お笑い芸人の陣内智則(43)がフジテレビの松村未央アナウンサー(30)と結婚に向け準備中であることが25日、分かった。陣内の事務所関係者らが明らかにした。婚姻届けを松村アナの誕生日の翌日である6月30日に出す予定だという。 ’14年に一部週刊誌の報道で熱愛が発覚。陣内は交際を認め、陣内の単独ライブには松村アナが両親とともに駆け付けるなど順調に愛を育んできた。 いっぽうで、陣内は’07年に女優の藤原紀香と結婚し、2年後の’09年に離婚。当時、結婚式で弾き語りをしたことが話題になり、芸人からもよくテレビでいじられていたが、ネットでも「陣内さん幸せになって!」と祝福するコメントとともに「なに歌うのかな~」「曲作ってもらわないと!」と今回の再婚報道でまた歌に関心が高まっている。
2017年05月25日くいだおれ太郎フルーツパーラー「たろうず パーラー(TARO‘s PARLOR)」が、大阪・道頓堀に2017年4月27日(木)オープン。「くいだおれ太郎の人形焼き店」の跡地に登場する「たろうず パーラー(TARO‘s PARLOR)」では、お好み焼きやたこ焼きなどの”粉もの”以外にスイーツも大阪名物として広げていきたいという思いから、ミックスジュース、フレッシュスムージーなどカラフルなメニューを用意。目玉となるのは、旬の果物を使用した約28㎝のフルーツ飴「キャンディーツリー」。サイズは大・小2サイズで、どちらもフルーツとマシュマロを組み合わせている。大迫力なビジュアルは、思わず写真を撮りたくなってしまうほどフォトジェニックな仕上がりだ。【ショップ詳細】くいだおれ太郎フルーツパーラー「たろうず パーラー(TARO‘s PARLOR)」オープン日:2017年4月27日(木)住所:大阪府大阪市中央区道頓堀1丁目7-21営業時間:10:00~22:00<メニュー例>・キャンディーツリー大550円、小350円※大=フルーツ5個+マシュマロ1個、小=フルーツ2個+マシュマロ1個)・オオサカミックス400円・フレッシュスムージー600円・フルーツカップ680円※価格は全て税込価格。
2017年04月24日シンガーソングライターのピコ太郎が6日深夜、自身のツイッターを更新。初の武道館ライブ「ピコ太郎 PPAPPT in 日本武道館」の感想をつづり、ゲスト出演した仲間との打ち上げの写真も公開した。ピコ太郎は「言葉に出来ないピコ。武道館は広くて大きくて…皆様の愛や声援はもっと大きくて…最高のパーティーでしたピコ」と感無量の様子。ゲスト出演した爆笑問題の田中裕二、太田光、くりぃむしちゅーの上田晋也、歌手の五木ひろしらと打ち上げを楽しんでいる写真をアップし、「最高の仲間たちとですぴこ」とつづった。また、ピコ太郎のプロデューサー・古坂大魔王も「打ち上げ…とりあえず一言…俺とピコ太郎は本当にものすごい空間にいる事ができました。皆様のおかげでしかないです」とツイート。「ありがとうございます!!」と感謝の思いを伝えた。予定の1時間半を大幅に上回る2時間半のパフォーマンスで7,000人を魅了した同ライブには、豪華ゲストが多数駆けつけた。くりぃむしちゅーの上田晋也は自身初の前説で沸かせ、相方の有田哲平も高田延彦に扮して開会宣言。爆笑問題は、ネズミ姿の"爆チュー問題"に扮し、時事ネタを交えたトークで笑いの渦に。終盤の「ゲストとPPAP」コーナーでは、歌手の五木ひろし、ももいろクローバーZの派生ユニット・マス寿司三人前らが登場し、自身の楽曲を"PPAP"バージョンとしてパフォーマンスした。
2017年03月07日楽曲「PPAP(ペンパイナッポーアッポーペン)」で世界的にブレイクしたシンガーソングライター・ピコ太郎が6日、自身初となる武道館ライブ「ピコ太郎 PPAPPT in 日本武道館」を開催。ピコ太郎のプロデューサー・古坂大魔王と昔から仲の良いお笑いコンビ・くりぃむしちゅー、爆笑問題をはじめとする豪華ゲストも駆けつけ、笑いあふれるパフォーマンスで観客7,000人を魅了した。はじめに、くりぃむしちゅーの上田晋也が自身初の前説として登場。観客とゲームを交えて拍手や声援の練習をし、「拍手と大きな声援をお願いします。最後まで大いに盛り上がってください」と呼びかけた。その後、相方の有田哲平も高田延彦に扮して登場し、「『PPAPPT』ここに開催することを宣言します」と開会宣言。「ピコ太郎の中のピコ太郎、出てこいや~!」を名ゼリフで笑いを誘った。そして、大スクリーンにかわいらしいピコ太郎のアニメーションが流れた後、いよいよ本人が登場。「PPAP」で会場の熱気を急上昇させ、「ウェルカム武道館~! お客さん3人くらいかと思っていたんですけど、こんなにたくさん…ありが玉置浩二でございます」と喜んだ。中盤では、「でたらめな歌」の音楽が流れる中、爆笑問題がネズミ姿の"爆チュー問題"としてサプライズ登場。同じくネズミに扮したピコ太郎と爆笑トークを繰り広げた。"たなチュー"(田中裕二)も"おおたぴかり"(太田光)も「すげーな、ピコチュー!」「出世したな、武道館だろ? 紅白も出たんだろ?」と活躍を祝福。ぴかり(太田)は時事ネタ満載のトークで大暴れした。また、ピコ太郎がCMに出演した「高須クリニック」の高須克弥院長とのコラボレーションも披露。終盤の「ゲストとPPAP」コーナーでは、歌手の五木ひろし、ももいろクローバーZの派生ユニット・マス寿司三人前、東京スカパラダイスオーケストラらが登場し、自身の楽曲を"PPAP"バージョンとしてパフォーマンスした。フィナーレでは、ライブを盛り上げたゲストに加え、特等席で観覧していたアンジャッシュの児嶋一哉、AAAの宇野実彩子らピコ太郎とゆかりのある著名人もステージに登壇。お祭り騒ぎの中で、ピコ太郎がこの日10回目となる「PPAP」を披露し、「サンキュー武道館!」と感謝。最後は全員で「ウーン! ペンパイナッポーアッポーペン」と声を合わせ、予定時間の1時間半を大幅に上回る2時間半のライブは終了した。なお、古坂大魔王もスクリーンに登場し、ピコ太郎の新曲を紹介。「マンチャマンチャ・ポ・マンチャはロマンチスト」と「I LOVE YOU - アフリカダンスに乗せて-」の2曲の映像を初お披露目した。
2017年03月06日フジテレビの松村未央アナウンサーが、あす27日に放送される同局系トーク番組『ボクらの時代』(毎週日曜7:00~7:30)に出演し、家庭を持つことへの憧れを明かす。今回は、松村アナに、田中みな実、上田まりえという、2009年入社のアナウンサー同期である3人が出演。30歳を迎えた彼女たちが、本音で語り合う。お笑い芸人・陣内智則が交際を公表している松村アナは、明日にでもママになりたいと、家庭を持つことへの憧れを披露。3人の中で唯一局アナとして活動を続けているが、後輩が次々と入り、ベテランになっていく中で、今後の仕事について正直な思いを告白する。田中は、好きな男性に尽くし過ぎてしまうという恋愛エピソードを披露。ほかにも、来年には結婚・妊娠したいという発言の真相や、意中の男性を射止めるアプローチ術、そして、TBSの局アナからフリーに転身して「身のほどを知った」という厳しい仕事の環境も明かす。局アナ時代は「みじめだった」という上田は、日本テレビを退社して、フリーアナでなく"タレント"として活動する理由を告白。また、肉体をひたすら鍛えたり、皿洗いのバイトを確保しながら芸能活動を続けるといったストイックな生活や、局アナ退社時期に大失恋をしたエピソードなどを語る。
2016年11月26日昔話の主人公たちが共演するauのCM"三太郎"シリーズの最新作「夢のスター」編が、1日から全国で放送される。今回は、桃太郎(松田翔太)、浦島太郎(桐谷健太)、金太郎(濱田岳)が幼少期に「俺、スターになる!」「俺も一緒になる!」「じゃ、ボクも!」と笑い合う回想シーンからスタート。桃太郎と浦島太郎が「なりたかったな…」と懐かしそうにする中、金太郎は「なろうよ!」と立ち上がる。浦島が「もう遅いよ~」とあきらめるが、金太郎はそんな声を遮り、「どんどんもらって、どんどん貯めてさ」「スターになって、どんどんもらってさっ!!」とヒートアップ。桃太郎と浦島は引いてしまい、その後金太郎は「どんどんっ!!どんどんっ!!」と激しさを増していくと、浦島は「カネ太郎になってるよ」とツッコミを入れる。幼少期の撮影は3回目で、子供時代の三太郎はすっかり仲良しになり、元気なあいさつで現場入り。ロケ地である山の山頂で夢を語る子供たちの姿に、スタッフは皆「この子たちはどんな大人になるんだろう?」と想像し、将来のスターになることを願って撮影していたそうだ。
2016年11月01日おとぎ話「浦島太郎」をミュージカル化した舞台「TARO URASHIMA」の囲み取材が8月10日(水)に行われ、出演する木村了、上原多香子らが出席した。浦島太郎役となった木村さんは、自身の子どもに「何度説明しても『お椀で鬼ヶ島に行くんでしょう』と言われて(笑)。『桃太郎』と『一寸法師』で、どこにも『浦島太郎』がいないんですけど」と、浦島太郎の存在の薄さをぼやいていた。「TARO URASHIMA」は日本で愛されているおとぎ話「浦島太郎」を、池田鉄洋による新解釈を加えリメイクした作品。なぜ竜宮城へたどり着けたのか、たまて箱とは何だったのか、浦島太郎はどうなったのかなどの謎まで解明する可能性を秘め、コミカルかつシュールな世界観で魅了する。1か月間みっちり稽古をしたというキャスト陣は、終始和やかなムードで取材に対応。木村さんは、「まとまりに欠けますけど、でもすごい楽しいんです」と仲の良さをアピールした。主演という立場ではあるが、「皆さん本当にやさしくて気づかってくれて、そんなに僕自身が頑張ってまとめようと思っていなかったです」と、柔和な表情で答えた。さらに、自分の子どもが浦島太郎を認識していないと話していた木村さんだったが、「でも、ちょっとだけ興味を持っています。この間某CMの歌を熱唱していました。教えているわけじゃないんですけどね(笑)」と、打倒“浦ちゃん”の存在をにおわせる。折しも現在、オリンピック真っ只中。日本勢のメダルラッシュが日々報道をにぎわせている。木村さんは、「応援してた同じ年の内村航平選手が金をとられて、本当にそれだけでテンションが上がって、舞台を頑張ろうと思いました」とパワーをもらったと発言。ヒロイン・乙姫役の上原さんも、「稽古中だったので、なかなか生で見ることはできていないですが、ニュースで日本選手がメダルをとっていると聞くとうれしいし、励みになります」と、熱く答えていた。ほか、囲み取材には斉藤暁、崎本大海、和泉元彌、とよた真帆が出席した。舞台「TARO URASHIMA」は8月11日(木・祝)から15日(月)まで東京・明治座にて上演。(cinamacafe.net)
2016年08月10日昔話の主人公たちが共演するau"三太郎"シリーズの新CMが、9日から全国で放送され、今回は浦島太郎が乙姫への恋の告白を、桃太郎に相談する。施策「恋愛相談」編は、浦島太郎(桐谷健太)が、妄想の中で乙姫(菜々緒)への告白をイメージし、竜宮城で「僕と結婚してください!」と手を差し出すが、乙姫は「え、いきなり?」と困惑。ここで現実に戻り、桃太郎(松田翔太)から「全然ダメだね」とダメ出しされる。その後も、浦島は桃太郎のアドバイスを受けながら、想像で「僕と住むところ、まとめてみない?」「君のすべてをまとめて面倒みたい!」とプロポーズすると、乙姫はうっとりして「浦ちゃん…」と手を握り、告白成功。桃太郎に「さすが恋愛マスターっす!」と感謝するが、再び浦島が「まとめて面倒みたい!」と手を差し出すと、乙姫は迫力ある形相で「覚悟あんのか?」と睨(にら)みつけてくる。桃太郎と浦島の会話は、松田と桐谷のアドリブで、本当に恋愛相談のように進行。菜々緒は、普段の乙姫のキャラクターからは想像できない、ときめきの表情も浮かべたが、最後のカットでカメラを睨みつける菜々緒の眼力に、スタッフは皆圧倒され、スタジオが爆笑に包まれた。
2016年04月08日4月10日よりTOKYO MXほかにてTVアニメの放送がスタートする人気コミック作品『とんかつDJアゲ太郎』を題材としたリアル謎解きゲーム「とんかつDJアゲ太郎×ドラマチック謎解きゲーム『アガらないフロアからの脱出』」が、4月16日より都内・よだかのドラマチックルームにて開催される。本企画は、ニコニコ超会議やゲームマーケットなど大規模イベントで、体感型のリアル謎解きゲームを開催してきたよだかのレコードの新規公演となる。参加者は『とんかつDJアゲ太郎』の世界観の中、さまざまな課題をクリアしてアゲ太郎を救い出すミッションに挑戦する。イベントは解説を含め100分程度で、6人のチーム戦になるという。アニメと同じく声優の山下大輝が主人公・勝又揚太郎の声を担当する。『とんかつDJアゲ太郎』は、漫画雑誌アプリ『少年ジャンプ+』(集英社)で連載中のコミック作品。とんかつ屋の三代目の勝又揚太郎が、とんかつ屋とクラブDJに共通点を見いだし、一人前のとんかつ屋とDJを目指すというユニークな設定が話題を呼んでいる。(C)イーピャオ・小山ゆうじろう/集英社・とんかつDJ製作委員会
2016年03月17日松田翔太、濱田岳、桐谷健太という“中堅派”と呼べる人気俳優たちが、それぞれ桃太郎、金太郎、浦島太郎に扮し、さらに菅田将暉、有村架純、菜々緒といった最旬俳優も参加するau「三太郎」CMシリーズ。先日から、花咲爺さんとしてベテランの笹野高史も参戦し、さらなる笑いと話題を呼んでいる。また、2016年元旦からTVでオンエア、その後配信もスタートしたAIの歌うCMソング「みんながみんな英雄」はiTunes、レコチョクなど各配信サイトで軒並み1位を獲得。これまでのCM総集編のような形で「みんながみんな英雄」フルバージョンを収めた特別映像がYouTubeで公開されるや、10日間ですでに100万回以上の再生回数となっている。CM好感度ランキングでも歴代最高となる“好感度”を記録(CM総合研究所調べ)、2年目に突入しても人気は留まることを知らない「三太郎」を、その魅力とともにふり返ってみた。2015年元旦にスタートしたこのシリーズは、昔話の“英雄”たちがお互いを「桃ちゃん」「金ちゃん」「浦ちゃん」と呼び合う友達同士だったという設定や、「マジで」「ガチで」など現代的な言動の数々、昔話の「あれって実際どうなの?」という素朴な疑問への答え(!?)が次々と明かされていき、人間味あふれるそれぞれのキャラクターに俳優陣の好演も見事ハマって、日本全国があっという間に夢中になった。松田さん演じる桃太郎は、いつも優しくクールで冷静。鬼退治で一攫千金をなした、いわばボンボンタイプ?はしゃぎがちなほかの2人にツッコミを入れるのもたいてい彼だが、有村さん演じる“かぐちゃん”ことかぐや姫とおつき合いし、シリーズの最中に“家族”に。それぞれ桃と竹から、「パッカ~ン!」と生まれたことがなれそめだという。とはいえ、かぐや姫には“鬼嫁”疑惑(!?)も根強く、日ごろは尻に敷かれているのかもしれない…。また、濱田さん演じるのが金太郎。鬼を倒したり、竜宮城に行ったりするメジャーな2人と比べ、自分は熊と相撲をとるだけという、ちょっぴり地味な物語を卑下しているところもあったが、もしかしたら一番“純粋”で“自由”なのは彼かも。桃太郎のキジに対する優しさに「家族一人一人…」と涙したり、超軽い“鬼”ともすぐに打ち解けたり、どんなに寒い日もノースリーブで耐えてきた健気な一面も。いまでは学校へ通い、金太郎ならぬマジメな“金次郎”と化している。今年一番おはぎをもらっていたのは、彼だった(ただし、母から)。桐谷さん演じる浦島太郎は、いちばんの天然キャラといえそう。菜々緒さん演じる竜宮城の乙姫に、届かぬ想いを寄せている。竜宮城には“週3”で通っているが、どうもツンデレな悪女風の“乙ちゃん”にすっかり手玉に取られている様子。その乙姫の妹がかぐや姫で、「旦那さんと子どももいる」とのかぐや姫の辛辣なジョークには、Wショックを受けてしまったことも…。しかし、そんな切ない想いを歌に込めた浦島太郎(桐谷健太)名義の「海の声」は大きな話題となり、CMソングの枠を越えてロングランヒットとなっている。そして、3人の友情を改めて噛みしめながら鬼退治に向かった先に現れたのは、菅田さん演じる鬼。彼こそ、かつて桃太郎が退治した鬼だったが、「うぃっす~、久しぶりっす~」と超軽い!「喧嘩の後は友達っすよね」と仲よくなった桃太郎&鬼コンビは最強で、最初はやや混乱気味だった金太郎、浦島太郎とも、いまでは友達に。実は5人の子を持つイクメンパパであることが判明した鬼は、子どもに「キラキラネーム」をつけたり、雷様として副業をこなしたりと、三太郎を凌ぐほどの強烈キャラとして人気を集めている。そんなシリーズに、鬼ちゃんと同じくらいにお調子者の花咲爺さんとして、笹野さんが登場したばかり。「みんながみんな英雄」篇ではこの「花咲爺さん」など、数々の昔話やおとぎ話がフィーチャーされていたが、もしや今後も新キャラが登場していくのか、期待せずにはいられない。しかも、シリーズを通じて、あの一寸法師が“一瞬”だけ登場しているという点も見逃せない。“どこに一寸法師がいるのか”も含め、CMの世界観をギュッと凝縮した特別篇では、新発見もたくさんありそうだ。(text:cinemacafe.net)
2016年03月06日●初めてのお小遣いでCDを買った世代からすれば、夢のよう今回は、再びApple Musicの話だ。Appleは2015年6月30日にApple Musicを開始した。Beatsを買収してから1年で、iTunesに変わる新しい音楽サービスとしてリメイクし、立ち上げにこぎ着けた。Apple Musicでは、他のストリーミングサービスと同様、膨大な数の音楽に自由にアクセスすることができる。しかしAppleの独自性は、「ハンドクラフト」だ。24時間生放送のラジオステーション「Beats 1」や、エディターと呼ばれるAppleのスタッフが世界中で大量に作り続けるプレイリストのライブラリ、そしてアーティスト自身が投稿してファンとつながるConnectの機能など、人の手が介在した音楽の楽しみ方の提供にこだわっている。Apple Musicとよく比較されるのは、ストリーミング音楽サービスの認知度を向上させてきた存在であるSpotifyだ。登録ユーザー7,000万人、有料ユーザー2,000万人といわれる同サービスに、どれだけ迫れるかが、Appleの新サービスの成否を分ける指標にもなっていた。Appleの役員が披露した最新の数字では、有料会員数は1,100万人に上り、前述のSpotifyの有料会員数の半数を上回るようになった。iOSの「ミュージック」アプリと統合されている点で、非常に大きなアドバンテージがあるが、Appleとしては、世界の85%のスマートフォンのシェアを占めるAndroidユーザーを取り込むことで、さらに会員数を伸ばすことを狙う。ところで、皆さんは音楽をどのように聴いているだろうか。筆者は2001年にiPodを使い始めて以来、iTunesに音楽を蓄積してきた。CDからリッピングして音楽を貯めてきたが、だんだんiTunes Storeで音楽を買うようになり、現在それらの音楽は丸ごと、iCloudミュージックライブラリとしてサーバにアップロードしている。お気に入りの曲の再生カウントは3桁を超えるものもあるが、そうした楽曲に付随するメタデータも含めて、なんとか15年間ファイルをキープしながら聴いている。当然だが、物理メディアではないので、再生を繰り返しても、データの劣化などは理論上ない。逆に、少し音に深みが出てくる、といったアナログチックな変化があっても面白くはあるが、まあ、そんな事はない。レコードがすり減ったり、CDに傷がついていく代わりに、再生回数や星やハート、プレイリストへの追加といったデータが蓄積されていくのだ。ただ、Apple Musicで音楽を聴くようになり、もともと持っていたアルバムも含めて、ストリーミングで聴くようになってきた。あのとき買わなかった(お金がなくて買えなかった)作品も、すべて聴けるようになったのは、初めてのお小遣いでCDを買っていたような世代である筆者からすれば、夢のような環境だと言える。無駄に世代間論争をあおるつもりはないし、音楽を買わないことを責めたいわけでもないが、筆者のように音楽を物理的なメディアで買ってきた世代と、YouTubeなどで無料で楽しんでいる世代とでは、音楽を買う、聴く、という感覚は大きく異なるだろう。筆者が「夢のよう」と書いた内容について、おそらくCDというメディアを活用せずに済んだ世代からは、全く共感が得られないのではないか、と思う。●思い切って、iTunesの音楽ファイルを消してみた音楽の聴き方が変化してきたこともあり、15年間守ってきた音楽ファイルを、先日思い切って、すべて消してみた。手元のMacのディスク容量が不足してきたため、100GBあまりのiTunesフォルダを一掃したのである。ちなみに、音楽データは消えても、前述の再生回数などのデータは削除されなかった。一応、筆者もその機能を理解した上で、それでも心配で踏み切れなかったことではあるが、ディスク容量の限界が迫りくる状況で、一線を越え、データ自体をクラウドに任せたのである。ひとまず現状、問題はない。とはいえ、ファイルの削除が伴うため、読者の皆様が行う場合には、自己責任でお願いしたい。一応、Office 365アカウントについてくる1TBのOneDriveに、iTunes Storeに取り扱いがなさそうな音楽ファイルはバックアップしてある。クラウドストレージの容量に余裕がある方は、そちらも試しておくことをおすすめする。Apple Musicのユーザー、もしくはiTunes Matchを契約していると、ユーザーのiTunesライブラリ内、すなわち手元にある音楽ファイルは、iTunesと照合され、カタログにないものはアップロード、カタログにあるものは契約期間中は自由に再ダウンロード可能になる。これらの楽曲はストリーミング再生も行える。ちなみに、iTunes Matchが別料金なのは、この再ダウンロードする音楽ファイルについて、Apple MusicやiTunes Matchの契約解除後でも再生可能にするオプションが存在するからだ。もちろん、WAVEやAppleロスレスなど、再ダウンロード可能なAAC 256kbpsの音質より高くリッピングしていたファイルについては、音質が劣化する点を留意しておきたい。ただ、2001年ごろに筆者がリッピングしたのは、ほとんどがMP3 160kbps、頑張ってMP3 320kbps程度だったので、さほど気にする必要がないだろう。ファイルの削除は、MacのiTunes上から行った。ライブラリ全体の音楽をcommand+Aで選択し、deleteキーを押す。すると、「この曲を削除してよろしいですか?」という確認が表示されるので、「ダウンロードしたものを削除」をクリックする。すると、iCloudミュージックライブラリにファイルが保存された状態で、iTunes上のファイルが削除される。iCloudミュージックライブラリ・iTunes Matchでアップロードされるのは、iTunes Store購入分を除く10万曲で、1曲あたり200MB以下、再生時間2時間以内という制限が課せられる。また、より高品質な音楽はAAC 256kbpsに変換されてアップロードされ、品質基準以下のファイルはアップロードされない。アップロードされないファイルを削除すると復旧できないため注意が必要だ。アップロードされたかどうかは、iTunesのマイミュージックのリストのクラウドのマークを確認するとよいだろう。●Appleは「やっと」音楽をモバイル化したApple Music経由での再生が増えたことも理由ではあるが、Macのハードディスクに音楽ファイルそのものが入っていないからといって、普段の音楽聴取体験に特段不便も変化もない。それだけ、音楽を聴く環境が、Wi-Fiやセルラーなどでインターネットにつながっている環境だということだ。iCloudミュージックライブラリでは、Macから音楽ファイルを削除できる点に加えて、iPhoneからでも、Apple Music以外の音楽ライブラリにアクセス出来ることがメリットだ。Macに接続しなくても、1曲単位で必要な楽曲をダウンロードして、オフラインで聴くことができる。Appleは、iTunes Storeで、「音楽を購入する」という行為を、「音楽を聴く『権利』の購入」という形に変えてくれたように思う。しかしApple Musicとそれに付随してくるiCloudミュージックライブラリによって、「音楽を聴く権利をモバイル化した」と表現できるだろう。SpotifyやPandoraなど、始めからストリーミング主体でサービスを展開してきた企業にとっては、音楽のモバイル化は当たり前の話と考えているだろう。ユーザーにとっては、PCでもスマートフォンのアプリでも良いので、とにかくネットにつながって、サービスから音楽を流してくればよいだけだからだ。つまり、これらのサービスにおいては、はじめから音楽はモバイル化されていたのだ。しかしAppleには、iTunesユーザーや、iTunes Storeユーザーがおり、彼らは自分で音楽を所有してきた。そして、iPodやiPhoneに同期して、楽しんできた。こうしたユーザーに対して音楽をモバイル化するために、Appleは様々な手順を踏んでいく必要があった。iTunes Radioでストリーミング音楽を試しつつ、Appleにとって重要だったのは、iTunes Matchだと感じた。このサービスで、iTunes Storeのカタログを活用し、膨大なiTunesユーザーの音楽をクラウドへ持ち込むテストをしてきたといえる。Apple Musicは、購読型ストリーミングサービスの部分がよりフォーカスされるが、Appleにとって力を入れているのは、Apple Musicの1つの機能であるiCloudミュージックライブラリの方だろう。これにより、ユーザーが所有している音楽をモバイル化することができ、Apple Musicを受け入れてもらうだけの素地を作ることを実現したのだ。松村太郎(まつむらたろう)1980年生まれ・米国カリフォルニア州バークレー在住のジャーナリスト・著者。慶應義塾大学政策・メディア研究科修士課程修了。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)、キャスタリア株式会社取締役研究責任者、ビジネス・ブレークスルー大学講師。近著に「LinkedInスタートブック」(日経BP刊)、「スマートフォン新時代」(NTT出版刊)、「ソーシャルラーニング入門」(日経BP刊)など。ウェブサイトはこちら / Twitter @taromatsumura
2016年03月02日●Apple共通体験のタッチを進化させるiPhone 6s、iPhone 6s Plusで採用された感圧タッチディスプレイ「3D Touch」は、これまでのマルチタッチディスプレイに圧力を検知できるセンサーを追加し、また振動によるフィードバック機構を備えたテクノロジーだ。 これにより、感触のあるタッチパネルを実現している。現在実装している機能は、ホーム画面でアイコンを押し込むことでアプリの機能に直接ジャンプできる「クイックアクセスメニュー」、画面の左端を押し込むことで起動できる「タスク切り替え」、リストを押し込んで中身を表示できる「ピーク」、さらに押し込んでコンテンツを開く「ポップ」。加えて、いくつかのアプリでは、感圧タッチを筆圧検知に使って、描画時の表現力を高めている。9to5macによると、Appleがプレビュー版をリリースしたiOS 9.3では、「天気」「コンパス」「ヘルスケア」「App Store」「iTunes Store」、そして「設定」の各アプリで、「クイックアクセスメニュー」が新たに利用できるようになったという。特に、「設定」アプリのメニューに入るとみられる「Wi-Fi」の項目は、使用頻度も高いため、重宝しそうな機能ではある。ただし、後述する通り、その存在を忘れなければ、の話だ。Appleは、Mac、iPhone/iPad/iPod touchと、製品ラインアップをOSで分けており、Tim Cook CEOは「OS XとiOSの融合はない」と公言する。しかしながら、インターフェイスの面では、iOSデバイスを主導としながら、「共通体験を拡げる」方向性を探ってきた。マルチタッチをiPhoneに導入し、iPadではより多くの指を使ってタスク切り替えなどを行うジェスチャーを導入した。またMacのトラックパッドもマルチタッチのジェスチャーをサポートし、3本指、4本指でデスクトップを切り替えたり、アプリを起動するためのLaunchPadを呼び出すことができるようにした。感圧タッチパネルについては、Apple Watchが先駆けとなった。小さな画面でオプションメニューを開く際に、ぐっと押し込む動作を採用して以来、MacBook・MacBook Proのトラックパッド、iPhone 6s・iPhone 6s Plusと採用を拡げてきた。このようにして、マルチタッチ、3D Touch(もしくはForce Touch)と、タッチインターフェイスの共通体験を進化させてきた経緯がある。ただし、これはSiriにも共通することだが、複数の指を使わなければならない、押し込む動作を行わなければならない、声を使わなければ実現できないという、活用を強制する機能ではない点も特筆すべきだろう。ユニバーサルデザインの観点だけでなく、スマートフォンの操作に慣れていない人にとって簡単に使えるデバイスで在り続けるためにも、必ずしも難易度の高い作業を押しつけることはしていないのだ。●3D Touchは難しい?ユニバーサルデザインであることは、非常に評価できる。ただし、新しいインターフェイスの導入や活用に際しては、その速度を遅める可能性もある。必然性がない、絶対使わなければならない、というわけではない点で、筆者もつい、3D Touchの機能の存在を忘れて、利用せずに過ごしてしまうことが少なくないからだ。例えばタスク切り替え。頭では、ホームボタンをダブルタップするより、画面の左側を押し込んだ方がアクションが少なくて済む、と分かっている。にもかかわらず、右手で持っているから、あるいはつい今までの癖で、といくつかの理由で、3D Touchによるタスク切り替えを忘れてしまっている。ホーム画面のアイコンを押し込んで機能にショートカットする「クイックアクセスメニュー」も同様だ。前述の通り、新しいiOS 9.3では、設定アプリにWi-Fiへのショートカットが追加されるとみられており、これは重宝しそうだ、と直感的に思う。ただし、その活用が定着するかどうか……。「クイックアクセスメニュー」で絶対的に便利だと思う機能は、カメラアプリだ。「カメラ」のアイコンをタップするとすぐに静止画の撮影モードが起動する。もし動画やセルフィを撮りたい場合は、もう1アクション操作してモードを切り替えなければならない。「クイックアクセスメニュー」を使うと、静止画撮影の他に、スローモーション撮影、ビデオ撮影、セルフィ撮影に直接ジャンプでき、とっさにカメラを使いたいときに、目的のモードに1テンポはやくアクセス出来るようになるはずだ。しかし、そういうとっさの時ほど、慣れた操作以外の機能を利用して素早く行うことができないものだ。●そろそろ、カスタマイズ性へリーチした方が良いかもしれないマルチタッチと比べると、全く異なるといっても良い動作になる3D Touchの「押し込む」という操作方法。述べてきた通り、その動作を使う必然性がなく、これまでの操作方法との連続性も薄い新しい操作方法を活用するにはどうしたらよいか。そこで、これまでのiOSのインターフェイスにあまりなかった要素、カスタマイズ性の出番ではないか、と考えている。「電話」や「メッセージ」、「Facebookメッセンジャー」の「クイックアクセスメニュー」は、お気に入りやよく連絡する相手が表示される仕組みになっている。そのため、家族や恋人に素早くメッセージを送りたいときには、その相手のスレッドにショートカットできて便利だ。もっとも電話かメッセージの場合、ホーム画面を左にスワイプして表示されるSiriによる推測候補からアクセスしたり、もしメッセージのやりとりが続いていれば通知をタップするなど、その他の方法もたくさん用意されているため、「クイックアクセスメニュー」が特別便利だという話にはなりにくい。ただ、このメニューの中身を自分好みにカスタマイズできるようになると、その機能を知っている人なら積極的に使い始めるのではないか、とも考えられる。ちなみに、UIのカスタマイズについては、iOSがAndroidから遅れている最も大きな分野だ。しかもAndroidとの競争において、Appleにとって最も興味・関心が薄いテーマといえるだろう。ただ、操作方法や見た目そのものをガラッと変えるのではなく、ユーザーが手に馴染むようにショートカットを編集するのであれば、さほど問題なさそうに思えるのは筆者だけだろうか。前述の「Facebookメッセンジャー」のように、アプリによっては、「クイックアクセスメニュー」の中身を動的に変化させているものも既にある。より具体的なアクションをこのメニューに登録できると、よくやる定型作業の効率化などに寄与し、生産性の面でも効果が現れるはずだ。松村太郎(まつむらたろう)1980年生まれ・米国カリフォルニア州バークレー在住のジャーナリスト・著者。慶應義塾大学政策・メディア研究科修士課程修了。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)、キャスタリア株式会社取締役研究責任者、ビジネス・ブレークスルー大学講師。近著に「LinkedInスタートブック」(日経BP刊)、「スマートフォン新時代」(NTT出版刊)、「ソーシャルラーニング入門」(日経BP刊)など。ウェブサイトはこちら / Twitter @taromatsumura
2016年01月21日Apple Watchは、通知系での活用から体験していくことになる。iPhoneとペアリングさせれば、iPhoneの通知が手首に届くようになり、ちょっとした情報のチェックをポケットのiPhoneに頼らず確認できるようになるだろう。受動的にApple Watchを利用することから、人々はApple Watchを使い始める。機能という面から腕時計そのものを考えてみると、「時間を知りたいときに見て、時間を知る」というのが最も基本的な使い方だ。その中にあって、時計を身につける人が受動的に何か情報を受け取る、というのは非常にスマートフォン的であり、腕時計からすれば新しいチャレンジ、ということになるだろう。この原稿を書いている時にも、今まさに、エクササイズ機能の「スタンド」のアラートがやってきた。そういうタイミングを時計の方から知らせてくれる、というのは新しい体験なのだ。通知はメールやメッセージなどの着信を受け取ってから送信されるので、いつ来るか分からないが、1時間座っていたら50分頃に通知を出す、スケジュールで予定の15分前になったら知らせる、といったかたちで、基本機能やアプリを使って自分に時間を知らせることが出来る。これは有効な仕組みとも言えよう。人が、時間に対して、プログラム可能になる可能性を秘めているのだ。○Wallet機能への期待さて、筆者がApple Watchに大きな期待を寄せているのは、「Passbook」改め「Wallet」機能だ。様々なチケットやクーポンを、そしてApple Payで利用しているクレジットカードやポイントカードを1箇所にまとめて管理しておくことも可能で、必要なときに直ぐに呼び出すことができるのが、Walletの機能だ。もし格納したチケットやクーポンに位置情報がついていれば、自動的に画面に表示される。例えば近所にあるWalgreensというドラッグストアチェーンに近づくと、そのチェーンのポイントカードが自動的にロック画面に表示され、スワイプするだけで直ぐにレジで読み込ませることができるのだ。前述の話では、「時間」をプログラマブルにすると指摘したが、Wallet機能では場所とそこでの行動も、ある程度プログラムできる可能性がある、といえる。筆者がiPhoneで最もよく利用しているWalletのタイプは、航空券だ。予約サイトや航空会社のアプリで、バーコード付きの航空券をWalletに読み込ませるリンクが用意されており、タップするだけでiPhoneのWalletに同期され、これをApple Watchからも利用することができるようになる。つまり、オンラインやアプリでチェックインを済ませてチケットをWalletに入れておくことで、Apple Watchさえ身につけていれば、飛行機にそのまま乗れる、ということだ。○ある日、空港に駆け込んだときの話先日、カリフォルニア州ロサンゼルスで行われたクリエイティブの祭典、Adobe Max 15に参加するため、サンフランシスコからロサンゼルスまで、米国国内線を利用した。優先搭乗などができるステイタスなどに無頓着かつ、ギリギリで空港に着いたこともあって、保安検査所の長蛇の列に冷や汗を流すばかり。しかしこちらも長蛇の列だったチケットカウンターやチケット端末はApple Watchに入っている航空券のおかげで、スルーすることができた。が、やっと順番がやってきて、チケットと身分証明書を確認する係官の女性にパスポートとApple Watchの画面を見せると、返ってきた言葉は「は?」とひとこと。ん、これはマズイかも知れないと感じた瞬間だった。ポケットから眼鏡を取り出してかけ、一所懸命に目をこらす係官。しばらくすると、「あ」と言って、「何も見えないよ」とチケットを催促するジェスチャーを向けてきた。急いでiPhoneのWalletを起動させて同じ航空券を表示させ、確認のち、その場を通過することができた。Apple Watch上の文字が小さすぎて、何のチケットを持っているのか確認できなかった上、数秒目をこらしていたら画面が消えてしまった、というのが起こったのだった。確かに、自分が手首を返して時間を確認しようとすると自動的に点灯するのがApple Watchのディスプレイだ。他の人が確認する角度が、必ずしも点灯するとは限らない。また、文字の大きさについては、小さなディスプレイしかないApple Watchにとっては、解決しようのない問題ともいえる。また、帰りの便で分かったのは、チケットの情報だけでは航空券を持っているとは認めてもらえず、バーコードまで一緒に確認する必要があるということだ。そのため、目の前でチケットの情報を表示させ、一緒に見ながらバーコードが表示されるまでスクロールさせて、納得してもらえた。○バーコードを読み込ませるときにも問題がおそらく国や空港によって、多少オペレーションが違うし、Apple Watchでの搭乗をより多く扱っている空港であれば、スムーズに事が運ぶようになるのではないか、と思う。ただ、Appleのお膝元、サンフランシスコ国際空港の国内便のセキュリティの担当官も、まだApple Watchでの確認には手間取っていたところを見ると、Apple Watchでの搭乗が快適になるまでには当分時間がかかりそうだ、ということが予測できる。加えて、もう一つの問題点があったのでお伝えしておこうと思う。米国で飛行機に乗る際、搭乗券のバーコードは、セキュリティゲートを通る際、そして飛行機に乗る直前のゲートと2箇所で読み込ませる。この2箇所とも、読み取り機械が高い位置にあり、しかも読み取り面が真上を向いていたことから、Apple Watchでバーコードを読み込ませるのは非常に苦労した。Apple Watchのディスプレイは手の甲側を向いているため、画面のバーコードを肩の高さあたりで真上を向いている読み取り機に読ませようとすると、手を高く上げつつも時計の文字盤を読み取り面にくっつけなければならない。そして、それが非常に難しい体勢であることは、いま手首を目線あたりの高さに持ち上げるとおわかりになるだろう。時計面が水平にならないのである。紙のチケットやiPhoneの画面であれば、高さがどうであれおいてしまえば読み取れるが、Apple Watchをその場で取り外すと、自動的にパスロックがかかり、それをいちいち解除してWalletを起ち上げて、航空券を見つけ出す必要がある。そんな手順を毎回踏むほど余裕があるわけではないのだ。筆者の身長が高くないことも問題なのだが、空港のバーコード読み取りの設備についても、決してApple Watchでの搭乗を想定して作られておらず、難儀することが多かった。例えば読み取り面を水平ではなく垂直に設置してくれれば、体勢面では楽になる。バーコード表示中は手首を返しても画面が消灯しない仕組みであるため、そこはひと工夫されているポイントであった。筆者が利用した日本国内の空港の場合、保安検査場のバーコード低い位置にあり、バーコードやICカードを読み込ませれば乗る飛行機のサマリーが表示されるため、画面が小さすぎて見えない、といった問題は発生しないと思われる。便利な点、そうでもない点、さまざまではあるが、年末年始の帰省や旅行シーズン、Apple Watchでの搭乗を、試してみてはいかがだろうか。松村太郎(まつむらたろう)1980年生まれ・米国カリフォルニア州バークレー在住のジャーナリスト・著者。慶應義塾大学政策・メディア研究科修士課程修了。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)、キャスタリア株式会社取締役研究責任者、ビジネス・ブレークスルー大学講師。近著に「LinkedInスタートブック」(日経BP刊)、「スマートフォン新時代」(NTT出版刊)、「ソーシャルラーニング入門」(日経BP刊)など。ウェブサイトはこちら / Twitter @taromatsumura
2015年11月25日Apple Watchに搭載されたwatchOS 2には数々の新機能が搭載されている。何回かに分けて、その新機能について触れていきたい。いきなり日本ではまだ体験できない機能となるが、まずはApple Watch単体での携帯電話番号による発信機能を紹介しよう。○Wi-Fi通話とは?この話をする前に、少し経緯に触れておいた方が良いだろう。iPhoneやiOS 9には、日本のユーザーがまだ利用できない機能がいくつかある。特に、携帯電話会社のサービスに関わる機能がそれに当たる。既に日本でも、LTEを通話に利用するVoLTEはサービスが開始されているが、これよりもはるかにインパクトがあるのが「Wi-Fi通話」だ。名前からも推測できるかもしれないが、この機能は、通常、携帯電話の電波を利用する音声通話を、Wi-Fi経由で行えるというものだ。携帯電話の電波が届かない場所であっても、iPhoneがWi-Fi圏内にあり、Wi-Fi通話をサポートする携帯電話会社のSIMが刺さっていれば、ケータイ番号での発着信を行うことができるようになる。筆者が契約しているT-Mobileに加えて、ソフトバンク傘下のSprint、そして最近ではAT&Tといった米国のキャリアや、欧州のキャリアがこの機能をサポートしている。例えば、T-MobileのSIMが刺さっているiPhoneを持って日本に出張した際、ローミング機能を使うと、米国の番号で日本での発着信は可能だが、当然通話にローミング料金が加算される。しかしWi-Fi通話をONにしてWi-Fi経由でネットにつながれば、ローミング料金なしで発着信ができる、というわけである。少し派手な使用例を紹介してしまったが、最も期待されている使い方は、エリア問題の解決だ。T-MobileやSprintは、米国の業界3位、4位のキャリアで、エリアが弱点となっている。Wi-Fi通話を使うと、屋外のアンテナに関係なく、自宅で確実な通話環境を提供できるようになるのだ。そこで、T-Mobileでは現在、契約者に無料で802.11ac対応のWi-Fiルーターを配って、Wi-Fi通話機能の利用をアピールしている。○Wi-Fi通話の拡張Wi-Fi通話自体は2014年のiOS 8から搭載された機能だが、iOS 9で強化されている。これまで、同じApple IDでログインしているデバイスから通話の発着信が行えたのは、FaceTime、FaceTimeオーディオだけだった。また、デバイス連係機能を利用して、iPhoneに着信した通話を、近くにあるMacやiPadなどで受話したり、MacのSafariに表示されている電話番号をクリックして、iPhoneの回線で発信することもできた。しかし、iOS 8時代には、Wi-Fi通話をONにしてしまうと、これらの通話連係機能が利用できなくなる制限があった。iOS 9に変わると、通話関連の機能も少し整理された。Wi-Fi通話が複数のデバイスをサポートするようになり、iPhoneから認証をとれば、iPadやMacから、その番号で通話の発着信機能を使えるようになったのだ。○こうして、Apple Watchは電話になったここまで説明したところで、Apple Watchで携帯電話番号による音声通話ができるようになるからくりが分かったのではないだろうか。iPhoneからApple Watchを、その番号でWi-Fi通話で通話できるデバイスとして認証することで、Apple Watch単体でも音声通話の発信・着信ができるようになるというわけだ。また、Apple Watchでこれまで対応してこなかったFaceTimeオーディオの発着信もサポートしており、iPhoneが手元になくても音声での通話を行う幅がひろがっている。とはいえ、屋外などのうるさい場所では、iPhoneを相当耳に近づけなければ相手の声を聞き取ることができないため、やはり室内での利用が実用的と言えるのではないだろうか。手首での通話については、また改めて触れたいと思う。○接続を確認しようしかし、これらの機能はすべて、Apple WatchがWi-Fiにつながっていることが前提だ。iPhoneで接続したことがあるWi-Fiのうち、2.4GHz帯域で、Wi-Fiを拾ってからログインなどの認証が不用なものに対して、Apple Watchは自分で接続するようになる。Apple WatchがWi-Fiに接続しているかどうかは、グランスにある「設定」を開くと確認することができる。もしiPhoneにつながっていれば、「接続済み」とともに緑のiPhoneのアイコンが表示される。Apple Watch単独でWi-Fiに接続している場合は、「接続済み」と雲のアイコン表示となる。通信に関する機能を利用する際には、いずれかの方法で接続されていることが必要であるため、上手く機能が利用できない際には確認すると良いだろう。松村太郎(まつむらたろう)ジャーナリスト・著者。米国カリフォルニア州バークレー在住。インターネット、雑誌等でモバイルを中心に、テクノロジーとワーク・ライフスタイルの関係性を執筆している。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)、ビジネス・ブレークスルー大学講師、コードアカデミー高等学校スーパーバイザー・副校長。ウェブサイトはこちら / Twitter @taromatsumura
2015年11月05日Apple Watchの使い道については、まだまだ悩ましく、もどかしい点も多い。Appleを含むアプリを作り出す開発者が、Apple Watch向けに「これがないと生きていけない!」という生活を変えるようなアプリを作り出すに至っていないからである。Appleもそれは分かっている。まずは時計を毎日身につける「習慣」を定着させなければならない。もしも生活を劇的に変えるアプリが登場しても、人々が手首にApple Watchをつけ続けていて初めて意味がある。話はそれからだ。そこで、Apple Watch初期では、イチオシ機能としてエクササイズにフォーカスした。既にスポーツトラッキング、アクティビティトラッキング向けのウェアラブルデバイスとして、FitBitやMisfits、Jawboneなどが市場を開拓してきた領域だ。別の回で詳しく触れるが、Appleのその力の入れようは、研究機関を1つ立てるほど。Apple Watchの登場によって、初期市場形成に貢献してきた企業にも変化も生まれている。FuelbandをリリースしているNikeはデバイス分野には積極的ではなくなっているようだ。加えてUPバンドシリーズをリリースしているJawboneについても、デバイスメーカーからの脱却を図っている。特に後者は、あれだけデザインにこだわるデバイスを作ってきたにもかかわらず、デバイスを辞めて、アプリやデータ分析の分野にスイッチする用意があるという。戦略のダイナミックさに驚かされる。○通知のマジックApple Watchが腕にあることで、多くの人が始めに感じるメリットは、「通知」だ。Apple Watch内にアプリが入っていなくても、iPhoneに通知を送ることができるアプリであれば、Apple Watch上に同様な通知を送れる。iPhoneの画面が消灯している状態、つまりiPhoneをユーザーが見ていない時に届いた通知は、何も設定をしなければ、すべてApple Watchに届く。まず始めのカスタマイズは、どのアプリの通知をApple Watchで受け取りたいか、という選別になる。個人的には、そもそもアプリを日頃から整理していることもあり、あまり通知を選ばずに利用しても特に気になることはない。ただ、入れているアプリや好みに応じたカスタマイズはすべきだろう。例えばメールは受信したくない、ニュース系はiPhoneを開いたときに見たい、といった使い方をしたいならば、iPhoneのApple Watchアプリの「通知」設定で、個別のアプリからの通知のON、OFFを行うことができる。ここは、Apple Watchで分かりにくいポイントの1つではあるが、通知とApple Watchにインストールされるアプリとは別だ。例えば、Instagramの場合、Apple Watch対応のアプリも用意されているが、これをインストールしなくても、自分の写真に「いいね」がついた際には通知が送られてくる。○通知アクションが便利Apple Watchに通知が届く際、通常はそのことが知れれば終わりだ。もしApple Watchアプリが用意されていない場合は、通知をただ閉じるしかないが、アプリがインストールされている場合、そのアプリで通知の内容を詳しく確認することもできる。小さな画面で詳細な情報を見るならば、手元にiPhoneがあればそちらの画面で見た方が良いと思う人が多いだろう。もしApple Watchの通知センターで内容を確認すると、iPhoneのロック画面からもその通知が既読として消えてしまうため、すぐに確認しない場合は忘れてしまうかもしれない。また、iPhoneのアプリによっては、「アクション付き通知」が設定されているものもある。これらのアクション付き通知はApple Watchからも操作することができ、ちょっとした操作を手首だけで返すことができる仕組みは非常に便利だ。例えば、Dropbox社の「Mailbox」というメールアプリには、「ゴミ箱」「明日」というアクションが設定されている。「ゴミ箱」は届いたメールをその場で削除、「明日」は、今すぐに必要ないメールを明日再び通知するよう設定できる。「Facebookメッセンジャー」の場合、通知アクションに「いいね」アイコンが用意されており、届いたメッセージに対してApple Watchですぐに反応を返しておける。○セキュリティのお供に最近、ウェブ系のサービスの多くに導入されているのが「2段階認証」。Apple Watchはこの2段階認証でも便利である。2段階認証の方式は色々あるが、最も多くのサービスが採用している手順が、パソコンやアプリの画面でユーザー名とパスワードを入力(1段階目)。すると、既に登録してある携帯電話番号にSMSで認証コードを送信し、これを入力(2段階目)、という方式だ。パソコンでログインする場合、SMSが届く携帯電話が手元になければ、ログインすることができない。そこでApple Watchに届くメッセージの通知活用だ。パソコンで1段階目のログインをすると、SMSが発信されるが、Apple Watchが手首にあれば、iPhoneがデスクの周りになくても、通知で認証コードを知ることができるので、おおよそキーボードのホームポジションから手を離さずに2段階目のログインまで済ませることができる。メッセージの通知は通話着信と同じように、Apple Watchの非常に基本的な機能ではあるが、特に最近に段階認証が増えていることもあって、筆者にとっては、「2段階認証の認証コード確認」が、Apple Watchで頻度の高い使い方になっている。たいていの場合、6桁程度のコードになるが、こうした短い情報を確認して利用する場面は他にないだろうか。Apple Watch活用の1つのヒントになるだろう。松村太郎(まつむらたろう)ジャーナリスト・著者。米国カリフォルニア州バークレー在住。インターネット、雑誌等でモバイルを中心に、テクノロジーとワーク・ライフスタイルの関係性を執筆している。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)、ビジネス・ブレークスルー大学講師、コードアカデミー高等学校スーパーバイザー・副校長。ウェブサイトはこちら / Twitter @taromatsumura
2015年10月28日●問題発覚までの経緯毎年9月、テクノロジー企業の多くは、製品のリリースを行うことを躊躇しがちになる。9月上旬にAppleスペシャルイベントが開かれ、続いて中旬には新OSのリリース、そして下旬には新型iPhoneの発売日があり、ほとんどのニュースはApple関連に割かれてしまうからだ。そして今年は、iPhone 6s・6s Plusに加えて、新型Apple TV、大型化されたiPad Pro、そしてApple Watchの新作と、盛りだくさんの発表会となった。盛り上がりを見せるAppleニュースの中で、見逃すことができない、非常に重要なセキュリティ上の懸念が持ち上がっていた。○偽物のXcode事件「XcodeGhost」事の発端は、9月17日、App Storeに配信されているアプリに、マルウェアが含まれていることを、中国の開発者が発見したことから始まる。XcodeGhostと認識されたこのマルウェアは、アプリの起動時刻やOSのバージョン、端末固有のID、デバイス名、言語設定などの情報を、特定のサーバに送信する機能が備わっている。また、iCloudアカウントのパスワード入力を求めるアラートを用いて、多くの人が決済のクレジットカードと紐付けているApple IDのアカウント情報を乗っ取ることができる。問題のアプリは、中国語圏向けを中心として、約40のアプリに含まれていることがわかった。原因は、Apple以外のサーバからダウンロードした開発ツールを使用したこと。中国の開発者がたちが、Appleのサーバへの接続速度の遅さから、アプリ開発ツール「Xcode」百度のクラウドサービスにアップロードされたコピーをダウンロードする行動が拡がっていたためだという。この偽物のXcodeで開発したアプリに、前述のマルウェアが含まれており、App Storeの審査を通過して一般に配布・販売された。これが一連の経緯である。●人気にアプリにマルウェアが○影響を受けたのは世界で数億人に上る可能性Appleや開発者は事態の収拾に動いているが、依然として、マルウェア入りのアプリをそのまま利用しているユーザーも少なくないはずだ。というのも、中国市場で最も人気があり、中国語圏の人々と頻繁に連絡を取る世界中の人々にも広く普及していたアプリが、リストに含まれていたからだ。それはWeChatである。WeChatはTencentのチャットアプリで、中国では「微信」(ウェイシン)と呼ばれている。アカウント数は13億人を超え、月間アクティブユーザー数は5億人を数える巨大なサービス。このiOS版にマルウェアが含まれていたことになり、影響を受けたのは1億人を上回る可能性がある。ちなみに現在は既に安全な最新版が配信されているという。その他、中国国内向けのUberに似たタクシー配車サービス「Didi-Kuaidi」、音楽ストリーミングサービスなどの人気のアプリが含まれていた。WinZipやスキャナーアプリなど、ユーティリティ系のジャンルにも及んでいる。また中国向けのAngry Birds 2も、同様のマルウェアが含まれていた。コミュニケーション、エンターテインメント、生産性向上など、多岐に渡るアプリがこの被害を受けており、Palo Alto Networksが挙げたアプリがすべてとは限らない。下記の通りAppleも対策に乗り出しているが、リストに挙がった約40すべてのアプリが削除あるいは更新されたわけでもないという。●自己防衛するには○自衛策も必要にこれまで、一般に、「iPhone/iPadはApp Store経由のアプリ以外をインストールできないため、安全だ」という認識が強かった。そのため、Androidユーザーが日頃気遣っているセキュリティ対策が、ユーザーから完全に抜け落ちてしまっていた。このことは、被害をさらに拡げる可能性も秘めている。iPhoneユーザーは、アプリ実行やデバイスのカスタマイズの自由度と引き替えに、アプリの安全性をAppleが担保してくれる、という信頼感があったかもしれない。開発者ではない一般ユーザーにとっては、OSの自由度よりも、高級感あるデバイスと使いやすいソフトウェアのほうが魅力的に感じるからだ。しかし、今回のXcodeGhost問題は、そうした信頼感そのものが揺らぎかねない、Appleとしてもユーザーとしても、見逃すことができない問題といえる。Appleのマーケティング責任者であるフィル・シラー氏は、中国のシナドットコムに再発防止策として、中国国内からXcodeをダウンロードできるようにする対策や、感染を特定した25種類のアプリをリストアップし、ユーザーが対策を行えるようにするとしている。一方のユーザーも、自衛策に走るべきだろう。App Storeは今後も、原則として信頼性のあるアプリが配信されるよう努めていくはずだが、アドネットワーク経由などのリンクからアプリをダウンロードする際には、その安全性について細心の注意を払ったり、アプリに限らず最新のセキュリティ情報に目を光らせていくことが必要だ。例えばApp Storeが、インストールされているアプリを見ながら、リスク情報などを自動的に受信する仕組みを備えても良いかもしれない。いずれにしろ、AppleはiPhone・iPadユーザーに対して、セキュリティ意識を高め、対策する手段を提供することが重要になるだろう。松村太郎(まつむらたろう)1980年生まれ・米国カリフォルニア州バークレー在住のジャーナリスト・著者。慶應義塾大学政策・メディア研究科修士課程修了。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)、キャスタリア株式会社取締役研究責任者、ビジネス・ブレークスルー大学講師。近著に「LinkedInスタートブック」(日経BP刊)、「スマートフォン新時代」(NTT出版刊)、「ソーシャルラーニング入門」(日経BP刊)など。ウェブサイトはこちら / Twitter @taromatsumura
2015年09月24日米Appleは現地9日の午前10時、日本時間の10日午前2時より、スペシャルイベントを開催する。本誌からはライターの松村太郎氏がイベントに参加。同氏より、イベント開催前の会場の様子が届いたので紹介する。今回、発表会の会場となるのは、米サンフランシスコのBill Graham Civic Auditorium。収容人数は7000人で、普段は音楽のコンサートなどに使われているという会場だ。会場には、Appleのロゴ入りの旗が掲げられ、窓にもリンゴマークを掲出、Appleのイベントがまさにこれから始まることがわかる。松村氏によると、会場の収容人数は7000人だが、普段の装いとは違い、ステージとタッチアンドトライ会場が設けられているという。また、ゲストも多数呼ばれているようだ。普段はコンサート会場になるために、ゲストおよびそのパフォーマンスにも期待されるところだ。発表会は日本時間の午前2時よりスタートする。噂では、新iPhoneの発表はほぼ確実、残りは、新iPad、Apple TVの発表も期待されている。iPhoneはAppleにとっての主力製品であり、その意味では、年に一度の最大のイベントとなる。日本からもライブ中継を通じて、最速でAppleの最新製品を見ることが可能だ。
2015年09月10日筆者は4月24日の発売日から、ステンレススチールでシルバーのApple Watchと、ミラネーゼループの組み合わせで使い始めました。移行、毎日欠かさず装着して過ごしています。Apple Watchをつけて生活した感想と、期待や懸念に対する一定の答えについて、ご紹介したいと思います。○率直な感想:iPhoneを握らなくなったApple Watchを装着し始めてからの大きな変化は、iPhoneを握りしめている時間が減ったことです。これは使い始める前から予測していたことですし、筆者以外の方からも指摘があったことです。その理由は、iPhoneを触るきっかけのいくつかを、Apple Watchが奪うようになったから、です。iPhoneを触るきっかけは、例えば誰かに連絡を取ろうとしたとき、あるいは何か情報を調べようと思ったとき、写真を撮ろうと思ったとき、メモをしたいと思ったときなど、様々です。iPhoneに入れているアプリの数だけ、動機がある、といっても過言ではないでしょう。しかし1日の生活を振り返ってみると、もし仕事中にデスクにiPhoneが置いてある場合、あるいはポケットの中に入っている場合にiPhoneを手にするきっかけは、「通知」です。振動もしくは音、その両方とともに画面が点灯し、アプリのアイコンとともにその内容が表示される仕組みで、その通知をきっかけにロック解除をすれば、すぐに最新の情報にアクセスすることができます。こうしてiPhoneを手にして使い始めると、その通知に関する何らかの行動が終わってからも、同じアプリもしくは他のアプリの情報を「はしご」して行くことがほとんどです。すると、そもそも届いた通知に対しては30秒ほどで確認もしくは返信し終えたとしても、はしごするせいで、iPhoneを触っている時間は3分になり、5分になり、と伸びていきます。もしLINEのようにコミュニケーションが継続する場合、はしご中に返事が返ってきて、もう一軒、もとい、もう一件返事を返して、となっていくでしょう。このはしごのきっかけとなる通知について、Apple Watchを装着している間は、特に設定しなければすべてApple Watchに届くようになります。カスタマイズしなければ通知で震えっぱなしになるため、これについては後の記事で触れていきたいと思います。Apple Watchでも同じように、通知の内容を確認することができますが、基本的には「了解」ボタンを押せば消えます。はしごの要素なしに、元々やっていたことに戻ることができます。Apple Watchをつけていると、iPhoneに触れる最も大きなきっかけを与える通知を、手首だけで処理できるようになり、結果的にiPhoneに触れている不用意な時間をなくすことができました。○通知だけでなんとかなる場面が増えてくるApple Watchアプリが含まれていたり、通知にカスタマイズのリアクションボタンが用意されている場合は、Apple Watchからコンテンツを見たり、返事をすることもできます。例えばInstagramで投稿に「いいね」がついたという通知が来た場合、どの写真にいいねがついたのかをApple Watchアプリで写真を開いて確認できます。また、Facebookの「Messenger」の場合、「いいね」アイコンを返してリアクションすることができます。個人的に便利に感じているのは、Dropboxに買収されたメールアプリ「Mailbox」の通知です。メールを読むときは、基本的に、いかに不要なメールがメールボックスにない状態にしておくかが重要です。スパムフィルタや受信ボックスをスキップするルール作りは可能ですが、それでもかいくぐってくるメールは存在します。Mailboxは、iPhoneに届く通知も、その場でゴミ箱行き、明日通知、を選択することができます。Apple Watchに届く通知もこれを踏襲するため、Apple Watchから、届いたメールをその場ですぐにゴミ箱へ送り込んでやることができるのです。Apple Watchを使ってみると、通知に機能や情報がきちんと含まれているアプリに対する好感が高まります。「Yahoo! 天気」アプリは、絵文字を使って天気予報を送ってきてくれるため、時計でも一目で天気予報が確認できて便利です。Apple Watchアプリを作らなくても、通知を上手く活用することで、Apple Watchを生かすことができそうだ、ということも学び取ることができました。○バッテリーは1日半持続するApple Watchに対する批判のひとつに、「時計のくせに18時間しかバッテリーが持たないなんて……」というものがありました。自動巻の時計やソーラー発電する時計を使っている筆者としても、バッテリー持続時間に関する感想は同様のものでした。Appleが発表している通知自体は変化がありませんが、42mmモデルは幾分大きなバッテリーを積んでいるようで、筆者の使い方ではつけっぱなしにしていても1日半は問題なく動作させることができています。そのため、1泊2日の出張に出かけるとき、Apple Watch専用のちょっと長すぎる充電ケーブルをつい何度か忘れてしまうわけですが、1日終える段階で50%ちょっと残っていれば、夜電源OFFにして寝て翌朝再び使い始めても、その日の終わりまでナントカ持たせることができました。思いのほか、電池が持つ、という印象です。おそらく38mmモデルでは前述の使い方は厳しいだろうなという予測しています。そしてWatch OS 2で時計単体で動くいわゆるネイティブアプリが動くようになると、電池をより消費する場面が増えるだろうな、という予測もあります……。○時計をする生活に戻った5カ月の感想、で、そもそもの話をし忘れていたのですが、「時計をする生活に戻った」というのが大きな変化でしょう。それまでiPhoneで済ませていたせいで、腕時計も滅多にしなくなっていましたが、Apple Watchは自然に毎日つけ続けることができる時計となりました。通知を最適に受け取ったり、後にご紹介するフィットネス機能の継続性に対する挑戦など、Apple Watchをつけ続けて習慣化する工夫が随所に見られ、それらが総合的に作用した結果ではないか、と思いました。松村太郎(まつむらたろう)ジャーナリスト・著者。米国カリフォルニア州バークレー在住。インターネット、雑誌等でモバイルを中心に、テクノロジーとワーク・ライフスタイルの関係性を執筆している。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)、ビジネス・ブレークスルー大学講師、コードアカデミー高等学校スーパーバイザー・副校長。ウェブサイトはこちら / Twitter @taromatsumura
2015年09月09日今年も、9月9日にAppleはメディアイベントの開催を予定しています。ちょうど1年前にあたる2014年9月9日、大成功したスマートフォンiPhone 6 / iPhone 6 Plusをリリースしたイベントの壇上で、Tim Cook CEOは非常にうれしそうな顔をしながら「One more thing……」のスライドを披露しました。このフレーズは、Steve Jobs氏が基調講演の場で、あっと驚かせるような新製品を披露する時のおきまりのフレーズ。Appleの命運を変えた製品を披露した会場でもあったクパティーノ市内のフリントセンターでのこの一言は、感慨も大きかったのではないでしょうか。こうして発表されたApple Watchは、2015年3月のメディア向けイベントで4月24日に発売されることが伝えられました。Apple Watchは、Appleがリリースした初めてのウェアラブルデバイスで、Appleによると「最もパーソナルな製品」と説明しています。アルミニウムと強化ガラスを採用し軽量化を図ったApple Watch Sport、ステンレススチールとサファイヤガラスを採用したApple Watch、18金とサファイヤガラスを採用し、100万円超えるApple Watch Editionの3モデルがあり、それぞれ38mm、42mmの2種類のケースが用意されています。バンドは、しなやかでカラフルなフルオロエラストマー、シックで高級感のあるレザー、そしてミラネーゼループやリンクなどのメタルが用意されており、アタッチメントの使用も公開されたことから、サードパーティーのバンドも出始めています。基本的には、まず本体のモデルとサイズ、色を選び、これに組み合わせるバンドを用意する、という方法になります。モデルの選び方については、後の記事で触れていきたいと思います。○Apple Watchの売れ行きは?Apple Watchについては、この5カ月の間、各種調査で、売れている、失速している、などと一喜一憂する向きもあります。Appleに対してネガティブな情報はもてはやされるという世界的なメディアの傾向があることを差し引いても、具体的な販売データを示さないことが原因、としか言いようがありません。ただ、当のAppleは、決算発表の場などで、「余計な憶測を生みたくない」として非公開を貫いています。しかし各種データでは好調さを示し始めているように思います。まず、Apple Watch発売以降発表されて初めてとなる、Appleの2015年第3四半期決算において、Apple Watchの売上が含まれる「その他の製品」は、前四半期と比較して56%、前年同期と比較して49%上昇しています。Apple Watchの効果と推測することができます。○予測通り、スマートウォッチではトップシェア2015年7月末に出されたStrategy Analyticsの調査によると、Apple Watchの2015年第2四半期の販売台数は400万台で、スマートウォッチ市場の75%のシェアを獲得したと報告しています。8月にリリースされた調査会社IDCのウェアラブルデバイスに関する統計では、同時期に、Apple Watchは360万台を販売し、ウェアラブルデバイス全体のシェアは2位の約20%を獲得しているとしています。ちなみにIDCの調査では首位はアクティビティトラッカーで大手のFitBit。Xiaomi以外の、SamsungやMotorola、LGといった他のスマートウォッチは100万台に届かない売上しか確保できていません。この点も、Strategy Analyticsが出したスマートウォッチカテゴリのシェアとほぼ一致すると見ています。なお、FitBitと比較して、価格レンジはApple Watchの方が大幅に高く、収益性ではトップになっている、と筆者は考えています。この構造は、iPhoneのスマートフォン市場におけるポジションと共通しています。Appleは、最近こそ、スマートフォンメーカーのシェアで日本、米国、中国などの市場でトップを取るようになりましたが、販売台数でトップメーカー出なかった時期も、収益の大半をAppleが占めるという構造を維持してきました。スマートウォッチ市場でも、同様のビジネスモデルと製品のポジションを確保しようとして、現状は成功しているように思います。○米国では販売網の大幅な拡大を敢行Tim Cook氏は前述の2015年第3四半期決算発表の場で、「初代iPhone、初代iPadよりも上手くいっている」と答えており、急速な立ち上がりを狙うというよりは、長期的に定着させる製品に育てていくことを目指しているようです。Apple Watchの生産は、Tim Cook氏も決算発表で認めていた通り、供給が需要に追いついていない状況が続いてきました。そのため、オンラインでの予約・販売からスタートしましたが、順次Apple Storeでの取り扱いを開始しています。米国では8月から、家電量販チェーン大手のBest BuyでApple Watch販売の取り扱いを始めており、1,000店舗以上の全店舗での販売を拡げていく予定です。日本でも、Apple Storeだけでなく、携帯キャリアのショップ、家電量販店での展示や販売が拡がっていくことになるでしょう。生産能力を高められなかったという事情もありましたが、思いの外、のんびりと製品を売っていく意向が強いのも特徴的です。Apple Watchはファッション感覚を強く打ち出した製品であることから、他のデバイスのように毎年ちょこちょこ刷新するサイクルとは異なる方法を採っているようです。ただ、2015年に発売されたばかりの製品で、製品サイクルの想定が立たないため、他の製品のような予測は困難です。ただ、iPhoneのフルモデルチェンジに合わせて、Apple Watchの刷新も行われるのではないか、というありがちな見立てをしておこうと思います。また、本連載でも詳しく触れますが、間もなくリリースされるとみられるwatchOS 2によって、開発者のアプリの自由度と高速性が向上します。現在のApple Watchを買い換えなくても、メリットを享受できることになります。その点で、もし興味がある方は、特にタイミングを待たずに購入しても良いのではないか、と思います。次回は、5カ月のApple Watch生活を振り返って、何が起きたのか、について考えます。松村太郎(まつむらたろう)ジャーナリスト・著者。米国カリフォルニア州バークレー在住。インターネット、雑誌等でモバイルを中心に、テクノロジーとワーク・ライフスタイルの関係性を執筆している。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)、ビジネス・ブレークスルー大学講師、コードアカデミー高等学校スーパーバイザー・副校長。ウェブサイトはこちら / Twitter @taromatsumura
2015年09月07日●各社そろえる音声アシスタントサービスAppleは米国現地時間9月9日に、サンフランシスコでメディア向けイベントを開催するとして招待状が発送された。招待状には毎回、1行のフレーズが書かれているが、今回は「Hey Siri, give us a hint.」が選ばれていた。「Hey Siri」とは、iPhoneやApple Watchなどで、ボタン操作をせずにSiriを起動する際の言葉で、筆者もApple Watchでタイマーを起動するときに利用している。例えば「Hey Siri, 13分のタイマーをセット」という具合だ。実際に、招待状のフレーズ通りにSiriに尋ねてみると、Appleもそうされることを想定していたのだろう、その返答は、イベントの内容まで明かしはしないが、9月9日に発表があることを教えてくれた。iOS 9においてSiriは、これまで以上の進化を遂げることになる。しかも、音声アシスタントであるSiriは、ユーザーの端末でのアプリの使用状況やメール、スケジュールなどの情報を活用した候補の提案も行うようになる。○音声アシスタント競争Siriの競争相手は少なくない。GoogleはAndroidだけでなくiPhoneでも利用できるGoogleアプリの音声検索を、コマーシャルなどでアピールしている。確かに、検索と音声入力は相性が良い。YouTubeなどのアプリにも、検索窓に音声検索の機能が備わるようになり、「キーボードを使わないモバイル検索」の便利さを広めようとしている。加えて、Google Nowによるアシスタント機能と音声が結びつき、「とにかく何でも知っている音声アシスタント」になろうとしている。Microsoftは、「Cortana」をWindows Phone、Windows 10などのプロダクトに導入した。滑らかに喋る音声アシスタントは、各国のキャラクターも重視しており、中国語版では明るい好かれる声を、日本語版では礼儀正しさを強調するなど、親しみやすさを文化に応じてカスタマイズしている。Google、MicrosoftのBingと、検索エンジンを擁する企業の音声アシスタントに加えて、Amazonも、円筒形のスピーカーAmazon Echoで、音声による検索や操作などを実現している。このように、「声」を使った機能の競争はトレンドとなっているのだ。また、アシスタント性についても、競争が進んでいる。最近、こうした自分に関する情報を統合してくれる仕組みについては、Googleマップが便利だと感じている。Googleでは情報を自動的に活用する仕組みに力を入れている。例えばGmailに届いたメールを見て、自動的にスケジュールをGoogleカレンダーに入力したり、Googleマップ上に予約している時間を地点に表示してくれる仕組みが実装された。レストラン予約サービスのOpen Tableでディナーのお店を予約すると、地図上のお店の地点に印がつき、日付と時間を表示してくれるのだ。航空券の確認メールが届いていると、出発する空港の時間と便名が表示される。こうした、ユーザーの操作を減らす、もしくはユーザーがやろうとしていることを先回りして解決しておく、といった充実は、アシスタントとしての便利さをより高めてくれる。●Siri、進化のポイント○Siriなりの言い分こうした中で、iOS 9のSiriはどのような進化を遂げようとしているのか。進化のポイントは、以下の5点だ。Spotlight検索との連携強化スポーツや天気などの情報提示をより深く単位や為替の変換などの計算に対応端末内のデータ、アプリを活用した検索の対応Spotlight検索画面で、よく使う連絡先やアプリ、周辺のスポットなどを提案検索の活用強化という側面から、GoogleやMicrosoftなどと狙う方向性は近くなっているが、極力端末内で解決しようという傾向を強めているようにみられる。つまりSpotlightとSiriをより密接に連携させるということだ。例えば、これまで単位計算などは、Wolfram Alphaを活用して行ってきた。このサービスは知識エンジンと言われており、検索キーワードに対して、その言葉が含まれたページを返す検索エンジンと異なり、直接答えを提示する仕組みだ。しかしiOS 9では、このサービスに頼らず単位計算を済ませるようになる。またSpotlightの機能は、端末内のあらゆるデータを検索可能にする仕組みで、これにはアプリ内のデータや、アプリを介した検索も含まれるようになる。そのため、アプリ側の対応も必要になるが、Siriから直接、アプリの検索を活用することもできるようになっていく。○機械学習の活用WWDC15で披露されたSiriの進化で興味深かったのは、「Siriの検索候補」だ。iOS 9のテーマの1つに「インテリジェンス」があり、それを実現する方法として「プロアクティブアシスタント」、つまり先回りをして、やろうとしていることを便利にしてくれる仕組みを導入することだ。これまで音声アシスタントのインターフェイスとして「Siri」という名前を使ってきたが、Appleが披露したiOS 9では、先回りしてアシストする機能全般に「Siri」という名前を使っていた点が印象的だった。WWDC15のデモによると、ホーム画面の左端に用意されている検索画面を開ける仕組みになっており、ここに連絡すべき相手やよく使うアプリ、近隣のスポットのワンタップでの検索、最新ニュースなどがまとめられている。これらの候補は、各アプリへのディープリンクとなっており、直接情報にアクセスできる仕組みになっている。また、時間帯や場所、スケジュールなどに応じて、アプリの候補や連絡先の候補は入れ替わるとしており、朝起きてヨガアプリを利用する習慣があるなら、そのアプリが候補として現れ、ホーム画面から探さなくてもSiriの検索候補からすぐにアクセスできる。その他にも、ロック画面でのアプリの提案や、イヤホンを挿した際に音楽アプリを候補に出すなど、ユーザーの行動を学びながら操作の手順を1つずつ減らす方法を提案してくれる。●サードパーティアプリにもたらす変化○開発者も、Siriを活用できるようになるかiOS 9のSiriでは、「昨年9月の写真を見たい」「大学を卒業する頃のヒットチャートを聴かせて」といった要望も実現する。背後には、Spotlightが自然言語による検索条件の解読を行い、写真アプリやミュージックアプリが複数のインデックスによる検索を行えるようになっていることから、実現されている。これまで、SiriはAppleのみが知識や機能を与えてきた。しかしiOS 9以降、その方針は変更されそうだ。前述の通り、SiriはSpotlight検索と密接に結びついている。その検索候補には、サードパーティーのアプリの情報を活用したり、アプリのコンテンツに対するディープリンクを設定することができるようになっている。検索APIの紹介において、WWDC15のスライドでは、Spotlight検索で「Maui」(ハワイの島の名前)を入力すると、旅行予約アプリのKAYAKで、サンフランシスコ(おそらく今自分がいる場所の最寄りの空港)からマウイ島までの飛行機の便を、候補に挙げていた。SiriがSpotlight検索の情報を活用するならば、サードパーティーアプリの中にある情報を、Siriの返答として提供できるようになるはずだ。つまり、開発者のアプリが、Siriに対して、情報提供できるようになることを意味する。もちろん、実際にSiriから様々なアプリの情報を利用できるようにするには、アプリ開発者側の対応が求められる。しかも、ただアプリがAPIをサポートするだけではなく、どのような質問が投げかけられるか、どのような返答とディープリンクを返せば便利か、といった調整が必要になるだろう。特に、ユーザーの情報を多く保存しているサービスほど、便利に働くはずだ。筆者があらゆる書類やメモを保存しているアプリ「Evernote」で、「パスポートの更新についてのメモ」や「今日が締め切りのToDo」といった検索から、ノート単体やノートのリストが出てくると便利だろう。できれば、指示語だらけの命令、「あのとき保存したアレ」みたいなニュアンスで、「これですか?」と提示してくれるとうれしいのだが、さすがにそれは当分実現されないだろう。ただ、Siriが取り組もうとしている未来像もまた、ニュアンスに答えられるようになることかもしれない。松村太郎(まつむらたろう)1980年生まれ・米国カリフォルニア州バークレー在住のジャーナリスト・著者。慶應義塾大学政策・メディア研究科修士課程修了。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)、キャスタリア株式会社取締役研究責任者、ビジネス・ブレークスルー大学講師。近著に「LinkedInスタートブック」(日経BP刊)、「スマートフォン新時代」(NTT出版刊)、「ソーシャルラーニング入門」(日経BP刊)など。ウェブサイトはこちら / Twitter @taromatsumura
2015年09月06日●iOS 9のマルチタスク機能とはこれまでiPhoneもiPadも、基本的には1つの画面には1つのアプリしか表示されない仕組みになっており、タスク切り替えの機能が搭載されるまでは、一度ホームボタンでホーム画面に戻り、別のアプリを立ち上げる必要があった。この点は、Androidに対して劣っている点として批判の的になってきた。iOS 4からは、ホームボタン2度押しして、タスクを切り替えることができるようになり、切り替える直前の作業から再開する機能が搭載されるようになった。以降、ホーム画面やアプリ起動中にホームボタンを2度押ししてタスクを切り替える、という使い方が踏襲されている。○iOS 9で採用されたマルチタスク機能AppleはiOS 9で、タスク切り替えの画面デザインを立体的なものに変更し、「マルチタスク機能」を追加した。しかしより大きな変化を体験できるのは、iOS 9を導入したiPadユーザーのみだ。iPadでiOS 9を導入した上で、画面の右端からトレーを引き出すと、対応している別のアプリを重ねて表示し、操作することができるようになる。サイズを類推するに、9.7インチのiPadを縦に構えた場合、ちょうど画面の端からiPhone 6ほどの幅の画面を引き出して、別のアプリを操作できる、という雰囲気になるのではないだろうか。この機能により、例えば、地図を見ながらノートを呼び出してメモを取ったり、メッセージをやりとりしながらカレンダーを呼び出して予定を追加する、といった使い方が可能だ。これまでのようにアプリを切り替えないため、表示されている内容を見ながらメッセージやカレンダーが編集できるようになるため、相当使い勝手が良くなることが考えられる。加えて、現在はiPad Air 2のみの対応となるが、画面分割に対応し、1画面に2つのアプリを同時に起動し操作できる。どちらの画面も同時に操作できるため、2つのアプリの組み合わせで1つの作業を構成する、といったこれまでのiPadでは実現できなかった使い方を体験できるようになるだろう。ちなみに、iPadは、動画再生のピクチャーinピクチャー表示にも対応する。対応する動画アプリやSafariで再生している動画は、そのアプリを閉じても、画面で再生を続けることができる。スポーツのライブ中継を見ながら友達とチャットしたり、ウェブで他の情報を調べる、といったマルチタスクも便利そうだ。●iPhoneユーザーのメリットは○iPhoneユーザーにはメリットはあるのかiPadをより便利なものに変えてくれるマルチタスク機能だが、残念ながらiPhoneユーザーにとっての恩恵は現在のところはない。そのかわりに、というべきか、届いたメッセージなどに対しては、画面上部の通知を下にスライドし、編集画面を表示させることで、アプリを切り替えなくても返信できる機能がある。ただ、この機能はiPadでも利用できる上、通知が表示されている間しかスライドできないことを考えると、いつでも別アプリをオーバーレイ表示できるiPad向けのマルチタスク機能とは異なる。その他にも、アプリ連携機能が強化され、例えばRSSリーダーアプリからソーシャルメディア共有のBufferの投稿画面を呼び出して投稿し、再び元のアプリに戻る、という使い方も可能だ。こちらも、アプリ切り替えを使わず、他のアプリの機能を呼び出して利用できる仕組みとなっている。ただし、共有メニューは画面にオーバーレイされるため、元のアプリの記事の内容を確認したい場合は、一度共有メニューをキャンセルしなければならない。書きかけの内容があったとしても、もう一度共有メニューを開いたら書き直さなければならなくなる。こうした点で、iPhoneの通知から返信を書く機能や、アプリ連携を利用した共有メニューなどは、iPadがサポートするマルチタスク機能の代替にはなりえないのだ。過去のiPadでもスライドするタイプのマルチタスク機能をサポートしている。そのため、iPhoneのプロセッサの問題ではなく、画面サイズからくる使い勝手を考慮しているようだ。Appleが「iPhoneではマルチタスク機能を採用しない」という判断をしているものと考えられる。確かに、きちんと操作できるほどの幅をiPhoneの画面に確保しようとすると、それまで使っていたアプリの画面を完全に隠してしまうことになる。だったらこれまでのタスク切り替えやアプリ連携を使えば良いじゃないか、と考えるのが妥当だ。●iPhone 6 Plusの特別扱いを!○iPhone 6 Plus向けに利用可能にして欲しいただ、iPhoneについても、iPhone 6 Plus、あるいは5.5インチサイズでリリースされるであろう次期iPhoneについては、マルチタスク対応の特別扱いして欲しいという気持ちもある。筆者がiPhone 6 Plusを使っているから、ということも理由の1つだ。1年近くiPhone 6 Plusを使ってきて、そろそろ「大画面のiPhone」以上の価値、あるいはiPhone 6との差を見出したいと、思い始めたのも事実だ。確かに、一部のアプリではiPhone 6 Plusならではの画面構成を体験できる。例えば横長に構えると、設定アプリやメッセージアプリなどは、iPadと同じように、左に項目やスレッドの選択画面、右側にコンテンツの画面が表示される仕組みに変わる。そのため、画面遷移をいちいちしなくてもよくなる、という効率性はある。ただ、設定アプリは常に使用しているわけではないし、メッセージも相手から受信した通知をきっかけに開くことが多いため、確かに使うと効率的ではあるが、その機会が毎日のようにたくさんあるというわけではないのだ。iPadのように、複数のアプリを組み合わせた「ちょっとした作業」が実現できると、大画面iPhoneを選ぶメリット、選んだユーザーの快適さはさらに上がるだろう。例えば、前述のニュースリーダーとソーシャルメディアへの投稿を1画面で行えるようにする仕組みや、乗り換え案内アプリと交通費計算のための電卓、カレンダーとメッセージなど、iPhoneの上でも、2つのアプリの組み合わせのアイデアはたくさん浮かんでくる。もちろんリッチなUIのアプリの場合は、全画面のほうが効率性が高いかもしれないが、毎日利用するちょっとしたアプリほど、マルチタスクに対応させて、同時に開いて使えるようにして欲しいものだ。画面の横幅を生かしたiPhone 6との違いを、より多く体験したいと感じるようになってきたことが、iPhone 6 PlusをiPadのようなマルチタスクに対応させて欲しい理由だ。個人的には、スライド型のマルチタスクよりも、真ん中で画面分割をしてしまうタイプのマルチタスクのほうが、iPhone 6 Plusには良いのではないか、と感じている。iPadほど画面幅も縦の長さも稼げないからだ。おそらく、これ以上大画面のiPhoneが登場することもないかもしれないが、ぜひ、iPhone 6 Plusシリーズの「プラス要素」として、画面分割の採用は検討して欲しいところだ。松村太郎(まつむらたろう)1980年生まれ・米国カリフォルニア州バークレー在住のジャーナリスト・著者。慶應義塾大学政策・メディア研究科修士課程修了。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)、キャスタリア株式会社取締役研究責任者、ビジネス・ブレークスルー大学講師。近著に「LinkedInスタートブック」(日経BP刊)、「スマートフォン新時代」(NTT出版刊)、「ソーシャルラーニング入門」(日経BP刊)など。ウェブサイトはこちら / Twitter @taromatsumura
2015年08月15日●iPadで効率良くメモをとるには?みなさん、メモってどうやって取っていますか?筆者の場合、どちらかというとテキストのデジタルデータのメモの方が好きです。多くの場合、記事やブログなどに使うためにメモするため、箇条書きのメモが取れれば良いからです。例えばこの原稿のためのメモは、iPhoneの「iA Writer Pro」を使って、近所のコインランドリーで雨上がりの大量の洗濯をしている合間に書いています。アメリカのアパートの多くは部屋に洗濯機がなく、街のランドリーで洗濯し、強力すぎる乾燥機にかけて持ち帰るのが普通。この待ち時間、ぼんやりと考え事をするのにちょうど良いのは、目の前出回る洗濯物の単純な動きのせいでしょうか。デジタルのテキストのメモを取るには、思考を妨げない使いやすいキーボードが重要です。iPhoneのフリック入力の熟練度も7年間でかなり進みましたが、それでもMacのフルキーボード、iPad用の外付けキーボードの方が快適です。ただし、キーボードで打ち込むメモは、文字列で表現できる範囲に限られます。もちろん、プログラムのコードという表現方法もあるのですが、原稿のためのメモをコードで残すほど得意ではありません。概念だとかデザインにまつわるスケッチであるとか、絵心がなくても手書きのメモをiPadで取れると、メモの幅が広がるというものです。欲を言えば、その手書きのスケッチも、文字データのように後で使いたい。今日はそんなテーマです。お題【文字以外のメモをiPadで取りたい】解決策→ペンとアプリでスケッチを有効活用する●スタイラスペンを検討する【今回のレシピ】使いやすいスタイラスを検討する手書きのスケッチアプリを検討するできあがったスケッチのデータの取り回しを考える○使いやすいスタイラスとは?書きやすいシャープペン。これは小学生から大学生のころまで、とにかく色々店頭で試し、しっくりくるものを買って長く使っていました。結果的には、生意気にも、製図用で軽いシャープペンと、2Bという柔らかい芯を使うと、手が疲れないことを発見しました。デジタルの世界ではどうでしょう。使い心地が良いのは、iPhoneを発表する際にペンでのスマホ操作を否定したAppleではなく、サムスンのGALAXY S Noteシリーズに付属するSペンや、マイクロソフトのSurfaceに付属してくるペンでしょう。とはいえ本連載はMacとiPadがテーマですので、偉大なる先人の言葉を若干残念に思いつつ、iPadで利用できるペンを探していくことにします。本家が作らなくても、サードパーティが作る。Appleにまつわるエコシステムは、こうして鍛えられているのかもしれません。使いやすいスタイラスも2種類あります。1つは、オーソドックスに、ペンのバランスとタッチの反応、快適なガラス面での滑りを追究するアナログタイプ、そして電池を内蔵してBluetoothでiPadに接続し、アプリと通信するタイプです。シンプルなのは前者で、より軽く作ったり、特殊な布をタッチ部分に使って確実な反応を確保したり、通常のボールペンやシャープペンシルに内蔵するタイプのものまで充実しています。個人的に気に入っているのは、タブレットやスマートフォン向けに手書きのドキュメント作成・共有アプリを手がけるMetaMoJiがリリースした初代の「SuPen」です。数世代進化を続けていますが、手元にある初代SuPenは、軽いのに精密でキャップを外す音がその密閉性を物語ります。また、滑り心地の良い反応の良いペン先を開発しており、文房具らしいモノとしての楽しみも、機能としても充実しています。また、最近筆箱に仲間入りしたのが「Rotring 800+」です。ドイツの製図メーカーで定評のあるシャープペンシルですが、ペン先を収納した際、軸の先端がスタイラスとなり、1本で紙でもiPadでも利用できます。多くのハイブリッドペンは、片方の先端がシャープペンやボールペン、逆の先端がスタイラスという仕組みになっていますが、Rotring 800+は同じ先端で使い分けられるのはユニークです。グリップやペンのバランスをそのまま利用できるというメリットは、プロの道具らしいこだわりと言えるでしょう。主力はこの2本。Bluetooth内蔵のペンも「Evernote」のロゴが入った「Jot Script Evernote Edition」で使ってきましたが、アプリとの接続がどうも不安定に感じる点と、電池式で使いたいときに電池が切れているという経験を何度かして、ペンケースのメンバーから外れました。ちなみに、新作となる「Jot Script 2」が登場しており、こちらはUSBでチャージできるリチウムイオン電池に変わったため、デスクや出先での充電にも対応できるようになりました。この問題解決は、後々、非常に大きな魅力を放つことになるでしょう。●スケッチアプリも使ってみよう○絵心に左右されないスケッチアプリ筆者は、正直なところ、絵心はありません。何でしょう、この曲線と立体に対する強烈な苦手意識。しかしながら、何か考えたり人に伝えるとき、「図」を使うことは多々あります。立体的である必要があまりないからでしょうか。そのため、本格的なデッサンや水彩画のようなブラシや筆圧などの機能が豊富なアプリというよりは、手書きで自由に描くことができ、少し線が補正されてそれっぽく仕上がってくれると、機能としては十分というところです。また、前述のJot Script 2を作っているスタートアップ企業Adonitのアプリ「Forge」も高機能で便利でしょう。様々なペン先から選ぶことができ、レイヤーも利用可能。例えば写真のトレースを行いたい場合も、背景に写真を置いて不透明度を下げて薄くし、1枚レイヤーを増やせば上から写真をなぞることができます。こうしたアプリを本格的に使い始めると、前述のJot Script 2のメリットが増してきます。筆圧感知機能を利用できるため、筆圧の強さで線の太さをコントロールすることができるようになるからです。iPadでのスケッチは、結果的に、Bluetoothスタイラスを活用する方向へと向かっていく、ということが分かってきました。なお、AppleはiOS 9で、iPhone・iPad向けに「ノート」アプリをリニューアルします。書式やチェックリストを作れるようになり、またWebのリンクも貼り付けられるようになるのですが、なんと手書き機能まで内蔵してしまいました。よって、タブレットがあれば、手書きでちょっとした文字や図を残すことができるようになります。ますます、iPadではペンがあると便利な環境になりつつありますが、果たしてAppleは自前のペンを出すのでしょうか。松村太郎(まつむらたろう)ジャーナリスト・著者。米国カリフォルニア州バークレー在住。インターネット、雑誌等でモバイルを中心に、テクノロジーとワーク・ライフスタイルの関係性を執筆している。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)、ビジネス・ブレークスルー大学講師、コードアカデミー高等学校スーパーバイザー・副校長。ウェブサイトはこちら / Twitter @taromatsumura
2015年06月30日●プライバシーは知りたくない「WWDC15」の基調講演で、同じスライドが2度表示された。それはグレーの背景に白い手の平がこちらに向けられているアイコンが用いられた「プライバシー」のスライドだ。Appleはプライバシーを、iOS 9をはじめとするあらゆるサービスやソフトウェアにおける、差別化要因にしようとしている。○プライバシーに対するAppleの考え方Appleは、クラウドにある、あなたのことを知るためのメールや写真、連絡先の情報に関知しない。正直なところ、知りたくないのだ――。基調講演に立ったAppleのソフトウェアエンジニアリング担当上級副社長、Craig Federighiはこう述べた。そして、「すべてはあなたの管理下にある」(同氏)と。Appleはデータを収集しないだけに留まらない。もし、Siriが先回りしてウェブ検索などを行って情報を取得する場合、匿名でのウェブ利用を行うこと、またApple IDとこうしたデータを紐付けないことなどが謳われている。また、Appleやサードパーティーが、そのアプリの情報を他のアプリで活用することはないとしている。サードパーティーの開発者に検索APIが提供され、SiriやSpotlightから検索できるようになるが、ユーザーの意向に沿わないデータの活用は行われないということだ。Appleがプライバシーについて強調しているのはこれが始めてではない。捜査当局を困惑させるほどのiMessageやFaceTimeのプライバシーの強固さや、Touch IDの指紋データを送信しないといった既存のサービスでの考え方と同じだ。それにも関わらず、Appleが改めてこのことを強調しているのは、iOS 9で、より積極的にユーザーをアシストするため、iPhone内にあるユーザーの情報をより積極的に活用しようと考えているからだ。●Googleとは違う道を歩むApple○自分のことを理解するために他人の情報が必要か?ユーザー情報の活用は、Googleが既に実証しているように、ユーザーの作業を軽減し、また思いもよらない、しかし望んでいた発見をもたらす。最近のGoogle Mapsのナビ機能は、買収したWazeに寄せられる事故などの情報を活用し、瞬時に新しいルートを提案する。1分でも早いルートが見つかれば表示され、ユーザーは瞬時の判断でそちらを選択することができるのだ。Googleのポリシーでは、他人が辿ったルートの時間がフィードバックでき、自分が通る直前にその情報を利用できる。わかりやすくいえば、自分より10台前にその場所を通った2台の車が辿った2つのルートを比較できる、ということだ。もし、他のユーザーのデータを使わない場合、同じナビの例であれば、自分が以前通った際のルートと通過時間の結果しかデータサンプルがなく、リアルタイムなルート提案も、公共サービスで提供されている渋滞情報以上のものを使うことができないだろう。ユーザー全員をビッグデータのソースとして扱うか、それをしないかという考え方の違いがそこにある。Appleは後者を選んだことを強調しているのだ。Googleのように、他のユーザーの情報も活用しながら最適な情報を作り出す選択をしなかったAppleは、公共データを活用しながら、じっくりとユーザーに向き合うことしかできない。これは機械学習のテクニカルな話にもなり、メリット・デメリットが存在する。おそらく、Googleのほうが、より多くの人々の行動パターンを活用でき、リアルタイム情報を処理できる点で、フィードバックされる情報は充実する。一方で、ユーザーの生活に密着しているスマートフォンに着目すると、ユーザーのあらゆる行動に着目することで、ユーザーの求めを先回りすることはできるようになるのではないだろうか。例えば、1人の人の行動パターンと位置情報の相関をとる研究では、およそ6週間でユーザーの「日常」を把握できるとされている。より細かいアプリ利用や連絡する相手などを含めることで、iPhoneのデバイスの中でのユーザー行動の学習も、2カ月程度で十分に有効なパターンを見出すようになるのではないか、と推測できる。●iAdの取り扱いは?○Tim Cookも声明と、Safariの新機能この原稿を準備している際、Appleはウェブサイトに「あなたのプライバシーに関するAppleの取り組みについて。Tim Cookからのメッセージ」という声明を発表した。Appleのプライバシーに関するトップページに掲載されているこの文書には、これまで述べてきたAppleのプライバシーに関する考え方がまとめられている。その中で、Appleは優れた製品を売ることがビジネスであり、iPhoneやiCloudに蓄積された個人情報を広告主に売ること、すなわちユーザー情報の「換金」はしない、と述べている。これはGoogleなどの、ユーザーのプロフィールを作って広告を最適化する仕組みに対する批判とも受け取れる。その裏で、iOS 9のSafariに盛り込まれるとみられる新機能に、ウェブ広告業界や、ウェブ広告によって収益を上げているメディア等に小さなパニックが起き始めた。Business Insiderによると、iOS 9のSafariには何らかの形でユーザーが広告を目にしないようにする拡張機能が搭載されると指摘されており、モバイル広告のビジネスに対して大きな影響を与える可能性がある。Appleも、アプリ向けあるいはiTunes Radio向けに「iAd」と呼ばれる広告ネットワークの仕組みを提供しているが、Tim Cook氏の声明では、やはりiAdでも、ユーザープロフィールは活用しないというプライバシーポリシーの適用を明文化しいる。Appleの全体の収益に占めるiAdの金額は、およそ0.3%程度だ。しかしAppleはiAdの活用範囲を広めようとしている。新たに登場した「ニュース」アプリにも、iAdが採用され、美しい記事表示を損なわない広告表示を実現できるだろう。この動きは、結果的にはユーザーのプライバシーを守れるかも知れないが、Appleデバイス上の他社による広告ビジネスを減衰させる施策と受け取ることもできる。いずれにしても、Appleはプライバシーの高さを製品のウリにしようとしている。この考え方は、元NSA職員のエドワード・スノーデン氏も支持していると伝えられた。付加価値として、Androidよりも多少多くお金を払ってもよい、と考えるユーザーもいるかもしれない。Appleのビジネスは製品を販売することであり、プライバシーもそのビジネスを補強する材料として活用しようとしている。松村太郎(まつむらたろう)1980年生まれ・米国カリフォルニア州バークレー在住のジャーナリスト・著者。慶應義塾大学政策・メディア研究科修士課程修了。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)、キャスタリア株式会社取締役研究責任者、ビジネス・ブレークスルー大学講師。近著に「LinkedInスタートブック」(日経BP刊)、「スマートフォン新時代」(NTT出版刊)、「ソーシャルラーニング入門」(日経BP刊)など。ウェブサイトはこちら / Twitter @taromatsumura
2015年06月26日米Appleは6月8日(米国時間)、開発者向けカンファレンス「WWDC15」の基調講演を開催しました。「iOS 9」や「Mac OS X El Capitan」、「watchOS 2」、音楽配信サービス「Apple Music」など多数の発表がありました。ここでは、携帯電話関連のニュースに関わるライターによる「WWDC15」を読み解くためのレポート記事をまとめて紹介します。***○1:内容は予想通りだが充実【レポート】今年の秋はOS3種の実りの秋に! 定額音楽サービスも - WWDC15基調講演レポート事前に予想されていたものとおおむね合致する基調講演でしたが、OS3種やApple Musicなど充実した内容になりました。詳しい説明はこちらの記事へ***○2:注目すべき発表は?【レポート】Proactive Assistant、iPhone 4s、Swiftに注目 - 私はこう見る「WWDC15」(海上忍編)充実した発表内容でしたが、OSやApple Music以外にも、注目すべきポイントがあるようです。この記事ではProative Assistant、iPhone 4s、Swiftなどに焦点を当てて解説しています。詳しい説明はこちらの記事へ***○3:クック流を感じさせる基調講演【レポート】クック氏の発表は地味だが、ソフトウェアの進化はレボリューショナル - 私はこう見る「WWDC15」(一条真人編)今回は、ハードウェアに関する発表が一切ありませんでした。ソフトウェアを強化する姿勢に、ティム・クック氏流の舵取りであると感じさせます。詳しい説明はこちらの記事へ***○4:iOS 9でiPhoneはどう進化する?【レポート】「WWDC15」の発表受けてiPhoneはどう変わる? - 松村太郎のApple先読み・深読みiOSの次期OS「iOS 9」によって、iPhoneはどのような進化を遂げていくのでしょうか。この記事では、WWDC15の発表が与えるiPhoneに対する影響を解説しています。詳しい説明はこちらの記事へ***○5:「堅実」さが目立った基調講演【レポート】目新しさは薄く"改善"がテーマに - 私はこう見る「WWDC15」(小山安博編)Appleでは他社がすでに実現している機能も「改善」していくという姿勢が垣間見えました。それでも「イノベーション」を求められてしまうところに、Appleへの期待の大きさを感じます。詳しい説明はこちらの記事へ本稿で紹介した記事1:【レポート】今年の秋はOS3種の実りの秋に! 定額音楽サービスも - WWDC15基調講演レポート2:【レポート】Proactive Assistant、iPhone 4s、Swiftに注目 - 私はこう見る「WWDC15」(海上忍編)3:【レポート】クック氏の発表は地味だが、ソフトウェアの進化はレボリューショナル - 私はこう見る「WWDC15」(一条真人編)4:【レポート】「WWDC15」の発表受けてiPhoneはどう変わる? - 松村太郎のApple先読み・深読み5:【レポート】目新しさは薄く"改善"がテーマに - 私はこう見る「WWDC15」(小山安博編)
2015年06月13日●生産ツールとしてiPadを捉えなおすiPadについて、日常的には使っているが、iPhone×Macの親密度の向上により、iPadがリビングでの気軽なメディア消費端末以上の使い方をしなくなってしまった、という話を前々回、前回でしてきました。潔く、「筆者のiPad離れ」とも言い切れないところが、iPadの宙ぶらりんなポジショニングを物語っていると思います。「消費端末」から抜けきれないのであれば、その裏返しで、作り出す端末として活用していこう、という単純な発想に切り替えてみてはどうでしょう。ということで、今回は、実際にiPadで本連載の原稿を書きながら、まずは筆者の「原稿執筆」という作り出す作業について、実践してみたいと思います。ちなみに、前回紹介した、Appleの米国サイトで展開していたiPadの特設サイトにも日本語版が登場していました。「iPadですべてが変わる」と題したページには、英語版と同じ5つの利用シーンが紹介されています。かなりのアプリの数が紹介されており、日本向けにアレンジが加えられていますので、覗いてみてください。お題【iPadで作り出す:原稿執筆を行う】解決策→外部キーボードとお気に入りのテキストエディタ、「作業台」でひと通り●テキストエディタはiA Writer Pro、これに外付けキーボードを組み合わせる【今回のレシピ】2013年に購入したiPad mini 2(という名称に変わったiPad mini Retinaディスプレイモデル)iA Writer Pro + iCloud DriveMicrosoft Universal Keyboard もしくは Apple Wireless KeyboardSlateGo○ワークフローが便利なiA Writer Pro原稿を書くとき、以前は、話の流れを決めて、資料を集め、文字を書くことに集中するというスタイルを採っており、そこでアウトライン作りと「紙幅」を感じながら書けるテキストエディタを探していたところ、iA Writer Proというアプリに出会いました。このアプリはMarkdownに対応していて、シンプルな記法で構造化した文書を作ることができます。このMarkdownは割と便利で、例えばブログサービスのTumblrやWordPressでも利用できるので、使えるようになっておきたいところです。HTMLだけでなくMicrosoft Word形式で出力することもできるため、納品にも便利! そのままだと、謎の連続したシャープ(#)や括弧が付いていて、わけがわかりませんが。Markdownと並ぶ有効な機能が、「モード」。これが、筆者の文章執筆のスタイルにぴったりなのです。まずは「Note」。テーマカラーは緑です。アウトライン作りや情報収集の結果を貼り付けて、文章を書き始める準備をする状態です。次に「Write」、青。今現在のように、Noteで作ったアウトラインと資料とで、文章を書く作業。続いてピンクの「Edit」。書き上げてから編集や校正などを行います。筆者はこの3つを使っていますが、もう一つはエディタ上から編集できない読むだけのモードである「Read」があります。カラーは黒です。ファイルのリストは前述の通り色分けされるため、どの原稿がどのプロセスにあるのか、ということが一目でわかり、便利、というわけです。○キーボードがモノを言う実はこのiA Writer Proは、iPhone/iPad両対応のiOS版の他に、Mac版もリリースされており、筆者はMacで先に使い始めました。保存はiCloudとDropboxに対応していますが、iA Writer Proの作業ファイルはiCloud Driveに置いています。その理由は、Handoffです。iCloud Driveで同期していると、Macで書いていた原稿をiPhoneやiPadのiA Writer Proにそのまま引き継いで編集を続けることができるのです。例えば、Noteの段階ではMacでブラウザなどを駆使して情報収集をしながら資料を作り、Writeの段階になったらiPadで持ち出して、どこかリラックスできるところで書く、という流れが実現できるのです。ただ、原稿執筆はテキストエディタの快適さだけがポイントではありません。最大のストレスは文字入力用のデバイスです。当然この原稿も、ここまでのところ、iPad mini 2の画面に表示されるソフトウェアキーボードでは1文字も入力していません。筆者とて、多分1段落くらいで脱落するでしょう。そこで外付けキーボードが必要となります。今回はApple純正のBluetoothキーボードをiPad mini 2にペアリングして使っています。iPad mini 2にはスマートカバーを装着し、自立させて使っています。キーボードは十分タッチタイピングに対応する使いやすさがあり、指が絡まったり、なんのキーを押しているのかわからなくなることはありません。ただし、日本語変換は、普段使い慣れたATOKを外部キーボードでは利用できないという制約があるため、iOS標準のものを使用しなければなりません。しばらく使っていませんでしたが、iOS 8とOS X Yosemiteからは速度も精度も向上しているように思います。気は利かないが、実用の範囲内、といったところでしょうか。●タブレットか? ノートパソコンか?○ノートパソコンというスタイルに打ち勝つ何か、とは?Apple Wireless Keyboardはフルサイズで申し分ない使い勝手ですが、これをで先に持ち運ぶのは形状も相まって難しいところです。また、iPadにもキーボードにも、机が必要です。そこで、これはMac向けのモバイルデスクなのですが、アメリカ製のバンブー材で作られた「板」、SlateGoを用意してみました。大きめの穴が空いている単なる板で、右側にはiPhone 6 Plusにぴったりなサイズのトレーが用意されています。工夫は施されていますが、やっぱり「板」ですね。これの上にiPadを立てて、キーボードを配置すれば、机のない場所でもiPadと打ちやすいキーボードでガンガンタイピングができる、というわけです。とはいえ、iPad、キーボード、そして「板」を持ち歩ける環境とはどこでしょう。自宅のリビングルーム、あるいはアパートにある、霧がなければゴールデンゲートブリッジが望める(つまりほぼほぼ見られない)共用テラスぐらいしか、思い浮かびません。荷物が多すぎ、大きすぎるのです。そこで取りいだしたるはMicrosoft Universal Keyboard。WIndows、Android、iOS全てをサポートするコンパクトなモバイルキーボードです。Apple Wireless Keyboardに比べるとキーは小さく、ミスタイプを防ぐにはかなりの慣れが必要ですが、このキーボードには前述の多すぎて大きすぎる荷物の問題を解決する工夫があります。それは「キーボードのカバー」です。iPadにもカバー、キーボードにもカバー、とカバーだらけなわけですが、Microsoft Universal Keyboardのフタにはヒンジに近い部分に溝が作られており、ここに厚さ10mmまでのデバイスを立てかけることができるのです。しかも、初めは気づきませんでしたが、このフタ部分は磁石でくっついているだけなので、取り外してデバイスを自由な場所で立てかけることが可能です。屋外でちょっとでも風が強いと、iPad mini 2のスマートカバーはすぐに風にあおられて倒れますが、このキーボードのフタなら心配ありません。○MacBookが絶妙すぎるノートパソコンより確実にコンパクトで、しかしきっちりタイピングができ、公園のベンチでも仕事ができる、そんなスタイルをiPad mini 2で作ることができそうです。しかしながら、ここで登場したのがMacBook。MacBookの920gという軽さ、フルサイズのキーボード、そして12インチのRetinaディスプレイという仕様は、絶妙過ぎる、の一言です。iPadで苦労して環境を整えなくても、これ1枚があればキーボードの問題も机の問題も解決してしまうわけです。もちろん、iPad mini 2+Microsoft Universal Keyboardの組み合わせの方が224gほど軽いのですが、それであの快適さが手に入るなら、とその魅力を感じずに入られません。しかし、価格は4倍近くになるわけで、大いに考える余地、あるいは思いとどまる可能性があります。MacBookは確かに魅力的だし、iPadのポジションを奪いそうな存在です。しかし圧倒的な価格さと、「タブレットとして使えないこと」という2つのポイントがあります。iA Writer Proの「Write」で書きあがった原稿を、「Edit」モードにしたら、iPadを手にとって、プリントされた文書を読むように確認することができます。この瞬間、iPad、やるじゃないか、とニンマリさせられるのでした。松村太郎(まつむらたろう)ジャーナリスト・著者。米国カリフォルニア州バークレー在住。インターネット、雑誌等でモバイルを中心に、テクノロジーとワーク・ライフスタイルの関係性を執筆している。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)、ビジネス・ブレークスルー大学講師、コードアカデミー高等学校スーパーバイザー・副校長。ウェブサイトはこちら / Twitter @taromatsumura
2015年06月02日●iPadの市場は今後も縮小傾向が続く?4月からゴールデンウィークにかけて、本連載でも個人的にも、真剣にMacBookシリーズについて真剣に考えた1カ月強でした。今もなお、2015年中の本気のリプレイスを検討し、ノートパソコンの新しい基本形となるであろうMacBookと、成熟と新しさを兼ね備えたMacBook Pro 13インチ。どちらも魅力的な選択肢で、買い換えても損はしないと思います。その一方で、頭の片隅にありつつ、長らく話題に触れなくなってしまったiPad。いや、使っていないわけではないんですよ。むしろ毎日リビングルームで活躍しているほど。ただ、使い方があまりに変わらぬ日常過ぎて、特筆すべきことがなくなってしまっていたんですよね。これは良いことでもあり、悪いことでもあります。Appleの2015年第2四半期決算でも、iPadは前年同期もアナリストの予測も下回る1,262万台の出荷に留まり、縮小のトレンドが続いています。ただ、自分のiPadとの接し方を考えてみて、少し納得できる部分もあります。お題【iPadを再起動しよう】解決策→iPadという存在について考えてみる●iPadの存在意義を洗いなおす○iPadシリーズも成熟し、すでに十分魅力的、ゆえに基本的に本連載は、筆者の非常に個人的な意見、感想ばかりなので、あえて断るまでもありませんが、殊、現在使っているiPad mini Retinaディスプレイモデル改めiPad mini 2については、「非常に」をつけるほどに満足しています。いや、まさか同じものが、名前のアップグレードを受けるとは思っていなかったのですが。iPad mini 3やiPad Air 2が登場し、特に後者は薄さとディスプレイのキレイさに感動しましたが、じゃあiPad mini 2を買い換えるほどか、といわれると必要性を発見しにくかったというのが本音です。もちろん、Retina化される以前のiPad 2や、Retina化されても分厚く持ち歩きに不向きだった第三世代iPadを持っている人には魅力的と言えるかもしれません。ただ、後述の筆者の使い方だと、買い換えなくても問題ない、という評価もできるでしょう。第三世代iPad、つまり2012年に発売されたモデルを持っている人は、既にRetina化が済んでいることから、ゲームや何らかのコンテンツ編集を行わない人、つまりビデオ視聴が中心のユーザーにとっては、既に充分な性能を備えている1枚、と言えるわけです。形も既にシンプルで、最新モデルでは薄さも極まっており、早い段階から成熟していたiPad。このあたりが、iPadが伸び悩んでいる理由の1つと言えるのではないか、と思いました。○コンテンツを見る道具として最高さて、筆者のiPad mini 2(と呼んで良いですよね、買ったときと名前は違いますが……)。コンパクトで軽く、Retinaディスプレイの高精細なディスプレイとステレオスピーカーは、「コンテンツを見る道具」として十分な性能を発揮してくれます。筆者は米国・バークレーの自宅で、iPad mini 2を毎日使っています。主に、ビデオの視聴が中心です。だったら、より画面サイズが大きなiPad Airシリーズの方が良いんじゃないか、と思われるかもしれませんが、そうでもないのです。使い方としては、Amazon Instant Videoや、NetflixもしくはHulu(見たいドラマごとに契約を変えてる)、CrunchyRollなどのアプリで見たい番組を選んで、Apple TV(1世代古い、720p対応モデル)がつながったテレビに映像を飛ばして楽しんでいます。つまりiPad本体のディスプレイを使わずビデオを楽しむ時間が多いため、たまに外に持ち出すときにはより小さな方が良い、という考え方です。基本的にiPadのスマートカバーを閉めた状態で視聴するので、電池も心なしか長持ちします。ディスプレイ使いませんからね。それならiPhoneからApple TVに映像を飛ばせば良いじゃないか、と思われるかもしれませんが、それではダメなのです。電話がかかってきたり、メールが届いて返信しようとしたり、映像を見ながら辞書やWikipediaを調べたくなったとき、間違って映像が止まってしまったら困るじゃないですか。○iPhone 6 Plusにお株を奪われた部分もiPad mini 2は、ビデオに限らず、割とコンテンツを楽しむ使い方が中心でした。あるいはBluetoothのコンパクトなキーボードを使って、ときおりで先でiPad miniを使って取材メモを取ったり、アイディアを考えたりすることもありました。ここで、iPadが伸び悩むもう一つの理由として考えられる実体験を見つけています。それはiPhone 6 Plusの存在です。iPhone 6 Plusは5.5インチRetinaディスプレイを搭載しています。数字の上では大したことないですが、7.9インチのiPad mini 2の方がやはり大きく、また4:3の縦横比も「画面が広い」印象を創り出しています。とはいえ、外付けキーボードを使ったちょっとしたメモ書きなら、iPhone 6 Plusでも充分な広さを確保できるようになってしまいました。特に、横長に構えると、メールやEvernoteなどのアプリでは、左にメニュー、右に内容や編集画面、という2画面構成も利用でき、非常に実用的です。この画面構成も、iPadのお株を奪うもの、という感じがします。また、メディア消費についても、特にKindleなどの電子書籍は、iPad mini 2ではなくiPhone 6 Plusで読むようになってしまいました。上手く文字サイズを調整すると、ちょうど文庫本の1ページの紙幅のような感覚になり、軽い端末も相まって、疲れ知らずで読書が捗るのです。これも、主にiPad mini 2の「読書端末」という用途を、iPhoneが奪っていった格好です。●iPadを再起動させるためのAppleの施策に注目筆者は、iPadがある生活が日常になってしまったという感想を持っていました。とはいえ意外と愛情深く使っていたんだな、という気づきもあります。それ故に、iPadの再起動のストーリーは1回では完結しませんでした。ということで、次回もiPadを再起動する話の後編、ということにしたいと思います。売上低迷の続くiPad、Appleも、おそらく分かっていたこととはいえ、何らかの打開策を見出す必要があると感じているようで、米国のウェブサイトで始まった特設サイトなどに触れつつ、話を進めていきましょう。松村太郎(まつむらたろう)ジャーナリスト・著者。米国カリフォルニア州バークレー在住。インターネット、雑誌等でモバイルを中心に、テクノロジーとワーク・ライフスタイルの関係性を執筆している。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)、ビジネス・ブレークスルー大学講師、コードアカデミー高等学校スーパーバイザー・副校長。ウェブサイトはこちら / Twitter @taromatsumura
2015年05月21日●12インチ、13インチ、15インチ4月は、MacBook、MacBook Pro 13インチという、3月9日のイベントで発表された新しいMacBookシリーズのうちの2機種をじっくりと試してみました。今回は少し、まとめとしての記事を書いておこうと思います。元々使っているMacBook Pro 15インチと合わせて、12インチのMacBook、13インチのMacBook Proの3つのサイズのMacを比べてきたことになります。またMacBook Air 13インチについては、今使っているマシンの前に使っていました。作業の負荷として、テキスト編集が主で、これに加えて写真編集と短いビデオ編集を行うという筆者の前提で、今現在における筆者のチョイスについて答えを出しておこうと思います。結論から言うと、「必要なときが買い時」という点ではMacBook Pro 13インチが今のところ良いと思います。同時に、切羽詰まっていなければ「ステイ」、というポジションです。お題【2015年に欲しい、理想的なMacとは?】解決策→MacBook Pro 13インチ、もしくは次のMacBook Air?●ノートPCを再定義するであろうMacBook○多分、未来はMacBookMacBookに触れてみて、必ずしも「思い切り新鮮だった」という印象は受けませんでした。しかし、非常に軽く、小さく、そのため画面の美しさが際立つ「キレイな製品」であるのには違いありません。これは、一般に懸念材料とされているUSB-Cポートや薄型化されたキーボードについて、筆者は特に問題にならなかったことから、単体で使っている上では大きなネガティブなポイントがなかったということが理由でしょう。おそらく、あのキーボードがどうしても嫌だという人もいるでしょうし、これらは筆者も困ったポイントでしたが、ThunderBolt2やSDXCカードスロットがないことで不便をする人もいるでしょう。しかし一方で、極限までシンプルに削り取られた、ディスプレイとキーボードが備わるだけのMacBookは、ノート型コンピュータの未来、あるいは最終的な形、理想の原点、といったところでしょうか。これ以上どうしようもないところまで来てしまったような印象を受けます。ノートパソコンとして単体で利用する上では、これで問題がないのです。MacBookは、Appleのノートブック型ラインアップにおける「当面の基本形」として、再定義されたマシンと考えることができます。薄型キーボード、フォースタッチのトラックパッド、Retinaディスプレイ、9時間以上のバッテリーライフ、USB-Cポートなどを基本性能に、その他のモデルはこれに何らかの機能や性能を追加しながら、モデルのラインアップが刷新されていくでしょう。例えば、少し大きな13インチのMacBookが出てきたらどうか。ちょっと強度に不安を覚えますが15インチのMacBookが出てきたらどうか。面白そうですが、どちらもその必要性がない、と考えています。○完全なる過渡期とはいえ、MacBookの購入しにくい理由は、ベンチマークでは2011年モデルのMacBook Airと大差ないという結果からでした。実際にまっさらなシステムとして使い始めると、レインボーカーソルを見ることなく快適に利用できます。ただ、個人的な性格として、今使っているものより性能の低いマシンを買おうという気に、どうしてもなれなかったというのが実際のところです。やはり最新のCore i5ファミリーを搭載したMacBook Air以上を選択したかったわけです。一方で、これまでも連載で述べてきた通り、一度MacでRetinaディスプレイを使ってしまうと、後戻りできない「感覚」が身についてしまいます。これまでノート型のRetinaディスプレイはMacBook Proの特徴でもありましたが、MacBookでも採用され、採用モデルは拡大することが考えられます。今現在、MacBook Pro以下のラインアップでは、MacBook Proと同じCore i5ファミリーを搭載する「MacBook Air」と、MacBook Proで採用されているRetinaディスプレイを搭載する「MacBook」、という選択をしなければならず、性能面からすれば13インチのMacBook Proを選ぶしかない、というチョイスになります。完全に過渡期。2015年はMacBookシリーズのラインアップが整理される1年と言えるでしょう。●近い将来刷新されるかも? なMacBook Air○次のMacBook Airへの期待一つ、インターフェイスの視点での考察を。3月9日に発表されたMacBookシリーズのうち、新型の薄型キーボードとフォースタッチに対応したトラックパッドの両方を搭載したのはMacBookだけでした。同時に発表されたMacBook Pro 13インチには、新しいフォースタッチのトラックパッドは搭載されましたが、新型キーボードは搭載されませんでした。そして、同じ日に刷新されたMacBook Airシリーズには、その双方が搭載されていません。トラックパッドは今後、フォースタッチ対応へと切り替えられていくでしょう。しかしキーボードについては、もしかしたら、既存のキーボードをPro向け、MacBookに搭載された薄型をそれ以外のモデル向けへ振り分けることも考えられます。MacBook Airは3月9日にアップデートされましたが、インターフェイス面では古いトレンドをそのまま引きずっており、例えば新しい薄型キーボードとフォースタッチのトラックパッドの両方を採用するモデルが登場する可能性があるのではないか、と思います。Retinaディスプレイと新型キーボード&トラックパッド、1つもしくは複数のUSB-Cポートを搭載し、加えてSDXCカードスロットぐらいを搭載したMacBook Airが登場してきても良さそうな気がしてきました。すると、これまで13インチでRetinaディスプレイの差異しかなかったMacBook AirとMacBook Proの間に、キーボードやポート類という差異が生まれるのではないか、と考えています。それがラインアップ上、充分な際になるかどうかはわかりません。松村太郎(まつむらたろう)ジャーナリスト・著者。米国カリフォルニア州バークレー在住。インターネット、雑誌等でモバイルを中心に、テクノロジーとワーク・ライフスタイルの関係性を執筆している。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)、ビジネス・ブレークスルー大学講師、コードアカデミー高等学校スーパーバイザー・副校長。ウェブサイトはこちら / Twitter @taromatsumura
2015年05月12日●MacBookは本当にUSB-Cポート1つで大丈夫なのか?MacBookのレビューをしている最中に、Apple Watchの発売日を迎えました。筆者のチョイスはApple Watch 42mmとミラネーゼループ。ステンレススチールはピカピカと磨かれており、つや消しでサラサラとした表面のMacBookシリーズとは異なる輝きがあります。Apple Watchを腕に巻きながらMacのキーボードを使うと、金属のバンドは特に、パームレスト部分との摩擦が気になります。ミラネーゼループの場合、バンドの磁石が仕込まれている部分が平面となっており、ここはより傷が目立ちそうです。タイピングの時は、他の時計のように外して使っても良いのですが、締め切り直前のどきどきや、ペースに乗ってタイピングしているときの軽い興奮状態が記録できないのももったいない、と思ってしまい、少し悩んでいます。ちょっと、手首部分を上げてタイピングすれば良いじゃないか、という問題解決で、一応の結論を迎えようと思っております。さて、本題のMacBook。今回は、論争の的となった1ポートのUSB-Cについてです。お題【本当にUSB-Cポート1つで大丈夫なのか?】解決策→いや、そもそも使うのは1日1回だった●USB-Cポートの使用頻度は高くない、使い心地は固い○限りなく、使う頻度は少ない結論は早い方が良い、ということで、この議論を終わらせてしまいましょう。「MacBookのUSB-Cポートは、1日1度しか使わなかった」もう、USB-C対応のアクセサリがないとか、ポート数が少ないとか、そういう話じゃなかったんです。MacBookを使う上で、USB-Cポートに何かを差し込むのは、帰ってきてから、家に置きっ放しにしていた充電アダプタに差し込むときだけ。それ以外でこのポートに何かを差し込むことはなくなりました。バッテリーの持続時間が長い、という話はこれまでもしてきましたが、故に出先で電源を探すことも、バッテリー残量が減ってきてそわそわすることもなくなりました。数日で、ACアダプタそのものを持ち歩かなくなります。外部ディスプレイに接続することもなく、デジタルカメラから写真を取り込むこともなく、外付けハードディスクにデータが入っていることもない。MacBookを使うのは、こうした「これまでのパソコン的な何か」がない人たちであり、用途だと割り切っていることが大切です。裏を返せば、上に触れることが1つでもあるなら、MacBook AirやMacBook Pro 13インチを選ぶべき、と思いました。○固いUSB-Cポートを使うのは付属の電源ケーブルだけ。MacBookを選ぶべきかどうかの非常に分かりやすく、検討し始めて早々に現れる分岐点の存在が明らかになったところで、USB-Cポートの使い心地を一言で表すならこうです。「固い」比較対象はこれまでのUSBポート、そしてAppleがMacBookシリーズのために考え出した磁石でくっつく電源コネクタ「MagSafe2」。前者はとにかく、MagSafe2はコネクタを近づければ吸い付いて充電が始まり、指でもちょんと当たれば本体と離れる、そんな優れたコネクタです。筆者もMagSafe2には、覚えているだけで3度は助けられました。充電中のMacBook Proの電源ケーブルに足を引っかけてしまい、「これはもうテーブルからMacが落ちた、終わった」とスローモーションで真っ青になる瞬間。そんなぞーっと背中に気持ち悪い寒さが走ったものの、Macはびくともせず、ケーブルだけがただ外れて落ちるだけで済んでくれるのです。これだけで、MagSafe2の御利益を感じずには入られないわけです。しかしMacBookのUSB-Cポートは、普通のUSBポートと比べても固く、しっかりとコネクトされてます。怖くて結局少し持ち上げただけでやめましたが、MacBookが持ち上がるくらい、というとその固さが分かると思います。心持ち、USB-Cポートが両端に付いているケーブルも太いですし……。この固さは、足を引っかけたら、確実にMacBookもろとも床に落ちるパターンです。つまり、充電しながらMacBookを使うな、ということでしょうか。それは言い過ぎにしても、確かにバッテリーの持続時間を考えると、充電しながら使うシチュエーションは日中はありませんでした。また、もしも家に帰ってきてさらにMacBookを使い続ける際、充電が必要なほど電池が減っていたら、多分その日はもう仕事をやめた方が良い、というくらい働いているはずです。●USB-Cポートの充電以外の用途はどうなる?○ドックや外部ディスプレイなど、環境整備に期待MacBookではUSB-Cも含めて、外部ポートはさほど重要性を感じることはありませんでした。とはいえ、もしも今後USB-Cポートを搭載するMacが増えていくとすれば、充電以外の用途をきっちりと整えて行く必要があります。MacBookには、USB-Cから通常のUSBポートへの変換コネクタ、USB-CからUSB-Cポート・通常のUSBポート・ディスプレイ出力(HDMIもしくはVGA)というコンビネーションのコネクタが用意されています。しかしこれらのコネクタだけでは不十分と言えるでしょう。Appleが何を意図して(隠して?)いるのかは分かりかねますが、USB-CポートからThunderBolt2(DisplayPort)に変換するアダプタが必要です。さらに言えば、少なくともMacBook Air 13インチと同じ外部ポート構成になるようなドックを売り出してくれても親切ではないか、と思います。もっとも、Appleに期待するより、サードパーティーの仕事が早いかもしれません。あるいはディスプレイの進化も期待しています。USB-Cケーブル1本をつなげば、充電・給電、ディスプレイ出力、USBハブ機能が使えるようなインターフェイスを備えてくれると、これ1台をデスクに置いておけばMacBookをスマートに使いこなせます。一方で、ワイヤレス化、クラウド化が進んで、やっぱり充電用途だけで良いんじゃない?という結論が最終的に待っていることにも期待しています。ディスプレイは現状でも、1080pまではApple TVを接続したディスプレイに無線で飛ばすことができます。デジタルカメラからも、Wi-Fiで写真を取り込めますし、iPhoneで撮影した写真はiCloudフォトライブラリを通じて自動的に「写真」アプリに入ってきます。問題は写真以上に大きなデータの保存ということになりますね。松村太郎(まつむらたろう)ジャーナリスト・著者。米国カリフォルニア州バークレー在住。インターネット、雑誌等でモバイルを中心に、テクノロジーとワーク・ライフスタイルの関係性を執筆している。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)、ビジネス・ブレークスルー大学講師、コードアカデミー高等学校スーパーバイザー・副校長。ウェブサイトはこちら / Twitter @taromatsumura
2015年05月08日●MacBookのキーボードは打ちやすいのか?MacBookを試し初めて10日がたちました。軽くなった920gのMacBookは、どこまででも持ち運んで行けそうな、そんな気分になってしまいます。天候不順の4月の東京、ばっちりと防水が施されたサンフランシスコ製のバックパックには小さすぎるグレーの板は、しっかりと活躍してくれています。この期間に書いている原稿のほぼすべてはMacBookの本体のキーボードを叩いています。パフォーマンスにも問題がなく、レインボーカーソルに見舞われることもありません。まあ、仕事柄、普段はそんなに負荷のかかる作業をしていないことも挙げられます。こうして原稿を書いている最中、パームレストやキーボードの指先から熱を感じることもありません。あと、バッテリー残量89%で、残り時間11時間39分、っていうの、やめてもらえませんかね。前回から何度も言っていますが、そんなに筆者のスタミナはありません。今回は、長時間仕事を続ける上で、目に並んで重要な要素である指先の話です。お題【MacBookのキーボードは打ちやすいのか?】解決策→コツはなでるように●MacBookのキーボードは叩くな、なでろ○新しいメカニズムとほとんどないタッチMacBookで賛否両論の新しいキーボード。薄型化を極めるため、しかし打ちやすさを作り出すため、新しいメカニズムを採用しているそうです。Appleによると、新しいキーボードの構造はバタフライ方式。これまでのシザー式に比べて揺らぎが少なく、薄い構造を実現できるとのこと。またキーのどこを押してもきちんと認識されることから、キートップの面積を大きくできるというメリットもあります。キーの安定性について一番分かりやすいのはスペースキー。これまでのキーを押さずに前後に揺すってみると意外と動くことに気づきます。まあ、今までやったことがなかったので知らなかったのですが。しかし新キーボードでは、この揺らぎがほとんどありません。ただ、このことはもう一つの特徴であるキーの浅さから来ているようにも思いますが、その話は後から、ということで。キートップが大きくなることは、おそらく少しラフなポジショニングでのタイピングでも、きちんとズレずにタイピングできる、というメリットがあるかもしれません。もっとも、文章を書く仕事をしている身からすると、ミスタイプを減らすことは文章を気持ちよくキーボードから書いていく作業には不可欠なことだし、仕事の効率にも関わります。キートップがちょっと小さいからといってミスするようではダメなわけで、個人的には、キートップが大きくなることは、さほど使い勝手に左右しない、というところが本音です。○叩くな、なでろこれもいろいろな場所で指摘してきたことではありますが、キーボードのような接触時間の長い、やや複雑なインターフェイスはおそらく、慣れたモノが一番使いやすくなっていく、という性質があると思います。現状、iMacなどに付属してくるAppleのキーボード、MacBook Air/MacBook Proに搭載されているキーボードは非常に近いタッチであることから、割と素直に移行することができるのではないか、と思います。特に、MacBook Airを使っていて、性能面でステップアップしたい、とMacBook Proに移っても、剛性感やキーボード面の傾斜の違いはあれど、さほど大きな違和感を覚えないのではないか、と思います。ただ1点、その傾斜とエッジのせいで、MacBook Proを長時間使っていると、手首よりやや肘に近い部分にスジがついてしまうのですが。そういう「タッチの共通点」からすると、MacBookのキーボードはこれまでにないものでした。MacBook Airなどの既存のキーボードは、「薄いけれど打鍵感がある」というラインだったのですが、MacBookのキーボードは「打鍵感は指先の振動だけ」というと言いすぎでしょうか。そのため、今までみたいにキーを押し下げるつもりで指先に力を込めると、すぐに底打ちしてしまい、その力が必要以上のものだったことを伝えてくれます。もっと柔らかに、もっと力を抜いて。今までのキーボードの感覚からすれば、「叩くな、なでろ」という意識で触れると、ちょうど良い力加減になってきます。このコツをつかみ始めると、新しいキーボードへの慣れは加速度的に進んでいきます。慣れる時間は、さほどかからないのではないか、というのが現状の評価です。●打鍵するときの音はより静かに○触れるときの感触が楽しめるようになるなでるように力を抜いて指を早く動かす。そんな感覚でMacBookのキーボードに馴染んでいくと、なでているのに指先にフィードバックが打鍵感として返ってくるという勘所をつかむことができます。すると、もちろん指の移動距離も短くなりますが、それ以上に打鍵するときの音が静かになっていくことに気づかされます。慣れないうちはつい力をかけ過ぎてしまい、ついつい「パチパチ」という音を鳴らせながらのタイピングになってしまいます。「キーを叩いている」という意識は存分に味わうことができますが、キーを押し下げても指して戻る力が強くないため、あまりテンポ良いタイピングができません。だんだん力を抜いていくと、そのパチパチ音が軽減されていき、前述の指先へのフィードバックに意識が向いていきます。すると、そのフィードバックを得て次の打鍵に進んでいくようになり、スムーズさが増していくのです。今までのタイピングがスタッカート(跳ねるように演奏)だとすれば、MacBookのキーボードはスラー(滑らかに)という感覚と言うべきでしょうか。あれ、割ともう、このキーボードが大好きな自分がいることに気づかされます。滑らかに、優雅に。なかなか良いじゃないですか。今後、このキーボードが他のモデルにも波及するかもしれませんが、個人的には大歓迎です。松村太郎(まつむらたろう)ジャーナリスト・著者。米国カリフォルニア州バークレー在住。インターネット、雑誌等でモバイルを中心に、テクノロジーとワーク・ライフスタイルの関係性を執筆している。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)、ビジネス・ブレークスルー大学講師、コードアカデミー高等学校スーパーバイザー・副校長。ウェブサイトはこちら / Twitter @taromatsumura
2015年04月24日●WWDCはどんなイベントなのかAppleは2015年6月8日からの日程で、恒例となっている世界開発者会議(WWDC)をサンフランシスコで開催するとアナウンスした。今回は、このイベントで何に注目すべきかについて述べてみたい。○WWDCとは?WWDC15の参加費は1人1599ドル。もともと高額なチケットな上、昨今の円安もあって、日本円にして約20万円のチケットとなっているが、最新の情報を得ることができ、Appleの技術者のワークショップやハンズオンを受けられるため、アプリ開発者にとっては問題解決の近道であり、新たなアイディアをいち早く作り上げる場として重要視されている。WWDCは開発者向けのイベントだが、初日に行われる基調講演では最新のソフトウェアや技術的な解説に加えて、最新のハードウェアやサービスが披露される場としても活用される。そのため、開発者のみならず、一般のユーザーも、基調講演に注目している。2015年はソフトウェアとして、OS X Yosemite、iOS 8が、これらがデバイス間、あるいはクラウドを介して「連係」する機能、また新しいアプリ開発環境であるSwiftが披露された。WWDC15も、基本的には、OS Xの新バージョン、iOSの新バージョン、そしてSwiftのバージョンアップ、iCloudもしくはiTunesサービスの機能追加や刷新が軸になるとみている。WWDC15でも、将来リリースされるデバイスを見据えたOSの新機能の披露に期待することができるのではないだろうか。ただし、WWDCで披露されたソフトウェアをすぐに利用できるようになるわけではない。iOS 8は新型iPhoneがリリースされる9月中旬のタイミングからアップデート可能になった。またOS X Yosemiteの新しい写真管理アプリ「写真」(Photos)は、4月9日に公開されたOS X Yosemiteの最新バージョンとなる10.10.3でやっと利用できるようになっている。ちなみに、Mac向けのOSが「OS X」と名乗り始めてから、愛称には、ネコ科の動物に代わって、カリフォルニアの地名がつけられている。はじめはサーフィンの名所であるMavericks、現行のバージョンは美しく鋭い自然が豊かなYosemiteだ。いずれも写真がOS Xの標準の壁紙として利用されている。次の絵になる場所はどこになるだろうか。Appleは既に、いくつかの国立公園、名所の地名を登録している。Sonoma、Sequoia、Mojave、Venturaがそれに当たる。その他だとNapa、Alcatraz、Golden Gate、Hollywood、Cupertino、Tahoeといった地名も考えられる。SonomaやNapaが選ばれた場合、懐かしのWindowsの壁紙のような丘陵に広がる緑のワイン畑の風景が描かれることになるのだろうか。●「Kit」でiOSとその他デバイスをつなぐ開発環境が整う○「Kit」に注目前述の通り、WWDC15では、Mac向け、iPhone/iPad向けのOSと開発環境が軸となって、そのソフトウェア・プラットホーム的進化の方向性と具現化が見られるはずだ。そしてAppleのソフトウェア的進化の新たな側面として注目すべきは「Kit」類だ。Appleのソフトウェア開発環境には、多数の「Kit」と呼ばれるフレームワークが用意されている。iOSアプリ開発の中で利用するものも多数あるが、昨今は特定の目的のためのアプリ開発に活用したり、外部のデバイスとの連係を取るために用意されるものも増えてきた。例えばApple Watch向けには、WatchKitが用意されており、これを使ってiPhoneアプリにApple Watch向けのアプリやApple Watch向けの機能を内包することができる仕組みだ。その他にも、スマートホーム関連の連係を行うHomeKit、健康やエクササイズに関する情報を安全に蓄積するためのHealthKit、医療研究のためのアプリを開発することができるResearchKitなどによって、iPhoneやiPadと外部機器を連係させたり、Appleのデバイスをより高いセキュリティの情報を扱うために活用することが可能になる。WWDC15では、新しいKitが追加されるかもしれない。すでにAppleが取り組んでいる分野に対して開発者向けの環境を用意し、自律的に活用の幅を拡げていくことも考えられる。Appleは自動車の車載機でiPhoneを利用するためのCarPlayを有しているが、「CarKit」のようなものをより多くの開発者向けに用意し、ハンズフリーを前提としたインターフェイスに縛って、iPhoneアプリに車載機向けの機能を追加できるようにするかもしれない。同じように、Apple TV向けの開発環境「TVKit」のようなものが用意されれば、Apple TV向けのアプリも追加できるようになる。App Storeを新たに用意する必要はなく、Apple Watchのように、iPhoneやiPadのアプリにこれらのデバイス用の機能を含む、という方法を採れば良いのだ。●アプリによって変わる未来の生活○アプリによって生活が変わるアプリとこれらを開発するデベロッパーは、iPhoneやiPadの価値を高める大きな要素としてすでに評価されている。開発者たちにとって、iPhone・iPadの周辺にあるデバイスや環境でも自社のアプリが利用できるのは、ユーザー拡大とマネタイズの機会を拡げるメリットがある。Appleにとっては、身の回りのデバイスがiPhoneやiPadとの連携を強め、開発者の創造性が生かせる環境を作ることで、ユーザーのAppleデバイスへの依存性を高めることにつながり、Appleは「機種変更の際によりiPhoneを選んでもらいやすくなる」という効果がある。iPhoneで成功したモデルをより強固にし、新たな価値を作り出す、デバイス、OS、アプリとその開発者という三位一体のプラットホームへと、足場を固めることになるだろう。もう少しユーザーの目線で考えると、依存性を気にしなければ、身の回りのものに新たな機能が増えていく、そんな環境が広がっていくことになる。アプリによって生活が変わる、ということをより強く実感する未来が待っている。○個人的に期待すること最後に、個人的に、WWDC15で期待しているのは、iTunesの音楽アプリケーション、インターネットラジオサービスの刷新、Apple TVの進化だ。Appleは常々、音楽を大切にしていると表明しているが、ここ最近大きな動きは映像ストリーミングに移っている。音楽好きな筆者としては、新たな音楽との出会いを演出し、より生活の中で自然に楽しめる新しいアプリやサービスの登場に期待している。あるいは、iPhotoが「Photos」になったように、iTunesが「Music」や「DJ」に変わるような、大きな変化があっても面白い。そのときにどんな姿になっているのか、また別の機会に考えてみよう。松村太郎(まつむらたろう)1980年生まれ・米国カリフォルニア州バークレー在住のジャーナリスト・著者。慶應義塾大学政策・メディア研究科修士課程修了。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)、キャスタリア株式会社取締役研究責任者、ビジネス・ブレークスルー大学講師。近著に「LinkedInスタートブック」(日経BP刊)、「スマートフォン新時代」(NTT出版刊)、「ソーシャルラーニング入門」(日経BP刊)など。ウェブサイトはこちら / Twitter @taromatsumura
2015年04月16日