今回インタビューを受けてくださったのは、結婚5年目の江藤さんご夫妻です。お二人の出会いは職場。現在は奥様の美帆さんが立ち上げた会社を夫の慎治さんがサポートしており、休日も一緒に出掛けることが多いのだそう。多くの時間を共に過ごすお二人は、どんなふうにお互いと向き合っているのでしょうか。江藤慎治さん・美帆さん<職業>スナップマート株式会社代表取締役CEO(美帆さん)スナップマート株式会社リードエンジニア(慎治さん)<家族構成>夫婦二人暮らし※2011年に結婚<勤務曜日と帰宅時間>平日勤務が中心で、土日に働くこともある。一緒に仕事を終えて一緒に帰る毎日。結婚について思うこと‐今は、結婚に対する価値観が二極化していて、結婚前に試行錯誤をしておいて離婚しないつもりで結婚する(したい)と考える人と、結婚をお付き合いと似た感覚で捉えていて、結婚後の試行錯誤や、合わなかったらパートナーを変えることはやむを得ないと考える人がいるように感じています。個人の自由なので正解はありませんが、お二人はどんなふうにお考えですか?美帆さん(※以下、敬称略):他人にオススメできるかはさておきとして、私は圧倒的に後者です。私はこれまでに2回、夫は1回結婚を経験しているのですが、結婚にかぎらず、1回のチャレンジでベストの結果を出すことって運の要素もあるし、なかなか難しいと思うんですよ。だから、仕事でも私生活でも、なるべく早く行動して、早く失敗して、トライアンドエラーを繰り返して成功に近づいていくほうが満足のいく結果が得られるような気がしていて。相手もいることですし、子どももいたらそんなにカジュアルに離婚はできないですが、「絶対1回で成功させないと」と意気込むこともないんじゃないかな?とは思います。‐お二人にとって、「結婚」とはなんでしょうか?美帆:結婚は、してもしなくても良いものなのかもしれませんが、ちょっと夢のない話をすると、「相互扶助」ですかね。「互助会」みたいな(笑)。失業したり、体調を崩したり、人生にピンチがおとずれたときに夫婦だと助け合えますよね。助けてもらいたいのもありますし、助けてあげたいとも思いますし。とくに「助けてあげたい」って思えるかが大事なのかも。慎治さん(以下、敬称略):僕も同じです。あとは、やっぱり一人だと寂しいですし、味気ないですよね。一人より二人で生きていくほうが良いなと思いました。そう思ったきっかけは3.11だったかもしれません。この人なら「無理しなくても良い」と思えた‐結婚の決め手になったことはなんでしたか?美帆:私はもう一生結婚はしないだろうなぁと思っていたときに彼と出会ったんです。自分がこの人と結婚したいと思ったというよりは、なんかいろんな人に騙されたりしてたんで、放っておけないなと思って(笑)。‐お付き合いしていた頃には、結婚したらどんな生活を送りたいと考えていましたか?慎治:自然体でいられて、無理をしないで過ごせたら良いなと思っていました。美帆:私も同じです。過去の経験から、本来の姿を変えてまで結婚生活を維持していくのは絶対無理だとわかっていたので。‐どんな人がパートナーだったら自然体でいられますか?美帆:相手を変えようとしない人かな?慎治:感覚的に自然体でいられると思える人ですかね。僕たちは、「そろそろ掃除をしないとまずい」と感じる我慢の限界点や、生活面で気になる部分が近いんです。お互いにあまり細かいタイプではないので、掃除も気づいたほうがやります。こういった感覚的な部分は、付き合っている段階でなんとなくわかっていたので、お付き合い後1ヶ月で結婚しました。‐ちょうど先日、知人からこんな相談を受けたんです。その子は彼と同棲しているんですが、彼女は几帳面で家の中をキレイに使うタイプなんですね。それに対して彼は大らかで、例えば、洗顔の泡立て網に泡がついたまま流さないんだそうです。当初は彼に言えば直してくれていたそうですが、最近はもう直してくれないらしくて。生活面でのそういった小さい出来事の積み重ねがストレスになっていて、これからずっと一緒にいられるのかが不安なんだそうです。私は彼女にアドバイスをするわけでもなく、ただ話を聞いていたんですが、どう思われますか?慎治:その、「直さない状態」がきっと彼の素ですよね。だから、彼は変わらないと思いますし、結婚したらもっと使いかたが大らかになる可能性があります。そんな彼を受け入れられるかどうかが鍵なんじゃないでしょうか。「結婚したら変わってくれるかも」とは間違っても思わないことです。‐なるほど。知人に伝えます(笑)。ちなみに、こういう場合はパートナーに指摘しますか?慎治・美帆:しないです。気になったら、何も言わないで掃除しますね。言って直るものなら、これまでの人生の中でとっくに直ってるでしょうし。‐「相手を変えようとしない」っていう先ほどのお話とつながるところですね。これ以外に、向き合い方やコミュニケーションについて何か大事にしていることはありますか?美帆:うーん、特にないです。夫と一緒にいると、実家の家族よりも気を遣わなくて良いので、一人で生活しているのと何も変わらないんです。新婚の時と同じ楽しい気持ちが今も続いている‐結婚前に相手に対して好きだと感じていた部分は、増えたり減ったり変わったりしましたか?慎治:変わらないですね。妻は、ズバズバホントのことを言ってしまうところが変わっていないです。美帆:同じく、変わらないですね。夫は、正直なところが変わっていないです。‐お互いの同じような部分が好きなんですね。ケンカはします?美帆:結婚して5年、気持ち悪いくらいケンカしたことがなかったんですが、一緒に仕事をするようになってからは、しょっちゅう衝突するようになりました。私はビジネスサイドの人間で、彼はエンジニアなので、仕事のやり方にお互いダメ出しすることが多いんですけども。プライベート面でのケンカは今もしないですね。‐ケンカの仲直りはどうやってしていますか?美帆:その場で言いたいことを言って終わりです。もともと、ケンカというより仕事上の意見交換なので、日をまたいで持ち越すようなことはないです。‐これまでに離婚の危機はなさそうですね。慎治・美帆:ないですね。あったら別れてます(笑)。‐日々、どんな時に相手から「ありがとう」と言われますか? 美帆:色々なときに言うんですが、寝る前に、「生きていてくれてありがとう」って言っています。自分が年とったせいかもしれませんが、ただ元気で、毎日同じようにそこにいてくれるだけでありがたいなと。バツあり同士ということもあって、お互いに多くを望んでいないんだと思います。最初の結婚のときは、「結婚とはこういうもの」という思い込みが強すぎたり、「男の人はこうあるべき」という自分なりの理想があって、勝手に期待して勝手にがっかりしてたんですけど…。あと、感謝の気持ちはちゃんと口に出して言わないと伝わらないんだなっていう反省もあって、いまはなるべく口に出して言うようにしています。‐「何かをしてくれてありがとう」ではなくて、存在に感謝できるって素敵ですね! では、「この人と結婚して良かった」と思ったエピソードを教えてください。慎治・美帆:毎日思います。何か特別なエピソードがあるわけではないんですが、今回は、新婚の時と同じような楽しい日々が今も続いているんです。美帆:若い頃はずっと「良い人と結婚したら幸せになれる」と思っていましたが、前の夫はホントに人間的にも素晴らしい人だったのにうまくいかなくて、「なんでだろう?」「自分は結婚に向いてないんだな」と思っていました。でも夫と結婚して、相手が優れた人かどうかって自分の幸せとはあんまり関係ないんだなって気づきました。こんなふうにありのままでいられて、お互いストレスがたまらない相手と出会えたのは奇跡的なことだと思うので、そのことに一番幸せを感じます。慎治:お互いに飾っていないので、結婚してから「知らなかったこと」が出てくることがないんですよね。その安心感というか、信頼感は大きいですね。これからも何も変わらずに‐これから磨きたいところは何かありますか?慎治:すみません、特にないです。美帆:私は、もっと奥さんっぽいことがしたいです(笑)。健康に気を遣った料理を作るとか。感謝しているわりには行動が伴っていないので、そこは反省しています。‐これからの夫婦生活についての希望・野望は何かありますか?慎治・美帆:このままが続いたら良いですね。何も変わらないのが幸せかな。「一緒に死ねたら良いね。一人だけ残ってもね。」って話をよくしています。ライター所感:終始、「自然体」「気を遣っていない」といったコメントが多く、穏やかな雰囲気に包まれていたお二人。「人に細かな指摘をしない」「期待しない」など、そのスタンスにとても共感する部分が多く、自分の恋愛と重ねながらお話を伺ってきました。仕事でも一緒、家でも一緒、休日も一緒、それでも、毎日「結婚してよかった」と思い、「この人と一緒に死ねたらいいな」と思う。なかなかない、素敵な出会いですよね。これからも末永く、お幸せに!…なんだか新婚さんへのコメントみたいになってしまうのは、5年が経っている今もお二人が新婚さんみたいに仲良しだからでしょうか。ライター:藤宮 ありさ
2016年10月31日キラとLを超える――。10年前、映画『デスノート』2部作の盛り上がりを体感した者なら、それがほぼ“無理ゲー”に近い挑戦であることが分かるはずだ。東出昌大、池松壮亮、菅田将暉は10年前、まさに多感な10代の時期に“DEATH NOTE現象”とも言うべき熱狂を体験しており、前作を超えることの難しさは、彼らが最も分かっているはずだ。それでも、3人はこの無謀ともいえる企画に挑んだ。『デスノート Light up the NEW world』は、彼らなりの答えであり、前作へのオマージュであり、そして、10年前に藤原竜也、松山ケンイチ、戸田恵梨香といった若き才能が『デスノート』をきっかけに飛躍を遂げたのと同じように、彼らにとっての新時代の幕開けの“宣言”なのかもしれない。キラとLの戦いから10年後の世界。人間界に再びデスノートがもたらされる。世界中で殺戮が勃発する中、捜査にあたる“デスノートオタクおたく”の三島(東出)。Lの遺伝子から生まれ、その後継者として“新生キラ”に挑む竜崎(池松)。そしてキラを信奉する狂気のサイバーテロリストの紫苑(菅田)。天才たちの三つ巴が展開するが、本作の大きな特徴と言えるのが、原作にもない全く新しいオリジナルストーリーとして描かれているという点である。3人はこの物語をどのように受け止めたのか?東出:物語の概要は聞いてたんですが、実際に台本を読んで、一読しただけではすごく難解なんですよね。「ノートの所有権がこう動いて…」とか。推理しながら読んでました。『デスノート』という作品の魅力であると思うんですが、オリジナル作品だから、新作だからといって、決して分かりやすく作ってはいない。それは挑戦的であり、僕自身、一ファンですが、日和ったものではなく、難解なものを提示していて、ファンの方にも喜んでもらえると思います。正直、台本を読んで知っていたので、完成した映画を観て「何も知らない人が初めて観たら面白いだろうなぁ」ってうらやましくなりました(笑)。池松:新しい試みであり、ストーリー、結末がどうなるのか誰も分からない――そんな当たり前のことが、すごく豊かに見えるんですよね。宣伝活動でも“ネタバレ禁止”がたくさんあって、正直、そこまでやるか…って思うくらいですが(笑)。ゼロから作り上げていくのはすごく大変なことではあったけど、やってよかったなと思います。菅田:まず、ファンとして「“6冊ルール(※人間界に同時に存在できるノートは6冊まで)”にはまだ触れてなかったんだ!」というところでワクワクしましたし、変わらずに(前作から引き続いて)出てくるキャラクターたちの存在に嬉しさもありました。“天才の領域”を説明し過ぎることなく、エンターテインメントとして見せていく流れがよくできてるなと思いました。本作の制作が発表された後の、世の反響は半端なものではなかった。撮影に入る以前から渦巻く賛否。いまさらではあるが、この続編に参加するということには、かなりのプレッシャーなり覚悟があったのでは?東出:僕にとってはほかのどの仕事とも一緒です。どの現場に入るのも緊張感があるし、覚悟を持って臨んでます。確かに、制作が発表された段階で「どんなものを作るの?」「また新しいのが見られるの?」など様々な声があるのは耳にしていました。でも、“プレッシャー”という言葉を“覚悟”に変えて、現場に入るだけでした。ただ、10年前の作品、原作のルールなど、ファンが外してほしくないところは、きっと外しちゃいけないし、継承しなくてはいけないんだと思うんですよね。ファンはこの作品のどこが好きで、何に魅力を感じているのか?そこは、指標になったと思います。池松:正反対のことを言って申し訳ないんですが、僕は(前作を)全く無視できなかったですね。普段は、わりと原作があろうが無視しちゃうタイプですけど(笑)、今回は見る人の数の問題なのか?それとも壁の大きさの問題なのか…?オリジナルを超えることなんてなかなかできるはずがないと分かってるけど、2016年、作品の世界を借りて、オリジナルに対してどういう敬意の表し方をして、どう挑むか?それが映画になると思いました。とにかく、前作ありきのスタートでしたね。菅田:「10年後」と言ってるくらいですし、無視できないのはすごく分かります。僕の役に関しては、根底は数々のキラ信者と変わらないので、そういう意味ではお手本はいっぱいありましたね。その中で、何が違うかというと紫苑の“現代っ子”感と、行動力や能力があるという点なのかなと。あまり、変な意識はしてなかったけど、無意識に『デスノート』が自分の中にあるんだなとは感じましたね。改めて作品が完成したいま、それぞれにやりきったという充足感と、作品への確かな手応え、自信、そして10年を経た“いま”、この作品を世に送り出すことの意味を強く感じている。池松:映画の世界自体がレベルアップできたと思います。この作品は“大人だまし”もやらないといけないんです、“子どもだまし”ではなく。例えば、ハリウッドでバットマンが『ダークナイト』になったように、広く大人が楽しめるところを目指してきたし、それができたと思う。東出:“大人だまし”ってすごくいい言葉ですね。僕らが10年前に、『デスノート』のファンだったのと同じように、10年前のファンはいま、もう大人になってるから、その人たちに、分かりやすいものを届けようとしたら、つまんなくなっちゃうよね。菅田:というか、いま高校生とかだと、前作の『デスノート』は観てなかったりするのかな?池松:連続ドラマ版が入口だったりすると思うよ。菅田:そうだよね…。10年前の作品を当時、観ていたときはある意味で『ウルトラマン』や『仮面ライダー』のような神話っぽさを感じてたんです。月(ライト/藤原竜也)とL(松山ケンイチ)の頭脳戦にワクワクして、どちらを応援するでもなく「すげぇ!」って。今回、10年が経ったからなのか、自分が出ているからなのか、他人事にできない怖さを感じました。冒頭の殺戮シーンなんて、ノートを武器にしてるってだけで、完全にテロですからね。いろんな社会の現実と重なる部分があるなと。もうひとつ、ファンに嬉しいのが、前二部作のメインを張った藤原竜也、松山ケンイチ、そして戸田恵梨香が本作にもそれぞれに形は違えど、出演しているという点。それはもちろん、新世代の3人を興奮させた。菅田:僕はミサミサ(=弥海砂/戸田)と共演してますからね。(興奮は)ありましたよ。「あ、ミサミサだ!」と思ったし、紫苑にとってもやはり特別な存在。月とLに対しても、藤原さんと松山さんという“先輩”というところもあるけど、それだけではなく、やっぱり月とLとして感じる部分が強かったです。池松:やはり、前作でたくさん、革命的なことを起こして、10年が経って今回、どうなるんだろ?最初は「出ないだろう」と思ってたけど、出演されると聞いて、すごく嬉しかったです。作品としても、間違いなくこれでまたひとつレベルアップすると思ったし、お2人の存在、前作を引き継ぐ者たち、そして死神の存在によって、どうやってもこの作品が『デスノート』になるなって。東出:個人としては、オマージュという意味もあっての“あの”シーンなのかなと思い、嬉しかったですね。三島としては「これがLか…」という驚きがあるんですよね。撮影の現場で拝見したときも、正直、その感覚に近かったです。改めて、作品の中で、お二人のお芝居のすごさを再確認しました。(text:Naoki Kurozu)
2016年10月31日世界中で巻き起こった『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』旋風。その興奮冷めやらぬなか、いまファンが熱い視線を注いでいるのが“誰も知らないアナザー・ストーリー”を描いた新作『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』(ギャレス・エドワーズ監督)だ。12月の全世界同時公開を前に、いまだその全貌がベールに包まれたままの本作。“神話”の原点である『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望』(1977年製作)の直前を舞台に、個性豊かな“ならず者”たちが結成した精鋭部隊が、帝国軍の最終兵器であるデス・スターの設計図を奪おうと奮闘するストーリーで、すでに解禁された予告編では、あのダース・ベイダーの登場も判明!そこでさらなる情報を入手しようと、本作に出演するディエゴ・ルナを直撃すると、早速驚きのスクープが明らかになった。「すでに予告編を見てくれたと思うけど、主人公のジン・アーソを演じるフェリシティ・ジョーンズが名ゼリフの“May the force be with us”(フォースの共にあらんことを)って言っているよね。実はもう1つ、シリーズ屈指の名ゼリフである“I’ve got a bad feeling about this.”(何だか嫌な予感がする)も映画のなかに登場する」のだとか!あのセリフを誰がどんなシチュエーションで発するか気になるが、「これ以上のことは詳しく話せないんだ。ほら、すぐそばでコワモテの警備員が目を光らせているからね(笑)」というわけで、真相は映画を観てのお楽しみ。ただ、ディエゴの発言からも、『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』が、『スター・ウォーズ』の伝統と精神を重んじていることが十分伝わってくる。「そのように期待してもらって、間違いないね。この映画は現代的なアプローチに加えて、僕たちが愛して止まない『スター・ウォーズ』の“起源”とも言うべきものに敬意を表し、オマージュという形で讃えている。とりわけ、時代設定も近いから、記念すべき1作目『エピソード4/新たなる希望』へのオマージュはふんだんに盛り込まれている。観れば、思わず『キターッ!!!』って叫びたくなるツボを突いたシーンが随所にあるよ」。そう興奮気味に語るディエゴ本人も、6歳のときに初めて『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望』に触れて以来、『スター・ウォーズ』の熱烈ファン。子ども心に「あの世界に入り込めたら…」と夢想していたというから、本作への出演オファーを受けた際には「人生が一変するような驚きと興奮を覚えた」という。「同時に、『絶対に誰にも言うな』って念を押されて、どえらい秘密を抱え込んじゃったと焦ったのを覚えているよ(笑)」。クランクイン早々、憧れのダース・ベイダーとも対面したといい、「突然“シューッ、ゴーッ”ってあの息づかいが聞こえてきたから、そりゃもう大興奮。すっかり動揺して、『スタジオ見学に来たファンじゃなくて、俳優として仕事をしに来ているんだから、わきまえろ!』って、自分に言い聞かせたほどだよ。僕にとってはアイドル的存在だから、今回“共演”できて、めちゃくちゃ興奮したよ。あまりの威圧感と存在感に、ちょっと圧倒されかけたけどね」。そんなディエゴが演じるのは反乱軍の司令官にして、主人公ジン・アーソらとともに設計図奪取のミッションに挑むキャシアン・アンドー。直感型で無鉄砲なジンとは対照的に、冷静で理性的な性格のキャラクターだといい、正反対な両者が生み出す人間ドラマも見せ場になりそうだ。また、相棒となるドロイドK-2SOについては「元々は帝国軍のドロイドだったのを、キャシアンが再プログラムしたんだ。諜報活動による情報収集の任務を請け負う情報将校の彼にとって、元帝国軍のドロイドほど役に立つものはない。ただ、再プログラムが完璧じゃなかったせいで、性格面で欠陥が多くてね(笑)。自制が利かず、思ったことをお構いなしに口にしてしまう。キャシアンとのやりとりは、大いに笑えること間違いなしだよ」と語ってくれた。ちなみに『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望』では、デス・スターの設計図を手に入れる過程で「多くの犠牲が払われた」ことがセリフで説明されている。ということは、ローグ・ワンの面々にも悲劇が訪れるということ?「いやいや、そんな心配は無用さ。自由や希望、変革といったポジティヴなテーマを描いた作品だからね。確かに生きては戻れない不可能なミッションに見えるかもしれないけど、ローグ・ワンのメンバーに不可能という文字はないんだ。少なくともキャシアンは、最後の最後まで戦い抜く覚悟でいるよ」。さらにこんな力強いメッセージも。「人種的、文化的多様性を描きこむことで、僕たちが暮らす現代社会を反映しているのに加えて、特殊なパワーなど持たないごく普通の人々がただならぬことをやってのけるというストーリー自体にも、現代を生きる、特に若い世代の観客に向けた、とてもポジティブかつパワフルなメッセージが込められているんだ!フォースという概念を通して、何かを信じること、そのために率先して行動を起こすことの大切さを教えてくれる。信念を持って戦えば、誰だって世の中を変えることが出来るというのは、今日の世界にも大いに通じる大事なメッセージだと思うよ」。(text:Ryo Uchida)
2016年10月29日あのブリジット・ジョーンズに、また会えるなんて!前作から11年の歳月を経てアラサーからアラフォーへ、ふたたび女優レニー・ゼルウィガーがブリジットを演じる。ドジなところもある、お酒もタバコも好き、間違うこともしばしば、そしてロマンチストで楽観主義…決して完璧なレディではないけれど、彼女の一生懸命さやチャーミングさに世界中の女性たちが共感、憧れの女性像でもある。そんなブリジットも43歳に!シリーズ3作目『ブリジット・ジョーンズの日記 ダメな私の最後のモテ期』で、彼女はどんな変化を遂げたのか、どんな幸せを手にするのか──レニーが語る。「一番興味深かったのは、ブリジットとして自分の進化を見せなくてはならない、でもそのなかにもともとあるブリジットらしさ(変わらないもの)も見せなくてはならないことだったの。彼女は、仕事はとても順調で経験も積んでいる。恋愛に関しても、前回ほどウブではなくて…相変わらずロマンチストで楽観主義なのは変わらないけれど(笑)。そこが魅力のひとつよね。まだ人生で悩んでいるし、チャレンジもしている。原作本でも映画でも描かれていることだけれど、“こうありたい”と思い描いている理想の自分があってもなかなかそこに到達できない…そういう葛藤も魅力なの」。それが多くの女性が共感するゆえんだ。変わらない魅力がある一方で、変わったからこその魅力もあって──そのひとつが仕事におけるステップアップ。テレビ番組のプロデューサーとしてバリバリ働いているブリジットはとても格好いい。これまでの役づくりでは、ぽっちゃり体型になるため10kg以上も体重を増やして撮影に挑み、そんなデ・ニーロ・アプローチは当時ものすごく話題になった。今回は妊婦という設定もあって体重を増やす役づくりはなかったそうだが、スレンダーな姿はある意味新鮮。見た目の変化から「この10年でブリジットがどんなふうに過ごしていたのかを観客それぞれに想像してほしい」と伝える。そして、メインとなる役づくりは、テレビ局の敏腕プロデューサーになることだった。「イギリスに『Good Morning Britain』というテレビ番組があって、その番組プロデューサーに会いに行くことから始めたの。実はその彼はこの映画にも出ているのよ。実際にテレビ局で働く人の話しを聞いたり、仕事風景を見たりして、ブリジットの演技の参考にした。とても貴重な経験をさせてもらったわ。(映画の)撮影カメラの前で演じてはいるけれど、役柄としてはテレビ番組のカメラ向こう側、コントロールルームに居る、それはとても面白かった。生放送がどれだけ大変か、時間との闘いであるかも知ることができて、勉強になった。そういう準備をしたの」。ブリジットが成長したように、レニー自身も30代の頃と40代のいまとでは「人生に対する視点はだいぶ変わった」と変化を語る。「スイス人である父親の、仕事に対する勤勉さを私も受け継いでいるはずなんだけれど、勤勉でありながらもより仕事を楽しめるようになったと思うわ」。確かに、この映画の前にはキアヌ・リーブス主演のサスペン『砂上の法廷』に出演し、シリアスな役柄に挑戦。作品選びも楽しんでいるように見える。勤勉さと言えば、コリン・ファースの演じるマークも極めて“勤勉”なキャラクターだ。コリンとの久々の共演については「古い友人のような、家族の一員のような存在」だと嬉しそうに説明する。「だって私はこれまでにブリジットとして、彼の前でものすごく恥ずかしいことをしてきたんだもの、家族のようなものでしょう。いまではすっかりツーカーの関係なのよ(笑)。16年間、このシリーズを通して一緒に成長してきた、とても大切な友人でもある。彼は本当に楽しい人で、いつも笑顔を絶やさないの。今回、ブリジットとマークを演じるにあたって話し合ったのは、2人の慣れ親しんだ関係をどう表現するかだった。彼らが歩んできた歴史を演技のなかに(さりげなく)入れたいよね、という話しをしたの」。シリーズを通して観てきた人にとっても、それは嬉しい瞬間のひとつだろう。また、マークの恋敵として3作目から参戦となるのが、パトリック・デンプシーの演じるジャックだ。ブリジットと運命的に出会い、父親候補になる重要なキャラクター。「彼との共演もとても楽しかったわ。一緒に崖から飛び込んだ感覚ね(笑)。というのも『ブリジット・ジョーンズの日記』という、すでに出来上がった作品に途中から参加することは誰にとっても恐いこと。愛されている作品を壊したくない──そんな心配があったと思うの。でも、恐いのは彼だけじゃなくて、私もみんなも恐怖を感じていた。それはワクワク感のなかにある恐怖ね。ブリジットというキャラクターが大好きだから、好きすぎるがゆえに生まれる恐怖。絶対にしくじりたくないっていう恐怖。だからみんなで一緒に深呼吸をして、崖から飛び込む気持ちで撮影に臨んだの。パトリックの参加で撮影現場は本当に楽しかった。現場を軽く(明るく)してくれるの。なんでも挑戦してくれるしね。プロモーションとしてラジオやテレビにも一緒に出てくれる、彼は人を楽しませることが好きなショーマンなのよ。たとえば、テレビに出たときはジャグリングをしてくれたり、風船で動物を作ってくれたり…とっても楽しいパフォーマーなの!」ジャックとの出会いは音楽フェス。うっかり転んでしまい、泥のなかにダイブしたブリジットをジャックが助けることが運命の出会いとなる。そんな泥ダイブをはじめ、今回も彼女のお茶目さが垣間見られるシーンがたくさん用意されているが、レニーのお気に入りは?「もう、いっぱいありすぎるけれど…マークと再会するシーンも大好きよ。あのタイミングの悪さといったら!タイミングの悪さはブリジットの永遠のテーマね(笑)。でも、みんなそうだと思うの。だから彼女に共感してしまうのよね。仕事のプレゼンの後にジャックが来て、マークも来て、さてどうしよう…とあたふたするところも可愛いし、人の名前を忘れてしまって、それでも何とか会話を続けようとするあのシチュエーションもブリジットらしい(笑)。自虐的な一面もあるけれど、とても自由なの。そういうところが本当に大好き!」。まるで正反対のマークとジャックの間で揺れ動き、どちらを選ぶのか──ブリジットの選択にも彼女らしさがあるという。「その人がどういう人かも大切だけれど、自分は誰といるとどういう気持ちになるのか、気持ちが大切だっていうことよね。愛って、本当にわからないものだから…。ブリジットは最終的にどちらかを選ぶわけだけれど、私は選べないわ…。だって2人との共演は本当に楽しかったんだもの!」。(text:Rie Shintani)
2016年10月28日1952年に25歳の若さで即位して以来、イギリス女王として激動の人生を送ってきたエリザベス2世。その素顔に迫るNetflixオリジナルドラマ「ザ・クラウン」では、劇中に登場する豪華絢爛な衣装の数々も見どころ。今年2月にシーズン1の撮影現場を訪れた際、衣装デザイナーを務めるミシェル・クラプトンらの解説を聞くことができた。「ゲーム・オブ・スローンズ」でエミー賞に輝いたこともあるミシェル・クラプトンと数十人に及ぶコスチューム部門のスタッフたちは、「ザ・クラウン」のために数々の衣装を制作。エリザベス女王の衣装に関しても、プライベートな装いはもちろん、公務用のワンピースやスーツ、さらには戴冠式のドレスやウェディングドレスに至るまで、それら全てを自分たちの手で作り上げたという。「私たちがまず取り組んだのは、徹底的にリサーチすること。でも、いまはインターネットがあるからラッキーね。私たちは集めた情報をもとに、できる限り本物に近いものを目指して衣装を作る必要があった。例えばウェディングドレスのように、一般的に広く知られているものは正確じゃないといけない。その一方、プライベートの洋服には少し遊びが入っているわ。私たちの解釈で作ることができたの」。話に上ったウェディングドレスは、第1話で目にすることができる。1947年に行われたエディンバラ公フィリップとの結婚式で、まだ女王になる前のエリザベスは、デザイナーのノーマン・ハートネルが手掛けた美しい純白のドレスを身にまとっている。「オリジナルのウェディングドレスを作るのには6か月かかったと聞いたけど、私たちは約7週間で作ったの。費用を正確に答えるのは難しいけど、3万~3万5000ポンドほどだと思う。おそらく、私たちが手掛けたドレスの中で最も費用がかかっているんじゃないかしら」。一方、プライベートのファッションを制作する際には、50年代のVOGUE誌なども参考にしたとか。ただし、おしゃれに敏感でクチュールを好んだ妹マーガレットとは違い、若い頃のエリザベスは「ファッションを特に楽しんではいなかった」とミシェルは分析する。「公務を行う際の衣服は、彼女にとってのユニフォームだったの。シンプルな仕事着といったところね。マーガレット王女は見た目を気にしたけど、女王は何も考えないで着られるものを好んだ。とは言え、淡いピンクやペールトーンなど、美しい色を着る彼女を私たちは見られるわ。それは、王太后が美しい色が好きだったから。エリザベスは母親にとても影響を受けているの」。そういったパーソナリティはもちろん、王女から女王へ、少女から大人の女性へと成長していくエリザベスの変化も衣装を通して感じられるそうだ。また、ウェディングドレスに次ぐ目玉として、戴冠式でのゴージャスな装いにも注目したいところ。「結婚式と戴冠式で、明らかに予算は大きな打撃を受けたわ(笑)」という戴冠式は実際のところ5時間ほどに及ぶセレモニーであり、女王も何度か“お色直し”をしているそう。ドラマ用にも複数の戴冠式ドレスが制作されているが、これらの衣装に関してはエリザベス役のクレア・フォイが解説してくれた。「たしか、戴冠式の撮影には5日間くらいかかったわ。ミシェルが作ったドレスはすごく重いの。それを長時間着て、下に4種類のアンダースカートを履いて、頭にとても重い王冠を載せなくちゃいけなかった。いろいろな飾りつけも施されてね。そして、名士や首脳たちでいっぱいのウェストミンスター寺院を冷静に歩くのだから、まるで10回結婚するみたいなものよ(笑)。まだ若い彼女に、どうしてそれができたのか分からないわ。ものすごく度胸が必要なことよ」。「ザ・クラウン」は11月4日(金)より全世界同時オンラインストリーミング開始。協力:Netflix(text:Hikaru Watanabe)
2016年10月27日鬼才ティム・バートンが「不思議の国のアリス」の“その後”の物語を描いた、『アリス・イン・ワンダーランド』から6年。待望の続編『アリス・イン・ワンダーランド/時間の旅』は、お馴染みマッドハッター役ジョニー・デップをはじめ、アリス役のミア・ワシコウスカ、赤の女王役のヘレナ・ボナム=カーター、白の女王役のアン・ハサウェイらが続投、新たに時間の番人“タイム”役にサシャ・バロン・コーエンを迎えた。今回、製作を務めたティム・バートンに代わってメガホンをとったのは、『ザ・マペッツ』で“マペット(操り人形)”たちと人間が共存する世界を描いたジェームズ・ボビン監督だ。そして、ボビン監督のもと、前作の世界観を引き継ぎながらも、また新しいワンダーランドの創造を任されたのは、ピーター・ジャクソン監督の『ロード・オブ・ザ・リング』三部作や『ホビット』三部作などに携わり、『ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還』でアカデミー賞に輝いたプロダクション・デザイナー、ダン・ヘナ。本作では、再び不思議の国、ワンダーランドへと誘われたアリスが、親友マッドハッターの悲しみの原因を探るため“時間の旅”に向かうのだが、この新たな冒険をファンタジー世界の名手、ダン・ヘナはどのように構築したのだろうか?まさに“時を越えて”読み継がれているルイス・キャロルによる原作を、「私も子どものころに読んでワクワクしていた」と語るダン。「ですが、子どものころに感じていたことを、映画に携わるにあたって実際に視覚化するということはなかなか大変でした。本作の脚本を読んだときに、ちょっと“奇妙な感じ”が印象に残ったんですが、とにかく素晴らしいものでしたので、それを基にものづくりをするということには非常にやりがいを感じました」と、脚本に触れた際の心境を明かす。「前作の『アリス・イン・ワンダーランド』では多くのデジタル・オペレーションを使っていて、今回はそれを参考にしつつも、前作に比べてよりフィジカルな部分が多くなりましたね。自分たちの手で新たに作ったものと、デジタル・オペレーションとを組み合わせて素晴らしい作品ができたと思っています。従来的なファンタジーの世界から一歩踏み出した、ワクワクすると同時に奇妙な感じもする、この『アリス』の世界で、ものづくりができたことは本当に楽しいことでした」と、試行錯誤の末の撮影をふり返った。監督が本作のワンダーランドで目指したのは、実際に手にとることができそうな“リアルさ”だ。過去、子ども時代のマッドハッターが家族と暮らしていたハイトップ帽子店をはじめ、ウィッツエンドの街並みや、子ども時代の赤の女王や白の女王が暮らすお城、現在のマッドハッターや赤の女王の家など、今回はキャラクターたちの個性や心情とともに、彼らのリアルな日常が垣間見えるかのような世界が広がっている。ダンも「前作ではデジタル環境をより多く使用していましたが、今作では実際に人が出たり、入ったりできるセットをつくり、大道具という以上に、その中でお芝居ができる“環境”そのものをつくりました」と明かす。「それは、作品の世界をつくる上で、役者さんたちにとっても手助けになったのではと思っています。実際に手で触れられる環境でお芝居をすることで、グリーン・バックのときとは違った気持ちで違ったアプローチができたのではと思います」と、その手応えを力強く語る。一方で、アリスが時間の流れをさかのぼる旅は、現実にはあり得ない、最もファンタジックなもの。「“時間の旅”の部分は、いろいろ考えて一番工夫をこらしました」とダンは言う。「時間の流れを波と捉え、そこから海の中を突き進んでいくような見え方を作っていきました。時間の波を進んでいく際に、その波の中に過去のできごとが走馬灯のように見えるかたちにして、ある場所からある場所への二点間の移動であると同時に、時間の流れの中を旅しているんだ、ということを表現するのに非常に注力しました」と、そのコンセプトに言及。過去へとさかのぼる旅は、同時に過去への執着や後悔などもまた浮き彫りにさせることを見事に表現してみせた。また、見れば見るほど、細部まで作りこまれていることが分かるタイムの城についても、「永遠に動き続ける、という象徴的で巨大な時計を軸に、非常に大きなものとして具体的にセットに盛り込んで表現するということが大きな目標のひとつでした」と、ダンは語る。「城そのものに関しては、巨大なメカニズムになっていて、床や天井という仕切りが見えるわけではないのですが、何層にも分かれていて無限の大きさを感じられるようなものを表現しなければなりませんでした。そして、機械仕掛けの巨大な時計ですね。ねじやスプリングなどの部品という細かい部分までもデザインしました」と苦労をにじませながら、「城の中には、タイムの小さい部屋のようなものがあり、そこでは彼自身がリラックスしていられるような空間として作りました」といった“遊び心”も忘れない。「広大なスペースを感じさせ、海の真ん中にあるような雰囲気で、タイム自身が時間の波の中に存在するというような、いろいろな要素が盛り込まれた複雑さがそこにはあります。それをどう表していくのか、自分の中でも課題となっていました」と、“時間”という形のないものと、その番人タイムの城の表現に挑んだ難しさをふり返るダン。時間の波を果敢にくぐり抜けていくアリスの姿は、父親の跡を継ぎ、大海原で船を操る現実世界でのアリスにも重なっている。『アリス・イン・ワンダーランド/時間の旅』MovieNEXは11月2日(水)より発売(同日、ブルーレイ・DVDレンタル開始)※10月26日(水)先行デジタル配信開始。(text:cinemacafe.net)
2016年10月25日ココナッツオイルを始め、おいしくて身体にも環境にもいい、オーガニックの食品を紹介する、「ブラウンシュガーファースト」の荻野みどりさん。<後編>では引き続き、子どものために選んだこだわりのアイテムを紹介します。荻野みどりさん娘さん(5歳)2011年、娘さんの出産を機に、食の大切さに目覚める。「わが子に食べさせたいかどうか?」を基準に、食材を厳選した菓子店としてスタート。オーガニックの食品やプロダクトを製造、販売する「BROWN SUGAR 1ST.(ブラウンシュガーファースト)」を創業する。著書に『ココナッツオイル生活をはじめよう』(講談社)、『今すぐ使いたい! ココナッツオイル』(小学館)、『子どもから大人まで ココナッツオイルのヘルシーおやつ』(講談社)。HP: ■肌触りと素材感、香りにこだわったもの選び荻野さんは、毎日6時に起床。ご主人と娘さんが、朝から公園へ行っている間に家事を済ませます。そして9時から、お子さんを保育園に預けて、会社で仕事。夕方6時30分に迎えに行ってからは仕事をせず、ごはんを食べたり、絵本を読んだりして、夜9時30分には娘さんと一緒に朝まで寝るのだそう。「起きている間ずっと頭が動いているから、たっぷり睡眠をとることでバランスを取っているんです。睡眠は疲れをとってリセットする意味でも、とても大切。だからこそ仕事も頑張れる。もちろん毎日ではなく、仕事で夜遅くなることもありますが、寝具はいいものにこだわったり、寝室にできる限りものを置かず、すっきりさせて気持ちよい環境にするよう心がけています」ベッドリネンやタオルの肌触りや素材感には、特にこだわっているという荻野さん。娘さんが使うものも、上質なアイテムを選んでいます。▼「TAMAMONO」のおくるみ「『TAMAMONO』のおくるみは、シルク100%で肌触りがいいから、娘もお気に入り。ブランケットとして使っています。シルクですが洗濯機で洗えるほど丈夫なので、気軽に使えるのも気に入っています」▼「salon de nanadecor」のオーガニックコットンのタオル「肌触りの良さでオーガニックコットンを選びたいですが、オーガニックコットンでかわいいものが少ないんですよね。でも『nanadecor』のタオルはさりげなくリボンが付いていて、娘のテンションが上がります。少しずつ買い足していきたい、娘も私もお気に入りの一品です」▼「バイバイバクテリア」香りにもこだわる荻野さんは、「バイバイバクテリア」を家中に置いて、愛用しているのだとか。「100%お水でできているのに、除菌と消臭をしてくれる優れもの。寝具はもちろん、雨が続いたりして少し臭いがこもっているときにシュシュっとして、ルームミストで香りを足すと気持ちがいいです。せっかくいい洗剤を使っても、おねしょされるとなかなか臭いが消えないですが、酸性水なので、アルカリ性のおしっこにかけると中性になり、使うとちゃんと臭いが消えるんです。水なので、子どもにも安心して使えます」 ■好きな香りにできる、無香料の「ヤシノミ洗濯洗剤」そんな香りにこだわる荻野さんは、「ヤシノミ洗濯洗剤」と「ヤシノミ柔軟剤」を使って、無香料という点が特に気に入ったのだそう。「香りがないということは、好きな香りにできるということ。さらに、きちんと汚れが落ちるところがいいですよね。特に柔軟剤は香りで選ぶのが当たり前だったから、無香料というのが新鮮でした」「これまで柔軟剤以外のものは、精油の香りにこだわっているのに、柔軟剤だけケミカルな香りになっていたのが、居心地が良くなかったんです。洗濯物はふんわりさせたいけれど、香りがたくさん付くのが嫌なのであまり使いたくないと、ほんの少しの分量しか使っていなかったから、肌触りに影響していました。でもこれならふわふわの洗い上がりにしつつ、香りが好きにつけられるのがすごくいいですね」■子どもが自分の行動すべての原動力今の仕事をするきっかけとなった娘さんの存在は、今でも仕事の原動力になっていると話す荻野さん。「だから子どもとの時間が大切だし、家族で心地よいものを使うということを大切にしたい。都会に住んでいるからこそ、五感をできるだけ使うようにしたいですね。我が家の食の基本は娘なので、娘の豊かな心と体を育むこと、楽しく食べて健康であることが一番大事です。そして食品メーカーをしている母として、子どもが大人になって母となったときに、今のような豊かな恵みのものを楽しく食べられるという食環境を残していきたい。今の仕事は、そういう選択肢をちゃんと伝えて、残していくことだと思っています。そう思えるのも、すべて娘のおかげ。保育園に預けたり、家族総動員で子育てしていますが、人の力を借りて甘えるところはしっかり甘えながら、子どもと一緒にいるときは、ちゃんと向き合ってたくさん話をして、最善を尽くすようにしていたいですね」取材/文:赤木真弓 撮影:根田拓也[PR]サラヤ株式会社
2016年10月25日窓の外に広がる東京の街並みを眺めつつ、「日本に来る飛行機の中で『シン・ゴジラ』を見たから、ちょっと複雑な気分」と笑うサイモン・ペッグ。映画愛に溢れていて、穏やかで、ユーモラス。そんな彼が来日を果たしたのは、『スター・トレック BEYOND』のプロモーションを行うためだ。このシリーズ最新作に、サイモンはキャストとしてだけでなく、脚本家としても関わった。彼が共同脚本家のダグ・ユング共々、生み出したストーリーはこうだ。カーク船長と宇宙船エンタープライズ号の面々は、ある任務のため未知の惑星へ。しかし、謎の敵から攻撃を受け、船は大破し、クルーも散り散りばらばらになってしまう。「僕自身、シリーズのファンだからエンタープライズ号大破案には激しく抵抗を感じたけど(笑)、そこには意味がちゃんとある。宇宙船の崩壊は、クルーをまとめていたものが失われることの象徴。そこから元に戻れるのかという、人間関係の試練が描かれていくんだ」と明かすサイモンだが、宇宙船大破の展開も興味深ければ、クルーが離れ離れになる際の組み合わせも面白い。意外な者同士がバディとなり、見知らぬ土地でサバイバルを繰り広げる。「最初に思いついた組み合わせは、スポックとボーンズ。性格も正反対で、ボーンズはカークの感情、スポックはカークの理性を表す存在でもある。そこで彼らからカークを取り払い、2人の間に何が生まれるのかを見てみたかった。一方、リーダーのカークと年若いチェコフの組み合わせでは、父と息子のような関係が楽しめる。そして、スールーとウフーラは過去2作で会話すらしていない印象だったから、新鮮で面白いと思ったんだ」。その頃、サイモン演じるスコッティは…と言うと、謎の女性戦士ジェイラに遭遇。敵か味方か分からない彼女にスコッティは翻弄されるが、「ジェイラはクールでイケてるんだ。スコッティはダサくてイケてないのにね」と、やや口惜しそう?「ジェイラから見たスコッティはオジさん。ただ、彼自身は古臭いんだけど、『スター・トレック』は未来が舞台だから話がちょっとおかしなことになってくるよね(笑)。とにかく、ジェイラはアイデアも豊富で、自立していて前向き。そんな女性とイケてない男性が出会うことにも面白さがある。スコッティは自分が正しく、すべてを知っていると思い込みがちだけど、時にそれは間違っているんだ」。さすがは“男と女”を分かっているサイモン?「僕自身はクールなんだけどね!いや、残念ながらそうでもないな…」とうなだれつつ豪快に笑うが、女性に理解ある(!)脚本家サイモン・ペッグであることと女性を分かっていない(?)スコッティの両立は、さぞ難しかったのではないだろうか。「僕の撮影があるときはダグに脚本家としての判断を任せ、それ以外のときは僕も脚本家として撮影に立ち会った。でも、言うほど簡単に切り替えができるはずもなく、自分の撮影シーンにも脚本家として意見を出したり、キャストが僕に脚本のことを聞きに来ることはあったよ。とは言え、自分の撮影シーンは休暇みたいな気持ちだった。キャスト仲間とくつろげるし、演じること自体が僕にとっては楽しみ以外の何物でもないから。もちろん、脚本家であることも楽しんでいるよ。次の『スター・トレック』の脚本にはスケジュールの都合もあって関われないけど、ダグとはまた一緒に何かを書きたいと思っている」。演じることが楽しい。物語を書くことが楽しい。俳優として、脚本家として、サイモンは常に映画作りを楽しんできた。彼に負けず劣らず、映画作りを楽しむ仲間たちと共に。「エドガー・ライトやニック・フロストは僕の大切な仲間。彼らと一緒に作った『ショーン・オブ・ザ・デッド』を見て、J.J.エイブラムスは『M:i:lll』に僕を誘ってくれたんだ。そして、J.J.と真の友となり、『スター・トレック』『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』にも出演できたのだから、やはり出会いは大事だし、仲間の存在は大きいと思う」。それにしても、映画の中の彼からも常々感じていたことだが、サイモン・ペッグの声は非常にセクシーだ。こう指摘されることも多いのでは?と訊くと、「う~ん、ときどきね。…フハハハハ!」と照れ隠し。「自分ではずっと耳にし続けているものだから、もはやよく分からないし、むしろ嫌気もさしているけど…(笑)」と続ける。「映画の中の自分の声を聴いたり、録音したものを聴いたりするのは妙な気分。実際とはちょっと違うなって違和感を覚えるしね。子どもの頃、初めて自分の声を聴いたときも、妙な感じがしたな。でも、褒めていただいたのは素直に嬉しいです。ありがとう(笑)」。そんなサイモンが大事にする“声”とは?それは、「心からの声で語ること」だという。「脚本家としても、俳優としても、語る物語が心からのものであるよう僕は心掛けている。そこには、真実が伴っていなくてはならないと思うんだ」。「たとえそれが『スター・トレック』のようなファンタジーでもね。感情の真実や社会を反映した真実は、どんな物語にも必ず根づいているべきものだから」と、やはりいい声で言うサイモン。「いいSFはロボットや宇宙船よりも、人間について語っている」とも語る彼の真実が、『スター・トレック BEYOND』には根づいている。(text:Hikaru Watanabe/photo:Nahoko Suzuki)
2016年10月24日「やさしいママのひみつ」第3回目は、ココナッツオイルを世に広めた、「ブラウンシュガーファースト」の代表取締役であり、5歳の女の子のママである、荻野みどりさん。荻野みどりさん娘さん(5歳)2011年娘さんの出産を機に、食の大切さに目覚める。「わが子に食べさせたいかどうか?」を基準に、食材を厳選した菓子店としてスタート。オーガニックの食品やプロダクトを製造、販売する「BROWN SUGAR 1ST.(ブラウンシュガーファースト)」を創業する。著書に『ココナッツオイル生活をはじめよう』(講談社)、『今すぐ使いたい! ココナッツオイル』(小学館)、『子どもから大人まで ココナッツオイルのヘルシーおやつ』(講談社)。HP: 忙しい荻野さんが子育てで大切にしていること、子どものために愛をこめて選んだアイテムとは? <前編>では、「やさしいママでいるための秘訣」を教えていただきます。■ママ目線で選んだ、おいしくて安心なおやつココナッツオイルブームの火付け役となり、今年には東京・神宮前に初の路面店「BROWN SUGAR 1ST.」もオープンするなど、忙しく過ごす荻野さん。「ブラウンシュガーファーストを起業したのは、娘が4ヶ月のとき。母乳で育てていたのですが、ある日娘が湿疹や便秘となり、食べるものに気をつけなければいけないと実感しました。同時に、震災直後だったので、東京でどういうものを食べさせて育てていこうかと考えるきっかけとなったんです。そこで私が企画して、お菓子教室をしている母にレシピを考えてもらい、地元福岡のママのチームにお菓子を作ってもらって、青山のマーケットで販売をしたのがスタートでした」バターに代わる代用品として提案する、ココナッツオイルを始め、ママの目線で厳選した、子どもに食べさせたい素材からお菓子まで幅広いアイテムを製造、販売しています。その中で、朝食やおやつにぴったりと荻野さんが選んだのが、「有機アップルソース」。「子どもたちを取り巻くおやつ環境ってすごくジャンクで、私も絶対食べさせないわけではありませんが、すべてがそれではよくないなと思うんです。本当は手作りできるといいけれど、忙しいなかで手作りするのは難しい。そこで、子どものためにと開発したのがこれです。原材料はりんごだけ。手軽にたっぷりフルーツが取れるし、りんごは食物繊維やカリウムが豊富だから、朝食に食べると出す(排泄する)力にもなるんです」食べることを何よりも大切にしている荻野さん。使う食器にもこだわりがあるのだと言います。「スパイス教室をやっている叔母が好きだった影響で、実家でも使っていたスペインの『タラベラ』の食器を愛用しています。食は楽しいが一番。手描きの絵付けで、元気な色が使われているから、楽しい気持ちになります。忙しく、手の込んだものを彩り豊かに作るのは難しいので、お皿で楽しく! ただサラダやパスタを盛るだけでもおいしそうに見えるし、絵柄が料理の邪魔をしないんです」 ■野菜も洗える、安心安全の「ヤシノミ洗剤」そんな荻野さんが、家族代々使っている器を洗うのは、昔から「ヤシノミ洗剤」だったそう。「小さい頃から実家で使っていましたが、以前よりも洗浄力がアップした気がします。ポンプ式が使いやすく、置いていてかわいいデザインなのもいいですね。ナチュラルにこだわると海外のものが多くなりますが、高いので継続が難しい。毎日使うものだから、お手頃な価格なところも嬉しいポイントです。そして何より嬉しいのが、野菜を洗えること。100%有機の野菜だけ買えるわけではないので、野菜洗いはしたいですが、『ヤシノミ洗剤』なら安心して使えますね」■子どもと一緒に過ごす時間を、目一杯楽しみたいとても仲が良く、笑顔が絶えない荻野さんと娘さん。荻野さんの子育てのモットーは「完璧にしすぎないこと」。それがやさしいママでいる秘訣だといいます。「ちょっと散らかっていてもいいし、食べるものもすべてゼロから作らなくてもいい。うまく手抜きをして、できた時間を子どもと過ごすのが私の子育てです。手抜きできるところはする、でもその手抜きのためのアイテムにはこだわりたいです。テレビがないのもひとつ。ただでさえ一緒にいる時間が短いのに、テレビをつけたら会話がなくなってしまうので、あえて置いていないんです。ずっと一緒にいられない分、一緒にいる間にたくさんいちゃいちゃして、話をするように心がけています」「思い通りにいかないときも、子どもをコントロールしようとしたらダメだと思います。子どもって注意力は散漫だけど、それはいろいろなものに興味があるということ。言ったことができないのは“まだその時期じゃない”と思うようにしています。まだ今はイライラしてこちらの都合を押し付けたり、“あなたはできない”と教えこむのではなく、待って、きちんと見る。一緒にいられる時間が少ないから、怒りたくないんですよね。仕事をしている時間に十分に好きなことをしているので、自分の時間を取れない不満はないです。ただ娘と一緒にいられる時間が楽しくて、大切にしたいと思っています」 <後編>では、荻野さんが子どものために選んだ “こだわりのアイテム” をさらにご紹介します。 取材/文:赤木真弓 撮影:根田拓也[PR]サラヤ株式会社
2016年10月24日朝井リョウの直木賞受賞作を映画化した『何者』(三浦大輔監督)が公開中だ。就職活動を通し自分が「何者」かを模索する5人の大学生を描く話題作。リアルな就活事情やSNSに翻ろうされる若者たちを“観察”した、新感覚の青春群像劇に共感と驚きの声があがっている。主演の佐藤健をはじめ、有村架純、二階堂ふみ、菅田将暉、岡田将生、山田孝之という人気、実力を兼ね備えた超豪華キャストが顔を揃えている点も大きな見どころ。劇中の登場人物がそうであったように、彼らもまた、かつては自身の夢や将来を見据えた“何者”であり、いまは役者としてその本領をいかんなく発揮している。あえて「役者という職業に就職した」という視点から、勢ぞろいした6人に「自分が役者だと実感する瞬間」を聞いた。佐藤健【冷静分析系男子@二宮拓人】デビューしたての頃は、いまみたいに役者としてやっていける自信はなかったですね。だから、実感する瞬間というよりは、徐々に仕事を重ねることで、あるとき「あっ、自分は役者になったんだな」と。年齢でいうと19歳ぐらいです。ちょうど「仮面ライダー電王」の頃ですね。気づいたら、とても忙しくなっていて、毎日現場に行き、一生懸命に芝居をする。その繰り返しをふり返る中で、『何者』風に言えば、役者という職業に就職したのかもしれません。有村架純【地道素直系女子@田名部瑞月】私自身は、「自分が女優」だとか、「女優になった」という風にあまり考えないで日々を過ごしているので、「役者だと実感する」という瞬間は意識していません。ただ、強いて言えば、17歳のときに事務所に入った瞬間ですね。文字通り、自分を取り巻く世界が180度変わりましたし、いまの私にとって、とても大きな出来事だったことに間違いはありません。二階堂ふみ【意識高い系女子@小早川理香】小さな頃から映画が大好きだったので、初めての映画(役所広司の初メガホン作『ガマの油』)で撮影現場に一歩足を踏み入れた瞬間の“アガった”感覚は、13歳だった私にとってとても鮮烈な瞬間でした。現場には私たち俳優部がいて、監督がいて、撮影部さんがいて、一緒に同じ作品を撮っている…。そんな風景を初めて目の当たりにして、学ぶことが多かったです。その仲間入りができた、という気持ちはいまも覚えていますね。菅田将暉【天真爛漫系男子@神谷光太郎】僕の場合、芸名が「菅田将暉」に決まったときです。当時16歳くらいですし、戸籍上の名前とはまったく違う、記号的ともいえる新しい名前で、世の中に出るわけですから、自分自身が「何者?」っていう(笑)。それがだんだん気にならなくなって、自分も役者なんだなって。ただ、共演する皆さんから「菅田くん」「将暉」って呼ばれると、いまも若干違和感はあります。岡田将生【空想クリエイター系男子@宮本隆良】この仕事をずっと続けていこうと心に決めたのは、20歳になる前に当時通っていた大学を辞めたときですね。具体的なきっかけというよりは、いろんな現場でお芝居と向き合いながら、自然と役者への思いが強くなっていきました。山田孝之【達観先輩系男子@サワ先輩】こういう仕事をしていると、ときにはファンの皆さんやお客様から批判的な意見をもらうこともありますよね。すると、やっぱり悔しい思いをするんですよ。その瞬間、自分はプロの俳優なんだなと実感しますね。こういう感覚は、役者を続けていく以上、常につきまとうもの。自分のもとに届く声にどう向き合うか?さっき言った悔しさも含めて、受け止めるようにしています。(text:Ryo Uchida/photo:Nahoko Suzuki)
2016年10月23日亡き母から、誕生日ごとに届く10通のバースデーカードを通して、母の愛、子への想い、そしてそれを受け取る子どもたちの成長を、温かい視点で描いた家族愛の物語『バースデーカード』。脚本を通して役が語りかけてきたと話す、娘・紀子を演じた橋本愛と、作品を観たばかりで感動が抑えきれないという父親役ユースケ・サンタマリアが、映画の魅力、そしてここだけの裏話を披露してくれた。父と娘を演じた2人。賑やかで楽しい父親の横で、その話を笑いながら聞いている美しい娘という、スクリーンで見せる父娘とはひと味違った表情を見せてくれる。まずは、出演作を観てからインタビューを受けるのはあまりないというユースケさんが、“例外的”な思いを寄せることになった理由から。ユースケ:実は、自分が出たものを観られないという病にかかっていて(笑)、撮影が終わるとそのお仕事は終わりというのが普通。でも、この作品はPRのために愛ちゃんが僕の番組にも出演してくれたとき、主演を務めた女優さんが、これほど満足しているなんてどんな作品なんだろうと興味がわいた。この物語がとても好きだったこともあって、これはと思い、珍しく出演作を観たんです。いま、すごく温かい気持ちに包まれていて。もし自分が出演していなくても、何度も観返すような大事な作品になるだろうな。橋本:私の気持ちが伝わったことも、主演作をそこまで言ってもらえることも、すごく嬉しいです。ユースケ:ぜひ観てくださいという気持ちが伝わって来たよ。橋本:私は正直だから(笑)。ユースケ:そうなんだよ、愛ちゃんは正直者だからね。きっと作品が嫌いだったら、そもそもPRのために僕の番組に来てくれないよね(笑)。そこで思わず大笑いする橋本さんを見ながら、ユースケさんが続ける。ユースケ:だって、今日も服装からして気合いが違うでしょ。一緒にばっちり決めたしね。お母さんが若くして亡くなる話なんて、あざとくなりがち。宣伝だって、感動作とか、泣けるとかを強調しがちだけど、この映画に絶対にそういうのはいらないよ。橋本さんは、脚本が完成する前の早い段階から、映画の制作にかかわっていたそう。橋本:家族の愛を描いた、こういう王道の物語に出演するのは自分の中ではとても珍しいと感じましたし、未知の世界だったので怖さもありました。でも、その恐怖を慎重に取り除いて臨んだんです。王道の映画なのだけれど、斜めから見る隙も与えない。ひとつの感動的な愛を伝えるという目的にみんなが一緒に向かっていった結果、ちゃんと思いが伝わる作品になったと思える仕上がりになりました。ユースケ:共感できない人なんていないんじゃないかというほど普遍的。2時間ちょっとの上映時間ってけっこうな長さなのに一切飽きさせない。すべて必要なシーンだけでできている作品。それでもけっこう切っているんですけどね。僕が気に入っていたセリフなんかなくなっていたけど。橋本:そうなんですか!ユースケ:でも、それは必然だと思える。俳優である僕が“このセリフが好きだから残して”というのはエゴだからね。監督のセンスは素晴らしいし、完成作品を観て改めて実感したよ。橋本:私は、出演が決まる前に脚本を読ませて頂いて、亡き母からの手紙をこれだけ従順に受け入れていると、手紙がもらえなくなったとき、紀子が自分の足で立って生きていけるのかが分からなくて怖いという感想は監督に伝えました。それで、19歳で手紙を読まずに反抗するというシーンを作ってもらったんです。最初にいただいた脚本はかなり余白があったし、オリジナル脚本なので、変えていただいたところもありますね。ユースケ:知らなかった。そうだったんだ。愛ちゃんの意見でこういう物語になったんだ。反抗するシーンはとても大事だよね。そこで初めて亡き母からもらう手紙に疑問を抱く。19歳ってそういう年代。手紙が亡き母と自分を繋ぐとても大切な存在なだけに、手紙が来なくなったときどうなってしまうんだろうという不安の表れ。このエピソードがあるとないとでは全然違ったと思うな。橋本:実は最初の脚本を読んで、結婚相手がこういう男性では、とても好きになれないという、わがままも言いました(笑)。ユースケ:そうなの!中村蒼くんが演じた相手役の立石純くん、愛ちゃんの意見でああいう素敵な青年になったんだ。だって、父親としてアイツだったら娘をとられてもしょうがないもん。まあ、それでも嫌だけど(笑)。亡き愛妻の忘れ形見にして、男手ひとつで育て上げてきた愛娘。幸せを願っているけれど、本心では嫁にやりたくないという父の複雑な親心を、ユースケさんは見事に表現している。ユースケ:実は、不思議なくらい葛藤があった。僕、けっこうドライなほうなんだけどな。作品を観てびっくりしたのは、紀子の結婚式のシーン。バージンロードで娘を花婿に渡した後、幸せそうにしている新郎新婦の後ろで、僕がすごく苦しそうな顔をしてるの(笑)。あんな顔をしてるつもりなかったんだよね。ちょっと微笑んでいるぐらいのつもりだったのに。監督から、“紀子がついに嫁に行くというシーンですから”と念を押されていて、どっぷり入り込んでいたら、あんな顔になっていて。すっかり寂しい父親になっていました。僕としては、珍しいくらい。橋本:私も自然に紀子になっていましたね。脚本が完成する過程も観てきたこともよかった。すぐれた脚本だったので、人と人との会話がちゃんと成り立っていたし。脚本からキャラクターの声がきこえてきたから、その声を代弁して喋っていたという感じですね。こんなときに女の子はこうするということが、とてもよく描かれていたんです。それに、撮影当時、私自身が19歳だったので、同じ年代の紀子はとても親しみが持てたし、年齢による変化もよく分かったから、無理やり納得できないところを力技でもっていったというシーンはひとつもないですね。ユースケ:完成した脚本を現場で大幅に変えることはなかったけれど、ちょっとした言葉を付け足したり、語尾を除いたりとか、そういうちょっとしたことはあったよね。ただ、それが許されていたのは有難かった。たかだかひとことの違いでも、これでこのシーンは完成した、と思える理由になるものだから。そういうところからも、監督が俳優を尊重し信頼してくれていたのは分かった。もちろん僕らも監督はじめスタッフを信頼していたし。そういうものの積み重ねが、作品を作っていくと実感できる作品だった。そんな制作途中でのやりとりについて語り合ううち、話はいつしかタイトルへ。ユースケ:いまでこそ『バースデーカード』というタイトルに落ち着いたけれど、ほかにも案があったんだよね。愛ちゃんはどれがよかったの?橋本:ほかにありました?ユースケ:あったよ。『バースデーカード紀子の〇〇』とか、『バースデーカード君のまわりには何がある?』とかさ。副題を入れるのは、日本映画界の悪しき習慣で。橋本:そう、君のまわりに…(笑)。現場では『バースデイ・カード(仮)』だったんですよね。ユースケ:そう、『バースデーカード君のまわりには何がある?』もいいタイトルだけど、なんだか想像できちゃう。だから、僕は絶対に『バースデーカード』がいいと押していたんです。これでいくんですよねって念押しして。日本の映画もドラマも、タイトルで説明し過ぎ。ヒントだけで、ちょっと謎めいていたほうが絶対潔いし、お客さんの興味をそそるよって、俺はずっと言っていたんです。あんまりしつこく言うものだから、製作サイドが“じゃあ、これでいきます”と(笑)。橋本:じゃあ、これはユースケさんが推薦したタイトルだったんですね!(笑)ユースケ:ロビー活動をずっとやっていたの、待ち時間に。橋本:確かに、日本ではサブタイトルをつける傾向にありますからね。素晴らしい作品ほど、いろいろな細工をしなくても観客にきちんと伝わるはずだという、ユースケさんの強い思いが感じられるエピソード。感動させるための映画ではなく、感動を呼び起こすことのできる力を持った作品だという自負があるからこそ、余計なものは付け加えたくないという気持ちになったのだろう。母との死別という悲しい話がベースにある作品だが、本作を観ていると、別れる悲しみ以上に、人生で愛すべき人と出会えた喜びというものを感じる。橋本:私は人の死に立ち会ったことがまだないんです。家族が存在していることが当たり前になっている。だから、もし大事な人たちが明日居なくなったら、後悔することがあるかもしれないと考えてしまって。でも、後悔することがあるだろうと知っているのに、じゃあそうならないようにいま、愛や感謝を伝えておくことができるかというとそれはちょっと恥ずかしいと思ってしまう。自分の中にある、そんな愚かさを痛感するきっかけになりました。劇中には、紀子がとある質問をして母を悲しませてしまったことをずっと後悔しているというくだりがあるんです。それは当たり前の幸せがある毎日がいつまでも続くと思ってしまう、人間の普遍的な愚かさを映し出してもいるんでしょうね。ユースケ:でも、単なる悲しい物語じゃないのが、この作品の凄いところだよね。愛する人が亡くなる。そんな大きな出来事が冒頭にあるけれど、遺された家族は大きな悲しみを共有しているからこそ、すごく強く結びついていて、その中心には亡き母がいる。母が遺したものが家族にとってはものすごく大きくて、常に近くにいてくれると感じられる。常に彼女の気配があるんだよね。最後には、そんな母と家族の思いが繋がるシーンも待っている。ユースケ:それを表現できるのが映画のマジックであり、本作のマジックでもあるんだと思う。実はそのシーン、すごく待たされたんですよ。最初は1時間待ちですって言われていたのに、“何ならどこかに出かけてもOKです”と言われるぐらいの待ちになって(笑)。昼寝して起きてぶらぶらしていたのに、まだ撮ってる。何やっているんだろう?と不思議だったんですが実際に映画を観て、これは時間がかかって当然だし、待つ価値があったなと思うほどグッとくるいいシーンだった。そこもぜひ注目してもらいたいです。橋本:そうですね。できることはやったので、あとは多くの方に観てもらうことに勝負をかけています!愛する人との別れと、そこから生まれる喪失から、人は決して避けらない。そんな運命ゆえ、どうしても生まれる悲しみや後悔。でも、終盤に亡き母から届いた1通の手紙には、「思い通りじゃなく、後悔があっても、人生に満足している」と書かれている。すべてを抱えて生きていく…そんな人間の強さや愛しさがこの作品には詰まっている。(text:June Makiguchi/photo:Nahoko Suzuki)
2016年10月20日真鍋昌平氏による人気コミックを映像化した「闇金ウシジマくん」シリーズが、『闇金ウシジマくん ザ・ファイナル』でついに完結。ドラマは3シーズン(全27話)、映画は本作を含め4作が製作される人気ぶりだけに、実写版ウシジマとの別れを惜しむ声が多く聞かれる。違法な高金利で金を貸すアウトローな金融屋「カウカウファイナンス」の社長・ウシジマこと丑嶋馨を主人公に、金と欲望に翻ろうされる人間の転落劇を描く本シリーズ。確かに「他人の不幸は蜜の味」だが、目を背けたくなる暴力や悲劇がてんこ盛りな内容は賛否が分かれるところだ。それでも6年間にわたり、テレビ、映画と縦横無尽にウシジマが大暴れできたのは、熱烈なファンの支持があってこそ。なぜウシジマは愛され続けるのか?この疑問に答えてくれるのが、ウシジマ役の山田孝之と、ドラマのシーズン2から情報屋・戌亥役でレギュラー出演している綾野剛。まず、口を開いたのは綾野さんで、「それはやっぱり、主演が山田孝之だからですよ。ドラマが始まってからの6年間、孝之が『ウシジマ像を作り上げ続ける』という意志と姿勢を貫き続けたからこそ、ウシジマくんは停滞を知らなかった。それ以上でもそれ以下でもないと思います」と“盟友”に全幅の信頼を寄せる。主演の山田さんは「やはり、続けてきたことが大事だと思います」と断言。「最初からこの作品を、愛をもって大きくしたいという気持ちが強かったんですよ。『育てれば育つ!』というか。自分にとってもドラマ3本(シーズン)、映画4本も同じ役を演じるなんて、最初で最後かもしれない。決して根気強い性格ではないですから…。それでも演じ続けることができたのは、やっぱりウシジマだからですよ」と“分身”への愛情はあふれるばかりだ。ともに着実にキャリアを積みあげ、俳優として充実の30代を迎えた。「10代、20代は学ぶことが多かったですね。その過程でキャリア、コネクション、信頼を得たいまこそ、自分たち発信でモノを作っていきたい」(山田さん)、「年齢そのものは意識はしない。敬意や礼節は大切ですが、役者として同じ土俵に立てば、お構いなしでぶつかり合いたい」(綾野さん)。脂が乗りきった2人の快進撃が、今後も日本の映画界を支える。(text:Ryo Uchida/photo:Nahoko Suzuki)
2016年10月17日「築地という場所は、ある意味日本人が忘れかけている“昭和”が残っている。人間と人間の触れ合いの場所で、ひとがひとを見て魚を売る。昔、町の魚屋に魚を買いに行ったり、肉屋に買いに行ったりした時のような、触れ合いがいちばん残ってる場所かな」。力強い語りで、近いうちに失われてしまうかもしれない築地市場への愛を、鮨職人である中澤圭二さんは語る。2016年11月に80年の歴史に幕を下ろし、豊洲へと移転されることが予定していた築地市場だが、先日の小池百合子都知事による延期発表を受け、今後の動向にも大きな注目が集まっている。1年4か月にもわたる築地市場初の長期撮影を経て制作された『TSUKIJI WONDERLAND(築地ワンダーランド)』は、築地市場で働く約150人の人々のインタビューを収録したドキュメンタリー作品だ。劇中では、築地市場で働く人々をはじめ、ドキュメンタリー『二郎は鮨の夢を見る』にも出演する銀座「すきやばし次郎」の小野二郎・小野禎一などの鮨職人や、料理人、料理評論家、フードスタイリスト、“世界一のレストラン”と称されるコペンハーゲンの「noma」のシェフ、レネ・レゼピなど、食に関わる様々なプロフェッショナルが出演し、築地市場がいかに特別で、ほかにはない唯一の場所であるのかを語っている。その中のひとりとして、四谷「すし匠」の創業者である中澤さんも出演している。シネマカフェでは、現在ハワイにて鮨職人としての挑戦を続ける中澤さんに、帰国のタイミングでインタビューを実施。『TSUKIJI WONDERLAND(築地ワンダーランド)』が描き出す築地の魅力について語ってもらった。「豊洲移転を前に、どれだけ築地がすごい場所だったかということを、最後に映像として残せたということが素晴らしい。これだけ築地を写したのはこの映画がいままでで初めてだし、これからやろうと思ってもできないんですよ。なくなってしまうから」。築地市場という場所、そしてそこで働くひとびとの姿を、ここまで克明に捉えた映画が出来たことの喜びを語る中澤氏。それと同時に、なくなってしまうことがわかっているからこそ、これが最後になってしまうということへの寂しさが表情にあらわれる。観光名所としても知られる築地市場だが、私たち日本人にとっては、身近なようで漠然としたイメージしか持っていない人がほとんどなのかもしれない。映画の冒頭、やわらい光の中進んでいくカメラに導かれるように築地の中へと入り込むと、そこで働く人々のリアルな存在感とライブな雰囲気に、圧倒されてしまう思いがする。そこで交わされる言葉や、卸売が始まるときの緊張感は、新鮮な驚きとともに観るものの目に映る。映画の中でとても印象的なのは、仲卸をはじめとする築地市場の人々が度々口にする「信頼」という言葉だ。魚を釣る漁師、そして魚を売る仲卸の人々、さらにそこに魚を買い求める鮨職人をはじめとする料理人達、それぞれが職人としてのプライドを持ちながら、互いに信頼関係を築いていくことで、まるでバトンのように新鮮で良質な魚を繋いでいく。劇中で「一蓮托生」という表現もされるその信頼関係は、人と人とのつながりを大事にする築地市場が持つ大きな魅力だ。「お客さんが幸せになったときに全部のやってきたことが報われるんです。これは一人じゃできないんですよね。漁師さん、築地があって、我々があるんですよ。そういうみんなのキャッチボールの中で、お客さんが幸せにならなかったら、みんなの共同作業が報われないんですよね」。劇中に登場する、文化人類学者であり、「築地」の著者であるテオドル・ベスターは、築地で働く人々の姿を、“old-fashion”な労働倫理に溢れていると表現する。築地市場で働いたことがない観客にとっては、そこで働く人々の仕事は、まるで別世界のことのように思えるかもしれないが、築地市場の人たちの仕事に対するまっすぐな姿勢と、そこから発せられる真摯な言葉は、観るものはっとさせるほど普遍的な“働くことの美しさ”に溢れている。「極端に言ったら、私は寿司しか知らないんですよ。勉強嫌いだから寿司屋になったんです。築地にはそういう人いっぱいいますよ。だから、穴子だけは誰にも負けないように頑張ろう、エビだけは誰にも負けないよう頑張ろうって、そういう危機感が人をプロフェッショナルにするんです」。職人によって握られる一つの寿司に至るまでのドラマが描かれる本作だが、同時にファーストフード化する食に対する危機感も語られる。食に向き合い続けてきた中澤氏は、食の本当の意味が失われつつある東京への危惧を語る。「多分東京っていうところは戦場なんですよ。みんな戦っていて、余裕がない。だから、お腹はとりあえず満たすだけで、仕事をこなさないといけない。食というものを楽しんだり、そういう余裕が一番ないのが東京かもしれない。でも、お医者さんに行くより、食っていうのは体を治してくれるんです。おいしいものを食べて幸せを感じたときに、明日も頑張ろうという気持ちにさせてくれるっていうのが食の良さで、満腹感にするだけじゃなくて、その幸福感が明日の原動力になる」。自身の著書「鮨屋の人間力」の中で、人前に晒され、生身のコミュニケーションを通した鮨職人の仕事を「さらし」と表現する中澤氏だが、映画を通して感じるのは、鮨職人に限らず、築地市場で働くすべての人が「さらし」の仕事をしているということだ。コンビニやスーパー、ファミレスに行けば、それなりの味の料理を簡単に口にすることができるようになってしまった私たちは、本作を通して、人間的な営みとしての食について改めて考えざるをえないだろう。「料理ができるまでの行程で、魚の価値や、丁寧に扱うこと、感謝すること、そういうことを築地は教えてくれる場所かな。やっぱり寒いときに手を真っ赤にしている魚屋さんの姿を見たら、背筋が伸びるじゃないですか。やっぱりそれが触れ合い、ライブ感ですよ。それがなかったらつまらない」。移転先の豊洲についてのニュースが現在も頻繁に取りざたされているが、中澤氏はそこでの“システム化”への懸念を口にする。「ちょっと豊洲は心配だね。一見清潔で、温度管理とか、冷蔵庫みたいに便利なんだろうけど、完全にシステム化がされてしまうのが怖い。多分、あと5年もしたら、築地で行われていたことが信じられないと言われてしまうような時代が来る。でも、この現代にそれを当たり前にやっていた築地がどれだけすごかったか。それが5年後10年後にもっともっとわかってくる、非常に価値のある貴重な映像だと思います」。『TSUKIJI WONDERLAND(築地ワンダーランド)』というタイトル通り、築地市場という“不思議の国”を体験することができる本作。「ここにいる人は妄想癖があるんです」と劇中で語られるように、築地市場で働く人々は、自らの仕事の先にいる、その魚を口にする誰かのことを思いながら働いている。そんな“Wonder”に溢れたこの場所は、日々の仕事に追われる私たちにとって、まさに“Wonderland”なのかもしれない。「日本人の粋っていうのかな。やせ我慢もあるし、築地市場らしく、築地の魚屋らしく、っていう顔をみんなしてるんですよ。貧弱ではないんです。それがあの空気に入ったらそういう風になるんですよ。それが築地の凄さです」。築地市場で働く人々の眩しい姿を、本作を通して感じてみてほしい。(text:cinemacafe.net)
2016年10月16日めんどくさい男である…。本木雅弘は自意識過剰であることを自認し、それを公言する。他人に「自意識過剰」と指をさされることが最も恥ずかしいことともいえる現代社会において。一見、それは潔いことのようにも見えるが、当人は「ねじれた自分を正直に見せている“フリ”をして、『だから簡単に変われないからね!』と言い訳してる。ある種の自己防衛なんですよ」と自嘲気味に笑う。この客観的な視点こそ自意識過剰な男ならでは!なるほど、確かにねじれてる。そんな本木さんが、絵に描いたような自意識過剰のタレント作家で、不倫相手と密会中に妻を亡くしながら、葬儀では自らが世間にどう見えるかを気にし、“突然、最愛の妻を失った悲劇の男”を装い、その実、妻の死に直面しても一滴の涙さえも流せずいるという、これ以上ないほど面倒な男を演じた映画『永い言い訳』がまもなく公開となる。ゆがんだ自意識、コンプレックス、自己顕示欲...この面倒だけど、確実に自分を形作っているものたちとどう向き合い、どう付き合い、歩みを進めていくのか? 50代を迎えて掴んだかすかな答えのようなものとは?これからお届けするのは、映画のプロモーションというよりも、本木雅弘の長い、長い、長い言い訳である。準備に少し時間がかかったせいか、本木さんは予定時間よりほんの数分遅れて現れたが、インタビュールームに入るなり、何度も「お待たせして申し訳ありません」と丁寧に頭を下げ、スタッフに「遅れた分は終わりの時間を延ばしてくださいね」と申し出る。そして、テーブル1枚を挟んでのこちらとの距離に「近い!」と漏らし、自らテーブルを動かして慎重にインタビュアーとの距離を決める。この一連のやり取りだけで、彼の人柄はもちろん、他人との距離と関係性の“詰め方”が見えてくる。こうして、インタビューは始まった。【本木雅弘の人間性と主人公・衣笠幸夫の類似とずれ】幸夫はねじれた自意識やコンプレックスを持ちつつ、妻の死後、妻と共に亡くなった親友の遺族である大宮家の父・陽一(竹原ピストル)と子どもたちと接する中で、少しずつ変わっていく。原作となる同名の小説も自ら執筆している西川美和監督は映画完成後「本木さんこそ幸夫であり、幸夫こそ本木さん」と語っている。一方で本木さん自身は、自らの持つ“醜さ”と監督が幸夫に求めている情けなさに、微妙なずれを感じたという。「私自身も、監督が原作小説の中で幸夫について書いているように『自意識の度合いは激しいのに、健全な範囲での自信に欠けている』のは事実で、面倒な両面性を持ってます。そこに葛藤していく姿を見てみると、実は幸夫は、本人が気づかないだけで根底には素直な心を持ってるんです。大宮家の面々と触れる中で内心妻の思いに打たれている。でも私自身は…そういう素直さがなく、愛情表現を拒む意固地さがあるというか、もっと投げやりなんですよね(苦笑)」。自意識過剰なコンプレックスにあふれたダメな男――そんなイメージを自らさらすのは「半分は自己防衛」と言い放つ。「『できない!』『走れない!』と言った上で、懸命に突っ走る。3等賞になったときの言い訳を先に作っとかなきゃって意識ですよ(笑)。でも、密かにこの作品で、自分のそういう“セコさ”“えげつなさ”を出してしまおうか?という挑戦をしてみるかって意識はありましたね。ただ、僕がそのまま自然に幸夫をやると、怒りの部分がもっと強く出ると思います。自分に、周囲に苛立って、ちゃぶ台をひっくり返すような自暴自棄になっていく。でも、監督が求めたのは、怒りよりも哀しみなんですね」。本木さんが、例として挙げたのは、終盤の大宮家での鍋のシーン。トラック運転手の父・陽一に代わり、大宮家の子どもたちの世話を見るようになった幸夫。だが作家としての執筆活動もある幸夫に気を使った陽一から、子どもたちの世話の代替案を提案されると、自分の居場所を失ったような気持ちになり、途端に反発する。「居場所を失うような気がして追い詰められ、彼らの無垢な心に触れるほど、自分の中の毒々しさとのギャップを感じて混乱していく。本当は素直になれるチャンスなのに、自分で台無しにしちゃう(苦笑)。そこで監督から言われたのは、単にちゃぶ台をひっくり返すんじゃなく、そこに見たくない自身の傷と対面してしまう恐怖、無様な自分に接吻するほど近づいていくことへの怯えがほしいと言われました。言葉はきつくなっていくけど、同時に消え入りそうになっていく気持ちを混ぜてくれと。自然な僕自身だったら、きつい言葉を吐いて、そんな自分を俯瞰して『あ~あ、またやっちゃってるよ』って心で叫びながらもさらに荒れるとなりそうなところで、幸夫は本当の意味で自分を葬り去りたいような気持ちにもだえるんです。あれは監督の調整がなければ出来なかったことだと思います」。妻の死にうまく向き合えず、涙もこぼせない男。本木さんにとって本作は『おくりびと』以来、7年ぶりの主演映画となるが、『おくりびと』がいかに死者をおくり出すかを描いているのに対し、本作は「残された者たちの苦しみ――それでも、死者に報いるためにどう生きていくか?死者ではなく、死に貼り付いている“生”に重きを置いた映画だと思います」と語る。「私自身、この映画と原作をひとつのセラピーのようなものとして受け取り、心が軽くなった部分はあると思います。たかが、されどと自問自答を繰り返しながら生きる中で、自分自身が人生そのものなのではなく、不確かでも、他者との間に生まれ、見えてくる光のような、漂う匂いのような、風のようなもの――それこそが人生である。抽象的だけどリアルなその捉え方は、案外大事なことだと思います。『愛するべき日々に愛することを怠ったことの代償は小さくはない。人は後悔する生き物だということを、頭の芯から理解してるはずなのに、最も身近な人間に対して誠意を欠いてしまうのは、どういうわけなんだろう?』というフレーズにやられ、『ですよねっ!』って思いましたよ(苦笑)。心の中で感じていれば、相手も感じ取るはずだと思って、無償の愛ではなく、“無言の愛”を強要していたんですよね。この作品を通じて、少し、実人生が滑らかになったんじゃないでしょうか(笑)」。約1年の時間を費やして制作された本作の撮影のさなかに、本木さんは50歳の誕生日を迎えた。いまなお「自意識過剰のめんどくさい自分」を抱えつつ、それでも、若い頃と50代を迎えたいまとで、自分の中に起きた変化を認めている。「そりゃ10代の頃から人目にさらされてきて、その視線に慣れてしまった部分はあります。職業柄、自意識からは逃れられないし、もはや、それなくして自分は成立しないとも思ってる。でも役者として役を与えられたとき、その瞬間だけでもそのキャラクターに没頭すればいいのに、勝手に実の自分とのギャップを感じて思わず自分と向き合っちゃう。特に偉人役をいただくと、結局、ギャップばかりが大きくなって、わざわざ傷つくということを繰り返している(苦笑)。もうちょっと上手くに役に乗り移っていく方法があるんじゃないか?50代でそれを見つけたいって遅いかあ(笑)。実際、この映画の撮影中に50歳を迎え、何だか、少しおおらかになれるような予感はありました。以前から『ほどほどに希望して、人生を楽しくあきらめていく』って言ってましたが、その境地に少しずつ近づけているのかな?期待はするけどそこには固執しない。ただのあきらめではなく、ちゃんとそこで面白がる。達観と諦観が混ざった感じを目指してます。いい意味で、現場、現況に身を投げられたらいいのかなって」。そんな風に思えるようになったのは、周りの共演者の存在も大きいのかもしれない。今回でいうと、竹原ピストル、池松壮亮らの存在から強い刺激を受け取ったという。「これも結局自意識の話なんですが(笑)、撮影前のお祓いでメインキャストや監督が玉串を奉納するんです。あれが僕はすごく好きで、数メートル歩いての二礼二拍手一礼に個性が出る。僕自身、そうやって誰かに見られてるって意識が働くし、みなさんきっと『本木は、きちんとしてる』と思っているだろうから(笑)、その期待に応えるべく自然な感じを装って姿勢がいいようにコントロールしてる自分がいるんですよ(笑)。そんな中で、竹原さんは『あ、僕ですか?』ってスタスタっと出て行って、礼をして『パンパーン!』と拍手したんです。それは僕がいままで聞いた中で最もテンポが速く、スコーンと響く清々しさのある拍手でした。自意識をイジイジとこねくり回してる自分となんのてらいもなく清々しさを響かせた竹原さん。まさに陽一と幸夫だなって思いましたね」。池松さんが演じたのは、幸夫の担当編集者。決して共演シーンが多いわけではないが、本木さんが衝撃を受けたのは、お芝居における力の抜き具合!「池松さんが『本番で100%の力でやると暑苦しいから、80%を目指します。もっと言うと、テストの感じに戻れるのが理想』と言っていて、大人だなぁと(笑)。自分は古い時代の役者なので、100%どころか、120%込めなきゃ何も焼き付かないって教えられてきたし、気負ってないフリして、気負ってなきゃダメだって思ってる自分がいたんですよね。池松さんは、どこでどうチューニングしていまに至ってるのか…?今回のような冷静な役だけでなく『セトウツミ』とか、少しだけハジケるようなところがある役でもそうなんですよね。一見、低温で脱力だけど、ちゃんとメリハリを感じる。それはデビューが『ラストサムライ』だからなのか…(笑)。すごいなと思います」。他者と触れ合い、自意識やコンプレックス、自己顕示欲にもがきつつ、前に進んでいく。「おそらく、自分が抱えている劣等感と向き合うのが嫌いじゃないんだと思う。どこかでその劣等感を打ち消したいという思いで、自己とも仕事とも格闘する。そんな中、やはり他者との出会いが気付かせてくれるものは特別に有難いと思っていますよ」。(photo / text:Naoki Kurozu)
2016年10月14日現イギリス女王エリザベス2世の愛と葛藤を描くNetflixオリジナルドラマ「ザ・クラウン」。シーズン1の撮影も終盤にさしかかった今年2月、ロケが行われるロンドンのランカスター・ハウスで、主要キャストたちへのインタビューを敢行した。アクアブルーのワンピース姿(撮影用衣装)で、最初に現れたのはエリザベス女王役のクレア・フォイ。BBCドラマ「ウルフ・ホール」のアン・ブーリン役などでも知られる彼女が、25歳で即位し、家族や国民の愛を勝ち取っていくエリザベス女王を演じる。誰もが知る人物を演じるにあたり、何冊かの本を読んでリサーチしたというクレアだが、「結局、密室で何が起きているかは分からない」とも。「大勢のイギリス人と同じく、私も人生のかなりの時を女王と共に過ごしている。でも、それはあくまで公共の面のこと。私たちのドラマでは、彼女の人生のとても小さな部分なの。だから、私はピーター(・モーガン)の脚本を読んで、“これが彼女なのね。じゃあ、私はこれを演じるわ”という感じだった」。プロデューサーのアンドリュー・イートンも、「彼女のオーディションは本当に素晴らしかった」とクレアを絶賛。大役をつかみ、シーズン1の撮影を間もなく終えるいま、彼女の中では「女王への尊敬の念が明らかに大きくなっている」そうだ。「いまも生存している人で、彼女ほど政治的、経済的、社会的変化を経験してきた人はほとんどいないと思う。彼女はすべてを見てきたし、すべての物事の真っ只中にいる。一方、人として同情し、理解できる部分もあるの。彼女はとても若いときに父親を失い、ものすごい責任と仕事を負うことになった。世界の重荷が突然肩にのしかかり、父の死を嘆くことすらできなかったの。多くの人々が『あなたは英国女王になったんですよ。万歳!』と言う中でね」。人間ドラマの主人公としての女王は、夫フィリップとの結婚生活を通しても描かれる。フィリップ役のマット・スミスは「最高」とのこと。「彼のことが大好き。彼以外のフィリップは考えられないわ。このドラマで描かれているのは、“結婚”なの。それは時にとてもタフになり得るもので、愛し合う2人はとても大きなプレッシャーをかけられる。子どもたちの両親としてもね。すごく複雑で、素晴らしく、興味深い物語になっているはずよ」。一方、英国君主たる女王を描く上では、この人物が鍵を握る。首相のウィンストン・チャーチルを演じるジョン・リスゴーが、続けてインタビューに応えた。シーズン1では、傲慢なチャーチルと女王の関係も描かれていく。アメリカ人であるジョン・リスゴーにとって、チャーチル役のオファーは意外なものだったようだ。「(監督の)スティーヴン・ダルドリーに会ったとき、真っ先に訊ねたよ。『なぜ僕なんだい?』とね。でも、ある意味独創的な選択だし、イギリスの歴史全体の中でも際立ったイギリス人を演じるのに、アウトサイダーを雇ったのは興味深いことだと思う。チャーチルみたいな人はほかにいないからね」。「とても気難しく、とても繊細で、勇気があり、時にはほとんど感傷的。彼を描写する形容詞を10個は言えるよ。様々な面があって、演じがいのあるキャラクターなんだ」というチャーチルは、物語の中でコミックリリーフ的な役割も果たすそうだ。「彼は素晴らしいウィットの持ち主であると同時に、無意識の可笑しさも備えている。彼の癇癪さえもコミカルだったんだ。もちろん、『ザ・クラウン』はシリアスなドラマだし、チャーチルもシリアスなキャラクターだけどね。素晴らしいキャラクターだからこそ、どんな人と組み合わせても、すぐに興味深い関係が出来上がるのだと思うよ」。「ザ・クラウン」は11月4日(金)より全世界同時オンラインストリーミング開始。協力:Netflix(text:Hikaru Watanabe)
2016年10月12日本年度エミー賞でドラマシリーズ部門・作品賞を2年連続で受賞した「ゲーム・オブ・スローンズ」。同作をはじめ、数々の伝説的ドラマを生み出してきた米国ケーブルTV局「HBO」が次に放つのが、西部劇の世界をそのまま再現した近未来のテーマパークを舞台に、“AI(人工知能)の反乱”を描く衝撃のSFミステリー「ウエストワールド」だ。この壮大なテーマに導かれ、初のTVシリーズレギュラー出演を決めたアカデミー賞俳優アンソニー・ホプキンスや、『アポロ13』『トゥルーマン・ショー』などで知られる名優エド・ハリスら、映画界のスターたちが、本作にはこぞって参戦する。今回は、『X-MEN』シリーズのサイクロプス役から、ニコラス・スパークス原作の感涙ラブストーリー『かけがえのない人』、ベルギー発の色情サスペンスをハリウッドリメイクした『パーフェクト・ルーム』などまで、幅広く活躍するイケメン俳優ジェームズ・マースデンに、本作について“話せる範囲”でたっぷりと語ってもらった。『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』のJ.J.エイブラムズと『ダークナイト』シリーズのジョナサン・ノーランが、人気ドラマ「パーソン・オブ・インタレスト犯罪予知ユニット」から再タッグを果たした本作。マースデンが演じるのは、列車に乗って“ウエストワールド”を訪れる謎の青年テディ・フラッドという役どころだ。恐竜たちの生きた時代を疑似体験できるのが“ジェラシックワールド”なら、“ウエストワールド”は、ホプキンス演じる天才科学者が創造した、無法の西部開拓時代を疑似体験できるテーマパーク。ガンマンや娼婦など、それぞれの役割を与えられたAIロボットたちが、“ホスト”として来場者に対応するという。「ウエストワールドは、警察も政府もいない、法律もない、何の処罰もないラスベガスといったところかな。社会的制約なしで、この(西部劇の)体験に浸れるんだ。そして鮮やかで魅惑的な形で目の前に広がるから、つい悪い道にそそのかされてしまう」と、マースデンは言う。「興味深いと思ったのは、法も結果もない西部開拓の時代に遡るということ。その環境で、自分が誰になるか、という疑問を投げかけているんだ。実際に行ってみたいですか?と聞かれたら、『はい(いいえと答えるかもしれないけど)、自分の友達全員と家族全員と行って、みんなの本性を見てみたい』と答えるよ。なぜなら、ここは人間の本性をさらけ出させる環境だから。ウエストワールドは、ひとが見ていないときの自分がどんな人間かが問われる場所なんだ」と、意味深に言葉をつなぐ。「何が面白いかって、このドラマでは一部の人間の、卑劣な醜い一面が描かれる。そして見た人は本当に感情移入しているのか、それとも感情移入しているふりをしているだけなのか、疑問を抱き始める。そして造られた物体、“AI”のほうが高潔で共感的なんだ。悪人としてプログラムされたものもいるけど、たいてい彼らのほうが、明らかにこの地球上で最も知性があり、発達していて、文明的な種である僕たちよりも、道徳規範を備えているんだ」。“AI”が自我に目覚め、人間を凌駕する…というテーマは、これまでも数多くの映画やドラマで描かれてきた。かのスティーヴン・ホーキング博士が人工知能の進化の危険性を訴え続けているように、“AIの反乱”は、この時世、リアリティを持って受け入れられるはずだろう。その詳しいストーリーがますます知りたくなるが…。「話せないんだ。ネタばれして台無しにしたくないしね。混乱させたり、ごまかそうとしているわけじゃないけど、『何が起きているのか見えてくる気がするけど、実は全然見えていない』ということだけ言っておくよ」と、言葉を濁すマースデン。「このドラマについては誰も絶対的なことは言えないんだ、なぜなら回を追っていくうちにいくつものサプライズが覆されていき、終盤に向けて8話、9話、10話でパズルのピースが全てかみ合ったときに、楽しみにしてて。驚愕するから。くつくつ煮立つように始まって、沸騰して終わるんだ」と、こちらの期待をますます煽っていく。実は、「ウエストワールド」の登場人物たちにも、撮影直前までストーリー展開は知らされていなかったという。「毎回、撮影開始の1週間くらい前まで台本をもらえなかったよ。もちろん、敢えてそういう形をとったんだ。キャストに内容を知らせていないということは、撮影するシーンについてキャストは、そのとき必要な知識しかない状態で臨むということ。その先に起こることは知らない状態で撮影するというやり方なんだ」と明かす。「演じる側にとっても、“先を知らないほうが良い”という判断だったのさ」。ならば、キャスト同士でその後の展開を推測し合っていたのだろうか?「エヴァン(・レイチェル・ウッド)はいつも探ってたね。僕は真逆だった。僕は完全に、何も知らないというスタンスでいたんだ。5話か6話あたりで、エヴァンが本当に分かったようなことを言っていたから、『君は傲慢だ。全て分かったと思いこんで――まさに(脚本の)ジョナサンの思うつぼだ』ってからかったんだ。手に入れたと思った瞬間、ジョナサンは足をすくうんだ。でも6話あたりでは、エヴァンの推測はほぼ当たっていたね。僕が最後の2話分くらいの台本を受け取ったとき、彼女は冗談言っていたんじゃなかったんだ、当たってたんだ、って思ったよ」と打ち明ける。エヴァンが演じたのは、西部開拓時代の農場娘ドロレス…として“造られた“AIロボットだ。牧歌的な自身の人生が、実は入念に作られた嘘であることに気づき始め、マースデン演じるテディと関わることになる。「僕たちのストーリーラインは互いに絡み合っている感じ。テディは道楽の街に浸っていたいとは思っていなくて、そこで彼女を見たとき、彼が人生に求めているもの全てを彼女に見たんだ。彼には乗り越えようとしているわりと暗い過去があって、それが次第に明かされる。彼女は彼にとっての光であり、彼の目には彼女は純粋さ、無垢、善良とか、彼が自分に求めている全ての象徴のように映るんだ」と、2人の関係性を明かす。しかも、「彼は銃の名士で、必要とあらば死とも直面する。そういう部分も楽しかったよ。乗馬とか銃撃シーンとかね」と自身のキャラクターについても触れてくれた。まさに、西部劇とSFという2つのジャンルが融合した本作。では、彼自身としては、これほどまでのテクノロジーの進化やAIについて、どう思っているのか聞いてみた。「『ジュラシック・パーク』のジェフ・ゴールドブラムのセリフで好きな言葉があって、『科学者たちはできるかどうか確かめることばかりに躍起になって、するべきかどうかについては立ち止まって考えることをしない』。僕たちはいままさにその時代にいると思う」と、マースデンは応じる。「コンピューターや電話でも何でも、ただ後でアップデートをする。それが僕たちにとって良いものかどうかを、立ち止まって考えることをしないんだ」。さらに、「いますぐに電話を手に取ってAmazonで新品の靴をオーダーして、それが明日家に届くって、すごいことだよね。話をすることができない相手にメールだって送れる。ただ、そういうことってまだ新しいことだから、僕たちはこれが僕たち人類にどんな影響を与えているか分かっていないんだと思う」と、真摯に語る。「進歩に対して反対しているわけじゃないんだ。でも、この数年加速した気がしていて、責任と限界は必要だということだよ。自制、加減、またはある程度、統治する知性も必要だと思う」と、本作のエッセンスにもつながるような気になるコメントも…。「過去に戻りたがる人の気持ちが分かるよ。こんなに歳をとった気がしたことはいままでないよ」とも話すマースデン。特に15歳の息子とのジェネレーションギャップは急激に広がっているようで、「自分がすごく遅れてるように感じるよ。もう手が出せないくらい」と、親としての本音もちらり。「このテクノロジーは常軌を逸している。指紋で携帯を起動させ、車は電気で走る、僕がそれを充電もできる。そして、そのボタンは携帯で押すことができる。もはや手作業なんてないんだ。僕はただ、手綱を握って『ハイヤー』って立ち去りたい気分だよ」。もしや、このドラマが描くのは、「人類の行動様式を変え、人との関わり方を変えた」テクノロジーの絶望的ななれの果て!?パズルのピースが全て組み合わさったときに明かされる“真実”を、ぜひ目にしてみたいものだ。「ウエストワールド」は10月13日(木)よりスターチャンネルにて放送開始。(text:cinemacafe.net)
2016年10月11日当時でも異色の社会派ドラマ「ふぞろいの林檎たち」での共演が1983年。その後、シリーズを重ねた同ドラマの「パートIV」(1997年)以来の共演となった中井貴一と時任三郎は、しかし「何年か会ってなくても、つい昨日も顔を合わせていたような感じ」と口をそろえ、その関係を“戦友”と表現する。20代で出演した「ふぞろい…」から約30年にわたり、様々なドラマに出演し、いわばテレビ業界を“中の人”として見てきた2人が今回、映画『グッドモーニングショー』で演じたのは、TV局で働き、朝のワイドショーを担当するアナウンサーと番組プロデューサー。そんな2人に改めて、TVの隆盛と近年のインターネットの勃興で叫ばれる危機、30年の変遷について語ってもらった。――普段、ドラマでTVに出てらっしゃるおふたりですが、ワイドショーのスタッフを演じてみて、同じTV業界でもやはり違うものでしたか?中井:僕らは普段、ワイドショーには番宣(※放送前のドラマなどの番組の宣伝)で出させていただく立場で、招き入れていただいて2~3言、コメントするくらいで、そんなに大変と思ってなかったけど、実際の番組制作の現場はこんなに大変なのか!と。映画のオープニングで、番組の準備に奔走するスタッフたちの姿はほぼ、僕が見学させていただいた現場そのままです!朝の情報番組ほど“ながら”なものってないでしょ?つけっぱなしで朝ご飯食べたり、ネクタイ締めたりしながら「今日の占いは…」なんて(笑)。でも気楽なものほど作り手は大変で、それはコメディで笑ってもらうための作品作りの現場ほどシビアだってのとリンクしましたね。時任:立場としては普段、僕らは取材される側の人間で、それこそ若い頃は、ワイドショーに追いかけられて「この野郎!」って思ったり、肝心なコメントは編集で切られたりしてて腹を立てたものだけど(笑)。いざ、その立場に放り込まれてみると、こんなに大変な仕事なんだなぁって感じましたね。――中井さんが演じたのは、ある出来事がきっかけで、現場レポートができなくなったアナウンサー・澄田。時任さんは、番組プロデューサーの石山を演じられています。長い付き合いという意味で、お二人の関係と重なる部分もあったかと思います。時任:“積み重ねた時間”という意味では重なりますよね。中井:2人のシーンは、台本にない余白の部分を2人で作っていった感じがあったよね?時任:完成した映画を観たら「あれ?あそこ削ってるんだ?」ってやりとりもあったけど(笑)。中井:久々の共演で懐かしさもあったけど、それよりも僕らの中にある“同期”感覚がスクリーンを通じて映ってるんじゃないかなと思いますね。――「ふぞろいの林檎たち」の当時と比べて、ドラマ、TV番組の作り方も大きく変わったと思いますが。時任:当時は必ず、全てのシーンでリハーサルがあって週に2日はリハに充ててたからね。相当鍛えられましたね。中井:ほぼしごき(笑)。いま考えると、相当ぜいたくな時間でしたよ。時任:リハーサルをクリアするために、電話で読み合わせをしたりしたよね?中井:携帯なんてない時代に、家の電話でですよ。リハーサルのためのリハーサル!――当時、お互いについては俳優として、どんな思いで見てたんですか?中井:これね、さぶちゃんは「そんなことない」とか「覚えてない」って言うんだけど、当時、僕は21歳でさぶちゃんは25歳、この年齢の開きってすごく大きく感じるんですよ。本の読み方やお芝居の引き出しも確実に持ってて。演出家がものすごく怖くて、俺と柳沢慎吾は何やってもダメですごく委縮しちゃうんだけど、いつも三ちゃんだけ「うん、正しいですね」って言われるの。それはいま考えると役柄に合わせて狙ってやってたことなんだろうね。三ちゃんの役は自由人で、独立心の強いタイプだったし。そんなことはつゆ知らず、僕らはいつも「すげぇな、三郎」って(笑)。時任:いやいや、こっちはこっちでね「貴一、すごいな」と思ってたんですよ。いまも昔もそこは変わんないんだけど、100%の準備をした上で、アドリブが効くんです。本番で何があっても受け止めてくれるし、それを受けて返してくれる。今回の映画でも、改めて役者としてすごいなと思いましたよ。立てこもり犯役の濱田(岳)くんとのやり取りが、真に迫ってたなぁって。――現代でも名作と名高い「ふぞろいの林檎たち」ですが、当時はどんな風に受け止められていたのでしょうか?中井:「ふぞろい」の直後にね、フジテレビを中心にいわゆるトレンディドラマブームが起こるんですよ。でも、僕らがやってたのはあくまで社会派ドラマで、あの波には乗れなかったんだよね(苦笑)。フジテレビのドラマでも、トレンディのど真ん中のA面と、ちょっと変わった企画をやるB面とあるんですよ。柳葉敏郎さんに陣内孝則さん、石田純一さんなんかがA面で、僕らはB面…。そこはすごい格差を感じたよ! 「ふぞろい」も人気はあったけど、やっぱり社会派で、続編を続けるほど、そっちのカテゴリの空気が強くなったから…。トレンディは人々の“憧れ”を描くけど、僕らのドラマは「共感」。よく街歩いてて「頑張れよ」って声かけられました(笑)。頑張ってるよ(笑)!時任:少なくとも、人気の俳優をキャスティングして…という形で始まった作品じゃなかったしね。中井:撮影してたら、見学のおっちゃんが「ドラマ?誰出てんの?」って。「時任三郎とか柳沢慎吾が…」って俺はずっとスタッフとして対応してたもん(笑)。それが徐々に人気が出て、当時は移動は全員が集合してロケバスだったけど、修学旅行のバスが横に来て「キャーっ!」となってるんだけど、全員「え?誰に対し『キャー』って言ってんの?」って感じでポカーンとしてた。時任:楽しかったのと大変だったのと記憶がごちゃ混ぜになってるね。大変だったからこそ、チームワークが生まれて楽しいと思えるところまで行けたし。当時は「社会派」って部分についてもそんな深く考えず、自分は大学を途中で辞めた人間だから「もう一回、大学に入れた!」って喜んでた(笑)。貴一は当時は…中井:現役大学生でしかも3年生!そういう意味でもリアルだった。大学の中での反応もどんどん変わっていくの。自分が出る講義の教室の周りに人だかりができてて「人気の講義なんだ」と思って入ったら中はガラガラで「なんで教室の外にあんなに人がいるの?」って友達に訊いたら「お前だよ!」って言われるとか、漫画みたいなこともあったし(笑)。だって数か月前まで「誰が出てるの?」って聞かれてたんですよ。不思議だったね。――その当時といまと、TVを巡る環境も大きく変わってきています。中井:ちょうど僕がデビューした頃、TVに押しやられて映画がなかなか作れなくなった時代だった。今度はTVがインターネットに押しやられてる。一概に良いとか悪いって話じゃないんだけど、当時はTVって大人をターゲットにしてた。それがチャンネル権を子どもが持つようになって、子どもや若い子に向けて番組を作るようになった。でもいま、逆にチャンネル権を持ってるのって大人なんですよね。若い子はネットを見てるわけで。そういう意味で、勇気をもって立ち止まって、もう一度、大人向けの作品を作っていくのが得策なんじゃないかなって思いますけどね。楽な方に逃げて、お金を使わず…ってなると悪くなる一方で、悪い時ほどお金を掛けろって言うでしょ?時任:まあ、時代に合った媒体が広がり、必要ない、求められないものが淘汰されていくのは自然なことで、本当に良いとか悪いじゃないんですよね。ただ、スポンサーの意向ありき、コンプライアンスありきでの作品作りが、作品に変な影響を与えてしまう部分は多少なりともあるのかなとは思いますね。中井:最近、深夜枠のドラマが面白かったりするのは、作り手の意思で、面白いものを作ろうって意識がしっかりと反映されてるからなのかなと思う。見る側もアラばかりを探さない寛容さは必要ですよね。だって殺人犯が普通シートベルトして逃げないでしょ!?(笑)時任:そこは作り手も見る側も“作り話”として楽しめばね。中井:無茶をやるからこの世界、楽しいわけで、規律正しく生きてるひとは、俳優になってない(笑)。もう一度、大人になることを憧れさせるようなTVになってほしいですね。(photo / text:Naoki Kurozu)
2016年10月10日「シリーズの大ファンです!」「あなたの作品が私の人生を変えました!」。今日もどこかの映画のオーディション会場では、役を熱望する俳優たちが製作者たちにこう訴えているかもしれない。この場合、製作者たちは発言の真偽を見抜かなくてはならないだろうが、いまをときめくオスカー女優が目をキラキラさせながら冒頭の言葉を放ったとしたら、それは紛れもなく真実だ。『リリーのすべて』でアカデミー賞助演女優賞に輝き、旬のスターとなったアリシア・ヴィキャンデルにとって、『ボーン・アイデンティティー』に始まる“ボーン3部作”は過去の思い出にトリップさせてくれるものでもあるという。まだアリシアがオスカー像を手にする前、ロンドンのアパートで女の子3人とルームシェアをしていた頃。彼女たちの週末の楽しみは、“ボーン3部作”を観ることだった。「休日に女の子同士でワイワイ観るには最高のポップコーンムービーよね。その一方、世の中の動きを感じさせる物語なのが素晴らしいわ。ただ、私の楽しみ方は女の子っぽくなかったかもしれないけど(笑)。映画が大好きだし、女優として映画作りに夢中だったから、アクションシーンの長回しに痺れっぱなしだったの」。もちろん、女子同士でボーンのカッコよさにときめく瞬間もあった様子。「だって本当に素敵だもの。マット(・デイモン)はボーンをすごく魅力的なキャラクターに作り上げたと思う。そもそも、ほかのアクションヒーローたちは女性の扱いがなっていないわよね(笑)。マティーニを飲んだりしがちだし…。でも、ボーンは自分が何者であるかを知ろうとするし、悩み、傷ついていく。ものすごくクールに敵を倒す力を持つ一方、繊細さもあるところが素敵だと思うの」。そんなボーンに対し、シリーズ最新作『ジェイソン・ボーン』に登場するCIAエージェント、ヘザー・リーは興味深い振る舞いを見せる。ボーンをCIAに連れ戻そうとするヘザーと彼の関係を、演じるアリシア自身はこう分析する。「喪失を経験してきたボーンは、心の壁を崩すことができない。それはCIAで働くヘザーにも言えることで、彼女が自分と同じ葛藤を抱えているかもしれない可能性をボーンは感じたんじゃないかと思うわ。諜報の世界で、モラルのコンパスをどちらに向けるべきか悩んでいるんじゃないかって。だから、双方が望めば、2人の間につながりは生まれ得たと思う。でも、この映画の中では、ボーンにも観客にもヘザーの本心が分からないの」。『コードネームU.N.C.L.E』『エクス・マクナ』に『リリーのすべて』、そしていま熱っぽく語る『ジェイソン・ボーン』と、話題作の中で輝きを放つアリシア。自身の製作会社も立ち上げ、映画愛を加速させる中、映画作りにおいて最も重要なのは「ビジョンを持っている人との出会い」だと語る。「私は映画作りが大好き。まるでマシーンのパーツとパーツが組み合わさって1つのものになっていくように、みんなで力を合わせて共同作業を行う感覚が好きなの。私はカメラの前に立つ人間だけど、映画作りという大きなマシーンの一部に過ぎない。むしろ、大事なのは共同作業のリーダーとなる人物、つまり監督ね。リーダーである監督のビジョンやアイデアを形にしたいと思えるか、それが私にとって重要なことなの」。ビジョンを受け止めてみたい監督たちは、「彼の『預言者』が好き、数週間前に観直した『ディーパンの闘い』も素晴らしかった」というジャック・オディアールをはじめ、コーエン兄弟、ミヒャエル・ハネケ、ラース・フォン・トリアーなど、「挙げられないくらいたくさん(笑)」。一方、新鋭監督たちとのコラボレーションにも惹かれるという。「経験値がない分リスクはあるけど、彼らの情熱に魅力を感じるし、それを形にする手伝いができればと思っている。私自身にも、まだ経験が浅い時に私を信じてチャンスをくれた人たちがいるから」。もちろん、『ジェイソン・ボーン』でアリシアの情熱を受け止めたポール・グリーングラスとの再タッグも熱望している。「それは絶対よ。ポールとマットが次回作をやるなら、私は何が何でも参加するわ!」。(text:Hikaru Watanabe/photo:Nahoko Suzuki)
2016年10月08日新NHK朝の連続ドラマ「べっぴんさん」のヒロイン役を2261人が応募したオーディションで射止めた女優・芳根京子。撮影も順調に進み、「べっぴんさんチームは最高です!」と胸を張る芳根さんが、初めて挑む朝ドラ撮影のエピソードや、同世代の共演者に対する胸に秘めた熱い思いを赤裸々に語った。戦後の焼け跡の中、娘や女性のために子ども服作りにまい進し、日本中を元気に駆け抜けていくヒロイン・すみれとその家族、そして、彼女の仲間たちが夢へと向かう姿を描いた本作。当初、「自分らしさを忘れずに突っ走りたい」と意気込んでいた芳根さんは、すでに9週目の撮影が進行している中、現在の心境を「初心を忘れたくないという思いが強いこともあり、初めの頃と大きく変わったことはありません」と断言。さらに、主演の立場はプレッシャーになることから意識していないと言いつつも、「一番長く現場にいるから作品のことは一番考えていたいし、一番愛していたいと思う気持ちはぶれずにあります」と続け、伝統ある“朝ドラヒロイン”を自覚した強い眼差しを向けた。そんな芳根さんが演じるすみれは、太平洋戦争のさなかに結婚・出産を経験。妊娠中に出征した夫の帰りを待つ一方で人々との出会いに導かれ、得意の洋裁の腕を生かして子ども服作りを始める、はた目からはボーとしているように見えるが、芯の強さを持ち併せた女性だ。若干19歳にして出産シーンに挑戦した芳根さんは、「リハーサルは赤ちゃんの人形を使いましたが、それにわたしが感情移入して大号泣したので、みなさんが大笑いして…」と恥ずかし気に撮影秘話を明かしながら、本物の赤ちゃんが相手の本番では「産んだわけではないのに自然に涙が出ることが不思議で…。まだ子供だと思っていたけど、自分にもこういう気持ちがあると気づかされました」と母性本能が目覚めたことを報告。また、「自分に子供が生まれたら、泣きすぎて脱水症状で消えてしまうんじゃないかな」と冗談を言うと共に、「将来、子供は絶対に欲しいと思っているので楽しみ。リアルな気持ちが生まれました」と新感覚を喜んだ。様々な体験は人としての成長を促し、名だたる役者との共演は女優として大きく飛躍させてくれる。中でも、父親役の生瀬勝久からは役者として大切な金言を受け取ったよう。2人の出演シーンで何度かリハをやることで慣れてしまい、監督から「もっと新鮮な気持ちで」と注意された時に、生瀬さんから「いままでのことを全部忘れて、届けて!」と伝えられたのだとか。その時に、「ただ台詞を口にするのではなく、すみれの言葉をお父さまのもとへ届かせないと意味がない」ことに気づいた芳根さんは、「芝居であることを一度頭から抜いていただいたその時の気持ちを大切にしようと思いました」としみじみと述懐した。同じくオーディションで役をつかみ、すみれの女学校時代の同級生役で出演する百田夏菜子(ももいろクローバーZ)、谷村美月、土村芳も芳根に刺激を与えている。休憩中は他愛のない話をするほど仲が良く、一緒にいて安心する面々が、「同世代の方には負けたくない。頑張らないと!」という、これまで感じたことのない熱意を芽生えさせてくれたそうで、その理由を「同じオーディションを経てここに立っているからかな」と推測すると、「すごく良いこと」と切磋琢磨し合える関係に感激した。そして、「この人がヒロインで良かったと思われる存在になりたい」と瞳をきらめかせると、「上の方にはしっかりしがみついて、這いつくばってでも一緒に歩きたい。同世代とはみんなで一緒に歩くけど、でも負けたくない。みんながそういう思いになれば、もっといい作品になると思います」と自信をのぞかせた。その姿は、苦労をいとわず前進する、美しくも強いすみれそのものだ。(text : Rena Nishiki)
2016年10月08日ひとりだけでも思わず目を奪われるが、TAKAHIROと登坂広臣、この二人がそろうと、あたりの空気ごと華やかに染め上げてしまう。規格外の総合エンターテインメントプロジェクト『HiGH&LOW』の映画第2弾『HiGH&LOW THE RED RAIN』では兄弟役――通称・雨宮兄弟として主演を務めた。周囲から渇望され、焦がれられ続けた大きなうねりの中にいる二人は、大役を果たしたいま、何を思うのだろうか。胸の内を聞いた。2015年、深夜に放送されたテレビシリーズに端を発した『HiGH&LOW』は、複雑に絡み合う男同士の闘いに視聴者が熱を帯び、先だって公開された映画第1弾『HiGH&LOW THE MOVIE』では、その集大成が描かれた。…のだが、「全員、主役」がスローガンのこの物語にはアザーがたっぷりとあった。そこで、第2弾『HiGH&LOW THE RED RAIN』の看板を張ることになったのが雨宮兄弟。行方をくらました雨宮家長男・尊龍を、次男・雅貴と弟・広斗が探しに行くというロードムービー的要素もありながら、激しいバトルアクションや、家族の深い絆までも描き、涙が頬をつたうようなにくい仕上がりになった。これまで、顔見世程度の出演でファンをやきもきさせてきた雨宮兄弟。雅貴を演じてきたTAKAHIROさんは、「これで、ようやく『雨宮兄弟出る出る詐欺』から解放されます(笑)」とニヤリ。登坂さんも同意して、「僕らは何が目的か分かっていた上で雨宮兄弟を演じていたんですけど、ドラマや映画を観てくださっている皆さんは、ずっと『謎の兄弟だな』と感じていましたよね(笑)?」と、自分たちが演じたキャラクターの素性を、ようやく世間に知ってもらえることにホッとしている様子。兼ねてから話題にのぼっていたのは、二人の上に君臨する長男・尊龍が誰かということ。発表された斎藤工という配役は、風格、ルックス、演技、何をとってもパーフェクトで合点がいったに違いない。TAKAHIROさんは、「登坂と『兄貴って誰だろうね』とずっと話してたんですけど、腑に落ちました。もう斎藤さん以外考えられないですね」と諸手を挙げて喜んだ。「僕にとっては、本当にテレビで見ている方というか、芸能人というか(笑)。色気の塊のような方というイメージがあったので、ドキドキしました」と、触れなば落ちん魅力を持つTAKAHIROさんをもってしての最上級コメントだ。一方、以前より斎藤さんと親交があったという登坂さんは、「そもそも工さんからは、一視聴者として『ハイロー見てます!雨宮兄弟の長男誰なんでしょうね!?』とメールをいただいていたんです(笑)」と、オファー前のちょっとしたやり取りを明かした。「長男役に決まったことを真摯に受け止めて、すごく気合いを入れて現場に入ってきてくださいました。自分が入ることによって、絶対プラスの要素しか生まないと気持ちを込めておられたので、その思いに、もともといる僕らがグッと引っ張られました。工さんの現場での姿勢や兄貴としてのスタンスに、すごく気が引き締まったので、本当に大きな存在でした」と、役者としての尊敬の念を込めた登坂さんだった。シリーズ内、琥珀を演じたAKIRA、コブラ役の岩田剛典など、個性が強いキャラクターがそろう中でも、雨宮兄弟は出色の人気だ。その理由について、当の本人はこう分析する。登坂さんは、「脚本を読んでいて雨宮兄弟に求められたのは、100%格好いい男像だと思っていました。なので、広斗に持っていない部分を雅貴が持っているし、逆もあって。二人で完璧な格好いい男の理想像を作っている感じを求められていると思ったんです」と、それぞれが担う役割について表現した。TAKAHIROさんも、登坂さんの思いにかぶせる。「これまで点と点だったところを線にしたときに、雨宮兄弟はブレがない。常にまっすぐで、何にも恐れず正面から突っ込んでいくという男らしいところが魅力だと思っています。『THE RED RAIN』では、雨宮兄弟の抱えている大きな悲しみも語られるので、誰よりも人間くさい一面があるという新しい魅力もご覧いただけると思います」。いまさらながら、TAKAHIROさんと登坂さんは人気グループのヴォーカリストである。巷では二人の仲の良さに、「TAKAHIRO臣」コンビと、敬愛を込めて呼ばれるほど。インタビュー中も熱っぽく話すTAKAHIROさんを登坂さんがじっと見つめていたり、反対に登坂さんの発言にTAKAHIROさんが言葉で応戦したりと、この感じは…まさに雨宮兄弟そのもの。日頃の仲睦まじさは、やはりスクリーンにダダ漏れてしまうもの?「逆に言うと、役に対して全く作り込んだものがなかったので、普段もあのままだと思っていただけたら。役名と台詞だけ渡されて、本当に自由にやらせていただけたので。“雨宮兄弟”という架空の人物であり、僕らのドキュメントのようなものでもあると思っていただければ」と微笑みながら話すTAKAHIROさんに、「そうですね」と口角を上げて頷く登坂さん。この素の感じが収められているシーンがエンドロール後も続くので、場内が明るくなるまで席を立たず、雨宮兄弟を味わい尽くしてほしい。(text:Kyoko Akayama/photo:Nahoko Suzuki)
2016年10月07日30代女性が20歳年上の恋人と送る生活に、超頑固者の父が加わったら…?この設定にゾッとするか、クスッと笑うかは観る者次第。『お父さんと伊藤さん』は、おかしみの分だけ確かなリアリティのある映画だ。タイトルの“お父さん”と“伊藤さん”に挟まれるヒロイン、彩を演じた上野樹里も、自らの役を「いまの女性のリアリティを描いた役」と語る。34歳の彩は小さなアパートで、54歳の恋人・伊藤さんと同棲中。職場の同僚として知り合い、やがて付き合い始める2人の生活はごくごく穏やかなものだった。彩の父が家にやって来るまでは…。「働いているけどお金はあまりなく、結婚せず、父の問題を抱えるようになる。夢物語じゃない彩の状況を、身近に感じてもらえればいいなと思いました。撮影時、30歳にさしかかっていた自分だからこそ、彩を自然に、肩の力を抜いて演じられた気がします」。「台本を読んだとき、“もう、これは絶対リリー(・フランキー)さん!”と思いました」という伊藤さんは、飄々としていて捉えどころがないが、さり気なく優しい。そして、趣味は家庭菜園。彩として伊藤さんとの暮らしに浸った上野さんも、「一家に1台じゃないですけど、1人でいるよりは、一緒にいてもいい存在ですよね(笑)」との見解を示す。「働く34歳の女性ということで、彩にはそれなりの中身がある。自分をしっかり持った彩が、自分のまま一緒にいられるのが伊藤さんなんでしょうね。不思議なおじさんですけど、知恵もあるし、野菜を作ってくれたりもするし」。一方、頑固で口うるさいが、どこか愛らしくもあるお父さんと、彩の関係も面白い。決して仲のいい親子ではないが、ふとした瞬間、やっぱり親子!と思わせる。「藤(竜也)さんのヤクザ映画を観ていなかったので、ビビることなく、ニュートラルに接することができてよかったです(笑)。これから観て、お父さんだったときの藤さんとのギャップを楽しみたいですね。現場での藤さんは本当に優しく、チャーミングで、全然ヤクザじゃなかったです(笑)。すごく楽しみながら役者をなさっていて、現場にも1人で運転しながらいらっしゃるし、役作りのための下調べも自らなさるんですよね。藤さんの作品に対する愛情の傾け方を見て、私もそうありたいなと思いました」。ひとつ屋根の下に暮らす3人の関係は、物語が進むにつれ徐々に変化。さらには、いつの間にかお父さんすら伊藤さんを頼りに!?普段はのほほんとしながら要所要所でビシッとキメる伊藤さんに、うっかり(?)魅せられる女性が鑑賞後に急増している。「図星をちゃんと突いてくれる人ですしね。伊藤さんの一言で、彩もお父さんも“ウッ!”となったりする。54歳だからと言ってみんなが大人というわけじゃないんでしょうけど、伊藤さんは大人ですよね。その時々で柔軟に折り合いをつけるのが上手い。やることはやっているし、実はしっかり者。彩の実家で『ご立派な家ですねえ』なんて言っていたときも、自分が将来この家をどうするか、意外と真剣に考えていたんじゃないかなって(笑)」。気になる将来はさておき、彩と伊藤さんの“いまある日常”を演じるために、「撮影中は家で作ったお弁当を持参したり、自炊をしていました」とも語る上野さん。そこには、「彩がご飯を作って食べる生活をしているから、私も自分の手で作ったものを食べる生活を送りたくて」との意図があり、「仕事は仕事、生活は生活ではなく、生活の一部として好きなことを仕事にできるなら、それはとても豊かなこと」という想いがあったという。「1人の生活から2人の生活になったのを一番楽しみたいですよね。普通の日常なんだけど、いままでとは違うことが起きる。いままでの自分にとっての非日常というか、毎日が特別なんです。以前は100%自分のために時間を使っていたけど、いまは生活というものを考える割合が増えた。もちろん自分の時間も大事ですけど、それよりも相手のことが大事になってきたり、子どものいる人だとますます予想外のことが起きる中、その変化にみんな自ずと対応できてくるんだと思います。以前の自分からは考えられないようなことができるようになっちゃうし、小さいことの1つ1つを楽しめるようになる。きっと、そういった自分の変化が仕事にも味として出てくるんじゃないかなって」。今年5月の誕生日を経て、30代に突入したばかり。これも、上野さんにとっては大切な変化の1つだ。「20代のときには恋愛、夢、冒険なんてワードがありましたけど、30代になったら現実だとか、ちょっと先の未来がキーワードになる。自分の好きなもの、必要のないものがより明白になってくるし、だからこそ好きなものを掘り下げたくなるんですよね。もともと私はネガティブなものが好きじゃなくて…ネガティブなものが好きな人はいないと思いますけど(笑)、重い気持ちにさせたり、疲れさせたりするようなことはしたくない。せっかく観て下さる皆さんの気持ちを、役者としてちょっとでも楽にしたいんです。もっと言えば、元気を与えたい。それが、私の好きなことなんだなって。どんなことを要求されるか、これまでもこれからも分かりませんが、その中で好きなことを突き詰めていきたいです」。(text:Hikaru Watanabe/photo:Nahoko Suzuki)
2016年10月06日母親が働きやすい職場がたびたびメディアに取り上げられていますが、美容業界は出産退職が珍しくありません。理由は勤務体系、休暇中のブランクなど。今回は美容の現場の産後復帰と独立について、愛知県のエステサロン経営・マネージャーであり、美容に特化したコワーキングスペース「D→START」の安城オーナーを務める近藤利津子さんと、そのママさんスタッフにお話を聞きました。美容キャリアは35歳から近藤利津子さん愛知県安城市にあるエステサロン「サロンブランシュ」のマネージャー、近藤さんの美容キャリアは35歳から。マンションの一室を借りた「マンションエステ」からスタートしました。「お客が来ない状況に「このままじゃいけない!」と一念発起しテナントへ移動。努力の甲斐あってお客が入るようになり、手狭になって移動をテナントオーナーに相談したところ、「いま駐車場の土地があるからそこをビルにして、店舗設計から関わってみる?」と提案をうけ、現在のサロンが誕生。そして10年以上経った今年、2階をコワーキングスペースにしました。」そんな近藤さんのサロンには、この業界にしては珍しく出産を経て復帰したエステティシャンのかたが在籍しています。「復帰したい」と思える職場「サロンブランシュ」のみなさんママさんスタッフの1人である田中さんに、復帰を決めた理由についてうかがうと、やっぱりこの職場が好きだったのが大きいです。きっと違う仕事だと思ったらやりたいと思ってないです(田中さん)と、仕事内容より職場のよさが先に挙がりました。家にいると、働いている人が羨ましく思うのが出てきちゃって。でもまだ子どもが1歳だし、働いてもフル入れないし…。『働きたい』って言っちゃいけないと思ってました(田中さん)そんなとき、たまたま近藤さんと連絡を取る機会があり、ポロッと「働きたい」と呟いたのがきっかけで戻ることに。またお子さんを預かってくれるかたも見つかり、ご家族にも「やっておいで」と送り出してもらったそう。近藤さんにも「どうしてこのサロンに戻ってくるのか」を聞いてみると、「子どもの顔を見せにきてくれたり、こちらもお食事会に声をかけたりとか、そういう環境があったからでしょうか」と、戻りやすい土台があったようです。復帰によって前向きになれた「ブランクがあるので、復帰には不安もあった。けれども、お店のみんながフォローしてくれました」と笑顔で教えてくれた田中さん。復帰にあたり、技術を覚えているのかのチェック、新しいメニューの施術の練習、勤務可能時間の相談などを近藤さんとしっかり確認し、不安をなくしていったそう。働き始めてからのほうが、全てにおいて前向きになったと思います。家でずっと子育てと家事だけのときより、今のほうがどちらも上手にできているかな(田中さん)お客さんにも「戻ってきたんだね!」と喜ばれ、近藤さんとしてはサロンの信用にもつながっている実感も得ているようです。近藤さんと田中さん田中さんは長い通勤時間かけて出勤して、子どもを預かってもらえる間しか勤務できないんです。でもこの仕事が好きだからやりたいって。やりたいことがあるときは、どこか譲歩するところを見つけないといけないのかもしれません(近藤さん)美容ってひとりじゃ絶対にできない結婚・出産を経たネイリストやエステティシャンは、自宅サロンやマンションエステで独立するかたもいます。しかし集客ができず閉店するケースも。全身マッサージ1時間3千円でやってくれる自宅、マンションエステがあると聞きます。価格設定が、開店当初に来てくれたお友達向けの「お友達価格」のままになってしまう。だけどこの値段設定は、美容業界全体の値段も下げ、自分が持つ技術力の価値も下げていることにも気付いていないんですね。(近藤さん)独立は技術だけではなく、経営に関わる細かいところまで全部ひとりだけで決めなくてはいけません。退社したスタッフが独立について、近藤さんに相談にくることも。わたしもマンションエステがスタートでした。でも、自宅とかマンションだと看板が出せなかったり、あまり宣伝もできない。ひっそり開店して閉店していくサロンがたくさんあります。頑張ってもきっと相談できるところもないだろうし、こちらも聞いてももらえないと情報があげられない。美容ってひとりじゃ絶対にできないので、もっと自分をオープンにして、情報をどんどん取りに来てほしいです。そして1年先、5年先を思い描いて欲しい」(近藤さん)餅は餅屋。「私自身もたくさん助けていただきました。声を出してくれれば、なにか教えることはできますから」、と近藤さんはお話くださいました。仕事をして妊娠をすれば、どの業種の女性も産後のキャリアについて考えなければなりません。もし戻る場所があるなら一度声を出してみる。自分だけで調べず、その道の先輩に聞いてみる。たったその一歩で、目の前の光景がガラっと変わるかもしれません。※「D→START 安城」では、「起業相談会」・「お1人サロンのおしゃべり交流会」なども毎月開催予定。東海地方で美容・サロンにお悩みを持つかたは相談してみては。サロンブランシュ> FacebookD→START 安城> 公式サイト> Facebookライター:三谷 アイ
2016年10月05日孤高のスパイ、ジェイソン・ボーンが幸せになる日はやってくるのだろうか?2002年の『ボーン・アイデンティティー』に始まり、2004年の『ボーン・スプレマシー』、2007年の『ボーン・アルティメイタム』と、ジェイソン・ボーンは常に苦難の中で戦ってきた。記憶という過去を失い、愛する女性との現在を失い、未来すら奪われそうになる中、自分という存在を取り戻そうとしてきたボーン。あれから9年、再びジェイソン・ボーンと化したマット・デイモンの胸の内には、こんな想いがあったという。「続編を作るのは、本当に難しいことだと思う。慣れ親しんだものを求められはするけど、全く同じだと飽きられてしまう。つまり、親しみ深い部分と新しい部分のバランスが重要になるのだけど、続編を作るにあたって幸いなことに、前作から9年を経て世の中は大きく変わった。プライバシーとセキュリティの問題が深刻化し、ソーシャルメディアが活発になり、デジタルへの依存も高くなったよね。これほど様変わりした世界でボーンが活躍することこそに、僕たちの求めるバランスがあると確信したんだ」。マットの言う「新しい部分」をキャスティングで表現したい。こう言い出したのは監督のポール・グリーングラスだという。新キャストとして、アリシア・ヴィキャンデル、トミー・リー・ジョーンズ、ヴァンサン・カッセルらが加入。なかでも、アリシア演じるCIAエージェント、ヘザー・リーとボーンの関係は興味深い。「すごく面白い関係だよね。曖昧で謎めいたヘザーを、ボーンはもちろん、観客も信用していいかどうか迷う。そもそも、ボーンは誰も信用しないしね(笑)。ヘザーはサイバー世界の新しい世代の人間で、ボーンよりずっと若い。そんなヘザーを演じることで、アリシアはシリーズに新しい風を吹き込んでくれたと思う。もし更なる続編があるなら、2人の関係はもっと掘り下げて描かれるんじゃないかな」。一方、「親しみ深い部分」とも言うべき、変わらないものがある。それが、ジェイソン・ボーンというキャラクターだ。常に苦難の中で戦ってきたボーンは、またもや痛みを伴う戦いをCIAによって強いられる。「(シリーズ第1作の監督である)ダグ・ライマンと初めて話したとき、彼がこう言っていたんだ。“ジェームズ・ボンドには何だか共感できない”とね。ボンドは女好きだし、殺しを茶化すし、マティーニを飲んで呑気に振る舞う。60年代の感覚だよね。そうではなく、僕たちはボーンを共感できるスパイにしたかった。彼には良識があるし、正しい価値観を持っている。1人の女性をずっと愛し続け、自分がしたことに対して罪悪感も抱いている。だからこそ、彼は償いをしたい。それがボーンというものなんじゃないかな」。『ボーン・アルティメイタム』から現実世界は9年、劇中は12年が経過。ジェイソン・ボーンの人生の時計が進んでいたように、マット自身も年齢を重ねてきた。皺の数だけ味わいを増してきたボーンを、マットは「演じやすくなった」と言う。「初めから彼にはつながりを感じていたし、年齢を重ねると共に演じやすくなったのは事実。役の内面を演じるには、人生経験が多ければ多いほどいいからね。後悔もあれば失敗もあり、喜びもある人生のすべてを、演技に活かすことができるから。ただし、肉体的な苦労は今の方が大きいんだけど(笑)」。心の痛みも、肉体の痛みも、ジェイソン・ボーンから消えることはない。では、最初の問いに戻ろう。ジェイソン・ボーンが幸せになる日はやってくるのだろうか?「シリーズが続く限り、ボーンは苦しみ続けるんじゃないかな。幸せになったら、シリーズが終わっちゃうよ(笑)」。(text:Hikaru Watanabe)
2016年10月04日母親が働きやすい職場がたびたびメディアに取り上げられていますが、美容業界は出産退職が珍しくありません。理由は勤務体系、休暇中のブランクなど。今回は美容の現場の産後復帰と独立について、愛知県のエステサロン経営・マネージャーであり、美容に特化したコワーキングスペース「D→START」の安城オーナーを務める近藤利津子さんと、そのママさんスタッフにお話を聞きました。美容キャリアは35歳から近藤利津子さん愛知県安城市にあるエステサロン「サロンブランジュ」のマネージャー、近藤さんの美容キャリアは35歳から。マンションの一室を借りた「マンションエステ」からスタートしました。お客が来ない状況に「このままじゃいけない!」と一念発起しテナントへ移動。さらに数年後に現在のサロンを建て、2階をコワーキングスペースに改装しました。そんな近藤さんのサロンには、この業界にしては珍しく出産を経て復帰したエステティシャンのかたが在籍しています。「復帰したい」と思える職場「サロンブランジュ」のみなさんママさんスタッフの1人である田中さんに、復帰を決めた理由についてうかがうと、やっぱりこの職場が好きだったのが大きいです。きっと違う仕事だと思ったらやりたいと思ってないです(田中さん)と、仕事内容より職場のよさが先に挙がりました。家にいると、働いている人が羨ましく思うのが出てきちゃって。でもまだ子どもが1歳だし、働いてもフル入れないし…。『働きたい』って言っちゃいけないと思ってました(田中さん)そんなとき、たまたま近藤さんと連絡を取る機会があり、ポロッと「働きたい」と呟いたのがきっかけで戻ることに。またお子さんを預かってくれるかたも見つかり、ご家族にも「やっておいで」と送り出してもらったそう。近藤さんにも「どうしてこのサロンに戻ってくるのか」を聞いてみると、「子どもの顔を見せにきてくれたり、こちらもお食事会に声をかけたりとか、そういう環境があったからでしょうか」と、戻りやすい土台があったようです。復帰によって前向きになれた「ブランクがあるので、復帰には不安もあった。けれども、お店のみんながフォローしてくれました」と笑顔で教えてくれた田中さん。復帰にあたり、技術を覚えているのかのチェック、新しいメニューの施術の練習、勤務可能時間の相談などを近藤さんとしっかり確認し、不安をなくしていったそう。働き始めてからのほうが、全てにおいて前向きになったと思います。家でずっと子育てと家事だけのときより、今のほうがどちらも上手にできているかな(田中さん)お客さんにも「戻ってきたんだね!」と喜ばれ、近藤さんとしてはサロンの信用にもつながっている実感も得ているようです。近藤さんと田中さん田中さんは長い通勤時間かけて出勤して、子どもを預かってもらえる間しか勤務できないんです。でもこの仕事が好きだからやりたいって。やりたいことがあるときは、どこか譲歩するところを見つけないといけないのかもしれません(近藤さん)美容ってひとりじゃ絶対にできない結婚・出産を経たネイリストやエステティシャンは、自宅サロンやマンションエステで独立するかたもいます。しかし集客ができず閉店するケースも。全身マッサージ1時間3千円でやってくれる自宅、マンションエステがあると聞きます。価格設定が、開店当初に来てくれたお友達向けの「お友達価格」のままになってしまう。だけどこの値段設定は、美容業界全体の値段も下げ、自分が持つ技術力の価値も下げていることにも気付いていないんですね。(近藤さん)独立は技術だけではなく、経営に関わる細かいところまで全部ひとりだけで決めなくてはいけません。退社したスタッフが独立について、近藤さんに相談にくることも。わたしもマンションエステがスタートでした。でも、自宅とかマンションだと看板が出せなかったり、あまり宣伝もできない。ひっそり開店して閉店していくサロンがたくさんあります。頑張ってもきっと相談できるところもないだろうし、こちらも聞いてももらえないと情報があげられない。美容ってひとりじゃ絶対にできないので、もっと自分をオープンにして、情報をどんどん取りに来てほしいです。そして1年先、5年先を思い描いて欲しい」(近藤さん)餅は餅屋。「私自身もたくさん助けていただきました。声を出してくれれば、なにか教えることはできますから」、と近藤さんはお話くださいました。仕事をして妊娠をすれば、どの業種の女性も産後のキャリアについて考えなければなりません。もし戻る場所があるなら一度声を出してみる。自分だけで調べず、その道の先輩に聞いてみる。たったその一歩で、目の前の光景がガラっと変わるかもしれません。※「D→START 安城」では、「起業相談会」・「お1人サロンのおしゃべり交流会」なども毎月開催予定。東海地方で美容・サロンにお悩みを持つかたは相談してみては。サロンブランジュ> FacebookD→START 安城> 公式サイト> Facebookライター:三谷 アイ
2016年10月04日女優ミラ・ジョヴォヴィッチの代表作といえば、やはり『バイオハザード』シリーズと断言していいだろう。第1作の公開が2002年。この冬、シリーズ第6弾にして完結する『バイオハザード:ザ・ファイナル』まで、約15年にわたり主演を務め続けたミラの胸中は?「まだ映画が完成していない段階だけど、撮影は終わったし、さみしい気持ちなのは紛れもない事実ね」と率直に語るミラ。第1作『バイオハザード』では、自分が何者であるかさえ知らずにいた主人公アリスは、仲間たちと挑んだ壮絶な戦いを通して「本作でようやく自分自身の本質を理解できた」のだという。ミラ自身にとっても「女優として、ワクワクするような素晴らしい旅」だっただけに、「さよならを言うのはとてもつらいわ」と語る。誰もが知るハリウッド女優が、別の出演作を挟みつつも、約15年にわたり同じ役柄を演じ続けるのは、かなりのレアケースだ。「確かにアリスという存在が、キャラクターの枠を超えて、私の人生の大きな一部になったと感じているわ。人として自分らしくありたいと願うけど、現場ではアリスになりきらなければという使命感が沸いてくる。互いの人格が影響し合うから、アリスと同じように、混乱し自分が何者か分からなくなることもあったわ」。そんなミラの人生に、『バイオハザード』がもたらした最大の変化にして、最高の幸福はもちろん、夫であるポール・W・S・アンダーソン監督の出会いだ。「その通り!私にとっては生涯の恋人であり、インスピレーションの源なの。特に仕事に注ぎ込むエネルギーと情熱を間近で見ていると、いい刺激になるし奮起させてくれる。プライベートでは、2人の子どもにも恵まれたし、ポールが夫だという事実は、私にとってとてつもない幸運なのよ」。近年は『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』『ゴーストバスターズ』など女性が大活躍するSFアクションが花盛り。その先駆けが『バイオハザード』シリーズだったとは思わない?「そこまで直接的に大きな影響を与えたとは思わないし、私たちは信念を貫き、情熱をもってシリーズを重ねていっただけ。でも、確かに女性が主演のアクション大作が増えたことは認めるし、結果的に私たちの取り組みが一因だとすれば、それはとても誇らしいわ」。代表作である『バイオハザード』シリーズが大団円を迎えるいま、女優ミラ・ジョヴォヴィッチが見据えるのは“その先の未来”である。「女優として挑戦したいのは、コメディ映画ね。それに10代の頃、バンドを組んでいた影響で音楽も大好きだし、映像表現にも興味がある。最近、SOHNというアーティストのMVを監督し、出演もしたばかりなの。とにかく止まってはいられない。常に想像的な環境にいないと、私が私でいられなくなるから」。(text:Ryo Uchida)
2016年10月04日「いわゆる“中年感”ですよね」――。この男が発すると「中年」という言葉が全く違う、素晴らしい意味を持つかのように錯覚してしまいそうになる。だが、福山雅治が口にする「中年」が意味するところは、我々が想像するのとなんら変わらない、あの中年であり、映画『SCOOP!』で彼が演じているパパラッチ・都城静も、ガサツでだらしなく、下品なセクハラジョークを連発し、何かというと、すぐ野球を例えに持ち出す中年オヤジそのままである。その中年らしさに、“あの”福山雅治が共通点やシンパシーを感じたという。「年をとってくると、実は周りが言いたいことを言えなくなってきているんじゃないか?『あの人、めんどくさいところあるから…』なんて陰口を叩かれているんじゃないか?と思ったりして、ちょっとずつ若い人と距離を感じたりするんです。あとは、時代の最先端の感性やカルチャーを無意識に共有できていた頃とは違ってくる――僕自身、それはすごく感じますが――そういう“中年感”ですよね」。例えば映画序盤で、静が古巣でもある写真週刊誌「SCOOP!」の編集部を訪れるシーン。先輩風を吹かせながら“オラオラ”感満載で現れる静に、編集部員たちはやや引き気味に迎える。「おそらくは静自身もわかっているんでしょうけど、いつもと変わらない“先輩”の距離で接している(笑)。でも、若い後輩の編集部員の中には『いや、すみません静さん。もうあの頃の俺とは違うんで…』と思っているヤツもいる。そういうの、僕自身と若い子たちの間にもあると思うんですよ。そこは僕も静も一緒だなぁって感じますね」。借金まみれでゲスで、無精ひげを伸ばしたこの中年パパラッチ役について「まず何より、やったことのない役を演じてみたいって好奇心があった」という福山さん。巷では“あの福山が汚れ役を!”とも言われるが、福山さんは静を決してダメな男とも感じていないし、「そもそも僕自身、“ヨゴレ”みたいなところがありますから(笑)」とも言うが…。「いまでこそ“福山雅治”的な認知のされ方がありますけど、根はね…。それこそ東京に出てきてデビューした頃は、売れてないから金も仕事もなくて、とにかくヒマで、当時は代官山にあった事務所に顔出しては女性社員に『お腹すいたんです』ってたかり、『金ないんですよ』と金借りて、渋谷の井の頭線や中目黒のガード下にあったパチンコ屋にしょっちゅう行っていました。車だけは持っていて(※『10万円で買った』!)、昔は目黒川沿いなんて、桜が咲いてもいまみたいに人がいるわけでもなくて、そこに路駐して、パチンコで負けて、駐禁を切られて、またお金借りて、酒ばかり飲んで…(苦笑)」。まさしく静の若き日々といった感じである。「それをダメだとも思ってなかった。いたって普通の若者だと思っていて『ヒマならそりゃパチンコでしょ』って感じ(笑)。静も同じ感覚だと思います。『別にダメなことしてないでしょ』って。仕事はしているわけで、写真撮ってもらったお金を好きなことに遣ってもいいじゃんと。ヒモってわけでもないし、カメラマンとしての矜持を、プライドを持った役であり、“汚れ役”って思ってはなかったですね」。とはいえ、もはやパチンコ通いで駐禁を切られる若者ではない。いまでは“福山雅治”は、アイコンなのだ。「いろんなことが変化して…いや、むしろ、全てが変わったと言っていいと思います」と変化を自覚しつつ「でもね…」と続ける。「若い頃の経験って、それがごく一時期の短いものだったとしても、強烈に残ってるんです。『売れなかった』とか『ライブで大きな失敗をした』とか。他人から見たら、わずかな時間のことかもしれないけど、そういうことがたくさんあって、そういう、若いころのうまくいかなかったことってずっと残ってる。だからいまでも、根本の感覚とか意識って意外と変わんないんですよ。セコい話だけど、ツアーでホテルのスイートを用意されても、冷蔵庫の中のものは飲まないで、必ずコンビニに寄って水を買って帰る(笑)。僕は新聞配達をして小遣い稼いでた子どもでしたからね。いろんなことが変わったけど、やっぱり変わり切れない。仕事への向き合い方とかそういうのは変わっても、根本は変わってない。だから、静が醸し出している、仕事人としてではなく、“生活者”としてのいい加減さって、やはり僕の根底にあるものなんですよね」。若者は、変わらないものを持ち続けつつ、“福山雅治”となり、そして、あと数年で50歳に手が届く“中年”に達した。それこそ冒頭で自ら語っていた中年の悲哀、若さとのギャップに福山雅治はどう向き合っているのか?「昔、吉田拓郎さんが、あるインタビューでまさに同じ質問に対して『いや、ずれるんですよ、結局。どんなに自分が第一線と思っていても、年をとるといろんなことからずれていく。それを補正するんじゃなくて、そのまま行くしかないんですよ』ということをおっしゃっていたんです。若い頃にそれを聞いて『そうなんだ!』と思ったんですよね。その言葉で年をとること、ずれることが『怖くないな』って思えた。僕にもいつか、そういう時期が来ると思っていたけど、案の定、来ていますよ。『あぁ、ずれてきているな』って感じますよ」。ずれを受け入れる?「服だって相変わらず同じようなものしか着ないし、あと、本当にいろいろ覚えられなくなるんですよ。アイドルグループどころか若手俳優の名前も(苦笑)!それは絶対的に人数が増えたというのもあると思うんですが…共演した人しかわからんない。だから、最近覚えたのは(ドラマ『ラヴソング』で共演した)菅田将暉くんですよ(笑)。でもそれは記憶力の問題だけでなく、関心の問題でもあるんですよね。年をとって、そういう部分に関心がどんどんなくなっていく。そこは僕も既に相当ずれているし、でもじゃあ『ヤバい! 覚えなきゃ』と覚えるかというとそれも違う。それなら、その時間で本当に関心のあるものを追求すればいいだろうと。やっぱり、それは補正するものじゃないんですよね。あとは…まあそれなりにニュース――エンタメに限らず、政治経済、世界情勢とかの情報をアップデートするために、みなさんのようなネットの媒体のニュースを見たり、雑誌を買ったりはしていますけどね」。一方で、若い俳優やミュージシャンにも、福山雅治に憧れる者は多いが…。「会ったことないですよ(笑)! 『福山さんに憧れていました』という人に。コンサートに来て『最高でした』と言ってくれるのは、神木隆之介くらい(笑)。だから、自分としては、嫌われてはいないかもしれないけど、あんまり興味持たれてないんだろうってくらいの感覚。そういう意味では必死ですよ(笑)。それこそ少しでも関心のあることは、アップデートしていかなきゃって。そういう意味で、この仕事しているおかげですよね。そうじゃなかったら、もっとお腹も出ているはずだし、全体的にもっとだらしなくなっているでしょうね(笑)。仕事をさせていただいていることが幸いです」。(text:Naoki Kurozu)
2016年10月03日息を呑むような美貌でも、女優という肩書でもなく、北川景子を形作っているのはド根性! 話を聞きながらそんな思いがよぎる。口調はクールビューティな外見そのまま終始落ち着いているのだが、口をついて出る言葉は昭和を感じさせるような“熱”を秘めている。「できないこと、やったことのないことをやれるようになる。それが人生のモットー」――。そう語る彼女が、女優としてここ最近、強く望んでいたのが職業ものの作品、働く女性の役柄。そこにやってきたオファーがWOWOW初の法医学ミステリー「連続ドラマW ヒポクラテスの誓い」だった。処女小説「さよならドビュッシー」で「このミステリーがすごい!」大賞を受賞した中山七里の法医学ミステリーを実写化した本作。内科医の研修生の真琴は、尊敬する内科教授・津久場(古谷一行)の勧めで法医学教室へ異動する。そこで、天才的な腕を持つ法医学教授・光崎(柴田恭兵)と出会い、解剖を通じて死者の声なき声に耳を傾けることになるが、その先には医学界の恐るべき闇が…。医師役で白衣を着ることができて「嬉しかったです」と笑顔を浮かべる北川さん。「これまで、職業系のわかりやすいコスチューム、制服を着るような役はあまりなかったので(笑)、やっと着られました。着慣れていないので、これでいいのかな…?周りを見渡すと、古谷さんや柴田さんはすごく様になってるんですよ。まあ、私は新入りっぽい感じの役なので、それでいいのかと思いつつ、なんで皆さん、あんなに似合うんだ!?と思ってました(笑)」。本作の撮影後には、先日まで放送され高視聴率を記録した地上波ドラマ「家売るオンナ」で不動産屋の営業女性を演じたが、本作を含め、こうした“職業系”の作品、役柄をやりたいと思った理由は?「学生を演じるにはもう年齢を重ねてしまったし、かといって子持ちのベテラン主婦、不倫劇や離婚したシングルマザーを演じるにはまだ若いかな…(笑)?というのもあり、いま、自分に一番合っているのは、私自身が働く女性であるということも踏まえ、等身大の仕事をしている女性なんじゃないかと。これまで、きちんと仕事に徹している作品は実は『HERO』くらいしかやってなかったんですが、『HERO』をやって、職業ものって楽しい!と感じていたんですね」。そんな中、オファーが来たのが職業系ドラマの中でも一ジャンルとして確立された医療ドラマ。「いつか医者も演じてみたいとは思っていました。特にこの作品は、普通の医療ものとは違う、ミステリー要素を含みつつ、真琴が成長し、それによって光崎教授、津久場教授といった周りも変わっていくという人間ドラマがあり、そこが面白いと思いました」。ちなみに北川さんにとっては、WOWOWのドラマ出演はこれが初めて。「ここ数年、共演するみなさん、特に年配の俳優さんが『WOWOWは本当にいいよ!』とおっしゃるのを聞いてて、是非挑戦してみたいという思いがあった」という。「現場に入って最初は、慣れない現場に戸惑いもありました(笑)。普通の連ドラと違って、映画のように最初に台本を全て渡された上での撮影で、映画なら1冊ですが、今回は全5話分の5冊。それが全て揃っているということは、こちらで準備はできてないといけないということ。急に台本が上がってきて、準備が…という言い訳ができない(苦笑)!そこはプレッシャーでした」。撮影は決して順撮りではなく、同じ廊下のシーンならば、第1話から5話までまとめて1日で撮影することも!「あれ?いまは何話だっけ…?となることもありましたよ(苦笑)。実際、真琴はいろんな思いで廊下を歩くんですよね。最初は内科医として活き活きと歩いてますが、途中で不安そうになることもあったり…1日で5話分をまたぐってこんなに難しいものなのかと初めて知りました!正直、『楽しい』と思える余裕はなかったですね。終わって全5話を見て『またやりたい』と思ったし、正直『いまなら慣れてもっと上手くできるはずだから、もう1回頭から撮り直したい!』という気持ちです。その後、『家売るオンナ』の撮影に入って、そこで初めて『ヒポクラテスの誓い』の現場で自分がいかに余裕がなかったかということに気づきました」。もちろん、余裕のない現場でも吸収できたこと、刺激を受ける経験はたくさんあった。特に柴田恭兵、古谷一行らベテランの先輩俳優との共演は北川さんにとっては大きな財産となった。「私が一番若くて、先輩方に囲まれた現場で、和気あいあいと楽しい感じの学園もののハシャぐような感じはないんですけど、こんなにいろんなことを学べる機会もないなってくらい、勉強させていただきました。芝居をしていないで待っているとき、どんな風に待っているのか?どんな会話をしてるのか?いままでどんな苦労をされてここまでやってこられたのか?お話いただいたこと全て、見るもの全てが勉強になることばかりで。自分が引っ張っていく現場とはまた違って、全てを吸収して帰りたいって思いで、貴重な現場を経験させてもらいました」。もうひとつ、今回の作品、役柄を通じて改めて強く実感したことがある。「自分で『こうあらなきゃいけない!』と決めつけ過ぎちゃいけないなと改めて感じましたね。真琴は『生きている患者を救うために医者になった』という思いで自分は内科医だと信じてるけど、法医学教室に行き、亡くなった人の本当の声を聴くことの大切さを学びます。それは最初の印象では『何者なの?』と苦手意識さえ抱いていた光崎教授と出会い、彼に振り回されながら苦労して得たものですよね。私も元々『苦労した先に何かを得られる』と考えるタイプですが、より一層、その思いを強くしました。今回の役と一緒に成長できた気がします。大変な現場こそ得るものが大きいんだと素直に思えたし、いままでも思ってきましたが、楽に感じる仕事を選んでちゃダメで、難しいことや初めての挑戦をどんどんやっていこうと。毎回、うまくいくわけじゃないけど、挑戦の大切さを改めて感じました」。決して器用なタイプではない。「リラックスするのが苦手で、小さい頃から『もっと肩の力を抜いて』と言われてきた(苦笑)」と首をすくめる。「撮影に入っちゃうと、家でもそのことばかり考えちゃうんですよ。取材なんかで『そのへんは、プライベートには持ち込まないタイプです』とか言ってるんですけど(苦笑)。結構、持ち込んでるなとこの作品をやってても思いました。家でもTVで医療のニュースとかやってるとハッと見ちゃったりして(笑)」。器用にスパっと切り替えることができないならば、せめて逃げずに、少しでも役のためになればと不器用に正面からぶち当たり、悩み続け、そのときにできる全てを出し切ろうともがく。そうやって10年近く、女優として走り続けてきた。上手にこなすのが目的ではない。難しいことに挑み続けること――それこそが北川景子の存在理由。「そこは性格ですね。勉強でも、一度解けたら次は出来ない問題に挑戦して克服していくことに意味があると思っていて。世の中、知らないことの方が多いですから、地道に知らないことを一個一個、経験していきたいですね」。(photo / text:Naoki Kurozu)
2016年10月02日イギリスをはじめ各国で話題を呼び、世界850万部を超えるベストセラーとなった恋愛小説が、満を持して映画化された『世界一キライなあなたに』。原作のジョジョ・モイーズが自ら脚本を手がけるとともに、ロイヤル・ナショナル・シアターやウエストエンドで数多くの作品に携わった演劇界のベテラン演出家、シーア・シェアイックが長編映画の初メガホンをとった。ジョジョによると、小説のタイトルであり、原題の『Me Before You』は、「あなたと出会う前の私」という意味だという。イギリスのレトロな趣のある田舎町に暮らす、ファッションが大好きなルーことルイーザ・クラーク(エミリア・クラーク)と、バイクの事故により車椅子生活を送る元青年実業家ウィル・トレイナー(サム・クラフリン)は、彼女が彼の世話係兼話し相手を務めることになり、出会った。やがて2人はお互いにとって最愛の存在になっていくが、ある日、ルーはウィルの“ある決断”を知ってしまう…。「撮影のときにスタッフがジョークを言っていたの。『この映画はクリネックスにスポンサーになってもらうべきだ』って。わかるでしょ?」と、いたずらっぽく問いかける原作者のジョジョ。本作は、とにかく泣ける…のに、なぜかその後に、じんわりと温かな気持ちになる不思議な魅力を持っている。「実は映画の製作段階からすでに私たちは涙していたの。涙なしでは作れない作品だったわ。きっとキャラクターが脚本通りに表現されていれば、いろんな感情があふれ出るはずだし、その延長で笑いや涙も自然と生まれるの。(監督の)シーアは原作になるべく忠実なキャラクターを作ろうと努力してくれていた。だからこそ、映画を見ると自然に涙が出てしまうと思うの」と彼女は語る。エミリア・クラークが演じた、本作の魅力を牽引する主人公・ルー(ルイーザ)というキャラクター像はどのようにして作られたのだろう?「私はルイーザのことはごく普通の女の子だと思っているの。ルイーザは真っ直ぐな性格よ。でも、彼女の歩む道には困難がたくさんある。それでも彼女は優しさを忘れず、絶対に意地悪なことは言わないの。両親の教育が良かったのね。でもね、脚本を書いている段階で『汚い言葉を使うかしら?いや、使わないわ。こんなひどいこと言うかしら?いや、言わないわ』といろいろ迷いはあった。人物像はそうやって作り上げていくものだから」と、映画化への苦労に触れる。さらに続けて、「おそらく特に若い女性は、彼女に共感する部分がたくさんあると思う。20代くらいの女性は『こんなに頑張ってるのに、どうしてうまくいかないのかしら』と思うものだし、そういう自分をルイーザに投影するはずよ。あれくらいの年齢の女性たちは、別に怠けているわけでも、意欲がないわけでもないけれど、思うようにいかなくてフラストレーションがたまるものなのよ」と、多くの女子たちの思いを代弁する。そんな原作のルイーザが持つイメージは、「ゲーム・オブ・スローンズ」で示される若き女王の姿ともどこか重なり、素顔の明るさとも相まってエミリアにぴったりだった。一方、ウィル役のサムには、『スノーホワイト』や『ハンガー・ゲーム』シリーズなど、これまでの役柄から清廉でたくましい男というイメージとのギャップがあった。監督のシーアは語る。「エミリアは誰よりも先にスカイプで話した役者だった。だから脚本について話したのはエミリアが女優の中では一番最初だったの。そのときすでに彼女は小説を読んでいて、大好きだと言っていたわ。そのときの会話はすごく弾んだの」。その後もオーディションは続き、最終的には300人以上の女優と会ったという監督。「そのときに一番大切にしていたことは、役者がルイーザとウィルになっているところを想像して、彼らの間に素敵なケミストリーが生まれるかどうか。そうやって候補者を2014年の夏に男女6人にまで絞ったの」という。結果、最後にエミリアとようやく対面した監督は、「ルイーザがいた!ちゃんといるじゃない!」と、当初の直感が合っていたことに自信を覗かせる。また、ウィル役の候補にも6人の俳優が選ばれたが、「最後にサムと(エミリア)の本読みになって、私の中に電撃が走ったの」と監督。「なかなか言葉では説明できないけれど、まるで現実に生きているルイーザとウィルを目の当たりにしたようだった。オーディションはものすごく長いプロセスだったけれど、2人がいてくれたおかげでキャスティングの決断には全く困らなかったわ」。さらに、ジョジョも続ける。「私は作家だから演技に関しては詳しくないけれど、そんな私でさえもサムとエミリアの間にあったケミストリーがはっきりと分かった。ウィルとルイーザがスクリーンから飛び出してきたようで涙が出たわ」。「もし、舞台版『Me Before You』を作っていたとしたら、映画とはまったく違うキャスティングをしていたかもしれない」と監督は言う。「けれど、カメラは被写体に魔法をかけるの。サムとエミリアは魔法をかけられたわ。ハッとさせられたの」。確かに映画を観ているうちに、どんどん2人の関係に引き込まれていく。だが、やがて、ある種の期待や予想を覆す展開が、この物語には訪れる。原作のジョジョは、「ラストに関して、迷いはあった」と告白する。「私にとっては物語を書くとき、キャラクター作りが一番大変な作業なの。けれどウィルとルイーザに関しては、それがスムーズに進んだ。まるで彼らのすべてが分かっていたみたいに。この物語で真っ先に思いついたのは、車椅子でダンスするシーンだった。そこから彼らがどういう人物なのかを掘り下げていったの。まったく違う境遇にある2人を引き合わせるのは楽しかったし、物語を展開させて行くのも面白かった」。しかし、「あるとき突然、『もう無理!』と自信をなくしてしまったの。私は普段、読者のためにも物語のラストは語らないように心がけているけれど、この物語を書いている途中にエージェントに電話して、ラストを2つ用意したいと提案したの。読者自身が最終的にどちらか選べるようにするというものだったわ。けれど、エージェントはそのアイデアには感心していなかった。そこで最初に考えていたラストに立ち返ったの。そうして正解だったと思ってるわ。私が選んだラストが、きっとキャラクターの気持ちに忠実だと思ってる。読者や観客の中には、もちろん賛成しない人もいるはずだけど、私にとって大切なのは、ウィルがなぜその決断を下したのか、なのよ」。観客は、あなたが選んだラストに賛成しないかもしれないと?「人は自分の主義や経験というフィルターを通して、小説を読んだり映画を観たりすると思うの。小説に関してだけ言うなら、批判的な意見はほとんど聞かなかったわ。正直なところ批判を受ける覚悟を決めていたけれど、幸いそれはなかった。それどころか、四肢麻痺の方や介護士から良い反響をいただいたわ。本の中に出てくる苦労やユーモアは本当にあって、彼らの暮らしを忠実に描いてくれていたって」。そして映画については、「(サムが演じた)ウィルはアクティブでセクシーな男性だったでしょ。試写を観た女性が泣きながら会場から出てきて『ウィルに惚れた』と言っていることがある。私たちはそれが本当にうれしいし、素敵なことだと思っているの。私たちはちゃんとウィルという人をみんなに見てほしいと思っていたし、女性たちは車椅子ではなく、ちゃんとウィルを見て彼に惚れてしまうの」。その言葉を受けて、監督は「さっきジョジョが、小説には2つラストを用意しようと思ったと言っていたけれど、映画には1つしかラストはなかった」と補足する。「きっとジョジョは小説を書いているときは、ものすごく感情的になっていたはずだから、ラストを2つ用意したかったと思うけれど、映画を作るときには、スタジオも、私も、ジョジョもみんながラストは、あの1つだけという意見で一致していたわ」と語っている。なお、小説「Me Before You」は続編「After You」がすでに海外で出版されているが、もし本作がヒットしたら、続編の映画化の可能性もありそう?「ジョジョが続編があると教えてくれたとき、正直『知りたくない!』と思った。そして、映画がちゃんと公開されるまでは続編は読まないと決めたの」と監督。「まったく違う物語だから、私はまだそこに足を踏み入れたくないと思っているの」。そしてジョジョは、「もし、いまの質問がシーアとサムとエミリアで一緒に映画を作りたいかという意図なら、もちろんまた一緒にやりたいわ。現場は楽しかったし、役者たちは臨機応変に頑張ってくれたから。スタッフやキャストはみんな自分のエゴを出さず、本当に作品のことを考えて行動していたわ。前向きで素晴らしいチームだった」と明かし、称賛を贈る。最愛の人に出会い、これまでの人生が一変する物語。その物語は、まだまだ続いていくのかもしれない。(text:cinemacafe.net)
2016年10月01日ウーマンエキサイトのママ読者モデル「ママリーダーズ」のメンバーを紹介します。日々を振り返りながら語る、母として女性としての思いとは?■ママリーダーズ 原田あゆみさん原田あゆみ Ayumi Harada独身時代は看護師として勤務し、ゴルフ、茶道、社交ダンス、日本舞踊、ボランティア活動などオフも多趣味に満喫。その後、青年海外協力隊のエイズ対策隊員としてザンビア共和国で活動、帰国後に現在の主人と出会い結婚。現在は息子さんと娘さんの二人育児中。ママ向けワークショップや親子で楽しめるイベントなどでスケジュールを埋めるのが大好きで、出産後もアクティブに楽しく暮らしている。生年月日 :1985年4月11日子ども : 息子(2013.12)、娘(2015.9)居住地 : 東京都興味のあるジャンル : 教育、美容、ファッション、ハンドメイド、料理、旅行Instagram: @ayutan_0411 Facebook: ■ママでも参加できるボランティア活動に、やりがいを感じて青年海外協力隊に参加するなど、社会貢献や福祉活動への興味も強い原田さん。直近では妊娠中の服や授乳用ワンピース10点を持参し、不要品オークション「ママ100人プロジェクト」に参加したそうです。収益の一部を熊本地震の被災者に寄付する活動に携わり、「ママでも役立てることがあると思えました」と充実感を語ってくれました。もともと看護師ということもあり、健康や病に関する知識が豊富。お子さんの病気に対しても落ち着いて対応できる強みがありました。「でも、子どもにとってはあまり心配してくれない母親で、寂しい思いをさせているかもしれません」そんな原田さんも第一子妊娠中にはひどく気持ちが沈み、“マタニティブルー”を経験。家事全般があまり得意でないうえに、仕事でも疲れ果てていた原田さんを助けてくれたのは“カジメン”なご主人だったそうです。毎日夜ご飯を作るなど、積極的に原田さんを支えてくれたのだとか。■最近はまっているのは「船旅」。子連れ家族にはオススメ!出産後は勤めていたクリニックを退職し、子育てに専念。“ネントレ”を実践したり(生後2カ月から夜一度も起きないお子さんに育っているそうです)、「ママと同じくらい、パパにもちゃんと懐いてほしい」と“イクメン”育成計画を実践したりと、楽しみながら取り組んでいるそうです。原田さんの狙いどおり、子どもたちはパパにとっても懐いているのだとか。ポイントはやはり「旦那さんを褒めて育てること」だそうで、ぜひ具体的な手法を伺いたいところです。「子どもと一緒に楽しめることも、たくさんある」と気づいてからは、毎日予定を埋めるほどアクティブに出かけるように。最近は「船旅」にもはまっています。「船内にはスケートリンクやプールがあるし、食事も食べ放題。移動の疲れもないし、思ったよりも高くないんです。家族全員がリラックスできる旅で、とってもおすすめです」■今の目標はバレエの発表会。将来は復職も考えています最近では、お子さんの習い事のついでに「大人のダンスレッスン」に参加したことがきっかけで、昔習っていたバレエへの思いが再燃。運よく家の隣にあったバレエ教室に、お子さんが寝静まってから週2回通っているそうです。現在は来夏にある発表会に向け、踊る感覚を取り戻そうと奮起中。看護師の資格も生かし、「いつか子どもの手が離れたら、訪問看護や病児看護、病児シッターといった仕事もしてみたいですね」と未来の目標も語ってくれました。育児を楽しみながら、自分の目標も持って頑張るママのことを、お子さんたちもきっと誇りに思っていることでしょう。ユニークな遊びやイベントにも敏感な原田さん、これからどんな情報を発信してくださるか、とっても楽しみです。(撮影/根田拓也、取材・文/外山ゆひら)
2016年10月01日ウーマンエキサイトのママ読者モデル「ママリーダーズ」のメンバーを紹介します。日々を振り返りながら語る、母として女性としての思いとは?■市来理恵さん市来理恵 Rie Ichiki出産後3ヶ月で現在の会社に入社し、コスメブランド「Pure Smile」のプレス担当に。各媒体へのリリースやニュースの紹介に携わっている。プライベートでは2008年に結婚、現在は娘二人と夫との4人暮らし。好きな街はみなとみらいや表参道。休日は午後早めにディナー作りを開始し、ゆっくりまったり過ごすのがお気に入り。生年月日 : 1981年9月28日子ども : 長女(2010.3)、次女(2018.3)居住地 : 神奈川県興味のあるジャンル: インテリア、美容、ファッション、ハンドメイド、旅行、アウトドアInstagram: @rriiiee928 Facebook: ■「仕事したい」思いが募り、産後3ヶ月で新しい会社へ出産後3ヶ月で新しい会社に就職した、という珍しい経緯を持つ市来さん。以前はアパレルの会社に勤めていたものの、結婚・出産前はアルバイト形態だったため、「仕事したい」という思いが長らく募っていたのだとか。そんな折に知人のツテで現在の会社からの誘いがあり、「やりたい!」と即答したそうです。とはいえ、まだ0歳児ということもあり、保育園からはしょっちゅう呼び出しがかかるし、創業間もない会社には他にママ社員がひとりもいない状況。当初は「気まずくて仕方なかった」そうですが、途中から「気にしていたら、どちらもうまくいかない!」と割り切るように。会社も「社員たちに長く働いて欲しい」と考えているとわかり、積極的にママならではの意見を出すように。結果、新たに子どものバースデー休暇制度ができるなど、市来さんの存在が社内環境整備のきっかけになっているそうです。■娘とボルダリングに夢中。習い事は「簡単にやめない」と約束職業柄、美容やファッションへの関心が強いという市来さん。最近では、仕事も家事もひと段落した時間に自分用の“アクセ作り”をすることが、ひそかなリラックスタイムになっているそうです。また週末は娘さんの習い事に付き添う形で、ボルダリングを楽しんでいるとか。実は市来さん、子どもの習い事に関しては信条があるそうです。子どもの本気度を試す意味でも、「飽きたらやめるはダメよ」「やるなら3年以上は続けてね」と約束できるものだけを許可しているとか。そう伝えると子どもは真剣に考え、「本当にやりたいか」を自問自答するといいます。一時期騒いでいたピアノ教室などは、最終的に「やっぱりやらない」と自分の意思で判断したそうです。■家事も子育ても「なるようになる」と思って無理をしない「なるようになる」がモットーで、「適当な性格なんです(笑)」と自称する市来さん。「疲れているから今日は外食にしよう」「洗濯物がたまっているけど、週末でいいや」などと、日々無理をしない姿勢で家事育児に取り組んでいるそうです。同じ境遇で悩んでいる友人ママの話を聞くなかで、「ずぼらな私の姿を見て、そういう感じでもいいんだな〜とリラックスしてもらえたら」と思うようになり、ママリーダーズへの参加を決めたのだといいます。アートマスクやパックなど、幅広い世代の女性に向けた商品のPRに携わる現在。「自分が企画したママ向けコスメで、いつかヒットを出したい」と、今後の夢も語ってくれました。旦那様や周囲の理解もあってこそですが、肩の力を抜いて仕事と家庭を充実させる市来さんのスタンスは、頑張りすぎて疲れがちな人にこそ、参考になるかもしれません。(撮影/根田拓也、取材・文/外山ゆひら) 【参加企画】
2016年10月01日