「進撃の巨人」リヴァイ役のような低音の鋭い声色から、「夏目友人帳」夏目貴志役のような透き通った好青年の声、はたまた「おそ松さん」松野チョロ松のようなコメディトーンから「デュラララ!!」シリーズ折原臨也役のようなミステリアスボイスまで…幅広い声色でさまざまな役を魅力的に演じる声優・神谷浩史。その声をTVアニメから聞かないクールは無いほどの超人気声優の彼が、日本SFアニメ史の始祖にして不朽の名作「宇宙戦艦ヤマト」新シリーズ『宇宙戦艦ヤマト2202愛の戦士たち』に出演が決定。この度、本作出演への想いを明かしたオフィシャルインタビューが到着した。2013年4月~9月、全国にて放送され大ヒットを記録したTVアニメシリーズ「宇宙戦艦ヤマト2199」。あれから3年――多くのヤマトファン待望の新シリーズが全七章で描かれる。モチーフとなるのは、1978年に公開され、日本全土を熱狂させた劇場用映画『さらば宇宙戦艦ヤマト愛の戦士たち』。脚本は、『亡国のイージス』の原作や『機動戦士ガンダムUC(ユニコーン)』のストーリーを手掛けた福井晴敏が担当。壮絶なる物語が、新たな解釈と装いで現代に蘇る。そんな大作の始まりを告げる“第一章”となる本作。神谷さんは「非常に大きいタイトルですし、決まればいいなと思っていました。ただ、一つの役に対して一人にしかチャンスがない訳ですし、自分も複数いる候補者の中の一人という認識ではありました。そんなある日、マネージャーから電話が掛かってきて、神谷君で決まりましたという連絡を頂いて。なかなか年に何回も嬉しい連絡を頂けるということはないので、非常にこれはありがたいことだなと素直に思いましたね」と出演への喜びを明かす。神谷さんが演じるのは、旧作に登場しない完全オリジナルキャラクターのクラウス・キーマン。ガミラス帝国地球駐在武官であり、バレルの命を受け、ヤマトクルーの動向を調査する。身体能力に秀でており、パイロットとしての技量も一流。普段は無口だが、たまに口を開くと歯に衣着せぬ毒を吐くという。その名の通り、今後の物語の“キーマン”となる存在のようだが、「キーマンは福井版ヤマトというか、福井さんが係るヤマトを象徴するキャラクターになるのかもしれない」と感じたそう。「福井さんの意思がすごく色濃く反映されたキャラクターになるのではないかと思っているので、気合を入れて臨んでいきたいと思います」と意気込みを寄せる。前作『2199』から続投しているキャストが多い中、新たに加わった神谷さん。アフレコ現場の雰囲気を「ベテランの方たちが非常に多い現場」と感じたそうで、「ベテランの方がいて、小野大輔という中堅どころが主役を演じて、新人の子もいる、非常にバランスの取れた現場だなと思いました。やっぱりベテランの方々のお芝居はとても迫力があって、存在感があるんです。そこにどう絡んでいこうか、どういう風にお芝居でセリフを戦わせていこうか、緊張感もある中で、非常にやりがいを感じる現場でしたね。あと、個人的な感想としては『2199』を全話観ているので、『あっ、本物の人たちがいる』ってちょっと思いました(笑)。僕は『2199』は全く絡んでいないので、ある意味、一人のファンとしてアフレコを楽しんでいましたね」。主演の小野さんとは共演作も多く、ラジオ番組でも共にパーソナリティーを務める間柄だが、「第1話のストーリーに関しては、小野(大輔)君と別の仕事で一緒になる機会がたまたまあったので、第1話はどんな感じだったのか話を聞いたりして第2話の台本に臨めた」とエピソードを述懐。実は、神谷さんが登場するのは、第一章の第2話「緊迫・月面大使館に潜行せよ」からで「どんな繋がりでここ(第2話)まで辿り着いているのかなっていうのが気になっていて。尚かつ、今回は『2199』の続編ということなので、『2199』を全部観た状態で第2話の台本には辿り着いているんですけど、その間にテレビシリーズの総集編と新作の劇場版があるんです。まだその時は新作の劇場版を観ていなかったので、一体何が起こったんだと(笑)。テレビシリーズを全部観たはずなのに話が繋がっていないということにちょっと驚きまして、これは参ったなと(笑)」。大作への途中参戦ならではの苦労もあったようだ。本作の台本を読んだ神谷さんが「ここから物語が始まるんだろうなという感じが猛烈に漂っていて」と印象を語るように、まさに壮大な物語が始まろうとしている、『宇宙戦艦ヤマト2202愛の戦士たち』。「ヤマトシリーズを観たことがないから…」と敬遠することなかれ。「(『ヤマト』の)主題歌の1番の歌詞だけでも知っていれば、前作『2199』のストーリーを知っていることになるんです。細かい部分や感じるものは違うかもしれないですけど、本質はあの歌1曲に集約されているので、それさえ分かっていれば今回の『2202』は観ることができます」という神谷さんの言葉を信じ、ぜひ劇場に足を運んでほしい。『宇宙戦艦ヤマト2202愛の戦士たち』第一章は、2017年2月25日(土)より、全国15館にて2週間限定劇場上映。(シリーズ全七章劇場上映決定)(text:cinemacafe.net)
2016年12月17日福士蒼汰にとって、映画『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』の撮影が行われた京都は、『仮面ライダー フォーゼ』の撮影でも訪れた思い出の地である。「ここで戦った!と昔を思い出しました(笑)」と今回の撮影をふり返る。かつて、リーゼント頭&学ランで歩いた伏見稲荷で、今回は小松菜奈演じるヒロインとデートし、『仮面ライダー』でドボンと落ちた鴨川では2人で飛び石を楽しみ、怪人と戦った知恩院を、今回は撮影の合間にスタッフ、共演陣と共に訪れた。悠久の時が流れる古都は以前と変わらないが、この男を巡る状況は、5年前とは大きく異なる。子どもたちから熱烈な声援を送られていたヒーローは、いまや、世代を問わず多くの人々が知る人気俳優として、ドラマ、映画に引っ張りだこである。『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』は七月隆文のベストセラーの映画化。『アオハライド』『ホットロード』など、いま、日本を代表する青春映画の旗手・三木孝浩監督が、これまた青春映画ド真ん中の主人公を次々と演じてきた福士さんとタッグを組んだ。福士さんが演じるのは、美大生の南山高寿。これまで数々の少女漫画原作の作品やドラマで演じてきた正統派の“王子様”というよりは、福士蒼汰らしからぬ、ややサエない気弱な青年であるが、電車で見かけた福寿愛美(小松菜奈)に一目惚れし、勇気を出して声を掛け、交際することになる。「最初は挙動不審な男の子です(笑)。自分に自信がない…もしかするといまの若者に多いタイプなのかもしれません。突発的な勇気――、一目惚れして気持ちを伝えるところから始まるわけですから、そういう強さはあるのでしょうが、基本的には弱々しいイメージでした。演じる上で、そんな高寿の成長をグラデーションで見せていくことを意識しました」。愛美と毎日顔を合わせ、幸せな日々を過ごす高寿だったが、愛美にはある“秘密”があり、2人の恋は30日間という限られた時間の中でのものとなる。高寿は目の前の事実に戸惑い、葛藤することになるが、福士さん自身、もしも恋人と一緒にいられる残りの時間が限られたものだったら?「切ないですよね。前向きになることに時間がかかるけれど、その時間すらない…。終わりがあることは本当に切ないですし、考えて…僕はどんな選択をするんだろう?そんな悲しい恋なら、最初から仲良くならないという選択もありますよね?それでも、高寿と愛美はそうではなくて、最高の時間を一緒に過ごし、最大の悲しみを受け入れるわけで…でも僕も、本当に好きな相手だったら、同じ選択をすると思います」。では、そんな相手との30日間の最後の1日の過ごし方は?「何か、思い出を作ろうとすると思います。サプライズするとか、2人の思い出の場所に行ったりするとか。やっぱり、何かしたくなると思う。もちろん、何もせず、何も変わることなく過ごすこともいいですが、僕はたぶん、いろいろしようとすると思います」。さきほど「成長のグラデーション」という言葉が出たが、映画の最初と最後で、わずか30日間しか経っていないにもかかわらず、高寿は見た目も、内面的にも全くの別人とも言える“変身”を遂げている。そんな中でも、福士さんが最も印象深いシーンとして挙げたのは、愛美に秘密を告白され、葛藤しつつもその後、彼女の真意に気づく場面だという。「愛美がそれまで、(真実を)隠したまま笑顔で楽しそうにいてくれた理由――その全てがわかった瞬間のシーンです。自分の中でもすごく大きなポイントで、実は撮影自体は早めの段階だったので、自分なりにイメージをしながらの演技でした。もしも自分が愛する人といて、その人が僕の幸せのために大事なことを隠していてくれたなら…と」。福士さん自身、この作品に出演し、高寿として忘れられない30日を生きたことで、人生、特に“時間”に対して、確実に意識が変わったという。「誰とどういう時間を過ごすのか?それは前から大事にしていた部分ではあるんですが、より一層、意識するようになりました。特に、仕事の時間が多いのでプライベートの時間を誰とどう過ごすのか?考えます」。“青春映画の名手”三木監督の作品に参加して「前から凄いなと思っていましたし、想像はしていたのですが、それでも一番驚きました」というのが、その映像美。「水面の光、朝の伏見稲荷の木漏れ日、光の使い方が本当に美しく、ひとつひとつの画をすごく大事に撮影されているのを感じました」と語る。いや、出来上がった映像だけではない。演出面においても、三木監督は俳優陣に対し、自ら編集した、オリジナルのサウンドトラックを渡し、役柄を膨らませていく上でのイメージを伝えるという、これまで出会った監督にはない独特コミュニケーションがあったという。「初めてお会いした日に、10曲くらいの音源を渡されました。歌詞が入っている曲もあれば、メロディだけのものもあって『こういうイメージだから』と。全体的に、透き通った感じの印象の曲が多かったです。少なくとも激しいロックとかではなく(笑)。その後、お手紙もいただいたのですが、そこには『温度、温かさを感じられる映画にしたい』ということが書かれていました」。自身は決して、高寿とは「近くない」とのこと。例えば、電車で気になる相手を見かけても「絶対に行かないと思います(笑)。そもそも、一目惚れすることがないと思います。素敵だなと思ったら接点を見つけようとするかもしれませんが、急に話しかけることはしないです」と語る。デートプランなどに関しても、高寿は親友の上山(東出昌大)に相談し、事前に下見をし…と準備に余念がないが、福士さんは「僕は、事前に全てを決めない派ですね。どちらかというと行き当たりばったりです(笑)、相手の気持ちも聞いて、その場で決めていきたいです」となんとも自信あふれる頼れる男っぷり!ここ数年で、主演映画やドラマへの出演を重ね、プロモーションなどを含め、チームの“センター”にいることが要求されることも増え、それこそ高寿が少しずつ、頼れる男になっていくのと同様、福士さんも自信を持つようになった部分もあるのでは?「確かに昔よりは自信を持っている部分はあると思います。仕事を始めたばかりの頃と比べて単純に、多くの方が自分のことを知ってくださっている。昔は、コンプレックスというか、プロモーションで出演するTV番組でも、どこかで『僕なんかが発言していいのかな?』と思っていたんですよね。いまは、そういうことをあまり気にしなくなったと思います」。一方で、これだけ主演作が増えても、現場ではあえて“座長”としてみんなを引っ張るという意識は持たないようにしているとも。「そこに関しては昔もいまも変わらないです。むしろ、無理に『頑張ろう』と力まないように心がけています。やはり僕は、周りを力強く引っ張るような性格ではないですし、どちらかと言うと『みんなで頑張っていこう!』というタイプ。ただ、共演する方に対しては、以前より自分から話しかけるようになりました。でもそれくらいだと思います。変わったことは」。成長と不変と。いずれをも抱えて、京都の街を福士蒼汰は歩く。(photo / text:Naoki Kurozu)■関連作品:ぼくは明日、昨日のきみとデートする 2016年12月17日より全国東宝系にて公開(C) 2016「ぼくは明日、昨日のきみとデートする」製作委員会
2016年12月16日「しゃかりきになっていた20代に比べると、いまはありのままの自分を受け入れて、楽しめるようになったわ。確かに超大作への出演が続いていて“カオス”な状況だけど、浮き沈みが激しい仕事だし、流れに身を任せている。人間って急に変われるものでもないから」。故郷のイギリスを拠点に、学生時代から舞台、テレビ、映画と地道にキャリアを積み上げ、初のメジャー作品『アメイジング・スパイダーマン2』を皮切りに、オスカー候補となった『博士と彼女のセオリー』、トム・ハンクスと共演した『インフェルノ』と破竹の勢いでスターダムを駆けあがるフェリシティ・ジョーンズ。大ブレイクの“決定打”ともいえる主演作『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』の全世界同時公開が間近に迫る。生まれも環境も違うワケありの面々が極秘チーム<ローグ・ワン>を結成し、帝国軍の究極兵器<デス・スター>の設計図を奪取するミッションに挑む本作。シリーズの原点である『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望』の直前に繰り広げられた冒険にスポットをあてる、いわば“もうひとつのスター・ウォーズ”だ。主演のフェリシティは、孤独な幼少期を過ごした“銀河のアウトロー・ガール”ジン・アーソを体当たりで演じている。「性格は無謀で攻撃的。厳しい現実を生き抜くために、犯罪にも走った。でも、ジンというキャラクターがすばらしいのは、最初から周りの男たちと同等に扱われているという点だと思うわ。よく、あるでしょ?『女の子なのに、男勝りですごいね』みたいに戦うヒロインを特別視すること(笑)。もちろん、演じる上での苦労はあった。アクションをこなすために、肉体的な準備も必要だったけど、大切なのは仕事に対し、献身的であることだもの」。銀河を舞台に、家族の愛が紡がれる「スター・ウォーズ」シリーズ。その家族の一員になった感想は?「私自身にとっても、思い入れの強い作品だけど、イベントなどで喜びに満ちあふれたファンの姿を目の当たりにすると、『スター・ウォーズ』とは一種の信仰だと再認識するわ。すてきだなと思うのは、世代を超えて家族一丸となって、作品を愛していること。コスプレした親子連れからサインを求められると、それだけにうれしくなるわ」。『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』の魅力は、まるで違った個性をもつメンバーたちが、信念と信頼で結びつき、同じ目的のために共闘する姿だ。「その通り。お互いの違いを尊重し合えば、世界を変える“新たなる希望”を共有できるの。とても現実的で力強いメッセージだと思うわ」。そう語るフェリシティに、世界一有名な超大作に主演したという気負いやおごりは一切なし。あくまで自然体な姿勢は、ジン・アーソそのままだ。(photo / text:Ryo Uchida)
2016年12月15日大学中退後、所属コミュニティがなくなった不安から鬱による自傷行為を繰り返し、摂食障害も患った永田カビさん。満たされない寂しさから、人肌を求めてレズビアン風俗に足を運ぶことになるまでの心情を描いた自叙伝的漫画『さびしすぎてレズ風俗に行きましたレポ』がネットで話題となり書籍化。誰の心にもある寂しさや、承認欲求との向き合い方が共感を呼び、あれよあれよと重版がかかる大ヒットとなりました。自己否定のループにあった永田さんが、漫画での成功をきっかけに変わったこととは? 寂しさの先にあった、今のお気持ちを伺いました。「若い芽を摘みたい…」ライバルに負けたくない覚悟永田カビさん――作品の中では、ご両親からの愛に飢える様子も描かれていますね。いわゆる「毒親」ではなくて、永田さんも、お母さんのことが大好き。でも、一緒にいるのが苦しいという。「毒親に悩む人にオススメ」というレビューがあったりするんですが、そのつもりで描いたわけではないんです。作中では「毒親」という言葉は使っていないし、母は世間でいう「毒親あるある」にも当てはまらないんです。母は連載(『一人交換日記』(ヒバナ/小学館))も読んでくれていて、「私はあんなのじゃない」って直接クレームも来るんですけど(笑)、あくまで私の主観で描いていて、当時はお母さんが怖く見えたんだよって。ただ、それだけですね。――作中で描かれているご両親は、攻撃的になるわけでもないですし、永田さんを全否定する感じでもないですよね。でも、一緒にいると何か休まらない部分があると。実家にいる時は、自分の部屋が超汚かったんです。それは、「母が見たら悲しむものを自分の部屋に隠しておく」という意味があったんです。それなのに、母はドカドカ遠慮なく入ってくるので「わざわざ見に来てどうするの!」って思ってました(笑)。一人暮らししてからは、母が来る前に、念入りに片付けるようにしています。「粗相がないうちに帰って欲しい」と思うくらいに気を遣うし、緊張するんですよね。母が帰ったあと、どっと疲れちゃうのは、いいように見せたいっていう表れかもしれません。―― 一人暮らしをして、ご両親への気持ちや関係は変わりましたか?実家から近いところに引っ越したんですけど、想定していたよりも、両親からの連絡があんまり来なかったんです。「連絡がないってことは、意外と私は親に信用されているのかな」と思えて嬉しかったですね。家事も「自分はできない」と思い込んでいたけれど、やってみるとちゃんと出来たんです。人から肯定してもらえることで、こんなに変われる――漫画の反応や、親元を離れての一人暮らしで自信がついたんですね。状況が大きく好転してから、永田さん自身にとって一番の変化は何でしたか?認めてもらえたことで、自分も着実に変わってきたと思います。まずは、人と会えるようになりましたね。今までは「私なんかに会っても楽しい時間が過ごせる訳がないから、相手の時間がもったいない。申し訳ない」という気持ちでした。3年くらい、ずっと人と会っていなかったんですけど、こちらから人を誘えるようになったのが一番大きな変化です。距離感が近い人に対しても、「そんなに受け入れてくれるの?…じゃあ(笑)」っていけるようにもなりました。今は無理のない範囲で、できるだけ人と会うようにしています。その代わり、「今日は無理」というのがわかったら、なるべく早く連絡するようにしてます。昔はバイト先にも友達にも、ドタキャンばかりしてしまっていたんです。直前で苦し紛れに嘘をついてしまったり。今は、そういうことはしなくなりましたね。自信がついてきたからこそ、気が乗らない約束も断れるようになりました。今までは上手くいかなかったフラストレーションがあったけど、認められたことで、変な遠慮がなくなったのかもしれません。――お写真は出せないのですが、今日の永田さんは口角がキュッと上がっていて、柔らかな笑顔が印象的です。お仕事が上手くいってから、お顔つきも変わったのでしょうか。昔からずっと暗いし、猫背だし、アルバイトの面接も落ちまくるし、初対面なのにいきなり「表情が暗い」って言われるくらいでした(笑)。人と会えるようになったのもそうだし、自分の身なりを整えることもそうなんですけど、「人から肯定してもらえることで、こんなに変われるんだ!」と、自分でも驚きですね。--------------------------------------自身の内面や葛藤を漫画にさらけ出すことで、世界がどんどん広がっていった永田さん。人から認めてもらえたことで、意識が外に向き、自分が心地良いと思うことを素直にできるようになったというお話が印象的でした。ただ寂しさをごまかすのではなく、そう感じる原因を分析して向き合うことで、解決の突破口になるということを、心に留めたいと思います。Text/小沢あや特集「さみしさは敵か」もあわせてご覧ください!・“たまたまひとりでも大丈夫”と思えれば、世間の目なんて気にならない/月読寺・小池龍之介さん・美しいさみしさの奥にあるグロテスクな本音と向き合う
2016年12月13日このインタビューが行われたとき、染谷将太はまだ『空海-KUKAI-』の撮影の最中。ただでさえ、年不相応とも言える落ち着きを備えているこの男、坊主頭になると、もはや悟りを開いたかのようだが…。ところが映画『海賊とよばれた男』では、これまで見せたことのないほどのハイテンション&はしゃぎっぷりで、気骨ある男たちの集団の中で、この男らしからぬムードメーカーとしての役割を果たしているのだ。主演の岡田准一、そして山崎貴監督など、その年の映画賞を総なめにし、大ヒットを記録した『永遠の0』のチームが再集結。戦前から戦後にかけて、身ひとつで事業を起こし、石油で日本の経済発展の礎を築いた男の一代記を描き出す。『永遠の0』、そして本作と、山崎監督と主演の岡田さんのコンビが強調されがちだが、染谷さんはそれ以前、『ALWAYS 三丁目の夕日’64』から、『永遠の0』、そして主演を務めた『寄生獣』二部作と、近年の実写の山崎作品には皆勤賞であり、いわば山崎組を最も知る男のひとり。「まず、題材は抜きにして、山崎監督からまたお話をいただけたことが、嬉しかったですね。前回、『寄生獣』をやり、主演ということもあっていままでで一番密に関わらせていただき、あれだけの大きなプロジェクトだったので『じゃあ、次は何をやらせてもらえるのか?はたまた、もう一緒にやることはないのか…?』と思っていたので(笑)、ホッとしました」。そして、この物語に対しては「山崎さんにとって、新たなチャレンジなんだなと感じた」とも。「平たく言っちゃえば、油を売るお話ですからね(笑)。このシンプルなことの中で、いまの時代にはないような男たちのあり方とかをダイナミックかつ繊細に描いている。ちょっと、これまでやって来たこととは毛色が違うな…とは感じました。『三丁目』にせよ、『永遠の0』にせよ『寄生獣』にしても、難しくはあるのだけど、物語の中に自然とドラマというか、探るべきポイントがしっかりとあるんですよ。今回は正反対で、やることはシンプルだけど、それをどうエモーショナルに表現できるか?そこは挑戦だったと思います」。染谷さんが演じたのは、岡田さん演じる店主・国岡鐡造に憧れ、漁師から転身して国岡商店の店員となる長谷部喜雄(通称・ハセ)。社員の中でも若いが、陽気で物怖じせずに鐡造にものを言う男で「ムードメーカーでみんなに愛される憎めないヤツ」というのが山崎監督からの注文だった。「サラッとすごく難しい注文を…って思いましたね(苦笑)。男クサい男たちの中で、みんなに愛されないといけない若僧ですからね。どうしたらみんなに愛されるなんてコツやノウハウなんてないし…。どう振舞ったらいいのか?いや、振舞ったらその時点で負けですよね。みんなに好かれるために何かしたら、ウザいですし。媚びを売ったらすぐバレる。正直、かなり難しい役でしたね」。そもそも、24歳にして“心の屈折”を表現させたら日本でもトップの染谷将太が、屈託のないヤンチャなムードメーカーを演じるということ自体、驚きである。たとえ、それが常連の山崎組であっても…。「普通に考えたら、驚きというか、なんで自分にこの役を?と思うんですけど、そこが山崎さんらしいなって思いましたね。そもそも、山崎さんは『染谷はこういうタイプ』と枠に当てはめるのではなく、『この人とこの人を組み合わせたら何が生まれる?』『この人にこんなことやらせてみたらどうなる?』と考えると仰っていたので、山崎さんならではのセンスを感じましたね」。『永遠の0』では、戦争の最も過酷な終戦間際に、特攻隊員として帰らぬ旅路に赴かねばならぬ若者を、『ALWAYS 三丁目の夕日’64』では、本作でも描かれる、高度経済成長期に差し掛かる時代の若者を演じた。そして本作で、染谷さん演じるハセが活躍するのは、戦前から戦中にかけて、日本の、そして軍の進撃に合わせて、国岡商店がビジネスをアジアへと拡大していく時期。現代を生きる20代の目にあの時代の人々、いまとはまた異なる価値観はどう映ったのか?「何かを『やらなくてはならない!』という意識――“使命感”を強制されてというよりも、自然と持っているのを、作品を通じてあの時代を疑似体験して感じましたね。『店主に付いていかなきゃ!やり遂げなきゃ!』という意識は、あの時代特有というか、いまの時代にはないものかもしれません」。では改めて、国岡商店の中でも若い世代を代表して、現代の若者たちが本作を楽しめるポイントを挙げるとすると?「僕は、単純に燃えましたね、男たちに。萌えではなく(笑)、燃えるものを感じて高揚しましたし、僕は会社勤めをしているわけじゃないけど、こんな上司がいたら、付いて行きたいなと思いました。“仕事”というものに対する自分の価値観を変えてくれるこんな人がいるのかと感動を覚えました。“胸キュン”と言っちゃうと、安っぽいけど、女性が見ても、男の汗と涙に感じるものがあると思います」。“店主”岡田准一とは、『永遠の0』に続いて、人生の先輩・後輩という間柄を演じたが、染谷さんから見た、現場での岡田さんの姿は、今回の鐡造と重なる部分も?「岡田さんは、自然なんですよね。『やるぞ!』とか『よっしゃ、みんな!』みたいな、わざとらしい言葉は口にされないけど、現場で細かくみんなを見てくれていて、そこに安心感があって、みんな現場にいやすいんです。それを感じさせずに、でも細かいところまで気を配ってくださる。クールに見えて、結果的にこの鐡造のように、周りを熱くさせてくれるリーダー。尊敬しますね」。ちなみに、この取材の時点で『空海 -KUKAI-』の撮影は「年末で終わる予定…おそらく(笑)」とのこと。ここ近年、当たり前のように年に数本の作品に参加してきたが、今年は5か月もの期間を空海というひとつの役に、しかも海外の現場で向き合ってきた。「まだ、終わってないので、この先、何か違うものが見えてくるのか?自分でもよくわかりませんが…」。まだまだこの男、スクリーンで見せていない表情がたくさんあるはずだ!(photo / text:Naoki Kurozu)■関連作品:海賊とよばれた男 2016年12月10日より全国にて公開(C) 2016「海賊とよばれた男」製作委員会(C) 百田尚樹/講談社
2016年12月09日アウトドア料理研究家として、おしゃれで楽しい外ごはんを提案している、高松美里さん。 <前編> に引き続き、愛をこめて選んだ愛用品や、大人も子ども楽しめるアウトドアを通した子育て術を伺います。高松美里さん娘さん:6歳、息子さん:4歳アウトドア料理研究家、フードスタイリスト。ヘアサロントップスタイリストをへて、食の世界へ。アウトドアブランドとコラボした料理企画をはじめ、雑誌、広告のスタイリングなどを数多く手がける。子どもと一緒に楽しむ食育アウトドアクッキングや、ホームパーティーのおもてなしスタイリングなどを発信している、インスタグラム(@misatotakamatsu)も話題。HP: ■お気に入り! 海外のナチュラルアイテム仕事でもプライベートでも、キャンプなどのアウトドアをすることが多いという高松さん。普段から料理系のアイテムに限らず、ナチュラルなものが好きなのだそう。「歯磨き粉も洗剤と同様に、環境に流すことが気になります。海外のオーガニックのものは、パッケージもいいし、香りもいろいろなものがあったりするので、海外旅行に行ったときにスーパーでよく買います。海外ではオーガニックや環境にやさしいもののコーナーが充実しているので、お土産であげたり、もらうことも多いです」「布ならリネンの質感が好み。キャンプ先でテーブルはあるのですが、汚れていたりプラスチックだったりすることが多いので、ナチュラルな素材の布を持っていきます。一枚敷くだけで、自分の好きな雰囲気にすることができますよ。特に『フォグリネンワーク』のリネンのテーブルクロスは、ほとんどの色柄を持っているくらい好き。じゃぶじゃぶ洗って、ノーアイロンで使います。人が来たときもテーブルにクロスをしておけば、後片付けでテーブルを拭かなくてもいいし、汚れても洗えばいいので楽です。ベーシックなものなので買い足せるし、気負わず使えるところがいいですね」 ■体にも環境にもいいものが、もの選びの指針お子さんたちの身につける肌着は、必ずコットンのものを選んでいるのだとか。「機能素材の下着といい香りのする海外の柔軟剤を使っていたら、子どもたちが体をかくようになったんです。皮膚科に連れて行ったら、直接触れる肌着はコットンに変えて、柔軟剤も一度やめてみたらと勧められて。すべてコットンのものに変えたら、症状がよくなってきたんです。柔軟剤はそれ以来使っていなかったのですが、今回『ヤシノミ柔軟剤』を使ってみて、無香料で肌触りが良いので、これからも使いたいなと思いました。子どもにも安心して使える、やさしい柔軟剤があるのはうれしいですね。存在を知らなかったら、今も柔軟剤は使っていなかったと思います」「私は香りが好きですが、それはフレグランスなどで楽しめばいいこと。清潔で肌にも衣類にもやさしいことが一番です。昔からあるという信頼感もありますし、お手軽価格で無理なく継続ができそう。『ヤシノミ柔軟剤』の存在を知らなかったら、今でも柔軟剤は使っていなかったと思います」「洗たく回数はまだまだ多いので、洗剤は肌や環境にはもちろん、繊維にやさしいものを選びたい。『ヤシノミ洗たく用洗剤』は、そんな条件を満たしてくれるし、昔からあるという信頼感もあります。お手軽価格なので、無理なく継続ができそうです」「ヤシノミ洗剤」の売上の1%は、原料の生産地であるマレーシア・ボルネオ島の環境保全活動のため、寄付されています。そのことを知った高松さんは、このシリーズをこれからも使いたいと、改めて思ったそう。「アウトドアを通して、やはり環境には興味を持つようになりました。家にいると、私一人が環境に気をつけたところで何か変わるのかなと思ってしまいますが、自然の中にいると、一人一人の毎日の小さな積み重ねが大事なんだと実感します。寄付されたお金によって、アブラヤシ農園のために分断された森を繋いだり、動物を救出したりと、具体的に活動が報告されているので、自分でもできることがあるとわかるのは、やる気に繋がります。私も子どもたちも動物が大好き。子どもたちには自然に触れ合うことで、環境が今どうなっているのか現状も知ってもらいたいなと思います」 ■都会も自然も、さまざまな場所での経験が人間力に高松さんが子育てで一番心がけていることは、ためこまないこと。そのためには、普段のお出かけから週末のキャンプや旅行まで、親も必ず楽しむことが鉄則。子どもだけが楽しめる場所は選ばないことが、高松さんがいつも笑顔のママでいる秘訣です。「週末のアウトドアだけでなく、平日も大人が見て楽しむお店と公園が一緒になっているような施設に出かけて、子どもと一緒に楽しんでいます。子どもも意外と、おしゃれなカフェや素敵なお店を見たいと言うんです(笑)。美術館や科学館、都会の最先端のものも見せつつ、夏休みなどには海外で砂漠をドライブしたり、実家の田舎に行って野菜を収穫したり。普段生活している都会もすごく好きだけど、旅行などでできる限り、自然にも触れさせたいなと思っています。将来好きなことをやってほしいから、今はいっぱい刺激して、しっかり土台を作ってあげたいです」いろいろな場所に出かけるなかでも、キャンプは子どもたちの教育にも特別役立っているといいます。「普段のキャンプのおかげで、子どもたちはどこでも寝られるし、何でもよく食べます。体も丈夫になってきた気がします。アウトドアは余計なものがないので、焚き火を囲んで話したりしながら、家族でコミュニケーションが図れるのもいいところ。料理も炭火でじっくり焼くだけで、大したことをしなくても絶対においしくできるから、料理が楽しくておいしいということが、シンプルに伝わると思います。自分が関わって料理を仕込んだり、並べると、子どもたちもよく食べるんですよね。料理も片付けも、次に何をするかに自然と目がいくし、みんなが関わっているから、一人の責任にはならない。自然の中で料理をすること自体がエンターテインメントだから、老若男女をこえて楽しめます。そういうことができるのが、アウトドアの魅力ですね。自然だけで何もないので、落ちているもので何かをしてみようと、自由な発想が生まれるのも利点。細かな教育ももちろん大事ですが、アイデアを持っていると人間性が豊かになると思うので、この経験が、人間としての基礎作りになっていくといいな、と思います」 取材/文:赤木真弓 撮影:林ひろし[PR]サラヤ株式会社
2016年12月06日『さみしさサヨナラ会議』(宮崎哲弥と共著)という著書もある月読寺住職の小池龍之介さん。前回、“さみしい”という感情は脳内物質による錯覚が引き起こすもので、人間関係では満たすことができないと伺いました。後編となる今回は、そんな“さみしさ”とうまく付き合う具体的な方法や、「“おひとりさま”はかわいそう」という世間の偏見に負けないための心得を教わりました。さみしさを埋めようとすると“心の借金”が増えていくだけ――そもそも“さみしい”と感じてしまうのは、悪いことなのでしょうか?何を良い/悪いとするかにもよりますが、仏法的な観点からすると、苦しみが増えるのはよくないこと、苦しみが減るのは好ましいこと、とします。ですから、さみしいと感じると苦しみは増えるので、悪いことだと言えそうですね。ところが、これにはカラクリがあって、多くの人は自分のしていることが“悪いこと”だとわかると、自己嫌悪や罪悪感が湧いてきて、苦しみが増えてしまうんです。だから、「さみしくなっている自分はダメだ」と自分を責めたり、抜け出そうともがくことで、余計に苦しみが増えてしまっては本末転倒です。――では、どう対処すればいいのでしょうか?さみしさは、抜け出そうとするとうまくいかないんです。たとえば、さみしいと感じているとき、私たちは「さみしさの部屋」にいるとしましょう。そこで、“さみしさポイント”10Pを受け取ります。でも、その部屋の中にとどまってじっとしていれば、さみしさはやがて消えてなくなり、10Pは返済できるんですよ。ところが、となりに「友達に電話する部屋」があると、多くの人はつい安易に移動して「さみしさの部屋」を抜け出そうとします。でも、そうすると10Pは返済されずに借金として残る。しかも、電話が終わるとまたさみしくなって10Pが発生してしまい、さみしさの総量が増えてしまうんです。――さみしさを埋めるために、別のことをしてはいけないということですか?さみしさを何か別の手段で紛らわそうとする行為はすべて、「さみしさの部屋」から別の部屋へ移動しただけです。つまり、“さみしさポイント”という借金を返済するために、別のところから借金をしている状態なんです。特に、電話やメール、SNSといった人とのつながりや恋愛など、人間関係で孤独を紛らわそうとするのはおすすめしません。自分の欠損を満たしてくれる相手を求めると、特別扱いしてもらおうと傲慢な態度を取ったり、過剰に卑屈になって相手に従属しようとしたりと、ろくでもない行動を引き起こしてしまいます。だから、さみしいときは人に会うべきではないし、新しい出会いも求めてはいけないんです。さみしさも怒りも、必ず消えていくもの――では、具体的にはどうすればいいんですか?何もしないことが大事です。まず、さみしさを感じている自分を、「かわいそうだ」とか「ダメな人間だ」などと一切“評価”しないでください。さみしい自分を、ただ“認めて、受け入れる”だけでいいんです。ざわざわ、もやもやするような、なんらかの身体感覚に意識を向けて、さみしさに寄り添うイメージを持ってください。――さみしさに寄り添うとは…?心の中で、自分自身に声をかけてあげましょう。「さみしいんだね、わかるよ、大丈夫だよ」とか、「じっと待っていればそのうち消えるからね」とか、小さい子どもをなだめるような感じです。他のことで紛らわすのではなく、さみしさのエネルギーそのものと一緒にいてあげて、消えてなくなるまで待つようにしてください。――では、寝て忘れちゃうというのもアリですか?それも「寝て忘れる部屋」という別の部屋に移動して、借金を増やすことと同じになってしまいます。もし、起きていると何かしたくなってしまうなら、楽な状態でゴロゴロと寝転がって天井の木目を数えたり、公園で空を眺めたりして、さみしさが収まるのを静かに待ってあげましょう。意識のある状態で、さみしさが減っていくのを体感しきることが大事なんです。――なぜ、“さみしさポイント”の借金は増えてしまうのでしょうか?前回お話しした通り、“ドーパミン中毒”が原因です。さみしさを別の手段で満たすということは、刺激が入力されることでドーパミンが発生し、脳が快楽を得るということです。ところが、次はもっと強い刺激や快感でないと物足りなくなるため、どんどん耐性ができてしまいます。昔は手紙や電話くらいしか手段がなかったので刺激自体も弱かったし、ドーパミンが切れても、次の刺激を受け取るまでにそれなりの時間がかかりました。そのため、そこまで重いドーパミン中毒にはならずに済んでいたんです。ところが現代のSNSは、刺激が入力される頻度や速度、その強度もケタ違いに大きいですよね。不特定多数の人から一度に注目され、圧倒的な承認を得られますが、私たちの脳には刺激が強すぎるんですよ。一度に受け取るドーパミンが多すぎてすぐに飽和してしまい、耐性がついてどんどんさみしくなっていく。借金がものすごいスピードで増えていくということです。――でも、“さみしさ”には終わりがくる、とは思っていませんでした。この方法はさみしさに限らず、“怒り”に対しても有効です。「物に当たる部屋」や「怒鳴りちらす部屋」、「怒りを我慢する部屋」に移動してしまうと、“怒りポイント”は返済されないまま借金としてどんどん溜まっていきます。だから、必ず「怒りの部屋」にとどまって、「そうか、イライラしてるんだね、大変だね」と怒りの感情に寄り添ってあげれば、怒りポイントのゲージは減っていき、そのエネルギーも自然と収まっていきます。安心感が諸行無常であるように、さみしさも怒りもすべては無常で、必ず消えていってしまいますから。“たまたまひとりでも大丈夫”と思えばいい――無理して恋愛や結婚をしなくていい、と思っている人でも、周囲からの「ひとりなんてさみしい人だ」という価値観にさらされて、考えがグラついてしまうこともあると思うのですが…。いまや、ひとりで生きていくこともひとつのスタンダードですから、以前と比べれば「ひとりなんてかわいそう」という視線の圧力はだいぶ弱まっているとは思います。むしろ、圧力をかけてくる人たちに「他人の愛情に頼って依存する価値観でしか生きられないのね」と心の中で見返してやることもできるでしょう。ただ、味方や仲間がいるとか、“おひとりさま”というグループに所属していることに安心している、という意味では、孤独やさみしさを受け入れているとは言えないでしょうね。――でも、周りの目がどうしても気になります。それは、幼い頃に親の視線を自分の中に内面化するクセがついているからです。子どもは、親に同調することで愛情や承認を得て、庇護やお世話をしてもらう戦略を取ってきました。そのせいで大人になってからも、相手や世間の規範を内面化しないと、見捨てられ見放されてしまうんじゃないか、という恐怖が残っているんです。――自分の身を守るために、周りに同調してしまうんですね。そういった心の仕組みをわかっていれば、「ひとりってさみしくない?」と言われて心がグラついてしまいそうなときに、「ああ、私は今、この人に嫌われたくないという“さみしさ”を抱えているんだな」と自己分析できるようになるのではないでしょうか。まあ、こうなるとほとんど修行の域ですけどね。ただ、“おひとりさま”として生きていこうとしている人が、他人から言われて不安になってしまうようでしたら、その人はたぶん強がりで“おひとりさま”を選んでいる可能性があると思うんです。前の恋愛で痛い目を見たからもう嫌だとか、どうせ他の男もそうに違いないとか、何かしらの強い感情によって孤独を抑え込んでいるのだとすれば、あまりよくない状態だと思います。それは、「強がってやせ我慢する部屋」に移動しているだけですから。――心から“おひとりさま”であることを受け入れていないと、それも借金を増やしていることになるわけですね。私たち人間は、そもそも生まれたときから孤独でさみしい存在なんです。恋愛相手であれ、自分の親であれ子どもであれ、ある特定の人間関係に自分のさみしさを預けて解消してもらおうとすると、必ず痛い目に遭います。まずは「さみしいから」という理由で人とつながるのをやめてみましょう。「さみしい自分はかわいそう」などと評価せず、さみしいという感情にただじっと寄り添い、受け入れることができるようになると、ちょっと大袈裟な言い方ですが、人生が変わります。つまり、人間関係に過剰な期待をしなくなって、精神が自立した状態になります。――かなり強い心が必要になりそうですね。だからといって、一生ひとりぼっちになるわけではありません。むしろそういう状態のときに出会い、関わる人とのほうが、強烈に求め合うような刺激はない代わりに、ほどほどに満たされた、安定した人間関係を築けるようになるでしょう。さみしさとうまく付き合って自立できるようになれば、わざわざ「自分はこの先ずっとひとりで生きていく」と頑なに決めなくてもいいんです。“たまたまひとりでも大丈夫”なだけであって、運良くいい人が現れたら好きになればいいし、結婚してもいい。いなければ、それはそれで「ひとりでもいいや」と思える。そういう精神状態を保っていられるなら、相手がいてもいなくても、どちらでもハッピーなのですよ。Text/福田フクスケ■プロフィール小池龍之介(こいけ・りゅうのすけ)1978年生まれ、山口県出身。東京大学教養学部卒。2003年、ウェブサイト「家出空間」を立ち上げる。同年、寺院とカフェの機能を兼ね備えた「iede cafe」を展開(〜2007年まで)。現在は、鎌倉にある月読寺の住職として、宗派仏教を超えた立場で自身の修行と一般向けの座禅・瞑想指導を続けている。『考えない練習』(小学館文庫)、『超訳 ブッダの言葉』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『しない生活 煩悩を静める108のお稽古』(幻冬舎新書)など著書多数。特集「さみしさは敵か」もあわせてご覧ください!・さみしさは“人とのつながり”では満たされない/月読寺・小池龍之介さん(前編)・美しいさみしさの奥にあるグロテスクな本音と向き合う
2016年12月05日やさしいママのヒミツ、第5回目はアウトドア料理研究家の高松美里さん。6歳の女の子、4歳の男の子、2人のママです。高松美里さん娘さん:6歳、息子さん:4歳アウトドア料理研究家、フードスタイリスト。ヘアサロントップスタイリストをへて、食の世界へ。アウトドアブランドとコラボした料理企画をはじめ、雑誌、広告のスタイリングなどを数多く手がける。子どもと一緒に楽しむ食育アウトドアクッキングや、ホームパーティーのおもてなしスタイリングなどを発信している、インスタグラム(@misatotakamatsu)も話題。HP: 高松さんの実践する、アウトドアを通した子育て術や、子どもたちにも環境にもやさしいアイテムとは? <前編>では、家でも外でも愛用しているという、調理アイテムをご紹介します。■長く使えて、おしゃれなアウトドアアイテムの魅力もともと美容師の高松さんは、妊娠、出産を機に、好きだったインテリアや料理、アウトドアなどの趣味を生かして、アウトドア料理研究家やフードスタイリストとして活躍しています。高松さんが暮らすのは、都会のど真ん中にある、おしゃれなマンション。一見すると、“アウトドア”からイメージする暮らしと正反対のように見えます。「サバイバルな感じではなく、あくまでもおしゃれに、気軽に、都会の人でも楽しめるアウトドアを提案したいと思っているので、私自身それを実践しています」子どもの頃から、家族でスポーツやキャンプを楽しんできたという高松さん。仕事と子育てで忙しい今も、休日に外に出かけることが一番のリラックス法だといいます。そんな高松さんが愛用する料理関係のアイテムは、やはりアウトドアグッズ。「キャンプがきっかけで買いはじめましたが、アウトドアのアイテムはすごく使い勝手の良いものが多く、長く使えるし、防災にも役立ちます。無駄な買い物にならない気がするし、おしゃれなものも多いのでどんどん増えていきました。今では、家のものとアウトドア用を分けず、両方で使っています」■家でも大活躍なアウトドアアイテム4選そのひとつが「LODGE」の鉄鍋。おいしくできるので、家でも使うようになったのだとか。「鉄鍋は熱伝導率が高く、保温性がいいんです。特にお肉は、表面はパリッと、中はジューシーに焼けるので、本当においしい。ホームパーティーでも、お肉と野菜を詰めておいて、友だちが来たらオーブンに入れるだけで、とても簡単にできるので重宝しています。お手入れは慣れれば楽しいもの。外で使って放っておくと錆びるので、きれいに洗ったあと、オリーブオイルを塗るとピカピカに戻ります。内側は、普段は天然竹を使ったササラで洗うのみ。汚れがひどいときや外側には、洗剤を少量使って洗います」ガラスのジャグやホーローの食器も、高松さんには欠かせないアイテム。「キャンプでは水場が遠かったりするので、このジャグに入れて使います。ホーローは直火OKで割れないし、おしゃれでカラーも豊富。買いそろえやすいし、汚れもウエットティッシュなどでさっと拭けば落ちるのも楽です。外でのお料理がおしゃれで楽しいものになりますね」 アウトドアアイテム以外の愛用品では、見た目もおしゃれなウッドボード。コーディネートもしやすいので、家でもキャンプでも大活躍だそう。「小さなものから特大サイズまで、たくさん持っています。朝は基本和食ですが、ときどきミニサンドイッチを並べて、ピックを刺したりすると、子どもたちも喜んでたくさん食べてくれます。真ん中に大きいウッドボードを置いて、取り皿だけ置くスタイルは、洗い物も少なくて楽。置いているだけで雰囲気が出るし、まな板としても使えて便利です」鉄鍋と同様に、お手入れが必要な土鍋もフル活用。お手入れがてら、毎朝使っています。「炊飯器がないので、毎朝3合炊いています。飯ごうに慣れているからか、早くて簡単に感じますね。手入れもそんなに大変ではありません。とにかくおいしいので、炊飯器には戻れないです。炊きたてのごはんの匂いで、子どもたちが起きてくるくらいです(笑)」■自然の中で使うものには、環境に配慮した「ヤシノミ洗剤」調理器具は、育てる感覚で長く使えるものが好きという高松さん。お手入れに使うものは、必ず環境に配慮したものを使いたいといいます。「キャンプ場では、科学的な洗剤の使用が禁止されているところがほとんど。外では、自分の流したものが実際に目に見えるので、泡が全然消えないで流れていくのを見ると、科学的なものを使う気にはなれないです。水もできるだけ使わず、拭くだけのことも多いですが、洗剤を使うときも匂いが強いものだと残ってしまう気がするので、できるだけ自然素材のものを使いたいなと思っています」そんな高松さんが、ずっと使い続けたいというのが「ヤシノミ洗剤」です。「これを使うようになって、子どもが洗いものをすごくしてくれるようになりました。ポンプ式なので出しすぎることがないのもいいですね。少し使っただけで、手にやさしいこと実感しました。ナチュラル系の洗剤は、洗浄力が気になりますが、サクッと汚れが落ちるのもうれしい。キッチンは匂いが混じると嫌なので、香りがないほうがいいですが、無香料というところもいいですね」 ■お手伝いも遊びのひとつに高松さんのアウトドア料理、スタイリングのコツはカラフルにすること。「グリーンや茶色などの、自然の色と調和するように、トマトの赤や葉っぱの緑、パプリカの黄色を足して、パッと華やかな気持ちになれるように考えています。子どもたちもトッピングが好きで、ピザなどに自由にトッピングしたり、何も言わずとも、花を摘んできてテーブルの上に飾ったり、松ぼっくりを置いたりしてコーディネートしてくれて、自然と美的センスも磨かれている気がします」自然が一番の先生だと話す高松さん。2人のお子さんも、あえてお願いすることもなく、お手伝いをするのが大好きになったそう。「キャンプだけでなく、家でもお手伝いしてくれます。外だと散らかってもイライラしないし、遊び感覚でやらせているうちに、家でも料理や配膳、食器を洗ってくれたりするようになりました。キャンプは非日常が楽しいので、わざわざ遊び道具を持っていかなくても、自然の中から遊ぶものを見つけて楽しんでいますね。テントを張るのも、今は順番をわかってきているのでアシストしてくれます。アウトドアでは何が危険なのか、知ることも大切。“火が熱い”ということも、野菜や肉を串に刺して、火の上の方に入れると温度が高いからすぐに焦げる、という風に実際に経験するとよくわかるし、それ自体がお手伝いすることにもつながっています」2つ違いの娘さんと息子さんは、ずっと2人で遊んでいるほど仲良し。キャンプなどを通して、協力し合う大切さを実感しているのかもしれません。「2人でずっと遊んでいてくれるので、お出かけがすごく楽ですね。お手伝いも競い合って、遊び感覚でするので楽しいようです。子育てでイライラしないコツは、家事も含めて、全部楽しいと伝えること。本人に任せると時間はかかるけど、最初はできなくてもいいという気持ちで、遊びのひとつにしてやらせて、私は別の作業をします。子どもたちが毎朝卵を割ってくれますが、だんだん上手になってくるし、任せてしまうとしっかりやってくれるようになったので、助かります」 <後編> でも引き続き、愛用品やアウトドアを通して学ぶ、高松さん流子育て術について伺います。 取材/文:赤木真弓 撮影:林ひろし[PR]サラヤ株式会社
2016年12月05日Tiny N主宰、「花生師」として雑誌やTV、イベントなどでも活躍する岡本典子さん。小学3年生&1年生の二人のお子さんのお母さんでもあります。前回の「アンティークと花に囲まれた子育てライフ」「岡本さん流、仕事と子育てのバランス術」に続いて、子育て中でもできる “花あしらいのコツ” を伺いました。▼岡本典子さんファミリー プロフィール・家族構成:夫、妻、小学3年生の男の子と、1年生の女の子との4人暮らし・居住エリア:神奈川県・住宅形態:一軒家・Instagram:日々頁 @noriko_okamoto 、花頁 @hanaikeshi ・Facebook: ・HP: ■暮らしの風景に似合う花を「お花を飾る、というと花束やホテルのロビーのような華やかさをイメージする人も、まだまだ多いかもしれません。もちろん、豪華な花の美しさも素敵です。でも、一般的な家庭に似合うかどうかは、また別の話。花は空間や暮らしに沿うことが大切です。そこだけがぐっと目立つのではない、ふと気づけば花がある。風景のひとつでありながら、一輪でも確かな意味がある。そんな形が理想です」そこで、子育て中の家庭でも今すぐ取り入れられる、小さなアイデアをいくつか教えていただきました。▼花器は自由に選ぶ。子どもに倒されない工夫も中に水を入れた容器を忍ばせれば、どんなものも花器になります。花器をそのまま置くと子どもがひっくり返すのが心配という場合も、こうしてカゴなどにいれることで倒れにくくなるという嬉しい効果も。▼賃貸でも大丈夫! 立体ディスプレイ上写真、中央奥の黒い木枠は、ホームセンターなどでも購入できる板材を四角く組み立てた花台。賃貸マンションなどで、棚やフックを取りつけられない家庭でも、気軽に立体的な壁面ディスプレイを楽しめます。玄関では、下駄箱の上に置いて鍵の定位置に。▼照明用のダクトレールを有効活用照明用のダクトレールを利用すれば、ハンギングがより手軽に。S字フックを併用し、壁や天井を傷つけることなく、空間ディスプレイが楽しめます。これからの季節なら、こんなふうにわら細工のヒンメリを吊るすのも素敵です。(照明との距離を保つなど、十分注意の上で設置してください)▼壁にかける、大きな器に飾る壁面にドライフラワーを飾るのも、子育て中にはぜひ取り入れたいテクニック。花を束ねるときは、テーブルなどの平面に置いた状態でドライにすると、平らな部分ができて壁に飾りやすくなります。「水を取り換えるのを忘れそうなら洗面所に飾る、そんなふうに、自分に合った場所を見つけるのもいいですね。花はあくまでも生き物。いわばペットのような存在です。ただインテリアの一部として置くのではなく、しっかり様子を見ながら、お世話する気持ちを楽しんで。枯らすのを怖がって手出しをしないのではもったいない。ぜひ、前向きな気持ちで取り入れてみてください。もし枯らしてしまったら、“勉強させてもらいました、ありがとう”という気持ちで、次に生かせば大丈夫。そうやって、場数を踏んでいけば、だんだんと花と向き合うことが楽しくなってきて、自分のハッピーなエネルギーが伝わり、花ものびのび健やかに育っていきますよ。そしてまた、そこから自分もエネルギーをもらうんです。そうなったらもう、私と同じ『花中毒』ですね(笑)」 ■子どもたちには “生きる力”を身につけてほしいそんな自称 “花中毒” の岡本さんが出版された 「花生活のたね」 。気軽な花の飾り方や、さまになる選び方、ハーブの取り入れ方など、四季折々、一年を通じて花を緑を楽しむ暮らしのヒントが詰まった一冊ですこの本では、自然を通して子育てをする姿、年に何度も行くというキャンプについての話も。「我が家では、もともと夫がキャンピングカーを持っていたこともあり、キャンプは家族みんなが楽しみにしているレジャー。私にとっては、日常をリセットできる大切なリフレッシュでもあります。お勉強ももちろん大切ですが、子どもたちには “生きる力” を身につけてもらいたい。普段、恵まれすぎている環境にいる私たちにとって、キャンプのような限られた条件の中での暮らしは、“どうすればいいか? 何で代用できるか?”の連続です。火を起こしたり、洗い物は自分でやったりを通して、楽しみながら力強く、たくましくなっていってもらえたら嬉しいですね」花や緑に触れている岡本さんにとって、山や森に身を置く時間を大切に感じるのは、ごくごく自然なことにも思えます。しかし、意外なことに子どもたちに「自然を、花や緑を好きになってほしい」という強い思いを持つことはないのだそう。「本当に好きだと感じたら、それこそ親から止められても突き進んでしまいます。まずは興味をもってもらいたい。親が先に導きすぎて、気持ちを削いでしまってはもったいないですから。いろんなことを経験する中で、興味のある方へ進んでくれたらいいなと思っています」花のさまざまな個性を尊重しながら、一番いい表情を見極めいきいきと見せる岡本さんの手。それは、のびのびと育つ子どもたちを広く受け止める、おおらかな母の手でもありました。取材/文:藤沢あかり 撮影:田所瑞穂(書籍クレジット写真を除く)
2016年12月01日花や緑のある豊かな暮らしを提唱するTiny Nの主宰「花生師」として活躍する岡本典子さん。TVや雑誌、イベントなどで活躍中の岡本さんですが、実は小学3年生&1年生の二人のお子さんのお母さんでもあります。前回の「アンティークと花に囲まれた子育てライフ」に続いて、岡本さん流の仕事と子育ての両立についてお話を伺いました。▼岡本典子さんファミリー プロフィール・家族構成:夫、妻、小学3年生の男の子と、1年生の女の子との4人暮らし・居住エリア:神奈川県・住宅形態:一軒家・Instagram:日々頁 @noriko_okamoto 、花頁 @hanaikeshi ・Facebook: ・HP: ■子どと向き合うことでエネルギーは循環される「好き」を仕事にしながら、日々、花に触れ、忙しくもパワフルに飛び回っている岡本さん。しかし、一方では小学生2人の子をもつ、お母さんでもあります。仕事、家庭を居心地良く整える家事、子供たちへの食事作り。目の回るような忙しさは想像に難くありません。仕事と子育て、どのようにバランスを取っているのでしょう。 ■家族はチーム、「ごめんね」より「ありがとう」を仕事が予定よりも遅くなり、子どもたちの待つもとへ、駆け足での帰宅。働くお母さんならではの、日常の一コマです。気持ちばかりが焦って、イライラ、バタバタ。さらには、それが子どもにも伝わり、親も子どももぐったり……そんなことはありませんか?いつでも家族の目に触れる廊下の一角を、思い出を重ねるスペースにしています。写真だけでなく、公園の落ち葉で作った工作なども。小さな足型は、兄妹それぞれがまだ赤ちゃんだったころのもの。シックな色づかいのファブリックパネルなら、こんなふうにインテリアの一部として楽しめます。そこで、子どもたちと顔を合わせた岡本さんが真っ先に伝えるのは、「ありがとう」という言葉。「遅くなってごめんね」ではありません。「『待っててくれてありがとう〜!おかげで、すごくいい仕事ができたよ!』っていうと、子どもたちの顔がパッと華やぐんです。なんなら、『でしょ!?』ってドヤ顔になるくらい(笑)。自分たちも、仕事に参加した気持ちになってもらえるのかもしれませんね」「ママがつらそうだと、子どもも悲しいですよね。私一人ががんばっているわけでは、決してありません」と岡本さんは話します。パパ、ママ、そして子どもたち。誰一人として欠けられないその歯車を、みんなで回しているという自覚。その思いが、家族を「チーム」として高め、より結束した関係になるのかもしれません。そうは言っても、家事や育児の繰り返される日常は、楽しいことばかりではありません。岡本さんにとっての小さなリフレッシュは、大切にしている朝時間のひととき。毎朝、子どもたちが家を出るのは、8時前くらいでしょうか。みんなで早起きの我が家は、子どもも5~6時頃起きだします。週に3度、花の仕入れに行くときは3時起きですが、それがないときは4時半頃起きて、家族が起きてくるまでの間に、やりたいことを少しだけやります。夜は21時頃布団に入ることも多いので、家事もこの時間帯ですね」新しい芽吹きや花のほころびに目をやりながら、庭で飲む一杯のコーヒー。今日一日のスケジュールを思いながら、身体をほぐして温める、朝風呂の時間。ほんの少しの時間ですが、それは岡本さんにとってスイッチを切り替える大切な、ささやかな暮らしの句読点です。「子どもたちが2人とも小学生になり、少しずつ自分の時間がもてるようになりましたが、つい最近までは時間との追いかけっこの毎日でした。夜は疲れて子どもと眠ってしまうこともしばしば、だから自然と朝の時間が不可欠になってきたのかもしれません」ある日息子さんが作ってくれた、家族の役割分担表。母親からお手伝いを強制するのではなく、子どもたちが自然と家族をチームだと感じていることの表れのひとつ。「いただきますをいうひと」という分担があるのも、仲睦まじい家族の食卓が思い浮かぶようで微笑ましい。でも、と岡本さんは続けます。「花の仕事をして、まだまだ手のかかる子どもたちとも全力で向き合って、クタクタに疲れます。でも、そんな私にエネルギーを注いでくれるのもまた、子どもたちの存在なんです。エネルギーを吸い取られるけれど、その何倍ものよいエネルギーを、また私に吹き込んでくれる。生きる力の循環です。子どもたちって、エネルギーに満ちあふれていますから」全力で向き合って、様子をしっかり目で見て、心の声を聞く。それは花も子育ても、共通するものがあるのかもしれません。「仕事中、『あ~、疲れた!』って感じると、だからこそ早く子どもに会いたい!とも思うんですよね、不思議なものです(笑)」次回は、子育て中でも楽しめる「花のあしらい術」を岡本さんに教えていただきます。 取材/文:藤沢あかり 撮影:田所瑞穂
2016年11月30日「アクシオ!(来い)」エディ・レッドメイン演じるニュート・スキャマンダーが、イタズラ好きな魔法動物ニフラーに向かって放った “呼び寄せ”呪文。このニフラーは、宝石やコインのようなキラキラしたものが大好き。魔法のトランクから逃げ出したニフラーをようやくつかまえるべく、ニュートが呪文をかけたのだが、もふもふのおなかから次々飛び出す“宝物”とともに、くるりと回転しながら呼び寄せられていくニフラーの超絶的なかわいらしさには、悶絶する人が続出。このシーンは、『ハリー・ポッター』シリーズと同じ世界を舞台に新しい主人公と魔法動物たちが活躍する『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』を象徴する、印象的なシーンの1つとなっている。約5年ぶりの完全新作にして、新シリーズの始まりとなる本作。映画はお馴染みの「ヘドウィグのテーマ」から幕を開けるが、冒頭から、『ハリポタ』シリーズにもたびたび登場した“日刊予言者新聞”の“アメリカ版”の紙面が続き、一気に魔法の世界へと誘われる。「あれは、実は最後のほうに考えて付け足した部分だったんだ。最初からアイデアがあったわけでもないし、脚本にも書かれていなかったんだ」と、『ハリポタ』シリーズ後半4作、そして本作を手がけたデイビッド・イェーツ監督は語る。「後から追加したのは、あのシーンがあることで、一瞬にして世界観とその文脈が伝わると思ったからなんだ。自分たちがいまいる現実世界から、この映画の世界への入口になるし、映画の世界の空気感を一瞬にして感じることができると思った。あれを観た瞬間に、“さあ、この映画の世界を楽しもう”という気持ちになれると思うんだよね」。その“日刊予言者新聞”には、アメリカ魔法界の最近の出来事や、『ハリポタ』での最大の敵ヴォルデモートとはまた違う“闇の魔法”の暗躍が、ページをめくるように次々と示されていく。「嬉しかったのは、実際、(テスト試写で)あのシーンを気に入ってくれた観客がすごく多かったということ」と、イェーツ監督は続ける。「あのシーンで物語の序章のようなものを見せることで、この世界の文脈が理解できて、より物語を理解してくれる人が増えたんだよね。だから、あれを見せることで映画の本題にじっくりと入っていける、そういう大事な役割を果たしていたんだ」。そんな監督の言葉を受け、これまでの『ハリポタ』全作をプロデュースしてきたデイビッド・ヘイマンも、「あれがなかったときは、映画がどこか落ち着きのない、ふわふわしたものになっていたんだよね」とふり返って語る。加えて監督も、「あの壮大なオープニングがなかったら、何かすごく穏やかで、気まぐれな感じになっていたんだよね。(作品が持つ)空気感そのものを変えてしまったんだよ」と語り、その決断に自信を覗かせる。新しいシリーズを牽引する主人公の魔法動物学者ニュートを演じるエディは、そんなイエーツ監督について、超大作であるにも関わらず「まるで“インディ映画”を作るような親密さがあったところが好きだ」と語っていた。「それは僕の中でも大事な哲学なんだ。ハリウッド映画は巨大で、どれも同じように思えてしまうことがあるかもしれない。だけど、インディ映画のようなパーソナリティがあれば、それぞれが自分たちが何ができるのかを考えられるし、自分の力をどう発揮すればいいのか分かる。そうやって、みんなの力が結集してこそ、1つの大きな素晴らしい映画ができると思っているからね。だから、僕にとって、みんながそう思える環境を作るのはすごく大事なんだ」。一方、ヘイマンは「デイビッド(・イェーツ)が撮影現場で作り上げる空間は、巨大なセットがあっても、特殊効果があっても、究極的には非常に人間的なものなんだよね」と、監督の手腕に言及する。「この物語には魔法も出てくるし、ファンタジーではあるけど、でも、究極的には人間について描いたものなんだ」と、シリーズの神髄にも触れた。しかも、今回の『ファンタビ』は、『ハリポタ』シリーズの原作者J.K.ローリング自らが、映画のために脚本を書き下ろしている。「彼女と仕事できて本当に感動的だったよ」と監督は言う。「彼女には恐れのない想像力があるんだ。だから、それをいかにコントロールするのかも大事だった。彼女の想像力を最大限に活かしながら、僕らのアイデアも取り入れてもらい、アイデアを固めていくことが大事だったんだ」。脚本は、何度も書き直しが行われたという。「例えば、初期の脚本はすごく若々しい感じで、少し重みに欠けていたんだよね。その段階では、この物語でいったい何を訴えたいのかが分かりづらい内容だったんだ。だけど、それを書くことが、ジョー(J.K.ローリング)にとっては物語を発展させていく上で重要なことだったんだよね。それに、初期に書いた脚本の多くの部分は、この映画の中にしっかりと残っているしね」。しかし、「第2稿はすごく暗くて、ものすごく緊迫したものになりすぎてしまったんだ(笑)」と監督は明かす。「つまり、完全に逆の方向に振り切れてしまったんだよね。それで、6か月間の執筆期間を経て、少しずつジョーが、本当に演奏したいと思っているメロディを奏でられるような脚本に仕上げることができた。彼女は最終的には、自分でその方向性を見い出していったんだ」。「いま僕らは、(『ファンタビ』シリーズ)2本目の制作に取りかかっているわけだけど、ジョーにあるとき、『とりあえず物語のアウトラインを12ページくらいで書いてほしい』とお願いしたんだ。彼女はすでに脚本を書き始めていたんだけど、その前に『現時点での基本的な道筋を書き出してほしい。それがあれば、僕らは目指すべき方向を目指して進んでいけるから』ってね。すると、それをお願いしてからたった2日後に、彼女は102ページの脚本を書き上げていたんだ。しかも、その102ページ分は本当に最高の内容だったんだよね」。「本当に最高だったね」とヘイマンも頷くと、「そこにはまったく無駄がなかったし、しかも、彼女にはどうしても書かずにいられない、という独創性があったんだ」と監督は続ける。「ありきたりな方法で物語を描くことを常に嫌がる人なんだ。そのおかげで、これまでの映画は誰も観たことのないような作品になった。一番大事なのは、彼女が重要視する物語を伝えるプラットフォームを作ってあげることなんだよね」。「それで、この脚本の2稿目を書いているときに、彼女が5本の映画にしたいと言ったんだよ」と、監督は打ち明ける。「『5本の作品がどういう展開になるのかも、もう分かっている。こういうふうに進んでいくの』って言ってね」。また、ヘイマンはこう語る。「今回の作品の素晴らしいところは、『ハリー・ポッター』映画を観ていなかったとしても楽しめるということだよ。ただ、もし『ハリー・ポッター』映画を観ていたら、この映画の中に繋がっている世界観があるから、それに気づくと、絶対に違う意味でより楽しいとは思う。新しい世代にも響くものがあるからね。でも、この映画だけ観ても、意味は成立するんだ」。そう、今回の『ファンタビ』は、これまでの魔法世界について何の知識もなくても、1本の映画として楽しむことができる。ヘイマンは原作がない分、「観ている人たちが『なるほど、あの部分は描かなかったんだ。ここは映画でも描いたんだ。次はこんなことが起きる』なんて思いながら観ることもない。それって観る人たちにとっても、すごく新鮮だと思うし、エキサイティングだと思うんだよね」と語る。「最初から映画館という場所で観客が物語と結びつきを感じるというのは、すごくエキサイティングだよね」と、監督も言う。「何が起きるのか分からない状態で、映画館に観客が来るのは最高だと思うよ」とヘイマンが言えば、「何もかもが期待だらけだからね」と監督も応じる。そんな魔法界の物語が、これだけ多くの人たちを惹きつけてやまない理由は何だろうか?イェーツ監督は「キャラクターたちにあると思うよ」と断言する。「ジョーはそういうキャラクターたちを作り上げる才能の持ち主だからね。彼らがどんなふうに見えようとも、“自分の仲間にしたい”と思うような人たちばかりだと思うんだ。『ハリー・ポッター』では、ハリーとロンとハーマイオニーがいて、本作ではニュートとティナとジェイコブとクイニーがいる。みんな、ものすごくかわいい。それは世界の人たちに通じると思うんだ。それから、僕が一番好きなビーストは、サンダーバードだね。すごくかわいいと思うから」。すると、ヘイマンは「この映画が人気があるのは、魔法動物も“より人間らしく”描かれているからだと思う」と続ける。「僕らは魔法動物を人間と同じような視点で見ている。だから、彼らがいじめられたりすると、人間がいじめられているように思えてしまう。僕らが一番描きたいのは、結局は人間だと思うんだ」。「だから、恋愛関係も描きたい、というのは当然だよね」とヘイマン。本作では、ニュート&ティナ、ジェイコブ&クイニーという、“かわいい” 2組の大人のカップルが誕生する。すでに映画を目にした人たちは、エディをはじめ、キャサリン・ウォーターストン、ダン・フォグラー、アリソン・スドルら、演じたキャストたちにもすっかり夢中になっている様子だ。では、本シリーズでの“闇の魔法使い”グリンデルバルトについては…?「グリンデルバルトのほうが(ヴォルデモートより)危険だと思うよ」と、監督はズバリ言う。「グリンデルバルトは、彼の哲学で人々の思考や心を奪うことができたからね。ヴォルデモートのやっていることは、より分かりやすくて。弱者をいじめるし、誰であっても押しのけたいと思っているような人なんだ。そして腕力によって支配しようとする。だけど、グレンデルバルトは、頭のいいやり方をするから危険だよ」。そんな監督の言葉を受け、ヘイマンも「彼のやっていることには同意はできなくても、なぜやっているのか理解はできる。この映画の中でも、『なぜ僕ら(魔法使い)は隠れていなくてはいけないのか?』と言っているしね」と語る。アメリカの魔法界と人間界は、完全に分断された状態にあるためだ。2作目以降は、よりダークさを増していきそうだが…。つい先日、『ファンタビ』シリーズ全5作も手がけることが決まったイェーツ監督は、「これから数年も、素晴らしい物語を語り続ける機会を得られる。それが何より嬉しい。僕らには、この世界を愛してくれた人たちのために、映画を観に来てくれた人たちのために、自分自身に挑戦して、より良い作品を作っていくという責任がまた生まれるということなんだ」と真摯に語る。そして、監督とともに『ファンタビ』シリーズを育てるヘイマンも、「僕らの関係性でいいのは、お互い、エゴがないこと。お互い、自分たちが作っている作品に対して同じような野心があること。それから、自分たちがこれまでやってきたことに同じように感謝していて、一緒に仕事をしてきた人たちにどれだけ恵まれてきたのかにも感謝していること」と語る。「幸い、僕らの友情関係は確固としているし、信頼できるものだ。だから、お互い挑戦し続けることができるんだ」。では最後に、『ハリポタ』シリーズの主人公たちとの現在の友情は?ヘイマンは、「子どもの成長をものすごく誇りに思っている親戚のおじさんになった気分だよ」と言う。「例えば、エマ(・ワトソン)が国連で“He For She”キャンペーンのためにやったスピーチを見たかい?俳優として彼女がいまやっている活動は、本当に素晴らしいことだと思うんだ」。「かと思えばダン(ダニエル・ラドクリフ)も、彼が選ぶ映画を観ると、その勇気が素晴らしいよね。必ずしも、誰もが好きになるような映画ではないかもしれないけど。彼は失敗を恐れていない。勇気がある証拠だ。エマとは今週ランチを食べたし、ダンにも数か月前に会ったんだ。彼らに毎日会うことはないし、ルパート(・グリント)とは1年くらい話してない。だけど、彼らが僕の人生にとって、いまだにすごく大事な存在であることに変わりはないよ」と明かす。特に最近のエマについては、「彼女のおかげで、“He For She”での活動は、ものすごい数の人たちが注目することになった。だから、彼女が人間として成長している姿を見て、本当に誇りに思うよ」。(text:cinemacafe.net)
2016年11月29日誰しも一度はあこがれる、「花と緑に囲まれた暮らし」。家事や育児、仕事に追われる毎日には難しいことだと考えがちですが、「たった1本からでも始められる」と言われたら、少し興味がわいてきませんか。そんな楽しみ方を提案し、いつしか自然に、花や緑のある豊かな暮らしに導いてくれるのがTiny N主宰「花生師」として活躍する岡本典子さん。雑誌やディスプレイ、イベントなどあちらこちらでご活躍の岡本さんですが、実は小学3年生&1年生の二人のお子さんのお母さんでもあります。仕事に家庭にと、毎日はつらつと走り抜けている岡本さんに、忙しいからこそ暮らしに添えたい花の楽しみ方、そして子育てのお話を伺いました。▼岡本典子さんファミリー プロフィール・家族構成:夫、妻、小学3年生の男の子と、1年生の女の子との4人暮らし・居住エリア:神奈川県・住宅形態:一軒家・Instagram:日々頁 @noriko_okamoto 、花頁 @hanaikeshi ・Facebook: ・HP: ■花とアンティークのある暮らしリビングへ足を踏み入れると、窓辺や棚だけでなく、天井までも、あふれんばかりに飾られたドライフラワーや生花。岡本さんが生み出す作品同様、アンティークカラーのグラデーションが、古い家具と溶け合うことでドラマティックな空間を生み出しています。高台に建つ一軒家を購入し、DIYが大好きなご主人と一緒に、少しずつ手を加えながら暮らしている岡本さん。大好きなアンティークの家具に似合うよう、リビングの壁には家族みんなで漆喰を塗りました。「一人暮らしを始めたころから、変わらずずっと古いものが好き。アンティークの家具が好きなのは、さりげなく自然に、花と調和するからかもしれません」リビングからエントランスへ抜けるドアは、アンティークショップで購入した古いドアを設置。あいた壁にも、建具や脚立を立てかけ、こちらはエアプランツなどのディスプレイに。窓は、一般的なサッシの部分に木枠を取りつけ、はめ殺し窓のようにしています。ガラスははめていないので、すき間からサッシ窓の開閉もOK。クラック加工ペンキ(乾くとひび割れて、アンティークのような仕上がりになるペンキ)を塗り、こちらも時間をかけて育ったような趣に。建具を味わいのある素材に替えると、部屋全体の重厚感がぐっと増すようです。 ■子どもの想い出アイテムもディスプレイに花台にしているのは、お子さんが小さいときに使っていたアンティークのハイチェア。「一時的にしか使わないものなので、いつか花を合わせたいと思って選びました」。まだ子どもたちの身体が小さく、この椅子がぴったりだったころの食卓の風景が、いつでもよみがえります。カウンターにも、古い木箱やショーケースを置き、ディスプレイスペースとして活用。キッチンの生活感とリビングとを、ゆるやかに隔てる効果も。カウンター上の壁面には、植物画を入れたアンティークのフレームを飾っています。黒を基調にすることで、花の甘さをぴりっと引き締めるスパイスにも。また、子どもたちが作ったリースも、壁面を彩る大切なエレメント。「リース作りは、大人と一緒であれば2歳くらいから始められると思います。うちでは、子どもが興味を持ちだしたこともあって、私が先生役となり、リース作りの家族ワークショップを開いたんです。それをきっかけに、子どもたちは毎年作るようになりました」シックな色を選べば、クリスマスだけでなく一年中楽しめるのだそう。ドライフラワーは、子育て中でも楽しめるまるでおとぎ話の森へ迷い込んだような、エントランススペース。ここでも、もう一台のハイチェアを花台として使っています。「子どもがまだ小さいと、花を飾ることに躊躇される方も多いかもしれません。ワイヤーを使って吊り下げたり、壁に飾ることで、子どもの手に届かず、またドライフラワーなら乾燥した状態で下げられるので、一石二鳥です」「ドライフラワーの寿命は約6か月とお伝えすることが多いですが、これはあくまでも目安です。風通しのいい乾燥した場所で、身体が触れたりぶつかったりする場所でなければもっと長持ちします。状態を見てカサカサしすぎていたり、色があせてきたなと思ったら取り換える程度で大丈夫」と岡本さん。次回は、仕事と子育ての両立について岡本さんに伺います。 取材/文:藤沢あかり 撮影:田所瑞穂
2016年11月29日パートナーとの向き合いかたをお伝えするシリーズの最終回。今回、取材を受けてくださったのは、女性のライフ・子育て支援事業を行う企業の経営者、城梨沙さんです。城さんご夫妻には2歳のお嬢様がひとり。家事は旦那様のほうがたくさんこなしているそうですが、それぞれが自分の実現したいことをきちんと大切にしています。そんなお二人は、お互いにどう向き合っているのでしょうか。城 梨沙さん<職業>株式会社エスキャリア・ライフエージェンシー代表取締役<勤務曜日と帰宅時間>平日は毎日19:00頃に帰宅<旦那様の職業>出勤にフレキシブルな仕事に従事<家族構成>夫、子供1人(女2歳)※2009年に結婚良い意味で予想がつかない相手との絆-学生時代のアルバイト先で知り合った男性と結婚されたんですよね。独身時代、旦那様のどんなところを良いなって思いましたか?城さん(※以下、敬称略):自分と全然違う分野にいるところですね。職業的にも先が見えない面白さがあって。これから仕事を通して彼がどうなっていくのか、そして、彼が関わっている世界がどうなっていくのか、横で見ていてなんか面白そうだなって思ったんです。-きっと、お互いにお金がある時期・ない時期があると思うんですけれど、それも含めての「面白さ」ってことですか?城:そうですね!実際、二人ともお金がなかった時代もあって、私の実家が1つ空いていた時に一緒にそこに住んでいたこともあります。家賃がかからないので。お互いに何者でもないときに出会って、いろんな時期を乗り越えているので絆は強いんじゃないかな。感情的になりやすいから工夫しています-ケンカはしますか?城:子供が生まれてからは、時間の取り合いのケンカがめちゃくちゃあります。「こんなに忙しいのに何で自分ばっかり○○をやらなくちゃいけないんだ」のようなケンカ。だいたい私が主人をカチンとさせている気がします。理想論かもしれませんけど、もっとお互いの立場を考えた言葉がけをしないといけないなって思います。-どうやって仲直りしていますか?城:主人はケンカ中でも理性を保って話ができるんですが、私は感情的になりやすいので、自分の感情が整理できないときには、何にもやもやしていたのか、落ちついてじっくり考えてからパソコンでメールを書いて送っています。でも、娘の前では夫婦ゲンカをしないように気をつけています。娘が寝てから話をするとか、タイミングは気にしていますね。-旦那さんは、家庭内で気をつけていることは何かありそうですか?城:どうなんでしょうね。聞いてみたいですね。ただ、私のすることや考えかたは色々衝撃的過ぎて、「いちいち気にしていると壊れるから、何も見ない、聞かないって感じで流している」とは言われたことがあります(笑)。オーストラリア人のライフスタイルを目指して-今の仕事に携わる前に、ご主人の仕事の都合でオーストラリアに住んでいたことがあるんですよね。城:はい。行く前は、「どんな生活になるんだろう~」とワクワクした気持ちでいました。でも、すぐに専業主婦は合わないことに気づいて。私は、時間がありすぎる状態が苦手みたいです。「日本に帰りたい」って夜中にベッドを叩いて泣いたこともあったくらい(笑)。「私から仕事を取っちゃだめなんだな」って思いました。-今は、夫婦それぞれに毎日どんな時間の使いかたなんでしょうか?何か工夫していることはありますか?城:お互いにチャレンジしたいことがあったら応援し合っていますが、子供がいるので飲み会の予定ひとつ入れるのでも常に対話して折り合いをつけています。予定はGoogleカレンダーで共有していますし。子供がいると、お互いに家にいても家事やら仕事やらで追われていて、夫婦でゆっくりした過ごすことは少ないですね。子供が寝てから寝る直前までPCに向かって仕事をしている日もあります。私は、打ち合わせなどがあって主人に比べると時間に融通がきかないので、子供の送り迎えは主人がやってくれることが多いです。家事分担比率は、主人7:私3。私が家で料理をするのは週1回あるかないか。主人のほうが私よりも家事力が高いし、子供への接しかたもうまいんですよ。子供の遠足のお弁当も彼がつくってくれたりして。私はご飯当番の日が苦痛なんですが、主人が予め食材を仕込んで「あとはこれをやるだけで食べられるよ」ってメールをくれたり、「今日は外食にしようか」って言ってくれたりするんです。めちゃくちゃありがたい!今の生活は、結果的にこうなっていました。彼はいわゆる「主夫」ではありません。経済的な部分を私が担っているわけではなく、二人とも仕事をしていて、自分のやりたいことやキャリアは諦めていない。だから、午後から主人に打ち合わせが入っている場合には「午前中から自分の時間にして良いよ」って言って家のことを私がやるようにしたりして、彼の時間をつくるように心がけています。それから、週1回は外部に掃除代行を依頼しているんです。区のサービスなので料金も安くて、月4回で¥8,000です。富裕層でなくても利用できる。いくらでもやりくりできる金額ですよ。子供がいると、毎日料理を作らなくちゃいけないので本当に大変。だから、自分の会社で「ES(エス)キッチン」という料理代行サービスをつくってしまいました。今後は、週1回くらいこれを利用していきたいです。人に家事をお願いすることで、子供と遊ぶ時間ができたり、仕事をする時間が確保できたりするとこんなにも夫婦がお互いに自分らしくいられるんだなーって実感しています。親である私たちの心が整った状態で子供に向き合うほうが、子供にとっても良いと思いますし。「オーストラリア人のライフスタイル良いよね」って二人で話していて、お互いの原点になっています。私たちが見てきたオーストラリアの人たちは、17:00以降はオフィスにいないんです。一度主人の会社の飲み会に参加したことがあるんですが、スタートが17:00からで19:00には解散して家族と過ごす、って感じでした。「今日は娘の誕生日なので15時に帰ります」っていうのが通用しますし、男性も家事や育児を一緒にやっていて、休日に男性がベビーカーを引く姿を目にすることも。日本人に比べるとゆるくて、家族と一緒に過ごす時間を大切にしているし、人生を楽しんでいるなって思いました。日本人もこういう生活を実現できたら、めちゃくちゃ幸福度が高い国になるんじゃないでしょうか。うまくいく夫婦の条件-どんな夫婦がうまくいくと思いますか?城:お互いが大切にしているものを「良いな」って感じられている夫婦はうまくいくと思います。例えば、私は、仕事をしたり自分のコミュニティーを持ったりして外側にエネルギーが向いているので、そういう私を良いと思ってくれる人じゃないと絶対にうまくいかない。主人は、私に家庭的な要素がないことを予めわかった状態で一緒になってくれたと思います。女性に対して「こうあってほしい」っていう固定観念を持っていない人なので、生きかたも考えかたもすごく柔軟。彼のほうがはるかにいろんな能力が高いと思うんですけど、私の良い部分は褒めてくれるし、考えかたも応援してくれる。「自分よりすごい女性にならないでほしい」っていう雰囲気もないんです。それから、主人も私も異性に対して気が多いタイプじゃないので、異性の存在によって自分の心を安定させようとしていない。よそ見をする暇があったら仕事をしていたいって思っている。そういうところも、うまくいっている要因のひとつかもしれません。-精神的な部分を含めた自立は大事ですよね。城:そう!たとえば、「自分が稼げていないからパートナーはお金持ちが良い」とか、自分にないものを埋めようとして相手を選んでしまうと、それ以外の部分で満たされない部分が出てきた時にうまくいかなくなる。相手に色々求める人は自分が満たされていないんじゃないでしょうか。恋愛や結婚がうまくいく人は、自分で自分を幸せにできる人だと思います。自分が自分の足で立っていれば、その分相手とも対等でいられますし、相手のことも思いやれる。私は、そのために全勢力を注いできました。そして、自分がもっと自由になりたかったからこそ、自分の会社で料理代行サービスをつくりました。自分たちがつくっていくサービスで、これからどれだけ人を幸せにできるかな?こういうことを考えながら歩んでいく人生の方が、面白いんじゃないかな。ライター所感:城さんの考えかた、すごく好きだなって思いました。彼女のように自分で自分を幸せにできる人は、「それぞれの人がどれだけ大切な存在なのか」を感覚的に知っているので、周囲の人を幸せにするための方法をたくさん思いつく。そして、接しかたも丁寧。色々なタイプの方に取材させていただき、仕事ではない時間にも多くのかたと対話をして、私なりに、うまくいく夫婦とはなにかを見つけることができたような気がします。大事なのは、「思いやり」と、「相手の優しさに甘えすぎないこと」。「お互いの自然体を尊重すること」。そして、「きちんと想いを伝え合うこと」。これら以外のことは、それぞれの個性によって変わるかなと感じました。結婚していてもしていなくても、人は必ず別の誰かと関わりながら生きています。自分のことだけを考えて雑に接してしまうと、関係はすぐに壊れてしまう。決して簡単にはいかないからこそ、人と関わることは面白いのかも。ライター:藤宮 ありさ
2016年11月29日無理して恋愛や結婚をしなくてもいい。頭ではそう思っていても、どうしようもなく襲いかかる“さみしい”という感情。ときに家族との関係や友達付き合いまでも面倒なものにしてしまう“さみしさ”の正体はどんなもので、その対処法はあるのでしょうか?『考えない練習』『超訳 ブッダの言葉』など数々の著書や、新聞の人生相談でも活躍されている、月読寺住職・小池龍之介さんにお話を伺いました。人の心はさみしさを“自転車操業”のように埋めている――「一人でいるとさみしい」とか、「誰かとつながりたい」といった気持ちは、私たちの心のどういった仕組みで発生するのでしょうか?足りていないから、なんとか足りるようにしたいと思い悩む欠乏感や欠落感のことを、すべてまとめて“さみしさ”と私は定義しています。本来、さみしさって人間関係とはまったく関係なく生じるものなんです。いつも楽しめているものが楽しめないとか、あってほしいと思っているものがないとか、そういうことだけでも“さみしい”という気持ちは生じますからね。――たしかに、さみしさの原因は人間関係だけとは限りませんね。ですから、“人とつながる”こと以外でも、さみしさを満たすことは可能です。たとえば、何か足りないという渇望感を抱いたとき、食欲に走る人は多いですよね。性欲もそう。セックスの快楽も一時的には満たしてくれます。このように、さみしさの代替行為は実はたくさんあるのです。しかし、私たちはそれらよりも、人とつながることで他人から受け入れられたり、重要な存在として扱われたりするほうが、よりレベルの高い永続的な満足が得られると思いがちです。――俗に“人のぬくもり”と言われるものですね。そのため、“さみしさ”は人間関係において足りてない状態を指すことが多いんです。だから、多くの人は誰かと会ったり、電話したり、メールしたり、SNSに投稿したり、そういった“人とつながる”ことでさみしさを解消しようとします。でも、人間関係によって得られる満足も、食欲や性欲と同じで、すぐに消えてしまう一時的・刹那的なものにすぎないんです。人から愛情や承認を受け取ると、脳内ではドーパミンが分泌されるので、一瞬は満たされます。ただその快感は長持ちせず、すぐに色あせてしまうので、また満たし直さなければいけないという、すごくあやうい零細企業の経営のように“自転車操業”で回っているんです。満たされると感じるほど、余計にさみしくなってしまう――自転車操業を続けてしまった場合どうなってしまうのでしょう?快感が切れてしまったあとは、「もっと愛されたい」「もっと受け入れられたい」という、禁断症状が出てきます。そうやって、刺激(愛情・承認)→快感(満たされた気持ち)→渇望感(やっぱりさみしい)というパターンを繰り返すうちに、脳に耐性がついてしまう。すると、前よりも強い刺激でないと満たされなくなり、より強いさみしさが引き起こされ、結果、常に人とつながっていないと不安になってしまう、というわけです。人の心は、満たされれば満たされるほど、余計にさみしくなるようにできているんですよ。――なんとも皮肉なものですね……。では、自分の親や家族、恋人のように、より強い愛情や承認を得られるような相手には、より強いさみしさを感じてしまう、ということですか?その通りだと思います。私たちは、とりわけ家族やパートナーに対して、過剰な期待を抱きがちです。そして、それが叶わないと他の人よりも強い怒りや、憎しみを抱くので、よりさみしくなります。特に恋愛は、「愛されたい」「求められたい」という渇望感を強烈に満たしてくれますからね。すると、脳はもっと強い快感を欲しがって、その反動で、より強い「さみしい」「満たされない」という不安を引き起こそうとする。だから人は、恋愛すると不安になりたがるんです。――特別な期待や要求をしてしまうからこそ、相手にネガティブな感情を抱いてしまいやすいんですね。私たちは、目の前の相手の言動が原因で怒ったり不安を感じたりしているように錯覚していますが、本当はもともと自分の中に怒りや不安といった“感情のエネルギー”があって、たまたま目の前にいる人をそのターゲットにしているだけなんです。人は自分の世界の中に閉じこもっていて、そもそもすごく孤独なんですよ。相手が自分を愛してくれないから、腹を立てたりさみしくなったりしているのではなくて、私たちはそもそもさみしくて、それを満たしてくれるはずだと思い込んでいる相手が満たしてくれないことに勝手に腹を立てている。因果関係が逆なんです。「自分がさみしいから、相手に腹を立ててしまうんだ」と理解していれば、むやみにイライラしたり不安になったりしても無意味だと気付くはずですよ。それを自覚できている人はほとんどいませんが…。結婚でさみしさは解消されない――家族やパートナーに対して、なぜ過剰な期待や要求をしてしまうのでしょうか?そこに、“特別な絆”や“無償の愛情”があると信じているからでしょうね。しかし、残念ながら人間関係というのは、多かれ少なかれ「自分がしてあげたから、相手も返してくれる」という交換関係なんです。打算や利害関係が一切なくて、無条件に自我を肯定してもらえる人間関係なんてありません。それは家族やパートナーであっても同じです。でも多くの人は、自分が何もしなくても特別扱いしてくれる相手、というのを求めてしまうんですね。――親子やカップルの間には、“特別な絆”や“無償の愛情”が成立しているように見えますが…。それは、“幸せホルモン”や“愛情ホルモン”と呼ばれるオキシトシンが分泌されるからでしょう。このオキシトシンの分泌によって、相手に対する献身的な愛情が無条件に湧いてきて、相手の欠点が見えなくなります。ところが、やっかいなことに、このオキシトシンの分泌は、長い人でも3年で終わってしまうそうなんです。“無償の愛”は、刺激が新鮮な間だけ生じる、およそ3年間の幻想なんです。――それが幻想なら、多くの人は恋愛や結婚なんてしなくなってしまうのでは?結婚生活は、“特別”だった3年間が終わった後のほうが遥かに長いから、特別な関係なんて幻想だとわかっていて、相手に過剰な期待や要求を抱かない人のほうが、かえって安定したパートナーシップを築けるんですよ。ところが、得てして「結婚したい」と強く望んでいる人ほど、特別扱いしてくれる相手と結婚すれば一生さみしさから解放されると思っています。だから、3年経ってオキシトシンが切れたとき、さみしさを満たしてくれない相手に失望や怒りを抱くようになってしまう恐れがあります。――さみしさを動機に結婚するのは、よくないですね…。結婚でさみしさを解消しようとする人は、その期待が大きすぎるので、満たされずにますますさみしさが増幅してしまう。逆に、結婚に過剰な期待をしていない人は、さみしさを解消したいと思っていないからこそ、結果的にさみしさから解放されることができるんです。どんな人間関係であっても、一度得られた安心感や充足感が永続するということは絶対にありません。どんな感覚や刺激も、脳の神経に一定の影響を与えたら、やがて必ず薄れて消えていくからです。でも、消えていくからこそ、また次の感覚や刺激を受け取ることができる。もしも安心感が薄れなかったら、脳がそれ以外考えられなくなり、他に何もできない病気のような状態になってしまいますからね。――どんな感情も長続きしないのは、脳に必要な機能なんですね。永続するものなんてどこにもないのですが、だからこそ人はいろんなことに意識を向けて、絶えず変わっていくことができる。それを“諸行無常”と言うんですよ。(後編に続く)Text/福田フクスケ■プロフィール小池龍之介(こいけ・りゅうのすけ)1978年生まれ、山口県出身。東京大学教養学部卒。2003年、ウェブサイト「家出空間」を立ち上げる。同年、寺院とカフェの機能を兼ね備えた「iede cafe」を展開(〜2007年まで)。現在は、鎌倉にある月読寺の住職として、宗派仏教を超えた立場で自身の修行と一般向けの座禅・瞑想指導を続けている。『考えない練習』(小学館文庫)、『超訳 ブッダの言葉』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『しない生活 煩悩を静める108のお稽古』(幻冬舎新書)など著書多数。
2016年11月29日「レベリオ(現れよ)…」現在公開中の『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』のクライマックス。エディ・レッドメイン演じる主人公ニュート・スキャマンダーが、そう呪文を唱えたとき、姿を現した人物には誰もが驚愕したことだろう。その人物と深く関わることになる、陰うつな雰囲気を放つ青年クリーデンスを演じているのは、エズラ・ミラーだ。日本でも多くの女性ファンを熱狂させた『少年は残酷な弓を射る』『ウォールフラワー』などの危うく、エキセントリックな美少年ぶりとは打って変わって、本作での内向的で、気が弱く、養母から虐待を受けているという役どころに、すぐに彼とは気づかなかった人も多いかもしれない。DCコミックスの実写映画化シリーズ「DCエクステンデット・ユニバース」では、超高速移動が可能な最速ヒーロー、フラッシュ/バリー・アレン役に抜擢され、ザック・スナイダー監督作『Justice League:Part1』(’17年公開/原題)や単独主演作『The Flash』(原題)も決まっているエズラ。スーパーヒーローとなる傍ら、本作への参加を決めたきっかけは何だったのだろうか?「『The Flash』もそうなんだけど、両方とも物語があまりに素晴らしく描かれていて、拒否できないほどだったからなんだ。しかも、両方とも娯楽大作でありながらも、まったくタイプの違う作品だったからね」と、彼は軽やかに言う。「僕は、もともとDCワールドが大好きだし、それに『ハリー・ポッター』も大好きだったんだ。子どものころから『ハリー・ポッター』に夢中で、年齢的にも『ハリー・ポッター』の世界に夢中になる、完璧な世代だったんだよね。頭の中では『ハリー・ポッター』の世界に生きていたと言えるくらいだった。しかも、かなり長い間ね。恥ずかしいかもしれないくらい、僕の人生を形成したというくらいの影響を受けていたんだ(笑)。だから、今回のこのオーディションの話が来たときに、断る理由なんてなかったよ」と明かす。ハリーたちと共に、彼自身も成長してきたわけだ。「面白いのは、ザック・スナイダーが僕の役について言ったのは、『うるさくて元気いっぱい』ということだった。それはそれで最高だよね。それで、(本作監督の)デイビット・イェーツが僕の役について言ったことは、『墓場のように静か』だったんだ(笑)」と話し、「だから、思いきり違いがあって、でも両方とも素晴らしいと思ったんだ」という。とはいえ、今年、日本では人妻エマ(ミア・ワシコウスカ)と不倫をする美青年を演じた『ボヴァリー夫人』も上陸したばかり。長い黒髪が似合う憂い系男子、もしくは繊細なアート系男子といったイメージが強かっただけに、猫背で伏し目がち、散切りおかっぱ頭のクリーデンスのルックスには正直、目を疑ってしまった…。「髪型について、触れてくれてありがとう。今回の場合、あの髪型を決める前、かなり長い髪をしていたんだけど、ヘア・メイクのFayne Hammondに会ったときに、彼女が1920年代の素晴らしい写真を見せてくれたんだ。その中の1枚にクリーデンスの髪型にすごく似た男の子の写真があって。ボウルみたいな髪型だったんだけど、きれいに切り揃えられているわけでもなくてさ。“鋭くないハサミで切ったらこうなるかも”みたいな髪型だったんだよね。それで、キャラクターのリアリティを表現するのに、この髪型が一番良いということになったんだ」と、経緯を説明する。「ただ、僕は本当に本当に、そのとき髪が長かったから、切ってしまうのは悲しかった」とエズラ。「髪型には賛成だったんだけどね。それでばっさりと切ったんだけど、最初は好きじゃなかったんだ。それに僕の運転手も、最初の数週間、毎日その髪型を見て笑っていたしね、僧侶みたいだ、って(笑)」。そうしたこだわりの役作りもあり、エディ演じるニュートが胸躍らせて(?)ニューヨークに降り立つ一方、魔法の根絶を訴える団体“新セーレム救世軍”のビラを配るクリーデンスの初登場シーンは、あまりにも対照的で強烈な印象を残す。これまで、悪魔のような狂気で母親を崩壊させる美少年や、ドラッグまみれの暴走男子など、精神的に複雑なものを抱えた役柄も多かったが、あえてそうした役柄を選んでいるのだろうか?「そうだね。僕は難しいと思える役を演じるのが好きだからね。僕は子どものころ、自分で『難しい挑戦があればあるほど良い』ってモットーにしていたくらいだから。そのモットーにいまも従っているんだ。それに、俳優として、人間の中に潜む幅広い可能性を探求してみることは面白いことだと思うからね」。では、本作のクリーデンス役に対して、内面的にはどのような探求を行ったのだろう?「今回はなるべくシンプルに、“愛されないで育ってきた”というのはどういうことなのかを考えてみようとしたんだ。それで、参考にしたのは、実際にクリーデンスのような経験をして育ってきた人たちに、会って話を聞くことだった。それによって、そのトラウマがその後の人生にどのように影響したのかを考えようとしたんだ。そして、それを体の動きでも表現しようとしたんだよね」と、エズラは応じる。「今回すごくラッキーだったのは、素晴らしい振り付け師と仕事する機会に恵まれたこと。彼はロイヤルバレエの振り付けもするような人で、彼とのコラボレーションによって、このキャラクターの物語を、体の動きでも表現することができたと思うんだ」。また、クリーデンスのようなキャラクターを演じることは、同じような経験をしてきた子どもたちや、若者たちの共感を呼ぶ場合もある。そのことについてエズラは、「昔は意識していなかったけど、いまは意識するようになった」と言う。そして、「クリーデンスに惹かれた理由は、自分の友達のことを思い出したからなんだ。中には、もう亡くなってしまった友達もいるけど…。中には、乗り越えた人もいる」と明かす。「だけど、誰よりもそういう観客の心に届いているのは、J.K.ローリングの物語なんだよね」と彼は言う。確かに、ハリーは家族を失った孤児であり、伯父伯母の家ではつらい経験もして育ってきた。さらに、まだ明らかにはされていないが、本作のニュートも、過去に人間関係において、つらい出来事があったことがにおわされている。「そういう人たちに向けて、そのトラウマからどのように向き合っていけばいいのかという道標を描いてくれている。それを人間関係を通して、友情を通して、どのように克服すればいいのかを描いてくれていると思うんだ。その不運を、どのように良い方向へ向ければいいのかをね…」。最後に、これまでのキャリアにはなかった娯楽大作への挑戦についても聞いてみると、「この映画に出る前は、大作に関して、ステレオタイプな概念しか持っていなかった。これまで低予算映画にばかり出てきたからだと思うんだけどね。だから、サーカスのような撮影現場なんだろうなといつも想像していたんだ」と言う。「だけど、実際参加してみたら、結局は作っている作品に才能を可能な限り注ぐことは、どんなタイプの作品であっても可能なんだということが分かった。それは嬉しい驚きだったよ(笑)」。さらに、「それから」と言葉をつなぎ、「今回の役柄は自分の限界に挑戦し、自分の能力の限界を知るような経験だった」とも語るエズラ。「それで今回学んだことは、虐待が、どれだけ世界に広がっているのかということかな」。そう真摯な眼差しを向けるエズラは、俳優の傍ら、バンド活動を行っていることでも知られる。観客からの反応をすぐさま感じられる音楽と、キャスティングから公開まで長い期間を要する映画とは、まるで対極にも見えるが、彼は双方の活動に魅力を感じているようだ。「長い間ひとつの役になりきるということ、巨大なコラボレーションをするということでは、映画にも素晴らしい部分がある。映画というのは、僕が知る限りで人間が実際にできる最高の魔法だと思うからね。ものすごいたくさんの人たちが集まって、何かを作り上げるためにそのエネルギーを集中させているわけだから」。そう語る彼が次に見せてくれるのは、いったい、どんな“魔法”となるのだろうか…?(text:cinemacafe.net)
2016年11月27日「やさしいママのひみつ」特別編は、グラフィックデザイナーで、ウーマンエキサイトのママ読者モデル「ママリーダーズ」のメンバーでもある、望月麻子さん。5歳と2歳、二人の女の子のママです。望月麻子さん娘さん:ふうかちゃん(5歳)、ゆいりちゃん(2歳)グラフィックデザイナーとして会社に勤務する傍ら、ママのコミュニティサイト「foundMUM」を運営。親子で楽しめるイベントやワークショップなどを開催している。HP: 仕事柄、ものづくりが得意な望月さん。笑顔のママでいるための方法は? そのヒミツに迫ります。■親子のコミュニケーションに欠かせない、手づくりの時間ご主人共々、グラフィックデザイナーである望月さん。家の中には、仕事やプライベートで作った作品がいっぱい。「仕事では、プロダクトも紙もウェブのデザインや、イラストを描くこともあります。夫婦2人どちらかが、週に1回は子どもと一緒に描いたり作ったりしますね。子どもたちは特に粘土が大好き。つい熱中してしまうから、土日の時間があるときにじっくり遊ぶようにしています」樹脂粘土を使った作品は、きちんと固まり、飾っておけるのが魅力だそう。また、捨てられずに溜まってしまう子どもたちの絵は、コラージュしてファイリングするのが、夫婦の楽しみな時間だといいます。「子どもたちとの遊びのアイデアは、基本的に私がやりたいことです(笑)。小さいときに、父と一緒に新聞紙を粘土代わりにして花瓶を作ったり、絵を描きに行ったりした、楽しい記憶があって、子どもと一緒にやりたいなとずっと思い描いていました。そういうことが今の仕事にもつながっているのかもしれませんね」今や自分のお子さんだけにとどまらず、親子イベントの企画やワークショップを開催するほど、活動的な望月さん。子どもたちはもちろん、自分自身も楽しめるものづくりは、望月さんにとって、子どもたちとコミュニケーションをとる上でも欠かせないこと。それが笑顔でいる秘訣だと言います。「普段は18時頃まで保育園なので、できる限り一緒の時間を作りたいなと思っています。仕事で作っているものが完成すると、子どもたちが「こんなのできたんだ!」と喜んでくれるので、私もうれしい。そういった、ものが形になる楽しさを伝えていきたいですね」画材がたくさんある望月家。絵の具をたっぷり使って、粘土を色付けして、手が汚れてしまった後は、きちんと手洗いするのもいつもの光景です。 ■みんなの健康が、笑顔の秘訣! 家庭内感染をしっかり防止そんな望月さんは、「できる限り、食事は大人数でにぎやかに」という思いから、実両親と二世帯で一緒に暮らしています。だからこそ、手洗いは徹底したいのだとか。「一度、上の子が流行性ウイルスにかかったとき、おじいちゃん以外全員が感染してしまったんです。子どものウイルスは大人がかかると体力的にきついし、私も仕事が休めないので、それ以来、徹底的に手洗いをするようにしています。身近だから、一人一人が身体に気をつけないといけないですね」そんな望月さんが愛用しているのが、「サラヤ」のハンドラボシリーズ。まずは、帰宅後すぐ、家の中にバイ菌やウイルスを持ち込まないため、玄関で「手指消毒スプレーVH」をシュッ。そのあと、「ハンドラボ 薬用泡ハンドソープ」で隅々まで洗い、再度「手指消毒スプレーVH」または「手指消毒ハンドジェルVS」を使って、ダブル除菌を心がけています。最後に、タオルは家族一人一人専用のものを使って家庭内の感染もしっかり防止しているのだそう。 ■家族総倒れを防ぐため、子どもたちも気軽に予防「これからの季節は特に、さまざまなウイルスが心配。保育園で流行って、娘のどちらかがかかると、必ずもう一人に移ってしまいます。きちんと効果があり、信頼できるものを使いたいので、幅広いウイルスや細菌を除去できる、プロ仕様の、サラヤのハンドラボシリーズを選びました。ほかのハンドソープに比べて、泡がきめ細やかで、さっと洗い流せるから、洗い残しがないところもいいなと思います。さらにスプレーやジェルを使えば、子どもたちも気軽に手指の洗浄、消毒ができるので、安心感があります。消毒・除菌スプレーやジェルはピリピリとした刺激を感じるものもありますが、保湿成分が配合されているので小さな子どもの手肌にもやさしいです。家族全員で安心して使えるのがうれしいですね」いつも笑顔のママでいるためには、家族もママ自身も元気でいることが必要。しっかり感染対策ができる「サラヤ」のハンドラボシリーズなら、この冬、忙しく働くママの心強い味方になってくれるはずです。取材/文:赤木真弓 撮影:タドコロミズホ[PR]サラヤ株式会社 【やさしいママのひみつ 一覧】
2016年11月24日「アロホモラ!(扉よ開け)」先日行われた『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』ジャパン・プレミア。“魔法のトランク”から登場したエディ・レッドメインが、杖を手にこう呪文を唱えると、扉が開いてティナ役のキャサリン・ウォーターストン、クイニー役のアリソン・スドル、ジェイコブ役のダン・フォグラーらが次々登場、会場は大歓声に包まれた。こうして約8か月ぶりに日本のファンの前に立ったエディは、『ハリー・ポッター』新シリーズの初お披露目が、うれしくてたまらないといった様子だった。『ハリー・ポッター』と同じ魔法世界を舞台にした本作で、エディが演じているのは、かつてハリーたちと同じホグワーツ魔法学校で学んだ“先輩”の魔法使いにして、人間よりも動物といるほうが気が楽な魔法動物学者の主人公ニュート・スキャマンダー。エディは、「『リリーのすべて』ではリリー・エルベという、多くの人たちにとって象徴となるような女性を演じることがわかっていた。『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』では、誰もがJ.K.ローリングと『ハリー・ポッター』を愛していることがわかっている」と、当初はこの重責に高揚感だけでなくプレッシャーもあったことを語っている。さらに、『ハリー・ポッター』とは、ちょっとした“縁”もあったらしいのだ。「僕はもちろん『ハリー・ポッター』シリーズは大好きだったよ」とエディ。「もともとは、僕の弟が家族全員を夢中にさせたというのがきっかけだったんだけどね。僕は、実は『ハリー・ポッター』の若きヴォルデモート役のオーディションもしていたんだけど、ページの4分の1も読まないうちに、あっさり落ちてしまったんだ(笑)。だから、思い入れがある…というか演じてみたかったのは、ヴォルデモートなんだよ。最悪のキャラクターって演じてみたいよね」と、まさかの発言が飛び出した。「私は(屋敷しもべ妖精の)ドビーが大好きだったわ」と話すのは、新ヒロインとしてニュートと行動を共にする、アメリカ魔法省に務める魔法使いティナ役のキャサリン。「私はとにかくドビーが好きで仕方なかったの。いまでもドビーのことを思うと泣きそうになるわ」と語り、2人とも、J.K.ローリングが生み出した魔法の世界にとても親しんでいたことが伺える。「僕は大学時代に、『ハリー・ポッター』のオーディションをしたわけだけど、1シーンすら演じる前に落ちてしまった。それから15年たって、今回起用されて本当に嬉しいよ」とエディ。およそ10年にわたりハリーを演じてきたダニエル・ラドクリフとは「撮影の前に何度か会った」そうで、「本当に素晴らしい俳優だと思うよ。彼とエマ(・ワトソン)と、ルパート(・グリント)から、最高の杖の使い方を盗んだよ(笑)」と、おちゃめに語る。「だけど、笑っちゃったのは、ダン(ダニエル・ラドクリフ)が、ニュートの着ているコートが『カッコ良くて、うらやましい』と言ったこと。というのも、ダンはずっと、なんで彼はカッコいいコートが着れないのか、と文句を言っていたらしいんだ(笑)。彼が着ていたのはジーンズとパーカーばかりだったからね。だけど、僕のほうは時代物の映画しかやってないから、僕は『ジーンズとパーカーを着る役を夢を見ている』って言ったんだよね(笑)」。ダニエルたちが演じてきた『ハリー・ポッター』と地続きの世界が描かれる本作だが、「『ファンタビ』で素晴らしいと思ったところは、『ハリー・ポッター』の原作や映画に描かれていた“魔法”がしっかりと描かれていることだ」とエディは言う。「だけど、この作品なりの別の形になって描かれていたところが素晴らしいと思ったよ。セットでものすごく興奮してしまったのは、新聞(日刊予言者新聞)があることで、中を開いてみたら、本当にその日のことが書かれていて、しかもその日にニューヨークで起きたことがあって、しかも6ページ目を見ると!…っていうね。あまり言えないけど」と、『ハリー・ポッター』シリーズとほぼ同じスタッフが手がけた、こだわり抜かれたその世界観に、改めて感銘を受けたことを明かす。「普通、娯楽大作の“フランチャイズ”といわれるような作品の場合、1作目は純粋に物語の始まりを設定するものでしかない場合が多いけど、この作品はJ.K.ローリングが、スリラー的な要素、コメディ的な要素、ロマンスやハートがあって、しかも感動的だと思えるような物語を、この1本の中にすべて織り込んで描いてみせたことが素晴らしいと思ったんだ。しかも、『ハリー・ポッター』シリーズと共有する部分もありつつ、この後も続いていくにも関わらず、この作品だけでもしっかりと完結しているところもね」とエディ。「もちろんイースター・エッグ(映画の中の秘密)も隠れているし、次回作へのティーザー的な部分もある」と続ける。この新しい『ファンタビ』のシリーズは、本作も含め全5部作にも及ぶ。「俳優としては、5本あるかないかに関係なく、脚本を与えられた作品を一生懸命演じるのが一番大事。この映画を可能な限り、最高の作品にすることが大事だったんだ」とエディが言えば、「私もよ。これが私たちにとっての1作目であり、これを最高の作品にすることしか考えていなかったわ。1歩、1歩。それ以外はできないから」と、キャサリンも隣でにこやかに応じる。キャサリンがティナ役に決まったとき、J.K.ローリングは“彼女がティナ役に決まって嬉しい”とツイートしたという。「私はそのツイートから目が離せなかった。彼女が、私がこの世に存在することを知ってくれているなんて信じられない!と思ったの(笑)。しかも、私が演じるのを喜んでくれてるわ、信じられない! ってね」。「自分で自分にハイファイブしたりしてね」(エディ)。「本当ね(笑)。それをツイートで見ただけでも、彼女がサポートしてくれていると分かって、本当に嬉しかったの。しかも、私に伝えるためにツイートしてくれたように思えたのよね。それは実際に彼女に会う1か月以上の前のことだったんだけど、私にとってはすごく意味のあることだったわ」と、キャサリンは感慨深げにふり返った。彼女が演じるティナは、いわばハーマイオニーから引き継いだ本作のヒロイン。以前はアメリカ魔法省(MACUSA:マクーザ)の中のエリート、闇の魔法使いを捕らえる“闇祓い”だったが、ある出来事がきっかけで異動になり、いまでは単調なデスクワークを任されている。だが、アメリカ魔法界では持ち込みも飼育も禁止されている魔法動物がニューヨークの街じゅうに逃げてしまったことを知り、行動を起こすのだ。「私はティナが内面的な葛藤を抱えているところが好きだわ」とキャサリンは言う。「彼女はかなり自信を失っていて、不安な状況にあるの。そこにすごく共感できたわ。常に自信満々で、落ち着いている人ってそんなにいないと思うのよね。もちろん、そんなふうに見せかけている人、というのはいると思うんだけど。でも、絶対にその下に何か隠していると思うから。それが素晴らしい方法で描かれていると思ったの」と、自身のキャラクターに触れる。「しかも、それはティナだけではないのよね。どのキャラクターも非常に豊かに、複雑に描かれていると思ったわ。周りのキャラクターもすごく複雑で、私のキャラクターを驚かせてくれた。それから、どのシーンも深く描かれているし、どのキャラクターも物語が進むにしたがって成長していくと、脚本を読んでいて思ったわ」と語り、「もちろんサプライズも、アクションもたくさんあるんだけど、(キャラクターの)小さな変化もたくさんあると思った。そういう部分も、演技していて楽しかったわ」。一方、「僕は、ニュートが自分の魔法動物たちに、すごく自信を持っているところが大好きだ」とエディは言う。「だけど、彼は人間との関係性においてはまるで役に立たない。つまり、彼は“見た目だけでは判断できない人”であるところが好きだったんだよね。映画の導入部で見たときは、すごくシャイな人に見えると思うけど、それはニュートが慣れてない環境にいるからなんだ。だけど、彼が動物たちと一緒にいるところを見ると、彼の複雑で、素晴らしい部分が見えてくると思うんだ」。確かに、初対面の人とはなかなか目も合わせられず、人見知りのニュートだが、魔法動物たちと接するときは瞳がキラキラ、表情も優しくなり、まるで別人のように生き生きとする。エディはさらに、「ジョー(J.K.ローリング)はこの4人組全員に、そういう要素を描いてくれたと思うんだよね」と続ける。するとキャサリンも、「それが彼女のメッセージの1つだと思うから。見た目以上のものをそれぞれの人たちが抱えている、ということを伝えたかったのだと思うわ。一瞬で人を判断するのは危険だということ。もちろんそれって現代の私たちにとってもすごく大事なメッセージよね」と言葉をつなぐ。ティナのたった1人の妹クイニーも、人の心を読むことができる明るい性格の魔法使いだが、それゆえに“生きづらさ”をも感じている。また、ニュートと出会い、魔法の世界に初めて誘われる人間(ノー・マジ)のジェイコブも、退屈な缶詰工場に見切りをつけ、夢だったパン屋を開こうとしていたところだ。なかでもニュートとティナは、大切なものへの愛情の深さや、正しい行いへの思いなど、それぞれに信念や情熱がありながらも、周りが見えなくなってしまう不器用なところはよく似ているのかも?「全くその通りだと思うわ。だから、2人は惹かれ合ったんだと思うし、この4人も仲間になったのだと思うの。ティナは、もともとは自分に自信があったのに、ここでは、自分の道を切り開かなくてはいけない立場に立たされているもの」とキャサリン。「ニュートは、“過去に人に傷つけられた”せいで、魔法動物といるときだけは自信があって、自分らしくいられる。だけど、人間関係においては、まったくシャイで、役立たずだ。この2人、そして4人の素晴らしいところは、彼らと一緒にいると、それぞれのいい部分が引き出されて、一番いい自分の姿になれるところなんだよね」と、エディもニュートと仲間たちの関係性をそう表現する。「本当にその通りだと思うわ。ティナは、ニュートが魔法動物たちと会話しているところを見て、それに気づくの。『この人、さっきまでのただのシャイなだけの人ではないわ』ってね」。“人は(魔法動物も?)見かけによらない”“目に見えるものだけが真実ではない”のは、実は本作の裏テーマともいえる。今回の波乱万丈の旅をへて、より深く知り合い仲間になったニュートとティナ、そしてクイニーとダンの4人は、これからどこへ向かうのだろうか?ニュートの過去には、いったい何があったのだろうか?そのヒントはもしや若き日のダンブルドアが握っているのだろうか?疑問は尽きないが、彼らの旅は、まだ始まったばかりだ。(text:cinemacafe.net)
2016年11月23日「ルーモス・マキシマ(強き光よ)…」。約1年前、『ハリー・ポッター』の新シリーズ『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』から初めて届いた映像は、新たな主人公ニュート・スキャマンダーが唱えるこの呪文から幕を開け、多くのファンたちをときめかせた。おっちょこちょいで人見知り、魔法動物といるほうが気楽な魔法動物学者のニュートを演じるのは、日本でも大人気のアカデミー賞俳優エディ・レッドメイン。物語を牽引する仲間たちは、ハリー&ロン&ハーマイオニーのティーンエイジャー・トリオから、ニュート、アメリカ魔法省に勤めるティナとクイニーの魔法使い姉妹、さらにシリーズで初めて人間(米国ではノー・マジと呼ぶ)のジェイコブの4人になった。もちろんハリーたちと同じ魔法の世界だが、今回の舞台はニューヨークだ。もうまもなく日本でもお披露目される『ファンタビ』。新たなヒロイン、ティナの妹クイニー役のアリソン・スドル、魔法の世界に“初めて誘われる人間”ジェイコブ役のダン・フォグラーに、まず話を聞いた。本作は、『ハリー・ポッター』シリーズの生みの親J.K.ローリングが初めて自ら脚本を手がけた渾身作。新シリーズとして、全5部作になることも発表されたばかり。アリソン、そしてダンは『ハリー・ポッター』の世界に前から親しんでいたのだろうか?「僕は映画は観ていたけど、本はすごく重くて持って歩くのが大変だったんだ。だから読んでいなかった(笑)」とダン。一方、アリソンは「私は全部読んでいたわ。『ハリー・ポッター』の本が大好きだったの」と言う。J.K.ローリングは撮影のセットを何度か訪れていたそうで、「まるで小学校の子どもが先生を囲むように彼女の周りを囲んだんだ(笑)。それで、それぞれのキャストと話してくれて、『どう?』と聞いてくれたり、キャラクターが次の作品でどのように変貌していくのかを教えてくれたりした、ものすごく興奮したよ(笑)」とダンがふり返る。では、どんなことを“学んだのか”というと、「それは教えられないね(笑)。だけど、ワオ、とにかく僕のキャラクターが描く“軌道”は最高だということ。それしか言えないね」とユーモアたっぷりにコメント。その後、「かなり遠くまで行くことになると思う」とつけ加えると、「彼のキャラクターは誰よりも飛躍していくのよ」とアリソン。ダン「そうかな?」アリソン「そうじゃない!」ダン「えっと……」と考え込むも、固まりつつあった場の雰囲気を察してか、「僕はネタばらしてないよ!」と慌ててひと言。さすが、『カンフー・パンダ』などの声優やコメディ畑で活躍してきたダンは実に楽しい。また、アリソンはかつてソロシンガー「ファイン・フレンジー」として活動しており、日本デビューも果たしているが、本作が映画初出演。とても息ぴったりの様子の2人に、自身のキャラクターを説明してもらうと…。「クイニーはすごく美しい精神を持った人で、親切だし、心が優しいの。しかも愛情がものすごくあって、愛でいっぱいなのよね」とアリソン。しかも彼女は、人の心を読むことができる開心術(レジメンス)の使い手だ。「その人の人生から、痛みも、秘密も、何もかもすぐに読めてしまうの。私がこの役を演じられて嬉しいのは、彼女は美人だと人からは見られているわけだけど、自分ではまったくそう思っていないところ。それから彼女は自分の人生をすごく面白いと思っているし、楽しんでいるのよね。それからお姉さん(ティナ)のことが大好きなの」。一方のダンは、「ジェイコブの願いはただ1つで、パン屋さんを開いて、落ち着いた暮らしがしたいということ。でもそこで、彼らに出会ってしまうというわけなんだ」アリソン「クレイジーなキャラクターたちにね」ダン「そうそう、クレイジーなキャラクターたちに。彼はおとぎ話によくいるパン屋さんなんだよね」。そう、ダンが演じるジェイコブは、ニューヨークで自分のパン屋を開くことが夢だったのに、ある日、ニュートと偶然出会ったことから運命が一変、数々の夢のような体験に巻き込まれてしまう。「この映画の撮影で経験したことはすべて夢のように思える。何もかもね」と、ダン自身も言う。「このキャラクターって実は、僕自身を演じているようなものなんだ。というのも、僕の曽祖父はパン屋だったし、ロウアー・イースト・サイド(N.Y.マンハッタンの移民が多かった地区)で仕事していたんだ。だから、本当にこの役は僕がやるべくしてやったという気すらしている。それに、こういうファンタジーの設定の中で、完璧な悲しき道化師役を演じられるというのもすごく嬉しいんだよね」と、なんとも“マジック”な巡り合わせを明かしてくれた。さらに、「僕が(撮影中)滞在していた場所の前にすごく小さいなパン屋さんがあって、そのクロワッサンが最高に美味しくてさ。だから、“クロワッサン・デー”を作って、毎週金曜日に撮影現場に持っていってみんなに配っていたんだよね」と、パン屋を夢見るジェイコブらしいエピソードも。そんな彼にとって、ジェイコブを演じることは「曽祖父にオマージュを捧げている感じ」なのだという。「しかも、ニューヨークが舞台というのも僕にとっては完璧すぎる。もし2年半前に『ハリー・ポッター』シリーズに出るか?と聞かれたら、イギリスが舞台だし、僕は雇ってもらえないだろうと思ったと思うから。本当に宝くじに当たったとしか思えないような幸運だったよ。毎日『夢じゃありませんように』と顔をつねっているんだ」。「本当にそう、私もよ。彼ほど明確な結びつきはないにしても、もし、もう少し早くこの映画ができていたら私は起用されなかっただろうなあとは思う」とアリソンも応じる。「でも、私は魔法使いを演じられて、偉大な物語があって。その物語の主人公であるニュートは魔法動物学者であり、魔法動物を守ろうとしているわけよね。私は、実は国際自然保護連合(IUCN)の大使で、絶滅危機の動物を守る運動をしたりしているの」と、なんと彼女にもそんな巡り合わせが!「これってすごい偶然の一致だと思う」。そして、「私は大の『ハリー・ポッター』ファンだし、“マジック(魔法)”って言葉は、恐らく恥ずかしいくらい私が一番使っている言葉だと思うの。『ハリー・ポッター』シリーズが始まる以前からね」と続けるアリソン。「なぜなら私は世界には“魔法の力”があると信じているし、だから、この作品には私が日々語っているようなことが描かれていると思うから」と言う。その“魔法の力”とは、どんなものなのだろう?アリソンは「自分の心を開いて、自分の周りで起きていることを見ようとすること」だと語る。「その時は最悪と思えたこと、例えば、自分が仲良くなりたいと思っても友達になれなかったりして絶望的になったりしても、すぐ後で、その経験から新たなスキルを得たからこそ、次のステップに進めたりするの。自分が進むべき場所に進むことができたりするのよね。その前の出来事がなかったら、そこへ進むことはできなかったはずだし。そうしていると、いきなり目の前が明るく見えたり、街が明るく見えたりするようになる。それって驚異的なことだと思う。それってマジックじゃない?」まさにこの前向きな人生のとらえ方は、クイニーそのもの。とはいえ、“開心術”に長けたクイニーは、誰よりも傷ついた人の心まで分かってしまい、彼女自身もまた、実はたくさん傷ついてきたのではないかと勘ぐってしまう。「本当にその通りだと思うわ。いきなり人々について、ものすごい情報を得ることになるからね。でも人間って、実は多かれ少なかれ誰もがそういう能力を持っているものだと思うの。人が言っていることにしっかりと耳を傾けるようにすれば、人の気持ちを読み取るのは、それほど難しいことでもない気がする。なぜなら、人というのはみんな自分をとても分かってもらいたいと思っているものだから。だから、開心術は不可能ではないと思うわ」。そう言うアリソンが心を読んでみたい相手は、なんとビル・マーレー!「彼の心をずっと読み続けられたら絶対に最高だと思う」。そんなアリソン演じるクイニーにとって、ジェイコブは初めて出会ったノー・マジ(人間)であり、2人の出会いのシーンからも、ひと目で惹かれ合ったことが伝わってくる。だが、アメリカの魔法界はといえば、現実の、いま現在の分断を反映するかのように、魔法族がノー・マジと友人関係や婚姻関係を持つことを禁じているのだ。「それは人種差別とも言えるし、他人への恐怖でもあると思う。自分たちが知らない人たち、理解できない人たちへの恐怖。人間の歴史を振り返ってみても、そういうことってずっと起きてきて、現在の世界においても存在することでしょ。だけど、いつの日か私たち人間は、みんなここに一緒に共存しているのだということに気づかなくちゃいけないと思う。だから、それについて、まさにいま歴史のこの瞬間に、ジョー(J.K.ローリング)が私たちのキャラクターを通して描いているというのは、非常に重要なことだと思うわ」と、真摯に語るアリソン。「うん、僕もまったく賛成だよ」と、ダンも続ける。アメリカの魔法界と人間界の関係性は、「変わっていって欲しいとは思うけど、どうなるのかまだ分からないわ」とアリソンは言う。ただ、「いまから言っておきたいのは、この1作目は、これから起きることの本当にまだ始まりでしかないということ。本当にパワフルな物語がこの先もっと展開していくから」と力を込めて語っており、期待は募る。最後に、J.K.ローリングによるウェブサイト「ポッターモア」では、アメリカの魔法学校イルヴァーモーニーの4つの寮分けを体験できるが、アリソンがクイニーを演じる上で影響が出ないよう「意識的に避けている」のに対し、ダンは“癒しの動物”パグワジの寮になったことを明かす。「でも僕は心の底では、自分はハッフルパフだと思っているんだけどね(笑)」とダン。そういえば、マフラーからも分かるように、エディ演じるニュートもホグワーツ魔法学校時代の寮は、勤勉で献身的で、寛容なハッフルパフ。だからこそ、ダンのジェイコブは人見知りな魔法使いニュートと、いいコンビになることができたのかもしれない。(text:cinemacafe.net)
2016年11月20日南青山にあるお洒落なジュエリーショップ、アンジェリーナ表参道のオーナーデザイナーである篠田恵美さんは、25歳でアンジェリーナを立ち上げた後、28歳で結婚し、年子で男児を出産。それだけでも多忙なのに、2002年、脳外科医のご主人のアメリカ勤務に伴い、乳飲み子二人を抱えて渡米したというパワフルなワーキングマザーです。しかもアメリカ滞在中、さらにジュエリーを探求するため、当時まだ日本に定着していなかったクリスタルヒーリングやセルフイメージ心理学を学び、帰国後、“願いを叶えるジュエリー”をコンセプトに、パワーストーンとは一線を画した、豊かなライフスタイルのためのパートナージュエリーのデザイン・制作をスタート。美しく女性らしい外見からは想像できないエネルギッシュな彼女から、血反吐を吐くような想像を絶する大変さだったという在米での子育ての苦労話、そして、仕事も育児も人間関係も、すべてを回していくために大切な生き方のエッセンスを伺います。■子育てには “この時しかできないこと” がある学生時代からおつきあいしていた男性と結婚し、31歳、32歳と続けて男児を出産した篠田さん。子供たちが1歳と半年ほどのまだ赤ちゃんの頃、渡米することを決心します。―― よく乳飲み子を二人連れて、アメリカへ行こうと思われましたね。「いくつかの理由があります。アンジェリーナを始めた1990年代は、カラーストーンでファンタジックなデザインが時代に合っていて、ファッション誌にもたくさん取りあげられていたのですが、世紀末になると、プラチナにダイヤだけのシンプルなデザインが流行りだして、どうしたらお客様に本当に喜んでいただけるジュエリーを制作出来るのかヒントが欲しくて 勉強し直したいと思っていました。それと、当時、ハリウッドの名女優たちにライフスタイルについてインタビューをするという『デブラ・ウィンガーを探して』(監督:ロザンナ・アークエット/2002年)というドキュメンタリー映画がありました。そのなかでジェーン・フォンダが、『人生で後悔してることはありますか?』との問い対して、『1番後悔しているのは、子育てを人任せにしたこと。子育てについては後回しにすると取返しがつかないことがある』と答えていたのが印象的だったんです。経営者の集まりなどに出ると、一部上場企業のキャリアを積んだ女性経営者の方とかカッコいいんですけど、高校生のお子さんとコミュニケーションが上手くいかず悩んでいたりして…。それを見て、やっぱり幼少期こそが大切だから、腹をくくるべきであろうと。優先順位を考えた時、デザイナーとしての仕事の情熱がトーンダウンして、子供二人との時間を犠牲にしてまでこの仕事を続ける意味が見えなくなっていて。お店は信頼できるスタッフに任せられる状況だったので、思い切って行く選択をしました」―― ご主人の単身赴任という選択はなかったのですか?「当時の悩みは、仕事を続けながら2人の子供をたて続けに授かったことが思った以上に大変だったこと。想像を絶するめまぐるしさで、子育ての楽しい話を聞くと羨ましいけれど、私はもうそれどころじゃない。そのなかで、本当に自分がどうしたいか見極めなきゃいけないけれど何も見えなくなってしまいました。今までの環境から離れて考えるのもいい機会かと、アメリカでなくてもよかったんですが、飛び込んでみようって感じでしたね」 ■雪の飛行場で「ここではぐれたら、一生ママとは会えないよ」と脅しながら…脳外科医のご主人が勤務するミネソタ州のメイヨクリニックは、実績はあるけれど、州都のミネアポリスからプロペラ機で1時間ほどの田舎に位置し、患者さんはヘリコプターで来院するような、病院のための街という感じだったとか。そこに、ご主人は5年間、彼女と子供たちは、日本と行き来しながら3年間滞在したそうです。―― 非常に特殊な環境ですよね。どんな苦労がありましたか?「主人は過酷だったと思います。彼はチャレンジャーなんですよね。フォローしてあげなきゃいけないのに、彼の世話はほぼなし。お互いヘトヘトで会話はなくなっていく。長男は1歳、次男は半年ぐらいでまだ赤ちゃんですから、子供とも話せない。田舎だから車でしか動けない。夏は灼熱、冬は厳寒。庭に来るのはシカ、キツネ、リスだけ。誰ともコミュニケーションできなくて、孤独感と焦燥感がつのり、追い詰められました」―― ミネソタで一番辛かった体験は?「日本に帰ってまた戻った時、飛行場で乗り換えなきゃいけないのに、激しい雪で飛行機が飛ばない。夜11時に次の便は朝の5時半だと言われ、2歳半の長男とヨチヨチ歩きの次男を連れて、空港にはホームレスもいて不安なので、近くのホテルを探したんです。深夜、雪が降り積もる中、ズルズル滑りながらホテルを探して歩いて、下の子は体にくくりつけ、両手には荷物を持って、長男には『今、ここではぐれたら、一生ママとは会えない。死ぬかもしれない。そう思ってしっかりついてこい』と脅したら、必死でついてきましたね。でも、子供たちは時差の関係で全然寝なくて、4時半に空港に戻ってきたら、リコンファームしていたにもかかわらず席がないと。ここで絶対乗らなきゃと思って、ウェーンウェーンて思い切り泣いたら、壊れてる座席が一つあるというので、壊れてても乗る! 何ならトイレに2時間入っててもいい! と騒いで、何とか帰ってきました(笑)」―― それはすごい! 息子さんもタフになるでしょうね。「上の息子は自立心が強く、今、高校生ですが、やはりすごい反抗期でコミュニケーションは大変ですけれど(笑)」そんな命懸けの体験をしながらも、ミネソタでは子供をシッターに預けて、クリスタルヒーリングで有名な女性に会いに行き、彼女に相談すれば悩みの答えの糸口が見つかると期待したものの「あなた、どうなりたいの?」と聞かれてなにも答えられず、「どうなりたいかわからない人に話すことはないから、帰って」と言われ、泣きながら運転したりも。その後は様々に学びを深めながら、篠田さんは、自分だけが提供できるお客様に本当に役に立つジュエリー、なりたい自分になるのをサポートをするジュエリーを模索し始めます。 ■帰国後、母との葛藤が課題に…―― 帰国してからの子育てはいかがでしたか?「帰ってからの課題は、母との葛藤でした。子供の面倒は愛情を持ってよく見てくれるんですが、当然、口は出されますよね。夫はまだアメリカだから、実家に二世帯住宅で暮らしてたんです。完璧な専業主婦だった母には、私が作る料理にしろ家の散らかり具合にしろ、不満に思うのはわかるんですけれども、ちょっとした一言でも過敏に反応してしまい ものすごいストレスに感じたり。私だってやってるのに…という思いがあるから、否定されてるというか、誰にも認めてもらえないという被害妄想がフツフツ湧いてきて苦しかったですね。でも、それって他の人のせいではなくて、自分の心が生み出している苦しみなわけです。私が学んだジュエリーのエネルギーを活用する基本である、心を落ち着かせ客観視することが役立ちました。自分のものの見方を変えることが、本当のなりたい自分になる第一歩であること…。エゴを捨てるということですよね」―― それが一番難しいのではないでしょうか。「母が言ってることをうまく受け流す、必要なものだけ受け取り、過剰に反応せず、バランスを取ること、それがどれだけできるか! エゴを捨てれば捨てるほど苦しみが感謝に変わり本当の自分の在り方が見え始めます。職場でみんなが応援してくれているけれど、子供が熱が出たら帰らなくちゃいけない。それが続くと、みんな内心は…と思うから申し訳ないし、次男が保育園に預けるたびに泣き続ける子だったので、いつも後ろ髪引かれる思いで職場に行く、という繰り返し。すべてに中途半端な自分を責めていました」―― 悩ましいですね。そんなワーキングマザーにアドバイスをいただけますか?「子育てまっ最中はどうしても周囲が見えなくなります。でも、育児って“期間限定”なんです。確実に終わる日が来る。どんなに辛い時でも大切なのは、全体像を客観的にグッと引いて見ること。仕事、子育て、様々な人間関係も、どういう自分になればここを回せるか? 今までの自分の在り方に執着せず、この状況を上手く回せる自分とはどんな人であり、どれだけそうなりきるのか。女優になったつもりでもいいから、文句より感謝やリクエストが言える自分になればいいのです。自分の内面にあるものの見方を変えることが出来れば、状況は必ず変わりますから。人生ってスパイラル状に成長していくもの。私が最初からそんなことができるキャラで、この大変な子育ての経験がなかったら、この “気づき” は得られませんでしたね」そう結んだ篠田さんは、小学生ぐらいのお子さんを見ると懐かしいし愛おしい、と遠い目になるのでした。三代続く医師の家に嫁ぎ、普通だったら医者になるようご長男に勧めるところ、自立心の強い彼に言ったら絶対嫌がるから、一言も口にしなかったそう。それが最近、彼が将来は医者になりたいと進路票に書いているのを知ったとか。知ったことは内緒にしているそうですが、命懸けで幼少期の育児をがんばり抜いてきた彼女には、神様のギフトがあるような気がしてなりません。篠田恵美(しのだ えみ) アンジェリーナオーナーデザイナー一般財団法人 ジュエリープラクティショナー協会代表理事学生時代N.Yやイギリス ブライトンでアートを学び外資系宝飾メゾン勤務を経て25歳の時にデザイナーとして独立、ジュエリーアンジェリーナをオープン。2002年に夫のメイヨクリニックの勤務に伴い渡米、人をより豊かなライフスタイルにするためのジュエリーとは何かを探求するためにクリスタルヒーリングや色彩学、セルフイメージ心理学等を学ぶ。帰国後は "願いを叶えるジュエリー" をコンセプトにパワーストーンとは一線を画した豊かなライフスタイルのためのパートナージュエリーのデザイン、制作をスタート。2012年には一般財団法人ジェリープラクティショナー協会を設立し、宝石が持つ本質的なエネルギーの知識やその活用法を学ぶセミナーやイベントを多数主催。Blog: Facebook: ★篠田恵美さんからのInformation★●2016年12月7日(水)~12月11日(日)アンジェリーナ表参道クリスマスイベント(予約制)お買上の方にはクリスマスプレゼントをご用意してお待ちしおります。●2016年12月21日(水)~25日(日)日本橋三越本店1Fイベントスペース『アンジェリーナ リミテッドショップオープン』お客様それぞれの2017年のテーマに合わせて上質な天然石やデザインにこだわって制作したアンジェリーナのジュエリーを紹介します。(取材・文:稲木紫織)
2016年11月17日「ずっと探していた、ということだと思います。いろんなめぐり合わせで、村山聖という人物を演じられたことに感謝しなければいけないし…、やっぱり10年に1本の作品なんですよ。自分はこの役を演じるために、俳優になったんじゃないかとふと思っちゃって」。そう思わせるほどの役柄、作品との出合いが俳優にとって、どれほど幸福なことであるかは、想像に難くない。松山ケンイチが、29歳で急逝した天才棋士・村山聖を演じた『聖の青春』。幼い頃に難病のネフローゼを患いながら、将棋の才能を開花させた村山聖が、プロとして当時「東の羽生、西の村山」と並び称された最大のライバル・羽生善治と文字通りの死闘を繰り広げた青春の1ページを描く。大幅に増量した、命がけの役作りも話題だ。■村山聖を演じるためなら、命を燃やせる「体型の変化やそういう表面的なことが話題になるのは仕方ないと思いますけど、役者にしてみるとマストというか、最低限やらなきゃいけないことなので…。村山さんの体型には、持病が関係していたし、それを自分が肉体で表現することで初めて、村山さんの体の使い方、生活のリズム、クセや考え方に近づくことができたと思うので。歩き方も変わるし、『こんな場所が凝るんだな』とか(笑)。そういう意外な発見は、どんどん役作りに活かしましたね」。「村山さんが命、そして生きることに向き合う姿に、ものすごく感銘を受けたんです。男としてカッコいいなと思うし、20代で演じた平清盛もそうですが、何かに夢中になって生きているほうが面白いと思うんですよ。僕はまだ31年しか生きていないですが、常にそうありたいと思いますし、それを改めて実感させてくれたのが村山さんの存在。だからこそ、村山聖を演じるためなら、命を燃やせると思ったし、そうでなければ表現できないんです」。■村山聖の“鏡”として浮上した羽生善治メガホンをとるのは、『ひゃくはち』『宇宙兄弟』を手がけた森義隆監督。当初は「村山の内面に徹底的にフォーカスした」というが、大崎善生氏による原作小説をベースに、羽生善治本人を含めた関係者への取材を重ねる過程で、「村山と戦った人々、支えた人たちの心情にも目が届くようになった。結果的には、周囲を振り回しながら、それでも強烈な魅力を放つ村山を軸にした群像劇になった」のだとか。それでも“村山の不在”だけは解消されず…。「当然ながら、村山さん本人にだけは取材ができない。でも、きっと彼がお墓まで持って行った、誰も知りえない思いや言葉があるはずじゃないですか。そこを僕らが想像し創作して、村山さんの抱いていたかもしれない気持ちを羽生さんに対し吐露させた…、つまり村山聖の“鏡”として羽生善治が浮上したんです。村山の魂がどんな形をしているのかを突き詰める上で、羽生さんの存在がどうしても必要だった。ライバル同士の切磋琢磨だけじゃなく、孤高の天才二人にしか分からない魂の対話にグッとフォーカスしたんです」。■松山ケンイチvs東出昌大約3時間の長回しの“極限”舞台裏とは?最大の見どころは、やはり村山と羽生が繰り広げる対局シーンだ。松山さん、そして羽生を演じる東出昌大が、将棋指しにとっての“生きざま”そのものである棋譜を覚え込み、盤上で再現した。「本物の瞬間を撮りたかった」という森監督の意向に、2人の人気俳優も「ぜひ、やりたい」と応じ、約3時間に及ぶ長回し撮影が敢行された。現場に漂う“極限”の緊張感を想像するだけで、鳥肌が立つが、果たしてどんな舞台裏だったのだろうか?「単に棋譜を覚えるだけじゃなく、それを忘れながら、次の一手を必死に迷えるか。そのあたりは、事前に俳優と話し合うのもヤボだし、とにかく2人がやりたいと言ってくれたから。実際、カメラが回る3時間の間にも役作りがどんどん進む感覚で『ああ、村山が降りてきたな』と。役柄と役者の魂が渾然一体となって、もはや誰も寄せ付けない2人だけの“空間と時間”が生み出された」(森監督)「頼りになるのは、僕ら2人の体と駒だけ。ふり返ると、カメラ(の存在)も忘れてるし、役柄と自分自身の一体化というか、役柄すら捨てて、自分との対峙、そして東出くんとの対峙になっていたと思いますね。村山さんと羽生さんがそうであったように、僕らも“潜って”対話をしながら、いかに相手に火をつけていくか…。そんな3時間でした。その間、東出くんの顔は一切見ていないし、指し手のキャッチボールだけを続けました」(松山さん)最後に、松山さんに「もし、村山聖に会えるとしたら、どんな言葉をかけたいですか?」と質問すると、こんなシンプルで力強い言葉が返ってきた。「愛していたし、大好きでした」。(photo / text:Ryo Uchida)■関連作品:聖の青春 2016年11月19日より全国にて公開(C) 2016「聖の青春」製作委員会
2016年11月17日雑誌や書籍などで幅広く活躍する、イラストレーターのよしいちひろさん。 <前編> に続いて、<後編>では息子さんの食生活のために選んだ、とっておきのアイテムをご紹介します。よしいちひろさん息子さん(2歳)1979年兵庫県生まれ。ガーリーでロマンティックな世界観が人気のイラストレーター。書籍や広告など、幅広いジャンルで活躍している。著書に 『思いを伝える! かわいいイラストBOOK』 (PIEBOOKS)。夫、2歳の長男、愛犬と都内の一軒家に暮らす。ホームページ ■おしゃれなインテリアに調和する、キッチン周りのアイテムよしいさんのダイニングキッチンに並ぶ、お子さんのアイテムも、一見すると子どものものに見えないほど、見事に調和しています。離乳食を始めた頃から使っているという、「高橋工芸」の木製のテーブルウェアもそのひとつ。「軽くて、手触りも木の風合いも良く、一度割れてしまいましたが、また買い足しました。まだ落としたりするので、陶器も割れにくそうなものを選んで使っています。プレートは大人のケーキ皿に使っても、ちょうどいいサイズ。少しずつ大人と同じものを使うようにしていきたいです。あひるの絵が描かれたコップは、友人からの内祝い。とても気に入っています」お気に入りの食器を洗う洗剤にも、やはりこだわりたいもの。よしいさんは食器用洗剤をずっと探していたなかで、「ヤシノミ洗剤」が気になっていたそう。「イラストの仕事をする前にパン屋で働いていたのですが、そのお店でずっと使っていたので馴染みがあります。これまでたまたま手に入りやすかったという理由で、別のものを使っていましたが、今回久しぶりに使ってみて、安心して使えるし、しっかり洗えるので、改めていいなと思いました」■安全で、バランスの良い食事作り子どもの食事作りにもこだわりたいというよしいさん。材料はできる限り、何が入っているかわかるものを使うようにしているのだとか。「調味料は特に、何が入っているのか知るのが難しいですが、うちは徳島に住む叔母が、農協の婦人会で手作りしているめんつゆや柚子酢、焼肉のタレを毎年送ってくれるので、すごくありがたいです。めんつゆは煮物に、柚子酢はサラダなどに、レモン汁の代わりとして使っているので、すぐになくなってしまいます」「便秘気味の息子のため、毎日作るようにしているお味噌汁も、いい出汁パックを使ったら簡単に美味しくできるので、市販のものを利用しています。最近はいいものが手に入りやすくなったなと思います」よしいさんのキッチンで活躍しているのは、「フィスラー」の圧力鍋と「ブラウン」のハンドブレンダー。以前から使っていたものですが、お子さんの食事作りに特に使うようになったそう。「圧力鍋は3分で炊いて、蒸らしに15分ほど。すぐに炊けるし、食感がもっちりとしておいしいです。またスープや、筑前煮などの煮物を作ったり、肉も圧力鍋を使うと柔らかくなって、子どもでも食べやすくなります。緑の野菜をあまり食べたがらないので、小松菜や青梗菜にバナナ、ぶどうなど、果物を二種類くらいと牛乳を混ぜてグリーンスムージーにすると、ごくごく飲んでくれます。ブレンダーならミキサーに比べると、洗う手間が少ないので楽ですね」 ■ひとりの人間として接する最後に、子育てで気をつけていることを伺うと、「できるだけダメだと言わないこと」と、よしいさん。仕事や子育ての大変さを感じさせず、やさしいママでいられるのは、そんなお子さんに対する心がけからくるのかもしれません。「できるだけ自分がやりたいことを通せる人になってほしいので、何かに集中しているときは、邪魔しないようにしたいと思っています。私の母が、『ダメと言わずに育てましょう』という育児書を読んで実践していたそうで、そのことに感謝しているので、私もそうしてあげたいなと思います。なかなか理想通りにはできませんが、例えば水道やシャンプーなどを出し続けて遊ぶときは、その分おもちゃを買ったと思えばいい、と思い直すように心がけています」「すぐ感情的になって怒ってしまいますが、そんなときは上から押さえつけず、できるだけ素直に自分の思いを話すようにしています。『もう今日はお母さんしたくない』と、ストライキしてそのままベッドで寝たり(笑)そういうのはいいお母さんではありませんが、子どものために思ってすることが結局ストレスになって、冷たい態度を取ってしまうより、お互いにちゃんと感情を出せるような関係になりたいと思います。良くも悪くも1対1と思ってしまいますが、ひとりの人間として接して、尊重したいなと思っています」取材/文:赤木真弓 撮影:林ひろし[PR]サラヤ株式会社
2016年11月17日「やさしいママのひみつ」第4回目は、イラストレーターのよしいちひろさん。2歳になったばかりの男の子のママです。よしいちひろさん息子さん(2歳)1979年兵庫県生まれ。ガーリーでロマンティックな世界観が人気のイラストレーター。書籍や広告など、幅広いジャンルで活躍している。著書に 『思いを伝える! かわいいイラストBOOK』 (PIEBOOKS)。夫、2歳の長男、愛犬と都内の一軒家に暮らす。HP: よしいさんが心がけている子育てや、息子さんのために選んだアイテムとは?<前編>では、よしいさんのもの選びを中心に、お話を伺いました。■気持ちの良く過ごすための、もの選び淡い色彩、軽やかなタッチのイラストはもちろん、おしゃれなファッションやライフスタイルで、多くのファンを持つよしいさん。昨年の春、豊かな緑に囲まれた街に引っ越し、陽がたっぷり入る明るい一軒家に親子3人と、愛犬・おいもと暮らしています。部屋にあるものは、どれもよしいさんの絵から飛び出してきたような空気感をまとった、素敵なものばかり。これらは、国内外、中古新品問わず、よしいさんが探してきたものだといいます。「子どもとおいもが気持ち良く過ごせる家にしたくて、工務店の方に相談しながら決めました。日当たりがいいし、漆喰の真っ白な壁なので、自然と気持ちが明るくなります。私のイラストは、実際にあるものを参考に描いているので、いつもかわいいものを探しています。海外の作家さんのウェブサイトまで幅広く見て、いいなと思ったらつい買ってしまいます」出産前に、行きつけの古道具店でひと目惚れして買ったという、ビンテージの犬の4輪車もそのひとつ。「前輪と後輪が違う動きをするのが珍しいなと思って。ようやく最近、足でこいで遊ぶようになりました」「子どものものってすぐに大きくなるから、古いものでも、かわいくて状態が良ければ、あまり気にせず使っています。近くのリサイクルショップにもよく行きますね」■出産してから、気になるようになった「肌触り」と「におい」よしいさんのファッションは、古着などのアイテムをミックスした上級者の着こなしですが、お子さんの服は、色合いや肌触りの良さで選ぶことが多いそう。「派手な色ではなく、赤でも朱色や、黄色っぽい青色のニュアンスカラーが好きです。子ども服で自分が好きだと思うブランドは、こだわって作られていることが多いので、自然と肌触りにこだわっていたり、オーガニックコットンを使っているものが集まりました」「ユニセックスのデザインが好きなので、探すときは男の子の服より、女の子の服から探すと、かわいい服が見つかることが多いです。子どもは暑がりだから、去年はニットをあまり着なかったけど、今年は着られるかなと期待しているんです」もの選びはこれまで、見た目だけにこだわっていたというよしいさん。日々使うものは、だんだん選び方が変わってきたといいます。「子どもってはっきりしていて、ごはんも大人は雰囲気で食べますが、子どもは美味しくないと食べません。だから雰囲気だけではなく、実直なもの、きちんと効果があるものを選ぶようになった気がします」そうして食べるもの、身に付けるものは、できるだけシンプルな原料や材料で作られたものにこだわるようになったというよしいさんですが、洗剤選びには悩んでいたそう。「出産してから、特ににおいが気になるようになりました。洗いたては気にならなくても、汚れがきちんと取れていなかったのか、引き出しに入れていると気になって、なんとかしたいと思っていたんです」「柔軟剤も使っていなかったので、ものによってはごわごわしていて、それも好きだったのですが、子ども服はふっくらしていた方がいいなと思って。ヤシノミ洗濯洗剤なら洗浄力が高いので、においが気にならず、柔軟剤も無香料なのでいいなと思いました」「無香料だから虫除けで自分の好きな香りを入れるのもいいし、犬にも安心。子どもがいると洗濯回数も多いから、手頃なのもありがたいです。これからも使いたいですね」肌触りにこだわったコットンやニットの子ども服も、ふっくらとした仕上がり、ますます気持ちのよい着心地に。 ■子どもと一緒に、楽しめることを探すイラストレーターとして、忙しく過ごすよしいさん。毎日6時に起き、食事や洗濯などの家事をこなして、8時に夫と息子さんを送り出します。夕方5時まで仕事に集中し、その後息子さんと一緒にたっぷり1時間、おいものお散歩に。その時間がとても大切なのだといいます。「日中は保育ママさんに預けていますが、帰ってきたら子どもとの時間。ごはんを作ったり、子どもとできないことはいない間に済ませて、犬の散歩や洗濯物をたたむなど、できることは一緒にします」「子どもも散歩に行くのがわかっていて、きちんと犬のペースに合わせるし、いい運動になるのかこの1年でとても丈夫になりました。ごはんが作れないほど忙しいときは、外食をしたり、お弁当やレトルト食品を買ったり、手抜きをすることも。イライラするのが一番良くないと思っているので、自分が気持ちのいいようにというのは意識しています」無理をせず、子どもと一緒に楽しめることを探して、時間をうまく使うことが、よしいさんの子育て。ママの側にずっといたい歳頃の息子さんは、よしいさんが仕事場で絵を描く横で、紙をチョキチョキ。早くもママの影響を受けているようです。「七夕飾りを作ったのをきっかけに、ここ最近、自分でできるようになりました。刃先が丸いので、子どもが使っても危なくないし、子どもが大好きなぶどうがモチーフなのも、ちょうどよかったです」もうひとつ、よしいさんらしいのがマスキングテープを使ったデコレーション。寝室やリビング、階段のほかに、床にもプラスしたそう。「以前、雑誌の企画でマスキングテープを使ったデコレーションをしたのですが、新たに子どものために道路を作ってみました。子どもも喜んで車を走らせています。飽きたらはがせるし、『道を足して』と言われたら簡単に足せるのもいいですよね」すぐに真似ができそうなマスキングテープ使いのアイデアは、よしいさんならでは。 <後編> では、引き続き、よしいさんのこだわりアイテムや子育てで心がけていることをご紹介します。 取材/文:赤木真弓 撮影:林ひろし[PR]サラヤ株式会社
2016年11月16日「すごくてこずりました。現場でとことん向き合っていただきました」と発した厳しい言葉の内容とはうらはらに、キュートに微笑んだのは、のん。戦争が背景にあるアニメーション作品『この世界の片隅に』で主人公すずの声を担当し、アニメ映画初主演にチャレンジした。声の出し方から人物描写にいたるまで、片渕須直監督を質問攻めにしたと明かしたのんさんの、新たな血肉となった渾身作に込めた思いとは。人物に声を吹き込むというオファーを受けたとき、素直に驚いたと話したのんさんは、共に送られてきたこうの史代が描いた同名原作を読み終える頃には、「絶対にやりたい」と決意を固くしていた。「これまで、戦争は自分が住んでいる世界とは別のものだと捉えていたんですけど、作品ではちゃんと日常があったんです。戦時下の物語として、本当に大切に生活が描かれているところが自分としてはすごく新鮮で、素敵だなと思いました」と、作品の虜になった。のんさんが伝えるように、『この世界の片隅に』は、太平洋戦争の時代に広島県呉市に生きたひとりの女性・すずの日常を描いた物語。戦争と隣り合わせに生きることになったすずが、健気に生活を送る姿―日々の炊事や洗濯、苦手なお針子に、ちょっとした恋愛―を繊細なタッチで綴った。ホワホワしていてかわいらしく天然、だけど、ひとつことを決めたらやり通すような芯の強さが垣間見える主人公は、のんさんの清廉なパブリックイメージに重なるよう。声入れについて、のんさんは「いままで女優としては、体全部を使って表現していました。表情や動き、相手との掛け合いもあるので、自然と五感を動かすことがとっかかりになっていたんです。でも、今回は基本的に私ひとりで(声を)入れていく作業で、表現を乗せるのが難しかったです」とふり返る。だから、冒頭の監督質問攻めのくだりになる。「リハーサルのときに全部終わって帰ろうとする監督を呼び止めて、台詞の解釈を聞いたりしました。でも、足りなくて(笑)。すずさんの人柄を掘り下げたくて、スタッフさんを介してLINEに箇条書きでバーッと書いたものを毎晩送りつけて、『ここはどうですか?』と細かく聞いたりしていました。監督は、とことん全部答えてくださいました」と、熱いやり取りの経緯を説明した。のんさんの想いを超えてくるように、監督も高い熱量で現場をリードした。「監督って…、ものすごくタフなんです。ごはん休憩なしで何時間もいっちゃうくらい集中力がすごくて、乗っからせていただきました。途中、『あ、ちょっとダメかも』と思ったときには『トイレ行きます!』って行ったりして(笑)。すごく楽しかったです」。幼少期から始まったすずの物語は、やがて18歳でお嫁にいく姿を追いかけてゆく。優しい旦那さんと仲良く暮らすすずのもとへ、重巡洋艦「青葉」の水平となった地元の同級生・水原が訪ねてきて、ちょっとしたドラマが生まれる。淡い初恋にも似た感情を持っているような描写がある水原とすずだっただけに、大人になって再会した二人の間には微妙な空気が流れるのだ。それは、のんさんが「現場に入ってからも、ギリギリまですずさんの気持ちがわからなかった」と、最も悩んだシーンでもあった。「水原さんがきて、布団でぬくぬくと二人きりになるシーンでは、すずさんが彼に膝枕をしたりするんです。その行動は意外だったし、本当にすずさんの気持ちがわかりませんでした。すずさんが水原さんのほうに揺れているようにも見えるというか」。迷い、悩むのんさんに、小さい頃は兄弟みたいな関係性の二人だったという裏設定が告げられる。リラックスできる間柄だからこそ取った行動と納得したのんさんは、最大の難所をクリアはしたものの、「すごくてこずりました」と、男女の機微を声だけで表現する難しさを痛感したのだった。ひとつひとつの場面と向き合った結果、作品が完成することは、この上ない喜びだろう。のんさんは、「素晴らしい作品に出させていただきました」と充足感を覚えながら、戦争をモチーフにした作品に関わることへの想いも同時に寄せる。「戦争という題材が入ってきているからこそ、どんなことがあっても日常を生きていかなくてはいけないというテーマを感じました。私くらいの若い年の人も、日常の大切さを、より感じる作品になっていると思います。日常を普通に生きる…普通であることが、すごく素晴らしいことだと感じていただけると思います」。(photo / text:Kyoko Akayama)■関連作品:この世界の片隅に 2016年11月12日より全国にて公開(C) こうの史代・双葉社/「この世界の片隅に」製作委員会
2016年11月11日海沿いを2人乗りのバイクが滑走し、後ろにまたがった少女が叫ぶ、「この海も山もコウちゃんのものだ!私も…コウちゃんのものなんだ!」。小松菜奈演じる望月夏芽が天を仰ぎながら、心を開放するかのように叫ぶトレーラーの1コマだけで、作品の瑞々しさの一端を垣間見ることができる。10代の恋と衝動を描いた映画『溺れるナイフ』が、ついに公開された。本作の主人公を演じた小松さん、そして累計170万部突破の原作コミックを手掛けた漫画家・ジョージ朝倉先生の2人に独占インタビューした。「映画化は大変だろうな、と思われるような作品にしたいというのはありました」とは、インタビュー最初の朝倉先生の発言。これまで数々の漫画を世に送り出し、『恋文日和』、『平凡ポンチ』、『ピース オブ ケイク』といった名作が実写映画化されてきた。しかしながら、朝倉先生は、「よく私の漫画の評価で、“映画的”とおっしゃっていただけるんですけど、もともと映画が好きで映画に影響を受けて描いた漫画なんです。それを映画化するのは変な話だなと思いまして」と、冷静に話す。そんな朝倉先生の背中を押したのは、山戸結希監督からの映画化への想いをつづった直筆の手紙だった。まるでラブレターとも呼べそうな熱量だったそうで、「本当にとても熱いお手紙で、こんなことは二度とないんじゃないかと思いました。映像化に関しては、たいていプロデューサーさんが見つけてくれるものが多くて、監督から直に打診していただいたのは初めての経験でした。こんなに幸せなことはないだろうから、最後のチャンスかもしれないと思い、お引き受けしました」。原作者、そして監督の熱い想いが込められたこの作品で、主人公の夏芽を演じたのが、主演の小松さんだ。ことの大きさは、周りの反響から薄々感じ取っていたと切り出す。「『溺れるナイフをやります』と言ったときに、『楽しみにしてます』とたくさんの関係者の方に言われたんです。そんなことはいままでなかったので、すごくうれしいことで、とにかく全力でやるきるしかないと思いました」と決意をしたものの、「山戸監督と聞いたとき、大変な現場になるんだろうなっていうのは予想していたんですけど、想像以上の現場でした(笑)」と、述懐。小松さんといえば、女優デビュー作『渇き。』で、中島哲也監督の厳しい演技指導を乗り越えた経験値もある。「中島監督の映画に出させていただいたときに、『この後の作品はすごく楽だと思うよ』と言われたんですけど、全然そんなことはなくて(笑)。これまで難しい役や変わった役をオファーされることも多かったんですが、ふり返っても、今回が一番大変でした。生きて帰れるのかな、くらいの現場だったので。3週間だったんですけど、1年間くらい撮っている感覚で、毎朝起きるのも怖かったです(笑)」と、ありったけの思いを話し出した。例えば、6時間ずっと1シーンだけを撮る場面があったり、台本もあってないようなものでその場で都度変更されたり…という思い出を切々と朝倉先生に伝えると、「そんなに!?でも6時間かけて、あんなナチュラルな感じとは驚愕ですよ」と、演技の自然さに驚いていた。朝倉先生は漫画家ならではの観察眼の鋭さで、小松さんの女優としての魅力を分析する。「かわいいだけじゃない感じがにじみ出ていて、それが変わった役のオファーが多い所以じゃないのかなって思いますね。そういうのも撮ってみたいと思わせる顔をしているというか、癖のある何かをやってほしいと思わせるような奥深い魅力のあるルックスなんだと思います。だから苦しい役がきちゃうのかもね(笑)?」と微笑みかけると、しきりに照れて恐縮する小松さんだった。主人公の夏芽は、東京で人気モデルとして活躍していたが、父親の事情で田舎に引っ越すことになる。狭い街で知り合った同級生のコウ(菅田将暉)は自由気ままで傍若無人、そして際立った美しさも併せ持ち、夏芽を翻弄する。コウの唯一の親友・大友(重岡大毅)は、コウに惹かれる夏芽を知りながらも、自分の想いを抑えられずにいる。それぞれの間で揺れ動く気持ち。朝倉先生は、「大友君といるときと、コウちゃんといるときの菜奈ちゃん(夏芽)の表情が全然違ったので、すごくいいなと思いました」と、劇中でのたたずまいを賞賛。そして、連載当時の気持ちをこう表現した。「言っていいのか分からないですけど、私は、コウと夏芽の関係をいわゆる『恋』とは見ていなかったんです。男女だから『恋』に見えるかもしれないけど、2人の関係性は、もしかしたらほかに名前があるかもしれないと。でも、夏芽はそれを恋愛だと思い込んでいるという体で描いていました。夏芽はコウちゃんに恋愛モードで寄っていくけど、コウちゃんが腑に落ちていなくて拒否したりする場面があるのは、そのためです。そして、そんなコウとの関係と対比させたくて、大友が出てきて恋愛をする流れを入れたんです。私は『運命の関係』を描きはしましたが、『激しい恋』を描いたつもりはなくて。ただ、監督がそう受け取って映像にしているなら全然OKというか、人によって受け取り方が違っていいと思うんです」。小松さんも、朝倉先生の想いに共鳴する。「言われてみると、恋なのか、何なのかな、というのは感じました。恋愛ではあるんだけど、夏芽の表現の仕方がすごく大きいというか。夏芽にとって、コウちゃんはライバル的な感じじゃないですか。夏芽はすごく感情で生きていて、コウちゃんは冷静で客観的。大友が恋をしているのは伝わって分かるんですけど、コウちゃんと夏芽は衝撃的なものだったと思うんです」と、夏芽を演じて感じた二人の関係についての見解を示した。「運命の関係」が描かれた本作は、10代の登場人物たちのほとばしるような思いが、同世代の読者の心にまで“感染”し、熱狂をもって受け入れられてきた。朝倉先生にとって10代とは何だったのか?「恥でしかないというか…私だけですかね(笑)?特に恋愛に関しては、“私、素晴らしい恋愛をしてきました”と胸を張れる人はいるのかな?10代は特に素直になれなかったり、知らないこともいっぱいで、自分を守るのにも精一杯で相手を傷つけたり、なかなかうまくいくのが難しいと思います」と、『溺れるナイフ』世代に思いを馳せる。現在20歳で先日10代を卒業したばかりの小松さんは、10代特有の恋愛観を語る。「何だろう…10代って感情のままいられるじゃないですか。20代って結婚も含め考えちゃうところもあるし。だから、10代にしかできない恋というか、キラキラ感があるんでしょうね。『溺れるナイフ』も、ヒリヒリした感じの青春を切り取っている映画だと思うんです。普通の恋愛映画とは全然違う、考えさせられる、衝撃的な作品だと思っています」。(text:Kyoko Akayama/photo:Nahoko Suzuki)
2016年11月08日一期一会のなかにも“特別”がある。その出会いが転機となることもあれば、未来の自分にとって立ち返る場所になることもある。女優の高梨臨さんが「あたたかい現場、あたたかい映画でした」と言う『種まく旅人~夢のつぎ木~』は、彼女にとって特別な出会い、特別な1本となった。演じるのは片岡彩音。市役所に勤めながら兄が遺した畑で桃を栽培する、等身大のヒロイン。佐々部清監督からは「余計なお芝居やテクニックでのお芝居はしないでほしい」というリクエストがあった。「迷ったりもしました。でも、現場で――いまの芝居はまだ“伝えよう”とする気持ちが入っている、セリフの語尾も変えていいから――と、そうやって監督に丁寧に演出してもらうなかで、徐々に芝居感がとれていくのが分かりました。余計な芝居をしない、テクニックに頼らない、それは私自身にとっても女優としてリセットさせてもらったような感覚で。通常は台本を読んでどんなお芝居をしようか考えますが、今回は監督の演出によって、その時々の彩音の心情に自然と近づくことができた。監督を信じて付いていけばいいんだと、心強かったです」。最初は「恐い監督かもしれない…」という緊張もあったそうだが、実際は「とてもチャーミングな監督でした(笑)」と明かす。撮影は全国屈指の桃の名産地である岡山県赤磐市を中心に行われた。映画を観た誰もがそこに行きたくなり、高梨さんの「赤磐の桃はみずみずしくて衝撃的に美味しかったです!」という言葉で、ますます食べてみたくなる。そして「きれいな空気と赤磐の人々の温かさがあったからこそ彩音になれた気がします」と、豊かな自然とその土地で生きる人々との出会いも、役づくりにひと役買っている。また、特別ではないキャラクター、誰もが共感できるキャラクターを演じることは、いまの高梨さんにとって嬉しいこと、望んでいたことだった。「彩音は長女でしっかりしていて…といった特徴はありますが、突出したものはないごく普通の女性です。そういうキャラクターをすごく演じてみたかった。挫折もするし、頑張ってもうまくいかなくて、それでもまた頑張る、誰もが共感できる女の子です。監督も“すぐそこにいる人、本当にいる人を描きたい”とおっしゃっていて、(キャラクター像としては)彩音と私の中間とも言われました。彩音が抱く感情は誰もが抱く感情なので、素直に、すうっと入ることができたんです」。同じように、その感情は観客にもすうっと入り込み、心を揺さぶるだろう。肉体的な挑戦もあった。映画のなかに赤磐市のマスコットキャラクター“あかいわモモちゃん”が登場するが、すべてのシーンで高梨さんがモモちゃんを演じている。「そうなんです(笑)。過去に『侍戦隊シンケンジャー』に出演していたときに、着ぐるみの経験はありましたが、全身の着ぐるみは今回が初めて。顔の隠れているシーンは最初、吹き替えの設定でした。でも監督が言うには、中に入っている人によって動きがぜんぜん違うらしくて…。私自身はキャラものが大好き!せっかく演じるならモモちゃんを可愛く見せたい!と、モモちゃんが可愛く見える仕草に全力を注ぎました(笑)。真夏の撮影で尋常じゃない汗をかきながらでしたけど、楽しかったです」。市役所の職員として、桃農家として一生懸命に生きる彩音と出会い心を通わせていく、農林水産省の官僚・木村治を演じるのは斎藤工。一見、やる気のなさそうに見える青年だが、実は熱いものを持ち、彩音と共にそれぞれの夢を追いかけていく。高梨さんと斎藤さんはこれまでに何度か共演経験があり、彩音と治のコメディ感あるシーンの息はぴったりだった。「私のなかでは、斎藤工くんが“やる気のない青年”を演じることは何だか新鮮で、治役は見ていて楽しかったですね(笑)。治役の工くんもそうですし、上司役の津田寛治さんをはじめ、彩音を取り巻く人たちを演じる俳優さんたちのテンポに乗るというか、振り回されるというか──彩音を演じるためにそれは必要なことでした。後半、彩音がモモちゃんのまま家に向かって走っていくシーンは、彩音の心情はもちろん、周りの人たちの思いを知って、それを受け止めて、自分の気持ちがどんどん膨らんでいって溢れ出すシーン。あの撮影は特に素敵な時間でした」。ほかにも、明るく元気で頑張ってきた彩音が泣き崩れるシーンがある。佐々部監督は現場でどんどんアイデアを出す。そのシーンでは彩音の感情=涙腺が緩むきっかけとして、亡き兄の写真を目に入る場所に置くことで、高梨さんは号泣。「耐えて、耐えて…感情を吐き出すシーンでした」という感動のワンシーンとなった。また、この映画は日本の第一次産業を応援する『種まく旅人』シリーズの第3弾。すべてロケーション撮影だったからこそ言えたセリフもあると言う。「撮影は3週間ほどでしたが、地元の方みなさんがあたたかくて、いい人たちばかり。みなさんに囲まれながらの撮影だったので、『ここは何処ですか?』『赤磐です』というセリフも普通に抵抗なく言えました。都内だったり撮影所のセットだったら、あんなふうに自然に言えなかったと思います。赤磐だから言えるセリフなんです」。そして映画を通して知り合った赤磐の人々、桃をはじめとする第一次産業を支えている人たちの生き方は「とても格好いい」と称え、彼らの頑張る姿を見て、自分自身の夢についても改めて考えたと語る。「私がこの世界に入るきっかけはスカウトでしたが、徐々に演じることの面白さを実感しています。ひとつの作品が終わる毎に思うのは、一緒に仕事をした人たちとまた仕事をしたい、また会えるように頑張りたい、ということ。映画のなかに“夢のために種を撒いていくの”というセリフがあって、それは自分の夢の描き方にも言えること。女優の仕事は何を頑張ってもいつか仕事に繋がると思うので、挑戦する=種を撒き続けていきたいんです。悩んだりすることもあるけれど、もうダメだ…って思うギリギリのところで、周りの人たちに救われてきました。彩音もそうであるように、支えてもらってきたからこそ、私自身も周りの人たちを大切にしていきたい。これから先、立ち止まったり挫折したりしたときには、きっとこの映画も支えてくれる。そんな特別な1本になりました」。(text:Rie Shintani/photo:Nahoko Suzuki)■関連作品:種まく旅人夢のつぎ木 2016年11月5日より全国にて公開(C) 2016「種まく旅人」製作委員会
2016年11月07日「Acid Black Cherry」によるコンセプトアルバムを映画化した『L-エル-』の完成披露上映会が11月6日(日)、シネマメディアージュにて行われ、出演する広瀬アリス、古川雄輝らが登壇した。広瀬さん演じる主人公・エルを想い続けるオヴェス役を担当した古川さんだったが、撮影時に特別2人の距離は縮まなかった様子で、「雰囲気で察していただければ…」と、苦笑していた。『L-エル-』は愛を探し求め続けた「エル」という女性の幼少期から老いゆく姿になるまでの、孤独で壮絶な人生をたどった物語。総計20万枚以上の驚異的なセールスを記録し、書籍化までされたロックアーティスト「Acid Black Cherry」の同名作を基に、VFXを多用したファンタジックで美しい映像で仕上げた。広瀬さんとの共演エピソードについて、古川さんは「結構お互い人見知りなので(笑)。なかなか僕から話しかけることはないんですけど、アニメ好きなんですかとかちょろっと話して…、以上です」と、締めくくった。広瀬さんも「本当にちょろっと話したくらいで、“こういうお芝居しましょう”というのも特になく、いい距離感だったかなと思います」と話し、たどたどしく微笑み合っていた。撮影はかなりタイトなスケジュールで、夜12時終わり予定でも朝4時までかかることはザラ、さらには朝7時からまた撮影というような間隔だったという。広瀬さんは「かなりハードで、体力的にも精神的にもきつすぎて、つらすぎて。でも、だからこそ撮れたシーンもありました」と前向きに話すと、登壇した下山天監督が、「現場で女優さんがレッドブルをがんがん飲んでるの、初めて見ました(笑)」とぶっちゃけ出し、広瀬さんも大きく口を開けて同意の笑みを見せた。実は、広瀬さんの兄が「Acid Black Cherry」の大ファンだそうで、この日の上映会にも参加していたという。広瀬さんは、「お兄ちゃんだってすぐわかりました。ねえ、お兄ちゃん」と客席に向かって明るく声をかけた。さらに、「最初に報告したのが兄だったので、感想をすごく楽しみにしています。今度ライブ一緒に行けたらいいなと思っています」と、広瀬兄弟の仲の良さも垣間見せていた。完成披露上映会には、そのほか、高橋メアリージュン、平岡祐太、弥尋、古畑星夏も出席した。『L-エル-』は11月25日(金)より全国ロードショー。(cinamacafe.net)
2016年11月06日自分の家族や子供、身近な友達がLGBTかもしれないって考えたことはありますか?LGBTというのは、レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダーの頭文字で、セクシャルマイノリティの総称。そんなLGBT当事者とその家族・パートナーを対象にした「カミングアウトデー フォトセッション」が開催されました。このフォトセッションを企画したのは、さまざまな家族写真を出張撮影というスタイルで提供してきた「fotowa(フォトワ)」と、LGBT関連サービスを手がける「レティビー」。LGBTという存在が当たり前に受け入れられる社会を実現したいという両社の想いが合致してこのイベントが実現しました。当日のフォトセッションの様子を、企画側や参加者のインタビューを交えてお伝えします。撮影:中村レオさんLGBTって何?ゲイやレズビアン、バイセクシャル、トランスジェンダー…みなさんも聞いたことがあるこの言葉。具体的にどういうものかご存じですか?・ゲイ:男性同性愛者、男性に恋愛感情を抱く男性・レズビアン:女性同性愛者、女性に恋愛感情を抱く女性・バイセクシャル:両性愛者、男性、女性どちらにも恋愛感情を抱く人(本人の性自認は関係ない)・トランスジェンダー:生まれたときの性別に自分の中で違和感を覚えている人・シスジェンダー:生まれたときの性別に自分の性自認が一致している人男性が女性に恋愛感情を抱く、あるいは女性が男性に恋愛感情を抱くといった異性愛者は「ヘテロ」と呼ばれます。例えば、男性として生まれてきて「自分は男性である」と考え、女性に恋愛感情を抱く人はシスジェンダーのヘテロとなります。参加者の感想一緒にいて違和感がない、一番ラクな相手浜松幸さん(右・31歳・トランスジェンダー/ヘテロ)&小暮美樹さん(左・25歳)撮影:中村レオさん浜松さんは戸籍上は女性ですが、男性として暮らしているトランスジェンダー。恋愛対象は女性です。浜松さんと一緒に写っているのがパートナーの小暮さん。イベントの間、まるで子どものようにはしゃぐ浜松さんを笑顔でみつめる小暮さんからは、付き合って1年のカップルとは思えないぐらいの仲の良さが伝わってきました。「仲が良いってよく言われます。自分たちでも仲いいよ〜って言いますし(笑)」ーフォトセッションはどうでしたか?浜松さん:楽しかった〜!小暮さん:写真を撮られるのがあまり得意じゃないから恥ずかしかったんですけど、2人で写真を撮ることってほとんどないから楽しかったです。ー浜松さんは普段の生活で困ったことはありましたか?浜松さん:自分たちは同性愛者ではないので、日常生活でそれほど困ることはありません。自分は高校生の頃からカミングアウトしていますが、理解できない人とは無理に関わらなくて良いというスタンスです。小暮さん:私も元々偏見はありませんでした。彼と付き合うようになって当事者になりましたが、周りが普通に受け入れてくれるから周りに理解を求めることがないんです。そういった意味ではとても恵まれていますね。でも、例えば今後2人で部屋を借りようということになったら、戸籍上は女同士なので困ることがあるかも、という心配はあります。浜松さん:今はLGBTっていう言葉もできたし、昔にくらべると知識のある人も増えて、セクシャルマイノリティの状況はよくなってきてると感じます。自分のアイデンティティを認めることが幸せへの第一歩渡辺勇人さん(右・36歳・シスジェンダー/ゲイ)&ゴードン・ヘイワードさん(左・36歳・シスジェンダー/ゲイ)結婚して約3年という渡辺さんとヘイワードさんカップル。今回のフォトセッションにはどんな想いを持って参加したのかお話しを聞きました。ー今回のようなLGBTの方々向けのフォトセッションというサービスについてどう思われますか?渡辺さん:二人の思い出の写真を撮りたいって思いますけど、一般的な家族写真の撮影会だと周りに気を遣ってしまうんです。でも、私たちのようなLGBTの人たちが使っているってわかれば、みんなも思い出の写真を撮りやすくなるって思います。こんなポーズで撮影することも。ーカミングアウトすることには抵抗はなかったですか?渡辺さん:もちろん、100%支持しますという人ばかりじゃありません。それでも、自分たちはカミングアウトしたほうがいいと思っています。自分のセクシャリティは持って生まれたものだから、他の人に批判されてもどうすることもできませんから。相手に支持してもらうことを期待するのではなく、「自分はこういう風に生きていいく」と決めることが大切なんです。たとえ家族だとしても最初から理解を求めなくてもいいと思うんです。時間がかかるかもしれないし、もしかしたら永遠に理解されないかもしれないけれど、自分の本当の姿を伝えることに意味があると思います。LGBTじゃなくても、自分は人と違うって思っている人には、「自分のアイデンティティが分からないと幸せの第一歩を踏み出せない」ってことを伝えたいです。企画側の想いLGBTフレンドリーが当たり前の世の中に2016年2月に始まった出張撮影マッチングサービス「fotowa」の事業責任者・李さん。自身も当事者という立場から、fotowaをLGBTであってもマジョリティであっても、すべての人が使いたいと思えるサービスにしたいという想いがこのフォトセッションのきっかけになったそうです。ピクスタ株式会社fotowa運営チーム事業責任者・李婧さん李さん:LGBTという切り口での撮影会は初の試みでしたが、参加者がみんな口をそろえて「楽しかった」と言ってくださったのが嬉しかったです。今回だけでなく、今後もLGBTの人たちにかかわらず、マイノリティもマジョリティの全ての人たちが気兼ねなく使えるサービスにしていきたいですね。こういったサービスが当たり前の世の中になるようなきっかけになればという期待もあります。fotowaのフォトグラファーにも、今後はLGBTに対する理解度を深める研修をおこなっていく予定。「LGBTフレンドリーのフォトグラファー」という肩書きがあることで、LGBTの方々が周りに気を遣わず気軽に撮影依頼できるようなサービスにしていきたいです。マイノリティが生きやすい社会に変えていく力になりたい今回fotowaとタッグを組んだのが、LGBT向けのWebサイト「Letobee Life」を運営している株式会社レティビー。LGBTという存在が社会に受け入れられるために必要な情報を発信するなど、彼らの社会的認知度を上げるためのさまざまなサービスを展開しています。株式会社レティビー代表取締役・榎本悠里香さん榎本さん:写真館にゲイカップルの家族写真が飾ってある。普段目にするサービスにLGBTの人々が普通に存在しているような環境で生活していれば、自然と考えかたが変わっていくんじゃないかと思うんです。社会が歩み寄れば、LGBTの人たちも自分を認めやすくなる、そんな環境をつくっていきたいという私たちの想いとfotowaさんの考えかたが合致して、今回のフォトセッションが実現しました。家族写真や記念日の写真って、LGBT当事者から一番遠いところにあるサービスなんです。なぜなら、他に利用しているLGBTカップルがいないから。でも、そこに普通にLGBTカップルがいたら面白いんじゃないかなと思いました。今後は、LGBTカップルをフィーチャーした広告をつくったり、LGBTの人たちが自分たちが使いたいサービスを自由に選べるような社会の仕組みをつくっていきたいですね。愛情表現が豊かだから撮影していて楽しい参加者と一緒になって楽しんで撮影している様子が印象的なフォトグラファーの中村さん。今回、LGBTの家族・カップルを撮影してみて、普段の撮影との違いや感想をお聞きしました。フォトグラファー/中村レオさん中村さん:撮影する前も撮影中も、LGBTだから気を遣うということはありませんでした。身近にゲイカップルの知人もいますが「お互い好きならいいじゃん」って思っていますし。元々は愛用品などモノの撮影を専門としているんですが、愛情表現が豊かなLGBTカップルの撮影はとても楽しかったです。普段は恥ずかしがってポーズをとってくれない人も多いんですけど、LGBTカップルはノリがよくて、撮影を一緒に楽しもうとしてくれるので撮る側としては非常に助かりました。ライター所感どの参加者も自然体で、とても幸せそうな様子が印象的でした。私自身にとっても未知の領域だったLGBTの家族やカップルの姿を間近で見て、先入観を取り払う一番の近道は「知ること」だと実感。マイノリティの存在を「普通に」受け入れられる社会になれば、もっと自由にいろいろな価値観を認め合える、誰もが生きやすい世の中になる気がしました。カミングアウトデー(10月11日):自身の性的嗜好や性自認をカミングアウトした人々をお祝いしたり、LGBTに対する認識向上を目的とした記念日。> fotowa 公式サイトはこちら> Letibee 公式サイトはこちら> 「fotowa」について詳しくはこちら:自然な家族の姿を写真に残しませんか?出張マッチングサービス“fotowa”ライター:柏木 真由子
2016年11月01日フジテレビ / イースト・エンタテインメントが制作する人気リアリティ・ショー「テラスハウス」の新シーズンが本日11月1日(火)より「FOD」と「Netflix」で配信を開始した(テレビ放送はフジテレビ系で11月28日から)。舞台はハワイ。これまで湘南、東京と日本の地で若い男女のさまざまな人間模様を描いてきたが、今回、シリーズとして初めて海外へ舞台を移し、そこで生活していく6人の男女も、国籍はさまざまだ。これらの新たな試みについて、番組チーフプロデューサーに話しを伺った。新シーズンクランクイン直後に現地のハワイにて取材が行われた。青い空、青い海…その言葉通りのこの場所は、美しい自然と陽気な人々でにぎわうリゾート地。ビーチを見下ろす高台にある今回の新住居を訪れ、まだ共同生活を始めて2日目の新メンバー6人と顔を合わせた。いままでのシリーズでも没個性なメンバーはいなかっただろうが、今回はひと目見たその容姿からも強いインパクトを感じさせた。番組チーフプロデューサーの太田大氏、松本彩夏氏に、今シーズンの新たな試みについて尋ねた。「最初に湘南、そして東京とやってきて感じたのは、海があるリゾート感というか“ゴキゲン”さが東京にはなかったなと。東京だとどうしても非日常感が薄く感じることがありました。東京は東京で、そういったことが転じて喧嘩が多かったりして良くも悪くも別の面白さがあったんですけどね。それで、次はまたどこか離れた場所がいいなと思いました。“だったらハワイでも行っちゃう?”って(笑)」(松本氏)。東京を舞台にした前シーズン「TERRACE HOUSE BOYS & GIRLS IN THE CITY」は東京ならではの混沌さがあり、それは東京で暮らす若者の“リアル”だったように見えたし、「東京編」そのものは否定しない。「メンバーの結束や“ここにしか私たちはいられない”というような“陸の孤島感”が失われたなっていう気持ちがどこか撮影しているなかであって。普段の生活をある意味で捨てなければ住めない環境で、なにかを犠牲にしてそこに住んでいるっていうことで生まれるものがあったんだなって。『東京編』を否定するつもりはないんですけど、やっぱりその感じはもう1回テラスハウスに必要だなと」(松本氏)。今回の選ばれた6名の住人は、まず男性陣に高校生でウクレレアーティストの18歳、俳優志望の18歳、家具職人の27歳。そして女性陣は画家志望でモデルの18歳、ショップ店員の26歳、23歳女性の6人。容姿のインパクトもさることながら、彼らはそれぞれに夢や誇れるような職を持っている。すでに実を結んでいる者もいれば、大きな夢に向かって歩んでいる途中の者もいるが、話しを聞いてみるとそれぞれが強い野心を持っており、選ばれた6人であることを納得させた。今回だけでなく過去も含めて、メンバー選定に基準はあるのだろうか。松本氏いわく、オーディションの部屋へ入ってきたファーストインパクトで、それはほぼ決まっているのだという。「その時々のメンバーとのバランスもありますし、容姿が抜群だから仕事が立派だからといって全員採用ではないです。でも入ってきた時にわかりますよね。“面構え”というか美人だとかとは別の“良い顔してるな”というような。話しを聞いてみたらなかなかいいじゃんみたいなことってそんなにない。やっぱり顔にやっていることって出るんですよね。…と思っていたらとんでもない子もたくさんいましたから、アテにはならないですけど…(笑)」。前シーズンより地上波放送だけでなく「Netflix」によって世界190か国で視聴できるようになった本作。すでにアメリカには多数の人気リアリティ・ショーが存在するが、「テラスハウス」は派手で過激なアメリカのそれとは大きく異なり、日本人らしい情緒を感じさせる番組だ。この差について太田氏は演出の違いを挙げた。「海外のリアリティ・ショーってBGMやSEを多用していて、それがドラマっぽくさせているんですよね。『テラスハウス』は基本的には実存する曲を使用しますし、“ズドーン”とかSEを使わない。これは結構大きな違いかなと思いますね」。加えて松本氏は、演出上重要視していることについても。「カメラをできるだけ動かさない。良いこと言ったり泣いてたらズームしたくなるけれど、それをするとやっぱり私たちが“いまここ見てください”ってことになる。見る人にできるだけゆだねるということは最初から気にしているところ。制作側の気配を消すとか。視聴者の皆さんが見たいように見てもらえればいいなって」。「テラスハウス」を通して、日本のテレビ局として日本の文化や日本人らしさを表現する意図があるかどうかには「全然そんな大それたことを思っていないです!(笑)」と松本氏。加えて太田氏は「文化の差というのではなく、この番組は日本文化や日本人らしさを背負う番組ではないのですが、アメリカのような派手な出来事も特にないけど、日本の若者たちのいまを切り取るとこういう感じになりましたというものですね」とふり返る。「海外と違うように作ろうとか、海外はこうだけど私たちはこう!っていうのは全然思ったことがなくて。日本人が日本人を撮っていたらこうなりましたっていう感じかなと思います」。「TERRACE HOUSE ALOHA STATE」(全24話)は「FOD」&「Netflix」で現在配信中。テレビ放送は11月28日(月)深夜24時55分~フジテレビにて放送。協力:Netflix(text:cinemacafe.net)
2016年11月01日今回インタビューを受けてくださったのは、結婚5年目の江藤さんご夫妻です。お二人の出会いは職場。現在は奥様の美帆さんが立ち上げた会社を夫の慎治さんがサポートしており、休日も一緒に出掛けることが多いのだそう。多くの時間を共に過ごすお二人は、どんなふうにお互いと向き合っているのでしょうか。江藤慎治さん・美帆さん<職業>スナップマート株式会社代表取締役CEO(美帆さん)スナップマート株式会社リードエンジニア(慎治さん)<家族構成>夫婦二人暮らし※2011年に結婚<勤務曜日と帰宅時間>平日勤務が中心で、土日に働くこともある。一緒に仕事を終えて一緒に帰る毎日。結婚について思うこと‐今は、結婚に対する価値観が二極化していて、結婚前に試行錯誤をしておいて離婚しないつもりで結婚する(したい)と考える人と、結婚をお付き合いと似た感覚で捉えていて、結婚後の試行錯誤や、合わなかったらパートナーを変えることはやむを得ないと考える人がいるように感じています。個人の自由なので正解はありませんが、お二人はどんなふうにお考えですか?美帆さん(※以下、敬称略):他人にオススメできるかはさておきとして、私は圧倒的に後者です。私はこれまでに2回、夫は1回結婚を経験しているのですが、結婚にかぎらず、1回のチャレンジでベストの結果を出すことって運の要素もあるし、なかなか難しいと思うんですよ。だから、仕事でも私生活でも、なるべく早く行動して、早く失敗して、トライアンドエラーを繰り返して成功に近づいていくほうが満足のいく結果が得られるような気がしていて。相手もいることですし、子どももいたらそんなにカジュアルに離婚はできないですが、「絶対1回で成功させないと」と意気込むこともないんじゃないかな?とは思います。‐お二人にとって、「結婚」とはなんでしょうか?美帆:結婚は、してもしなくても良いものなのかもしれませんが、ちょっと夢のない話をすると、「相互扶助」ですかね。「互助会」みたいな(笑)。失業したり、体調を崩したり、人生にピンチがおとずれたときに夫婦だと助け合えますよね。助けてもらいたいのもありますし、助けてあげたいとも思いますし。とくに「助けてあげたい」って思えるかが大事なのかも。慎治さん(以下、敬称略):僕も同じです。あとは、やっぱり一人だと寂しいですし、味気ないですよね。一人より二人で生きていくほうが良いなと思いました。そう思ったきっかけは3.11だったかもしれません。この人なら「無理しなくても良い」と思えた‐結婚の決め手になったことはなんでしたか?美帆:私はもう一生結婚はしないだろうなぁと思っていたときに彼と出会ったんです。自分がこの人と結婚したいと思ったというよりは、なんかいろんな人に騙されたりしてたんで、放っておけないなと思って(笑)。‐お付き合いしていた頃には、結婚したらどんな生活を送りたいと考えていましたか?慎治:自然体でいられて、無理をしないで過ごせたら良いなと思っていました。美帆:私も同じです。過去の経験から、本来の姿を変えてまで結婚生活を維持していくのは絶対無理だとわかっていたので。‐どんな人がパートナーだったら自然体でいられますか?美帆:相手を変えようとしない人かな?慎治:感覚的に自然体でいられると思える人ですかね。僕たちは、「そろそろ掃除をしないとまずい」と感じる我慢の限界点や、生活面で気になる部分が近いんです。お互いにあまり細かいタイプではないので、掃除も気づいたほうがやります。こういった感覚的な部分は、付き合っている段階でなんとなくわかっていたので、お付き合い後1ヶ月で結婚しました。‐ちょうど先日、知人からこんな相談を受けたんです。その子は彼と同棲しているんですが、彼女は几帳面で家の中をキレイに使うタイプなんですね。それに対して彼は大らかで、例えば、洗顔の泡立て網に泡がついたまま流さないんだそうです。当初は彼に言えば直してくれていたそうですが、最近はもう直してくれないらしくて。生活面でのそういった小さい出来事の積み重ねがストレスになっていて、これからずっと一緒にいられるのかが不安なんだそうです。私は彼女にアドバイスをするわけでもなく、ただ話を聞いていたんですが、どう思われますか?慎治:その、「直さない状態」がきっと彼の素ですよね。だから、彼は変わらないと思いますし、結婚したらもっと使いかたが大らかになる可能性があります。そんな彼を受け入れられるかどうかが鍵なんじゃないでしょうか。「結婚したら変わってくれるかも」とは間違っても思わないことです。‐なるほど。知人に伝えます(笑)。ちなみに、こういう場合はパートナーに指摘しますか?慎治・美帆:しないです。気になったら、何も言わないで掃除しますね。言って直るものなら、これまでの人生の中でとっくに直ってるでしょうし。‐「相手を変えようとしない」っていう先ほどのお話とつながるところですね。これ以外に、向き合い方やコミュニケーションについて何か大事にしていることはありますか?美帆:うーん、特にないです。夫と一緒にいると、実家の家族よりも気を遣わなくて良いので、一人で生活しているのと何も変わらないんです。新婚の時と同じ楽しい気持ちが今も続いている‐結婚前に相手に対して好きだと感じていた部分は、増えたり減ったり変わったりしましたか?慎治:変わらないですね。妻は、ズバズバホントのことを言ってしまうところが変わっていないです。美帆:同じく、変わらないですね。夫は、正直なところが変わっていないです。‐お互いの同じような部分が好きなんですね。ケンカはします?美帆:結婚して5年、気持ち悪いくらいケンカしたことがなかったんですが、一緒に仕事をするようになってからは、しょっちゅう衝突するようになりました。私はビジネスサイドの人間で、彼はエンジニアなので、仕事のやり方にお互いダメ出しすることが多いんですけども。プライベート面でのケンカは今もしないですね。‐ケンカの仲直りはどうやってしていますか?美帆:その場で言いたいことを言って終わりです。もともと、ケンカというより仕事上の意見交換なので、日をまたいで持ち越すようなことはないです。‐これまでに離婚の危機はなさそうですね。慎治・美帆:ないですね。あったら別れてます(笑)。‐日々、どんな時に相手から「ありがとう」と言われますか? 美帆:色々なときに言うんですが、寝る前に、「生きていてくれてありがとう」って言っています。自分が年とったせいかもしれませんが、ただ元気で、毎日同じようにそこにいてくれるだけでありがたいなと。バツあり同士ということもあって、お互いに多くを望んでいないんだと思います。最初の結婚のときは、「結婚とはこういうもの」という思い込みが強すぎたり、「男の人はこうあるべき」という自分なりの理想があって、勝手に期待して勝手にがっかりしてたんですけど…。あと、感謝の気持ちはちゃんと口に出して言わないと伝わらないんだなっていう反省もあって、いまはなるべく口に出して言うようにしています。‐「何かをしてくれてありがとう」ではなくて、存在に感謝できるって素敵ですね! では、「この人と結婚して良かった」と思ったエピソードを教えてください。慎治・美帆:毎日思います。何か特別なエピソードがあるわけではないんですが、今回は、新婚の時と同じような楽しい日々が今も続いているんです。美帆:若い頃はずっと「良い人と結婚したら幸せになれる」と思っていましたが、前の夫はホントに人間的にも素晴らしい人だったのにうまくいかなくて、「なんでだろう?」「自分は結婚に向いてないんだな」と思っていました。でも夫と結婚して、相手が優れた人かどうかって自分の幸せとはあんまり関係ないんだなって気づきました。こんなふうにありのままでいられて、お互いストレスがたまらない相手と出会えたのは奇跡的なことだと思うので、そのことに一番幸せを感じます。慎治:お互いに飾っていないので、結婚してから「知らなかったこと」が出てくることがないんですよね。その安心感というか、信頼感は大きいですね。これからも何も変わらずに‐これから磨きたいところは何かありますか?慎治:すみません、特にないです。美帆:私は、もっと奥さんっぽいことがしたいです(笑)。健康に気を遣った料理を作るとか。感謝しているわりには行動が伴っていないので、そこは反省しています。‐これからの夫婦生活についての希望・野望は何かありますか?慎治・美帆:このままが続いたら良いですね。何も変わらないのが幸せかな。「一緒に死ねたら良いね。一人だけ残ってもね。」って話をよくしています。ライター所感:終始、「自然体」「気を遣っていない」といったコメントが多く、穏やかな雰囲気に包まれていたお二人。「人に細かな指摘をしない」「期待しない」など、そのスタンスにとても共感する部分が多く、自分の恋愛と重ねながらお話を伺ってきました。仕事でも一緒、家でも一緒、休日も一緒、それでも、毎日「結婚してよかった」と思い、「この人と一緒に死ねたらいいな」と思う。なかなかない、素敵な出会いですよね。これからも末永く、お幸せに!…なんだか新婚さんへのコメントみたいになってしまうのは、5年が経っている今もお二人が新婚さんみたいに仲良しだからでしょうか。ライター:藤宮 ありさ
2016年11月01日本日より「FOD」「Netflix」にて配信が開始された人気リアリティー・ショー「テラスハウス」の新シーズン「TERRACE HOUSE ALOHA STATE」。舞台はシーズン初のハワイ。およそひと月前、「テラスハウス」で共同生活を始めたばかりの新メンバーたちにインタビューを実施。今回は気になる新メンバーのなかから男性3名を紹介!彼らの心境や今後の夢などを語ってもらった。「TERRACE HOUSE ALOHA STATE」男性新メンバー3名■世界が注目の若き天才!でも恋愛はまだ…鮎澤悠介 -YUSUKE AIZAWA-生年月日:1998年9月24日出身地: 東京都八王子市趣味: 音楽、観光、読書、映画鑑賞好きな食べ物: ラーメン嫌いな食べ物: セロリ好きな異性のタイプ: 明るく自信のある人、好きなこともしくは夢に熱中出来る人、会話をリードしてくれる人嫌いな異性のタイプ: 元カレ、友達等の陰口言う人、相手の趣味に興味を全く示さない人、細かい人、ピリピリし易い人日系アメリカ人の父とモンゴル出身中国人の母を持つ18歳高校生の鮎澤さん。メンバー6人のなかでも一際“塩顔”の癒し系なルックスの彼は、「EDEN KAI(イーデン・カイ)」というシンガーソングライターで、ウクレレ&アコースティックギター奏者として活躍している。若干10代で数々の賞を獲得し、世界から注目されている若き才能の持ち主だが、実はまだ恋愛経験がなく…?――メンバーに選ばれた感想は?「ひとつの経験としてこのオーディションを受けたのですが、メンバーに決まったときは『マジか!』って。僕を入れちゃうのね、みたいな(笑)。大丈夫ですかってこっちが聞きたくなりました。僕、ハワイのローカル感がないというか、ずっと長ズボンでいるほうが落ち着きますし、サーフィンとかも全然できなくて。『なんでお前ここに住んでるんだ』って言われるくらいですし…。でも、今回メンバーに選ばれてとても嬉しかったですね」――「テラスハウス」での生活は?「最初は本当に緊張しました。みんなの存在感というかインパクトが強すぎて。色々言われたりするのかなあと不安でしたが、優しい方ばかりで。あとみなさんたくましいというか大人なので頼れる存在です。歳が近いメンバーも居ますが、モデルだとか、凄い仕事をしていますし、格の差を感じるレベルなんですよ。こういう頼れる方々と一緒に暮せて本当に感謝ですね」――好みの女性のタイプは?「僕は、あの…お付き合いしたことが無いんです。でも、趣味や夢や、やりたいことがあって、明るくて、多少は会話をリードしてくれる人がいいですね。ここのメンバーも全員素敵な方なので、もっと仲良くなっていけたらなと思っています」――今後の展望は?「高校卒業後は、余裕があればL.Aとかに行って音楽活動を続けていけたら良いなと思っています。将来は世界で通用するようなアーティストになりたいですね。『夢を持っている人』と聞いてひとつの経験としてオーディションを受けたんですよ。結構美男美女が周りにいるので、自分でも大丈夫かなって想いもありましたが、番組を見て視聴者の方が少しでも、“こういう人がいるんだ”とか、興味を持っていただけると嬉しいです。視聴者の方々の人生に、なにか少しでも良い意味で影響を与えられたら光栄です」
2016年11月01日