映画『天空の蜂』の初日舞台あいさつが12日、都内で行われ、キャストの江口洋介、本木雅弘、仲間由紀恵、綾野剛、國村隼、佐藤二朗、松島花、永瀬匡と堤幸彦監督が出席した。本作は、東野圭吾の同名小説を実写化したサスペンスアクション。1995年8月、遠隔操作によってハイジャックされた巨大ヘリが、原子力発電所の上空で静止するテロ事件が発生。ヘリの設計士・湯原(江口)、原発の設計士・三島(本木)らは、ヘリ墜落を阻止すべく奔走する――というストーリーで、映画は全国公開中。原作者の東野からは、「映像と演技の熱さに目がヤケドしました」とメッセージが届けられ、主演の江口は、「さすが東野さんの文は格好良いですね。シビアな題材なので、気遣いながらやってきた作品。今日を迎えられてうれしい」とあいさつ。また、本木も、「それぞれの立場や正義がある。物の見方は人によって違うので、みなさんも自分なりの答えを見つけて欲しい」と真剣な表情でアピールした。そんな江口と本木は、本作が初共演。「本木さんとは同じ時代を生きてきたので、名前が挙がった時は絶対に上手くいくと確信した」と語った江口は、「刺激的な芝居のバトルを繰り広げました。お互いに家族もいるので、今の社会状況を感じながら取り組みました」と満足げ。一方の本木は、「初めての割に、良い化学反応だった。江口さんは思っていた以上に繊細で、情感が体からあふれて出ている。包容力のある男の情は江口さんにしか出せない」と笑顔を見せ、2人は固い握手を交わした。また、『トリック』シリーズで堤監督と長年タッグを組んでいた仲間は、「撮影直前に方言のセリフに変えられ苦労した」という松島の話に、「3日前で良かったですよ。本番をやった後に変わることもあるから」と苦笑いでフォローする場面も。本作をもって3週連続の初日舞台あいさつに挑んだ綾野は、「初日おめでとうございます」と共演陣を祝福し、「他人事じゃん!」(佐藤)、「3週連続で訳わかんなくなってる」(本木)と突っ込まれて観客の笑いを誘っていた。
2015年09月13日富山県を舞台に、竹野内豊、江口洋介、松坂桃李、ビートたけしら超豪華キャストで贈る映画『人生の約束』。この度、本編の一部を使用した30秒の特報映像とポスタービジュアルが解禁となった。舞台は、“曳山まつり”で有名な富山の港町。主人公となるのは、IT関連企業のCEOを務める中原祐馬(竹野内豊)。ここ数日、3年前に決別した元共同経営者でかつての親友・塩谷航平からの何度も着信があった。しかたなく応答すると、無言のまま電話は途切れてしまう。胸騒ぎがした祐馬は、航平の故郷・新湊へと向かうことに。祐馬が新湊に着くと、航平はすでに亡くなっていた。余命わずかの航平は、3か月前、十数年ぶりに “曳山まつり”を支える13の町のひとつ、四十物町に帰郷。資金と人手が不足し、曳山の維持が困難になった町で、最後にもう一度曳山を曳きたいと奔走していたという。やがて、祐馬も全てを失ったとき、亡き友への想いやまつりに高揚する人々の情熱、純粋無垢な一人の少女の想いに触れ、抱え込んだ葛藤と後悔を浄化していく――。近年では「点と線」「刑事一代~平塚八兵衛の昭和事件史~」など、幾多の名作を世に送り出し、常に時代のテーマを問うてきた石橋冠監督が、“第二のふるさと”として愛してやまない新湊を舞台に、長年の映画製作への想いを結実させた本作。かつての親友と共に起業し、IT関連企業CEOを務め、根っからの仕事人間で会社の拡大にしか興味がない主人公・中原祐馬を竹野内さん、祐馬のかつての親友である塩谷航平の義兄であり、四十物町の曳山総代を務める渡辺鉄也を江口さんが演じる。その他、西田敏行、ビートたけし、松坂桃李、優香、小池栄子、美保純、立川志の輔、室井滋、柄本明ら日本を代表する豪華俳優陣が集結した。本編初の映像解禁となる特報では、富山県の美しき立山連峰のもと、初共演となる竹野内さんと江口さんとの怒号飛び交うシーンをはじめ、ビートたけしさんや西田さんら名優たちの共演シーンが散りばめられている。本来、「新湊曳山祭り」は毎年10月1日に行われているのだが、今年のゴールデン・ウィークには本作撮影のために、述べ1,400人に及ぶスタッフ・エキストラにより祭りを完全再現していた。西田さん、ビートたけしさんは石橋監督の名前を聞いただけで台本も読まずに出演を快諾したという本作。まずはこちらの特報から巨匠・石橋冠が贈る圧巻の映像美をご堪能あれ。『人生の約束』は2016年1月9日(土)より全国東宝系にて公開。(text:cinemacafe.net)
2015年08月29日東野圭吾の“映像化不可能”と言われた作品を、主演に江口洋介、本木雅弘を迎え堤幸彦監督が実写化した『天空の蜂』。8月23日、ヒラタ学園神戸エアセンターにて本作のイベントが開催。江口さんと本木さんが劇中同様、ヘリで登場し、その後堤監督も加わり格納庫内にて記者会見を実施した。この日、エアコンのない格納庫内で30度を超える暑さの中、スーツで登場した江口さんと本木さん。ヘリでの登場については江口さんは、「今日はドアがあったんです、ヘリに。本来ヘリにはドアがあるもんなんですね」「撮影の方ではヘリから乗り出しているシーンがありまして、ものすごいアクションなんです。かなり緊張していたのを思い出しました」と撮影をふり返った。本木さんは神戸に降り立ったのは31年ぶりだそうで、「誰もご存じないかと思いますが、実は私は3人のグループをしていた頃にですね」と冗談を交え会場を沸かせつつ「そのように世の中にも人生にも、予測不可能な出来事が起こり得ると。良い奇跡も悪い奇跡も起こるという中で、困難が目の前に現れた時に、いったい自分は何を守り抜けるのかと。そういうことを問いかけている映画です」と本作について語った。会場となったヒラタ学園は、教育事業としてパイロットや客室乗務員、航空整備士の育成なども行っており、この日のイベントにはこれからの空の未来を担う学生たちが参加。記者会見では学生とキャスト陣との質疑応答が行われた。江口さんは、数々のアクションシーンについて印象を聞かれ、「意外と『高い所は大丈夫だな』と思っていたんですよ。ところがやっぱり実際上がると…いやぁ、ちょっとドアが無い状態のヘリってのはこんなに怖いのかと思いましたね」と改めて告白。また江口さんの息子を助けるシーンについて感動したとの声が上がると、堤監督は「スカイダイビングを何回もやらせてもらって、撮ったシーンです。お子さんはパラシュート無しで落っことす!…というのは勿論やってないですけど(笑)。助ける方は実写ですね」と、リアルな描写の理由を明かした。「原発などを映画で扱われていたので色々と考えさせられることがあったのですが、他にもどんな世代の人たちにこの映画を観てもらいたいですか?」という質問には本木さんが回答。「まさに皆さんのような若い人たち、そしてもっと小さい方たちも」「小さいお子さんたちにはある意味“怪獣映画”として観てもらってもいいのかと。かつて『ゴジラ』という映画がありましたが、あれは人間の欲望が生み出した産物、それがゴジラという怪物、そういうオチがありますよね。それと同じように、本作『天空の蜂』の巨大ヘリも、そして原発も、ある意味人間が生み出した怪物なのではないかと」「数十年後、もしくは数年後に成長したとき、映画の背景に隠れていた大きなテーマに気づいて理解してもらえれば何よりだと、脚本を担当された楠野さんも仰っておりました」と、脚本家の思いも込めて語った。また、本作で子どもを命がけで守る父親の役を演じた江口さんは「今回、こういう役を演じることによって、監督も言ってましたが、何か自分が成し遂げなければならないことから逃げてはいけない、目をそむけてはいけない立ち向かわなきゃいけない。それにはやっぱり根性がいるなと。これは根性の映画なんですね。日本一諦めない男を演じましたけど。そういった役を感じながら“何も言わなくても子どもは見てるんだ”という、そういう大人になるべきなんだろうな、と」と役柄同様、情熱的に熱弁。本木さんは、初共演となる江口さんとの共演について聞かれると、「江口さんは普段も非常に情熱を沢山湛えているという方で。私の方はどちらかと言うと内向きにウジウジといく部分がありますので(笑)。ある意味そのコントラストが映画の役割にも有効だったんじゃないかと思っております。だから我ながらいい組み合わせだったんじゃないか」と胸の内を明かした。最後に堤監督は、現実起きている問題を象徴する出来事を役者陣が全身全霊で演じたことや、現実にはない巨大な飛行物体を作るというVFX、更にリチャード・プリンという音楽作家がハリウッド並みの音楽を提供したことなど…語りたい要素が沢山あると言いつつも、「皆さんにお見せしたい色々な要素、考えていただきた色々な要素を、2時間強の時間にまとめ、そして娯楽作品として皆さんにお届けするということが私の一番の仕事だ感じ、今回20年連れ添ったチームと共に仕上げた」と本作に自信を覗かせた。『天空の蜂』は9月12日(土)より全国にて公開。(text:cinemacafe.net)■関連作品:天空の蜂 2015年9月12日より全国にて公開(C) 2015「天空の蜂」製作委員会
2015年08月24日9月12日公開の映画『天空の蜂』の完成披露プレミア試写会が20日、東京・有楽町の東京国際フォーラムで行われ、江口洋介、本木雅弘、綾野剛、國村隼、佐藤二朗、やべきょうすけ、松島花、落合モトキ、石橋けい、永瀬匡、秦基博、堤幸彦監督が出席した。原作はベストセラー作家・東野圭吾が20年前に発表した長編小説『天空の蜂』。原発を題材にしたテーマ性や物語のスケールの大きさから映像化不可能と言われて来たが、ヒットメーカーの堤幸彦監督が見事に映画化。最新鋭にして日本最大、全長34mの超巨大ヘリコプターを乗っ取り原子力発電所の真上に静止させるという原発テロ事件と、その危機に立ち向かう人々の8時間にわたる攻防を描く。公開まで1カ月を切ったこの日は、主演の江口洋介をはじめとするキャスト陣に主題歌「Q&A」を歌った秦基博、そして堤幸彦監督が勢揃いしての舞台あいさつ。主演の江口が「去年の暑い夏の中、映画に取り組みました。果たしてヘリと言えるのか、と言うぐらい巨大な化学兵器を産んだ怪物が今回の対戦相手。本当に8時間のアクションドラマになっています」とアピールした。一方の本木は「今回の作品が40代最後の作品になります、このような大きなテーマで素晴らしい作品に40代最後の記念として出演できたことを嬉しく思っています」と笑顔を見せ、本作が映画初出演となった松島も「初めての映画がこの作品ということでプレッシャーもありましたが、ワクワク感もあって楽しくできました。今日は江口さん以外とは初めてお会いしたので、この日を迎えられて本当に光栄に思っています」と充実した表情を見せた。舞台あいさつの中盤から、秦基博が歌った主題歌「Q&A」に絡め、キャスト陣による「今だから聞きたいQ&A」のコーナーを実施。秦から「巨大ヘリが出てくるが、高いところは平気?」という質問に、江口は「正直苦手です。今回はトム・クルーズを超える作品で、始まってからずっとピンチ。緊張感の中、ある程度やれましたが、めっちゃくちゃ怖かったですね」と本音もチラリ。また、撮影中に江口の家が集中豪雨となり、その後どうなったか國村が尋ねると、横から本木が「江口さんは危機管理ができているご主人ですよ。その時も脚の綺麗な奥さん(森高千里)に業者が速やかに修復すると電話してました」と妻思いの江口を賞賛していた。映画『天空の蜂』は、9月12日より全国公開。
2015年08月21日俳優の江口洋介が8月20日(木)、都内で行われた主演作『天空の蜂』の完成披露試写会に出席し、「巨大エンターテインメントを堪能して」とアピール。妻役の共演者が「江口さんとは、最初から冷え切った夫婦だった」と役柄を説明すると、思わず苦笑いだった。“原発テロ”を扱い長年、映像化不可能とされた東野圭吾のサスペンス巨編を映画化した本作。完成披露試写会には江口さんをはじめ、本木雅弘、綾野剛、國村隼、佐藤二朗、やべきょうすけ、松島花、落合モトキ、江口さんの妻を演じた石橋けい、永瀬匡、秦基博、堤幸彦監督が出席し、会場には4000人のファンが駆けつけた。1995年夏、謎のテロリスト“天空の蜂”が強奪した超巨大ヘリ・ビッグBを、福井県にある原子力発電所「新陽」の真上に静止させ「全国すべての原発の破棄」を要求。8時間後にはヘリの燃料が切れ、「新陽」目がけてヘリが墜落してしまう危機的状況で、緊迫感あふれる攻防が繰り広げられる。江口さんと本木さんは、初の共演が実現し、壮絶なアクションにも挑戦。「高いところが苦手なので、ヘリに乗ってのアクションは…。でも堤監督がCGなしで撮るっておっしゃるので(苦笑)。もう二度とやりたくないですね」(江口さん)、「江口さんとのカーアクションで、何度も撮るものだから途中で呼吸困難になって、内心ヘトヘト」(本木さん)と苦労を分かち合っていた。また、綾野さんは「心から誇りに思える作品。正義と不義を超えた訴えかけるメッセージがある」と誇らしげな表情。本木さんとの共演シーンが多く、「本番2~3秒前で突然、瞳に狂気の闇が深まっていく。あれはどうやっているんですか?」と先輩の演技に興味津々。すると、堤監督は「綾野くんだって、汗を自分で(コントロールして)出せるじゃないですか」と“秘技”を暴露されていた。『天空の蜂』は9月12日(土)より全国にて公開。(text:cinemacafe.net)■関連作品:天空の蜂 2015年9月12日より全国にて公開(C) 2015「天空の蜂」製作委員会
2015年08月20日WOWOWが贈る社会派ヒューマンドラマ「連続ドラマWしんがり~山一證券最後の聖戦~」。その主演に、WOWOWドラマではおよそ4年振りとなる江口洋介を迎え、萩原聖人、林遣都、真飛聖、勝村政信ら個性豊かな演技派俳優の共演が実現。また、迷走する巨大企業の内情を描いた映画『沈まぬ太陽』でメガホンを取った若松節朗が、監督を務めることが分かった。1997年4月。山一證券の常務取締役・梶井(江口洋介)は、業務監理本部(ギョウカン)本部長に就任する。ギョウカンとは社内監査を行なう部署だが、社内では左遷社員が追いやられる“場末”と呼ばれていた。そんな梶井の異動初日に、大蔵省証券取引等監視委員会(SESC)の調査が入ることに。当時の金融業界は、総会屋への利益供与問題で大きく揺れていた。梶井は、営業考査部部長・花瀬(佐藤B作)やその部下・中西(矢島健一)、秘書の蒲生(真飛聖)に社内調査を指示。そんな中、監査部の瀧本(萩原聖人)と吉岡(林遣都)は、渦中の総会屋との関係を示す資料を見つけてしまう。一方、会長の有原(岸部一徳)らはSESCの調査に対し余裕の表情を見せるが、副社長の片瀬(光石研)だけは不安な表情。梶井や同期の林(勝村政信)もまた、上層部が何かを隠しているのではないかという疑念を抱く――。本作は、ジャーナリストで元読売新聞記者・清武英利のノンフィクション「しんがり 山一證券 最後の12人」(講談社刊)を原作に、当時、日本を震撼させた山一證券の自主廃業をドラマ化。誰もが予想だにしなかった巨大金融企業の破綻は、日本経済に大きな打撃を与えただけでなく、終身雇用の終わりを告げる事件ともなった。自主廃業の要因となった2,600億円の簿外債務は、いつ、どのように生まれ、どのように隠し続けられたのか。最後まで“沈没船”となったこの会社に踏みとどまり、真相究明と顧客への清算業務を続けた社員たちこそが、社内から“場末”と呼ばれ、煙たがられた部署の者たちだった。理不尽な会社の不正への怒りを胸に、すべての社員、顧客、そして家族のため、使命感で自らを奮い立たせた、“しんがり”たちを描く本作で、主演を務めるのは、『天空の蜂』『人生の約束』など数々の映画やドラマで活躍する江口洋介。WOWOWドラマでは「連続ドラマWパンドラIII 革命前夜」(’11)以来、およそ4年振りの主演となる。江口さんは、「最初に原作を読ませていただいて、12人の社員の方々が成し遂げたことの凄さに感銘を受けました」と、まず原作の印象に触れ、「山一證券の破綻を追ったドキュメンタリーではなく、人々の心に響く作品になるようにどうすればよいのか、スタッフと話しながら一歩ずつ制作しています」とコメント。自身が演じた梶井達彦というキャラクターについては、「梶井のような上司や政治家がいたら社会は変わるだろうな、という他人任せな考え方自体が違うのではないかと思います。お互いのバイブレーションや情熱をぶつけ合って、共に高めあっていく。そのことが出来たから、エリートでもなく特別でもない普通の社員たちが大企業消滅の真相究明と清算業務を成し遂げられた…そこに面白さがあるように思います」と分析。その深い人間関係は「『人の山一』と呼ばれた山一證券には、そもそも存在していたものだと思うので、その人間味のある感じがドラマで表現できたらと思います。梶井も仲間に助けられ、ここまでたどり着いたのです。変わり者だった男が仲間と出会い、人間らしくなって、それを息子も感じ取っていくのだと思います」と、梶井という人物に触れた。「梶井のように自分のことを顧みず、会社の不正を暴いていく、というのは会社愛でもあり、仕事に対しての責任、愛情、プライドがもの凄くあるように感じます。それは逆にいうと幸せなことかもしれない。それによって人は強くなると思います。不正を暴くというのは正義ではなく、情熱や愛情が人を動かしていくのだ、というのが根底にあることを感じとっていただけたらと思います」と語り、言葉に思いを込めた。さらに、若松監督は、「特出した強いリーダーが仲間を引き連れて上層部の不正に立ち向かうシンプルな題材です。山一證券の倒産は社会に強い衝撃を与えました。その事件を借りて男たちが激しく葛藤する姿はバブル崩壊時を懐かしみ、また爽快です。知らなかったノンフィクションの醍醐味は相当に面白いです。自主廃業、倒産という結末が待ち構える中、“しんがり”と呼ばれた数人の仲間たちにはかなりの困難がありますが、ドラマはどんどんヒートアップして面白い。巨象に立ち向う蟻たち社員の生き様に感動していただけると思います。どうぞご期待下さい」と語り、「江口洋介なくして語れない、そのくらい彼に演じていただけて光栄です」と、主演の江口さんの熱演に、手応えを覗かせている。「連続ドラマWしんがり~山一證券最後の聖戦~」は9月20日(日)22:00~よりWOWOWにて放送開始(全6話、※第1話無料放送)。(text:cinemacafe.net)
2015年07月14日俳優の江口洋介が、9月20日にスタートするWOWOWの連続ドラマ『しんがり~山一證券 最後の聖戦』(全6話、毎週日曜22:00~)に主演することが14日、明らかになった。同作は、プロ野球・読売巨人軍の球団代表を解任され、現在はジャーナリストとして活動する清武英利氏のノンフィクション小説が原作。四大証券の一角を占めるも、2,600億円の帳簿外債務が原因で突然自主廃業した山一證券で、最期まで真相究明と顧客への清算業務を続けた"しんがり"たちを描く作品だ。江口が演じるのは、この"しんがり"たちのリーダー・梶井。山一證券の常務取締役として、社内監査を行う業務監理本部の本部長に就任するが、異動初日に、大蔵省証券取引等監視委員会(SESC)の調査が入るという事件が起きる。この調査に、会長の有原(岸部一徳)らは、余裕の表情だが、副社長の片瀬(光石研)だけは不安な表情を浮かべており、梶井や同期の林(勝村政信)は、上層部が何かを隠しているのではないかという疑念を抱く。梶井は、営業考査部部長・花瀬(佐藤B作)や、その部下・中西(矢島健一)、秘書の蒲生(真飛聖)に調査を指示。そんな中、監査部の瀧本(萩原聖人)と吉岡(林遣都)が、渦中の総会屋との関係を示す資料を見つける――。原作の清武氏が「ドラマに向いていないと思っていた」と語っていた作品だが、江口は「ドラマ向きではないものを、どういう風にドラマらしくしていけばよいのか。山一證券の破綻を追ったドキュメンタリーではなく、人々の心に響く作品になるようにどうすればよいのか、スタッフと話しながら一歩ずつ制作しています」と、地道な努力を語る。その上で、江口は「不正を暴くというのは正義ではなく、情熱や愛情が人を動かしていくのだ、というのが根底にあることを感じとっていただけたら」とメッセージを寄せている。演出を担当する若松節朗監督は「このドラマは江口洋介なくして語れない」と、江口の演技を絶賛。岡野真紀子プロデューサーも、江口を「天性の明るさと爽快感を持ち、人を魅了するパワーと説得力を持っています。そして、母性のような父性のような、無条件の温かさを持っている」と評価し、主人公・梶井の役は「江口洋介さん以外には思い浮かびませんでした」と、理想通りのキャスティングに喜びを語っている。(C)WOWOW
2015年07月14日江口洋介を主演に、東野圭吾原作小説を映画化する『天空の蜂』の主題歌が、秦基博の新曲「Q&A」に決定したことがこのほど明らかとなった。1995年8月8日。最新鋭の超巨大ヘリ「ビッグB」が突如動き出し、子どもを一人乗せたまま、福井県にある原子力発電所「新陽」の真上に静止した。遠隔操縦によるハイジャックという驚愕の手口を使った犯人は“天空の蜂”と名乗り、「全国すべての原発の破棄」を要求。従わなければ、大量の爆発物を搭載したヘリを原子炉に墜落させると宣言する――。『20世紀少年』シリーズなど様々な作品を手がけてきた堤幸彦がメガホンを取るサスペンス・アクション超大作の本作。このほど主題歌に決定した秦さんは、映画『STAND BY ME ドラえもん』の主題歌「ひまわりの約束」、映画『あん』の主題歌「水彩の月」に続き、シングル3作連続の主題歌抜擢となる。本作の主題歌である新曲「Q&A」は、ミディアム~スローな優しい楽曲のイメージが強いこれまでのイメージを覆すような、アグレッシヴでエモーショナルなサウンドのアッパーチューンに仕上がっている。本楽曲について秦さんは、「映画の中で描かれる人間が運命に抗う姿、大きな運命の流れの中で翻弄されながらも、自分が大切につかもうとするもの、守ろうとするもの、そういうものに対して向かっていく姿に感銘を受けて、その部分を自分なりに楽曲にしました」と、楽曲に込めた思いを語っている。さらに、本楽曲を聴いた主演の江口さんは「この映画が持っているテーマ性、スタッフ・キャストの想いを昇華させてくれる曲だと思いました」とコメント。堤監督も、「始めてこの曲を聴いたときにある情景が浮かんだ。それは数多の人々の姿。映画『天空の蜂』を撮っているときのイメージと同じだった。突きささるリズムに身体をまかせていると深い詩が突きささる。原作と映画とこの曲「Q&A」同じ地平に立っている気がする」と絶賛を寄せている。3作連続主題歌への抜擢ともあり、映画好きの中でもその存在感を増し続けている秦基博。空前のスケールで描かれたと合わせて、秦さんのアグレッシブな新曲を楽しみにしていて。『天空の蜂』は9月12日(土)より全国にて公開。(text:cinemacafe.net)■関連作品:天空の蜂 2015年9月12日より全国にて公開(C) 2015「天空の蜂」製作委員会
2015年07月10日富山の美しい街並みを舞台に、竹野内豊、江口洋介、松坂桃李、ビートたけしら超豪華キャストで贈る映画『人生の約束』。3月から富山・新湊を中心に撮影が行われている本作だが、このゴールデン・ウィークで物語のクライマックスにあたる重要なシーンの撮影を敢行。撮影現場の様子が到着した。舞台は、“曳山まつり”で有名な富山の港町。主人公となるのは、IT関連企業のCEOを務める中原祐馬(竹野内豊)。ここ数日、3年前に決別した元共同経営者でかつての親友・塩谷航平からの何度も着信があった。しかたなく応答すると、無言のまま電話は途切れてしまう。胸騒ぎがした祐馬は、航平の故郷・新湊へと向かうことに。祐馬が新湊に着くと、航平はすでに亡くなっていた。余命わずかの航平は、3か月前、十数年ぶりに “曳山まつり”を支える13の町のひとつ、四十物町に帰郷。資金と人手が不足し、曳山の維持が困難になった町で、最後にもう一度曳山を曳きたいと奔走していたという。やがて、祐馬も全てを失ったとき、亡き友への想いやまつりに高揚する人々の情熱、純粋無垢な一人の少女の想いに触れ、抱え込んだ葛藤と後悔を浄化していく――。富山県射水市(いみずし)の新湊曳山まつりでは、祭りに参加して曳山を曳くことを「つながる」と言うそう。約20人もの曳き手によって高さ約8m、長さ約7mにもなる大きな山車が曳かれていくその様は、“力を合わせること=魂を重ねること”の素晴らしさに満ち溢れている。江戸時代より約350年もの間続く曳山まつりは、新湊の人々にとって、年に一度は必ずやってくる大切な日。そんな新湊曳山まつり本番までの日々の中、不思議なエネルギーに突き動かされる人々を本作では描き出す。このゴールデン・ウィークの期間に撮影が行われたのは、本来であれば10月1日に開催される「新湊曳山まつり」の完全再現。5月2日(土)、3日(日・祝)、6日(祝)の3日間に行われた撮影に関わったエキストラ・スタッフは延べ1,400人。さらに、一目この撮影を見ようと駆けつけた見物客を合わせた総人数はなんと3,000人にも及び、本物の祭りさながらの賑わいぶりをみせた。本作が意外にも初共演となる、竹野内さんと江口さん。この日の撮影は、最初は相容れなかった二人が、この新湊曳山まつりを通じて分かち合うという大切なシーンとなっている。この祭りの最大の目玉は夜。曳山と呼ばれる山車に提灯をつけて練り歩くという“提灯山”や、海と川に挟まれ情緒溢れる港町である新湊の風景、1基の最大重量は約8トンにもなるという曳山が7基も曳かれていく光景が内川の川面に反射され、熱狂的、かつ幻想的なシーンが撮影された。この大掛かりな撮影を終え、主人公・祐馬を演じる竹野内さんは「新湊の方々の協力を得て、やっとこの撮影に挑むことができました。ここに来る前に、新湊は日本のベニスと呼ばれるほど風情のある美しい街だと石橋監督から聞いていて、その監督が長年温めてきた映画を作れることが本当に幸せです」と喜びを語った。さらに、初共演となる江口さんについては「頼れる兄貴といった感じです。初めてロケ現場に入ったときは地元の人と勘違いしてしまいました(笑)」とコメントしている。一方、竹野内さんに地元の人と間違えられてしまった江口さんは「僕の演じる役は漁師の役ですけど、何度も富山を訪れ、現地の方々の生活を実際に間近に見て、役に馴染んでいきました。竹野内くんともストーリーを重ねるごとに一緒に飲み行く回数も増えていきました(笑)」と役作りへの過程を明かす。「初めて曳山を見たときは鳥肌が立つほどでした」(竹野内さん)、「この350年続く曳山、提灯山なんて海外の人が見たら圧巻だと思いますし、同じ日本人ならDNAの中に組み込まれていると思います」(江口さん)とお二人が語る曳山まつりのシーンは、スクリーン上にどのように映し出されるのだろうか。公開を楽しみに待ちたい。『人生の約束』は2016年1月、全国東宝系にて公開。(text:cinemacafe.net)
2015年05月08日原作発表から20年、“映像化不可能”と言われてきた東野圭吾の同名小説が、江口洋介、本木雅弘、仲間由紀恵、綾野剛ら実力派俳優たちが集結し実写映画化される『天空の蜂』。史上最悪の原発テロに立ち向かう男たちを描いた本作の、待望の特報映像が解禁された。1995年8月8日。最新鋭の超巨大ヘリ《ビッグB》が突如動き出し、子どもを一人乗せたまま、福井県にある原子力発電所「新陽」の真上に静止した。遠隔操縦によるハイジャックという驚愕の手口を使った犯人は“天空の蜂”と名乗り、「全国すべての原発の破棄」を要求。従わなければ、大量の爆発物を搭載したヘリを原子炉に墜落させると宣言する――。今回解禁された特報は、報道や政府の声が飛び交う中、超巨大ヘリ《ビッグB》が全てを掻き消すように突如現れる、緊迫した場面からスタート。機内の子どもの父親であり《ビッグB》を開発したヘリ設計士・湯原を江口さんが、子どもの救出と日本消滅の危機を止めるべく奔走する原子力発電所の設計士・三島を本木さんが務める。燃料が尽きてヘリが原子炉へ墜落するまでの8時間というタイムリミットに立ち向かう湯原、三島に続いて、三島の恋人で事件解決の鍵を握る女性・赤嶺(仲間由紀恵)、《ビッグB》を奪う謎の男・雑賀(綾野剛)の姿も映し出され、30秒という時間が一瞬に感じられるほどの密度を持った映像となっている。本作の映画化にあたり、原作ファンの間では、現在日本に実在する輸送用ヘリをはるかに越える“日本最大の《ビッグB》がどのように映像化されるのかという点にも注目が集まっており、CG制作作業は1年以上にわたり、いまなお続行中だという。また、不安感や緊張感などを表現するため、“カメラを固定して撮影されたカットが一つもない”という特別な手法で撮影は行われたという。メガホンを取った堤幸彦監督自身も、「様々な作品を作らせていただいていますが、これまでこんなに神経を張りつめた作品はなかなかありませんでした。トップカットからスタッフロールまで全神経を集中させて作りました。私の作品の中ではこういうアプローチはなかったなぁと、自分でもびっくりするような仕上がりになっています」とコメントを寄せ、長年の監督歴の中でもとりわけ手応えを感じた作品となる様子だ。柄本明、國村隼、向井理らの豪華キャストも発表され、ますます盛り上がるクライシス・サスペンス超大作。まずはこちらの特報から“堤組”の本気を感じてみて。『天空の蜂』は9月12日(土)より全国にて公開。(text:cinemacafe.net)
2015年03月24日俳優の竹野内豊が2016年公開の映画『人生の約束』で主演を務め、ビートたけし、江口洋介らが出演することが18日、明らかになった。本作の舞台は、14日の北陸新幹線開業も記憶に新しい富山県が舞台。竹野内が今回演じるのは、新興IT関連企業のCEOとして、企業買収によって会社の拡大を図る中原祐馬。元共同経営者である親友からの電話をきっかけに新湊を訪れ、曳山の譲渡をめぐる騒動に身を投じるうちに、人生において大切なものに気づいていく。メガホンをとるのは、『池中玄太80キロ』や『点と線』『刑事一代~平塚八兵衛の昭和事件史~』など、数々のテレビドラマを手がけた石橋冠監督。共演には江口洋介、西田敏行、ビートたけし、松坂桃李、優香、小池栄子、美保純、立川志の輔、室井滋、柄本明ら、日本を代表する豪華俳優陣が名を連ね、ビートたけしは祐馬の会社にかけられた金融取引法違反の嫌疑を捜査する刑事役、江口は祐馬のかつての親友である塩谷航平の義兄を演じる。竹野内は、「石橋監督が長年温めてきたこの作品への熱い思いを、全スタッフ・キャストの皆さまで共有させていただき、最強の一枚岩で取り組んで行く所存です」と語り、「この作品を御覧になってくださる皆さま方の心と深く結び付ける事ができるよう、私も心を込めて精いっぱい演じさせていただきたいと思っております。どうぞご期待ください」と意気込む。新湊を"第二のふるさと"と愛し、映画の舞台に選んだ石橋監督は「かねてから、一本だけ映画を撮りたいという夢を持っていましたが、傲慢にもその場合は、自分が発想した物語を、自分が愛する風景の中で撮らなければならないと、かたくなに思い込んでいました」と、長年の思いが結実したことを喜ぶ。「もとより、ドラマが面白いことが第一です。そして、観客の心を大きな感動で満たさなければなりません。それが私の信条です」とこだわりにふれ、「この映画は、『絆』とか『再生』という言葉を声高には使いませんが、いまの日本に必要なメッセージを伝えることになると思います」と自信をのぞかせた。(C)2016「人生の約束」製作委員会
2015年03月18日俳優の江口洋介と本木雅弘が初共演する映画『天空の蜂』(9月12日公開)のメインビジュアルが13日、公開された。本作は、東野圭吾が1995年に発表した同名小説(講談社文庫)を原作に、「20世紀少年」シリーズなどで知られる堤幸彦監督が手掛けるクライシス・サスペンス作品。最新鋭にして日本最大のヘリコプターが何者かに奪取され、原子力発電所の上空でホバリングを始める。「原子力発電所を全て使用不能にしなければ、ヘリコプターを落とす」と要求する犯人を捜し出せるのか――という、テロ事件による国家の危機を描く。主演の江口はヘリコプター設計士・湯原一彰役、共演の本木は原子力機器設計士・三島幸一役を務める。今回公開されたビジュアルでは、立場は違いながらも、同じ技術者であり、普通の父親でもある2人が"原発テロ"に立ち向かおうとする、その強い使命感が、鋭い視線の中に表れている。青いトーンのバックが、2人を待ち受ける事態の緊張感を感じさせながらも、頭上から差すまぶしい光は、未来へのかすかな希望を暗示するビジュアルになっている。(C)2015「天空の蜂」製作委員会
2015年03月13日東野圭吾原作を基に江口洋介と本木雅弘を主演に迎えて映画化する『天空の蜂』。このほど、本作の公開日が9月12日(土)に決定し、江口さんと本木さんの鋭い視線が向けられたイメージカットが公開された。日本最大の超巨大ヘリコプターを乗っ取り、原子力発電所の真上に静止させるという史上最悪の“原発テロ”と、この究極の危機に立ち向かう人々の8時間のドラマを描いた本作。原発を題材にしたテーマ性やその物語のスケールの大きさから、長年映像化不可能と言われ続けてきた作品に挑むのは、「トリック」や「SPEC」シリーズ、5月に公開を控える『イニシエーション・ラブ』など話題作を手掛けてきた堤幸彦監督。キャストには、長年、家族との時間を犠牲にしながらも、自衛隊用の超巨大ヘリ“ビッグB”の開発に取り組んできたヘリコプター設計士・湯原を江口さん。一方、湯原と同期入社で、日本の発展に寄与するエネルギーと信じ、原子力発電所の設計に携わってきた原発設計士・三島役に本木さん。そのほか仲間由紀恵を始め、堤組初挑戦となる綾野剛、柄本明、國村隼、向井理ら豪華キャストが集結している。公開されたビジュアルでは、立場は違いながらも、同じ技術者であり、普通の父親でもある2人が“原発テロ”に立ち向かおうとする、鋭い視線の中に表れている。緊張感漂う青いトーンには、日本の未来のためにと作り上げてきたヘリと原発がテロに使われ、人類が危険にさらされることになってしまったことへの、生みの親としての憂いや葛藤が浮かび上がる。現在の日本が抱える様々な問題について、直視することを避けてきた我々に問いをなげかける本作。“原発テロ”という前例のない題材がどのように描かれるのか?期待が高まる。『天空の蜂』は9月12日(土)より全国にて公開。(text:cinemacafe.net)
2015年03月13日経済キャスターの鈴木ともみです。今回は、榊原英資さんの新著『鎖国シンドローム 「内向き」日本だから生きのびる』(集英社)をご紹介します。政治・経済、社会、明日の日本を担う若者までもが「内向き」だといわれる昨今の日本。停滞、迷走する日本の将来はこのままで本当に大丈夫なのか? と皆が不安を抱くなか、同書は、これからの日本のあるべき姿をしっかりと描き出しています。日本が「鎖国」モードに入るということは、決して後ろ向きな選択ではなく、むしろ前向きな方向性でもあるのです。凝り固まった私たちの常識を覆し、日本人の誇るべき資質を再認識させてくれる珠玉の一冊です。鈴木 : 「失われた10年、20年」と言われ、停滞、迷走する政治・経済、社会が慢性化し、誰もが不安を抱いてしまう時代が続いていますが、同書を読むと、とても穏やかな気持ちになりますね。「鎖国」という言葉からは、どうしても閉鎖的で保守的なイメージを持ってしまいますが、実はこれまで日本は歴史的に江戸時代だけでなく、何度も「鎖国」モードを経験しているということを知りました。榊原 : そうなのです。いわゆる鎖国時代と言うと、皆さん江戸時代を思い浮かべますが、必ずしもそれだけではありません。日本の過去2000年の歴史においては「鎖国的な時代」というものが、何度も繰り返されており、主に4つの時代がありました。鈴木 : その「鎖国時代」と反対に「開国時代」というのがあって、日本は開国と鎖国を繰り返してきたという分析は、とても興味深いものです。榊原 : 日本の歴史を長期的な視野で眺めると、「開国時代」と「鎖国時代」を繰り返すことで、社会が変化し、磨かれ、成長してきたということがわかります。開国時代に海外の最新情報や外来文化を取り入れ、鎖国時代に、それらの情報をもとに、独自の解釈や改良を加えて、日本特有の社会やシステム、文化を構築します。そして、その現象はある意味「日本化」と呼んで良いものだと言えるのです。鈴木 : そもそも、日本特有の「鎖国時代」が繰り返し訪れる背景には、何があるのでしょうか?榊原 : そこには、日本人特有の精神性「鎖国メンタリティ」が存在します。この「鎖国メンタリティ」には状況や環境によって強弱があり、弱まる時代には海外を意識して開国モードになる、強まる時代には海外との交流が減り、内向きモードになります。鈴木 : 他の国には見受けられない、その日本人特有の精神性である「鎖国メンタリティ」は、日本という国が、一度も外国に征服されたことがないという歴史に起因するものだそうですね。鈴木 : 日本は、鎖国の時代に社会や文化を熟成させるモデルができ上がったわけですね。榊原 : そうなのです。「鎖国メンタリティ」は、新たな拡大や成長を求めるというよりは、「内向き」な成熟を求めるものです。それにより、日本は安定的で幸福な社会を形成することができました。鈴木 : 一方で、その「鎖国メンタリティ」が及ぼす弊害についてもご指摘されています。企業ガバナンスと「鎖国メンタリティ」の関連性について、オリンパス事件や大王製紙事件などが起こった原因には、企業の隠蔽体質があると分析されていますね。鈴木 : 1990年代以降の急速なグローバル化に、日本特有の鎖国メンタリティがそぐわない一面もあるわけですね。その1990年代に日本は「失われた10年、20年」と呼ばれる時代に入っていきます。榊原 : 90年代は、バブルの崩壊、金融システムの崩壊と長期的な二つの危機に直面しました。その状況下で、大型の公共事業対策などで景気を下支えしましたし、私も直接政策対応に関わっていましたが、95年4月には1ドル=80円を切っていた為替レートも日米の協調介入により9月には100円台に戻したのです。この90年代の政策対応は最近になって再評価されるようになりましたが、当時は、アメリカのローレンス・サマ―ズ財務副長官ら海外からは辛辣に批判され、国内でも悪い評価をされていました。その悪評の背景には日米の成長格差があったわけです。ただ、その成長格差と言うのは、今考えれば、アメリカは金融バブル下にあり、一方の日本は成長国家から成熟国家へと移ったということによるものだったのです。ですが、当時は「失われた10年」に入った日本、大きく成長し続けるアメリカという対比で、日本が一方的に非難されていました。鈴木 : 「環境」「安全」「健康」においては、日本は世界のなかでトップランナーと言えるのかもしれませんね。榊原 : そうなのです。それは成熟国家である証です。日本が成熟社会のモデルとして先進国の先頭に立つようになったのです。ですが、日本人の多くが成長を求め、成熟への戸惑いを感じ、それが社会全体の閉塞感につながっています。確かに企業が海外に進出し成長していくことは必要だと言えます。しかし、日本の社会全体を成熟から成長路線へと戻す必要はないのです。無理に成長政策を打ち出せば、バブルを生みかねない。成熟は、決して停滞でも迷走でも閉塞でもないのです。鈴木 : 私たちのなかには「成長し続けなくてはいけない…」という強迫観念みたいなものがありますよね。榊原 : 成長しなければならないわけではありません。豊かな成熟国家となった日本は、経済成長率で他国と競争する必要はありません。人口が減少していくなかでは1%成長で十分であり、むしろ、一人ひとりの生活の質を上げていくことが求められているのだと思います。そして、この洗練された成熟国家としての日本のモデルをもっと世界にアピールし、発信していくことも大切です。鈴木 : 成熟国家として安定させるためには、やはり、食料=農業、エネルギーの改革が必要となってくると思うのですが…。榊原 : エネルギーについては、地震と火山の国である日本では地熱の開発が有力でしょうね。また海に囲まれていますから海洋熱発電やメタンハイドレードにも期待が寄せられています。また、農業や漁業は衰退産業とされていますが、私は、まだまだ成長産業になり得る可能性を秘めていると感じます。鈴木 : 旧態依然とした考え方を転換すべき点はいろいろとありそうですね。例えば雇用の在り方や定年制についてなど…。榊原 : そうですね。年功序列により、年齢で定年退職を迎えるシステムは、例えばゼネラリストの世界では必要かもしれませんが、手に職や技術を持った職人、特別な知識を持ったスペシャリストの世界では、人的資源の放棄にもなります。スペシャリストたちの技術が韓国などの外国企業に流出しているケースも多々あるのです。各々の分野のスペシャリストには、定年制で一律に退職させるのはやめるべきなのではないかと思います。鈴木 : そういった改革、改善点があるなかで、日本特有の「鎖国メンタリティ」を活かしながら、世界に誇れる成熟国家としてのモデルを発信していきたいものですね。そうすれば、世界における日本の在り方や位置づけ、つまりは私たちの役割や居場所も確立できるのではないでしょうか。将来に向けての勇気をいただくことができました!今日はお忙しい中ありがとうございました。榊原 : ありがとうございました。【拡大画像を含む完全版はこちら】
2012年12月21日経済キャスターの鈴木ともみです。今回は、日本が世界に誇るエコノミスト・浜矩子さんの新著『誰も書かなかった世界経済の真実~地球経済は再び斬り刻まれる~』(アスコム)をご紹介します。『通商』というテーマを軸に、世界経済の真実、グローバル経済の今とこれからが、わかりやすくまとめられています。タイトルの「誰も書かなかった」は「誰も書けなかった」という意味でもあり、私たち誰もが理解していなかった真実と言えます。同書は、その真実が明快に解析された珠玉の一冊です。鈴木 : 浜先生にはこれまでに何度か取材させていただいてるのですが、いずれもテーマは『通貨・ユーロ』についてでした。それが今回は『通商』がテーマ。読ませていただくと、先生の深い造詣と熱い思いが伝わってきます。『通商』をテーマとされた背景には、「満を持して!」という意識がおありだったのでしょうか?浜 : 満を持して…と言えば確かにそうだと言えるかもしれません。私は常々「FTA」や「TPP」に対する世の中の解釈が間違っている、解説される方々も勘どころがハズレている、と感じていました。また、皆さんの関心が「通商」から「通貨」へと変わっていくなかで、実は、「通商」の領域で本当に怖い事態が起こりつつあるということをお伝えしたいと思っていました。それで、時あたかも「TPP」議論が注目を集め始めたこのあたりで、全面的に『通商』にフォーカスし、その実像と怖さを追求してみたいと考えたのです。鈴木 : その狙いについては、同書のプロローグ部分に託されていますね。鈴木 : プロローグを読むだけで、グローバルに行き交うマネーの変遷、地球サイズでの「通商」と「通貨」の攻防・関係性を俯瞰して捉えることができます。「通商」と「通貨」は、本来、車の両輪であるべきなのですよね。浜 : はい。「通商」はモノの世界。「通貨」はおカネの世界。この双方の足並みが揃わなければ、安定的な共生が成立しないのです。今は、おカネの世界が、モノの世界よりも大きくなりすぎ、国々の依存関係を壊す撹乱要因になっています。鈴木 : このいびつな関係性については、常に目配りしておく必要性があるわけですね。そうしたなか、今日のグローバル経済において、各国が共存していくことのできる通商・貿易関係とはいったいどのような形を指すのか? 現状の通商風景の問題点はどこにあるのか? その点を探るべく、第1章では、TPP・FTA・EPA各々の内容や関係性が丁寧にまとめられていますね。鈴木 : TPP交渉の対象分野は24分野もあり、多岐に渡っていますね。日本政府の整理・分類によれば21分野に上ります。浜 : そうなのです。日本での報道のされ方を見ていると、主に農産物中心のイメージに偏りがちですが、それではTPPの全貌は見えてきません。鈴木 : 交渉分野は「物品市場アクセス」「電気通信サービス」「金融サービス」「投資」「環境」「労働」「知的財産」に至るまで多種多様な業種・業界が対象となっています。改めて驚きました。ぜひ同書を読んで読者の皆さんにも確認してもらいたいと思います。浜 : まず、TPPが単なる日本農業の保全問題ではないということをご理解いただきたいですね。鈴木 : 各々の通商形態とその実態を把握できたところで、第2章からはタイムスリップの旅が始まりますね。この発想がおもしろくて読みやすい!浜 : ありがとうございます(笑)。通商の歴史書というのは、どうしても読みづらい難しい書になりがちなのですが、できる限り、読者の皆さんの頭に入りやすい表現の仕方を試みました。史実を整理しやすくするために、タイムスリップした時代ごとに区切って「世界経済史年表」も付けています。鈴木 : 本当にわかりやすかったです。そのタイムスリップですが、まずは第2章、WTO(World Trade Organization : 世界貿易機関)が誕生した1995年へと向かいますね。そこではWTOの前身がGATT(関税と貿易に関する一般協定)であること、最も今的であるはずのWTOがグローバル化の進展により、今や取り残された存在になってしまった経緯と理由が明かされています。この第2章を読んで、WTOがうまくいかない時代状況や、実際にいくつかの問題点があるにしろ、FTAやTPPで細かく貿易区域が限定され始めている今こそ、WTOが掲げる自由貿易の基本理念に立ち返るべきなのではないか、と改めて考えさせられました。鈴木 : この相互関係という言葉と互恵関係と言う言葉はとてもよく似ていますが、実は根底の部分で、その意味が違ってくるのですね。浜 : そうなのです。相互主義というのは、奪い合いの論理、それに対して互恵主義は分かち合いの論理と言えます。つまり相互主義は、市場においてどれだけのシェアを奪い取ることができるのかを考えること、一方、互恵主義は市場をいかにうまく皆で分かち合いシェアできるかをおもんばかること。奪い合いの対象として、マーケット用語で言うところの占有率のシェアと、フェイスブックなどで浸透している分かち合いを意味するシェアとの間には、大きな違いがあります。奪い合いのシェアの意識が強まれば、それは地球経済を斬り刻み、占有率を高める行動につながっていくことになります。鈴木 : EPA、FTA、TPPは、各国同士の奪い合い、国々が自国の占有率を高めるためのシェア意識と言えそうですね。この「シェア」については、第3章において1948年、第4章で1930年代へと遡る旅をした後、第5章にて、浜先生の見解を述べていらっしゃいます。これまで転倒、倒錯、混迷してきた「通商」の世界の未来に向けて、その解決策が見出されていきますね。浜先生らしい発想だなぁと感じました。私がまさに「惚れた!」ご意見でもあります。鈴木 : まとめとなる第5章では、そもそも市場というものが、弱肉強食のジャングルの世界なのか、ということについても触れていらっしゃいます。浜先生はそこは違うのではないかという考えをお持ちですね。浜 : はい。ジャングルという世界は、淘汰の世界であるのは確かですが、調和を保った共生の世界でもあるわけです。つまりあらゆる生き物たちが、各々に一定の役割を果たし、生態系の循環が形成されている世界です。強者だけが他の全てを食べ尽くし生き残ったとしたら、そのうちに生態系は滅びてしまいます。本来の共生・互恵の関係はジャングルの世界でも成立しているのです。グローバル・ジャングルの共生の論理を多くの人たちが知り、そこから今、そしてこれからの時代に合った理念・解決策を見出すことができれば、と思っています。鈴木 : その理念探しのマラソンのゴールを読者の皆さんにも目指してほしいものですね。今日は忙しい中、ありがとうございました。浜 : ありがとうございました。【拡大画像を含む完全版はこちら】
2012年11月01日経済キャスターの鈴木ともみです。今回は、漫画家の山田玲司さんの著書『資本主義卒業試験』(星海社新書)をご紹介します。難題であるテーマ『資本主義』の構造が「マンガ×小説」形式により、とてもわかりやすくまとめられています。ぜひ、若い世代の方々にお読みいただきたい一冊です。鈴木 : 一気読みさせていただきました。複雑な「資本主義の構造」が的確に整理されている一冊ですね。山田 : ありがとうございます。難しいテーマですので、漫画のスキルを生かし、理解しやすいような会話形式でまとめました。鈴木 : クライマックスにかけてのシーンは、まさに舞台演劇の一幕のような迫力があり、圧巻でした。これまで、山田さんは「恋愛」や「非属」など、あらゆるテーマを題材にした(漫画を中心とした)作品を世に送り出し、評価を得ています。今回、改めて「資本主義」をテーマに選ばれたのには、どのような理由があったのでしょうか?山田 : 私は、日本経済のバブル成長期を20代で体験し、その恩恵を受けてきた世代です。さらに私よりも上の世代は、高度経済成長期を生きてきた世代です。そのような歴史を経た今、どんな時代にあるかと言うと、それら成長期に積み上げられたツケを多くの人たちが払わされている時代、まさに「巻きこまれの時代」の真っ只中にあると思うのです。今を生きる若い人たちは、この「巻きこまれの時代」のなかで、戸惑い苦しんでいる。その根幹にある「資本主義」の構造や実態を、自分なりの表現で、多くの人たちに伝えたいという思いから、本書が生まれました。鈴木 : 山田さんご自身は、その「巻きこまれ」の渦中にいたことはあるのでしょうか?山田 : 実際、私も貧乏漫画家として苦しんだ頃がありました(笑)。漫画家としての仕事の面だけでなく、恋愛の世界でも葛藤した時期もありました。そういった自分のなかに存在する部分や、友人のエピソードなどを投影させたのが、物語に登場するキャラクターたちです。鈴木 : 登場人物たちが個性豊かですよね。まさに「資本主義」社会に生きる象徴的な存在と言えるかもしれません。最初に登場する主人公は35歳の漫画家さんですね。鈴木 : 物語は、この35歳の漫画家・山賀玲介が取材したことのある有名大学の教授を訪ねる場面から展開していきますね。その教授が学生に出した「資本主義卒業試験Q・行きづまった現代の資本主義社会は、どういう形でつぎの社会へと卒業できるのか?」の答えをもらいに…。そこに、試験の単位が欲しいと女子大生の赤星リコが懇願しにきます。山田 : そうですね。登場人物一人ひとりが加わります。次に出てくるエコの国から来た鈴木大地というキャラクターは私の友人をイメージしました。鈴木 : この鈴木大地という人物の苦悩に共感される方は多い気がします。苦悩と言う点では、次に登場する黒沢という人物も中年サラリーマンが抱える典型的な失望と葛藤に苛まれていますよね。山田 : はい。黒沢を始め、登場人物たちは資本主義社会の歯車に巻きこまれ、根本にあったはずの「自分」がどんどんブレていき、不安や苛立ちや苦悩を抱えてしまうのです。商社マンの黒沢はその象徴的な例かもしれません。鈴木 : そして、主要な登場人物が出揃ったところで、一行はラピスという案内人に導かれ、『資本主義ランド』へとたどり着きます。そこには『ネバーエンディングストーリー』のもと、お城のなかに住むお姫様が登場し、「夢」や「欲望」を叶えることの大切さを説きますね。続いて登場するのが根拠のない、絶対無敵のヒーロー・ビクトリス。「努力すれば必ず勝利する」という思想を披露します。山田 : はい。絶対に負けないヒーローが、姫の欲望を叶え続ける世界ですね。そのキーワードは「成長」になります。鈴木 : そして、「成長」の彼方に築きあげた絶対的地位の大富豪がついに現れます。この『資本主義ランド』の場面は、本書の肝とも言えるかと思いますので、ぜひとも読者の皆さんには、その世界に陶酔しながら(笑)お読みいただきたいと思います! 描写はとてもファンタジックですが、内容はとてもシニカルで辛辣です。山田 : やはり、ファンタジーの世界にいる現実と、しっかりと向き合うことが大切だと思うのです。つまり、『成長』することであらゆる欲望が満たせるという幻想に包まれた『資本主義ランド』からの脱却です。自分だけは大丈夫、危険があれば保険をかけて、絶対安全で変わらない、必ず勝つ国『資本主義ランド』なんて、永遠に続くわけがありません。地球が何個もあって増えていけば、その幻想がずっと続いていくでしょう。でも、私たちは限りある地球のなかで、循環社会のなかで生きていますし、これからも生きていかなくてはならないのです。鈴木 : そうしたなか、本書では『資本主義卒業試験』の解答につながる3つのキーワードが出てきますね。山田 : はい。これら3つの答えは、「今さら」と思われる方もいれば、「なるほど」と納得される方もいるでしょう。決して単純化できるテーマではありませんが、そこを敢えて、伝わりやすい形で表現しました。決して自分がブレていくことのないよう、幻想の世界に惑わされずに、循環する事象や物事をその都度味わい、享受していきましょうよ! と。昼があれば夜もあります。季節だって移ろいます。でも、春夏が過ぎ秋になった時、その秋を憂い春夏に未練を残し続けるのではなく、秋を味わい、その後の冬も愛しましょうよ!ということです。鈴木 : なんだか詩人のようですね。山田 : そうですね(笑)。でも、世の中に詩人がもっと増えていったらいいなと思いますよ。「詩人政治家」や「詩人サラリーマン」など…。そうなれば、もっと感性豊かで「自分」を見失わないですむ世の中に近づいていけるような気がします。鈴木 : 金融・マーケット報道の世界で生きてきた私には、刺激的なお話の数々でした。今日はお忙しい中、ありがとうございました。山田 : ありがとうございました。【拡大画像を含む完全版はこちら】
2012年09月20日経済キャスターの鈴木ともみです。今回は、キャリアカウンセラーとして第一線で活躍されている小島貴子さんと「ひきこもり」問題の第一人者として活動されている精神科医・医学博士の斉藤環さんお二人の共著『子育てが終わらない「30歳成人」時代の家族論』をご紹介します。対談のゲストは著者のお一人、東洋大学理工学部准教授・グローバルキャリア教育センター副センター長の小島貴子さんです。人生のステージは時の流れと共に変わっていくものです。学生から社会人へ、結婚して夫婦、父親、母親へ…とその役割も変化していきます。そのことをうまく理解できないと、自分自身や人間関係のメンテナンスにも悪影響を及ぼすことになります。同書は親子・家族関係の構築についてはもちろん、会社の上司と部下の関係、恋人や友人との関係etc…様々な関係構築への第一歩を踏み出すきっかけになる一冊と言えるかもしれません。鈴木 : 『子育てが終わらない「30歳成人」時代の家族論』は、キャリアカウンセラーの小島先生と精神科医の斉藤先生による対談形式で、とても読みやすい構成となっていますね。小島 : ありがとうございます。カルチャーセンターで対談させていただいたのですが、対談を聴きたいという参加者も多く、やはり関心の高いテーマなのだと実感しました。鈴木 : 小島先生はキャリアカウンセラーとして、これまで行政や教育の現場で様々な就労支援をされてきていますね。小島 : はい。早いもので20年が過ぎました。鈴木 : 就労支援の第一人者として活躍されてきた小島先生が子育てに着目して本を出版されたというのはどうしてなのでしょうか?小島 : 就労支援というのは、単純に仕事を求める求職者と求人をマッチさせれば完結する話ではありません。仕事がみつからない背景には、表に出てこない問題が数多くあるのです。人間関係がうまくいかずに仕事から離れていく人たちや、家庭や自身の状況をうまく整理することができずに社会に出ていくことができない人たち、不登校からそのままひきこもり状態になってしまった人たちもいます。そもそも子どもの成長期には重要な転機がいくつも存在します。そこを注視しながら親子関係を構築し見直していくことの大切さを伝え、家族のサポートをしながら就労支援をしていくのが日本のキャリアカウンセラーの仕事だと言えます。そう考えていくと、やはり就労支援と家族論との間には、深い関係性があるわけです。鈴木 : なるほど。副題にある『「30歳成人」時代の家族論』というタイトルには、今の時代だからこそ伝えるべき重要なメッセージが込められているわけですね。「30歳成人」という表現ですが、先生は、現代社会において「精神年齢は7掛け」という説を唱えてらっしゃいます。小島 : はい。その計算によれば30歳は21歳になりますね。そもそも20歳を成人とみなすのであれば、今の時代、成人する年齢は30歳くらいがちょうどよいのではないかと思います。その点について、斉藤先生も同じ見解です。鈴木 : 確かに、私も就職して3年くらいたった頃に、生意気にも「私は仕事がデキる!」といった万能感に浸った時期がありました(笑)。でも、そんな万能感もミスや失敗を重ねるうちに覆され、その万能感から卒業できたのは、やはり5、6年目だった気がします。その時点でやっと自立の準備ができました。小島 : 私は『27歳からの就職術』(インデックスコミュニケーションズ)という本も書いてるのですが、タイトルに「27歳」という年齢を出したのは、その年齢が人生設計を今一度考え直す時期にあたるからでした。転職を考えたり、結婚や出産、親の定年退職など、様々な外からのショックが押し寄せるのがこの時期です。漠然とした不安を持つなか改めて人生設計を立て直し、新たな道を歩み始めようと決心するのが「27歳」なのです。もちろん、その時期には個人差がありますので、だいたい27歳~34歳くらいを想定すると、成人するのはおおよそ30歳ということになりますね。鈴木 : この「30歳成人時代」はいつ頃から始まったと分析されますか?小島 : 私は、この現象は電化製品が日常生活に入り込んだ頃から始まっていると考えています。便利さと清潔さを重んじ、効率化を追求するうちに、大切なコミュニケーション術を学ぶ機会を失ってしまったのではないかと…。それこそ昔は、晴耕雨読、本も回し読みしながら勉強していました。携帯電話のない時代、会話するにも家族の誰かに繋いでもらわないと、電話は通じなかった。人とのつながりに、必ず誰かが介在したり、そこに和が生まれていたはずです。今はその機会を失ってしまっていますよね。鈴木 : 確かに。昔は、友達に電話するのでも、繋いでもらう際に、その子の家族の様子をうかがい知ることができましたし、大人と子供が交流する機会がもっとありましたよね。小島 : 子供は、様々な大人と接するなかで、閉鎖的に守られている子供の世界から、大人のいる広い社会への踏み出し方も学んでいくものなのです。そこで、自立心も芽生えてきます。ただ、この「30歳成人」というテーマは日本特有の問題でもないのです。全世界的なものになってきています。その点について、斉藤先生は次のように語っていらっしゃいます。鈴木 : 子供の自立には、親の夫婦関係が大いに影響しているようですね。小島 : そうですね。夫婦関係が「お父さん」「お母さん」の関係のままであるために、今の親子関係から抜け出せないのではないかと思います。「30歳成人」時代が定着してしまった理由のひとつですね。そして、全世界的な広がりを見せているという現象のひとつに、やはりひきこもりの増加があります。その点についても斉藤先生が指摘されています。小島 : この斉藤先生のお話にある「人づきあい」で言えば、私は息子をよく人の家に泊まりにいかせていました。数日間、外を泊まり歩いていた息子がやっと家に帰ってくると、「やっぱり家がいい」と言うのです。人の家に泊まった時の居心地の悪さが逆に自分の家庭の良さを再認識させてくれます。そういったことも自立を促すひとつの流れをつくりますね。鈴木 : 人づきあい、人とのコミュニケーションの中で、子供は自然と自立心や社会への適応力を会得していく…というのが本来あるべき姿なのかもしれませんね。小島先生はご自身のコミュニケーション能力を存分にずっと発揮されてきたのでしょうか?小島 : いいえ。実は私は昔からコミュニケーション能力はあまり高くないのです。群れるのも得意でありませんし(笑)。ただ、コミュニケーションが悪くならないようにしようと心がけてはいます。要はコミュニケーション不全がどういう時に起こるのかを知っていればいいのです。その点については、具体的に本に記してあります。鈴木 : とてもよくわかります。「ひきこもり」などで親子関係の在り方について悩んでいらっしゃる方は、これらを見直してみる必要があるのでしょうね。小島 : そうですね。そして、「これは家族内の問題なのだから他人には関係ない」と決めつけたり、分担の意識を持ったりせずに、ぜひ私たち専門家を頼ってきてほしいと思います。鈴木 : さらにこの5つのパターンは親子関係や夫婦関係のみならず、会社の上司と部下との関係など、ビジネスシーンでも当てはまる状況と言えそうですよね。「決めつけ」や「逃げ」、「威圧」などは、組織で起こりやすいパターンです。これらのパターンにはまらないように注意して、コミュニケーション不全を回避したいものです。小島 : はい。それでも、人生には人間関係やそれぞれの環境において、予期せぬ出来事が生じます。その時に、どうやってポジティブな発想に切り換えていけるかがポイントなのです。鈴木 : ネガティブな出来事を学習の機会として捉えるというのは、仕事や人づきあいなどあらゆることを進めていく上で大切な姿勢ですよね。小島 : そうですね。カッコいい大人、上等な大人はこれができています。常にオープンマインドでフェアで誠実で楽観的です。私は、人は成人する(30歳になるまで)は、とにかく遠慮することなく、上等な大人と接する機会をどんどん増やして、その大人たちからいろいろなことをどんどん吸収してほしいと思っています。この考え方は、常日頃から私が教え子たちに伝えていることです。素晴らしいことを教えてくれる大人は周りにもいるはずです。そういう大人と会う機会を増やし、たくさん学習してほしいと思います。決して、ちゃっかりしたズルい大人の真似だけはしてほしくない。上等な大人を見習うなかで、自分自身も上等な大人を目指してほしいのです。鈴木 : 同感です。とっくに成人した私ですが(笑)、今でも上等な大人との出会いを求め続けています。多くのポジティブな言葉やパワーをもらって自身の明日へとつなげていきたいという思いは、人生に一種のハリを与えてくれますよね。小島 : そう思います。私も明日は、上等なカッコいい大人とランチ会食の予定です(笑)。鈴木 : いいですね。素敵なランチタイムのひとときをお過ごしください。小島先生、今日はお忙しい中ありがとうございました。小島 : ありがとうございました。【拡大画像を含む完全版はこちら】
2012年08月23日経済キャスターの鈴木ともみです。今回は、前回に続く、連載コラム『経済キャスター・鈴木ともみが惚れた珠玉の一冊』夏の特別企画・スペシャル対談の第ニ弾/後編です。対談のゲストは『世界恐慌への序章 最後のバブルがやってくる~それでも日本が生き残る理由~』の著者・大阪経済大学 経営学部 客員教授の岩本沙弓さんです。同書は多くの読者の共感を得ており、すでに4刷のベストセラーとなっています。公式データを基にしたファンダメンタルズ分析やテクニカル分析に加え、第三の分析・裏取り&裏読みを駆使した岩本さんならではの鋭い洞察。その奥深い分析力にあふれた内容は、私たちの知識欲を満たしてくれると同時に、心をも動かしてくれます。今回は、同書の『隠れテーマ』も探りつつ、できる限り真実を浮かび上がらせる対談を目指しました。鈴木 : 前編でお話いただいた『日本破綻論』『円高悪玉論』といった私たちにとっては当たり前の解釈となっている考え方が、実は「巧妙なプロパガンダのもとに成り立っている」その事実を知らされないのは恐ろしいことですね。岩本 : そうなのです。特に『円高=悪』の考え方は、あらゆる事実を覆う隠れ蓑になっていますから、経済も金融マーケットもゆがめられてしまいます。鈴木 : いきなり核心に触れてしまいますが、具体的に何をするため、何を守るために『円高=悪』のプロパガンダが必要なのでしょうか。岩本 : 端的に言えば、いつでも必要な時に、ドル買い円売りの為替介入をしたいため…ということになるのかもしれません。鈴木 : 橋本元首相のコロンビア大学でのコメントについては、頭サビで会話をしたがる欧米人と、起承転結で話を進めようとする日本人との差がはっきり出ましたね(笑)。当時は、日本のマスコミも、米国メディアが発信した情報をそのままのニュアンスで伝えました。こういった要人発言をつぶさに検証するスタイルは、いかにも岩本さんらしいです。橋本元首相の実際の行動の裏に隠れている本音と建前が見えてきますよね。岩本 : 結論を言ってしまえば、日本が米国債を買ってあげる事で、米国の借金を穴埋めしてあげてるわけです。当時の日米構造協議のなかで、橋本元首相はこんな記録を残しています。それは「米国がドルの価値維持に関心がないならば、こちらも交渉手段の一つとして日本が保有する米国債を売ってもいいのですよ」と言いたくもなったということ。ドル安のなかで、日本がドル買い介入をし、米国債を購入する。その後為替が円高になると、米国は自国の借金を目減りさせることができるのです。鈴木 : 『円高=悪』のプロパガンダを信じると、日本のドル買い円売りの為替介入がある度に、為替のトレンドが変わるのではないか、株式相場が好転するのではないか…などと期待を寄せてしまいがちですが、それではなかなか収益が上がらないままの状態になりますね。岩本 : そうなのです。やはり冷静な判断が必要で、仮に自分が少数派だったとしても、思い込みを捨て、相場をニュートラルに見極めることが大切です。プロパガンダ抜きの本当の相場の姿を知ることが、収益を上げるための第一歩と言えます。鈴木 : その上で、この本のメインタイトル『世界恐慌への序章 最後のバブルがやってくる それでも日本が生き残る理由』というお話が活きてくるわけです。同書は、プロパガンダ抜きで、これからの相場の姿を見通していきましょう! という内容です。ズバリ、今年から2016年にかけて米国主導のバブルになるとの分析ですね。岩本 : はい。量的緩和策による過剰流動性のなかで、バブルが生まれます。バブルが生成される場所は、金融市場であり、コモディティ(商品)市場となります。鈴木 : 投機マネーが金融市場に流入してくるということですね。分析のなかで、私が「おや?」と思ったのは、『金の部分本位制』の話です。『金本位制の再開』をも視野に入れつつのドル高、ドルの復活ということですね。岩本 : 金部分本位制は極論ですが、実は通貨体制は約30年単位で変化してきています。1944年ブレトン・ウッズ体制(金本位制)→1971年ニクソン・ショック(変動相場制)→1999年ユーロ誕生。30年間を一つのスパンとすると、次の新しい通貨体制が確立するのは2030年頃となります。その「大転換」に向けて世界は動き始めている、そのようなイメージです。鈴木 : 2030年というと、まだ十数年先の話ですが、その長期的な見通しのなかで、短期的には、今年中にもドル高円安に転換するというお考えですか?岩本 : そうですね。今年は世界が注目する一大イベントとして米大統領選があります。もちろん、結果は出ていませんが、大方はオバマ大統領が二期目も就任するだろうとの予測のようです。であるとするならば、過去に二期に渡って政権を握った例を振り返ると、レーガン、クリントン、ブッシュといずれも一期目と二期目とで、為替政策をガラリと180度転換させているのです。仮にオバマ大統領が再選を果たした際には、これまでのドル安政策からドル高政策へと大きく舵をきって転換させる可能性があると考えられます。ただ、今から決め打ちする必要はなく、オバマ再選、そして来年の1月の一般教書演説を聞いて、ドル高転換を確認してからこちらも行動すればよいと思います。鈴木 : なるほど。ドル高への流れは条件次第で始まると言えそうですね。その流れのなかで展開される金融市場のバブル相場の内容や近未来の見通しについては、第1章「資本主義最後のバブルがやってくる」、第8章「恐慌前のバブル相場はどう動くのか近未来の予想」をじっくりお読みいただきたいですね。世界恐慌前の限定相場だということを前提とした上で!岩本 : そうですね。予想通りにバブル化したならば、2015年末までには全ての投資を引き揚げるイメージはしっかり持っていただきたいと思います。鈴木 : 岩本さん、今回も貴重なお話をありがとうございました。岩本 : ありがとうございました。【拡大画像を含む完全版はこちら】
2012年08月09日経済キャスターの鈴木ともみです。今回は、連載コラム「経済キャスター・鈴木ともみが惚れた珠玉の一冊」夏の特別企画・スペシャル対談の第ニ弾/前編です。対談のゲストは『世界恐慌への序章 最後のバブルがやってくる~それでも日本が生き残る理由~』の著者・大阪経済大学経営学部客員教授の岩本沙弓さんです。同書は多くの読者の共感を得ており、すでに4刷のベストセラーとなっています。公式データを基にしたファンダメンタルズ分析やテクニカル分析に加え、第三の分析・裏取り&裏読みを駆使した岩本さんならではの鋭い洞察。その奥深い分析力にあふれた内容は、私たちの知識欲を満たしてくれると同時に、心をも動かしてくれます。今回は、同書の”隠れテーマ”も探りつつ、できる限り真実を浮かび上がらせる対談を目指しました。鈴木 : お互いのコラムを読み合う仲ではありますが(笑)、対談は久しぶりですね。岩本 : そうですね。半年ぶりでしょうか。鈴木 : その間に、ベストセラーを出されまして…。すでに4刷、すばらしいですね。岩本 : 本当にありがたいことです。鈴木 : この『最後のバブルがやってくる』は、何度でも読み返したくなる経済書です。内容もかなり”ガチ”ですよね!「ガチ・ガセ=本物・偽物」で言う所の「ガチ」、そして本気の「ガチ」という両方の意味(笑)。岩本 : ありがとうございます。鈴木さんにそう言っていただけると嬉しいです(笑)。鈴木 : 「ガチ」だからこそ、浮かび上がってくる真実が、全編に渡って表現されています。そうしたなか、見えてくるのが「隠れテーマ」でして。岩本 : 「隠れテーマ」ですか…?鈴木 : はい。「ベストセラーの経済書に騙されるな!」というテーマです。岩本 : なるほど。そのように読み解いてくださるとは。鈴木 : と、言いつつも、こちらの本も堂々のベストセラーなんですけど(笑)。岩本 : …複雑です(笑)。鈴木 : 「ベストセラーの経済書に騙されるな!」の観点から読み進めていきますと、まずは、増税論議が騒がしいなか、日本の財政問題の矛盾点がみつかってきます。それは公式データを精査していけばわかることだったりしますね。岩本 : 私は、青山学院大学の大学院で、もともと経済企画庁におられた小峰隆夫教授の「経済白書を読む」という講義を受講していた時期があるのですが、小峰先生の授業は、データを基に経済的な真実は何かというアプローチが徹底されていて、とても興味深いものでした。「一般に信じられている説、ベストセラーの経済書にある説が正しいとは限らない」ということや、「データの中にこそ真の答えがある」ということを教えていただいたのです。鈴木 : どうしても、日本の債務対GDP比が220%近いとか、借金時計が1000兆円を超えたなどという情報が入ってくると、不安と焦りが募ってきますね。岩本 : もちろん、無駄な借金はすべきでないですし、中長期的な収入と支出のバランスを取ることは必要です。意味のない為替介入により、負債を増やすこともよしとすべきではないでしょう。ただ、経済学的に不適当な数字を基に、すぐに日本破綻論を掲げるのはとてもナンセンスなことだと思うのです。そもそも、基本中の基本の考え方として、「海外からの借金で成立している国」と、「自国内で収支を賄えている国」とでは、話は180度変わってきます。債務国でなければデフォルトは起きないのです。鈴木 : 岩本さんは、外為ディーラー業務の第一線にいらして、まさに現場の感覚を知ってらっしゃいます。マスメディアを通して私たちに伝わる情報に、やはり違和感を覚えるものですか?岩本 : 今は現場から離れているわけですが、いざ離れてみると、現場にいる頃には当たり前とされていたことが、市場取引の世界では全く別の解釈をされていることに驚きます。『円高悪玉論』もそのうちのひとつです。実際、日本が輸出大国なのかどうかを調べていけば、正しい結果が導き出されるはずなのです。鈴木 : 数で言えば少数の大手輸出企業=国際優良企業ですが、「円高に困っている」という声は大きく伝わってきます。例えば新聞などでよく目にする「1円円高が進むと、数百億円、あるいは数千億円の損失が出る」といった試算です。岩本 : 円高になると必ず登場する話題ですね。これも正確な数字と事実を知る必要があります。鈴木 : 『円高悪玉論』については否定できるデータが次々と出てきますね。なのに、当たり前のごとく根づいていている。まるで『円高=悪』という公式を浸透させたい勢力が存在するかのようですが…。岩本 : 実際、大手輸出企業のなかには円高を理由に下請けの中・小企業に対して支払うべき額から消費税を免除してもらうケースも出てきているようです。つまり、中・小企業側は消費税分の損失を被ることになります。一方、親会社である大手輸出企業側は海外の取引先に対してもともと消費税を払う必要はないわけですから、下請けの中・小企業に払う消費税分だけ得することになる。鈴木 : なんだか『円高悪玉論』はあらゆるご都合主義の言い訳にされている感じですね。さらにまだまだありそうな…。岩本 : そうなんです。もっと大きなスケールで『円高=悪』のプロパガンダが存在していると言えます。詳しくご紹介しましょう。(後編に続く)【拡大画像を含む完全版はこちら】
2012年08月02日経済キャスターの鈴木ともみです。今回は、連載コラム『経済キャスター・鈴木ともみが惚れた珠玉の一冊』夏の特別企画・スペシャル対談の第一弾の後編です。対談のゲストは『カリスマ出口汪の人生を変える! 最強の「話し方」塾』の著者・予備校講師の出口汪さんです。仕事ができる人、魅力のある人は、やはりそれなりの「話し方」が身についているものです。話し方一つで人の印象は大きく変わります。人を説得する、人を引きつける、人から好印象を持たれる「ワンランク上の話し方」とは…? 今回も前編に続きビジネスパーソンの皆さんに向けて「話術の極意」をお伝えしたいと思います。鈴木 : 上手な話し方の第一歩は、他者意識を持つこと、そして論理的に話すこと。読者の皆さんもだいぶ整理できたかと思います。では、逆に他者意識を持たない「迷惑な話し方」というのは具体的にどのような話し方を指すのでしょうか?出口 : 例えば、前置きが長い話し方などです。本人にしてみれば、丁寧な話し方をしているつもりかもしれませんが、聞いている人にとっては、これほど迷惑な話し方はありません。もし、それが会議の場であるならば、長々と前置きしている人は、そこに出席している人全員の時間の合計を無駄にしていることになります。前置きは短くするべきです。また、頭に浮かぶ順序で話す人も迷惑な話し方の典型です。聞いている人は、話し手が何を話すのか、全く見当がつかなくなります。しかも、言葉は発せられたらすぐに、次々と消えていきます。相手(聞き手)が他者であるという意識を持って論理の順序で組み立てて話すことを心がけるべきです。鈴木 : 「出だしが重要」というのはとてもよく理解できます。私も日本FP(ファイナンシャルプランナー)協会の認定講座『FP会話塾』で、「出だし=頭サビ」の重要性について解説しています。話し方においては『結・起・承・転』の順序が大切だと。文章の世界では、『起承転結』が基本とされていますが、話し言葉で伝える際には『結』をまず最初に持ってくることが肝心なのだと思います。そして『結』の後に『起承転』、場合によっては『結・起承転・結』。こう解説すると、受講生の皆さんも納得して下さいます。出口 : それはわかりやすい表現ですね。確かに『結』を出だしに持ってくるというのは大切ですね。話の順序や組み立て方が上手になれば、自然と伝わりやすい話し方になっていくはずです。そこがクリア―できたならば、次は話のネタや内容です。私が予備校講師として数多くの講義を成立させることができたのは、さまざまな話(ネタ)のストックをためることができたからです。ストックが自分の中で蓄積されると、このストックを話せば上手くいくという自信も出て、堂々と落ち着いて話をすることができます。ぜひ、ストックノ―トを一冊持つことをおすすめします。そして、話のネタ=ストックは、三回話すと良いと思います。鈴木 : 数多くのストックを持つことで自信にもつながり、人前で話すときもあがらないようになってくるのでしょう。出口先生はめったにあがることなんてないのでしょうね。出口 : 今となっては、人前で話すことであがることはなくなりましたが、もともとは私自身もあがり性だったのです。人前に出るとしどろもどろになりました。鈴木 : それは意外です。どのようにして克服されたのですか?出口 : やはり経験値を上げることが大切です。プロの話し手でない限り、人前で話すときに緊張しない人なんてなかなかいません。あがるのは、(1)自信がない、(2)経験不足、のどちらかが原因です。鈴木 : 私も自分の講義の中で、あがる原因は三つあると説明しています。(1)結果に対するあがり(準備不足のため自信がない)、(2)状況に対するあがり(人前で話すことの経験が少なくて不安)、そして(3)は、(1)(2)が混在するあがり。やはり経験を積むことが大切ですよね。出口 : なるべく人前で発言したり話したりする機会を増やすこと。経験の量が満たせない場合は、質を高めることが必要です。だからこそ、打ち合せや会議の場では積極的に発言するように努めましょう。鈴木 : お話をうかがっていると、「話し方のプロ」である出口先生も、もともとはあがり性で、他者意識に欠けた「迷惑な話し方」をされていたのだなぁと、ある意味ホッとします(笑)。そうしたなかで「論理」が後天的に身につくものなのだということも、出口先生ご自身が実感されてきたわけですよね。出口 : そうなのです。「論理」というのは言葉の使い方の技術であり、「論理的な話し方」というのは、もともとの頭の良さとは関係なく、後から習得できる技術なのです。だからこそ、あらゆる人が身につけることができる武器になるわけです。ぜひ、その努力を惜しまないでほしいと思います。鈴木 : 努力という点では、出口先生もかなり一心不乱に邁進された時期があったのですか?出口 : 私の場合は、予備校講師になって2、3年目の頃だったと思います。まさに死に物狂いの時期でした。鈴木 : 他者を意識した「論理的な話し方」を身につける訓練というのは、今から始めても遅くないわけですよね。出口 : はい。後天的な技術なのですから。ですので、ビジネスパーソン(特に若い方々)にはその訓練を積んでもらいたいと思います。私たちは死ぬまで生涯会話をし続けます。無自覚なうちにしているかもしれない「迷惑な話し方」を少し見直してみてはいかがでしょうか?ちょっとした工夫、ほんの少し会話に論理という技術を持ち込むだけで、仕事の進み方も、人生の方向性もきっと大きく変貌するはすです。鈴木 : 感情語ではなく、互いに論理語で話すようになれば、会話のキャッチボールもスムーズになり、有意義な会話の時間が増えるのだと思います。と同時に、表層的な会話が減り、互いの理解度が高まって、真の人間関係が築きやすくなるのかもしれませんね。私も、日常から「論理的な話し方」を意識して過ごしたいと思います。出口 : ただ、時には親しい人との間での「感情語」や「愛撫語」も必要だと思いますよ!鈴木 : そうですね(笑)。上手にオン、オフと、言葉をコントロールしていければ会話そのものを楽しめるようになりますね。出口先生、今回は実践的なお話をありがとうございました!出口 : ありがとうございました。【拡大画像を含む完全版はこちら】
2012年07月19日経済キャスターの鈴木ともみです。今回は、連載コラム『経済キャスター・鈴木ともみが惚れた珠玉の一冊』夏の特別企画・スペシャル対談の第一弾(前編)です。対談のゲストは『カリスマ出口汪の人生を変える! 最強の「話し方」塾』の著者で、予備校講師の出口汪さんです。仕事のできる人、魅力あふれる人は、やはり好印象の「話し方」が身についているものです。話し方一つで人の印象は大きく変わります。人を説得する、人を引きつける、人から好印象を持たれる「ワンランク上の話し方」とは…? 今回はビジネスパーソンの皆さんに向けて「話し方のプロ」が伝授する”話術の極意”をご紹介したいと思います。鈴木 : 出口先生、お久しぶりです。12年ぶりの再会ですね。出口 : お久しぶりです。私がラジオ講座を担当していた頃以来ですね。私の(現代文)ラジオ講座の番組プロデューサーだったのが鈴木さんでした。当時は本当に多忙でしたし、毎日喋り続けていました。予備校の650人教室はすべて満杯、90分の講義を一日四回、六時間以上も喋り続け、その合間をぬって、ラジオ講座の収録に臨んでましたね。鈴木 : 一日に6時間以上も喋り続ける職業なんて、なかなかないですよね。出口 : そうですね。でも、それを続けてきたからこそ、私はあることを自覚するようになったのです。それは、私は『話し方のプロ』であるということです。鈴木 : 私が出口先生と出会った時には、すでに「話し方のプロ」という印象でした。昔から話すことがお得意だったのですか?出口 : いいえ、もともとは話をするのが苦手でした。私はどちらかと言うと、感覚的な人間でして、今でも家族や親しい人からは、何が言いたいのか分からない! と文句を言われます(笑)。きっと、私の頭の中にスイッチがあって、オンになれば論理的で伝わりやすい話し方となり、オフになれば感覚的でラフな話し方になるのだと思います。鈴木 : 私が出口先生と会話をするときは、常に明快かつ論理的でわかりやすいというイメージです。きっと、スイッチがオンになってらっしゃるのでしょうね。出口 : そうなのだと思います。本来、感覚人間である私が、「話し方のプロ」として一応生業を立てることができたのは、スイッチをオンにし、『論理』という武器で伝達する方法を持ったからなのだと思います。この方法は、訓練によって後天的に習得できるのです。鈴木 : 後天的…という事は、論理的な話術は誰にでも習得可能ということになりますよね。ズバリ、「論理的に話す」「論理語で話す」ために必要なこととは何ですか?出口 : まずは、”他者意識”をしっかり持つことです。それが上手な話し方の第一歩となります。出口 : 実際、他者意識を持つことができずに話している人は、私たちの周りにもたくさんいるのです。何を言ってるのかわからない、意味不明な話し方をしている人や、一方的に喋り続ける人、会話のキャッチボールが成立しない人etc…私はこういった話し方をする人のことを「迷惑な話し方」をする人と表現しています。鈴木 : 「迷惑な話し方」…なかなか本人は気づくことができないのでしょうね。実は、私も日本FP(ファイナンシャルプランナー)協会の認定講座「FP会話塾」で「好感度アップの話し方」について講義しているのですが、そこで最初に受講生の皆さんに教えているのがこの「他者意識」についてです。まず、「人の話を聞くことは疲れる」ことなのだと伝えています。聞き手は目(視覚)を使い、耳(聴覚)を使い、頭(理解力)を使いながら、話を聞く。これはとても疲れる作業です。話し手は、聞き手の状態を理解し、聞いてもらうための努力と意識を持つことが大切です。さらに、「コンテクスト=文脈」についても触れています。コンテクスト能力とは、聞き手側が、話し手の話す内容の文脈や背景を類推しながら理解する力のことを指します。日本人はこのコンテクスト能力が最も高いとされていますよね。その順番はアジア人>アラブ人>欧米人なのだそうです。つまり、日本人は聞き手としての能力が高いということです。それにより、話し手が「迷惑な話し方」をしていても、聞き手の能力によって、なんとなく会話が成立してしまう…。日本人が論理的に話すことが苦手な背景には、一方で、聞き手としての能力が高いという側面もあるのだと思います。出口 : よくわかります。思いやりは日本人の特性ですから、相手がいかに「迷惑な話し方」をしていても、それを理解してあげようとする姿勢が常にありますよね。どんなに話し手の話が抽象的で、他者意識に欠けた感覚的な話し方であっても、それほど不穏な空気にならない。ただ、そうは言っても、結局、話し手として、「感覚的な話し方=感情語での話し方か」ら抜け出せないままでは、話術はいっこうに上達しないのです。鈴木 : 出口先生が説く「論理」の基本はとてもわかりやすいですよね。同書では、「話し方」に必要な三つの論理が記されています。『イコールの関係』『対立関係』『因果関係』の三つです。これらの言葉の規則を知れば、「迷惑な話し方」から論理的な話し方へと変わっていくことでしょう。ぜひ読者の皆さんには、第一章「「3つの論理」を意識するだけで話し方はガラリと変わるー「伝わる話し方」に必要な論理の基本」をじっくりお読みいただき、最強の話し方を習得してほしいですね。(次回、後編へ続く)【拡大画像を含む完全版はこちら】
2012年07月12日経済キャスターの鈴木ともみです。連載『経済キャスター・鈴木ともみが惚れた、”珠玉”の一冊』では、私が読んで”これは”と思った書籍を、著者の方へのインタビューを交えながら紹介しています。第18回の今回は、山口義正さんの『サムライと愚か者 暗闘オリンパス事件』(講談社)を紹介します。「これは真実である。情報提供者を秘匿するため、登場人物のうち「深町」だけを仮名とし、一部の人物・固有名詞については名を伏せたが、すべて実在の人物、企業等である。日時や場所についても特段の事情がない限り、発表資料や電子メールのやり取りの記録などから可能な限り正確を期した」。今回ご紹介する『サムライと愚か者暗闘オリンパス事件』は上記のような「ことわり書き」から始まります。今やオリンパス事件と言えば、日米欧の捜査当局が大規模な動きを見せた一大経済事件として、誰もが知っている事実です。であるにもかかわらず、敢えて「ノンフィクションの書」であるという「ことわり書き」を記していることに、私は最初、疑問を抱きました。しかし、同書を読み進めるうちに、その疑問は解かれ、確かに「ノンフィクションの書である」という「ことわり書き」が必要なのだ、という思いを抱くようになっていきます。登場人物たちの個性豊かなキャラクター、事件の発端となる情報提供から次第に明かされていく東証一部上場企業・オリンパスの重大な秘密、「個人の力」が玉突き状態で結びついていき、大企業の経営者を追及していくストーリー…。それはまるで、筋書きのある小説を読んでいるかのようで、もしかして大部分が脚色なのでは? と思わずにはいられないほど起伏に富み、緊迫感に満ちているからです。実際、著者である山口義正さんご自身も、取材した際にこんなふうに語って下さっています。「わざわざ『これは真実である』と書いておかなければ、そうとは信じてもらえないと思ったんです。話の展開があまりにもジェットコースター的だからです」。ちなみに「これは真実である」という始まり方は、映画『大脱走』の冒頭部分へのオマージュという意味も込められているのだそうです。映画にも詳しい山口さん曰く、話の展開は『大脱走』というよりもむしろ『スティング』に近いとのことですが… よって、同書は紛れもなく「ノンフィクションの書」です。それを意味する「ことわり書き」を頭に入れ、そこを改めて意識しながら本書を読み進めていくと、「個人の力」を信じるようになり、心の中に「勇気の翼」が生えてきます。と同時に、私たち一人ひとりの日本人が形成する「日本社会の弱さ」も浮かび上がってきます。まずは同書のタイトル解説も記されている『あとがき』からご紹介しましょう。「正義」を心の中心の近くに置く個人の情報提供によるスクープ記事に別の個人が共鳴し、さらなる個人の連鎖によって世界を揺るがす経済事件が明るみになる。個人がつながりながら、重大な秘密を解き明かしていく様子は、まるで推理小説を読んでいるかのようです。しかも、個人一人ひとりの個性が鮮明です。まずは、その登場人物の一人である「深町」氏についてご紹介しましょう。彼は「オリンパス事件」における最初の情報提供者であり、著者である山口さんの友人(カメラ仲間)です。上記・プロローグに記されている深町氏による旅先での告白。この告白を機に、「オリンパス事件」の全貌が明かされていくことになります。深町氏からの情報提供はさらに続き、ついに、山口さんはオリンパスの取締役会資料を始めとする内部資料を手にし、巨額の損失処理について追及し始めます。その様子は、『第一章「潜行取材」のしかかる秘密の重さ』に詳細に記されていますので、ぜひ、じっくりお読みください。企業会計について、今一度整理できる内容にもなっています。さて、ストーリーの最初の登場人物である深町氏は、まさに「暗闘オリンパス事件」の出発点となる重要人物です。このような重要キャラクターは他にも次々に登場します。例えば、月刊誌『FACTA』編集主幹の阿部重夫氏。阿部氏のジャ―ナリスト魂がこのストーリーを盛りたて、厚みを増させていきます。山口さん(当時は匿名)の執筆による「FACTA」2011年8月号における「オリンパス事件」スクープ記事の掲載。ここから玉突きのような連鎖が始まります。そしてこの連鎖は、あのマイケル・ウッドフォード元社長が登場人物として加わることにより、ギアチェンジし、さらに加速化していくのです。こうしてストーリーも佳境に入ってきます。続きの話もかなりの見せ場。ウッドフォード元社長と、菊川元会長が直接対峙する場面です。舞台はランチミーティング。よくぞここまで再現できたものだと感心せずにはいられない、迫力あるシーンとなっています。まさに「サムライが挑む一騎打ち」のシーンとでも言いましょうか。私は何度も読み返しました。ぜひとも、読んでその様子をイメージしていただきたいシーンのひとつです。そして、そのやりとりから約2カ月後、ウッドフォード氏は社長職から解任されることになります。この取締役会にて解任されたウッドフォード氏は、すぐさま英国に帰国すると、フィナンシャル・タイムズやウォールストリート・ジャーナルなどの経済誌へオリンパスが抱える問題について語り、英国SFO(重大不正捜査局)へも通報。オリンパス問題は、一気に海外で急展開を見せ始め「オリンパス不正疑惑事件」へと重大化していきます。世界中の注目が集まるなか、本事件のスクープを放った山口さんのもとに、新たな人物が現れます。この人物がとても興味深い。米国人ながら肩書は僧侶。その僧侶「ミラー・和空」氏は、第四章のタイトルにおいて「怪僧」と評されているほど、個性豊かな人物です。先程触れたウッドフォード元社長と、菊川元会長が直接対峙するランチミーティングの場面を克明に再現できたのも、このミラー・和空氏からの情報提供によるものでした。「果たしてミラー・和空氏とはいったい何者なのか?」「ウッドフォード氏とはどのような関係にあるのか?」「山口さんとはどのようにして知り合ったのか?」そのあたりについては『第四章「怪僧登場」 暗闘の記録』に書かれています。とても魅力的な重要人物です。ミラー・和空氏から提供されたまさに「暗闘の記録」をもとに、紆余曲折の激闘の日々の中、山口さんの取材も、事件の追及も進んでいくことになります。そして、同書に記されている一連のストーリーには、この記事において紹介しきれない「個人」たちがまだまだ登場します。一人ひとりの「個人」が次々に連鎖していく過程、まさに「点」が「線」となり、連なっていく物語が描かれていくのです。2011年10月26日。菊川会長兼社長は退陣します。その頃、オリンパスを巡る騒ぎは一段と激しさを増し、野田佳彦首相も英フィナンシャル・タイムズでのインタビュー記事で「今回の騒動はルールに従う市場経済国として日本の評価を貶める恐れがある」と懸念を表明、海外に次いで日本政府も重大事件として認知するようになってきました。さらに、金融面でも、外資系証券会社はオリンパスの投資判断レポートの作成を停止し、金融取引を見合わせ始めます。オリンパスの格付けも引き下げられます。そして11月8日。ついにオリンパスが膝を屈する日がやってきます…。年が明けて2012年2月16日。東京地検特捜部と警視庁は、菊川元会長兼社長を始め7人を金融商品取引法違反(有価証券報告 書の虚偽記載)の容疑で逮捕します。逮捕者のなかには、野村証券OBの横尾宣政(現・被告)も含まれていました。横尾被告はオリンパス社外の人物です。詳しくは、同書の第六章『野村証券OBたち』に書かれています。ビジネス・経済・マーケット関連の書籍では、なかなか明かされない事実が記されています。個人的には、金融関係の方々にこそ、お読みいただきたい章と言えます。さて、このように「オリンパス事件」は、会社を私物化する経営者、そこに群がる闇の人物たちによってもたらされた許されざる経済事件です。と、同時に『「個人」の力こそが全うな価値の源泉なのだ』ということを教えてくれた事件だったようにも思います。その点について、スクープした記者であり同書の著者でもある山口さんに直接うかがいました。「私は、この事件を通して『個人』の力はバカにできないという認識を新たにしています。この本に登場する人物、つまり私に情報提供してくれたり、協力してくれたりした個人たちは、今でもお互いに全く面識のない人たちです。そんな個人の力が連鎖して、事件の全貌をほぼ明らかにすることができました。個人の力は世の中、社会を突き動かす原動力であり、価値の源泉なのです。日本社会では、どうしても『無事是名馬』、事なかれ主義の『和』を重んじ、自分がおとなしくしていればうまくまとまるという価値観が根づいている面があります」。「実際、オリンパスの社員も、皆おとなしく親切で、いい人の集団という社風なのだそうです。でも、組織が暴走しているなか、皆が事なかれ主義で『和』を乱すことを恐れていたら、誰も暴走を止めることはできない。私の好きな言葉に『アマは和して勝つ、プロは勝って和す』という名言がありますが、まさに、個人一人ひとりが立ち上がり、力を発揮した先に、健全で高尚な『和』が生まれるのだと思います」。健全で高尚な「和」の源泉は全うな個人の力にある。確かに山口さんのおっしゃる通り、全ての価値を形成する上での基本はそこにある気がします。さらに源泉という意味では、人の心のなかに存在する「正義」も挙げられるのではないでしょうか。その点についても伺いました。「実は、この本の本文には『正義』という言葉は全く出てこない。『あとがき』でやっと使った言葉です。正義というと、どうしても青臭く気恥ずかしく…この言葉を使うことによって、事実や主張が安っぽい伝わり方をしてしまう気もします。さらに『正義』という言葉を禁じ手としたのは、『正義』は『真理』よりも一段低いところにあると思うからです。ですので、記事や本文では敢えて使っていません。ただ、ジャーナリズムの出発点は、やはりこの『正義』からスタートしなくてはいけないのだと思います。それはジャーナリズムの世界に限らず、世の中、社会全てに言えることかもしれない」。「この本の『あとがき』で、私は夏目漱石の小説『坊ちゃん』のワンシーンを引用しています。主人公の坊ちゃんが生徒から悪戯されたとき、生徒をどう処分するかを決める職員会議で、坊ちゃんの盟友である山嵐が弁じたてるシーンです。『教育の精神は学問を授けるばかりではない、高尚な正直な、武士的な元気を鼓吹すると同時に、野卑な、暴満な悪風を掃蕩するにあると思います』。この台詞には、『サムライ』の根本、基礎要件が託されています。『サムライ的なるものは何か』をはっきりと描いた言葉であり、今の日本人に足りないものを過不足なく表現しているのだと思うのです。つまり、ウッドフォード元社長が私に手向けた言葉『サムライ』とは『高尚で正直で元気な者』を指す言葉だということです」。そもそもこの「サムライ」という言葉は、日本人ではない英国人のウッドフォ―ド氏から発せられた言葉です。今回の「オリンパス事件の解明」は、たまたま英国人のナイトが経営陣の一員であったことが、大きく影響していますが、問題が生じたらすぐに隠し、それを事なかれ主義のまま、予定調和な結末に導こうとする日本人のみの集団であったとしたら、いったいどのような結末を迎えていたのでしょうか? その点についても山口さんの見解を伺いました。「英国人であるウッドフォード元社長が経営陣にいなかったら、今回の問題は、事なかれ主義のもとに、大きな事件にもならず、うやむやにされていたかもしれません。日本人と欧米人との差は、問題があるとわかった時に、どう対応するか、その問題を隠し続けるのかどうかに表れます。実は、この本のタイトルの元になったウッドフォード元社長の問いかけ『日本人はなぜサムライとイディオットが極端に分かれてしまうのか』について、最初は私も『単純な二元論で片付けられる問題なのだろうか』と違和感を持ちました。でも、今回の『オリンパス事件』からもわかる通り、日本人はこうした二元論を避けることで、『誰に責任があるのか』『本来、どういう解決策が求められるべきだったのか』をうやむやにしてしまいがちで、そこに問題の根源があるのだとわかりました」。「結局、日本社会においては、不正を働いた旧経営陣と不正を明らかにしようとしたウッドフォード元社長が喧嘩両成敗という結果になってしまった…。私たちは、そのことに対してもっと違和感を覚えるべきだと思います。欧米であれば違った判断や処分が下されたことでしょう。この点における日本(日本人)と欧米(欧米人)との違いは決定的です。ただ、『個人』ということをベースに考えれば、私たち日本人一人ひとりの心のなかにも『サムライ』は住んでいるのだと思います。今もなお、オリンパスの不正を正したいという個人からの情報が寄せられ続けていることからも、それは確かです。一方で、密告社会化することを危惧する声もありますが、限りなく黒に近いグレーを発見した時に、グレーゾーンとして見てみないフリをするのか、膿を出し切ることで健全な成長、発展へとつなげていくために立ち上がるのかは、『サムライ』としての個人の正義感に委ねられるのだと思います。私もジャーナリストとして『サムライ』でありたいと思っています」。私自身、「サムライ」という言葉は、好きな言葉です。本書を読み、いざという時には「サムライ」として振る舞いたい、そんな勇気の翼を与えてもらえた気がしています。ただ、山口さんご自身のなかでは、もっと別の感覚をお持ちのようです。「この本は、勧善懲悪の話ではありません。『読者の皆さんも、すっきりとした読後感を感じていないのでは?』という気がしています。というのも、真実をできる限り追及しながら、あいまいな形で事件が幕引きとなってしまった…。『オリンパス事件』は日本社会・日本人を象徴する事件だと言えますが、それを完全に打ち崩すことはできなかった。その意味では、私は『敗者』かもしれません」。勧善懲悪にはならなかった…その点では「敗者」。ジャーナリスト魂は、そういう感覚と心得を持った人に根付くものなのでしょう。日本を象徴する事件「オリンパス事件」は、決して終わった事件ではなく、まだまだ続いている事件であると言えます。今回の事件では、たまたま英国人のナイト(騎士)が経営陣の一員であったことが、大きく影響していますが、問題が生じたらすぐに隠すことに注力しようとする日本人・日本社会の体質が変わらない限り、似たような事件はいくつも浮上してくることでしょう。すでに日本社会のあちらこちらに潜在している事なのかもしれません。経済事件に関心のない方でも、「個人の力とは?」「日本人とは?」「日本社会とは?」など、根本的な命題を改めて見つめ直すことのできる一冊です。映画を観ている、小説を読んでるかのごとく、共感せずにはいられないノンフィクションストーリー。まさに珠玉の一冊です。【拡大画像を含む完全版はこちら】
2012年05月10日経済キャスターの鈴木ともみです。連載『経済キャスター・鈴木ともみが惚れた、”珠玉”の一冊』では、私が読んで”これは”と思った書籍を、著者の方へのインタビューを交えながら紹介しています。第17回の今回は、阿部祐二さんの『「恐妻家」が成功する22の法則』(講談社)を紹介します。「たゆまぬ努力」「謙虚さ」そして「偉大なるメンター(指導者)との出会い」。これらは、この連載を通して出会った多くの賢人たちに共通する3つのキーワードです。世界を舞台に累計5,000億円を運用してきたカリスマファンドマネージャーさん、一部上場企業の女性取締役となり、喜寿を迎えられた今、さらにニューヨークへの進出を計画中の美容家さん、時価総額世界トップ群の米国企業の会計、コンサルタントを手掛けてきた国際公認会計士さん。各業界で、日本を代表する実績とキャリアを積んでこられた方々には、これら3つの共通項が存在します。成功者となった今となっては、これらを実践してきた、続けてきた、という表現の方が正しいのかもしれません。「たゆまぬ努力」「謙虚さ」「偉大なるメンター(指導者)との出会い」。現役プレーヤーとして仕事人生を歩んでいる限り、この3つキーワードを意識しながら進んでいけば、きっと望む道は拓けてくるのだと思います。今回は、まさにその道を真っ直ぐに進んでいる方が書かれた書籍をご紹介したいと思います。タイトルは『「恐妻家」が成功する22の法則』。著者はリポーターの阿部祐二さんです。阿部さんは『行列のできる法律相談所』(日本テレビ)「第7回気の毒な夫No.1決定戦」でチャンピオンに選出されたこともあり、読者のなかには「恐妻家=気の毒な夫」というイメージを持ってらっしゃる方も少なくないかもしれません。ですが、この本を読めば、阿部さんが単に、妻に操られる気の毒な夫ではないことがおわかりいただけるはずです。阿部さんにとって奥様は「偉大なるメンター(指導者)」であり、奥様との関係は、コーチと選手、師匠と弟子、上司と部下etc…。「恐妻家だからこそ、うまくいく仕事と人生」の成功法則がこの本には数多く詰まっています。まずはその具体例からご紹介しましょう。このエピソード、まさに夫婦のハートウォ-ミングストーリーです。阿部さんの奥様はきっと、どのようなタイミングで、どのような促しをすれば、一番阿部さんの心に響き、奮起させることができるのかを心得ていたのだと思います。これぞ良きメンター(指導者)。さらに、このエピソードを通してわかるのは、阿部さんご自身が、メンターからの叱咤激励を「謙虚」に受け止め、その後、家庭教師センターの事業で必死に「努力」するようなタイプだということです。奥様はその点もしっかりと見抜いていらっしゃいます。実にお見事!その「謙虚さ」と「努力」、これらのキーワードについて、阿部さんはどのようにお考えなのでしょうか?直接うかがいました。「妻は僕に対して、『謙虚でいなさい』とよく言います。僕自身もそうでありたいと思っているのですが、時々、その姿勢を忘れてしまうと、妻から鋭い指摘を受けるのです。その度に、『謙虚であること』を忘れてはいけないなと実感します。また、もともと一度凝り始めると、集中し没頭するタイプなので、端から見れば、僕は相当な努力家に見えるようです。学生時代も、極めようと思ったスポーツはとことん練習に励み、結果を出してきましたし、勉強も没頭しすぎて、親から『お願いだから、体のことも考えて勉強しないでくれ』と言われてしまうほど勉強しました。今も日々の仕事に明け暮れるなか、毎朝のランニングを続けてますし、時間が許せば読書もします。『努力』することが苦にならない性格、体質なのかもしれません。ただ、そんなふうに、ともすると没頭しすぎてバランスを欠いてしまう恐れのある僕のことを、コントロールしてくれているのは、やはり妻なんです」これぞまさに理想的なパートナーシップ! その関係性を裏付けるエピソードはさらに続きます。ご紹介しましょう。この連載でも何度も登場している「チャンス」という言葉。阿部さんも「チャンスの神様の前髪」をつかまえようと、必死になっていた時期があったようです。当時、「チャンスの神様」は阿部さんのところではなく、奥様のところに降りてきた…。果たして今も同じなのでしょうか?うかがいました。「今であれば、『チャンスの神様』が僕のところにも降りてきてくれると思います。ですので、リポーター業と併せて、役者の仕事をさせていただくことになっても、相乗効果というか、何かしら納得のいく役目を果たせるような気がするのです。もちろん、リポーター業は、僕にとって欠かせない仕事ですし、天職だとも感じています。ただ、型にはまることなく、常に自分を追い込み、自分を試し、チャレンジしていきたいという意気込みがあります。その意気込みやパワーを発揮するのと同時に、謙虚さを持ち続けていれば、これからもやりたいと思った仕事でチャンスをもらい、充実した日々を妻(家族)と一緒に送っていけるだろうと感じています」これからもまだまだ続く夫婦の物語。最後にその愛情あふれるシーンをご紹介しましょう。その場面は「あとがき」に記されていました。一時期は大ケガを負い、休養を余儀なくされていた阿部さんですが、今ではすっかりお元気! インタビューに応じてくださった際にも”正のエネルギー”を静かに放っていらっしゃいました。「キング・オブ・リポーター」の道を極めるべく、引き続きのご活躍を心よりお祈りしたいと思います。【拡大画像を含む完全版はこちら】
2012年04月26日経済キャスターの鈴木ともみです。今回は、連載コラム『経済キャスター・鈴木ともみが惚れた珠玉の一冊』春の特別企画・スペシャル鼎談の後編です。日頃、支えて下さっている多くの読者の皆さまに対して、その恩返しができれば、という思いから生まれた企画です。出会った賢人の方々の中でも、特に心に浸透する栄養を与えて下さった方二人をゲストにお迎えし、お話をうかがっています。鼎談のゲストは美容家・メイクアップアーティストの小林照子さんと、公認会計士の平林亮子さんです。お二人の歩んできた時代背景や育った家庭環境は異なりますが、小林さんの著書『人を美しくする魔法』(マキノ出版)、平林さんの著書『競わない生き方』(ワニブックス新書)には、共通する人生成功術、若い社会人の皆さんやビジネスパーソンの方々の心に響くメッセージが数多く詰まっています。戦前に生まれ、戦中・戦後、生きることに必死だった10代を過ごしたのち、高度経済成長期に社会人となり、右肩上がりの仕事人生を歩んでこられた小林さん。一方、安定成長期に生まれ、バブル経済期を含め豊かな時代に幼少期&思春期を過ごすなか、学歴主義の優等生として生きる苦しみから、時には自殺願望をも抱いていたという平林さん。仕事人として、女性として、颯爽と美しく輝く今のお二人の姿には、各々に葛藤のなかで生きた10代、そしてそこで確立した『芯』の「強さ」と「自信」が表れています。10年後、20年後、30年後、40年後、50年後…。あなたが「好きと言える自分」「人として豊か」でいられるためには…。美と人生の達人たちがあなたに贈る珠玉のエールの数々。まさに、あなたの人生を応援するスペシャル鼎談です! 「前編」はこちら→『経済キャスター・鈴木ともみが惚れた、”珠玉”の一冊 第11回 小林照子氏著『人を美しくする魔法』』『経済キャスター・鈴木ともみが惚れた、”珠玉”の一冊 第1回 平林亮子氏著『お金が貯まる5つの習慣』』鈴木 : お二人とも、さまざまな人との出会いに日頃から感謝するという心がけをお持ちです。そうなると、やはり率先して出会いの場を求めにいく努力をされてるのですか?小林 : 一つひとつの出会いを大切にしてるのは確かですが、私はパーティみたいに一気に多くの人と顔を合わせる出会いの場がとても苦手なの。平林 : えー意外です! 小林さんほどの方であれば、数多くの招待状が届くでしょうし、参加する機会も多いのでは?小林 : たくさん招待いただくけれど、必要なご挨拶をさせていただいたら、すぐに会場を出てしまうことが多いんです。だって、必死に名刺交換をしている人を見かけるけど、名刺をもらったというだけで、貴重な関係につながるわけではないし、偉い人の名刺を集めたところで、何の前進にもならないでしょう。平林 : 心強いお言葉!実は私もパーティが苦手なんです。鈴木さんとは、パーティ会場で出会ったのですが、皆さんが名刺交換に励むなか、パーティ苦手組の私たちは端っこで二人だけで食事をしてました(笑)。鈴木 : そうなんです。平林さんもそうだと思いますが、私も職業柄、ありがたいことにパーティに招待していただくことは多いのですが、お世話になってる方々にご挨拶をさせていただいたらすぐに会場を後にします(笑)。会場内に漂う、なんとか一斉に知り合いを増やそうとするフワフワっとした雰囲気が苦手でして、平林さんと出会った日は、私と同じように「苦手ですオーラ」を出してる人を発見でき、ホッとしました(笑)。小林 : それでいいんですよ。そうやって波長の合う人同士でないとビジネスも人間関係もうまくいかないはずですから。平林 : 出会いを増やそうとか、友達を多く持とうとか、そんなふうに数を意識する必要はないのでしょうね。本当に必要で、つながっていたい関係であれば、無理をしなくても続いていくし、同じ想いや目標を持った人同士は互いに引き寄せ合うのだと思います。そして何より身近な人を大切にするところから始まっていきますよね。小林 : パーティのような一過性の出会いの場で、偉い人に自分の名刺を渡したところで、その方は秘書さんにその名刺を手渡して終わりというケースがほとんどですから。もっと身近にいる仕事仲間や、自分の想いや夢を共有し、応援してくれる方々との出会いや関係を大切にするべきなんですよね。鈴木 : 若い頃からそういうことを心がけていると、その先の(仕事)人生に必ず活きてくるのでしょうね。お二人とも「人」と「仕事」と真摯に向き合う姿勢が感じられますが、人が生きていく上で、「人」「仕事」の間に必ず介在するもの、それが「お金」です。お金に対する考え方もお聞かせいただけますか?小林 : 私は「お金を残す」ということに、今も昔も全く興味がないの。今だって自分の通帳に支払い分の預金があるのかどうかふと心配になるくらい(笑)。お金は気持ちよく受け取り、気持ちよく手放して循環させる、というのが私のお金に対する考え方なんです。平林 : 私は公認会計士という職業柄、これまで100人を超える成功者(お金持ち)と出会ってきましたが、皆さん気持ちよくお金を手放す方々ばかりです。お金は持っているだけでは役に立たないですから。ただ、中には、お金を増やすこと自体が楽しみという方もいますが、「お金は便利な道具」であるという共通の理解はありますね。また、お金にたいする過剰な期待もありません。お金持ちの方々は一人では生きていけないということをよく知っていて、お金はそのための大切な道具だと考えているのです。小林 : お金を儲けるというのは、決して悪いことではないのよね。お金を儲けてたくさん税金を払うのも一つの社会貢献になるわけですから。実は、私も55歳の時に「巨万の富を作ります! インドの貧しい人々を救えるくらいの富を得ます!」って宣言したことがあるの。周りの人たちはびっくりしてたわ(笑)。鈴木 : 本の内容やお話をうかがっていると、小林さんは特別なエネルギーを持ったスーパーレディという感じです。全てにおいて、力を尽くすというタイプなのでしょうか?小林 : そんなことはないですよ。家事は力を抜きながらやってきました。平林 : これまた心強い!私も家事は手抜きの兼業主婦なんです(笑)!小林 : 私も家族が「死なないこと」が基準(笑)!というスタイルでずっとやってきました。どうしてもやらなければいけないこと、どうしてもやりたいことがあるなかで、何を外せるかを基準に考えやりくりしてきました。鈴木 : スーパーレディのイメージのある小林さんも平林さんも家事は手抜き!私自身も勇気づけられました(笑)。お二人とも社会における自分の立場というか、使命みたいなものを感じていて、それを実行するためには、主婦業も何もかもに全力投球とはいかないものなのでしょうね。小林 : 私の場合、美容で人を癒し、美しくし、幸せにするために生きてるのだという使命感を持ってこれまで生きてきたと感じます。また学校を開校してからは、若い人を育てる教育という使命も加わりました。さらに京都での展開が始まった今は、日本発のビューティーを世界に伝えるという新たな使命も課せらた気がしています。使命を自覚し、夢を持って生きることが私は大切だと思うのです。喜寿を迎えた今でも、まだこれからの夢があります。自分の使命を自覚し、その実現のために生きていけることは、本当に幸せなことです。平林 : 私は正直なところ、自分の使命というものをはっきりとは自覚できていません。今はその使命を見定めている最中かと…。でも、これまでを振り返ると自分の想いはかなってきてますし、きっとこれからもかなっていくのだろうと思います。そして、こうして小林さんとお話しながら思ったのですが、きっとこの先、自分の使命も見えてくる!そう感じました。鈴木 : それが5年後なのか10年後なのか20年後なのか…。小林 : 私が独立したのは50代半ば。青山ビューティ学校高等部の校長になったのは76歳のとき。そして今年、京都にサロンをオープン、来年には京都で学校を開校。その次は世界進出に向けてニューヨークへ! という計画をしてるのよ。平林さんもこれからよ!鈴木 : そのお言葉を聞いて、平林さん、いかがですか?またこの鼎談の感想は?平林 : 本当にいいお話をうかがうことができました。10代の頃の私は、どうしても自分を好きになれなかったのですが、新たな出会いや凝り固まった価値観を崩して解除していくなかで、自分を好きになることができました。公認会計士試験に合格したことも大きかったですね。努力してそれが資格という形になったことで、自信を持てるようになったのだと思います。私もまだまだこれからですが、私よりも若い世代の人たちにお伝えしたいことがあるとすれば、ぜひ、カッコいい大人と出会ってほしいということです。昨年は大学の講師のお仕事もさせていただきましたが、大学生と色々話していると、彼らが出会う大人は二種類のタイプに分けられるようなのです。一つは「世の中は甘くない!」とお説教をしたがるタイプ、もう一つは「人と出会い、生きてることって素晴らしい!」と教えてくれるタイプ。なるべく後者のタイプを見つけ、見つけたら、「この人は何でこんな考え方をするのだろう?」と、変に警戒したり構えたりすることなく、まずは飛び込んでほしい。若いうちは自分の理解の範囲を超えた人たちともたくさん出会えるはずです。いろいろな栄養を吸収して、大切な人間関係を築いていってほしいと思います。決して偉い人や有名な人と出会うことが人脈ではありませんし、もっと身近なところにいる大切な人たちのことを考えながら過ごしていくと、いつのまにか豊かな人生を送っている自分に気づけるはずです。鈴木 : 小林さんにとって、今回の鼎談はいかがだったでしょうか?小林 : 平林さんとは、とても共鳴するところがあって、私もいい時間を過ごすことができました。子供の頃の平林さんは辛い思いをされたでしょうけれど、本当は、自分が嫌いな人なんて、いないはずなんです。自分が好きだから「本当の自分はこんなんじゃない!」と反発心が芽生え、自分を嫌いだと錯覚してしまうのだと思います。私の友人に音楽評論家の湯川れい子さんがいるのですが、彼女が言うには、人間が一番落ち着く音は「自分の出す音」なのだそうです。自分が呼吸してる音やリズムが、人間にとって一番居心地が良い。誰もが自分の出す音に安心する。だから、自分が嫌いなんてことは本当はあり得ないのです。若い人たちには、まず、自己愛を満たしてほしいと思います。それから、「ラン二ングハイ」という言葉があるけれど、希望の仕事ではなくても、やり続け、極めていくうちに、いつのまにか楽しくて夢中になっているということもあります。目の前にあることに向き合って極めていこうと努力すれば、きっと将来が拓けてきます。努力を続けていれば、「チャンス」は必ずやってくる。但し、その「チャンスの神様」に後髪はなく、前髪しかない。前髪をつかまえることができなければ、タイミングを逃してしまいます。だから「チャンスの神様の前髪」をしっかりとつかんでほしいのです。鈴木 : 私たちもその「チャンスの神様の前髪」をつかみ、チャンスをものにして、ステージアップしていきたいと思います。そしてその先には、ニューヨークで、この鼎談の第二弾!という夢を実現させましょう!平林 : いいですね!なんだか本当に近いうちに実現できそうな気がしてきました。小林 : その気持ちが大切ですよね。そこに向けてまずは近場で「女子会」から始めましょうか。「パーティ脱出三人組」の「女子会」!!一同 : いいですね(笑)。鈴木 : 今回はお忙しい中、ありがとうございました!小林・平林 : ありがとうございました!偉い人との出会いを求める前に、身近にいる人たちとの縁を大切にするお金は互いに助け合う道具。気持ちよく受け取り気持ちよく手放すお金儲けは悪いことではない。社会貢献につながるお金の使い方を家事は手抜きするなど、何を外せるかを考える。スーパーマン、スーパーウーマンを目指す必要はない自分の使命を自覚するチャンスの神様の前髪をつかむ【拡大画像を含む完全版はこちら】
2012年04月19日経済キャスターの鈴木ともみです。連載コラム『経済キャスター・鈴木ともみが惚れた珠玉の一冊』をお読みいただき、ありがとうございます。この連載を始めてから、多くの良書と出合い、その著者の方々へのインタビューを通して、さまざまな刺激をいただき、心が豊かになっていく自分を実感するようになりました。本当に光栄です。そして、いつの日からか、支えて下さっている多くの読者の皆さまに対して、その恩返しができれば、と考えるようにもなりました。そこで、私が出会った著者の方々の中でも、特に心にしみる言葉を与えて下さったお二人をゲストにお迎えし、2回に渡り、春の特別企画として鼎談形式でお送りしたいと思います。鼎談のゲストは美容家・メイクアップアーティストの小林照子さんと公認会計士の平林亮子さんです。お二人の歩んできた時代背景や育った家庭環境はバラバラですが、小林さんの著書『人を美しくする魔法』(マキノ出版)、平林さんの著書『競わない生き方』(ワニブックス新書)には、共通する人生成功術、若い社会人の皆さんやビジネスパーソンの方々の心に響くメッセージが数多く詰まっています。戦前に生まれ、戦中・戦後、生きることに必死だった10代を過ごしたのち、高度経済成長期に社会人となり、右肩上がりの仕事人生を歩んでこられた小林さん。一方、安定成長期に生まれ、バブル経済期を含め豊かな時代に幼少期&思春期を過ごすなか、学歴主義の優等生として生きる苦しみから、時には自殺願望をも抱いていたという平林さん。仕事人として、女性として、颯爽(さっそう)と美しく輝く今のお二人の姿には、各々に葛藤のなかで生きた10代、そしてそこで確立した『芯』の”強さ”と”自信”が表れています。10年後、20年後、30年後、40年後、50年後…。あなたが「好きと言える自分」「人として豊か」でいられるためには…。美と人生の達人たちがあなたに贈る珠玉のエールの数々。皆さんの人生を応援する鼎談となっていると思います。『経済キャスター・鈴木ともみが惚れた、”珠玉”の一冊 第11回 小林照子氏著『人を美しくする魔法』』『経済キャスター・鈴木ともみが惚れた、”珠玉”の一冊 第1回 平林亮子氏著『お金が貯まる5つの習慣』』鈴木 : 小林さん、平林さんどうぞよろしくお願いいたします。お二人は初対面なんですよね。実は、私はお二人とそろってお会いできる日を大変楽しみにしておりました。と言うのも、お二人には数々の共通点があると思っていたからです。表面的には、ご職業にも接点はなく、年齢差も40歳あり、歩んできた時代背景や育ってきた家庭環境も対照的ですので、普通であればなかなかお二人の間に接点や共通点は見つかりにくいはずですが、お二人の著書には共通する人生訓やメッセージが数多く託されています。小林 : それは不思議だし興味深いですね。平林 : 私と小林さんとの間に共通点があるなんて、恐れ多いです!(笑)。鈴木 : その共通点をご紹介する前に、おもしろい発見があったので、ひとつご紹介しましょう。実は、小林さんの人生の年表をたどっていきますと、戦争を境にした日本経済史の年表そのものになるのです。まずはその年表をご覧ください。小林 : まぁおもしろい。(戦争を境に記した)日本経済の歴史は私の人生の歴史とぴったり重なるのね。鈴木 : そうなんです。さらに、その年表にお二人それぞれの人生を重ねてみますと…。平林 : おもしろいしわかりやすいですね。鈴木 : 照らし合わせていくと、お二人が歩んできた時代背景は対照的です。小林さんはまさに戦争に翻弄される子供時代を過ごしてこられました。戦後の貧しい時代、ご両親の失業やご病気、東京から山形への疎開…。壮絶なご経験だと感じます。小林 : 私がいつも基準としているのは、やはり幼少期、思春期(10代)の頃の経験や価値観で築き上げられたものなのです。その頃に、自分の『芯』がつくられました。ですので大人になってからも、常にその『芯』に聞いて行動していますね。鈴木 : 一方、恵まれた時代、恵まれた家庭環境のもと文武両道の優等生だった平林さんも特異な10代を過ごしてきたと言えそうですね。平林 : とにかく家でも学校でも優等生でいなくてはいけないことが辛かったです。東大出身の父から言わせれば「東大は普通に勉強したら受かる大学」なのだそうです。そういう親のもとで、私も高校までは、成績も良く、陸上部では県内でも有数の選手と、まさに絵に描いたような優等生でした。鈴木 : ストレートでお茶の水女子大学に合格。優等生人生まっしぐらですね。平林 : それでも、私は自分で勝手に限界ラインを引いてスネてました。「東大に行けなかった私は落ちこぼれ」。大学に合格したときも、そんな思いを抱きました。もちろん、表面上は明るくさわやかな優等生を演じてましたが、中身は常に自分を肯定できずにスネる毎日。10代の頃は呼吸するのも辛かったんです。小林 : それは本当に辛かったでしょうね。私はメイクアップアーティストとして多くの方々のお顔に触れているからわかるのですが、平林さんの場合は、お顔を含め、とても上品で優美な外見をされてるから周りは完璧を求めてしまうのよね。人は第一印象でその人の性格や内面を決めてしまいがちだから。学校も家族も皆が期待してしまう。そして平林さん本人は、それに応えようとすればするほど、辛く苦しくなってくる…。葛藤の日々だったでしょうね。平林 : わかっていただけて、本当に嬉しいです。10代の頃は、なかなかわかってくださる方とも出会えず、はけ口もみつからずに、とにかく苦しかったです。鈴木 : 平林さんがその葛藤の日々から抜け出せたのはいつですか?平林 : 大学に入ってからです。学歴主義の価値観を壊してくれる出会いに恵まれました。小林 : そうやって、いろいろな人と出会い、自分とは違う考え方や価値観を持ってる人たちと接することは大事よね。時にはぶつかることも必要。エネルギーを持って反対してくる人は、一度共感してくれれば一気に強力な味方になってくれたりするから。平林 : 落ちこぼれて入ったと思っていた大学や専門学校の仲間たちとの新たな出会いのなかで、私はそれまで持っていた価値観にとらわれない生き方を見つけられたように思います。鈴木 : またその後、公認会計士試験に合格、しかも大学在学中に、という事実が改めて自信にもなったでしょうし、さらなる目標へとつながっていくのでしょうね。小林 : 基本はそこですよね。目標や夢を持って前に進むこと。夢に向かっていく気持ちがないと、やはり心は折れやすい。私が、疎開先の山形から東京に出てきた理由は、演劇のメイクアップ・アーティストになりたいという夢を抱いたからでした。ただ、なかなかそう簡単になれる職業ではない。そこで、夢への第一歩としてまずは化粧品会社コーセーに就職したんです。平林 : 私も同じようなことを感じます。私の場合は、「大きく立派な夢を掲げてスタート!」というタイプではないのですが、「一見、夢とは遠いように感じる仕事も一生懸命にやって、夢や目標を手放さなければ、いつしか想いはかなう」ということを実感しています。小林 : そういうものですよね。どんな仕事でも、一つひとつの仕事を一生懸命にすると、また新しい話がやってくる。やればやるほど、どんどん大きな仕事、幅広い仕事ができるようになってきます。すると、また新しい依頼がやってくる。そのうちに自分のしたかった仕事に出会える。私もその連続で今日まで仕事を続けてきたし、さらにこれからももっと大きな夢を実現させたいなと思っています。実はこの春から、京都で新しいサロンを開きますし、来春には青山ビューティ学院の高等部京都校を開校する予定です。日本の美しさの象徴はやはり京都にあると考えていたから、その京都でサロンと学校を築けるのは本当に嬉しいことです。私は常々、世界に向けて日本の美を発信していきたいという夢を持っていて、それを口にしているものだから、それを知った方が、今回の京都のお話を持ってきてくださったの。やっぱり夢や想いは言葉に出すべきなのよね。平林 : 私もそう思います。なるべくブログなどにも自分の夢や想いを書くようにしてるんです。小林 : だから私、ここでも言葉にしておくわ。「近いうちにニューヨークに出店します!」日本の良さを世界中に伝えるために!平林 : すごい!ニューヨークですか?鈴木 : なぜ、ニューヨークなんですか?小林 : ニューヨークを選んだのは、世界に向けたエンタメとビューティの発信地だからなの。もし、数年後にその発信地がニューヨークではなく、他に移っていたらそこを目指すけれど。今はやっぱりニューヨークね!平林 : なんだか本当に実現できそう。私も楽しみになってきました。小林 : 実現したらニューヨークに遊びにきてね(笑)。一同 : いいですね!(笑)。(※鼎談の続きは「後編」に続きます)「様々な人との出会いによって価値観は形成される。ひとつ一つの出会いに感謝する」「どんな仕事でも目の前にある仕事に全力を尽くせば、夢も引き寄せられる」「夢や想いを声や文字にすれば、いつか実現する」【拡大画像を含む完全版はこちら】
2012年04月12日経済キャスターの鈴木ともみです。連載『経済キャスター・鈴木ともみが惚れた、”珠玉”の一冊』では、私が読んで”これは”と思った書籍を、著者の方へのインタビューを交えながら紹介しています。第14回の今回は、藤原敬之さんの『日本人はなぜ株で損するのか?~5000億円ファンド・マネージャーの京大講義~』(文春新書)を紹介します。「話を聞いているだけで鳥肌がたった」(京都大学経済学部3年)、「『情報処理』ということの大切さが分かりました」(京都大学大学院2年)、「ものすごい量の知識、見識、分析力に圧倒された」(京都大学経済学部3年)、「教科書にのっていない、非常に価値ある時間」(京都大学 経済学部3年)、「『このような考え方もあったのか』と思うことの連続」(京都大学3年)、「実体がなく実感の薄い株というものに対して『生命』を吹き込むような思考に感激」(京都大学 大学院1年)。上記は2011年5月に京都大学経済学部で開催された公開講座に対する受講生(1年生から院生まで)たちの感想です。講師はファンド・マネージャーの藤原敬之さん。講義テーマは「株式運用。アクティブ・ファンドマネージャーとは何か」。今回ご紹介する『日本人はなぜ株で損するのか?~5000億円ファンドマネージャーの京大講義~』は、その講義内容を余すことなく再現した書籍になっています。これからの日本を担うであろう若き英知が集まる京都大学で、その内容に、多くの学生が刺激を受け、心を震わせ、感動したと言う講義です。いったいどんな講師の方がどのような講義をしたのでしょうか?まずは、その答えの本質が垣間見える最終章「第六章「日本人とは何か?」最後に伝えるべきこと」からご紹介しましょう。上記のメッセージは、京大生たちの心に深く強く響いています。きっと、社会に出る前の心構えと覚悟を認識したのだと思います。この本を読んだ私自身も実感し納得し痛感しました。直接、自分の心に響かせたいという思いもあり、このメッセージの意味について、藤原さんご本人にうかがいました。「このメッセージに託した不条理への対処の仕方については、学生さんたちよりも(若い)社会人の皆さんの方が理解しやすいかもしれません。ビジネス・組織の世界においては、必ずと言って良いほど、不条理が存在する。ちょうど今、まさにその不条理を目の当たりにしているという方もいると思います。上司だから同僚だから分かってくれる…というのは甘えで、そういう考え方は捨てたほうが良い。ある意味それは自分を捨てることでもあります。常に相手をどう満足させるかを考える。人間は常に自分のことばかり考えていますから、それくらいの意識を持ってちょうどよいのです。他者を認識するうちに、社会のなかでの自分の進み方や生き方も次第に見えてきます。まずは、(相手を、物事を、社会を、世界を)「知ろう」という気持ちを持って「閉じる」ことなく「開く」ことを意識して毎日を過ごしてもらいたいと思います」実際にお話を伺うと、重みあるメッセージの一つひとつがじわじわと心の奥底に浸透してきます。これほどまでに人の心を動かすことのできる言葉と知識が詰まった藤原さんは、カリスマ・ファンド・マネージャーとして、いったいどのような足跡を歩み、どのようなことを体得してこられたのでしょうか?その点については、第一章「ファンド・マネージャーとは何か?」を読めばわかります。このように、藤原さんは日本を代表する成功者として人生を歩んでこられました。外資系金融機関のMDになり、多くの外国人を部下に従え、数字の上でもしっかりと実績を残してきました。言わば、世間が羨望する「グローバルエリート」として生きてきたわけです。真の勝ち組・成功者になれた理由はどこにあったのでしょうか?実際に藤原さんに伺いました。「実は、私は就職する時もグローバルに活躍したいとか、金融の世界で成功しようなどとは全く思っていませんでした。一時は映画監督やテレビのディレクターを夢見たこともあり、できれば早く帰れて趣味の映画を観る時間が確保でき、楽で給料の良い働き先はないかと探した結果、農林中金にたどり着いたわけです。でも、現実は悲惨な残業の連続でした(笑)。ただ、農中で働くなかで、経済のファンダメンタルズをしっかり勉強する機会に恵まれましたし、本物の天才と言える上司との出会いもありました。『プロの情報のやり取りとは互いの切り口の交換なのだ』という極めて重要なことを彼から教わり、その言葉を実践することで私は四半世紀も相場の世界で生き抜くことができました。」「自分で考え、自分のオリジナルな意見を持つ。それがプロの務めであるということを若い時代に習得できたことは幸運でした。確かにファンド・マネージャーは天職だったと思いますが、私の場合、成功者になりたいという野心や計画から始まったわけではなく、多くの価値ある出会いのなかで、目の前にある命題を自分のオリジナルな思考でクリアーしてきた先に、今のような結果がついてきた、という感じです。ですので、実は私自身が、この本の第五章で紹介しているような典型的な日本人と言えるのかもしれません。2年前にファンド・マネージャーを引退して、今年から作家で生きていこうとしているのも計画などではなく、幸運と出会いに恵まれたからだと思っています。」意外や意外…。「世界を舞台に名を馳せたファンド・マネージャー」というと、もっと『俺ってすごい、俺って一番、俺って最高!』的な”オレ祭り”体質の方かと思っていたのですが、お会いした瞬間からとても謙虚でいらっしゃいました。その自らを「典型的な日本人である」と認める謙虚さがあったからこそ、同書の本題でもある「日本人はなぜ投資が下手か?」の理由を探究し続け、その意味と対策を生みだすことができたのでしょう。その結果、藤原流のオリジナル思考が確立し、カリスマ・ファンド・マネージャーになれたのだと思います。ではその同書の本題とも言える第五章ついてご紹介しましょう。とても興味深い内容です。なるほど。投資とは「将来」を前提とした長期的な行動であり、その鍵となるのは「情報の収集」である。わかっているつもりでも、なかなか実践できないのが、この「情報の収集と整理」です。この点については第三章「情報をどう処理すべきか?」にて「情報整理のコツは細分化と集中化」「日経の切り抜きを149の項目に分ける」「SBL(スクエア・ブロック・ルーズリーフ)への書き写し(9マスノ―トを使った情報整理術)」「情報を『次元認識』した上で、『三元次情報』を創る」など、そのノウハウがわかりやすく解説されています。第三章については、前後にある第二章「株式運用の基本とは?そして独自の運用とは?」と第四章「株価とは何か?」とを照らし合わせながら、しっかり理解しつつ読み込んでいくことをおすすめします。特に第四章「株価とは何か?」の締めの部分「株価に適正価格は存在しない」には、投資家のみならず、多くのビジネスパーソンにとって、ビジネスの判断基準を見誤らずに済む実践的メソッドが記されています。このように、人生の多くのシーンで使えるメソッドが数多く詰まった珠玉の一冊。結果が全ての世界で生きてきた藤原さんが語る、その過程で得た手法や処方術だからこそ、言葉の一つひとつが説得力を持って心に飛び込んでくるのだと思います。一冊読破することで、(1)「世界を舞台に活躍したファンド・マネージャーの成功物語」、(2)「個人投資家にも役立つ実践的投資術」、(3)「明日を担う若者たちへのメッセージ集」と、少なくとも三冊分の良書を読み終えた気分、充実感を味わうことができます!【拡大画像を含む完全版はこちら】
2012年03月22日NHKの人気紀行バラエティ「世界びっくり旅行社」の新“オーナー”に江口洋介が就任。3月27日(火)の新装開店スぺシャルの放送を控えた3月20日(火・祝)、共演のオードリー(若林正恭&春日俊彰)と黒崎めぐみアナウンサーと共に都内スタジオで取材に応じ、司会初挑戦の意気込みを語った。故・児玉清がオーナーを務め、架空の旅行社を舞台にガイドブックに載っていない驚きの海外旅行プランを紹介する番組として人気を博した「世界びっくり旅行社」が江口さんを新オーナーに迎えて復活。新装記念として初回はオーナーの江口さん自らイタリアのシチリア島へ赴いたほか、“新入社員”である春日さんはオーナーの命令を受けドイツへ。実体験を交えて旅の面白さを伝えていく。江口さんは「旅は好きで、仕事としてもこれまでいろんなところに行かせてもらったので、役者とは別にドキュメンタリーならではの楽しさを発表できるときが来たなという気持ちです」と気合い十分。児玉さんの後を受けての司会初挑戦となるが「児玉さんとは違った僕なりのカラーを出せたら。体験しながらその面白さをトークで伝え、『行ってみたい』と思ってもらえたら嬉しい」と語った。春日さんは、江口さんの指令を受けて「世界の面白いホテルを紹介する」というコンセプトで一風変わった宿泊施設を訪問。詳細は明らかにしなかったものの、過酷な体験(?)もあったようで「私の旅と比べると、ただただ江口さんの旅がうらやましいです」とコメント。今回は若林さんが同行しない、初のピンでの海外ロケとなった。海外スタッフとの撮影については「不安はございませんでした」とふり返ったが「唯一、不安だったのが行きも帰りも一人でマネージャーさえも同行しなかったこと。向こうのスタッフに入国審査の前で見送られた」と一人旅の心細さを明かした。これまでの旅の思い出や失敗談の話題になると、江口オーナーは「言えないことが多いです。結構、いろいろありますがNHKだから…」と苦笑い。若林さんは「アメリカからの帰りの飛行機が着陸した瞬間、僕の席だけ酸素マスクが降りてきた。CAの人も『初めて見ました』と言ってました」と貴重な(?)体験を明かした。さらに若林さんは、NHKでのレギュラー番組出演に「『爆笑オンエアバトル』で7連敗した僕らがこんな素晴らしい番組に…」と感慨深げに語り、スタジオは笑いに包まれた。「世界びっくり旅行社~新装開店スペシャル~」はNHKにて3月27日(火)19:30より放送。
2012年03月20日経済キャスターの鈴木ともみです。連載『経済キャスター・鈴木ともみが惚れた、”珠玉”の一冊』では、私が読んで”これは”と思った書籍を、著者の方へのインタビューを交えながら紹介しています。第13回の今回は、大寄昭生さんの『「保険」は比べて買いなさい!』(角川マガジンズ)を紹介します。先日、保険のセールスレディの方々にお会いした際、こんなことを言っていただきました。「いつも『東京マーケットワイド』を見てますよ。株式の動きを勉強してます!」と。実は、これまで個人投資家や、証券・銀行関係者の方々からそのようなお声がけをいただくことはありましたが、保険業界の方からは初めてのことでした。それもそのはず、今や「資産運用型の生命保険」も登場し、保険業界の方々もマーケット情報を得て、投資知識を高める時代。マーケット情報番組をチェックしているのは何の不思議もありません。逆に、マーケットに関わる人たちこそ、保険の世界についてほとんど何も知らない場合が多いのではと感じます。「保険」について無関心のままで、保険に入っていても、最初に出会ったセールスの方に全てお任せという状態。実はそうした状況は、契約者側にとっては、とても不利なことなのではないでしょうか? その答えが今回ご紹介する『「保険」は比べて買いなさい!』で解説されています。ただ「保険を比べる」と言っても、素人の私たちには困難な技です。そこで、著者の大寄昭生さんは、「保険を比べて買える場所=保険ショップ」の展開を広めているのだそうです。大寄さんに具体的に伺いました。「私は大学を卒業後、アパレル業界に入りました。その後、友人からの誘いで外資系保険会社での営業を経験し、専属代理店での営業、コンサルティング会社でJA共済や大手生命保険・損害保険会社へのコンサルティングや営業指導などを行い、現在は、複数の保険会社の商品を取り扱う「保険ショップ」のフランチャイズチェーン本部を運営しています。20年近く保険業界を見てきましたが、他の業界と比べて、まだまだ閉鎖的であるというのが実情です。そもそも保険は入るものではなく、「買う」ものです。例えば、私たちは電化製品を家電量販店で買うわけですが、様々なメーカーの製品の中から、どれが一番安くて優れているのか、自分たちで選択することができます。ですので、電化製品でも食料品でも、メーカーは消費者に選ばれるために、コスト削減など必死の努力を重ねてきています」「しかし、保険の場合、一社の保険会社の営業担当者が勧めてきた商品を言われるがままに、入ってしまうケースがほとんど…。それは「保険」に入るという、まるでスポーツジムにでも入会するかのような気軽な気持ちがあるからです。保険料の支払い合計額は、人生最大の買い物と言われる「マイホーム」に次ぐ大きな買い物です。それなのに、比べることなく、トータルの保険料も計算せずに安易に保険に加入してしまうことに抵抗を感じないのは、やはり問題だと思います。「保険ショップ」はその問題を解決し、皆さんが「保険を比べて選ぶ」そのサポートをしていく場所なのです」実は、私自身、ファィナンシャルプランナーでありながら、保険に関する知識はほとんどありません。相談料が無料であるという「保険ショップ」の存在についても、初めて知りました。薬を選ぶ際に、薬剤師が必要なように、専門知識が必要な「保険」についても専門的なコンサルタントの力を借りたいもの…。それを実現してくれる「保険ショップ」については、第3章に詳しく紹介されています。私もぜひ一度「保険ショップ」に足を運んでみようと思います!このように著者である大寄さんは、売り手市場であった「保険業界」を、まさに買い手市場へと導く先駆者的な存在です。同書では、その大寄さんが私たちにわかりやすい保険の知識をまとめてくれています。上記の「第1章保険の種類はたったの3つ」、それに続く「第2章保険を「比べる」力をつける」を読めば、保険に関する基本的な知識を得ることができます。また、個人的に関心を持ったのが「第2章 保険を「比べる」力をつける~商品別比べるポイント【学資保険編】」です。20代~40代を中心とする現役世代にとっては、役立つ知識と言えそうです。やはり、「保険」は細かく比べてみないとわからないものだなぁと、つくづく感じます。その「比べる力」の効力について、最後に大寄さんに伺いました。「インターネットが普及し、保険会社の競争が激しくなったことで、だんだんと自分に合った保険を選べる時代になってきました。皆さんが徐々に「比べる力」を身につけてきた結果と言えます。ただ、まだまだ「保険」業界については、商品も複雑でよくわからないし、セールス営業がしつこいなど、ネガティブなイメージが払拭されていません。これでは、業界が淘汰されることなく、変わることもないでしょう。現在、日本では、民間の生命保険、損害保険、各種共済などへ、年間約50兆円もの保険料が支払われています。日本の税収は約42兆円ですから、それよりも大きな金額を私たちは保険市場に投入しているのです。しかも自分の意思で支払っている。もし誰もが「比べる力」をつけ、自分の意思で保険商品を選ぶようになれば、保険料を5%は引き下げることができるでしょう。それは、2兆円以上ものお金を別の消費に回せるということです。そう考えると、「比べる力」は日本経済に大きな影響を及ぼす原動力になり得るわけです」なるほど。私たち一人ひとりの「比べてみよう!」という意識改革が、巡り巡って日本経済の底上げにもつながっていくのかもしれません。同書を読み終え、そのようなところまで思いを馳せることができました。まさに、自身の人生、ライフプランの計画&見直しをする上で、欠かすことのできない必須の一冊!です。【拡大画像を含む完全版はこちら】
2012年03月08日経済キャスターの鈴木ともみです。連載『経済キャスター・鈴木ともみが惚れた、”珠玉”の一冊』では、私が読んで”これは”と思った書籍を、著者の方へのインタビューを交えながら紹介しています。第12回の今回は、広木隆さんの『ストラテジストにさよならを~21世紀の株式投資論』(ゲーテビジネス新書)を紹介します。この連載もスタートから半年が過ぎました。多くの方々にお読みいただき、また感想なども届くようになり、嬉しい限りです。私自身もこの連載のおかげで、本屋さんへ通う回数も増え、怠けがちな性分に喝を入れてもらっています。その本屋さんで感じるのは、マネーや投資をテーマにした本棚にズラリと並んだタイトルが、ほぼ似たりよったりであるということです。そもそも株式やFXなど投資の世界で、常に勝ち続けることができる確実なハウツーなどが存在するものなのか? これは、私が日々、東京証券取引所から株式マーケットの実況中継を担当しているなかで、抱き続けてる疑問でもあります。そうしたなか、その答えのヒントをくれ、また他とは明らかに異なる斬新なタイトルの本を見つけました。それが今回ご紹介する『ストラテジストにさよならを』です。著者はマネックス証券 チーフ・ストラジストの広木隆さん。ストラテジストの方が「ストラテジストにさよならしなさい」とはどういうことなのでしょうか? まずはそこから探っていきましょう。負けない投資手法の提唱。ストラテジストである著者の広木さんはまず、「個人投資家がなぜこれまで儲からなかったのか」について第I部の第1章「20年続く下り坂の経済と株式相場」、第2章「「長期投資」の誤解」第3章「個人投資家が陥りがちな「塩づけ」の罠」において、わかりやすい具体例を用いながら解説しています。上記で引用されているゲーリー・ベルスキー氏とトーマス・ギロヴィッチ氏の共著「賢いはずのあなたが、なぜお金で失敗するのか」を始め、同書にはチャールズ・エリス氏著「敗者のゲーム」、ナシーム・ニコラス・タレブ氏著「ブラックスワン」「まぐれ」、バートン・マルキール氏著「ウォール街のランダム・ウォーク」など、数多くの海外の著者による文献の一節が紹介されています。その点も理解を深める上でのスパイスとなり、効いてきます。(ちなみに、個人投資家の皆さんから好評を得ているマネックス証券『Strategy Report』でも、広木さんは海外の文献から特筆すべきメッセージを紹介しています。株式相場と真剣に向き合いたいと考える投資家の皆さんにとっては、要チェック! のレポートです)。さらに、広木さんは「個人投資家がなぜこれまで儲からなかったのか」その理由の一つに「プロとの圧倒的な情報格差」を挙げています。同書のタイトル『ストラテジストにさよならを』と直結する第4章「頼るものがない」を読み終えた私は、胸のすくような感覚を覚えました。ご紹介しましょう。この歯に衣着せぬシャープな記述については、その真意を直接伺わないわけにいきません。広木さんに伺いました。「この仕事をしていると、個人投資家の方から批判的なコメントを寄せられたりもします。例えば「自分は一流のプロの言うことは聞く」ということを言ってくる方もいました。それで、その一流のプロとは例えば誰か? と伺えば、なんてことはない、朝の経済情報番組などに出演している方々の名前を挙げるのです。確かに彼らは視聴者・投資家の皆さんにとっては、有名人かもしれません。でも、『有名人=一流のプロ』かと言えば、そうではない。個人投資家の方から、スタッツ・インベストメントやエピック・パートナーズ、ホライゾン・アセット・インターナショナルのような、日本で実際に稼ぎ続けているヘッジファンドや、それらのファンドを運用するマネジャーの名前が出てくることはありません。なぜなら、彼らは金融危機後の今もしっかりとしたパフォーマンスを見せているプロ中のプロですが、メディアに登場することはありませんから」なるほど。目から鱗(うろこ)…。現実を直視した見解です。では、専門家とされるストラテジストやエコノミストの意見を話半分に聞くというのであれば、個人投資家の皆さんは何を頼りに投資を行えば良いのでしょうか?その点についても伺いました。「どんなものでも基本が大切です。それは投資も同じ。まずは投資の基礎、投資理論を学ぶこと。難しい理論や学術的なことではなく、基本的な理論を表層的になぞるのではなく、徹底的に、深く、根本的に理解できるまで学ぶことが大切です。こうした『サイエンス』の部分を押さえた上で、相場観やチャートなど『アート』の部分を押さえてください。私自身は、チャート分析のみでは、将来の株価を予測できないと考えています。チャートは過去の推移を検証し、他の市場や銘柄と比較するためのもので、その比較のなかで、現在の位置を確認、把握するために使います。どれだけ分析を重ねても、結局、相場は運や偶然に左右されるところが大きいのも事実です。ただ、この運や偶然は、不思議と日頃から投資理論を把握し、テクニカル分析も怠らない、そういった基礎固めを着実にしている投資家の元に降りてくるものなのです」上記の話は、詳しく同書の「第II部どうすれば儲かるのか?」第6章「投資の理論を知る」第7章「(ROE・PER・PBR)株式投資の評価尺度を学ぶ」、第8章「大局観を持つ」、第9章「正しい長期投資は『売る』ことである、第10章「分散投資とリスク・コントロール」で詳しく解説されていますので、ぜひ何度も読み返し頭に入れておくことをおすすめします。同書を読み終え、広木さんのお話を伺ううちに医師である知人の、ある言葉を思い出しました。メディアに関わる一人として、深く反省するに至った言葉でした。プロ・専門家が必要とされる世界では、どの分野においても、フェイクが存在するのかもしれません。気持ちや行動を揺さぶられずに生きるためにも、私たち一人ひとりがその本質をとらえ、本物を見極める目利きになることが不可欠な時代なのでしょう。投資術とともに、そんな人生の教訓を学ぶこともできる一冊です!【拡大画像を含む完全版はこちら】
2012年02月23日経済キャスターの鈴木ともみです。連載『経済キャスター・鈴木ともみが惚れた、”珠玉”の一冊』では、私が読んで”これは”と思った書籍を、著者の方へのインタビューを交えながら紹介しています。第11回の今回は、小林照子さんの『人を美しくする魔法』(マキノ出版)を紹介します。読者の皆さまもご存知の通り、この連載は、「私が惚れた!」をテーマに良書をご紹介するコラムです。しかしながら、この「惚れた!」は、なかなかわきおこる感情ではありません。昔から私が”惚れる”基準は、「答えをくれた!」ということに在りました。男女を問わず「答えをくれる人に”惚れてしまう”」体質はずっと変わっておらず、さらに正確に言えば、「答えのヒントをくれる人」に惚れてしまうのです。なぜなら、いつ、どこで、どんなときでも、答えを出すのは自分自身であるからです。今回ご紹介する『人を美しくする魔法』は、まさに私がほしかった答えのヒントを与えてくれる一冊となりました。著者の小林照子さんと言えば、女性の方であれば「あのTV通販・ショップチャンネルで”カリスマゲスト”として登場する、上品で賢明で若々しい美容家の先生」というイメージを抱くかもしれません。一方、男性であれば「あの大手化粧品会社コーセーで初の女性取締役になった人」とか、小売・サービス業界で働いてる方であれば、「確か1時間番組で7,200万円を売り上げた人」といったイメージでしょうか。それらは確かに、どれも小林照子さんそのものです。ですが、今回の『人を美しくする魔法』を読み進めると、被写体として存在する日頃の印象とは程遠い、小林さんの本質が見えてきます。「なぜあんなにも、たおやかでしなやか、それでいて凛とした美しさを保つことができるのだろう?」。普段から思っていた疑問の答えは、小林さんの特別で貴重な経験が詰まった、人生を刻んだ同書の中にありました。まずは、34のエピソードのうち、生い立ちが記された(1)と(2)についてご紹介しましょう。小林さんは、上記の章で、こんなメッセージも託しています。また、3人の母、2人の父、合計5人の個性的で価値観の異なる親のもとで育った環境から次の2つの土台が形成されたのだそうです。一つは、「人と比べる生き方をしない」、二つ目は「自分の信念に従って生きる」。小林さんは、「信じるものは、自分の中にある」とし、おなかの中に、信じるものが『芯』のようにピンッと立っているのだそうです。その『芯』は10代後半ですでに固まっていたといいます。複雑で特別な幼少時代、その当時の経験が、小林さんの一生の礎(いしずえ)となり、その後の人生に大きな影響を及ぼしてきたのです。ただ、今の時代、小林さんのような厳しい体験をする人は、少ないかもしれません。では、乏しくも安寧な人生経験のもとに育ってきた自分たちは、夢を実現し人生を楽しむための基礎を、どうやって固めていけばいいのでしょうか? その答えは17番目のエピソードに記されていました。とても胸に響く文章でした。教師でも反面教師でも、出会う人すべてが教師である! そう思えば、毎日が学びの場になります。さらに、同書には、反面教師にまつわるエピソードも記されています。あまりに衝撃的なエピソードです。その後、小林さんは盗まれた出張旅費を2年かけてお給料のなかから天引きされ、会社に返済したそうです。普通であればこのAさんに対して、恨み、少なくとも嫌悪感は抱くはずです。しかし、小林さんはAさんに対してさえも、感謝の気持ちがあると言います。その理由とは? 小林さんに伺いました。「Aさんとの一件は、私に人生のテーマを投げかけてくれました。当時、お金がなくなった後、私は口外せず、Aさんにも伝えていませんでした。ですが、Aさんの出張の報告書には、私について「あの子はぼんやりしているから心配だ」という不自然な表記があったのです。その後、私は教育部門に異動し、何の因果かAさんを含めたスタッフに研修する立場になりました。Aさんとも何度か顔を合わせることになりましたが、もちろん、こちらもあちらも、あの時の話は一切しません。そうした中、何年かして、Aさんが退職することになりました」「その時、彼女は私の手を強く握って、涙ぐみながら「さようなら」と言ったのです。あの時のAさんの悲しそうな表情は今でもよく覚えています。ずっと後ろめたい気持ちを抱えていたのでしょう。その時にやはり、彼女が犯人だったのだと確信しました。ただ、何十年も封印してきたこのAさんとのエピソードは、『自分がどんな人間として生きていくのか』というテーマを突きつけてくれたのです。反面教師との出会い、2年間かけて返済した出張旅費も、自分の人生のテーマと向き合うための授業料だったと思えば、決して無駄ではありません。むしろ、感謝の気持ちにつながるものなのです」すごい。人はここまで強く優しくなれるものなのでしょうか? 私はその答えを小林さんに直接求めました。「人は、ただダラダラと年をとれば、いい人になれるわけではありませんよね。良心に従えるかどうか。自分で決めて自分で責任を取れるかどうか。その積み重ねがこれからの人生を大きく変えていきます。自分の『芯』は必ず自分のことを見ているものです」「さらに成長してレベルを上げていくためには、ささやかなことでも良いので、「小さな夢」を実現させていくことが大切です。いきなり大きな野望を抱いても、それは遠すぎてなかなか達成するのは難しい。でも、目の前の小さな目標や夢をひとつひとつ達成していけば、『実現癖』というものが自然についてくるものなのです。成功体験が増えれば、いつのまにか大きな夢の実現も近づいてきます。若い方々には、ぜひともその『実現癖』を意識して過ごしてもらいたいと思います」『実現癖』。目標や夢に向かう上で、とても身近でわかりやすいコツだと思います。さらに、巻末には小林さんが実践してきた「夢をかなえるコツ」「人生を楽しむためのコツ」が『人を美しくする魔法34』として標語形式でまとめられています。ぜひ何度も読み返していただきたいフレーズ集です。まるで長編の大河ドラマを観たかのような充足感と爽快感を味わうことのできる小林照子さんの人生物語。老若男女問わず、多くの方々の心に響くであろうメッセージが詰まった珠玉の一冊です!【拡大画像を含む完全版はこちら】
2012年02月09日