岡崎体育の連載「体育ですけど、オンガクです」。今回のテーマは「歌詞の覚え方」です。ミュージシャンの方はみなさん、自分の持ち歌の歌詞をどのように覚えているのでしょう。実は僕は歌詞を覚えるのがとても苦手です。自分で書いているのですが全然覚えきれません。ほかのミュージシャンの方と比べて比較的歌詞の分量も多いほうなのではと思いますし、そもそも歌詞にストーリー性や意味がないことが多いので、とにかく覚えにくいです。韻を踏むためや語呂合わせ的な歌詞も多いので、それもあってどっちが1番でどっちが2番かよくわからなくなります。ライブでよくやる定番の楽曲でも間違えることがあります。それこそ一発撮りでパフォーマンスを披露する「THE FIRST TAKE」で「エクレア」を披露した時も歌詞を間違えました。僕には珍しい真剣なバラード曲なのに……。ライブでもちょいちょいそういう間違いがあります。でも、本心を言えばできるだけ間違えたくない。当然、そう思っています。なので、久しぶりにライブでやる曲などは、その前夜に必ず練習をするようにしています。楽曲を何度も聴いて、歌いまくります。それしか覚える方法はないと僕は思っています。ポイントは寝る前にやることです。人は寝ている間に、インプットした内容を脳の中で整理して記憶を定着させます。だから、寝ないでがんばるとかライブが始まる直前に覚えるよりも、寝る前に入れておいたほうがいい。これ、受験勉強と同じシステムです。徹夜の一夜漬けは効率が悪いです。それよりも、時間を決めて前日にしっかり勉強してちゃんと寝る。これで脳から引き出したい時に情報をすっと引き出せるようになります。それでも覚えておけないこともあります。大きな箱でのライブではプロンプターという歌詞を流してくれるモニターが用意されていることが多いです。それは本当にありがたいです。ふとしたことで歌詞が飛んでしまった時など、パッと見て確認できるのでアクシデントを防ぐことができます。最近では、タブレットに歌詞を入れてそれを手元に置いておくミュージシャンもいるとか。歌詞は絶対に覚えたほうがいいに決まっていますが、こういう救済措置があれば助かるというのも事実です。でも、小さなライブハウスには当然そんな設備はありません。なので、今回のライブハウスツアーではめちゃくちゃ歌詞の間違いが多かった気がします。おかざきたいいくキャリア最多公演数となるワンマンツアー「JAPAN TOUR」の追加公演が、大阪、東京、沖縄で開催される。岡崎体育ワンマンコンサート「BASIN TECHNO」@さいたまスーパーアリーナのライブ音源が配信中。※『anan』2023年1月25日号より。写真・小笠原真紀ヘア&メイク・大矢佑奈(KIND)文・梅原加奈(by anan編集部)
2023年01月21日岡崎体育の連載「体育ですけど、オンガクです」。今回のテーマは「憧れの時代」です。いまの時代、音楽ストリーミングサービスの普及で、自分が生まれる前の(時代の)楽曲に簡単に触れることができます。20年前だとか、それよりもっと前の曲がリバイバルでブームになることも多いですよね。いろいろな楽曲に接していると、その年代に僕が生まれていたらどんな感じだったんだろうと思うことがあります。この時代にミュージシャンとして活躍してみたかったな~と思うのはバブルのころ。世間が浮かれていてCDも売れに売れていた’80~’90年代です。その興奮をミュージシャン側で体感してみたかったなというのはあります。CDが売れていたということは印税もいまよりもっと多く入るはず……。そうしたら、すごい自宅スタジオとかを作れたのかなと思うと、ちょっとワクワクしますね。みんなの音楽の聴き方もいまとはちょっと違っていたんじゃないかなとも思います。主にCDで聴いていたわけで、いまのストリーミングサービスのように手軽に聴く感じとはまた違っていたと思う。音楽がすごく大事に聴かれていた最後の時代なんじゃないかなと思うんです。そういう時代の感覚もちょっといいなと思います。でも、そうやって具体的に想像していくと、その時代に岡崎体育がメジャーデビューするのはなかなか難しかったかもしれないなとも思います。DTMなんて発想がまずない時代ですし、いまみたいに楽器を持たずに気軽に音楽を作れる環境はなかったわけです。作曲をするにも、才能や技術、資金力が必要だったわけで。それに比べるといまは、パソコン1台あればけっこう何でもできる。恵まれています。僕はやはり、いまの時代だからこそ日の目を見ることができたミュージシャンなんだなと思います。いまの技術を持っていけるなら、戦国時代や江戸時代に音楽活動をするのもいいですね。江戸時代はまだ音階やスケールなど日本古来の伝統の中で音楽をやっている時代。そこにグローバルなジャズやポップスのコード進行を持ち込んだら「なんだこの天才は!?」と崇められるのではないかと思います。もはや“神”と呼ばれるのでは?江戸時代に行って音楽の神になるのもいいですね!これは、もっとも売れる可能性があります。それこそバブル時代なんて比ではないのではないでしょうか。殿のお気に入りになったらすごい褒美がいただけそうです。おかざきたいいくキャリア最多公演数となるワンマンツアー「JAPAN TOUR」の追加公演が、大阪、東京、沖縄で開催される。岡崎体育ワンマンコンサート「BASIN TECHNO」@さいたまスーパーアリーナのライブ音源が配信中。※『anan』2023年1月18日号より。写真・小笠原真紀ヘア&メイク・大矢佑奈(KIND)文・梅原加奈(by anan編集部)
2023年01月14日意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「人口爆発」です。想定外の早さで世界は人口が急増。いまから対策を!2022年11月に世界の人口は80億人に達しました。現在、最も人口の多い国は約14億2600万人の中国ですが、今年、インドが中国を追い抜くと予測されています。1960年のインド人の平均寿命は41.42歳でしたが、’20年には69.89歳に。衛生環境が急速に改善し、医療技術の向上で乳幼児の死亡率も低下し、平均寿命が延びました。60年の間に平均寿命が28歳延びたというのはものすごい急成長ぶりです。’50年にはインドの人口は16億人を突破するといわれています。さらに、人口が急増しているのがアフリカです。現在、アフリカの総人口は約14億人で世界人口の18%を占めています。それが’50年には24億人を超え、先進国は人口減少に傾いていますから、世界の4人に1人がアフリカの人になると予測されています。世界は今、人口爆発の真っ只中にあり、食糧危機が迫っています。現に西アフリカでは干ばつや洪水などの気候変動で食糧生産ができなくなり、生産できる土地が奪われ、紛争地域が広がっています。今後20~30年の間にアフリカで10億人以上の人が急増、地球規模で人口が増えれば、当然抱えきれなくなるでしょう。国連によると、’50年までに人口が大幅に増える国はインド、ナイジェリア、パキスタン、コンゴ民主共和国、エチオピア、エジプト、フィリピン、タンザニアです。予測では’50年のナイジェリアの人口は3億7470万人で、アメリカの3億7500万人に並びます。現在の戦争の火種は、鉱物資源や民族的なアイデンティティに基づいた問題ですが、食糧を作れる土地の奪い合いが世界に広がれば大変なことになります。知恵を結集して、互いの繁栄のための持続可能な食糧確保、生産、共生のあり方を模索しないといけません。人口が急増すると、学校も不足し、学ぶための資材も足りなくなります。教育を受けられないと、困難を乗り越えるための知恵を生み出すことも難しく、奪い合いや暴力に発展しやすくなります。子どもや孫たちの世代が穏やかに暮らせるようになるために、今から対処しておかなければいけないことを知っておいてほしいと思います。ほり・じゅんジャーナリスト。元NHKアナウンサー。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。Z世代と語る、報道・情報番組『堀潤モーニングFLAG』(TOKYO MX月~金曜7:00~)が放送中。※『anan』2023年1月11日号より。写真・小笠原真紀イラスト・五月女ケイ子文・黒瀬朋子(by anan編集部)
2023年01月07日岡崎体育の連載「体育ですけど、オンガクです」。今回のテーマは「今年の抱負」です。この号は2023年1回目の号だということなので、今年の抱負を語っておきたいと思います。なにはともあれまずは新しいアルバムをリリースしたいと思います。そのために僕はお正月休みも返上して、新曲制作に取り組みたいと思っています。……いや、初詣に出かけたり、お雑煮を食べたりしてちょっとは休んでいるかもしれませんが、基本的には休み返上でアルバムに入れる新曲をたくさん作りたいと思います。2022年は、いろいろなジャンルのお仕事をやらせてもらえるようになった一年でした。バラエティもドラマもありましたし、TVCMも話題になる作品に参加させていただき、なんだか自分のこととは思えないくらい、すごいことだったなと感じています。どのお仕事も楽しくやらせていただきました。でも、僕の肩書はミュージシャンです。なので2023年こそ「シンガーソングライター、岡崎体育ここにあり」というところを見せていきたいです。ここ最近思うのは、デビューから6年も経つといろいろなことが見えてきます。そうすると僕みたいな性格だといろんな人の顔色を窺ってしまう。ファンはこんなネタ曲が好きなのかなとか、クライアントが求めているのはこんな感じの曲かな、とか。それに合わせて、ある程度リクエストに応えられるくらいにはできるようになってきていると思います。一方で、昔の曲はどれも粗削りですが本気の想いや勢いみたいなものが詰まっていたんじゃないかなと思います。先日、ある新曲をスタッフに聴いてもらったら「昔の岡崎くんの音が戻ってきた」と言われてうれしかったんです。世間の顔色や売れ筋を考えず、自分の心の底から湧いた感情やアイデアそのままの曲をリリースできるようになりたい。してみたいことをストレートに、実直にできる一年にできたらいいなと思います。個人的にそれ以外でやってみたいことは……、もう少し普通の服を着られるようになりたいです。もう太っていることがしんどいなと思うようになりました。そうです、真剣にダイエットをしたいと思います!できれば運動をたくさんして健康的にやせたいですね。健康も大切ですから、それが実現できたら2023年はもっとうまくいく気がします。2023年の岡崎体育もどうぞよろしくお願いします!おかざきたいいくキャリア最多公演数となるワンマンツアー「JAPAN TOUR」の追加公演が、大阪、東京、沖縄で開催される。岡崎体育ワンマンコンサート「BASIN TECHNO」@さいたまスーパーアリーナのライブ音源が配信中。※『anan』2023年1月11日号より。写真・小笠原真紀ヘア&メイク・大矢佑奈(KIND)文・梅原加奈(by anan編集部)
2023年01月07日岡崎体育の連載、「体育ですけど、オンガクです」。今回のテーマは「孫」です。デビューして間もないころ、ソニーミュージック内で韓国の方とコラボレーションしてみないかという話がありました。その方はどうやら“韓国国民の孫”といわれている方らしく、日本を代表するおじいちゃん、おばあちゃん子である僕が選ばれたのかなと思いました。ま、実現することはなくその話はなくなったのですが……。でも、“孫”って言葉が僕はすごく好きです。“国民の孫”という冠も僕が欲しい称号のひとつです。今の芸能界、音楽業界で僕より孫っぽい人いないと思いますがどうでしょうか?僕は根っからのおじいちゃん、おばあちゃん子です。一緒に暮らしていたことが大きいと思います。たくさん甘やかされて育ちましたし、おじいちゃん、おばあちゃんとのエピソードを語ることも多いので、そういうイメージを持たれているだろうなと思います。おばあちゃんには楽曲に参加してもらったこともあります。僕がミュージシャンとして活躍していることもとても喜んでくれています。おばあちゃんは、ご近所さんとの井戸端会議で「お孫さん、ご活躍ですね」と言われるととてもうれしそうにしている、と母からよく聞きます。そういう時は、いい祖父母孝行ができているなとほっとします。今は離れて暮らしていますが、京都でテレビのレギュラー番組を持っているので月に1回は帰省します。今もなお、相当身近な孫だと思います。おじいちゃんはすでに他界しているのですが、おばあちゃんとは帰ればいろいろな話をします。最近の流行りは、おばあちゃんにクイズを出すこと。一緒にテレビを見ながら「おばあちゃん、このCMに出ている女優さんは誰?」と、流れてきたものに合わせてクイズを出しています。なので、最近の会話は8割クイズです。おばあちゃんは、面倒だなと実は思っているかもしれませんが、それでも孫の出すクイズだから「誰やったっけな」と考えてくれます。でもそれが、おじいちゃんやおばあちゃんとうまく話すコツかなと思います。同じ目線で話すとどうしてもズレが生じる。だったらこっちが教えてあげるでもいいし、逆に歴史に詳しいとか、おじいちゃんやおばあちゃんの得意分野があるならその話を聞いてあげてもいい。寄り添ってあげることでいい温度感で話せる空気につながる。孫マエストロとしては、もっと全国の孫たちにおじいちゃん、おばあちゃんとの時間を大切にしてもらいたいです。おかざきたいいく現在、17道府県で18公演を行うキャリア最多公演数となるワンマンツアー「JAPAN TOUR」開催中。1月と2月に追加公演決定。岡崎体育ワンマンコンサート「BASIN TECHNO」@さいたまスーパーアリーナのライブ音源が配信中。※『anan』2022年12月28日‐2023年1月4日合併号より。写真・小笠原真紀ヘア&メイク・大矢佑奈(KIND)文・梅原加奈(by anan編集部)
2022年12月26日岡崎体育の連載、「体育ですけど、オンガクです」。今回のテーマは「追加公演」です。現在、僕は全国17道府県18か所のライブハウスを回る「JAPAN TOUR」を開催中です。その公演に大阪、東京、沖縄の3か所の追加公演が決定しました。追加公演とは何か、と考えると個人的には規模の大きなアンコールのようなものかなと思っています。ツアーは、スタートしてから各所を巡り公演を重ねていくことでステージがどんどん成長していくものです。こうしたほうがいいという肉付けがされ、不要なものは削ぎ落とされて洗練されていく。ツアーが終わると全体の総括をします。セットリストはこれが盛り上がったなとか、このMCはウケなかったなとか、良かったところ悪かったところが見えてくる。そういった総括で出てきた修正点を調整した完全版が追加公演では観られると思います。より完成度の高い、そのツアーの最終形態ライブ、それが追加公演なのではないかと思います。一方で、追加公演でガラッと内容を変える場合もあります。実はこれもアリだなと思っています。ライブって何度も通ってくださる方もいる。すべての公演を追いかけて“全通”してくれる熱心なファンの方もいる。そういう何回も観てくれる方のために、新しい内容を加味したいという気持ちもあります。自分が観客だとしても追加公演があるとうれしいですね。行きたいと思っても会場が遠かったり、チケットが取れず行けなかったりしていた時に、もう1回チャンスがあるかも!となる追加公演はとてもありがたいと感じるもの。今回の僕の追加公演も、みなさんがそんな気持ちでいてくれたらうれしいです。追加公演が決まった沖縄は、デビューしたばかりの2017年に石垣島でライブをしたことがありますが、それ以来となります。沖縄本島でのライブは初めてなので、どんな感じになるのか楽しみにしています。それに、公演はすべて年が明けてからです。となると、僕のおみくじの結果が気になってきます。初詣では必ずおみくじを引きますので、その結果次第でライブのテンションも変わってくるでしょう……。実はこのところ、僕はおみくじで“凶”ばかり引いています。京都のロケ番組で引いたおみくじも、家の近所で引いたおみくじも凶だった。できることなら大事な追加公演の前のおみくじは“大吉”を引きたいところです。大吉が出るように今から神様にお願いしておきたいと思います!おかざきたいいく現在、17道府県で18公演を行うキャリア最多公演数となるワンマンツアー「JAPAN TOUR」開催中。1月と2月に追加公演決定。岡崎体育ワンマンコンサート「BASIN TECHNO」@さいたまスーパーアリーナのライブ音源が配信中。※『anan』2022年12月21日号より。写真・小笠原真紀ヘア&メイク・大矢佑奈(KIND)文・梅原加奈(by anan編集部)
2022年12月16日岡崎体育の連載、「体育ですけど、オンガクです」。今回のテーマは「フランスパンゲーム」です。新型コロナウイルスの感染予防対策として、日本国内のライブでは公演中の歓声や歌唱は控えるようにお願いをしています。コールアンドレスポンスのような、こちらの呼びかけに応えていただくことが難しくなっている。声でのやりとりができないと、せっかく対面しているのにコミュニケーションがちょっと不足しているように演者も観客も感じているのではないかと思っています。そこで、僕は声を出さなくてもステージと客席の生のやりとりを楽しめる楽曲を考えました。以前、少しだけその計画をこのコラムでもご紹介した「フランスパンゲーム」です。すでに完成していて、夏フェスをはじめいくつかのライブで披露させていただいています。ルールは、すごくシンプルで簡単です。ビートに合わせて僕が「フランス」と歌ったらお客さんは“パン”と1回手を叩く。「食べすぎておなか」と歌ったら“パンパン”と2回手を叩く。これだけです。いわゆるリズムゲーなんですが、あまりそれをライブでやる人はいなかったんじゃないかなと思います。ひっかけで「焼きそば」とか「クリーム」とか出てきます。そこで、焼きそば“パン”と手を叩きたくなりますが、叩いてはいけません。ひっかけです。最初はそういうルールを確認するチュートリアルから始めて、だんだんテンポを上げていきます。そうすると意外と難しいんです。どのワードをどこで入れ込むかは、その場その場で僕の即興で考えています。なので、会場の反応次第で難易度も変わります。どこの会場でやってもみんな楽しんで参加してくれてよかったなと思っています。ライブに来られた方の中に教育実習生の方がいたらしく、実習で行った小学校で「フランスパンゲーム」をやってみたという報告をいただきました。小学生たちもめちゃくちゃ楽しんでくれたそうで、先生へのお礼の手紙が「『フランスパンゲーム』が楽しかった」でいっぱいだったそうです。なんだか僕もうれしくなりました。その先生が学校でどういうふうにやったのかはわかりませんが、上手に演出してくれたんやろなと思います。老若男女誰でも楽しめるものになっていると確認できてよかったです。これをきっかけに小学生の間で大ブームになって「花いちもんめ」とか「だるまさんが転んだ」のような伝承ゲームのひとつとして「フランスパンゲーム」も受け継がれていったらいいなと願っています。おかざきたいいく現在、17道府県で18公演を行うキャリア最多公演数となるワンマンツアー「JAPAN TOUR」開催中。1月と2月に追加公演決定。岡崎体育ワンマンコンサート「BASIN TECHNO」@さいたまスーパーアリーナのライブ音源が配信中。※『anan』2022年12月14日号より。写真・小笠原真紀ヘア&メイク・大矢佑奈(KIND)文・梅原加奈(by anan編集部)
2022年12月10日意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「ディープテック」です。研究が広く知られ活用の道がより広がることを期待。「ディープテック(Deep Tech)」とは、「深いところに眠る技術」と、「世の中に深く根ざした問題を解決する技術」を意味する造語で、長年の研究をもとに、世界を変える可能性があるような影響を与える技術を指し、大変注目されています。日本で研究されている技術だと、たとえば「ペロブスカイト太陽電池」。低価格でフィルム状にもできる新しい太陽電池です。また、慶應義塾大学で研究されている、力触覚を再現する技術の「リアルハプティクス」もその一つです。専用の手袋をはめて手を動かすと、遠く離れた場所にあるものに触れたときの硬さや感触をリアルに感じ取れるというものです。もともとは医療技術の開発から始まりました。脊髄に穴を開けるという手術をするとき、間違って神経に触れてしまうと医療ミスが起きてしまいます。リアルハプティクスの技術を使い、医師が離れた場所で治療を行うときに、医療機器の先端が患者さんの体内で骨に当たる感覚を手の中に実感できるようにしました。離れた場所の触感を再現するのは難しいといわれており、2002年、日本は世界に先駆けて、ハプティクス伝送=力触覚伝送に成功したのです。このような世界最先端の技術の開発を基礎研究から始め、実際に社会に実装されるまでには膨大な時間がかかります。その研究が何の役に立つのか、どういう形で成果が得られるのかが明確でないと、資金も集まらずに研究を続けることが難しくなるという問題が日本では起きています。すると有能な研究者も、より安心して研究ができ、正当な評価を得られるアメリカや中国など海外に流出していってしまいます。慶應義塾大学ハプティクス研究センターのセンター長の大西公平さんは、自分たちの技術をさまざまな業界の人にも見せて、これによりどんなふうに社会を変えられるのか、知恵を集めてそれを研究にフィードバックさせたいとおっしゃっていました。本来、イノベーションは、私たちの困りごとの解決に役立てることが期待できるものです。成功事例を広く発信し、日本の発展に活かしていくことができればいいなと思います。ほり・じゅんジャーナリスト。元NHKアナウンサー。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。Z世代と語る、報道・情報番組『堀潤モーニングFLAG』(TOKYO MX月~金曜7:00~)が放送中。※『anan』2022年12月14日号より。写真・小笠原真紀イラスト・五月女ケイ子文・黒瀬朋子(by anan編集部)
2022年12月10日岡崎体育の連載、「体育ですけど、オンガクです」。今回のテーマは「遅刻」です。自分のいいところは時間を守ること、遅刻をしないことだと思っています。いえ、思っていました。最近、少しそこにあぐらをかいていると自戒しているので今回はこのテーマを取り上げたいと思いました。ミュージシャンなんて時間にルーズでも怒られないのでは?と世間の方は思ってくださっているかもしれません。待ち合わせに5分、10分遅れて登場するのがシンガーソングライターというものだろう、くらいおおらかに思ってくださっているかもしれない。でも、そうだからこそ、僕は時間厳守でいきたいと、どんな場面でも早めの行動を心がけるようにしていました。しかしそれが最近どうにもままなりません。5分、10分遅れてしまうことがちょくちょくあります。これはどうしてそうなっているのかと原因を尋ねられたら明らかに理由はわかっています。そう完全に僕の“慢心”です。5分、10分遅れてもまあ大丈夫だろう。そういう慢心が出てきている証拠です。これはいけないと己に警鐘を鳴らしているのですが、なかなか改善できずに苦労しています。まず何がいけないって、まだ都内の交通事情を把握することができていません。僕は自分で車を運転します。なのでどの道を選ぶか、混雑状況を考えて何時に出るべきか。判断は自分でしますが、その読みがなんか甘い。いや、東京どころではなく、先日久しぶりに奈良のネバーランドというライブハウスでライブをしたのですが、実家からそこまでの混雑状況を把握できず40分も遅刻してしまいました。読めない交通渋滞や事故によるトラブルというのは、まああっても仕方ないことですが、仕事をオファーしてくれた方からしたら「そんなことは知らんがな」です。大事なのはきちんと定時に体を持っていくこと。それを他人任せにせず、自分で考えるようにしないと。ミュージシャンは世話をしてくれるスタッフがいるので、他人に甘えがちかもしれません。それが僕の慢心にもなっていると思います。でも、スタッフも甘やかしすぎはいけないと思っているのか、この間は北九州からひとりで飛行機に乗って帰りなさいと言われました。飛行機くらい乗れますが、でも何かあったら…とヒヤヒヤしました。マネージャーの松下もすごく不安だったそうです。スタッフが不安を感じず、ひとりで飛行機にきちんと乗れるシンガーソングライターになりたいです。おかざきたいいく現在、17道府県で18公演を行うキャリア最多公演数となるワンマンツアー「JAPAN TOUR」開催中。1月と2月に追加公演決定。岡崎体育ワンマンコンサート「BASIN TECHNO」@さいたまスーパーアリーナのライブ音源が配信中。※『anan』2022年12月7日号より。写真・小笠原真紀ヘア&メイク・大矢佑奈(KIND)文・梅原加奈(by anan編集部)
2022年12月03日意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「岸田政権発足1年」です。成果はまだだが、描くビジョンの実現を期待したい。岸田内閣は発足から2年目を迎えました。10月の所信表明ではコロナ対策や旧統一教会の問題に触れながらも、多くの時間を成長戦略について語りました。キーワードは“スタートアップ創出元年”。5年間で企業を10倍に増やそうとしています。新しい技術の学びの機会がなかった人たちに向けては、「リスキリング」と呼ばれる学び直しの政策に5年間で1兆円規模の予算を投入しようとしています。また、デジタルを使いビジネスを変容する「DX」化や、環境対策を取り入れた「GX(グリーン・トランスフォーメーション)」を掲げ、新しい産業づくりや、新規参入者を増やし起業家たちの活動を促進し、いままでにない日本の稼ぎ方をめざす。成長することで、分配を増やしていくビジョンを示しました。外交に関しては「直接対話と平和交渉を続ける」と明確に打ち出した点は評価されるべきだと思います。ロシアとの問題は非常に困難だけれども、平和条約締結を諦めないと言い、ちょうど日中国交正常化50周年のタイミングでもあったので、両国の良好な関係を築いていきたいと発言しました。北朝鮮のミサイル発射実験が相次いでいますが、金正恩氏との会談も希望しています。あれらの行動は、アメリカや国際社会に対して、北朝鮮の存在をアピールするためのもの。だからこそ、日本が大国の間に入って、交渉の道を開いていく役割を担えればいいのではないかと個人的には思います。所信表明で語られた内容がしっかり実行されれば、とてもすばらしいと思います。ただ、この1年を振り返ると、まだ成果は見えてきていません。方針がころころ変わっているようにも見えますし、ダイナミズムがないだけに、「聞くだけですね」などと揶揄されてしまいます。肝心なところで説明をしないという姿勢も改善してほしいです。ただ、欠点にばかり目を向けていても始まりません。旧統一教会のニュースも大切ですが、メディアもそればかりでなく、日本経済をどう立て直すのかを本気になって考え報道しないと、共倒れになりかねません。どうしたら良い社会が作れるのか、みなさんと一緒になって考えていけたらと思います。ほり・じゅんジャーナリスト。元NHKアナウンサー。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。Z世代と語る、報道・情報番組『堀潤モーニングFLAG』(TOKYO MX平日7:00~)が放送中。※『anan』2022年12月7日号より。写真・小笠原真紀イラスト・五月女ケイ子文・黒瀬朋子(by anan編集部)
2022年12月03日意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「スピーキングテスト」です。受験科目に加えることが、英語力向上につながる?都立高校の入試の合否判定に、来年度から英語のスピーキングテスト導入の準備が進められていますが、受験生や親御さんらから中止を求める声が多く上がっています。都議会でも、立憲民主党や東京維新の会から、合否判定から除外する要請を盛り込んだ条例案が出されました。入試の中学校英語スピーキングテスト(ESAT‐J)は、日本人の英語能力を上げていきたいという理由から導入されました。英語能力を示すEFEPI(英語能力指数)の世界ランキングを見ると、2021年は日本は112か国中78位。前年は100か国中55位、2011年には44か国中14位でした。経済成長につれ海外留学が増えたことなどで、英語力が上がっている他国に日本がどんどん追い抜かれている状況が露わになっています。ESAT‐Jは、英文の音読や絵に描かれたシチュエーションに対する解答、自分の意見を述べることが求められ、タブレットに録音して答えます。このテストが、英語以前に、自分の思いを言葉に表すことが得意か否か、コミュニケーション能力を問うものにならないか。吃音や障害のある子供に対して不公平にならないかという問題が指摘されています。テストを受けないという選択肢もあるのですが、受けて低い点数をつけられるよりも受けないほうが受験に有利になる可能性も。また、ベネッセが実施しますが、一事業者が選定された経緯が不透明。解答した音声はフィリピンに送られ採点されます。AからFのグレードに分けられ点数がつきますが、1点の違いでもグレードが分かれてしまうこと、採点の正当性についても問題視されています。そもそも、受験にスピーキングテストを加えることで、日本人の英語力が上がるのでしょうか。それよりも、普段から、英語に触れられる機会を増やす、海外から来る外国人との交流を頻繁にする、留学や英会話スクールへの助成を入れるなど、ほかにもより効果的な方法はあるように思います。11月27日には本テストが実施されます。東京で導入されればこれは全国に広がる可能性も大きい。改めてきちんとした議論が必要だろうと思います。ほり・じゅんジャーナリスト。元NHKアナウンサー。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。Z世代と語る、報道・情報番組『堀潤モーニングFLAG』(TOKYO MX平日7:00~)が放送中。※『anan』2022年11月30日号より。写真・小笠原真紀イラスト・五月女ケイ子文・黒瀬朋子(by anan編集部)
2022年11月25日岡崎体育の連載、「体育ですけど、オンガクです」。今回のテーマは「擬態」です。前回、サインについての話をしましたが、ごはんを食べに行った時などにお店の方にサインを求められることもあります。サインを欲しいと思っていただけるということは、僕に好印象を持ってくれているという証し。とてもうれしいし、光栄なので喜んでサインを書かせていただいています。僕なんかでよければ、といつも思います。サインをする時は「これ誰?」とならないように、サインの脇に楷書で“岡崎体育”と書くようにしています。自分もお店に飾ってある有名人のサインを見るのが好き。「こんな方も来ているんだ」と知ることが楽しいので、せっかくなら誰が来たかわかるといいなと、自らわかりやすくさせていただいています。とはいえ、僕は出先でサインを求められることはそれほど多くはありません。それは多分、僕の擬態がうまいからだと思います。ここで紹介してしまうとこの手法が使えなくなってしまうのですが、あえて僕の編み出した技を紹介すると、僕はプライベートではヒップホップのミュージシャンがしているような18金のチェーンネックレス……を模したステンレスのネックレスをしています。そうすると、一見、ぶりんぶりんのヒップホップ大好きなガタイのいいお兄ちゃん風に見えるんです。岡崎体育のパブリックイメージと18金(風)のチェーンネックレスをしている男って真逆の存在だと思いませんか?なので、人は「あの人、岡崎体育っぽいけど、岡崎体育があんなネックレスをするわけない」と、その人自ら可能性を打ち消してくれるんです。サングラスとか帽子だとあきらかに何かを隠している雰囲気が出てしまいます。でも、ネックレスはそれが出ない。目立つアイテムを投入することで個性を消すという逆転の発想です。その結果、ネックレス一本で、僕はそんなに変装をせずとも、街中で声をかけられることがとても少ないです。ちなみになぜ本物の18金チェーンネックレスではないかというと、本物を買おうと見に行ったのですが、とにかく高すぎて……。これは、変装のためだけには払えないと尻込みしてしまったためです。お店に試着のサンプル用に使っている2980円のステンレスのチェーンネックレスがあったので、これでええわ、となりました。さすがに本物のヒップホップアーティストのようにはできませんでした。おかざきたいいく現在、17道府県で18公演を行うキャリア最多公演数となるワンマンツアー「JAPAN TOUR」開催中。1月と2月に追加公演決定。岡崎体育ワンマンコンサート「BASIN TECHNO」@さいたまスーパーアリーナのライブ音源が配信中。※『anan』2022年11月30日号より。写真・小笠原真紀ヘア&メイク・大矢佑奈(KIND)文・梅原加奈(by anan編集部)
2022年11月25日岡崎体育の連載、「体育ですけど、オンガクです」。今回のテーマは「サインをたくさん書くコツ」です。以前、僕のサインのルーツについてこのコラムで紹介したことがあったと思います。僕のサインは、名前の最初の“岡”の字と最後の“育”の月の形だけ読める感じになっています。この2つが成立していれば、間は多少ぐしゃぐしゃっとしていても“岡崎体育”と読めるのではないか、という「はじめと終わりよければすべてよい」という形をとらせていただいています。間のぐしゃぐしゃはけっこうフリースタイルなので、そのときの気分やテンションなどで書き方が変わります。そのフリースタイルのおかげで、かなりスピーディにサインを書くことができます。なので僕のサインは、同じようですべて違う。もし比べる機会があるようでしたら、比べてみていただけるとわかると思います。すべて一点ものです。CDをリリースしたときなど、サインを大量に書かないといけない場面というのがミュージシャンにはあります。そのとき、もっと簡素でシンプルなサインにしておけばよかったなと思うこともあります。通常、サインというものは同じ形で書けるものでないといけないですよね。その人が書いた、という証しなので。同じもの、かつスピーディにできあがるものと考えたときに、お相撲さんの手形のサインはとても合理的だなと思いました。以前、白鵬関にお誕生日に手形の色紙をいただいたことがあります。大きな手形のサインはそれだけでまずかっこいいです。手形は形が変わりませんから、その人だけの証しとなります。色紙にバンバンと手形を押していくというスタイルも、ひとつひとつ名前をサインペンで書くよりスピード感があってよさそうです。でも、手をいちいち洗わないといけないし、色紙でないと対応ができないことを考えると、あまりミュージシャン向きではなさそうにも感じます……。以前、ヤバTはアルバムのキャンペーンの一環で予約をしてくれた方全員にサイン入りジャケットを贈るという企画をしました。その数なんと4万3000枚。3人全員でサインを入れたそうです。これは腱鞘炎になるレベル。ヤバTのサインにはバンドのイメージキャラクターであるタンクトップくんのイラストも描かれます。それもひとつひとつ4万枚以上描いたのかと思うと頭があがりません。僕にもてっくんというキャラクターがいますが、僕がサインにてっくんを描くことは永遠にないと思います。おかざきたいいく現在、17道府県で18公演を行うキャリア最多公演数となるワンマンツアー「JAPAN TOUR」開催中。1月と2月に追加公演決定。岡崎体育ワンマンコンサート「BASIN TECHNO」@さいたまスーパーアリーナのライブ音源が配信中。※『anan』2022年11月23日号より。写真・小笠原真紀ヘア&メイク・大矢佑奈(KIND)文・梅原加奈(by anan編集部)
2022年11月19日岡崎体育の連載「体育ですけど、オンガクです」。今回のテーマは「Creepy Nuts」です。この号の発売日翌日、11月10日に京都の「ロームシアター京都 サウスホール」でCreepy Nutsとツーマンライブをさせていただきます。「Sony Park展 KYOTO」の前夜祭ライブとして開催されるものです。せっかくなので彼らとの歴史を振り返りたいと思います。最近だと僕が自主企画したイベント「TECHNIQUE」の第2回のゲストとして参加してくれていますが、出会いはお互いのデビュー前まで遡ります。はじめて会ったのは北海道・札幌でのライブ。当時、僕はデビューアルバム用のMV撮影をしていました。そうです、「MUSIC VIDEO」です。その中の歌詞で「仲良い人とかお世話になってる人を別撮りで歌わせる」という歌詞があります。その映像を早急にくださいとMV監督の寿司くん(ヤバTのこやまくん)から言われ、なんとしても札幌で撮影をしなくては…どこかにちょうどいいお世話になっている人いないか、と探していたんです。それで、そのとき初対面だった二人に無理を言って歌っていただきました。デビュー前の初対面、まだ1ミリも仲良くないころでしたが、二人はすぐOKしてやってくれました。ありがたかったですね。そんなわけで「MUSIC VIDEO」のMVにはCreepy Nutsの二人が登場してくれています。それ以来、お互いの作品に対してコメントをし合ったり(RくんがTVで僕のことを「150kmの球を余裕で投げられる人。でも投げてるのはボールじゃなくておはぎ」と評してくれたのも、僕の代名詞となっていてうれしく思っています)、対バンをなんだかんだ年1~2回やるようになり徐々に距離を縮めていきました。数年前に打ち上げの居酒屋で3人だけで話したことがあります。3人ともお酒をそんなに飲まないので、コーラを注文して「体の一部を改造するならどこがいい?」とか、しょーもない話をずっとしていました。めちゃくちゃ楽しい時間で記憶に残っています。この連載で何度か話していますが、僕は譜割りにすごくこだわりがあります。彼らはそれが素晴らしい。日本と海外のラップをきちんと聴き込んで日本語詞に合う言葉の流し込み量やリズムを考えている。Rくんのワードセンス、それに合う松永のトラック。奇跡のような2人が出会ったなと思います。二人の快進撃をずっと見ていたいし、僕も同世代アーティストとして一緒に年を取っていきたいなと思っています。おかざきたいいく現在、自身キャリア最多公演数となるワンマンツアー「JAPAN TOUR」開催中。12月まで、17道府県で18公演を行う。岡崎体育ワンマンコンサート「BASIN TECHNO」@さいたまスーパーアリーナのライブ音源が配信中。※『anan』2022年11月16日号より。写真・小笠原真紀ヘア&メイク・大矢佑奈(KIND)文・梅原加奈(by anan編集部)
2022年11月12日意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「静岡水害と災害報道」です。自治体の連携と報道の重要性を再確認した一件。9月23~24日、台風15号の影響で静岡県は記録的な大雨に襲われました。川の氾濫、土砂災害により、静岡市清水区の水道を供給する川の取水口が破損し、区の8割にあたる約6万3000世帯で断水し、1週間経っても半数程度しか復旧がなされませんでした。静岡の災害に関しては報道量も少なく、自衛隊の派遣も遅れました。被害は10月17日時点で、死者3名。全壊、半壊、一部損壊、床上浸水、床下浸水合わせて8448棟です。SNS上では「なぜこの被害をメディアは伝えてくれないのか」という不満が相次ぎました。投稿された映像や画像を見ると、町全体が水に浸かり、大規模な土砂災害が起きており、山間部では孤立した集落も生まれていました。時期がちょうど安倍元総理の国葬と重なったため、さまざまな憶測や不信感を招き、静岡県が自衛隊派遣要請を行ったのが災害発生から2日後だったということにも不満の声が膨らみました。マスコミは、各地の災害を都道府県の発表で知り取材に動きます。今回の件は、実は静岡市と静岡県の連携がうまくいっておらず、掛川市などは被害状況がすぐにあがりましたが、静岡市のみ翌日の夕方まで、被害が県に知らされていませんでした。報道も自衛隊派遣も、それが原因で初動が遅れてしまったのです。報道のないなか、SNSを利用している人は、被害状況や給水などの情報を入手できましたが、そうでなければ、何が起きているのか、どういう支援が得られるのかもわからない状況が続いていました。これから報道は、自治体の発表と市民発信の両方を使い、いち早く伝えることが必要になるでしょう。発生翌日に清水区に入り、取材をしたところ、飲料水は比較的入手できたけれど、トイレを流したり、体を拭くなど、生活用水が圧倒的に足りず、給水があっても何に溜めて運べばいいのかとても困ったと話していました。静岡県は地震や富士山噴火に備えて防災訓練を徹底しています。それでも当事者になると戸惑うことが多くあったと言います。災害対策には平時からの綿密な準備と、各所連携する仕組みの必要性にあらためて気付かされます。ほり・じゅんジャーナリスト。元NHKアナウンサー。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。Z世代と語る、報道・情報番組『堀潤モーニングFLAG』(TOKYO MX平日7:00~)が放送中。※『anan』2022年11月16日号より。写真・小笠原真紀イラスト・五月女ケイ子文・黒瀬朋子(by anan編集部)
2022年11月12日岡崎体育の連載、「体育ですけど、オンガクです」。今回のテーマは「みんなのうた」です。ヒャダインさんと一緒にやっていたEテレの音楽番組『ヒャダ×体育のワンルームミュージック』のシーズン3が終了しました。この番組の最後の企画で『みんなのうた』とコラボしました。10月の放送で今月の歌として流れていたのですが、YOASOBI with ミドリーズの「ツバメ」のパラデータ(楽器だけ、ボーカルだけなどそれぞれ個別の音源データ)を提供し、視聴者のみなさんに自由にリミックスやアレンジしてくださいと募集。そこで集まったものを、僕とヒャダインさん、そしてYOASOBIのお二人と一緒にミックスをして、新しい「ツバメ~ワンルームミュージックver.」を作り上げました。『みんなのうた』は日本で暮らしていたら必ず通る、子供のころに最初に出合う音楽番組ではないでしょうか。僕は京都の宇治市出身ですが、僕の住んでいるエリアでは12チャンネルが教育テレビ(今のEテレ)でした。NHK総合は2チャンネルです。僕はおじいちゃん、おばあちゃんと一緒に暮らしていたので、テレビといえばこのどちらかのチャンネルがついていることが多かった。だから、学校から帰ってきてふとテレビを見ると『みんなのうた』が流れている、なんていう場面がすぐに思い出されます。そうやってずっと見てきた番組に参加できたことはうれしい経験でした。聴いてきた曲で思い出に残っているものもあるのですが、タイトルがどうしても思い出せません。声変わりするギリギリ前くらいの男の子が歌うバラードソング。メロディラインが不思議だけど美しかった。たぶん、ここ10年以内に聴いたものだと思います。もし、この曲じゃないかな?と思うタイトルがあれば、こっそり僕に教えてください。『みんなのうた』は、“みんなのうた”というくらいですから老若男女に愛されるような曲じゃないといけないですよね。最近の楽曲のラインナップをみると、けっこういろんなミュージシャンの方が制作されているので、どういう選択基準なんだろうというのは気になります。オリジナル曲も多いのでしょうか。岡崎体育も『みんなのうた』に合う楽曲は得意だと思います。NHKさんとは『ワンルームミュージック』をはじめ、デビュー以降7年間いい関係を構築できていると思うので、ぜひ楽曲制作者選びで困った時には、声をかけてほしいです。おかざきたいいく現在、自身キャリア最多公演数となるワンマンツアー「JAPAN TOUR」開催中。12月まで、17道府県で18公演を行う。岡崎体育ワンマンコンサート「BASIN TECHNO」@さいたまスーパーアリーナのライブ音源が配信中。※『anan』2022年11月9日号より。写真・小笠原真紀ヘア&メイク・大矢佑奈(KIND)文・梅原加奈(by anan編集部)
2022年11月05日意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「干ばつ」です。干ばつを機に広がる紛争。世界に関わる問題。世界で異常気象が広がっています。日本や台湾が台風や大雨の被害を受ける一方で、アメリカやヨーロッパではこの夏、熱波が続き、干ばつが深刻な状況に。8月に欧州委員会の欧州干ばつ観測所は、欧州の6割以上の地域が干ばつの危険にさらされており、渇水状況は、過去500年で最悪と発表しました。アメリカではカリフォルニア州や中西部で干ばつが発生。中国は長江流域を中心に干ばつが続き、山火事も相次いで起こりました。アフリカの干ばつも拡大しており、西アフリカでは、干ばつと紛争により過去最悪の食料危機にさらされています。干ばつにより水が枯れてしまうと、農作物が生産できず飢餓に陥ります。人々の暮らしが貧しくなれば、奪い合いが始まり紛争が広がります。すると、世界中の武器がそういう場所に集中し、武装勢力が活動を活発化させるために、拠点を置くようになります。西アフリカのブルキナファソは、比較的治安の安定していた国でした。ところが、気候変動により水がめが枯渇し、貧しさから紛争当事国に変わってしまいました。ブルキナファソ、マリ、ニジェールなどのサヘル地域では、イスラム過激派組織の略奪が相次ぎ、市民が家を追われ難民になっています。そして、マリでは’20年と’21年に、ブルキナファソでは今年の1月と10月にクーデターが起きました。洪水や干ばつで農作物の収穫量減少が深刻化、ニジェールは’21年の穀物生産は前年比39%減少、マリでは15%減りました。’21年11月時点でブルキナファソの約260万人が食料危機に瀕していました。WFP(国連世界食糧計画)は、食料を届けるだけでは根本解決にならないので、干ばつ地域で食料の生産ができる取り組みに力を入れ始めました。砂漠化した土地に半円状の窪みを作り、雨季に雨が溜まるようにし、緑化を進めるというものです。草の根的で時間のかかる方法ですが大事な試みです。8月のTICAD(アフリカ開発会議)で、日本政府はアフリカ地域に対して官民総額300億ドル規模の資金投入を約束しました。支援を行うことが、結果的に世界の平和につながることを知っていただきたいと思います。ほり・じゅんジャーナリスト。元NHKアナウンサー。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。Z世代と語る、報道・情報番組『堀潤モーニングFLAG』(TOKYO MX平日7:00~)が放送中。※『anan』2022年11月9日号より。写真・小笠原真紀イラスト・五月女ケイ子文・黒瀬朋子(by anan編集部)
2022年11月05日「10月下旬にTBSアナウンサーの小笠原亘さん(49)が、ゴルフ練習場から救急車で運ばれる騒動があったのです」こう話すのは東京都内にあるゴルフ練習場の常連客だ。TBSで中継されるゴルフのマスターズ・トーナメントのメイン実況や『炎の体育会TV』(TBS系)などを担当する小笠原アナ。`21年4月に松山英樹選手(30)がマスターズで日本人初優勝を成し遂げた際も小笠原アナは実況しており、松山の優勝にもらい泣き。あまりの感動で言葉が出てこず55秒間沈黙したことは話題となった。そんな小笠原アナが、プライベートで訪れていたゴルフ練習場でいったい何があったのかーー。「この日、施設の3階の中央あたりで練習していた人々が突然ざわつきだしました。どうしたのかと思い見に行ってみると、小笠原さんがいて左こめかみあたりから大量に出血していましたね。ゴルフグラブが頭に当たったのでしょう。練習場の関係者が救急車を手配して、小笠原さんは救急車で搬送されていきました」(前出・常連客)ゴルフ練習場を騒然させた今回の事故。小笠原アナ自身も、10月24日に出演したラジオ『ジェーン・スー生活は踊る』(TBSラジオ)でこう語っていた。「クラブがですね。左の眼の眉毛のあたりにドーンとあたりまして。アイアンって鉄でできたあれなんですけど。それでスパッと切れまして。ちょっと何針か縫う。眉毛のところ」同放送ですでに腫れは引いており、脳の検査も問題はなかったと明かしていた小笠原アナ。今回は大事に至らなかったようだが、ゴルフ中のケガにはご用心を。
2022年11月03日岡崎体育の連載、「体育ですけど、オンガクです」。今回のテーマは「顔出しNG」です。最近、注目を集める顔出しがNGのアーティストたち。Adoさんや、先日共演させていただいたyamaさんなど活躍されている方がたくさんいます。過去を振り返れば、KISS(キッス)やSlipknot(スリップノット)など顔塗りや覆面タイプのバンドはこれまでもいました。顔を明かさないでいると、ミステリアスであったり、素性が明らかになってないというベールに包まれたアーティスト性を守ることができて、バンドやアーティストの方向性を打ち出しやすい、演出しやすい効果があると思います。また、今の時代だと私人としてのプライバシー保護にも役立っていますよね。SNS時代ですから、顔出ししているとどこにいてもすぐに見つかってネットに晒されてしまう危険性がある。そもそも顔出ししていなければ、そのリスクを減らすことができます。さらに言うと、ネットでの誹謗中傷を避けることだってできます。今は匿名でなんでも言えてしまいます。容姿や体型の部分でいらぬ決めつけをされたり、ひどい先入観のあることを言われてしまう可能性も高い。だったら、顔出ししなければそういったフィルターを取っ払って“歌”だけ、“音楽”だけを聴いてもらえる。時代が進むにつれて、そこはどんどん変わっていくと思いますし、変わっていくことがいいことだと僕は思っています。ミュージシャンだって漫画家や小説家の方々と同じです。別にどんな顔をしているか、どんなルックスかなんて関係ない。作品がおもしろければ読まれるし、評価される。それと同じで、いい音楽であれば音楽そのものだけで評価されるというのはいいことだと思います。僕は自分自身が表に立ってやるのが好きですし、このスタンスが自分に合っていると思っていますが、もしそうじゃない別路線でやるとしたら、顔出ししないでVTuberとして活動するのもいいなとか思ったりします。『風の谷のナウシカ』に出てくる巨神兵みたいなルックスのVTuberで、しゃべるたびに肉がだらだらとただれ落ちるタイプのキャラクターです。岡崎体育とはまったくの別人格でやりたい。声もワンオクターブくらい低くしてゲーム配信とかしたいですね。名前ももう決めています。真の神と書いて「真神(しんしん)」です。岡崎体育が楽曲提供して歌わせてもいい。誰か技術的にできる方がいたら組んでやりませんか?おかざきたいいく現在、自身キャリア最多公演数となるワンマンツアー「JAPAN TOUR」開催中。10月~12月にかけて17道府県で18公演を行う。岡崎体育ワンマンコンサート「BASIN TECHNO」@さいたまスーパーアリーナのライブ音源が配信中。※『anan』2022年11月2日号より。写真・小笠原真紀ヘア&メイク・大矢佑奈(KIND)文・梅原加奈(by anan編集部)
2022年10月28日意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「内密出産」です。命を守るために、ルールが整備され、合法化された。内密出産とは、匿名での出産を望む妊婦が、病院にだけ身元を明かして出産すること。9月末に国は内密出産の初のガイドラインを示しました。これまで内密出産は、違法の可能性がありました。2021年、熊本市の慈恵病院が未成年の女性の匿名での出産を受け入れ、世に是非を問う形で流れが変わりました。赤ちゃんが生まれると出生届を出しますが、病院が母親に代わり届け出をするときに、母親の名前を知りながら空欄にするのは法律に抵触します。また、帝王切開になった場合、本人と家族の同意が必要ですが、内密出産の場合には家族と相談できない状況にあり、万一手術で母親が亡くなってしまったら、病院が家族から損害賠償を請求される可能性がありました。生まれた子供が成人して自分の出自を知りたいと思ったときに、身元を開示するのかなど、ルールがないと、病院の請け負うリスクが大きく、受け入れが難しかったんですね。しかし、病院が内密出産を受け入れなければ、尊い命が失われます。誰にも頼れずに母親がトイレで産み落とし、赤ちゃんを殺してしまうような事件も。慈恵病院が赤ちゃんポスト(育てることができない赤ちゃんを、母親が匿名で託すことができる施設)の運用を始めたのも、社会問題化している孤立出産を解決したいという思いからでした。内密出産のガイドラインには、慈恵病院の例をベースに、母親の氏名や身元を病院内で適切に管理すること、親や医師が出生届を出さなくても、市区町村長の権限で戸籍が作れること、仮名でカルテを書いても医師法に問われないことなどが盛り込まれました。内密出産の希望者は潜在的に多くいるといわれています。望まない妊娠に悩んだら、各自治体の妊娠相談ホットラインを利用してほしいと思います。妊娠したかもしれないという段階での相談も受け付けています。これらの情報も、性教育とともに義務教育のなかできちんと伝えるべきでしょう。孤立出産で事件が起きると、母親が加害者として罪に問われますが、男性の側に責任追及がなされないというのも大きな問題だと思います。ほり・じゅんジャーナリスト。元NHKアナウンサー。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。Z世代と語る、報道・情報番組『堀潤モーニングFLAG』(TOKYO MX平日7:00~)が放送中。※『anan』2022年11月2日号より。写真・小笠原真紀イラスト・五月女ケイ子文・黒瀬朋子(by anan編集部)
2022年10月28日“斜陽族”という流行語を生み出し、大ベストセラーとなった太宰治の名著「斜陽」執筆75周年を記念する映画『鳩のごとく蛇のごとく斜陽』。この度、宮本茉由、水野真紀、萬田久子が演じた没落貴族の娘と母、居酒屋の女将と、戦後を生き抜く女性たちの生きざまをとらえた場面写真が一挙解禁となった。いまもなお多くの読者に読み継がれている「斜陽」は、戦後の日本を舞台に没落貴族の娘・かず子と彼女が想いを寄せる売れっ子作家との“恋と革命の物語”。古い道徳とどこまでも争い、“太陽のように生きる”道ならぬ恋につき進んでいく主人公かず子を演じるのは映画デビューにして初主演の宮本さん。最後の貴婦人の誇りを持ちながらも病床に伏してしまう母親には、時代劇から現代劇まで幅広く活躍する水野さん。かず子が叶わぬ想いを寄せる作家・上原(安藤政信)が毎夜のように訪れる居酒屋「千鳥」の女将を、映画、ドラマ、舞台、CMなど、幅広いジャンルで活躍する萬田さん。今回解禁となった場面写真では、父を失ったかず子と母・都貴子が、東京西片町の実家を売って西伊豆へと電車で向かう場面が。困窮していく生活のために地方へと向かう2人の曇った表情が印象的。また、引越した先で、隣の農夫から畑仕事を教えてもらったかず子が農作業衣を着ている姿、病床に伏しながらも気品あるブラウス姿の都貴子がとらえられている。そして、萬田さんが演じる「千鳥」の女将が笑顔で客にお酌する場面。太宰が描いた終戦後の日本、混沌とした社会を真っ直ぐに生きようとするかず子、病に冒されながらも気品を保ち続ける都貴子、苦楽を内に秘めて女将を続ける3人の女性たち。それぞれの演技にも注目だ。『鳩のごとく蛇のごとく斜陽』は10月28日(金)よりTOHOシネマズ甲府先行、11月4日(金)よりTOHOシネマズ日本橋ほか全国にて公開。(text:cinemacafe.net)■関連作品:鳩のごとく蛇のごとく斜陽 2022年11月4日よりTOHOシネマズ日本橋ほか全国にて公開※甲府先行あり©2022『鳩のごとく蛇のごとく斜陽』製作委員会
2022年10月24日岡崎体育の連載「体育ですけど、オンガクです」。今回のテーマは「日本武道館」です。東京に住み始めて3年たちましたが、実はつい先日初めて日本武道館の中に入りました。というのも、8月に僕の盟友ミュージシャンであるヤバイTシャツ屋さん(以下ヤバT)が初の武道館ライブを開催したんです。僕はそのライブを観に行ったのですが、それで初めて日本武道館の地を踏むことになりました。ライブは当然ですがとても良かったです。全国のさまざまな“ぶどうかん”を回るというコンセプトのツアーファイナルとしての日本武道館。そんなアイデアも面白いですし、SNSでいろんな方策を打ち、ツアーファイナルは見事にチケット完売。メンバーたちの努力が実ったステージを僕も目撃できてよかったなと思いました。彼らはやりきっていました。その一方で、やっぱり日本武道館ってバンドの聖地なんだなと感じました(いや、本来は武道の聖地なのですが……)。ここで初めてロックコンサートを行ったのがビートルズなのだそうです。それ以来、世界にその会場の名が知られるようになり、日本だけでなく世界中のミュージシャンが「日本でロックコンサートをやるなら日本武道館で!」と、ひとつの象徴としての場所になっていったとか。今では、アイドルグループなども日本武道館のステージをひとつの目標とすることがありますが、そのスタートにはビートルズがいた。僕はソロミュージシャンなので、なんだかその波には乗れていないような感じがしています。そもそも、「さいたまスーパーアリーナでライブをする」という目標を立てて活動をしていたので、日本武道館という場所のことをじっくり考えることがこれまでありませんでした。でも、今回、ヤバTのライブで訪れてみて、僕もこの歴史深いステージに立ってみたいなと思いました!ヤバTのメンバーたちは僕とのツーマンをやってもいいと言ってくれているみたいです。それもいいかもしれません。あと、やっぱりこういう音楽の殿堂といえるような歴史ある場所に、もっと若い人たちに行ってほしいとも思いました。今やオンラインライブも当たり前になって、家にいても観ることができるし、それもいいことです。でも、錚々たるミュージシャンたちが踏んできたステージに自分の推しているアーティストも今、立っている。そういう歴史の価値やカルチャーの蓄積を現場で、目で、肌で、感じるのもいいものだなと思います。おかざきたいいく自身キャリア最多公演数となるワンマンツアー「JAPAN TOUR」がスタート。10月~12月にかけて17道府県で18公演を行う。岡崎体育ワンマンコンサート「BASIN TECHNO」@さいたまスーパーアリーナのライブ音源が配信中。※『anan』2022年10月26日号より。写真・小笠原真紀ヘア&メイク・大矢佑奈(KIND)文・梅原加奈(by anan編集部)
2022年10月22日意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「国葬」です。開催決定経緯に問題あり。国を分断する結果に。7月に銃撃を受けて亡くなった安倍元首相の国葬が9月27日に日本武道館で行われました。参列者は約4200人。うち700人強が海外から参列。会場の外の一般献花には想定以上の人が駆けつけ、長蛇の列となり、2万6000人近くが花を手向けました。並んでいる方に取材したところ、長期政権で世界に日本の存在を示したことに感謝する声がいくつも聞かれました。その一方で、国葬に反対の声を上げる市民グループが武道館や国会議事堂周辺でデモを行いました。日比谷公園、大阪、広島などでも反対の集会が開かれ、憲法改正や非正規雇用、ジェンダー問題など安倍政権が残した課題に対して各グループが訴えていました。直前の世論調査では、反対が賛成を上回っており、9月5日時点で国葬中止を求める署名は40万人を超えていました。国を二分するような状況。これだけ分断が深まったのは、国葬の基準が曖昧で、国会が開かれずに閣議決定し、国民に対して丁寧な説明のないまま実行されてしまったことが大きいです。戦前には「国葬令」があり、皇族と、国家に功労があった者には、特別の意味をもっての国葬が開かれました。ところが何を功労とするのか規定が難しく、戦後、国葬令は失効しました。戦後に皇族以外で国葬が執り行われたのは、1967年の吉田茂元首相だけです。当時の天皇が「なんとかしてやってくれ」と言い、国会議員のなかで根回しがなされ、国葬を開く機運を作ったと関係者は話しています。ちなみに佐藤栄作元首相は国費以外に国民から寄付を募った「国民葬」。中曽根康弘元首相は内閣と自民党の「合同葬」の形をとりました。今回の国葬にかかった費用は警備費などを含めて総額約16.6億円といわれています。岸田首相は、国葬を開く理由の一つに、弔問外交を掲げていました。今回のような開催経緯の不透明さは、世界に対しても、ガバナンスの利いていない国という印象を与えかねません。人々の悼む気持ちまで分け隔てられていったことは残念でなりません。今回どういう議論があったのかを記録に残し、次世代の教訓として伝えることは大事な責任ではないかと思います。ほり・じゅんジャーナリスト。元NHKアナウンサー。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。Z世代と語る、報道・情報番組『堀潤モーニングFLAG』(TOKYO MX平日7:00~)が放送中。※『anan』2022年10月26号より。写真・小笠原真紀イラスト・五月女ケイ子文・黒瀬朋子(by anan編集部)
2022年10月22日株式会社シソン(所在地:東京都渋谷区)は、代官山シソンギャラリーにて、2022年11月10日より19日まで、陶芸家 杉田真紀の個展を開催いたします。器作品 1余計な装飾を施さないシンプルなフォルム。余白を感じさせながらも、柔らかくカラフルな色が目を惹く器。北海道で作陶する杉田真紀さんは、制作の基本である色化粧土を使って、北海道の大自然の風景からもらったインスピレーションを作品の色に込めています。また、イタリア語で「手」を意味するManoをアトリエ名にしたように、手に馴染む質感も大切にして作陶しています。今回の個展では、原点に戻るという意味も込めて、よりシンプルで余白を感じさせるうつわを中心に新作の展示と販売いたします。【イベント概要】イベント名: 杉田真紀 陶展開催日時 : 2022年11月10日~19日開催場所 : シソンギャラリーアクセス : 代官山駅より徒歩8分、渋谷駅より徒歩10分詳細ページ: *会場が混み合う場合はお待ちいただくことがございますことご容赦下さい。*感染対策を万全にて開催します。ご来場の際は、マスク着用、手指の消毒をお願いいたします。*会期中後半より、シソンギャラリーのウェブサイトからの一部作品のご購入が可能になります。ギャラリーのウェブストアにてご覧くださいませ。 【杉田真紀 プロフィール】北海道札幌市生まれ。OL時代より、かねてから興味のあった陶芸教室に通い始める。2009年、札幌市にてアトリエ&ギャラリー「Mano」をオープン。現在、個展や企画展を中心に活動、制作している。 詳細はこちら プレスリリース提供元:@Press
2022年10月20日岡崎体育の連載「体育ですけど、オンガクです」。今回のテーマは「体力作り」です。10月1日の「奈良NEVERLAND」を皮切りに、岡崎体育史上最多公演数となるライブハウスワンマンツアーが始まりました。長い期間をかけて回るツアーです。体調管理をしっかりしないといけないと感じています。ツアーだけでなく、提供楽曲の制作やレギュラーの仕事などももちろんみっちりと入っています。どうしてこんなに入っているのだろうか、と不思議に思うくらいに入っています。これは途中で倒れるわけにはいきません。ならばと、なにか体を動かして体力作りをしたいなと思うのですが、地道に続けるトレーニングが僕はどうも苦手みたいです。筋トレも嫌だし、ただ走るだけとか、プールで泳ぐだけとかが向いてない。誕生日に自転車を買って自転車に乗るというプランも立ててみたのですが、結局買わずに今日に至っています。家にはエアロバイクもあります。このあいだ、『ストレンジャー・シングス』の新しいシリーズをぶっ通しで見たのですが、見ている間、エアロバイクに乗ればよかったなと思いました。ドラマの中の子どもたちと一緒の気分で自転車を漕いだら、それだけで2kgは痩せたやろうな、と思います。でも、ソファにしっかりと座って見てしまいました。基礎体力をつけるには地道なトレーニングがいちばん。それはわかっているのですが、どうしても体を動かすことにゲーム性を求めてしまいます。もっと言えば、球技が好きです。子どもの頃は少年野球をしていましたし、学生時代はテニスをしていて、最近はミュージシャン仲間たちとフットサルをしていました。そういう類のスポーツは楽しくてのめり込むことができます。でも、コロナ禍以降はフットサルも友人たちと集まって試合をすることがなかなか難しくなってしまい、今はほとんど球技もできていません。これでは体力は落ちていく一方です。でも、よく考えたらライブハウスはアリーナやホールのステージと比べて狭いです。ステージの端から端まで走らないといけない、ということもない。「奈良NEVERLAND」なら端から端まで2歩でいけます。ということは、ライブで疲れることはないのではないか?という仮説を今、思いつきました。……いや、そんな言い訳をしないといけない精神状態がよくないですね。とにかく早急に体を動かして邪念を浄化し、長いツアーにしっかりと取り組みたいと思います。おかざきたいいく自身キャリア最多公演数となるワンマンツアー「JAPAN TOUR」がスタート。10月~12月にかけて17道府県で18公演を行う。岡崎体育ワンマンコンサート「BASIN TECHNO」@さいたまスーパーアリーナのライブ音源が配信中。※『anan』2022年10月19日号より。写真・小笠原真紀ヘア&メイク・大矢佑奈(KIND)文・梅原加奈(by anan編集部)
2022年10月15日意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「デジタル庁発足1年」です。課題はあるものの一定の成果はあり。育てることが大事。デジタル庁が発足して、9月で1年が経ちました。大きな目玉として掲げられたのはマイナンバーカードの健康保険証としての利用開始でした。ところが導入機器にコストがかかることや、利用したほうが料金が高くなるなど課題が挙がり、マイナンバーカード自体の普及も物足りなさが残っています。政府でもこれまで紙で管理していたデータをクラウド上に移行し、効率よく使える仕組みが始まることになりました。ただ、そこで使われるクラウドはAmazonとGoogle。いま日本は欧米と歩調を合わせた自由主義諸国のアライアンスにいますが、有事の際、国のデータが、外国のクラウドサービスによって共有されているのは安全なのかという心配もあります。自国のデータをどのようにして守るかはこれから丁寧な議論が必要でしょう。コロナ対応においても、デジタル庁が立ち上がったことで、新型コロナワクチン接種証明書アプリが迅速に開発されました。外国からの渡航者を管理する「Visit Japan Web」の運用も行っています。他にもキャッシュレス法の成立、地方自治体のシステムの標準化、デジタル田園都市国家構想の推進、教育分野のデジタル化や医療情報のDX化、信頼ある自由なデータ流通「データ・フリー・フロー・ウィズ・トラスト(DFFT)」などでも成果を残してきました。デジタル庁は、各省庁とは独立して設置され、霞が関のコンサルタント的な役割を担います。文科省や厚労省、その他の省庁がデジタル化に関して悩んでいるときに、アドバイスや提案ができることを目指した、官民連携の省庁です。デジタル田園都市国家構想、地方創生×デジタル化の政策などで一定の成果があるものの、長時間労働、デジタル庁の民間出身職員が次々に退職するなど、官と民がうまく交じり合っていないという問題も実はあります。とはいえ、発足してまだ1年ですから、ここで成果の有無を判断するのは早計だと思います。長期的視野に立ち、デジタル実装のための担い手たちや政策をしっかりと育てていくことが、今後の日本の成長につながるのではないでしょうか。ほり・じゅんジャーナリスト。元NHKアナウンサー。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。Z世代と語る、報道・情報番組『堀潤モーニングFLAG』(TOKYO MX平日7:00~)が放送中。※『anan』2022年10月19日号より。写真・小笠原真紀イラスト・五月女ケイ子文・黒瀬朋子(by anan編集部)
2022年10月12日岡崎体育の連載「体育ですけど、オンガクです」。今回のテーマは「マクドナルドのCM」です。10月から放送が始まったマクドナルドの新CMをみなさんご覧になっていただけましたでしょうか?木村拓哉さんがビジネスマンを演じる「ひるまック」シリーズのCMに、僕が木村拓哉さんのかわいい後輩役で出演させていただいております。昨日もマックの商品を食べたくらい、マクドナルドが大好きな僕。出演させていただいて、本当に光栄でした!しかも木村拓哉さんとの共演ですよ。これってもう最高峰ちゃうんか?と思いました。こんなちょっと変わったおもしろミュージシャンに、こんな大きなチャンスをいただけるなんて、と信じられない気持ちで今もいます。木村拓哉さんと一緒にハンバーガー食べたのは、かなり自慢できる思い出なのではないでしょうか。木村拓哉さんとの現場は、最初はかなり緊張しました。もちろん、木村さんとはこれが初対面です。やっぱり大御所の方です。現場の緊張感も、これまで僕が経験した現場とはまったく違う!半端なかったです。さらに、ご本人が現場に登場したときの空気というかオーラもすごかった。ピリッと静電気が走るような痺れる感覚がありました。あれは忘れられません。でも、実際にご挨拶をさせていただいてお話をしてみると、ご本人はめちゃくちゃフランクな方で、あれこれと話しかけてくれて、楽しくボケてくれたり、たわいもない話をいろいろしてくれたり、すごく距離を縮めようと木村さんのほうからしてくださった。撮影の合間とかも、演者のたまりの場所にいらっしゃるんです。それでずっとお話をしてくれる。木村さんクラスなら特別な控室とかあっても不思議じゃない。でも全然そういう感じじゃないんです。演技を一緒にするのもすごく楽しかった。いろんなアドリブを次々考えて入れてくる。はっきり言って僕はそれについていくのに必死。でもそのついていく感じも、かわいい後輩役としてええ感じで映っているんじゃないかな、と思います。なんだかすっかりサラリーマン役が板についてきたなと感じています。おいしそうにマックの商品を食べることだけはマジでうまくできたと思っています。これに続いてもっと岡崎体育にいろいろ食べさせてみたい、と思っていただけたらうれしいです。お茶漬け、冷凍シューマイ、カレーライスなんでもおいしく食べますので、オファーお待ちしています!おかざきたいいく自身キャリア最多公演数となるワンマンツアー「JAPAN TOUR」がスタート。10月~12月にかけて17道府県で18公演を行う。岡崎体育ワンマンコンサート「BASIN TECHNO」@さいたまスーパーアリーナのライブ音源が配信中。※『anan』2022年10月12日号より。写真・小笠原真紀ヘア&メイク・大矢佑奈(KIND)文・梅原加奈(by anan編集部)
2022年10月08日意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「NPT会議決裂」です。核の危機感を持ち、橋渡しに、本気の姿勢を見せて。ウクライナでは、ロシア軍がヨーロッパ最大級のザポリージャ原子力発電所を占拠し、原発を盾に攻撃を強めています。本来、国際法により、原発は攻撃してはいけないと定められているのにもかかわらず、原発のある地域を舞台にした戦闘が続いています。国際原子力機関(IAEA)が現地に入り、誰が攻撃し、何が起きているのか、原発事故が起きないよう策をとっていますが、送電網が遮断されるなど、非常に深刻な事態に陥っています。8月にはNPT(核兵器不拡散条約)再検討会議がニューヨークで開かれました。ここでは、核兵器の不拡散だけではなく、現在のウクライナ情勢を背景に、原子力は平和利用のために使うことを盛り込んだ最終合意文書を作ろうとしましたが、ロシアは一貫して、「原発を攻撃していない。ロシアに非があるようなことを盛り込むのであれば、文書に署名できない」と主張。最終的に文書はまとまりませんでした。前回の検討会議でも、最終合意文書はまとまらず決裂しました。中東の非核化を求め合意を取ろうとしたのですが、土壇場になってアメリカが核保有国のイスラエルに配慮して、合意できないと言い出し否決されました。NPTは2回連続、核を持つ国は大きな脅威であり、保有国にしか交渉力がないことを見せつける結果になりました。核保有国も非保有国も一致団結しようと昨年、核兵器禁止条約が発効しました。しかし、核保有国は不参加。広島選挙区選出の岸田総理は両者をつなぐ橋渡しをしたいと話していましたが、核兵器禁止条約には参加せず。NPT再検討会議に乗り込んだものの、何か成果を残したわけではありません。いま、核兵器がいつ使われてもおかしくない緊張が続いていますが、その危機感が日本では共有されていないように思います。今年は、核兵器や原子力の平和利用の大きなターニングポイントとなる年になるはずでした。次のチャンスは、来年のG7。岸田総理の肝入りの企画で、広島で開催されます。核保有国に対し、「核が再び攻撃に使われるようなことがあってはならない」と、粘り強く交渉する姿勢をぜひ世界に打ち出してほしいと思います。ほり・じゅんジャーナリスト。元NHKアナウンサー。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。Z世代と語る、報道・情報番組『堀潤モーニングFLAG』(TOKYO MX平日7:00~)が放送中。※『anan』2022年10月12日号より。写真・小笠原真紀イラスト・五月女ケイ子文・黒瀬朋子(by anan編集部)
2022年10月08日宮本茉由が主演を務め、安藤政信、水野真紀、柄本明、萬田久子ら実力派も集結する『鳩のごとく蛇のごとく斜陽』。この度、作品を彩るキャストたちの場面写真が一挙解禁となった。「人間は恋と革命のために生まれてきた」太宰治の名言が刻まれた名著「斜陽」執筆75周年、また山日YBSグループ創業150周年記念作品として太宰治が新婚時代を過ごした山梨県内でも撮影された、戦後の日本を舞台に“恋と革命の物語”が綴られる本作。名匠・増村保造の脚本で描く“真っ直ぐに生きる女”が希望を見出す物語となっている。映画初主演となる宮本さんが演じるのは、戦後の混沌とした社会で古い道徳とどこまでも争い<太陽のように生きる>道ならぬ恋につき進んでいく主人公かず子。そして、彼女が思いを寄せる作家・上原を安藤さんが演じている。今回解禁された場面写真は、宮本さん、安藤さんのメインカットに加え、没落貴族の母、都貴子を端正に演じた水野さん、戦争から帰還し夢と現実の狭間で貴族の血に抗いながら破滅的な日々を過ごす弟役の奥野壮の姿をとらえている。さらに、上原行きつけの酒場の女将役の萬田さん、病に冒された都貴子を診察する三宅医師役の柄本さんの姿も初披露。実力派俳優の存在が真っ直ぐに生きる女性、かず子と自由に生きる男・上原の混沌の時代に放たれる“恋と革命の物語”に彩りを与えている。『鳩のごとく蛇のごとく斜陽』は10月28日(金)TOHOシネマズ甲府先行、11月4日(金)よりTOHOシネマズ日本橋ほか全国にて公開。(text:cinemacafe.net)■関連作品:鳩のごとく蛇のごとく斜陽 2022年11月4日よりTOHOシネマズ日本橋ほか全国にて公開※甲府先行あり©2022『鳩のごとく蛇のごとく斜陽』製作委員会
2022年10月07日意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「赤字ローカル線」です。技術を使い、町に付加価値をつける好機にしては?赤字ローカル線の問題が深刻になっています。少子高齢化や過疎化が大きな要因ですが、コロナ・パンデミックにより、JRの経営を支えてきた新幹線の利用客が激減。赤字を補填できなくなったことが大きく作用しています。1kmあたりの1日の平均乗客数1000人未満を主な基準に、現在、JR東海を除くJR5社の61路線100区間が見直しの対象になりました。赤字路線が廃止になってしまうことは、地域にとっては死活問題。住民の足が失われ、移動が困難になるだけでなく、地域の誇りが失われてしまうんですね。電車が通ることで、都市部とつながり、人の往来によって文化が育まれます。赤字でも朝夕だけ運行するなど路線をなんとか維持してきたのは、学生の通学に必要だったからです。地域に学校は必須。学校を失えば、その土地で子供を産み育てようというモチベーションもなくなりますから、将来的に町は廃れていってしまいます。そんななか、北海道の上士幌町では新しい試みを始めています。この地域は30年以上前に鉄道が廃止になり、帯広空港からのアクセスは限られた本数の路線バスしかありません。観光客はレンタカーで移動し、運転手不足のためタクシーはほとんど走っていません。そこで町はデジタル化と新しいテクノロジーを導入し、空港と町の間に自動運転バスを走らせることにしました。上士幌町は自動運転車の実証実験の場になっているんですね。時速30~50kmのゆったりしたスピードで、観光客は雄大な農地や牧草地を眺めながら、自動運転バスのなかでお弁当やお酒を楽しんだりして過ごし、町まで来ることができます。また、鉄道の代わりに、ドローンと陸送を組み合わせたハイブリッド型の輸送も検討中です。「赤字ローカル線の見直し」というと、後ろ向きなニュースとして語られがちです。しかし、最新技術を駆使することで、町や観光に新たな付加価値をつけることも可能になります。国鉄の民営化により、これまでは地域にインフラを背負わせすぎたかもしれません。国や地域の補助金を投入することで、新産業を起こすことも今後は考えていく必要があるでしょう。堀 潤ジャーナリスト。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。Z世代と語る、報道・情報番組『堀潤モーニングFLAG』(TOKYO MX平日7:00~)が放送中。※『anan』2022年10月5日号より。写真・小笠原真紀イラスト・五月女ケイ子文・黒瀬朋子(by anan編集部)
2022年10月02日