする私を手刀で止めるアシスタントを雇わねばならず、非経済なのである。そして第二の利点はその「経済的安定」である。「安定した職業につけ」というセリフに対し「今の時代安定した仕事なんてあるのか?」という反論を聞くことがあるが、残念ながら圧倒的に、漫画家より会社員の方が安定している。作家の実力にもよるが、私を例にした場合、「連載が打ち切られる可能性」と「会社が潰れる可能性」を比べると、どう考えても前者の方が高い。これに「会社をクビになる可能性」をプラスすると五分五分ぐらいになってしまうが、今回は含めないものとする。とはいえ、今勤めている会社の給料はとても良いとは言えず、会社に行っている時間を漫画に使った方が割が良いかもしれない。しかし、今の会社には6年勤めているが、私の漫画連載で6年続いているものなど1本もないのである。また、今は良いが、この先10年、20年と自分に漫画の仕事の依頼が来るというビジョンがどうしても思い浮かばない。むしろ、給与というベーシックインカムを心の支えに、何とかこの不安定な仕事を続けていられるとも言える。その支柱を失ってしまったら今以上に打ち切りに怯え、酒に逃げ、それを空中とび膝蹴りで止めるアシスタントを雇わねばならず、ますます非経済なのである。先日亡くなられた桂米朝氏が「芸事で生きる人間は末路哀れは覚悟の内」とおっしゃっていたが、「俺は末路哀れで良いから漫画を描く」と思っている漫画家よりは、一獲千金を夢見た結果、末路哀れになっているケースの方が多い気がする。そして私のように、人一倍末路哀れな自分ばかり想像するタイプは、何らかの保険なしにはとても漫画など描けないのである。○専業を夢見るも…このように、兼業漫画家生活の利点は多々あるのだが、正直、漫画家1本にしてもっと自由な生活を送りたいという気持ちは非常に強い。会社に行っている時間を漫画に費やせば、作品の質が上がり大ヒット、結果的に会社を続けるより懐も潤うのではと考えることもある。しかし、「時間があれば」と言っている奴は、時間があっても5億%何もしない。会社を辞めたとしても、漫画製作時間はそのままに、余った時間は何もしないに決まっている。それに、ネガティブな人間に時間があるというのは危険なのだ。ポジティブな人間なら、リフレッシュしたり新しい事を始めたりと余暇を有効に使うだろうが、ネガティブな人間に時間を与えるというのは「いらんことを考える時間を与える」ということなのである。つまり、会社を辞めたことによってできた時間全てを「会社を辞めたことに対する後悔」をする時間に使ってしまうのだ。よって私のようにネガティブで、自らを律することができない人間は、会社と締め切りで、縛り上げ、いらんことを考える暇もなく仕事をしている状態が一番健康的な生活と言えるのである。カレー沢薫漫画家・コラムニスト。1982年生まれ。会社員として働きながら二足のわらじで執筆活動を行う。デビュー作「クレムリン」(2009年)以降、「国家の猫ムラヤマ」、「バイトのコーメイくん」、「アンモラル・カスタマイズZ」(いずれも2012年)、「ニコニコはんしょくアクマ」(2013年)、「負ける技術」(2014年)など切れ味鋭い作品を次々と生み出す。2015年2月下旬に最新作「やわらかい。課長起田総司」単行本第1巻が発売され、全国の書店およびWebストアにて展開されている。
2015年05月12日今回のテーマは「漫画を描くために行った練習、勉強したこと」についてである。漫画家というのは絵が描けるのが大前提であるが、全員がすごくうまいというわけでもない。もちろんうまい人の方が多いと思うが、「ヘタウマ」という作風でヒットを出している作家も少なくはない。私の漫画を読んだことがある人ならご存じの通り、当方の作風は、ヘタウマからウマを引いたものである。しかし5年の作家生活を経て、私の絵も「常軌を逸したヘタ」から「普通のヘタ」へとランクアップし、余計に売れなくなった。デビューの際、私は最初の担当編集者から「絵はうまくならなくていい」と言われ、1~2年はそのアドバイスを忠実に守ってきたのだが、今思えばそのアドバイスを守り続けた方が良かったのかもしれない。しかし、個人的にはやはり漫画家たるもの、絵がうまいに越したことはない、と思う。○絵の練習にありがちな"オウンゴール"を避けるために絵をうまくするにはどうしたらいいか、と絵が描ける人に尋ねると、大抵の人が「とにかく描くこと」と答えるだろう。しかし、私も約5年間、ほぼ365日休まず絵を描いてきた。それにしては上達がなさすぎるが、ここでただ単に才能がない、と断じてはいけない(私の心が折れる)。肝心なのは「向上心を持って正しい絵をとにかく描くこと」であり、自分の描きたい絵だけを自分の手癖のままに描き続けても、サッカーのルールを一切覚えず必殺シュートの練習だけするようなもので、試合に出てもオウンゴールを連発するだけである。よって、まず正しい漫画の描き方の教本通りに描いてみる必要がある。そういった本を買うと「ダイエット本を買っただけで痩せた気になるデブ根性」が発動するという人は、ネットで絵の描き方を調べれば、そういったページがたくさん見つかるだろう。また、技術うんぬんはしゃらくさい、とにかく描きたいという人は、うまい人の絵を模写してもいいし、トレースするだけでもやり続ければ、おのずと手が覚えていく。私は以上のことを一切やらずに、今現在の「印象に残らないヘタ」という作風を完成させたので、そのポジションを目指す人は参考にしてほしい。特に、練習として模写やトレースをしたことはほぼないと言って良い。○絵を描くことの「喜び」は人それぞれ「絵や漫画を描くのが好き」と言っても、「絵を描く作業自体が好き」「満足する絵が描けたときの達成感が好き」など、どこに楽しみを見いだしているかは人それぞれだ、そして、その中には「絵を人に見せて褒められるのが好き」という人も含まれている。そこで「絵を褒めてもらいたい」→「上達するために努力する」という方向に行く人はうまくなる。しかしその過程をすっ飛ばして、「とにかく絵を褒められたい」という人はうまくならない。私は典型的な後者のタイプでああるそういうタイプの人間は、模写やトレースはしない。そうやってうまく描けても自分の絵として公開できず、人から褒めてもらえないからだ。時々、模写やトレースで描いた物を自分の絵として公開してしまう過激派もいるが、見つかれば叩かれるし、商業作家がやったら命取りになる。よって、自己流の絵で褒められようとするものの、練習をコツコツやらないから大して上達せず、当然ながら褒められることはないのである。「努力せずに結果だけ得ようとしてもダメ」という当たり前のことを、5年もかけて証明できたことだけが不幸中の幸いだ。他山の石としてほしい。○カレー沢作品に突如"美少女"が登場、読者の反応は?しかし、私にも全く向上心がないというわけではない、このままじゃダメだと思う時もある、もちろん自然にそう思うわけではなく、アンケートや単行本の売り上げが具体的にダメな時になって初めて考えるのだ。だが、「とにかく結果だけ得ようとする派」の私は、どれだけピンチに陥っても、今さらスケッチブックで絵の練習など始めない。ならばどうするかというと、原稿上で試行錯誤を始めてしまうのである。前話と明らかにキャラの造形が変わっていたり、ひどい時はコマ単位で顔が変わっていたりすると言う手探り状態を、そのまま雑誌に載せてしまうのである。数年前、連載作品の調子が芳しくなく、担当から「このままでは打ち切り」と言われたことがあった。それまで「うまくならなくていい」を実践していた自分も、やはり絵はうまいに越したことはないのではないかと思い直し、次の原稿では極力うまく描こうとした。まだそれだけなら良かったのかもしれないが、「カワイイ女の子が登場したら人気が出るのでは」という安易すぎる発想から、ヒロインの顔を別人のように変えて登場させたのである。その結果、評価は散々だった。平素、良くも悪くも話題にのぼらない自分の漫画が某大型掲示板でたたかれたほどである。そもそも、突然うまい絵やカワイイ女の子が描けるわけがなく、それまで応援してくれていた読者にまで「元に戻してくれ」と言われるありさまであった。私のみならず、突然作風が変わる漫画があったら、それは不人気によるテコ入れか、作家が突然このままじゃダメだと思い、見切り発車したかのどちらかである。既存ファンからしたら「余計なことを」と思うかもしれないが、こうした試行錯誤は作家が一応持っている向上心の表れであり、作品をよりよくしようという気持ちから生じているのである。ただ、焦って前に進もうとして、ギアがバックになっているのに気付かずアクセルを踏んでしまっただけなのだ。カレー沢薫漫画家・コラムニスト。1982年生まれ。会社員として働きながら二足のわらじで執筆活動を行う。デビュー作「クレムリン」(2009年)以降、「国家の猫ムラヤマ」、「バイトのコーメイくん」、「アンモラル・カスタマイズZ」(いずれも2012年)、「ニコニコはんしょくアクマ」(2013年)、「負ける技術」(2014年)など切れ味鋭い作品を次々と生み出す。2015年2月下旬に最新作「やわらかい。課長起田総司」単行本第1巻が発売され、全国の書店およびWebストアにて展開されている。
2015年04月28日今回のテーマは「漫画家と結婚生活の両立について」だが、両立できてないのでこの話は終了、解散である。しかし両立の定義を「離婚していない」にまで広げていいなら、確かに両立していると言えなくもない。では、両立のコツはと聞かれたら、配偶者に「焼きゴテを押しつけられても眉ひとつ動かさない我慢強い人間を選ぶこと」としか言えない。○作家業界の「常識」自分で言うのもなんだが、私の夫はえらいと思う、どこがえらいかというと、なんと働いている。そんなの当たり前ではないか、と思うだろう。私もそう思う。私の友人・知人、親族の中にも、そんな褒め方をする人はひとりもいない。だが、漫画編集者などは本気で「カレー沢さんの旦那さんは、ちゃんと働いているからえらいですよね」と言うのである。そんなに女性作家の旦那というのは働いていないものなのだろうか。話を聞いてみると、もちろん、ちゃんと働いている人も多いという。しかし、最初はまともだった人も、嫁が作家として大成し収入差が広がるにつれ、ヒモ化したりマネージャーきどりになってしまったりする人もいる、とのことである。つまり、私の夫が未だまともに働いているのは、全て私が全然成功していないおかげなのだ。普通に働いている人間と結婚しただけで「男を見る目がある!」などと言われ、「カレー沢さんは夜寝て朝起きているから偉い」と斜め下の角度から褒められることを考えると、やはり作家業界というのは特殊な世界である。もしくは私にそういうところ以外褒める部分がないのだろう。○カレー沢家の分業体制現在、結婚生活5年目。昼間はお互い会社で、夜は私が仕事部屋にこもりっきりとなる。一緒にいる時間は10分にも満たないため、端から見れば家庭内別居と思われてもおかしくない。家事分担に関しては、最初は半々ぐらいだったと思うが、今では夫の方が圧倒的にやっている、特に掃除はほぼ夫がやっており、彼が掃除を放棄したら、我が家は瞬時に異臭を放ち、今ごろ行政の訪問を受けているところである。しかし、当然夫も暇ではない、正直いつ彼がブチ切れるのではと冷や冷やしているし、一緒にいると怒られる(怒られる覚えは5億個ぐらいある)気がするので、時間があろうがなかろうが、3分以上は一緒にいないように心掛けているぐらいだ。しかし今のところ夫に怒られたことと言えば「トイレを綺麗に使え」「たまには仕事部屋の換気をしろ」ぐらいである。"ぐらいである"、と言っても、このふたつが十分酷い。「お前はクソの仕方が汚い、と焼きゴテを押されても眉ひとつ動かさない」「俺でも耐えられないほど貴様の部屋は臭い、そのうち自分の臭いで死ぬカメムシみたいになるぞ」 と言われているのである。とても大人の女性が怒られる内容ではない。亭主関白を貫く一家の大黒柱でも、ここまで配偶者の手を煩わせないだろう。その上、当方の柱としてのスペックは先述の通りである。 反省してトイレはキレイに使うように心掛けているが、部屋は未だに臭い。このような状態なので、少なくとも「共働きでも家事は女が主にやるもの」という意識をもった相手ではとっくに家庭崩壊しているだろうし、顔を合わす時間はあっても、ゴミの山で相手の顔が見えないという事態になることは容易に想像できる。○「作家の家族」の受難また、作家の配偶者というのは、勝手にエッセイなどに登場させられている場合が多い。私も、こういった文章やエッセイ漫画などにたびたび夫を登場させているが、全て無許可である。女性作家というのは男に比べてえげつなくプライベートをネタにする傾向があるので、例え夫が酒におぼれようが、ギャンブルで大借金しようが、浮気をしようが、離婚になろうが、転んでもただでは起きない。それで1冊本を出してしまうのである。そして、出した方には印税が入るが、描かれた方はただただ酷い男であると全世界に晒されるだけである。スキャンダル暴露本ではなく、ほのぼの家庭エッセイなら良いかもしれないとも思うが、それを出した後に離婚という事態になったら、夫の側はしばらくお天道様の下を歩けない(そして元嫁はまたそれをネタに本を出す)。作家自身は覚悟の上で私生活を切り売りしているだろうが、知らないうちに切ったり売られたりしているのが作家の家族というものなのである。仮にフィクション作家だったとしても、時として自分の嫁が信じられない下ネタ漫画を描いているのを粛々と見守らなければいけない場合もあるのだ。個人的には、夫には私の描くものについては何も言って欲しくないと思っている。エッセイものに関しては苦言を呈する権利はあると思うが、少なくともフィクションに関しては何も言って欲しくない。夫もそれを察してか、今まで作品内容について、何か言ってきたことは一度もない。しかしよくよく考えると、夫は、ジャンプ、マガジン、サンデーを愛読し、「進撃の巨人」のコミックスを集めているメジャー嗜好である、私の描くマイナー漫画に対する感想は最初からないのかもしれないし、そもそも読んでいないのかもしれない。だが、それがお互いにとって一番幸せな状態である。カレー沢薫漫画家・コラムニスト。1982年生まれ。会社員として働きながら二足のわらじで執筆活動を行う。デビュー作「クレムリン」(2009年)以降、「国家の猫ムラヤマ」、「バイトのコーメイくん」、「アンモラル・カスタマイズZ」(いずれも2012年)、「ニコニコはんしょくアクマ」(2013年)、「負ける技術」(2014年)など切れ味鋭い作品を次々と生み出す。2015年2月下旬に最新作「やわらかい。課長起田総司」単行本第1巻が発売され、全国の書店およびWebストアにて展開されている。
2015年04月21日今回は漫画家と編集者の関係についてである。漫画家と編集者と言えば、喧々諤々の打ち合わせを経て共に作品を作り上げているというイメージもあるかもしれないが、私と編集者のやりとりはあっさりとしている場合が多い。ネーム(ネタ)を編集に見せる→OKが出る(修正が入る場合もある)→完成原稿をチェックしてもらう→OKが出る(修正が入る場合もある)→データを渡す、これで終了である。月刊連載の場合、月2、3回のメールのやり取りで終わってしまうことも珍しくない。連載当初は「ここはこうしたら良いのではないか」など修正を入れてきた編集も、3回目あたりになると「こいつは何言っても無駄だ」と思うのか、何も言わなくなる。私の担当は全員諦めが早いのか、私が諦めさせるのが早いのかわからないが、とにかくあまり修正が入らないのだ。描く側としては楽なのだが、あまりに何も言われないと本当にこれでいいのかと不安になるものである。○編集者から修正が来た場合のワークフローでは逆に修正が来た時はどうするかというと、まずひとりで怒る。尋常じゃなく怒る。この話の面白さがわからないコイツが悪いとマジ切れである。冷静に考えて、自分が描いた漫画を読むのは、全員が読者と言う他人である。ならば他人の意見は聞くべきなのであるが、修正が来た瞬間はそうは思えないものだ。そこで一旦、部屋の物を全部破壊するなどのクールダウンをしてから、再度修正案を読み、そう言われればそうだ、と思えば直すし、どうしてもそうは思えない場合は、編集を説得して初案を通す。それでも向こうが折れない場合は再度部屋の物を木っ端みじんにしてから修正をする。納得のいかない修正をする時がないとは言わないが、ネタがスベッた時に編集のせいにできるという利点もあるので、やはり編集の意見はある程度聞くべきなのである。○インターネット時代が可視化した"骨肉の争い"それにしても昔に比べ、漫画家、編集者という存在がずいぶん可視化されてきたと思う。今ではホームページ、ブログ、SNSなどを一切やっていない作家の方が珍しいと思うし、編集者がTwitterなどで作品の宣伝を行うことも少なくない。作家と編集は宣伝ができて、読者も作家と直接交流できたり、製作の裏側を知ることができたりと、おおむねWin-Winの関係であるが、何せ魑魅魍魎が跋扈するネット上のことなので、作家の不用意な発言が炎上したり、編集があまりにも前に出過ぎて叩かれるなどの弊害もなくはない。また、作家と編集のマジ喧嘩が始まり、それが読者に丸見えという事態も起こりうる。作品の美しさに魅かれて作家のTwitterアカウントをフォローしたのに、いきなり骨肉の争いを見せられるということもままあるのである。この場合、ケンカと言っても大体作家が一方的に編集への不満をぶちまけている場合がほとんどである。もちろん、編集が常に一方的に悪いというわけではない。編集をぶん殴りたいという作家の数だけ、あるいはそれ以上、漫画家を土に埋めたいと思っている編集がいるはずである。ただ、作家は個人であるが、編集は企業の一員なので、作家の言う事に編集が個人として反論することはできないのだろう。では編集は一方的に言われて不利だ、立場が弱いと思われるかもしれないが、ネットで内情を暴露してダメージを受けるのは作家の方である。暴露することでその出版社との仕事が切れる危険はもちろん、「何かあったらネットで言っちゃう作家」というイメージがつけば他の出版社からも敬遠されるであろう。それは暴露する作家も重々承知のはずだ。よほど後先考えない性格でない限り、いきなり不特定多数に向けて内情をぶちまけたりはしないはずである(漫画家になる時点で先を考えないタイプとも言えるが)。それでもなぜ言ってしまうかと言うと、もう「怒っているから」としか言いようがなく、ハナから得しようなどとは思っていない。むしろ、怒りと作家生命を天秤にかけて「終わっていい」と判断できるほどの、混じりっ気なし、100%純国産、「私が怒りました」と顔写真つきのシールを貼って良いほどの「怒り」がそこにあるのだろう。○作品の成否が関係を決める?こう書くと、漫画家は年中編集に対して怒り続けているように思えるかもしれないが、おそらく大半の作家と編集が良好、もしくは、仲良くもないがもめもしないというドライな関係だと思う。ちなみに個人的な意見だが、やはり作品自体が上手く行っていれば、作家と編集の関係はおおむね良好なのではないかと思う。作品の調子が悪ければ、編集は何とかしようとあれこれ助言をするだろうが、作家はそれに焦ったり反感を覚えたりするものだ。逆に作品が絶好調であれば、「先生、今週も最高です」と打ち合わせもそこそこに夜の街に繰り出し、ふたりで仲良く女体盛りをつついたりできるはずである。そんなことはない、売れたら売れたでもっともめる、と言われるかもしれないが、何せ売れたことがないのでわからない。どうせもめるなら売れてもめたいところである。カレー沢薫漫画家・コラムニスト。1982年生まれ。会社員として働きながら二足のわらじで執筆活動を行う。デビュー作「クレムリン」(2009年)以降、「国家の猫ムラヤマ」、「バイトのコーメイくん」、「アンモラル・カスタマイズZ」(いずれも2012年)、「ニコニコはんしょくアクマ」(2013年)、「負ける技術」(2014年)など切れ味鋭い作品を次々と生み出す。2015年2月下旬に最新作「やわらかい。課長起田総司」単行本第1巻が発売され、全国の書店およびWebストアにて展開されている。
2015年04月07日