『カウントダウン ミュージカルコンサート 2023-2024』が、2023年12月31日、東京国際フォーラム ホールAにて開催された。甲斐翔真、木下晴香、sara、東啓介、平間壮一、三浦宏規、森崎ウィン、屋比久知奈、そして海宝直人の9名の次世代を担うミュージカルスターが、ともに年越しを過ごそうと集まった5000人の観客を魅了。新しい年の幕開けを、華やかに盛り上げた。最初のオーバーチュアで演奏されたのは耳馴染みのある楽曲ばかり。早速心が弾んでくる。続いて聴こえてきたのは、『レ・ミゼラブル』の「One Day More」だ。ひとりずつ登場しながら歌い、どんどん声を重ねていく様がワクワクさせる。楽曲の力強さも相まって、一気に会場の熱が上がった。今回の構成・演出を担ったのは、『リトル・ショップ・オブ・ホラーズ』『グリース』『ネクスト・トゥ・ノーマル』など、数多くの作品を手掛けている上田一豪。音楽監督を、井上芳雄などのアーティストに支持されている大貫祐一郎が務め、クリエイティブ陣も冒頭から手腕を見せた。全員がステージに揃ったところで、海宝がMCの口火を切る。「唯一の昭和生まれの自分が最初にしゃべるというお達しがあったので」と笑わせながらしっかり挨拶するも、「次の時代を担う若手スターというのがこのコンサートの主旨なので宏規くんに回していただこうと思います」とすぐに三浦にバトンタッチ。三浦が仕切って思い思いの自己紹介が始まった。しかし、カウントダウンに合わせなければならないためにタイムキープが厳しく、しゃべりすぎると大貫がピアノで合図。平間が「(0時を)超えちゃってもいいよね〜」と呟くなど、和気あいあいの空気が伝わってくる。このあとも曲の合間にMCが入り、今回が初共演の二人組でのトークもあったが、甲斐が木下に「どういう人なんですか」と聞いたり、森崎がsaraの苗字を聞き出してしまったり、笑いが絶えなかった。なかでも三浦の、「小学生のときに毎朝、『さぁ今日も俺の輝かしい人生が始まる』と言って学校へ行っていた」というエピソードには会場中が爆笑。歌はもちろんだが、MCから透けて見えるそれぞれの素顔も、観客は大いに楽しんだ。さて、MCのあとは、デュエットやソロで様々な楽曲を披露し、8名のダンサーたちが各曲の世界観を創り上げていく。それぞれが出演した作品からの楽曲では、東が『ジャージー・ボーイズ』の「Oh What a Night」を、甲斐が『デスノート THE MUSICAL』の「デスノート」を、三浦が屋比久とともに『リトル・ショップ・オブ・ホラーズ』の「Suddenly Seymour」を、『ピピン』の「Corner of the Sky」を森崎が歌い、『ロミオ&ジュリエット』の「Aimer」を、21年に出演した甲斐と17年・19年に出演した木下が、主演作『赤と黒』より「赤と黒」を三浦が熱唱。『RENT』の「I’ll Cover You」では、平間が演じたエンジェル役を彷彿とさせるパフォーマンスを東と見せた。『モーツァルト!』の「ダンスはやめられない」を歌った木下、『ミス・サイゴン』の「命をあげよう」を歌った屋比久、『In the Heights』の「In the Heights」を歌った平間も役を思い起こさせる。海宝と木下の『アナスタシア』「In a Crowd of Thousands」はセリフもあり。『ネクスト・トゥ・ノーマル』の「I’m Alive」はダブルキャストだった海宝と甲斐で。『ヘアスプレー』の「You Can’t Stop the Beat」を三浦と平間が踊りまくり、海宝が『ノートルダムの鐘』の「Out There」をたっぷり聴かせた。本公演だけのスペシャルコラボとなったのは、saraの『CHICAGO』(All That Jazz)、森崎とsaraの『塔の上のラプンツェル』(輝く未来)、木下と屋比久の『Wicked』(あなたを忘れない)。そして、全員で歌った『RENT』の名曲「Seasons of Love」は、その歌声の豊かさが沁み入った。圧巻は2023年に上演された作品のメドレーだ。甲斐・木下・sara・屋比久による「Lady Marmalade」を皮切りに、『SPY×FAMILY』(森崎)『キングアーサー』(平間・屋比久)『エリザベート』(甲斐)『ザ・ビューティフル・ゲーム』(木下・東)『ドリームガールズ』(木下・sara・屋比久)『ジェーン・エア』(屋比久)『ザ・ミュージック・マン』(東)『ファインディング・ネバーランド』(森崎)『ラグタイム』(東・屋比久)『スクール・オブ・ロック』(甲斐)『のだめカンタービレ』(三浦)『クレイジー・フォー・ユー』(sara・平間)まで走り抜け、全員揃ったところでカウントダウンが始まり、0時とともに「ハッピーニューイヤー」の声が響く。まさしく2023年に楽しんだミュージカルを振り返りながら新しい年を迎えることができるとは。出演者にも観客にも、貴重な機会となったに違いない。フィナーレで『Rock of Ages』から「Don’t Stop Believin’」が歌われてさらに盛り上がったあと、アンコールで『コーラスライン』の「愛した日々に悔いはない」が披露された。その歌詞が、ここに集った、ミュージカルを、舞台を愛する者たちの思いに重なっていく。この次世代のスターたちがいれば、これからもきっと良き作品に出会えるはず。そんな期待を募らせながら幕は閉じた。レポート=大内弓子写真=福岡諒祠(株式会社 GEKKO)
2024年01月09日BUCK-TICKが、ワンマンライブ『バクチク現象-2023-』を2023年12月29日(金) に東京・日本武道館で開催。そのオフィシャルレポートが到着した。さあ、始めよう──2023年12月29日東京・日本武道館公演『バクチク現象-2023-』の開催が、この言葉とともに告知された時、下を向いたままだった顔をようやく上げることができた。10月24日のボーカル・櫻井敦司急逝の知らせから3週間後のことだ。バンド史上最大の悲しみに襲われたBUCK-TICKの今後の動きについて、誰もが静観している頃だった。正直なところ、その発表はあまりにも光が強すぎて、思わず目を背けたくなったりもした。一体どんなステージになるのか、ステージの詳細については発表がなかったので、不安を感じた人も少なくなかっただろう。しかし、そのタイトルにメンバーが並々ならぬ決意を込めたことは想像に容易い。『バクチク現象』は、1987年のメジャーデビュー前後に行ったライブや、半年間の活動休止を経て復活した1989年12月29日東京ドーム公演のタイトルにも使われた、彼らのターニングポイントを象徴する言葉だ。今井寿(Gt)は、34年前の東京ドーム公演と同じ真っ赤な髪色で『バクチク現象-2023-』のステージに現れた。その姿を見た瞬間、涙が湧き出る一方で、不安な気持ちはどこかへ吹き飛んでいった。会場が暗転すると、SEの「THEME OF B-T」にあわせて、力強いクラップが響いた。樋口豊(Ba)、ヤガミ・トール(Ds)、星野英彦(Gt)、今井寿と順にステージに登場し、真っ赤に染まったスクリーンに「バクチク現象」の文字が出た後、壇上のセンター、いつも櫻井が登場する場所に彼のシルエットが映し出された。「さあ、始めようぜ!BUCK-TICKだ!」、今井の叫びから始まったのは「疾風のブレードランナー」。ステージのセンターにはマイクスタンドではなく、いくつかのライトが埋まっていて、光を放っている。あえてマイクを置いていないせいか、櫻井の歌声はまるで天から降り注いでいるように感じられた。絶望の中の一筋の光のような、きらめきのロックチューンは、“今夜 お前に届けよう 宝物だ 約束だ”と歌う。それはまさにこのステージのこと。手のひらに“希望”を握らせてくれたような気がした。泣き顔でもいいから顔を上げてと言わんばかりに、「独壇場Beauty-R.I.P.-」、「Go-Go B-T TRAIN」「GUSTAVE」とアップチューンを連発。今井も星野も今まで以上にアグレッシブなパフォーマンスでステージを扇動していた。「Go-Go B-T TRAIN」で「乗り遅れんな!」、「GUSTAVE」で「ニャオス。今日は楽しんでいってください」と、今井が言葉をかけるたびに、会場のボルテージは上昇していく。今井寿(Gt)櫻井と今井のツインヴォーカルによる「FUTURE SONG -未来が通る-」では、樋口が櫻井の動きを真似てみたり、櫻井の歌に重ねるように星野もヴォーカルをとった。何より驚いたのは、ヤガミのドラムが力強く跳ねる「Boogie Woogie」の頃には、いつの間にか涙も引っ込んで、純粋にステージを楽しんでいる自分がいたことだ。開演した頃は深い悲しみを湛えていたはずのフロアを、ここまで引き上げたバンド力にただただ感服するばかりだった。そんな空気を一変させて、櫻井の不在を悲しいほど鮮やかに映したのは、昨年8月に逝去したISSAY(DER ZIBET)と櫻井がツインヴォーカルをとる「愛しのロック・スター」から始まった中盤戦。「愛しのロック・スター」では、スクリーンに在りし日の二人のライブ映像が映ると、耐えきれずすすり泣く声も大きくなった。続いて今井のオリエンタルなインタールードから始まった「さくら」では、スクリーンと武道館の天井にも浮かんだ桜の花が舞い散る様子が、なんとも美しくて悲しみを倍増させた。さらに、まるで葬送曲かのように「Lullaby-Ⅲ」「ROMANCE」と、櫻井の耽美な世界観を強く打ち出したナンバーを続けて聴かせた。星野英彦(Gt)今回のステージは、全編にわたり櫻井の映像を映したわけではなく、櫻井を感じるのは歌声のみという楽曲も何曲もあったが、特に終盤は彼の歌う姿がありありと目に浮かぶような楽曲がラインナップされていた。ラテン調のダンスナンバー「Django!!! -眩惑のジャンゴ-」、両手を広げて空を自由に駆け抜ける「太陽とイカロス」、「Memento mori」では客席をライトで照らす櫻井の映像の動きとリンクするように、実際に客席がライトで照らされた。ステージの床をスモークが覆った「夢魔 -The Nightmare」では、まるで彼が目の前に君臨しているかのように、ステージに向けて観客が両手を掲げ、「DIABOLO」では4人がサーカス一座のような佇まいで座長の彼を盛り立てる。不在だからこそ、より櫻井敦司というヴォーカリストの輪郭をくっきりと焼き付けられた瞬間だった。メンバー一人ひとりが初めて明かす今の思いヤガミのドラムソロから始まったアンコールでは、一曲目の「STEPPERS -PARADE-」を披露した後、これまで表立ってコメントを出していなかったメンバーが一人ずつ今の思いを語った。ヤガミ・トール(Ds)樋口は涙で言葉を詰まらせながら、「BUCK-TICKはライブバンドなので、ライブをして成長してきました。そしてみなさんと作ってきたと思っています。あっちゃんは天国に行ってしまいましたが、BUCK-TICKはずっと5人です。これからどんな未来になるかわかりませんが、これからも皆さんとBUCK-TICKを作っていきたいと思います」と語り、ヤガミは「不良だった弟がこんなに立派なコメントを言うとは思っていませんでした」と少し空気を和ませて、「前代未聞というか、そういう状況になりました。続けていいのか、やめた方がいいのか、いろいろと考えましたが、こういうふうにファンの皆さんがいるので、これからもBUCK-TICKを継続させていただきたいと思います」と続けた。「今日新しい一歩を踏み出すことができました。不安の中、ここ武道館に足を運んでくださって本当にありがとう。不安だったよね。みんな不安でした。でもパレードはこれからも続きます。もう一度言います、パレードは続きます。この5人で」と星野が語った後、今井が続いた。「やあ。人生は容赦ねーな。面白いぐらいドラマチックで。でも笑えねーよ。何死んでんだよ。なあ。大丈夫だよ、続けるからさ。一緒に行こうぜ」と語りかけると、大きな拍手があがった。「あっちゃんは死んだけど、別にそれは悪いことじゃありません。当たり前のことです。だから悲しんでも泣いても号泣してもいいけど、苦しまないでください。死んだことより、いなくなったことより、生きていたということ、存在していたことを大事にしてください」、そして「来年BUCK-TICKは新曲を作って、アルバムを作ります。最新が最高のBUCK-TICKなんで、期待しててください。でも覚悟しててください。次は3人になります。それでもパレードは続きます。次は2人、次は1人、たぶん最後の1人は俺かな。それでも続けるんで、みんなを連れていきたいと思います」と、力強い言葉を投げかけた。樋口豊(Ba)そして「ユリイカ」で“LOVE”と“PEACE”を高らかに掲げると、「みなさん自分を愛しましょう」という櫻井のMCから「LOVE ME」へ。ここで初めて4人の生演奏と、櫻井の歌と映像がずれてしまうというハプニングが起こった。メンバーはなんとか立て直そうと必死の表情。それは今までに見たことがないような人間くさい表情だった。偶然だと思うが、映像の中の櫻井もちょっと苦笑いしているように見えた。ハラハラしながらも、なんとか力になろうと一生懸命コーラスをする観客の姿もいじらしかった。歌い終わる頃には演奏もピタリと合い、「また会いましょう。また会いましょう。必ず」と手を振ってステージを降りる櫻井を見送った。ラスト2曲は「COSMOS」「名も無きわたし」と、会場を大きく包み込む櫻井からのメッセージのような2曲がセレクトされた。そしてWアンコールは、「行こう!未来へと!」という櫻井のメッセージから始まった「New World」。会場中に広がった無数のミラーボールの光と、力強い光を放つ5人の演奏が、まだ見ぬ未来を明るく照らしていた。終演後、スクリーンに過去のMV映像が流れた後、2024年12月29日(日) 日本武道館公演の開催が告知された。この先、こうした一つ一つの約束が希望となり、未来へと繋がっていくのだろう。前人未到の地へと歩を進めたBUCK-TICK。これからも5人で歩んでいくと決めた彼らのパレードを、まだまだ一緒に楽しみたいと願う。いつだって驚きと感動で心を震わせてくれるのがBUCK-TICKだから。涙は拭えるけれどいつまでたっても寂しさは拭えないからまたBUCK-TICKに会いに行こう悲しみも幸せも分けあえるあの場所にまたBUCK-TICKに会いに行こうText:大窪由香Photo:田中聖太郎<公演情報>BUCK-TICK『バクチク現象-2023-』2023年12月29日(金) 東京・日本武道館セットリストSE. THEME OF B-T1. 疾風のブレードランナー2. 独壇場Beauty-R.I.P.-3. Go-Go B-T TRAIN4. GUSTAVE5. FUTURE SONG - 未来が通る-6. Boogie Woogie7. 愛しのロック・スター8. さくら9. Lullaby-III10. ROMANCE11. Django!!! - 眩惑のジャンゴ-12. 太陽とイカロス13. Memento mori14. 夢魔 -The Nightmare15. DIABOLO<EN1>1. STEPPERS -PARADE-2. ユリイカ3. LOVE ME4. COSMOS5. 名も無きわたし<EN2>1. New World<ライヴ情報>BUCK-TICK 日本武道館公演12月29日(日) 東京・日本武道館OPEN17:00 / START18:00特設サイト:関連リンクオフィシャルサイト: Sounda LABEL SITE::::楽曲配信リンク:
2024年01月05日シドが、ワンマンライブ『SID 20th Anniversary GRAND FINAL「いちばん好きな場所」』を2023年12月27日(水) に東京・日本武道館で開催。そのオフィシャルレポートが到着した。「シドの第二章は今日から始まると俺は思っています」2023年12月27日東京・日本武道館で開催された、シドの結成20周年を締め括る『SID 20th Anniversary GRAND FINAL「いちばん好きな場所」』公演での大ラス「いちばん好きな場所」を歌う前に、マオ(Vo)はそう語った。「いちばん好きな場所」というタイトルは、2008年のインディーズラストツアーのタイトルであり、2018年の結成15周年を飾るツアーでも使われた。その15周年を終えてからの5年間は、コロナ禍でのライブ自粛や、マオの喉の不調によるライブ活動の休止と、シドにとって試練が続いた。そして2023年1月、結成20周年の開幕とともにライブ活動を再開し、このアニバーサリーイヤーを感無量の思いで駆け抜けてきた。そのファイナルを迎えたこの日本武道館は、15年前、メジャーデビューの始まりに立った場所でもある。冒頭のマオの言葉に、並々ならぬ決意を感じた。ステージにはドレープを作った大きな白い布がかかり、天井からは大きなシャンデリアのようなモチーフとミラーボールが下がっている。BGMが消えて会場が暗転すると、ミラーボールが光の粒を放った。白い布がライティングで虹色に輝いた頃、ゆうや(D)、Shinji(G)、明希(B)、マオと順に登場。20秒の時を刻む時計の針の音が緊迫感を煽ると、Shinjiの憂いのあるギターイントロから「紫陽花」が始まった。マオが歌い始めると、武道館の天井に紫陽花が咲くように淡い青が広がる。マオ(Vo)この日のステージは、楽曲の世界観を押し広げるような、または感情と呼応するような、ライティングと演奏とのシンクロが見事だった。再会の歌である「NOMAD」、未来に光を照らす「ANNIVERSARY」ではShinjiと明希が左右の花道を歩み、マオは観客と一緒に拳を上げる。アクティブなステージングに会場のテンションは上がったまま、「アリバイ」「罠」「妄想日記」と初期の人気曲が連投されると、メンバーにも観客にも笑顔が広がった。Shinji(G)一体感が高まったところで突入したMCコーナーでは、Shinjiが「一つだけみなさんにお願いがあります。『今日も1日』と言ったら、『小粋に決めなきゃ』って言ってほしいんです」とコール&レスポンスを求めると、続くゆうやも「何がなんでも」のコールに、「やるぞー!!」とレスポンスを求め、明希もマオも自分の名前を呼ぶ大きな声を求めた。欲しがるシドに、愛を持って応える観客の姿がとても健気だ。そんな観客に向けて「今日はこの日のためにシドの新しい挑戦ということで、メドレーを作ってきました」と、「SID 20th Special Medley」を披露。「モノクロのキス〜乱舞のメロディ〜嘘〜V.I.P」と、アニメタイアップのついた4曲を繋いだ。その後はソロコーナーへ。ゆうやが繰り出す軽快なリズムと光がシンクロしたドラムソロ、骨太なベースが唸りを上げる明希のソロでは会場から「オイ、オイ」の掛け声が上がり、Shinjiは叙情的でテクニカルなギタープレーを聴かせた。続いてステージに登場したのはゲストの葉山拓亮。グランドピアノでたおやかなメロディを奏でると、マオが一人ステージに立ち、「声色」を情感豊かに歌唱。特に後半のマオの声一つ、アカペラで歌い上げるシーンは、息をするのも忘れるほど心を惹きつけるものがあった。ゆうや(D)武道館でアカペラをするのに必要なものは「度胸です」と笑いを誘ったマオは、葉山について「俺の息遣いだったり、呼吸や背中の動きだったりをしっかり汲み取って演奏してくれました。ありがとうございました」と感謝を述べた。そして楽器隊も入れた5人で2024年1月8日(月・祝) に配信シングルとしてリリースする新曲「面影」を披露。切なさとオリエンタルな雰囲気をもつミディアムナンバーに、観客は静かに耳を傾けていた。大きな拍手の後、開口したのは明希。「今の曲、めっちゃいい曲じゃない?……まあ、俺が作りました。2024年のシドの何か道標になってくれると思います」と語った。「いけるかー?」とマオの煽りを起爆剤に、ここから本編ラストに向けて怒涛のアップチューンを畳み掛ける。まずはメンバーコールから「循環」で「回れ〜!」と観客をぐるぐる回転させたところに、「そろそろ結婚しようか!」とハードロックナンバーの「プロポーズ」、ラウドな「park」で翻弄する。ステージの前方で大きな炎の玉が上がった「眩暈」でさらにボルテージを上げると、ラストはハードコアチューンの「吉開学17歳(無職)」でカオス展開。明希(B)巻き舌でシャウトするマオ、一心不乱に楽器を鳴らすShinji、明希、ゆうや。そんなメンバーの様子に意識を集中していたので、最後にドカーンと上がった特効の大きな音に心臓が止まりそうになった。興奮さめやらぬ状態のマオは、何やらイケナイ言葉を連呼しながらステージを降りていった。あー、楽しかった。何か憑き物が落ちたように、純粋にそう思った。マオ「最新のシドがいちばんかっこいいって言ってもらえるように頑張っていく」「20周年の思い出を何か曲に残したいなと思って、一曲作ってきました。新曲です」と、アンコールの一曲目に12月6日にリリースしたばかりの「微風」を演奏。バンドを始めた頃の情景や感情を綴ったナンバーに、観客もクラップや合唱を乗せてその思いを共有する。「夏恋」ではShinjiや明希に絡みにいったり、ステージ上にいたカメラマンに絡んだり、ランニングマンや(新しい学校のリーダーズの)首振りダンスをやってみせたりと、誰よりも楽しんでいる様子のマオ。「Dear Tokyo」では、Shinji、明希、ゆうやと観客と、会場が一体になってのコーラスに多幸感が広がった。そんな温かな空気の中で、「ここ数年はうまく歌えるかなとか、喉は大丈夫かなとか、そういうことばっかり考えていたけど、今日のライブは始まる前からずっと楽しみだった」と素直な心情を吐露。「俺が生きる場所はここだし、俺がいちばん好きな場所はこのライブのステージです。そこにはみんながいないとダメだし、スタッフのみんなやメンバーがいないとダメだし、うまいとかヘタとか取っ払って、気持ちで歌います」と大ラスの「いちばん好きな場所」へ。優しくも力強いアンサンブルが胸を打つ。ステージにはキラキラと光る紙吹雪が舞い、感慨深そうにそれを見上げながらプレーするメンバーの姿が印象に残った。すべての演奏を終えた後、名残惜しそうな表情でステージに残る4人。「最高の景色をどうもありがとう。もっといい曲を書いて、もっとかっこいいバンドになってくるから、また会おうぜ!20年の声援と20年の拍手に感謝いたします」(明希)、「最高の締め括りができたと思ってます。来年またかっこよくなっちゃうんで、よろしくお願いします」(Shinji)、「21年目もシドいっぱいやっていくと思うので、またこういう大きいところへみなさんを招待できるように頑張っていこうと思います」(ゆうや)と、思い思いの言葉を残してステージを降り、最後に一人残ったマオは「最新のシドがいちばんかっこいいって言ってもらえるように頑張っていくので、みんなよろしく」と語った後、マイクを通さず「愛してます!」と叫ぶと、ギューっと抱きしめるポーズをして捌けていった。終演後、スクリーンにはこのライブの模様が2024年4月にWOWOWで独占放送・配信されることや、シングル「面影」の情報、そして5月18日(土)、19日(日) 山梨・河口湖ステラシアターにて『SID LIVE 2024 -Star Forest-』の開催が発表された。ファンからたくさんの愛を受け取ったこの結成20周年を経て、“シドの第二章”はどんなストーリーを紡ぐのだろうか。光あふれる彼らの未来を楽しみにしている。Text:大窪由香Photo:今元秀明/西槇太一<公演情報>SID 20th Anniversary GRAND FINAL『いちばん好きな場所』2023年12月27日(水) 東京・日本武道館セットリスト01. 紫陽花02. NOMAD03. ANNIVERSARY04. アリバイ05. 罠06. 妄想日記07. SID 20th Special Medley(モノクロのキス~乱舞のメロディ~嘘~V.I.P)08. 声色09. 面影10. 循環11. プロポーズ12. park13. 眩暈14. 吉開学17歳(無職)En01. 微風En02. 夏恋En03. Dear TokyoEn04. いちばん好きな場所<ライブ情報>SID LIVE 2024 -Star Forest-2024年5月18日(土) 山梨・河口湖ステラシアター2024年5月19日(日) 山梨・河口湖ステラシアターOPEN16:00 / START17:00【チケット料金】全席指定:8,800円(税込)※4歳以上有料詳細はこちら:関連リンクオフィシャルサイト::::
2024年01月04日2023年の7月から9月にかけて、w-inds.は3月14日にリリースした通算15枚目のオリジナルアルバム『Beyond』を引っ提げ、千葉・市原市市民会館大ホールを皮切りに、大阪・NHK大阪ホール、東京・J:COMホール八王子、愛知・Niterra日本特殊陶業市民会館ビレッジホール、東京・NHKホールと、全国5会場を回るツアー『w-inds. LIVE TOUR 2023 "Beyond"』を開催した。しかし、彼らは間髪入れずに追加公演として、神奈川・神奈川県民ホール大ホールだけではなく、なんと、台湾・TAIPEI INTERNATIONAL CONVENTION CENTERと香港・Star Hall, KITECを発表したのだ。アルバム『Beyond』のリリース日であった3月14日といえば、22年前に「Forever Memories」でw-inds.がデビューした日である。デビュー日に合わせてリリースされた特別なアルバムということで期待値も高かったのであろうことと、コロナ感染症の蔓延によりデビュー20周年記念タイミングでのツアーがオンラインライヴになってしまっていたことと、コロナ明け初めてとなる声出しOKのライヴツアーとあって、待ち焦がれたファン達はいつも以上に今回のツアーを楽しみにしていたことが伺えた。アルバムと今回のツアータイトルになっているワード"Beyond"は、“~の向こうに”“~を超えて”という意味を持つ単語だ。慶太と涼平は、今作『Beyond』の前に新体制初のアルバム『20XX “We are”』をリリースしているのだが、2人はこのアルバムの制作意図として、敢えてジャンルレスな楽曲を集める形で構成し、“今、2人でやりたいこと”に純粋に向き合ったのだと語っていた。メンバーの脱退により、メンバー編成が3人から2人になるという変化はグループにとってとても大きな変化であったが、2人が純粋に“今、2人でやりたいこと”にまっすぐに向き合ったことで、『20XX “We are”』は新体制の方向性をしっかりと示すところとなったのだった。コロナの影響もあり2021年12月29日にw-inds. Online Show『20XX”We are”』として配信で届けられたライヴでは、慶太がセルフプロデュースした楽曲のみのセットリストで、踊らずに歌のみで構成された新たな試みにもチャレンジしたのだ。そんな『20XX “We are”』の経験があったからこそ生まれたのがアルバム『Beyond』と言っても過言ではないと感じたのは、『Beyond』のアルバムインタビューをしたときだった。慶太は『Beyond』を“これまでのアルバムは、ちょっとどこかに承認欲求があったというか、新しいw-inds.をやって、みんなに認めてもらいたいという気持ちが大きかったところもあったんだけど、このアルバムを認めてもらいたいという感覚ではなくて、ただただファンのみなさんに喜んでもらいたいという気持ちで作った1枚だった”と言った。そして涼平は、そんな慶太の言葉を受け、“ちゃんと原点を認めてあげられる今だからこそのアルバムにしたかった。原点を持って、更に先を目指す、超えていく、これを持って前に進む、という意味も、本当に今とこれからのw-inds.にピッタリじゃないかなって思ったんです”と続けた。作詞作曲・プロデュースを担って来た慶太は、ジャンルレスに様々な音楽を追求して取り入れ、常に時代の先端を走る努力を惜しまないスタイルで楽曲制作に当たって来ていたし、涼平はそんな慶太の1番の理解者であった。そんな中2人は、新体制という形に純粋に向き合って『20XX “We are”』を作り上げ、そこでより見えて来た自分達のやりたいことに素直に向き合い、そこを経て、時空を超えて今のw-inds.を噛み締めたくなった衝動を、2枚目のアルバム『Beyond』に詰め込むことにしたのである。そんな『Beyond』には、デビュー当時からw-inds.の楽曲を手掛けてきた、葉山拓亮、松本良喜、今井了介といった作家陣に楽曲提供を依頼した楽曲が収録されているのだが、それこそが『Beyond』の大きな特徴であり、それこそが“今とこれからのw-inds.の形”となるものだと確信させられることとなったのだ。2023年10月29日。神奈川県民ホール大ホール。追加公演1公演目。もう既に数回このライヴを観に来ているのであろうリピーターも多くいた様だったが、明らかにコロナ前との変化を感じたのは、自らもダンスをやっているのであろうという見た目の男性客が増えていたことだった。コロナ前まではチケットを購入してライヴ会場に足を運ばなければライヴに参戦出来なかったが、コロナで配信ライヴで参戦出来る機会が増えたことから、これまでw-inds.を気になってはいたが、なかなかライヴに行けなかったという男性客が改めて配信ライヴを観たことで、想像以上のパフォーマンスと、ダンスと歌唱のスキルにすっかり魅せられ、w-inds.の虜になり、ライヴ会場へのリアル参戦数が一気に加速したのではないかと考えられた。彼らのデビュー当時はまだYouTubeもそこまでポピュラーでなかった時代だったことや、テレビなどの露出に頼らず、ライヴを中心としてその実力で着実にファンを掴み取って来たw-inds.故に、なかなか生で彼らのパフォーマンスに触れる機会は少なかったことから、きっと世間は、透き通る様なハイトーンボーカルが印象的だった「Forever Memories」を歌いながら踊る初々しい22年前のw-inds.の姿として記憶に深く印象付けられていたに違いない。時は流れて昨今、世の中は空前のダンス&ボーカルブームである。現在活躍する溢れかえる無数のボーイズグループの中にも、w-inds.に憧れてこの世界を目指したティーン達も多かったことだろう。憧れというものは永遠だ。人は最初に憧れた対象を変えることはない。現に今、自らがボーイズグループとしてデビューしているメンバーの中にも、w-inds.に憧れてこの世界に入ったというのはよく聞く話である。シーンを引っ張っていく存在となった今、慶太と涼平が自分達の原点を持って、更に先を目指す、超えていく、これを持って前に進む、というところに立ち返ろうと思ったのも、これまでのいろんな経験があったからこそ導かれた必然だったのかもしれないと感じた。この日、ステージ中央にはアルバムタイトルである“BEYOND”の文字をロゴ化したシンボルが凛とした佇まいで光を放っていた。客席には“BEYOND”の文字を形取ったペンライトが青く光り、ライヴ前から圧巻の景色が客席を埋め尽くしていた。始まりは「FIND ME」。今井了介からの提供曲である。デビュー当時からw-inds.のダンスナンバーを担って来た今井の楽曲は、まさしく“今のw-inds.”に似合うスタイリッシュな4打ちダンスナンバーだ。激しく魅せるダンスナンバーではないが、スピード感はありながらも、アンニュイさを含んだ、歌もしっかりと聴かせていく成長を感じさせるこの曲を、2人は左右それぞれに設けられた少し高くなったステージの上で、派手すぎない演出の中、力の入り過ぎない絶妙なパフォーマンスで“今のw-inds.の今井了介ナンバー”を届けて魅せたのだった。客席の青のペンライトも“今のw-inds.のダンスナンバー”に見合うノリを生み出していたのも、とても印象的だった。青い光を揺らすファン達も、w-inds.の成長と共に、自らの音楽偏差値が成長していっているのであろう。素晴らしい関係性である。イントロで高い声色の歓声が響き渡った2曲目は「Let’s get it on」。2011年にリリースされたシングル曲なのだが、まだこの時代はそこまで多くのボーイズグループも名を馳せておらず、K-POPブームが加速し始めた時期であったが、w-inds.はいち早く海外思考のビートを自らの個性に取り込み、慶太の唯一無二な歌唱力と涼平が担当する歌唱もとても印象的だった、洋楽要素の強いダンスナンバーであった。アイドル路線のボーイズグループがいくつか存在する中で、歌唱力とダンス力を誇れるグループとしては逸材だったと言っても過言ではないだろう。2009年にリリースされた「Rain Is Fallin’」では、Featuring G-DRAGON(BIGBANG)として、当時韓国で絶大な人気を誇っていたBIGBANGのG-DRAGONとのコラボをいち早く取り入れるなど、w-inds.は常に時代の先を走っていたとも言えるだろう。この日の「Let’s get it on」は、4人のダンサーと共に現在のw-inds.で最高のパフォーマンスを届けてくれた。続けて届けられた「K.O.」では、慶太のソロパートから涼平のブレイクダンスに繋がれた見せ場や、アルバムの先行配信シングルとしてFeaturing CrazyBoyでリリースされた「Bang! Bang!」を届け、新旧のw-inds.を今のw-inds.で魅せてくれたのだった。ELLYはその昔w-inds.の振り付けもやってくれたことがあるという接点もあることから、ここでもしっかりと"Beyond"なコンセプトは活かされていたのである。ここで2人は最初のMCを挟んだのだが、なんとこの会場でライヴをするのは2019年ぶりなのだという。そんな話から会場にまつわる思い出話に花を咲かせた2人。お互いの成長を語り合いながら、「メンバー2人なのに、いまだにリーダーってのは違和感あるんじゃないかな?涼平くんじゃなくて、リーダーって呼ばれるのにも違和感があってさ(笑)」という涼平の一言から、今後それぞれの活動の場においてはそのまま“慶太”“涼平”表記で行い、w-inds.としての活動の際は“涼平(リーダー)”“慶太(副リーダー)”という表記で統一しようという決め事を、公然の場で作ったのであった。昔はタラタラと取り止めのないトークだったことから、ライヴ後にいつもスタッフからダメ出しをされていた彼らを振り返ると、実に旨い流れでクスッと笑える自然なトークが出来る様になったのも成長の一つと言えるだろう。彼らはこの日、ライヴ中盤にまとめて『Beyond』の楽曲達を詰め込んでいた。慶太による作詞作曲ナンバー「Unforgettable」から、アルバム曲が間髪入れずに届けられていく流れが造られていたのである。アルバムタイトルを『Beyond』と定め、アルバムの楽曲制作に入ったという慶太は、「Unforgettable」の歌詞を書いているときに“自分の承認欲求を満たす楽曲制作ではなく、そこを超えた今、ただただファンのみなさんに喜んでもらえる曲を作りたい”という自分の想いに気付かされたのだという。恋愛ソングとも取れる「Unforgettable」の歌詞は、ファンに向けて書かれた歌詞なのだとか。慶太曰く、昔から“ずっと一生ついて行きます!”って言ってくれるファンの人達の言葉を“”なんてそんな軽いもんじゃないから!”と、疑ってしまうところがあったのだという。しかし、22年間活動して来た今も、ずっとその言葉を言い続け、ずっと応援し続け、本当にみんなが一生をかけてw-inds.を好きで居てくれて、応援してくれているんだなと思ったら、自然と「Unforgettable」の歌詞を書いていたのだと言うのだ。Unforgettable。忘れられない、記憶に残る時間。その全てを共に過ごして来たファンへの想いを素直に言葉にしたのが、「Unforgettable」なのだ。慶太のことは知り尽くしている涼平は、この歌詞を最初に読んだとき、迷わず慶太からファンのみんなに書かれた想いであることを悟ったのだという。涼平は、この日、「Unforgettable」から間髪入れずに届けられた慶太の作った「I Swear」の“君に会う為”に生まれて来たという前作に繋がる愛しさにも深く共感しているのだと教えてくれたことがあった。「I Swear」はこれまでに慶太が作ってこなかった純粋なラブソングだ。昔は素直になりきれず、純粋に気持ちを歌詞に落とし込むことが出来なかった時期もあったのだろう。しかし、やはりいろんな経験をした今だからこそ、自分にもファンにも純粋に向き合える余裕と優しさが芽生えたに違いない。この日、後に届けられた「Fighting For You」には、ファンへの想いはもちろん、ファンの家族への愛という意味でも歌っているのだ。ファン達は「Unforgettable」と「I Swear」に込められた2人からの想いを、真っ直ぐに受け止めていた様子だった。特に印象的だったのは「I Swear」での涼平の歌声だ。慶太と共にメインボーカルを取ることになった新体制の中で、惜しまぬ努力で短期間に確固たるボーカル力を身に付けた涼平の並々ならぬ努力を痛切に感じた。他にないボーカル力を誇る、透き通った絶対的な歌唱力を持つ慶太と、心地良く心の奥まで届く涼平の性格がそのまま声に出ている真っ直ぐに伸びる涼平の歌声が交互に響き渡った生で聴く「I Swear」は、とても美しい時間となった。そして、彼らはここで今回のツアーを振り返ったトークを挟み、後半戦へと繋いで行った。後半戦の1曲目として届けられた軽やかなギターフレーズが印象的な葉山拓亮が作詞作曲を手掛けた「Over The Years」では、今の彼らが歌う葉山節を、2人がそのメロディを1番心地良く聴こえる歌唱で声を載せていたのもとても印象深かった。当時から葉山節をリスペクトしていた慶太は、誰よりもそのメロディの活かし方を知っているのだろう。一方、当時はコーラスのみで参加していた涼平は、葉山の曲をメインボーカルという立場で歌うのは初めてのこと。慣れ親しんだ葉山節ではあるが、自らがメインボーカルとして歌うことになって受け止めたこの曲は、とても新鮮に感じたのだろう。単なる原点回帰ではない葉山節は、“時間の地図を広げて~”という葉山らしい感性と葉山からのw-inds.への愛が盛り込まれた歌詞も含め、集まったオーディエンスの胸の奥に真っ直ぐに届いたに違いない。「Over The Years」から続けて届けられたのは、松本良喜からの提供曲「Blessings」だった。松本良喜といえば、「Long Road」「十六夜の月」を手掛けた作家である。「Blessings」は、“やっぱ流石だわ”と納得させられる、松本が作る流石のw-inds.節と言えるナンバーだ。少し懐かしさを感じさせる爽やかなステップ曲。慶太と涼平は左右に分かれてマイクスタンドを用いて、ホーンの音色が美しく響き渡るフュージョン要素も感じる澄み渡るメロディに唄を載せたのだった。他のダンス&ボーカルグループとは違う幅広さを持ったw-inds.という特別な色を見せ付けた瞬間でもあったといえる。真似出来ない実力を見せ付けた楽曲と言えば、「We Don’t Need To TalkAnymore」も、J-POPシーンの中で他に属さない異色の存在として絶対の位置を築くことになったキッカケと言えるだろう。2017年にリリースされたこの曲こそ、“今のw-inds.”の存在を新たな存在として世の中に印象付けたナンバーになったのではないだろうか。ファルセットと地声を自由自在に使い分けながら軽やかに歌う慶太と、少し地声よりも低めな声で歌う涼平の歌声のコンストラストは当時よりもより心地良い肌触りとなっていた。本編ラストに届けられた「New World」の成長の大きさにも驚いたことも、今回のライヴでは是非とも記しておきたい部分である。この楽曲は2009年にリリースされた過去曲なのだが、今回のライヴでは大幅にリアレンジされたリミックスヴァージョンで届けられたのだ。オーディエンスが盛大に盛り上がる中、2人はワイルドなパフォーマンスでステージを盛り上げていったのだった。そしてこの日、鳴り止まないアンコールに応えてステージに戻った2人は「Get Down」からアンコールをスタートさせた。冒頭にも記した様に、慶太は作曲者として常に世界を視野に入れて動いていた為、EDMがK-POPの影響で日本で注目され流行り始め、世間そこにどっぷりと夢中になっていた頃には、既に先を見据えた曲作りをおこなっていたのだが、2019年にリリースされた「Get Down」では、その世代を上手く取り込む様なアレンジで多くの聴き手をw-inds.の世界に引き摺り込んだのである。この日、最も重要なポジションでもあるアンコールの1曲目に抜粋されて届けられた更にパワーアップした「Get Down」は、会場を見事に虜にした。そして、今回のツアーの東京公演で初披露された9月22日にリリースされた最新曲「Run」を届けた。“Beyond”の世界観と素晴らしく馴染んでいた、今の想いの全てを詰め込んだというこの楽曲は、余裕を感じさせるステップと共に届けられたのだった。そして彼らはアンコールのMCで、2024年1月19日に千葉・市川市文化会館、26日に神奈川・相模女子大学グリーンホール、2月1日に埼玉・さいたま市文化センターでの再追加公演の発表をし、ファンを喜ばせるサプライズ発表を用意していたのである。同じツアーでここまで追加が出るのは誇らしいことである。また、それと同時にファンからしてみれば、ステージの回数を増すごとに公演が成長していくことを共に味わえるのも嬉しい限りである。大体のところ、アルバムをリリースするごとにツアーは1回というのがお決まりとなっているのだが、これもまた、w-inds.が提示する新たなライヴツアーの形なのかもしれないと、彼らの先陣を切っていく生き方を素晴らしく思った。このツアーで、歌とパフォーマンスで“~の向こうに”“~を超えて”という意味を持つ"Beyond"を表現した彼らは、ここまで付いて来てくれたファンも、新たにw-inds.というグループの魅力に気付いてくれた人達も、w-inds.に憧れて来た同士達も、誰一人として置き去りにすることなく“w-inds.という絶対的な存在”を証明しながら、未来へと続くw-inds.を提示したと言っても過言ではない。w-inds.は常にシーンの先を行く。彼らが積み重ねて来た歴史は、ピンチもチャンスも全て自らの糧とし、彼ら自身が自ら切り開いて来た道の先にあった未来だったのだろう。デビュー20周年から2年目。新たな道をしっかりと切り拓いて前進するw-inds.を心から誇りに想う。文=武市尚子「Run」LIVE MUSIC VIDEO配信リンク:<ツアー情報>『w-inds. FAN CLUB LIVE TOUR 2024』■2024年3月14日(木) 東京・豊洲PIT17:30 開場 / 18:30 開演3月24日(日) 福岡・Zepp Fukuoka16:00 開場 / 17:00 開演4月5日(金) 東京・Zepp DiverCity (TOKYO)17:30 開場 / 18:30 開演4月21日(日) 大阪・Zepp Namba (OSAKA)16:00 開場 / 17:00
2023年12月17日「ストーリーを続けよう!時代の変わる声が聞こえるだろう!」垣根を超えたダンス&ボーカルのエネルギーに京セラドームが揺れた、二日間で7万人が集った「D.U.N.K. Showcase in KYOCERA DOME OSAKA」をレポート。「SKY-HI ✕ 日本テレビ」が手掛ける大型プロジェクト「D.U.N.K. -DANCE UNIVERSE NEVER KILLED-」。「ダンス&ボーカルシーンに垣根も差別も必要ない/ここを歴史のターニングポイントにしよう」というSKY-HIの掲げるメッセージを基に、テレビやHuluなどのメディアを通してその魅力を発信し、3月には有明アリーナと幕張メッセにおいて計3回のライブ公演を開催。SKY-HIやBE:FIRSTに加え、GENERATIONSや超特急、&TEAM、DREAMS COME TRUEなどが登場し、大盛況のうちに幕を閉じた。それから約半年強を経て「D.U.N.K.」の第二章が開幕。10月から放送された4回にわたるテレビ放送、そしてYouTubeなどでその片鱗を明らかにしてきた「D.U.N.K.」の、二度目となるライブイベント「D.U.N.K. Showcase in KYOCERA DOME OSAKA」が、京セラドーム大阪にて12月2日、3日の2Daysで行われた。今回のイベントについて「等しく門戸が開かれていて、そして等しく楽しくみたい」と語ってきたSKY-HI。その言葉通り、この2Daysには所属レーベルや事務所、国境などを超えた12組のアーティストが登場し、そのバラエティに富んだ人選が発表されると、ネットを中心に大きな話題を呼んだ。その二日間の公演を振り返る。スクリーンに「D.U.N.K. -DANCE UNIVERSE NEVER KILLED-」のロゴが映し出され、会場に流れるこのプロジェクトのテーマソングである「D.U.N.K.」で幕を開けたDay1。そのイントロに合わせて、オーディエンスが身につけたオフィシャルLEDバンドが楽曲に連動し、客席を彩っていく。その光に導かれるように主催のSKY-HIがステージに登場。「踊る準備、遊ぶ準備、歴史の証人になれるやつはどれだけいる!」と呼びかけ、会場からは大きな歓声が上がる。そして「彼らは時代が変わる象徴だ!」というSKY-HIの呼びかけから、7人組グループ、IMP.が登場。応援の声に包まれる中「IMP.」「SWITCHing」でライブをスタートさせ、会場の熱気はさらに高まっていく。「CRUISIN’」にはSKY-HIがラップで参加し、ラップとボーカルとダンスとのコラボレーションで、楽曲に新たなカラーが加わった。そして12月8日にリリースした「I Got It」で、タイトかつカラフルなライブを締めた。IMP.続いて登場したのは6人組グループ、LIL LEAGUE。平均年齢16歳と、今回の「D.U.N.K.」の中では最も平均年齢の若いアーティストでありながら、「Monster」などでのタフなパフォーマンスは、確実にEXILE TRIBEの遺伝子を感じさせる。ラップで自己紹介を繋げる「48 BARS RELAY」や、マイクスタンドを立て丁寧に歌い上げる「15分」、SKY-HIも参加した「Okay」など、バラエティに富んだ全5曲を披露した。LIL LEAGUEBMSG所属の8人組ユニット、MAZZELは「LIGHTNING」からライブをスタート。オールドロックとダンスミュージックを織り交ぜた「CAME TO DANCE」にはコラボにLIL LEAGUEを迎え、パーティな雰囲気で会場を満たしていく。「僕たちMAZZELの伝説が始まります」という強い決意が込められたMCから、力強いメッセージ性とボーカル、そしてシアトリカルなフォーメーションダンスが印象的な、この日が初披露となる「Fire」、ポップな「Vivid」と、多面的な可能性を感じさせるライブを展開した。MAZZELバックダンサーと共に登場し、ダンスとパフォーマンスの凄味で一気に会場を惹きつけたのは、9人組グローバルグループ、&TEAM。狼をコンセプトにした迫力のイントロにはじまり、この日に向けて新たにブラッシュアップされた「Road Not Taken」でのヒリヒリするような表現、キュートな振り付けが記憶に残る「チンチャおかしい」、MAZZELもダンスで登場した「Scent of you」と、前回の「D.U.N.K.」よりも確実にその表現力とパフォーマンス力の高まりを、全5曲というタイトさの中で表現した。&TEAMダンサー/コレオグラファーとして、BTSやクリス・ブラウンなど世界的なアーティストと関わるRIEHATAと、ダンスの世界大会で4回の優勝経験を持ち、BE:FIRSTではコレオグラフも手掛けるSOTAとのダンスパフォーマンスには、この日に参加したアーティスト陣も選抜登場。その圧倒的なダンススキルから、ステージ上、そして会場中には「ダンスという表現の喜び」が溢れ出す。RIEHATAステージに残ったSKY-HIの「これまでのダンス&ボーカルシーンの中でもがいてきた時間、磨いてきたスキルをぶつけよう。さあいこう相棒、SKY-HI × Nissy!」というコールに割れんばかりの歓声が上がる会場。現れたのはスペシャルコラボレーションアーティストNissy。SKY-HIとNissyのコラボで歌われたのは、お互いにソロ活動10年の中で積み上げたものをぶつけ合った1曲「SUPER IDOL」。シニカルで攻撃的な言葉で書き上げられた歌詞の中に、過去と現在、そして未来への希望と思いを込め、SKY-HIのラップとNissyの歌声によって、楽曲はより強いメッセージ性を帯びた。そして曲を歌い終え、感慨深くハグをする二人に、会場からは更に大きな拍手と歓声が贈られた。 10周年の節目にSKY-HI × Nissyがステージ上で繰り広げたパフォーマンスは言葉以上に歴史に残る瞬間だった。「次のライブは俺!」というコールで幕を開けた主催者であるSKY-HIのライブは「Crown Clown」からスタート。「SKY-HIが『D.U.N.K.』をエスコートするぜ!片手じゃ足りない、両手で見せてくれ!」という言葉に合わせて手を挙げるオーディエンスに向け披露された「Double Down」での会場の圧倒的な一体感は、「D.U.N.K.」というイベントを象徴する光景だったろう。SKY-HIそしてIMP.をコラボレーションに迎えた「Mr. Psycho」や、この日の登場グループの中からラップに覚えのあるアーティストが参加したRAPコラボレーションなど、そのステージにはSKY-HIの手腕が遺憾なく発揮されていた。「海を越えてきてくれたぜ!目に焼き付けてくれ!ATEEZ!」という声に続き、大歓声の中で登場した8人組グループ:ATEEZ。12月1日にリリースした最新アルバム<THE WORLD EP.FIN : WILL>のタイトル曲「Crazy Form」から、日本語で歌われる「ROCKY (Boxers Ver.)」、2019年にリリースされた「UTOPIA (Japanese Ver.)」と、初期作から最新曲まで、これまでのキャリアを表現するような構成でオーディエンスを魅了する。「ドームで、皆さんにお会いできて光栄です」「ATINY、叫べ!」「ホンマにめっちゃ好きやで!」と、MCの多くは日本語で発信され、そのリスナーフレンドリーなスタンスも印象に残る。ATEEZ「日テレ系音楽の祭典 ベストアーティスト2023」では、&TEAM「FIREWORK」、BE:FIRST「Boom Boom Back」が生中継で放送され、「Boom Boom Back」には&TEAMもダンスで参加するサプライズで沸かせた。2023年の音楽シーンを席巻した一曲である「Mainstream」を冒頭から披露し、会場を一気にホームとしたのは、7人組グループBE:FIRST。「『D.U.N.K.』最後のアーティスト、BE:FIRSTです」という言葉からは、この日のトリであることを宣言すると共に、そこへの自負と自信を強烈に感じさせられた。「Milli-Billi」でのフォーメーションとシンクロダンスや、エモーショナルなボーカルが響く「SOS」、会場が一体となってタオルを回した「Great Mistakes」と、BE:FIRSTの持つ魅力を存分に振りまき、ラストは「Scream」でそのステージを終えた。BE:FIRSTそしてイベントは「D.U.N.K.」恒例のすべての参加アーティストが登場してのダンスサイファーで終了。すべてのアーティストが喜びを分かちあい、Day1を終えた。10人組グループ、THE JET BOY BANGERZの放つ、ソロとフォーメーションの両面で魅せる、アクロバティックでフレッシュなダンスパフォーマンスで幕を開けた『D.U.N.K.』のDay2。フレーズごとにビートパターンが変化し、それに併せてダンスやボーカルのアプローチも変わっていく「TEN」は、今回「D.U.N.K.」で初披露。EXILE魂を継承するグループの猛々しいパフォーマンスに、会場の興奮は加速。写真撮影の際の「決めポーズ」のような振り付けが印象的な「PHOTOGENIC」では、「セイ、チーズ!」の歌詞とともに会場全体を巻き込み、ステージを一気に駆け抜けていった。THE JET BOY BANGERZDay1にも登場した&TEAMのコールで登場したTravis Japanは、グループを代表する楽曲「My Dreamy Hollywood」でライブをスタート。スマートで流麗なダンスと、ディスコティックなトラックに乗せた楽しげなボーカルという、Travis Japanの7人だからこそ表現できるパフォーマンスに大きな歓声が上がる。そしてTHE JET BOY BANGERZも参加した「Candy Kiss」、BE:FIRSTとのユニゾンダンスで華やかに魅せたグローバルデビュー曲「JUST DANCE!」などのコラボパフォーマンスに加え、メンバー間のコミカルな掛け合いと、ステージを走り回ってのサービス満点なMCなど、エンターテイナーとしての実力と力量の高さをステージ上で形にした。Travis Japan安定感の強い、余裕すら感じさせるパフォーマンスで「Tell Me」を披露し始まったFANTASTICSのライブ。メンバーの個性が現れたソロパフォーマンスに加え、MAZZELとのコラボという豪華な構成で形になった「Drive Me Crazy」、挑発的でエネルギッシュな「Tumbling Dice」と、熱量の高いパフォーマンスで、ドームをFANTASTICSのカラーで染める。そしてLDHで歌い継がれる名曲をFANTASTICSとして新たに表現した「Choo Choo TRAIN」、フルでは初披露となる「STARBOYS」など、全8曲のステージの中には、今年デビューから5周年を迎えるFANTASTICSの蓄積が色濃く滲んでいた。FANTASTICSそしてSKY-HIが登場し、ダンス&ボーカルシーンを牽引してきたLDHへのリスペクトを言葉にすると同時に、その思いをダンスバトルとして展開した「LDH VS BMSG」で形になった愛と敬意は、ドームでその光景を観るすべての観客の胸に響いただろう。そのリスペクトの感情は、続くRIEHATAとSOTA(BE:FIRST)が主導したダンスコラボにも強く表れていた。1日目に披露され大きな話題を呼び、12月4日にリリースされることが発表されたSKY-HI × Nissyでの「SUPER IDOL」に続き、SKY-HIのライブが開始。FANTASTICSとの「Snatchaway」、Travis Japanとの「Mr. Psycho」、出演陣とのラップでのセッションと、ソロ曲に加えコラボにも大きな拍手が上がる。そして「ストーリーを続けよう!時代の変わる声が聞こえるだろう!」と叫ぶように観客にメッセージした。ATEEZの充実のライブに続き、オオトリはBE:FIRST。「最高の音楽仲間を連れてきたぜ!&TEAM!」とコールし、コラボでの「Boom Boom Back」など、新たなアプローチで観客を盛り上げた。この日のアーティストが総登場するダンスサイファーで大団円を迎えたDay2。大きな拍手に包まれ、興奮冷めやらぬ会場のスクリーンには「D.U.N.K. Showcase in KYOCERA DOME OSAKA/Huluにて独占オンライン配信決定!詳しくは、12/20(水)深夜放送「D.U.N.K.」#5で発表!」というアナウンスが流れ、観客からはその期待への歓声と拍手が上がった。ダンスや音楽というアートに対しての尊敬と愛情をライブとして結実させた「D.U.N.K. Showcase in KYOCERA DOME OSAKA」。ダンス&ボーカルシーンへの期待を高め、さらなる飛躍を感じさせるイベントは、充実のうちに幕を閉じた。TEXT:高木“JET”晋一郎(C)D.U.N.K. Showcase 製作委員会
2023年12月16日何が飛び出すか分からない。そんな破天荒な魅力を秘めた木村達成が、30歳という節目の誕生日である12月8日(金)、『木村達成コンサート -Alphabet Knee Attack Vol.2-』を大阪・松下IMPホールで開催した。木村にとっては初の大阪ソロコンサートで、昨年末の10周年記念コンサートに続く第2弾。MCは昨年好評だった川久保拓司が再び担い、大阪のみサポートする予定だったが、木村のリクエストで急遽、 12月20日(水)・21日(木) にヒューリックホール東京で行われる公演にも出演が決定。 楽しく安定感のある進行で、東京公演も盛り上げる。舞台を中心に映画やドラマでも活躍し、近年はミュージカル『ジャック・ザ・リッパー』『四月は君の嘘』に主演するなど、ますます注目を集める木村。2023年も『マチルダ』『新ハムレット~太宰治、シェイクスピアを乗っとる』『スリル・ミー』と、幅広い演目で存在感を発揮したが、その頼もしい成長と、30歳の等身大の木村の魅力がストレートに伝わってくるコンサートとなった。前半は歌謡曲やJ-POPがメイン、後半はミュージカルの大ナンバーが続き、途中サプライズゲストとして木村と親交の深い俳優の須賀健太も登場した、記念すべき大阪公演をレポートする(ネタバレあり)。ステージ中央の白いピンスポットのなかに木村が静かに現れ、アカペラで歌い出す「リンダリンダ」(THE BLUE HEARTS)からスタート。曲が激しいロックサウンドへ変化すると、ときにジャンプしながら「フォー!」と雄たけび。カラフルなペンライトに染まる客席からは、「キャー!」という歓声が。さらに美空ひばりの「真っ赤な太陽」をバンドメンバーと笑顔を交わしながら洒落たアレンジで届け、一気に場内のヴォルテージが上がる。オレンジ色のシャツがまぶしいカジュアルなスタイルの木村は、「無事30歳になることができました。ありがとうございます!」と挨拶。観客の大きな拍手に、「こんなにたくさんの方に祝ってもらえて嬉しいです」と喜び、何度も「照れますね」と口にした。その後も、昭和歌謡やJ-POPが好きという木村らしい選曲が続く。「大阪に向かう新幹線でふと聴きたくなる」という「大阪 LOVER」(DREAMS COME TRUE)。事前に公式X(旧Twitter)で募集したリクエスト曲で、自身も「テンションが上がる」と言うチェッカーズの曲より「ジュリアに傷心」を披露。俳優としてスマートな役も演じ切る彼が、男前な声で弾けたパフォーマンスを見せる姿に引き込まれる。そしてMCで登場した川久保拓司から、誕生日祝いの花束をサプライズで贈られ「花束って嬉しいっすね。どうやって飾ればいいの?」と喜ぶ木村。さらに昨年のコンサートで大きな反響を巻き起こしたaikoの「カブトムシ」に続き、今年も女性アーティストの曲を2曲歌う。宇多田ヒカルの「First Love」はファンからの多数のリクエストに応えたもので、沢田知可子の「会いたい」も、「好きな曲で、自分に合うキーを探しあてて歌った」と打ち明ける。切ない心情にそっと寄り添うような透明感あるボイス、柔らかい息遣いや、木村が放つメロウな世界観に場内はうっとり。再び登場した川久保が「なんて甘い歌声。あまーい!」と叫ぶと、「ハッピーバースデイ!」と、 誕生日ケーキとともに須賀健太が現れ、知らされていなかった木村は驚きのあまり目を丸くして硬直。「何やってんの」と叫び、喜びを爆発させた。ハイパープロジェクション演劇『ハイキュー!!』『血の婚礼』などの作品で木村と共演し、親交の深い須賀健太は、パーソナリティを務めるラジオ番組で木村に誕生日サプライズを仕掛けられた「仕返し」として、今回わざわざ東京からやって来たと告白。須賀の本気のサプライズに木村は「マジ、ありがとね」と降参し、その後二人の夫婦漫才のような掛け合いに場内は大いに盛り上がった。須賀は木村のことを「人に対して真っ直ぐ」と表現し、「自分にないものをたくさん持っている人。尊敬している」と、最大級の賛辞を送った。いい感じにテンションが上がった木村は、全編英語の「It’s My Life 」(Bon Jovi)に挑戦。激しいギターチューンにパワフルなシャウトを乗せ、最後は川久保も加わり、波長の合う二人ならではのロックを聴かせる。後半はミュージカルコーナー。フォーマルな黒の衣装にチェンジした木村が客席から登場し、今年出演した『マチルダ』で演じたミス・トランチブルのナンバー「The Smell of Rebellion」(邦題:反乱のニオイ)を歌い出すと、客席から「キャー!」とひと際熱い歓声が。筋骨隆々な元スポーツマンの鬼校長。歌いながら観客ににじり寄り、高圧的な表情を見せると笑いが起きる。ジャジーにアップテンポに、そしてバラード調にと何度も転調する大ナンバーを、クセのあるしぐさも交え、笛も吹いて披露する“ザ・エンターテイナー”の木村に拍手喝采が送られた。続いて、主演ミュージカル『四月は君の嘘』より「僕にピアノが聞こえないなら」を。フランク・ワイルドホーン作曲の骨太な美しいメロディを、ロングトーンを駆使して届ける。歌の巧さ、表現力が際立つのは、次の『ジャック・ザ・リッパー』の「もう止められない」も同じ。優秀な外科医から愛のために狂気の淵へと落ちていくさまを、振幅のあるサウンドに乗せて全身全霊で届ける。歌い終わると腰を折り、呼吸を整えるほどの熱唱。「みんな僕が苦しんでいる役、好きでしょ?」と、闇を背負った役も魅力的に演じる木村ならではの発言が飛び出し、観客は拍手で応える。そして今コンサートの最後の曲に選んだのが、これもまた大ナンバーと言えるミュージカル『モーツァルト!』の「何故愛せないの?」。昨年のコンサートでは、自身が出演した『ラ・カージュ・オ・フォール~籠の中の道化たち~』 より「ありのままの私」を披露したが、木村は「30になってもその気持ちを忘れず進んでいきたい」と、今回のラストナンバーを選んだと話し、「最後に僕の心の叫びを聴いてください」と、ヴォルフガングが自分の道を歩んでいくんだと決意をぶつける楽曲を熱唱した。まさに、いつわりのない自分で、これからも突き進むという想いが伝わってきた本コンサート。最後は共演者と肩を組み、「30歳の木村達成もよろしく!」と爽やかな笑顔を残し去っていった。彼の自信に満ちた表情に、これからの輝かしい道が見えるようだった。東京公演は12月20日(水)・21日(木) の2日間、ヒューリックホール東京で開催される。大阪公演を経てパワーアップした木村が、誕生日とはまた違う歌声、表情で楽しませるに違いない。TEXT:小野寺亜紀PHOTO:松本 いづみ<公演情報>『木村達成コンサート -Alphabet Knee Attack Vol.2-』『木村達成コンサート -Alphabet Knee Attack Vol.2-』ビジュアル12月20日(水) 東京・ヒューリックホール東京17:30 開場 / 18:00 開演12月21日(木) 東京・ヒューリックホール東京12:30 開場 / 13:00 開演出演:木村達成MC:川久保拓司■チケット料金価格:11,000円※税込、全席指定 ※未就学児入場不可チケットはこちら:
2023年12月12日今年9月にリリースしたセカンドフルアルバム『Crop』を携え全国を巡ってきたオレンジスパイニクラブのツアー『2nd Full Album 「Crop」Release ONEMAN TOUR 2023 -見えないものに愛を-』。そのファイナル公演が12月9日、東京・Zepp Shinjukuで行われた。昨年のツアーでも好評だった企画の再来となる「オレスパのちょこラジライブ」(お客さんから寄せられた悩みにメンバー4人が応えていくラジオ番組風トーク)を前説がわりに、スズキユウスケ(Vo・G)、スズキナオト(G・Cho)、ゆっきー(B・Cho)、ゆりと(Ds)がステージ上に置かれたドア(それ以外にもソファや電気スタンドなど、部屋を模したセットが作られていた)を通って登場すると満員のフロアから大きな歓声が送られる。そしてユウスケの「ようこそ!」という絶叫を皮切りに、アルバムのタイトル曲「Crop」からライブは始まっていった。軽快なアレンジが鮮やかに広がり、その上でユウスケはリッケンバッカーをかき鳴らし力いっぱい歌う。優しくて熱くて切ない、これぞオレンジスパイニクラブという幕開けに、Zepp Shinjukuはいきなり最高潮だ。スズキユウスケ(Vo・G)3曲目「タイムトラベルメロン」を終え、「今日は朝起きたときから爽やかな気持ちで……」と言いつつ、エレベーターで乗り合わせたおじさんに「行ってらっしゃい!」と声をかけられテンパって「わかりました!」と返事してしまったという微笑ましいエピソードを開陳するユウスケ。「今日はツアーの最後なんで、大いにカッコつけさせてください」というセリフもバッチリ噛んで場を和ませると、「no reason」へと突っ込んでいく。ツアーを回ってきてますますギュッと密度を増したようなアンサンブルがなんとも心地いい。どっしりとしたバンドの存在感があるから、情けなさとギラついた意思が交錯するこの曲の歌詞もなんだか希望に満ちて聞こえてくる。さらに前身バンド時代の「ノーバイブ」へ。「あなたたち全員の幸せを俺らが全部叶えてやるからよ!」というユウスケの言葉がZepp Shinjukuを揺らした。その後、ゆりとのドラムソロから入った「洒落」、ソリッドなロックンロールチューン「東京の空」を経て、ここでゲストとしてアルバムにもアレンジャーとして参加したキーボーディスト、トオミヨウが登場。お客さんと一緒に「トオミさーん!」と呼び込まれた彼も加わった5人編成で、「理由」や「ハルによろしく」、さらに「タルパ」「まいでぃあ」といったライブの定番曲を生まれ変わらせていく。ゆりと(Ds)スズキナオト(G・Cho)どの曲でも鍵盤が入ることで一気に楽曲の表情が豊かになり、オレスパの優しくて柔らかな側面を浮かび上がらせていく。それが極まったのが「THE FIRST TAKE」の再現となった「キンモクセイ」だった。5人で鳴らす豊かな音に、ユウスケの「ここにいる全員の声を聞きたいです!」という言葉に応じたオーディエンスのシンガロングが加わり、美しい光景を描き出す。「ピンクフラミンゴ」ではユウスケの動きに合わせてフロアでも手が揺れ、幸福な一体感が生まれた。ゆっきー(B・Cho)その後の「hug.」までトオミとともに全8曲を演奏すると、もうあっという間にライブは後半戦。「大事な人と気持ちを分け合っていってください」というメッセージとともに「パピコ」を届けると、ゆっきーのベースソロから直情的なパンクチューン「君のいる方へ」を投下。さらに「急ショック死寸前」のロックンロールが会場の熱を高めていく。「君のいる方へ」ではユウスケが、「急ショック死寸前」ではナオトが、それぞれ自分のギターを高く掲げてフロアを煽っていたのだが、その仕草があまりにもそっくりで、妙なところで「やっぱり兄弟なんだなあ」と納得してしまった。そんな「急ショック死寸前」を終え、ユウスケが「まいったなあ、あと3曲です」というとお客さんから「えー」という声が漏れる。永遠に続きそうなほど長い「えー!」(ユウスケも「ギネスです」と称賛)を引き出して、ライブは終盤に突入していった。ユウスケとナオトのふたりにスポットライトが当たるなか痛快なハーモニーを響かせた「モザイク」、そして全員でジャンプして再び最高の一体感を生み出した「エブリディ・ロックンロール」を経て、本編ラストは「敏感少女」。最後にガツンとオーディエンスを射抜いて、ひとまずライブは終わりを迎えた。その後はアンコール。ゆっきーが来年3月1日に結成12周年記念のライブ「ザ・マイベスト20」(メンバーやスタッフが好きな曲を持ち寄って全20曲のセットリストが組まれる)を開催することを発表すると、再びトオミをステージに呼び込み「イージーゴーイング」を披露。そして最後は4人だけで「スリーカウント」。高速のビートに合わせてステージの上も下もこの日最後の大騒ぎ。すべてを出し切るような演奏を爆発させると、気持ちいい後味とともにオレスパはツアーファイナルの幕を下ろした。ユウスケはライブ中にツアーを振り返りつつ「いろんな人にいろんな愛をもらった。今日だけはみなさんにこのツアーで一番大きな愛をあげたいなと思います」と語っていた。トオミを交えてのスペシャルなパフォーマンスも、バンドのすべてを曝け出すようなセットリストも、まさにオレスパからファンに届けられた愛の形。その思いはひとりひとりにしっかり届き、とてもあたたかで心地よい空気となって、ライブが終わったあとも会場を包み込んでいた。Text:小川智宏Photo:冨田味我<ライブ情報>オレンジスパイニクラブ『ザ・マイベスト20』2024年3月1日(金) 東京キネマ倶楽部開場18:15 / 開演19:00■オフィシャル先行:12月17日(日) 23:59まで()<リリース情報>オレンジスパイニクラブ 2nd Full Album『Crop』発売中価格:3,300円(税込)オレンジスパイニクラブ『Crop』ジャケット【収録曲】1 .ルージュ2 .君のいる方へ3 .タイムトラベルメロン(テレビ東京ドラマ25『真相は耳の中』主題歌)4 .no reason5 .Crop6 .ハルによろしく7 .ピンクフラミンゴ8 .さなぎ9 .洒落10 .パピコ11 .レイジーモーニング12 .9分間13 .hug.購入・配信リンク:関連リンクOfficial Site:::::
2023年12月11日12月9日沖縄・ぎのわん海浜公園トロピカルビーチにて『Disney Music & Fireworks』沖縄公演が開催された。ここではそのレポートをお届けする。ディズニーの記念すべき100周年をゲストと共にお祝いするべくスタートした『Disney Music & Fireworks』。最終日沖縄公演が行われた12月9日はうろこ雲もうかがえる秋めいた空にも関わらず、ここはさすがの沖縄、午前中から20度を超える気温で半袖や浴衣姿のゲストも多くみられた。海外からの来場者も全体の1割以上を数え、国籍を超えたゲストたちが共に砂浜の座席エリアで思い思いの時間を過ごしている中、トワイライトタイムが近づくとまるで映画の一場面のようなマジックアワーが訪れた。会場に設置されたLEDスクリーンでは、ディズニー映画の予告編やディズニーの名曲が次々と流れ、開演前から会場中をワクワクとした空気で包んでいた。さらには、東京ディズニーリゾートで大人気公演中のキッズダンスプログラム「ジャンボリミッキー!レッツ・ダンス!」の映像が流れると、ゲストはその音楽に合わせて体を動かし会場中で大盛り上がり。撮影:中河原理英そして待望のスタート時間がやってくると、会場に設置されたLEDスクリーンにプラチナカラーとなったディズニー100周年のオープニング映像が映し出され、その上空に本物の花火が打ち上がって一気に夢の世界へ。ファンにはたまらない演出で雰囲気を盛り上げると、ディズニーの数々の作品で日本語版声優を担当する山寺宏一が、6つのセクションに分かれたイベントをナビゲート。まるで音楽フェスティバルに来たかのような極上の音響と極彩色の花火に、会場は感動の渦へと巻きこまれる。第7回目の開催となった『Disney Music & Fireworks』沖縄公演では、《ウィッシュ》《アドベンチャー》《フレンドシップ》《ラブ》《東京ディズニーリゾート40周年“ドリームゴーラウンド”》《フィナーレ》といった各セクションで、テーマに沿った選曲でゲストをディズニーの魔法に溢れた幻想的な世界へと連れていく。撮影:岸田哲平《ウィッシュ》セクションでは、「トライ・エヴリシング」(ズートピア)〜「どこまでも ~How Far I’ll Go~」(モアナと伝説の海)、《アドベンチャー》セクションでは「イントゥ・ジ・アンノウン~心のままに」(アナと雪の女王2)~「彼こそが海賊」(パイレーツ・オブ・カリビアン)などの名曲が大迫力の音響・花火と共に夜空を彩り、映画を見たときのドキドキした気持ちを呼び起こした。ディズニーには欠かせない愛をテーマにした《ラブ》セクションでは、『塔の上のラプンツェル』の名曲「輝く未来」と共に、黄金の花や夜空に輝くランタンを彷彿とさせる花火が打ち上げられる。音楽から連想されるイメージと花火がリンクし、映画の名シーンかのようなロマンチックなひと時が流れるなど、『Disney Music & Fireworks』でしか体験することのできない究極の感動を味わえる。撮影:中河原理英そして、今年40周年を迎えた東京ディズニーリゾートのセクションも見どころのひとつ。40周年のテーマソング「リビング・イン・カラー」にのせて、色鮮やかな“なないろ”の花火が上がると、「東京ディズニーランド・エレクトリカルパレード・ドリームライツ」をはじめとした東京ディズニーリゾートならではの楽曲が次々と流れ、会場は祝祭真っただ中のパークに今すぐ行きたくなるようなワクワクした空気があふれた。クライマックスは、ディズニー100周年を盛大にお祝いするフィナーレ。『スター・ウォーズ』や『アベンジャーズ』のテーマで始まるこのセクションは、深いディズニー愛を持つミュージシャンの浅倉大介が音楽の魔法をかけた。ディズニーの名曲に乗せて音楽から連想されるイメージと花火がリンクすると、ゲストはまるで映画の名シーンの中にいるかのような臨場感に包まれ、『Disney Music & Fireworks』でしか体験することのできない究極の感動を味わえる。音楽とシンクロして咲き誇る花火は、打ち上げのタイミングや滞空時間も緻密に計算されており、そこまでこだわるからこそディズニーの物語に没頭できる唯一無二の空間が誕生するのだ。ディズニーの歴史を感じられる至高のメドレーと視界いっぱいの花火に圧倒され、会場は万感の想いで惜しみなく拍手を送った。撮影:岸田哲平ディズニーの魅力をぎゅっと詰め込んだ音楽と、夜空を埋めつくす花火はまさに圧巻だった『Disney Music & Fireworks』。忘れられない感動の体験を、いつか是非また味わってみたい。『Disney Music & Fireworks』公式HP:
2023年12月11日2000年生まれのポップマエストロ、Mega Shinnosuke。2023年12月5日、渋谷Spotify O-EASTにてワンマンツアー千秋楽『ロックはか゛わ゛い゛い゛』を開催。令和ポップをアップデートするオルタナティブなニューロックスター、爆誕の夜となった。ステージにあらわれた、ギター×2、ベース、ドラム、MPC&パーカッションというバンドセット。Mega Shinnosukeは、軽快なステップでラップスターの如くフロアを煽りながら登場。ピンクのフーディーがアイキャッチ強いファッション。オープニングは、ポップパンクな「Sports」からスタート。まず、サッカー柄のビーチボールをフロアへ向けて蹴り上げた。勢いそのままに、ヘヴィなギターリフで展開する「Thinking Boyz!!!」をドロップ。キャッチーなメロディーで、ノリのいいファッショナブルなオーディエンスを沸かしていく。この日最初のMCは、「オレがMega Shinnosuke、よろしく!楽しみにしてたよ、みんな。調子はどう?ここまで4本ツアーをまわってきて。どの都市もぶち上げてきたんだけど。東京が一番いけるって知ってるから、いけるか?次の曲にいく前にひとつだけ言っておきたいんだけど、嫌いってのは、めっちゃ好きってことやねん」と、最新アッパーチューン「東京キライ☆」をプレイ。続いて、ドット柄の星映像とともにキュートなロックビートがポップに弾ける「aishiteru_no_mention」。イントロから、黄色い声が響く胸キュンなロックナンバー「憂鬱なラブソング」など、軽快なビートに沸く笑顔でいっぱいのフロア。ポップミュージックは時代を写す鏡というが、Mega Shinnosukeのロッキンなライブを体験すると、まさにそんな方程式の正しさを実感する。時代の空気の半歩先を、クリエイティブに表現するセンスの妙。スッと胸に入ってくる初期衝動溢れるサウンドが、クリスマス前のカオスな渋谷を熱量高めに昇華していく。「みんなはドリンクもらってる?」と、Mega Shinnosuke。オーディエンスとの近い距離感を感じるやりとりが自然体で楽しい。表現者も聴き手も、フラットな関係性なのだ。問いに答えた子へ向けて、「そんな、いっぱいお酒呑んできた君に心から捧げたい曲があるから」と、「酒を飲んでも神には成れない」。インパクトあるタイトルに、優しいメロディーが絡み合う。「なんてね、なんてね、なんてね。ありがとう!」。曲間で、発せられるMCが常にグルーヴィーなのも楽しい。そして、空気は一変し、雲が流れる青空の映像とともに軽快なシャッフルビートで鳴り響いたのは「迷子なblue」。会場中の空気感が澄んでいく様が心地良い。そう、今日はここが日本でいちばん最高のステージなのだ。突如、ドープなビートを刻み「遊ぼうぜ!」とフロアに語りかけ「兄弟」を、マイク片手にラップめいたボーカリゼーションで展開。途中、フリースタイルで「今日は朝からニュースで悲しくなっちまうな / 死んだロックスター / ユウスケチバ / だけどオレは生きてる今 / ここを沸かせ、新たなニューロックスター / ここがバースデイ」と、ラップをキメるMega Shinnosuke。当日、天へ旅立ったロックスターへリスペクトを込めてトリビュートしながら、エモーショナルにぶちあげていく。「もっと肩の力抜いて、好きにやろうよ。ここはライブハウスだからさ。教室でも会社でもないから」アコギによるリフが鳴り響き、ビートが重ね合わされる「TOKYO VIDEO」へ。揺蕩うように優しく歌い上げていく。続いて、最初期のご機嫌なポップチューン「桃源郷とタクシー」、軽やかにビートを紡いでいく「10000回のL.O.V.E.<3」「Sweet Dream feat.Jinmenusagi」をスムースに披露。さまざまなスタイルのサウンドが、枠組みを超えて歌われていく。そう、令和ポップ世代にとって音楽は単純にジャンルでは括れない。CD世代以降のストリーミング&YouTube世代が生み出す、ポップ3.0。時代を飛び越えていく、過去の膨大なお宝アーカイブたち。いかにして自分のセンスを研ぎ澄まし、掛け合わせて新しいモノを生み出せるか?それこそが、大切な新時代なのだ。こうして育まれたジャンルを超えていく構築美は、まさにMEGA POPと呼ぶのにふさわしい。ライブも終盤へ差し掛かり。「まだまだやれるか東京!」と、煽るMega Shinnosuke。イントロから沸くフロア。「アイシテル人生 feat.初音ミク」によって、ダンサブルなポップチューンを繰り広げ、ファンクな「O.W.A」で気持ちよくライブ空間を支配していく。「最高だぜ、ありがとうみんな!ロックって継承されていくものだと思うんだ。作品は生き続けることを考えると、音楽ってやっぱりすげえなって思うし。この先、一生続いていくようなロックンロールをやりたい!今日みたいな日が自分の人生であってよかったなって思えるように、みんなで歌いませんか?」。熱くオーディエンスと溶け合い歌われる名曲「一生このまま」で、駆け抜けていく光に満ちたステージ。「ありがとうございました。Mega Shinnosukeでした。また会おう!」。本編ラストは、四つ打ちビートの鼓動が響き渡り「甲州街道をとばして alternative ver.」。淡い青春セカイをメロディアスに歌い上げていく。そう、狂おしいほどにせつなき展開へ。思いの丈を込めて歌う、やわらかな光へ導くポップソング。こうして本編が終了。鳴り止まないアンコールに応えてステージへ。「まだまだいけるか東京?」。晴れやかな空気感のなか、「俺たちの、何かを好きで生きている気持ち。大切に持っていて欲しいぜ!調子どう?」。熱いメッセージと共に届けられた「永遠の少年」。フロアにライトが照らされ、キラキラ煌めく高揚感でいっぱいだ。「また必ず会おうぜ!今日のこと忘れんなよ。最後にとっておきのロックンロールを!」。ラストは、疾走感あるビートに開放感あふれるメロディーが痛快なギターポップ「明日もこの世は回るから」。アイディアとセンスによって、あらゆる創作物をクリエイトするデジタルネイティヴ世代。Mega Shinnosukeはそんなニュージェネレーション筆頭のポップマエストロだ。創作物が指針となり、ライブではみんなの心をひとつに感情をMEGA POPで爆発させていく。新たな時代のロックスター、Mega Shinnosuke爆誕。2024年へ向けて、飛躍を約束するかのような素晴らしいステージだった。文=ふくりゅう(音楽コンシェルジュ)撮影:momosuga<ライブ情報>ワンマンツアー『ロックはか゛わ゛い゛い゛』12月5日(火) 東京・渋谷Spotify O-EAST【セットリスト】01. Sports02. Thinking Boyz!!!03. 東京キライ☆04. aishiteru_no_mention05. 憂鬱なラブソング06. 酒を飲んでも神には成れない07. 迷子なblue08. 兄弟09. TOKYO VIDEO10. 桃源郷とタクシー11. 10000回のL.O.V.E<312. Sweet Dream feat.Jinmenusagi13. アイシテル人生 feat.初音ミク14. O.W.A.15. 一生このまま16. 甲州街道をとばして -alternative ver.EN1. 永遠の少年EN2. 明日もこの世は回るから<ツアー情報>『Mega Shinnosuke 2MANTOUR』◼️2024年3月29日(金)愛知・名古屋CLUB QUATTROOpen 18:00 / Start 19:003月30日(土) 大阪・梅田CLUB QUATTROOpen 17:00 / Start 18:004月6日(土) 東京・渋谷WWW XOpen 16:00 / Start 17:00【チケット料金】前売り:4,500円(D別)※18歳以下は当日チケット代1,000円キャッシュバック公式アプリ「MEGA CLUB」はこちら: Shinnosuke『MEGA 弾き語り旅』2024年1月8日(月・祝) 福岡ROOMS2024年1月12日(金) 大阪京橋BERONICA2024年1月20日(土) 札幌brew it2024年1月24日(水) 名古屋TOKUZO2024年1月27日(土) 下北沢440【チケット情報】前売:3,000円※ドリンク代別途必要チケットはこちら:()Mega Shinnosuke オフィシャルサイト:
2023年12月08日2023年12月2日、ソールドアウトのZepp Shinjuku。開演時間の18時を3分ほど回ったとき、楽器と機材とPA以外何もない殺風景なステージに「Ticket to Ride」の出囃子が流れ、中島元良(ドラムス)、Ken Mackay(ベース)、サイトウタクヤ(ギター、ヴォーカル)の3人がそぞろ歩くように現れる。Tシャツに短パン、ホッケーシャツ、バンドTに前開きのパジャマシャツというそれぞれの代名詞的なスタイル、ケアフリーなたたずまい。それでも隠しようもなく立ち昇る、繊細と粗野の同居した色気。そうそう、これこれ。これがw.o.d.だ。歓声や口笛が止んだ一瞬の静寂を狙い澄ましたかのようにギターのリフが切り裂き、ドラムとベースがなだれ込むと、なつかしい音圧が鼓膜を、体を震わせる。約1か月にわたって繰り広げてきたワンマンツアー “バック・トゥ・ザ・フューチャーVI” の最終公演は、9月にリリースされたメジャーデビューシングル「STARS」で始まった。ステージの背後にサイケデリックな映像が映し出される。映像はショー全体にわたり、具象抽象を問わず効果的に使われていた。「w.o.d.です。よろしく」必要最少限の挨拶に続いて「楽園」「Fullface」「QUADROPHENIA」「HOAX」「THE CHAIR」と比較的初期のアグレッシヴな曲をMCなしで畳みかけ、1曲ごとに照明が彩りを増していく。かつてはまったくMCをせず、この調子でひたすら演奏して早々に立ち去っていたな……と思い出していたら、短いMCタイム。「東京(ボソッ)」「イェー!」「新宿(ボソッ)」「イェー!」といった、コール&レスポンスというより照れ屋さん同士で感情を分かち合おうとするような応答に続いて、サイトウはかつて西新宿に住んでいたことを明かし、「煙たい部屋」「relay」「バニラ・スカイ」「オレンジ」と、歌詞とメロディの立ったリリカルな曲を続けた。この叙情性は「押し」の強いロックサウンドと並ぶ彼らの「引き」の魅力だ。「バニラ・スカイ」では海辺の映像が情感をさらに高めていた。「歌舞伎町なんでパーティやろうと思ってたんすけど、ファイナルっぽさでグッときてる」と感慨を語り、「バニラ・スカイ」の映像は、ツアーで金沢に行った際に、同曲のミュージックビデオを撮影した海を再訪して撮ったと明かした。なんでもライヴの打ち上げでアウターとカバンをなくしたのだそう。「そんときはベロベロやからしゃあないけど、今日も新幹線に荷物忘れたからね。病気やと思う」と話すと、フロアからの「大丈夫!」の声に「何が?」と返して笑わせた。「俺、いま無敵の人なんすよ。携帯以外何も持ってない。音楽しかないんで、音楽で遊びましょう」と意外に感動的な着地を見せて、「モーニング・グローリー」「Kill your idols, Kiss me baby」「lala」「1994」を続けて演奏した。フロアからは「楽しいぞー!」「ありがとう!」などと声が上がったが、このときはステージの上下でどんどんエモーションが高まっていくのが実感できたものだ。「こんなバカみたいにでかい音でライヴやって、スタジオも入るから、毎日でかい音聴いてんのよ。 “疲れた、もう音楽聴きたくない” と思いながら家帰って、音楽流すねん。どんだけ音楽好きやねんって思うけど、やっぱ最高ですね。ライヴやるにも曲作るにも、いろんな意図があったりするけど、そういうんじゃなくて、ただ音楽やりたいねん、俺は」そう話すと、印象的なベースのイントロから「イカロス」、続けて「Mayday」を披露するころにはフロアも興奮の坩堝と化し、フロアのあちこちから感極まったような叫び声があがる。さらに「踊る阿呆に見る阿呆」「My Generation」とw.o.d.流のダンスナンバー連打で、興奮はクライマックスに達した。「この曲は希望と憧れの歌やってずっと言ってきました。音楽はもちろん希望で、憧れもあったりするし、俺らにとってライヴはめちゃくちゃ特別なものです。やればやるほどライヴ自体が希望やなと思うし、みんなが来てくれたからめちゃくちゃ楽しくやれてます。ありがとう。俺らにとってはみんなが希望です。希望と憧れの歌です。聴いてください」サイトウがそう話して、最新シングル「陽炎」をこのあと公開されたMVをバックに演奏し、アンコールなしの約90分でショーは幕を閉じた。「陽炎」はフックのアレンジから歌詞まで彼らの新たなアンセムになりそうで、今後ライヴで育っていくのが──それこそ《グライダー》が《どこまで飛べる》のか──楽しみな曲だ。「ありがとう。また遊ぼう。バイバイ」僕が最後に彼らのライヴを見た2年前からすると、フェイズが変わったと言いたいぐらい飛躍的に成長していた。MCを増やしてフロアとのコミュニケーションが上手になったのもそうだし、タイトさを増しつつピュアな興奮を感じさせる演奏、何より会場全体の一体感が熱かった。終演後に少しメンバーと話したのだが、それは彼らも感じていたようだ。「コロナが明けてから、初めて全国を周ったワンマンツアーで、お客さんが声を出せて、フルキャパでソールドで」(Ken)、「制限がゆるくなったのもあると思うんすけど、ステージ対客席じゃなくて、ハコ全体でグルーヴする感じでできました」(サイトウ)、「ツアーするなかで自分たちのメンタリティも変わっていった気がする。本当にいいツアーができたと思います」(元良)と、3人の笑顔には屈託がなく、充実感がみなぎっていた。メジャーデビューに関しては「世代のせいもあるかもしれないすけど、あんま実感ないんすよね」(サイトウ)とのことだが、活躍の場はさらに広がるはず。《グライダー》をどこまで飛ばしてくれるか、ますます楽しみだ。Text:高岡洋詞Photo:小杉歩セットリストSE Ticket To Ride (Vanilla Fudge)01.STARS02.楽園03.Fullface04.QUADROPHENIA05.HOAX06.THE CHAIR07.煙たい部屋08.relay09.バニラ・スカイ10.オレンジ11.モーニング・グローリー12.Kill your idols, Kiss me baby13.lala14.199415.イカロス16.Mayday17.踊る阿呆に見る阿呆18.My Generation19.陽炎<リリース情報>w.o.d.「陽炎」配信中w.o.d.「陽炎」ジャケット配信リンク:「陽炎」MV<ライブ情報>『w.o.d. presents "TOUCH THE PINK MOON"』『w.o.d. presents "TOUCH THE PINK MOON"』告知画像2024年4月12日(金) 東京・LIQUIDROOMOPEN18:00 / START 19:002024年4月19日(金) 大阪・梅田CLUB QUATTROOPEN18:00 / START 19:00※ゲストは後日発表【チケット情報】前売:4,800円(税込)※ドリンク代別途必要■オフィシャルサイト先行(抽選):12月24日(日) 23:59まで()<ツアー情報>SPARK!!SOUND!!SHOW!! × w.o.d. スプリットツアー "痙攣 "『SPARK!!SOUND!!SHOW!! × w.o.d. スプリットツアー "痙攣 "』告知画像2024年3月13日(水) 埼玉 西川口HeartsSTART 19:002024年3月14日(木) 静岡UMBERSTART 19:002024年3月16日(土) 滋賀B-FLATSTART 18:002024年3月17日(日) 岡山IMAGESTART 18:00【チケット情報】前売:4,500円(税込)※ドリンク代別途必要■オフィシャルサイト先行(抽選):12月11日(月) 23:59まで()関連リンクオフィシャルサイト::::
2023年12月06日2023年、2月にデジタルシングル「YOU」、3月に再始動後、初のフルアルバム『ファンキーモンキーベイビーズZ』をリリース。ライブでは同2月に東京・大阪で行ったFC限定ライブ『ファンモン祭 2023』、追加公演を含め北海道から沖縄まで17公演を行った全国ホールツアー『太陽の街ツアー』など、リリースにライブに精力的に活動したFUNKY MONKEY BΛBY’S。そんな彼らの2023年ラストワンマンライブ『WE ARE FUNKY MONKEY BΛBY’S -2023 TOKYO-』が東京・ガーデンシアターにて12月3日に開催された。2023年のラストワンマンライブを見届けようと全国から集まったBABYSにより会場はSOLD OUTの満員御礼。開演前から外の寒さを吹き飛ばすほどの熱気に包まれていた。『WE ARE FUNKY MONKEY BΛBY’S』は、前身グループのFUNKY MONKEY BABYS時代に不定期開催されていたワンマンライブであり、2008年の日比谷野音に始まって、大阪城ホール、横浜スタジアム、京セラドームなどなど、全国各地を渡り、2013年に解散ライブとなる東京ドームで幕を閉じた『おまえ達との道』の流れを汲む、ファンモンのヒストリーライブと言えるワンマンライブであり、再始動後、初のワンマンライブ『WE ARE FUNKY MONKEY BΛBY’S in 日本武道館 -2021-』として21年10月に東京・日本武道館公演にて新しい幕を開けた。アルバム発の全国ツアーともまた違う楽曲が組み込まれるのもこのライブの楽しみの一つである。オープニングSEの後、巨大ビジョンに映し出されたWE ARE FMB -Hello TOKYO-の文字がファンモン初期のタオルソングとして人気だった「One」の文字に変わると、客席から歓声が上がり、1曲目にして早くもそれぞれのタオルを掲げ、フルスロットルで熱狂の渦が巻き起こった。間髪入れずに最新アルバムのライブ人気上げ楽曲「乙Sound」に続くと、最後に歌詞を変えて「そうだろ!お父さーん!」と、紅白初出演となったお父さんの応援歌「ヒーロー」へ、ノンストップの3曲連続アップソングで完全にスピード違反の序盤戦に圧倒される。ファンキー加藤の絶叫に近い「みなさん、お元気ですかー?ガーデンシアターにようこそぉ!」という挨拶に満員の会場が大歓声で呼応すると、あっという間にファンモンの代名詞でもある熱く重厚感がたっぷりのワンマンライブが完成。さらにファンキー加藤の「自己紹介するのを忘れていた!」をきっかけに始まったのは2006年の1stアルバムから自己紹介ラップ「チェケラッチョ」のイントロが流れ出す。再始動後の初披露はもちろん、FUNKY MONKEY BABYS時代も含めて10年以上ぶりに披露し会場を驚かせる。立て続けに歌った「WE ARE FUNKY MONKEY BΛBY’S」では、日比谷野音から東京ドームでの『おまえ達との道』までのBABYS達との歩みを感じるライブ映像や写真が映し出され、ライブ序盤から幸福感さえ感じるライブを展開する。さらには、3月にリリースした再始動後初のフルアルバム『ファンキーモンキーベイビーズZ』の収録曲の中から「原宿陸橋」をライブ初披露したかと思えば、「もう君がいない」「旅立ち」「ランウェイ☆ビート」と予測の付かないセットリストが並ぶまさに一夜限りのヒストリーライブを体現していく。『太陽の街ツアー』で早くも令和ファンモンのアンセムとなった「荒野に咲く花」ではシンガロングで、さらに会場全体がひとつとなる。アンコールでは、12月ということで、「ぼくはサンタクロース」を披露。一足早いクリスマスに心が躍る。さらには、2021年再始動第一弾シングル「エール」での大合唱。最後はもうお約束である「悲しみなんて笑い飛ばせ」でタオルが宙を舞い、2023年の年内ラストワンマンライブを締めくくった。それにしても夏の全国ツアーでも披露した平成ファンモンの大ヒットシングル曲「ちっぽけな勇気」「告白」「あとひとつ」「ヒーロー」はもちろん、令和ファンモンシングル楽曲「エール」「YOU」に加え、「ラブレター」「もう君がいない」「旅立ち」「ランウェイ☆ビート」「桜」など、10数年振りに歌った曲も含め、ほとんどの楽曲を知っているという事に改めて驚かされた。誰しもの記憶に残るキャッチーなメロディーとストレートな詩の世界観こそファンモンの強さであり、多くの人に愛される理由の一つだろう。なお、2024年はファンキー加藤のソロデビュー10周年イヤーとなり、4月28日(日) には東京・日比谷野外大音楽堂でのファンキー加藤ソロデビュー10周年記念ライブ『I LIVE YOU 2024 in 日比谷野外音楽堂』の開催も既に発表されている。そんな中で2月14日ファンキー加藤がソロでの新曲をデジタルリリースすることもアナウンスされた。2013年のFUNKY MONKEY BABYS解散以降、ファンモンの魂を途切れさせぬようファンキー加藤は歌い繋いできた。現在のFUNKY MONKEY BΛBY’Sの再始動に繋がるが、新しい形のファンモンでの経験も得たファンキー加藤が、ソロ活動にもその経験値を還元させ、ソロ活動のアクセルを全力で踏み込んで進んでいく姿が今から楽しみである。<ライブ情報>ファンキー加藤 ソロワンマンライブ『I LIVE YOU 2024 in 日比谷野外音楽堂』2024年4月28日(日) 東京・日比谷野外大音楽堂詳細はこちら:<配信情報>ファンキー加藤 デジタルシングル「タイトル未定」2024年2月14日(水) 配信リリースFUNKY MONKEY BΛBY’S オフィシャルサイト:
2023年12月05日上映中のシリーズ第3弾『映画 すみっコぐらし ツギハギ工場のふしぎなコ』の「すみっコたちほめ放題応援上映&“すみ”まで語ろうティーチイン付き上映会」が12月3日都内映画館で実施され、作田ハズム監督と脚本を担当した角田貴志(ヨーロッパ企画)が参加した。映画公開から早1カ月。多くのファンに支えられて大ヒットを記録中で、応援上映となるこの日のチケットも6分で完売した。ほとんどの観客がマイすみっコやくま工場長の「ほめ♡うちわ」を手にする中、公開後の反響を聞かれた作田監督は「映画を観てくれた皆さんが素晴らしいコメントをSNSなどで書き込んでくれて、ものすごく嬉しいです。本当にありがとうございます!」と感謝を述べていた。左より)角田貴志(ヨーロッパ企画)、作田ハズムそして2人はくま工場長としろくまのぬいぐるみを抱きかかえながら「すみっコたちほめ放題応援上映」を観客たちと鑑賞。上映中の観客は劇中セリフ「やってらんねー!」に声を合わせたり、すみっコの自宅に誰かが訪ねてくると「いらっしゃい!」と招き入れたり、しろくまが寂しそうに涙を流すと「泣かないでー!」と励ましたりしていた。物語が幕を閉じると、色とりどりのサイリウムを振りながら、涙声で「ありがとー!」の大合唱だった。その後に行われた「“すみ”まで語ろうティーチイン」では、観客から寄せられた質問に答えるコーナーを実施。とあるシーンでのざっそうの活躍について聞かれた作田監督は「すみっコたちが穴に入るところで『体の大きさからして、ざっそうは穴に入れるのか?』と……。穴を大きくすればいいだけの話だけれど、ざっそうの頭で穴をカモフラージュしたら面白いのでは?という思いつきから生まれました」と爆笑シーン誕生の背景を打ち明けた。また、しろくまのツギハギぬいぐるみに付いていたボタンの行方について作田監督は「あのボタンは見つからないことに意味のある舞台装置だけれど、おもちゃ工場の中にあるのでは?」と考察。角田が「もしかしたら再利用されて、他の誰かが使用している可能性も」と妄想すると、作田監督も「ボタンというすみっコキャラになるかも!?忘れられた、という意味ではすみっコになったと思いますから」と夢のある期待をしていた。くま工場長のその後について角田は「脚本執筆時はおもちゃ工場の気持ちが乗り移ったものだと考えていたけれど、映画でキャラクターとして生き生きしているのを見ると、あの後も動いているのでは?と思った。エンドロールを見ると映画館の館長になってみんなをお出迎えしているのかな?とも」と想像。一方、作田監督はくま工場長の褒め上手というイメージについて「作っているときはそうは考えていなかったけれど、皆さんからそのように言われて“なるほど”と思った」と納得すると、角田も「作り手側は意識していなくても、観てくれた方がそれぞれの新しい印象で色付けしてもらえるのは嬉しいこと」と作品世界の広がりに喜んでいた。さらに工場がラストに観客に向かって微笑む演出について作田監督は「ひらめきとしか言えない」と笑いつつ「最後に工場の笑顔が出ることによって、観客の皆さんが“ここが工場のその後の映画館なのかもしれない”と思ってくれたらいい」と狙いを明かし、「その場面で皆さんが“ありがとう!”と声をかけてくれて、(意図が伝わったことに対し)ついつい僕も“こちらこそ!”と言いそうになりました」と観客からの歓声に感激していた。すみっコたちの「凄い!」と思うところは「何をやっても可愛いところ。黙々と手を動かしているだけでも可愛い」(作田監督)、「一人だとネガティブだけれど、それをほかのコたちが褒めたりしてそれぞれがお互いを認めあってすみっコの世界が成り立っているところが凄い」(角田)。泣く泣く削ったシーンについて聞かれると「とんかつが大量発生したシーンのあとで、本当に本物?とぺんぎん?がすみっコたちに聞いて回っていて、『本物?』と聞かれたとかげが(本当は恐竜だと内緒にしているから)微妙な表情をする、というシーンを削りました」と作田監督が明かすと、会場からは爆笑が。「やっぱりウケましたね!入れればよかったな」と悔しそうな様子を見せた。“推しすみっコ”の話題になると、角田は「難しいですが、脚本を書く上では、ざっそう。率先して行動してくれるから」。作田監督は「とんかつ。今回はとんかつの出番を多くしすぎてしまったかな?というくらい目立った。なぜか愛おしい」とメロメロだった。そして本作のテーマについて角田は「元の役割がなくなった次はどうなるのか?そんなコを包み込むような話にできないかと思った」と明かし、作田監督も「“~じゃなければいけない”からの解放。それを物語に落とし込んだつもり」と語った。最後に作田監督は「公開前はこの作品を受け入れてもらえるのか心配でしたが、皆さんの懐の広さで受け止めていただき感動しています」と感謝。角田は「僕は1作目に続いて2回目の参加ですが、それぞれ色の違う作品が出来て沢山の方に楽しんでもらえたようで嬉しい。観るたびに新たな発見のある作品なので、映画館で何度も観ていただきたいです」とさらなるヒットを祈願していた。<作品情報>『映画 すみっコぐらし ツギハギ工場のふしぎなコ』公開中■『みんなすごい!すみっコたちほめ放題応援上映会』追加開催決定料金:通常料金※上映時間やチケット販売の詳細に関しては、各劇場へお問い合わせください。劇場情報はこちら:公式サイト:
2023年12月04日GLIM SPANKYが11月15日(水) に発売した7thアルバム『The Goldmine』を引っ提げたリリースツアーの初日『The Goldmine Release Party』を11月30日(木) に東京・リキッドルームで開催。そのオフィシャルレポートが到着した。サブスクリプション/プレイリスト文化やショート動画での発信が定着したことによりアルバムの存在感が薄まり、今まで以上に単曲での即効性が求められるようになった10年代後半~現在。そんな時代の流れを受け、GLIM SPANKYのふたりはニューアルバム『The Goldmine』について、今回のリリースパーティーのMCでも作品を制作中のライブでも、各所のインタビューでも「全曲がリード曲のつもりで、なおかつアルバムとしての世界観をしっかり楽しめるものを」という旨を語っていた。そもそもGLIM SPANKYはデビュー期から同様のこだわりを持っていたように思う。サブスクリプションの上昇線と、いわゆるサウンドスタイルとしての“ロックらしいロック”の下降線がちょうどクロスする10年代中盤にデビュー。そんな新時代への興味関心と、それでもビンテージなロックが好きだという気持ちの狭間で、現在進行のポップという概念と向き合いながら、ロックの情緒や力強さも掘り下げ、アルバムというフォーマットにこだわってオリジナルなスタイルを生み出してきた。そして20年代に入り、シーンはさらに激動する。縦割りのジャンルでは割り切れない音楽がデフォルトになり、クロスオーバーという言葉はもはや誰かの個性を示す効力を持たなくなった。しかし、ロックはその中で確実に生きている。『The Goldmine』はそのことを確信させてくれるアルバムだった。ポップで多彩な楽曲群の中で、ロックが、ロックンロールが70年以上の歴史の中で積み重ねてきた奥行き、ロックバンドだからこその肉体性や牽引力が金色に輝き続けることでアルバムになっている。そして今回のリリースパーティーもまた、そんな作品の魅力を存分に感じることのできる、力強く贅沢な時間だった。松尾レミ(Vo. / Gt)、亀本寛貴(Gt.)に加え、お馴染みのサポートメンバー、栗原大(Ba.)、かどしゅんたろう(Ds.)、中込陽大(Key)の5人が登場すると、ソールドアウト超満員のフロアからは早くも大歓声が。1曲目はアルバムの冒頭を飾るタイトル曲「The Goldmine」。太く力強いリズム隊、空気を破るようなギター、眼光鋭いメロディと歌詞という生々しいロックの衝動と、豊かに、綿密にデザインされた音の良さが光る。松尾レミ(Vo. / Gt)続いてアルバムにはjon-YAKITORYのリミックスバージョンが収録されていた代表曲「怒りをくれよ」。重量級アンセムからロックの真ん中を疾走するアンセムへ。突き上がる無数の拳や叫びとともに、場内の熱はもの凄い勢いで上昇する。そこからの「Odd Dancer」では、ダンサブルなグルーヴとサイケデリックなトリップ感のシナジーによりダンスの波が起こる。コントラストの効いたアッパーな曲の3連発で序盤から躊躇なくフロアを揺らした。ステージいっぱい駆け巡りながら全身でギターを弾く亀本のアクションは、いつもよりハイだったような気がした。近年楽曲の幅が広がったこともあり、ギターを弾きながら歌う従来のスタイルとハンドマイクを使い分ける松尾のカリスマ性も、さらに増大していたように思う。亀本寛貴(Gt.)ちなみに松尾が自ら選んだビンテージの衣装もGLIM SPANKYのライブの楽しみのひとつだが、この日は久しぶりにスタイリストが製作した衣装を着用。ビートルズのアートワークも手掛けたことで知られる、サイケデリックカルチャーの象徴的美術家、ピーター・マックスの作品が施された貴重な布を組み合わせて作られたものだそう。そんなあらゆる要素から、新作への自信を感じ取ることができた。続いては亀本が「今日はアルバム全曲やります」と言い、松尾が「もう言っちゃうんだ」と返す掛け合いなど、いつものアットホームなMCが入り、松尾のお気に入りの曲だという「光の車輪」、松尾のルーツの一つである渋谷系のフリーソウルなフィーリングも漂う「ラストシーン」と、新作ならではの爽快なポップソングを演奏。そこから2017年のアルバム『BIZARRE CARNIVAL』収録の「吹き抜く風のように」へ。このセクションは言うなれば風の時間。前述したアンセム3連発による熱気をグルーヴさせながら心地良さへと変えていく。新作で獲得したチャンネルにより、旧作の新たなポテンシャルが引き出され機能するという、常にアップデートをはかりながらキャリアを積んだことによるバンドの魅力を象徴するような場面でもあった。松尾が「70年代のアシッドフォークやソングライターたちに触発された」と話す変則チューニングを用いた「真昼の幽霊(Interlude)」から「Summer Letter」は、のどかでありながらどこかミステリアスなアコースティックギターの音色が気持ち良い。「Summer Letter」の後半に向けてバンドサウンドが力強さを帯びていく流れで、場内の熱は再びじわじわと高まっていく。そこからMCを挟みR&Bフィーリングな横乗りとロックダイナミズムが交差する「愛の元へ」、「Glitter Illusion」への流れは、曲の多様性とそれらの繋がりを、アルバムとは異なるライブ仕様の曲順で表現したようなグラデーション。今のGLIM SPANKYの懐の深さが伺える。続く「いざメキシコへ」は、2016年のアルバム『Next One』収録の、アルバム曲でありながらシングル級の人気曲。ライブアレンジのイントロで溜めてからのロックならではのヘビーな四つ打ちが火を噴くと、大歓声とともに乱舞の嵐が。そこから2015年にGLIM SPANKYの名前を知らしめるきっかけになったシングル「褒めろよ」、新作から「褒めろよ」期に回帰したような「不幸アレ」のパワフルなロックアンセムでフロアを撃ち抜く。自分たちの過去をリファレンスに2023年の音を鳴らす。そんな文脈を惜しみなく体現して観客を高揚させる姿が勇ましい。宴も終盤へ。松尾と亀本が育った長野の田園風景と60年代のロンドンをミックスしてビッグなスケールで鳴らしたようなサウンドに、圧倒的にグッとくるメロディが乗るバラード「形ないもの」は、GLIM SPANKYが20年代に生み出したエバーグリーン。そこから松尾が「みんなで歌いたくて」と話したように、シンプルなコーラスが躍動する「Innocent Eyes」で大合唱が起こり、パーティーの本編を締めた。アンコールではこれまでのライブでもハイライトを飾り続けてきた「大人になったら」、GLIM SPANKYのアッパーサイドを代表する曲のひとつ「リアル鬼ごっこ」を演奏。もちろん高まる。盛り上がる。素晴らしい。しかし、過去のキラーチューンを「待ってました」という空気はない。誤解を恐れずに言うならば、ここはピークではなくあくまでサービスタイム。『The Goldmine』というまだ生まれたばかりの現在進行形のGLIM SPANKYを心底楽しむメンバーと観客の姿にロックの未来を感じた、最高のリリースパーティーだった。そして年を跨いで2024年、GLIM SPANKYは全国23カ所を回るリリースツアーに出る。となると、このパーティーの模様を詳細に書いてネタバレにならないのか?と思ったが、帰ってからGLIM SPANKYの作品を聴いてみると、アルバムの曲以外のすべてを入れ替えても十分に成立するだけのストックがあることにあらためて気づく。次はどんなステージが待っているのか。楽しみで仕方がない。Text:TAISHI IWAMIPhoto:上飯坂一<公演情報>GLIM SPANKY 7th Album『The Goldmine』Release Tour『The Goldmine Release Party』11月30日(木) 東京・リキッドルームセットリスト01. The Goldmine02. 怒りをくれよ03. Odd Dancer04. 光の車輪05. ラストシーン06. 吹き抜く風のように07. 真昼の幽霊(Interlude)08. Summer Letter09. 愛の元へ10. Glitter Illusion11. いざメキシコへ12. 褒めろよ13. 不幸アレ14. 形ないもの15. Innocent Eyes<encore>01. 大人になったら02. リアル鬼ごっこ<リリース情報>GLIM SPANKY 7thアルバム『The Goldmine』発売中●初回限定盤(CD+DVD):5,280円(税込)●通常盤(CD):3,080円(税込)GLIM SPANKY『The Goldmine』初回限定盤ジャケットGLIM SPANKY『The Goldmine』通常盤ジャケット【CD収録内容】1. The Goldmine2. Glitter Illusion3. 光の車輪4. ラストシーン ※Paravi『恋のLast Vacation 南の楽園プーケットで、働く君に恋をする。』主題歌5. 真昼の幽霊(Interlude)6. Summer Letter7. Odd Dancer ※NHK放送技術研究所『技研公開2023』体験展示起用曲8. 愛の元へ9. 不幸アレ ※BS-TBS『サワコ~それは、果てなき復讐』主題歌10. Innocent EyesBonus track11. 怒りをくれよ (jon-YAKITORY Remix)【DVD収録内容】※初回限定盤のみ■『Into The Time Hole Tour 2022』@昭和女子大学 人見記念講堂(2022.12.21)・シグナルはいらない・ドレスを切り裂いて・褒めろよ・HEY MY GIRL FRIEND!!・It’s A Sunny Day・美しい棘・Breaking Down Blues・時代のヒーロー・LOOKING FOR THE MAGIC・Velvet Theater・レイトショーへと・怒りをくれよ・ワイルド・サイドを行け・愚か者たち・不幸アレ・NEXT ONE・Sugar/Plum/Fairy・形ないもの・EN ウイスキーが、お好きでしょ・EN By Myself Again・EN 大人になったら・EN Gypsy購入リンク:<ツアー情報>7th Album『The Goldmine』Release Tour「The Goldmine Tour 2024」※終了分は割愛■2024年1月20日(土) 神奈川・横浜ベイホール1月27日(土) 高知・X-pt.1月28日(日) 愛媛・松山サロンキティ1月30日(火) 香川・高松DIME2月1日(木) 滋賀・滋賀U☆STONE2月3日(土) 鹿児島・CAPARVO HALL2月4日(日) 熊本・熊本B.9 V12月6日(火) 静岡・浜松窓枠2月9日(金) 千葉・柏PALOOZA2月10日(土) 福島・郡山HIPSHOT JAPAN2月15日(木) 鳥取・米子AZTiC laughs2月17日(土) 岡山・YEBISU YA PRO2月18日(日) 広島・広島CLUB QUATTRO2月20日(火) 京都・磔磔2月24日(土) 新潟・NIIGATA LOTS2月25日(日) 石川・金沢EIGHT HALL3月1日(金) 北海道・札幌PENNY LANE243月3日(日) 宮城・仙台Rensa3月8日(金) 福岡・DRUM LOGOS3月10日(日) 愛知・名古屋市公会堂 大ホール3月20日(水・祝) 大阪・NHK大阪ホール3月24日(日) 東京・日比谷野外大音楽堂3月30日(土) 長野・長野市芸術館 メインホールチケット情報:()関連リンクオフィシャルサイト:オフィシャルモバイルサイト「FREAK ON THE HILL」:ユニバーサルミュージック オフィシャルサイト::::::
2023年12月01日Sano ibukiの東阪ワンマンライブツアー『Sano ibuki ONE-MAN LIVE "GOOD LUCK"』の東京公演が11月25日、東京・渋谷のduo MUSIC EXCHANGEにて開催された。10月18日にリリースされた3rdミニアルバム『革命を覚えた日』のリリースツアーとして、11月19日の大阪・Music club JANUS、11月25日の東京・duo MUSIC EXCHANGEを舞台に開催された今回のツアー『GOOD LUCK』。Sano自身にとって、東京では今年1月以来約10カ月ぶり、大阪は2020年2月以来実に3年9カ月ぶりのワンマンライブ開催となった。Sanoは冒頭から「会いたかったぜ、お前ら!」と快活に呼びかけながら、最新作からMBSドラマ特区『サブスク不倫』の主題歌「罰点万歳」をアグレッシブに歌い上げ、一気にフロアを歓喜で満たしてみせる。続けて「ジャイアントキリング」「少年讃歌」「finlay」と楽曲を畳み掛けると、場内に熱いクラップの輪が広がっていく。同ツアーではエノ マサフミ(Drums)、武田祐介(Bass/from RADWIMPS)、qurosawa(Guitar)、山本健太(Keyboard)という辣腕メンバーをサポートに迎えてステージに臨んだSano。5人一丸の熱演がバンドの一体感を見せていくにつれ、Sanoのメロディの色彩感がよりいっそうくっきりと浮かび上がってくるし、それによって「永遠の中での今この一瞬」にフォーカスする切実な世界観がさらにリアルに胸に迫ってくる。ライブ中盤では「プラチナ」「マリアロード」、さらにMCを挟んで『革命を覚えた日』収録のMBSドラマ『ワンルームエンジェル』ED主題歌「久遠」からピアノインスト曲「Letter」を経て「終夜」へ……とスロウなバラード曲を披露。それによって、ライブの熱量と訴求力がクールダウンすることなく、むしろ刻一刻と高まっていったのも、Sanoの表現者としての求心力を象徴する名場面だった。「WORLD PARADE」のダンサブルなビートとともに後半戦へ突入したライブは、「決戦前夜」「スイマー」「アビス」と進むごとに躍動感を高めて、フロアのクラップやジャンプもさらに熱を帯びていく。『革命を覚えた日』の制作を振り返って、「俺には何にもないなあって気づかせてもらえて。そういう瞬間に革命っていうものは起こるのかな、って思いながら制作をしていました」と語ったSanoが、「あなたに会えたこの瞬間が、僕にとっては革命なんだなって……そんなことを思っていたら、新しい曲ができました」と披露した楽曲のタイトルは「革命を覚えた日」。ミニアルバムと同じタイトルながら同作品には未収録の新曲だ。今回のツアーメンバーで作り上げたというダイナミックなバンドアレンジ、衝動に身を委ねるような歌とアンサンブルの疾走感に応えて、フロアに拳が高々と突き上がった。「どんな時も、僕は常に、曲となってあなたのそばにいられるように――そういう曲になれるように書いてるから」と観客に呼びかけたSanoの「愛してるぜ!」の叫びとともに、「twilight」「梟」でライブはフィナーレを迎えた。刹那の焦燥や憂いに誠実に向き合うSanoの創造性が、格段に進化したライブアーティストの肉体性と渾然一体となって弾けた、珠玉の一夜だった。なお、今回のツアーで披露された新曲「革命を覚えた日」は、2024年第一弾楽曲として来年1月に配信リリースが予定されている。Text:高橋智樹Photo:増田彩来<公演情報>Sano ibuki ONE-MAN LIVE "GOOD LUCK"11月25日(土) 東京・duo MUSIC EXCHANGEセットリスト01. 罰点万歳02. ジャイアントキリング03. 少年讃歌04. finlay05. 沙旅商06. menthol07. プラチナ08. マリアロード09. 久遠10. Letter11. 終夜12. WORLD PARADE13. 決戦前夜14. スイマー15. アビス16. 革命を覚えた日(新曲)17. twilight18. 梟<配信情報>Sano ibuki「革命を覚えた日」2024年1月 配信リリース<リリース情報>Sano ibuki 3rd Mini Album『革命を覚えた日』発売中価格:2,310円(税込)Sano ibuki『革命を覚えた日』ジャケット【収録曲】01. 少年讃歌(Arranged by Naoki Itai)02. 罰点万歳(Arranged by Naoki Itai)※MBSドラマ特区『サブスク不倫』オープニング主題歌03. 下戸苦情(Arranged by 真部脩一)04. menthol(Arranged by 小西遼 [CRCK/LCKS・象眠舎])05. 眠れない夜に(Arranged by 須藤優 [XIIX])06. 久遠(Arranged by トオミヨウ) ※MBSほかドラマシャワー『ワンルームエンジェル』エンディング主題歌■bounus track ※CDのみ07. エイトビート(Arranged by Sano ibuki)配信リンク:関連リンクオフィシャルサイト::::
2023年11月27日11月22日、森 大翔の初のツアー『Mountain & Forest』の東京公演が渋谷WWWにて開催された。今から振り返れば、約半年前、森の20歳の誕生日である6月9日に渋谷eggmanで開催された初のワンマンライブは、彼の10代の歩みの集大成を示す場であったといえる。今回の公演も、5月にリリースした1stアルバム『69 Jewel Beetle』の収録曲を軸にセットリストが構成されている点は同じであったが、それらの楽曲に加えて、その後にリリースされた新曲や現時点では未発表の曲が披露され、結果として、絶え間なく変化・成長を重ね続ける森の最新のモードを色濃く反映した公演となった。ライブの幕開けを飾ったのは、インストナンバー「Eureka」だ。サポートメンバーが鳴らす激烈なバンドサウンドの中で輝かしい存在感を放つブルージーなギタープレイ、また、速弾きや高速タッピングをはじめとした超絶技巧の数々によって、ギターヒーローとしての華々しい姿を超満員のフロアに見せつけていく。続けて、一度暗転したステージでスポットライトを受けながら、エレキギターの弾き語りで「すれ違ってしまった人達へ」を歌い出す。高い天井の会場に伸びやかに広がる彼の歌声は、6月のワンマンライブの時よりも堂々たる響きを放っていて、この短期間における彼のシンガーとしての大きな成長を感じた。また、「みんな、ブルースのあの曲は好きかい?」と観客に問いかけた後に披露した「オテテツナイデ」では、「まだいけるか!」と力強くフロアを煽る一幕も。観客を巻き込みながら熱い一体感をつくりだしていくライブアーティストとしての姿がとても頼もしかった。この日初めてのMCでは、今回のツアー初日にあたる札幌公演で、デビューした頃によくライブをしていたPLANTのステージに約1年半ぶりに立ったことを振り返った。彼いわく、懐かしのライブハウスで久々にライブをした時、「高校生の頃の自分が重なった」という。今がいっぱいいっぱいになると、どうしても昔のことを忘れてしまうけれど、自分は確かにここにいた。辛かったことも、嬉しかったことも、これまで経験してきたこと全てが、今ここに繋がっている。そのように胸の内の想いを語った森は、高校生の頃から披露し続けている楽曲「君の目を見てると」を披露する。ラストの〈また明日から 強くなれる気がした〉という言葉が特に印象的で、これまでの歩みをしっかりと噛み締めたからこそ、次の未来へ進めることを深い確信をもって伝える名演だった。また、目の前の観客へ向けて〈この歌が届くといいな〉という切実な願いを歌い届ける「歌になりたい」も、彼のポップミュージシャンとしての揺るがぬ決意が滲む素晴らしいパフォーマンスだった。続けて、彼の出身である羅臼町が舞台の曲「知床旅情」のカバーを、エレキギターの弾き語り&独奏で届ける。そして、バンドメンバーと共に、大切な故郷を思いながら書いた楽曲「いつか僕らは〜I Left My Heart in Rausu〜」を披露。森は、「皆さん、一緒に歌ってくれますか?」と観客に呼びかけ、そして、フロアから巻き起こった歌声を自らのエネルギーに替えるかのように、深いサスティンが効いた渾身のギターソロを炸裂させていく。ここから、未発表の新曲が2曲連続で届けられる。1曲目は、「アイライ」。タイトルの由来は、「愛が来る」で、「自分が好きなことを自信をもって発信すると、愛が返ってくる」という意味が込められているという。この曲は、会場を鮮やかに照らす水色とピンク色のライティングと相まって、カラフル&ダンサブルなポップナンバーとして響き渡っていて、未発表の楽曲にもかかわらずフロアからは大きな歓声や手拍子が巻き起こっていた。一転、2曲目の「雪の銀河」は、ピアノの伴奏による静謐な歌から幕を開け、その後、まるでロックオペラのようにダイナミックな展開をみせる圧巻のナンバーだった。彼は、この2曲について、「新曲の温度差よ」「サウナゾーン」と語っていて、まさに、彼が誇る表現の幅の広さを高らかに示す時間になっていたように思う。ハードロック調のリフ、メタルからの影響を色濃く感じさせるライト&レフトタッピング、また、切れ味鋭いカッティングプレイなどを織り交ぜたギターソロパートを経て、いよいよライブはクライマックスへ。11月にリリースされたばかりの新曲「ラララさよなら永遠に」は、この日の数あるハイライトの中でも屈指の名演だった。言葉にして届けたい想いを、歌にして届ける。言葉にならない想いを、ギターに託して鳴らしていく。その2つの表現は彼の中で一つに繋がっていて、歌うようにギターを奏で、ギターをかき鳴らすように感情を爆発させて歌う森の姿に、改めて彼のシンガー&ギタリストとしての真髄を見た気がした。また、本編を締め括った勇壮なライブアンセム「たいしたもんだよ」「剣とパレット」の2連打は、まるで残されたエネルギーの全てを放出するような非常に熱烈なパフォーマンスで、その熱い余韻が本編終了後もいつまでも胸の中に残り続けた。アンコール1曲目は、原点の一曲「日日」。本編の大半のパフォーマンスは、頼もしいバンドメンバーたちによって支えられていたが、この曲は一人で弾き語りで披露してみせた。たった一人の手による演奏とは思えないほど豊かな響きを放つアコースティックギターの音色は、思わず息を呑むほどの美しさを帯びていた。MCでは、今回のツアーから初のグッズを販売開始したこと、また、来年の春に新しいツアーを開催することを告げ、フロアから温かな拍手が巻き起こる。その後、再びバンドメンバーをステージに迎え入れ「台風の目」へ。ストリングスの音色を大胆にフィーチャーした音源とは異なり、バンドサウンドの熱量と気迫を感じさせるエネルギッシュなパフォーマンスで、クライマックスに向けてさらなる高揚感を生み出していく。そして、今回のライブは、「ありがとう」「また雪が溶ける頃に会えますよ」という言葉を添えて披露した「明日で待ってて」で幕締め。〈そしてきっとすぐに 暖かな未来が来るから 君は明日で待ってて〉という歌詞が、まるで、この日集まった観客との約束の言葉のように響いていて、とても感動的だった。この日の公演の中で発表されたように、来年3月には新しいツアー『Mountain & Forest “愛来”』の開催が控えている。東京公演の舞台は、渋谷CLUB QUATTRO。彼自身が凄まじいスピードで変化・進化を重ねているのに合わせて、動員も右肩上がり、ライブ会場も次々とスケールアップを果たしている。今回のライブを観て、始まったばかりの森の20代の歩みに、改めてとても大きな可能性と希望を感じたし、きっと彼なら、今はまだ想像もできないような大きな景色を見せてくれる予感がする。総じて、これから先の未来へ向けた期待が際限なく高まるような、とても素晴らしいライブだった。Text by 松本侃士Photo by 関口佳代<公演情報>『Mountain & Forest』東京公演11月22日(水) 東京・渋谷WWW【セットリスト】01. Eureka02. すれ違ってしまった人達へ03. オテテツナイデ04. 君の目を見てると05. 歌になりたい06. 知床旅情(カバー)〜エレキギター弾き語り07. いつか僕らは〜I Left My Heart in Rausu〜08. アイライ(新曲)09. 雪の銀河(新曲)10. エレキギターソロ11. ラララさよなら永遠に12. たいしたもんだよ13. 剣とパレットEN1. 日日EN2. 台風の目EN3. 明日で待ってて<ライブ情報>森 大翔 2nd Tour『Mountain & Forest “愛来”』■2024年3月3日(日) 愛知・名古屋SPADE BOX3月15日(金) 北海道・札幌cube garden3月20日(水・祝) 大阪・Music Club JANUS3月24日(日) 東京・SHIBUYA CLUB QUATTRO■オフィシャル先行受付:11月29日(水) 23:59まで<配信情報>「雪の銀河」12月8日(金) 配信リリース配信リンク:森 大翔 Official HP:
2023年11月27日Hakubiが、ワンマンライブ『賽は投げられた』を11月18日(土) に大阪・なんばHatchで開催。キャリア最大規模となった東阪ワンマンライブを完走した。ライブ終演後には、2024年に全国13都市をまわるワンマンライブツアーを発表。2024年3月15日(金) に開催される千葉・千葉LOOK公演を皮切りに、4月19日(金) に地元である京都・KYOTO MUSEにてツアーファイナルを迎える。チケットはオフィシャル先行を12月3日(日) まで受付中。また、11月4日(土) に行われた東京・Zepp Haneda公演のオフィシャルレポートが到着した。11月4日(土) のZepp HanedaにてHakubiが『賽は投げられた』と題したワンマンライブを敢行。その模様をお届けする。ステージ上には自らが駆る楽器類と背後に吊られたお馴染みのロゴのバックドロップのみ。初のステージとなる会場なだけにややもすると簡素とも言えるシンプルなセットであったが“バンドの自力のみで魅せる”と言う強い意志の表れと筆者は受け取った。ポストロック / アンビエント調のSEに合わせメンバーが登場。すっかりバンドのアイコンともなった片桐(Vo/Gt)の金髪と真紅のギターが今宵も目を惹く。一曲目はライブのタイトルともなった「賽は投げられた」。寂寥感漂うメロディが印象的な楽曲だが、曲終盤の“賽は投げられた”の歌唱と共にアンサンブルが爆発すると言う二部構成的な趣も持つ楽曲であり、片桐はワウがかったノイジーなギターを掻き鳴らしながらオーディエンスに向かって「みんなのために みんなのためだけに歌います」と力強く宣言。それに呼応する様にヤスカワアル(Ba)、マツイユウキ(Ds)も大きく体を揺らしながらプレイする。片桐(Vo/Gt)短めのMCから「ハジマリ」へのタイトルコールが華麗に決まった瞬間、マツイの性急なエイトビートでバンドは勢いよく走り出す。「ちょっと珍しい曲やってもいいですか」との事で「color」へと繋げ、序盤を駆け抜けたバンドはここで目下の最新アルバムからタイトルチューンである「Eye」を披露。広いサウンドスケープを持つ四つ打ちに応える様に客席から軽快なクラップが巻き起こる。オーディエンスまでもがアンサンブルに参加したかの様な祝祭的な雰囲気の中でバンドはキメの多い楽曲を余裕たっぷりに乗りこなしていく。特に言葉数が多いサビを息継ぎなしで歌い切る片桐のボーカルに、ライブバンド、現場主義を貫くHakubiの矜持を感じずにはいられなかった。MCでは片桐が会場入り前にすっぴんでファンの女の子に遭遇してしまった事やマツイが会場の広さを「京都MUSE何個分?」などと自らのホームグラウンドに絡めつつ感謝するなど、ライブ中とは打って変わった緩やかなムードで進行させたと思いきや片桐が再び「これが今の私たちのベスト。気合い入れてやって参りました。最後まで宜しくお願いします」と力強く宣言。確かにリリースを伴うライブではない今回。シンプルなセットと相俟って、ロックバンド、或いはライブバンドHakubiの現段階でのベストを実演にて刻み付けるという意味合いで組まれた公演であろう事を明かしてくれた。ヤスカワアル(Ba)「懐かしい曲を」の一言で演奏された「もう一つの世界」も客席からの高らかなクラップで迎えられ、ヤスカワがベースを唸らせる「最終電車」。マツイの変則的なドラミングと後半のシューゲイザー的な展開で場内の空気を一変させる「薄藍」などリズム隊の妙技を見せつつライブは進行。続く「午前4時、SNS」、「サーチライト」に綴られる、胸を抉る様な言葉の数々。獰猛さを増すリズム隊に乗せて絶唱する片桐に圧倒されてしまう。生々しい息遣いで歌われる「サイレント東京」では打ち込みのリズムをマツイがパッドへとスイッチし生演奏。ヤスカワの浮遊感あるフレージングが心地よい眩暈を提供してくれる。再びのMCでは「ワンマンの時はドラムとベースも喋るんです」と演奏とはまた別のグルーヴ感を見せるコミカルなトークを展開。即興で行われた「会場から1番遠いやつは誰だ選手権」ではなんと北は北海道、南は宮崎県からの来場者の姿が。“今までのベスト”と先のMCで片桐が明言していた通り、客側としても、やはりどうあっても見逃す訳にはいかないライブであるのだろう。マツイユウキ(Ds)「今でもこの曲が沁みます」と自身の処女作であるep『夢の続き』から「intro」~「夢の続き」と繋げ、タイトル未定の新曲をここで初披露。バンドの過去と現在。そしてその表現の根底にある揺るがないものの片鱗を垣間見せてくれた。ここからのブロックではバラード曲が続く。特にもう2度と会う事の出来ない、かけがえのない存在へと歌われる「拝啓」は今宵屈指のハイライトの一つに数えられるのではないだろうか。詞曲に込められた深い悲しみと感謝を全身で表現する片桐に思わず息を呑んでしまう。来場者一人一人もきっと自身の大切な存在を思い浮かべながら聴き入っていた事だろう。そしてアップダウンの激しい音程を感情豊かに歌い上げる「Twilight」の後半、エイトビートで切り込んでくるドラムと共にアンサンブルはまたも爆発。更なる強靭な表現力を纏ったバンドの現在地を客席へと刻み付ける。さあ、ライブもいよいよ終盤。鏡に写る理想通りとは決していかない自身の姿へと宛てた「mirror」の曲中では“ファンの1人から手紙を貰った事、そこにはHakubiが生きる理由としたためられていた事、Hakubiにとっても眼前のあなたたち一人一人が生きる理由である事”が高らかに宣言される。互いが互いの生きる理由である事が明確となったバンドとオーディエンスが作り上げる空間。ライブの形として一つの理想であろう。そんな空間を目の当たりにした片桐は「こんなに笑う片桐見た事あります?」と楽しすぎて少々テンションがおかしくなってしまっている事を自嘲気味に語っていた(笑)。「最後、みんなで歌って欲しいです。いけるよね?」として披露されたのは「君が言うようにこの世界は」。随所に挟まれるコーラスを割れんばかりの声で共に歌うバンドとオーディエンス。ステージと客席との境目がなくなったかの様な一体感をもってして、本編は終了。アンコールでは再びトークでのグルーヴ感も強力なヤスカワとマツイによるグッズの紹介などを挟みつつの「辿る」。そして雄大なリズム、荘厳な調べのピアノにシーケンス、神々しい光を纏った様なメロディがこの上なくラストに相応しい「悲しいほどに毎日は」にて堂々のエンディング。先にも記したが強靭さを更に増したバンドの表現力は楽曲全てをより立体的、有機的に輝かせており、片桐の言う“今の私たちのベスト”を存分に見せ付けてくれた。そしてMCのみならず曲中に至るまで何度も宣言されていたのはオーディエンス一人一人である“あなた”へ向けられた強い肯定の意思。“いつだって頼って欲しい”とまで“あなた”に寄り添う覚悟を決めたバンドの意思表示に、ロックバンド、或いはライブバンドHakubiの揺らがぬ信念を窺い知る事のできる一夜となった。Text:庄村聡泰Photo:翼、<ライブ情報>Hakubi one-man tour 2024『Hakubi one-man tour 2024』告知画像2024年3月15日(金) 千葉LOOK開場18:30 / 開演19:002024年3月17日(日) 札幌KLUB COUNTER ACTION開場18:00 / 開演18:302024年3月20日(水・祝) 柳ヶ瀬ants開場18:00 / 開演18:302024年3月22日(金) 金沢vanvanV4開場18:30 / 開演19:002024年3月27日(水) 福岡LIVE HOUSE OPʼs開場18:30 / 開演19:002024年3月28日(木) 長崎STUDIO DO!開場18:30 / 開演19:002024年3月30日(土) 高松DIME開場18:00 / 開演18:302024年4月4日(木) 仙台MACANA開場18:30 / 開演19:002024年4月5日(金) 水戸LIGHT HOUSE開場18:30 / 開演19:002024年4月13日(土) 松本LIVEHOUSE ALECX開場18:00 / 開演18:302024年4月16日(火) 渋谷CLUB QUATTRO開場18:30 / 開演19:002024年4月18日(木) 名古屋CLUB QUATTRO開場18:30 / 開演19:002024年4月19日(金) 京都KYOTO MUSE開場18:30 / 開演19:00【チケット情報】4,000円(税込 / ドリンク代別)■オフィシャルメンバーシップ先行(チケット+特典グッズ付)受付期間:12月3日(日) 23:59まで■オフィシャル先行(チケットのみ)受付期間:12月3日(日) 23:59まで()関連リンクHakubi Official Site:::::
2023年11月20日バンド最高。いきなり語彙力全部放り投げて申し訳ないけれど、何回も、何回でも、精一杯大きな声で言いたい。バンドって最高。そんでもってバンドって人生。もっと言えばバンドに魅了された人の人生もそれぞれあって、その人生と人生がバンドを通して混ざり合ったのが、04 Limited Sazabys日本武道館2DAYS公演『THE BAND OF LIFE』だ。15周年を迎えた彼らがこの『THE BAND OF LIFE』という言葉を武道館で謳う説得力。開催にあたりGENが「バンドis人生」と言っていたけれど、2日間にわたって開催された日本武道館公演は、その答え合わせのような時間となった。GEN15周年記念となった今回の日本武道館公演はフォーリミにとって7年振りの開催。九段下の駅をおりて坂道を上りながら7年前のあの日のことを思い出す。あの日感じた感触も、芽生えた感情も肌にこびりついている。今日もそう、あの時と似ている。だけど何かが確実に違う。あの頃、挑戦の先に辿り着いた日本武道館でのライブは「ここまできたか」という万感の思いがこみ上げるものがあった。だけど今回の日本武道館公演は、辿り着いたその先で戦い続けてきたフォーリミの圧倒的な自信が溢れていた。ガラガラのライブハウスから始まった彼らの物語は15年という年月をかけ1コマ1コマ着実に踏み出してきた中で、こんなにも沢山の仲間に囲まれ、沢山の人に愛されるバンドになるまでストーリーが進んだ。旅の仲間と確かめ合いながら生き方を探し全開で冒険してきた4人の人生ゲーム。その物語の登場人物大集合な空間は、それはもうこれでもかと愛で溢れ返ってきた。HIROKAZ初日と2日目で被り曲がほぼ無しといったセットリストで挑んだ2DAYS。12日のスタートを飾った「Keep going」を日本国旗の下で歌う4人の姿を観ながら、この数年間でこの国に、いや世界中に起きた出来事を考えていた。もう駄目だと思うことなんて何度でもあって、だけど諦めることを諦めて前に進むことが出来たのは、あの時期にフォーリミが『Harvest』というアルバムを届けてくれたからだ。前みたいに進めない中で前に進むにはどうしたらいいのか、とことん向き合って、頭を捻って、やっとここまできたのだ。声が出せない、隣の人と距離をあけなきゃいけない、ライブは何時までに終わらなきゃいけない、あれもこれもそれも色々あって、耐えて耐えて溜まっていたものを爆発させるのが、やっぱりバンドにとってはライブなのだ。「message」でステージに炎を上げた特効チームだってそれはもう本気だ。KOUHEI「fade」や「Every」で歓声が上がったことでコロナ禍にリリースされた楽曲たちが本当の意味で完成したように感じたのは新たな感触だった。やはりライブバンドの作り出す音楽は作り手から誰かに届いてその音楽がその人のものになったときに出来上がる気がする。そういう意味ではこの2日間でその人だけの音楽を完成させた人も沢山いるのではないだろうか。立ち上がる以外方法がないことだって「My HERO」から学んだことだけど、音楽は時代を写すから、武道館で今聴きながら脳裏には色んな景色が浮かんでくる。あのとき何をしていたか、誰といたか、音楽は記憶に鮮明に色をつけるから面白い。RYU-TA愛し愛され15年、「Brain sugar」でフォーリミとファンの相思相愛を見せつけられながら満員の日本武道館をぐるっと見渡し、なぜこんなにもフォーリミが愛されているのかを考えていた。それはきっと彼らが沢山の愛を届けてくれるからだと思う。ファンに対しては勿論、仲間に対しても、家族に対しても、スタッフに対しても、フォーリミはいつだってとびっきりの愛で抱きしめてくれる。GENが「7年前と音響も照明もスタッフが変わっていない。チーム04 Limited Sazabysの本気を受け取って欲しい」と語っていたように、愛をまとったスタッフ陣もパワーアップして今日に挑んでいるのがよく分かる。「Kitchen」を演奏するフォーリミのバックで流れる野菜盛り盛りの映像だって、野菜が高騰している昨今の事情を吹き飛ばすポップさにワクワクさせられる。こういうひとつひとつの演出が、チーム04 Limited Sazabysが本気でバンドと一緒にライブを作っている証拠だ。そう、チーム含めてバンドなのだ。事件が起きたのは「Galapagos」のときだった。いつものショートコントのくだりの中で、某ジャイアンがしたためてきたお手紙でしれっとさらっと『YON FES 2024』の開催が発表されたのだ。例年4月に開催されてきたYON FESだが、来年は6月に開催とのこと。「Galapagos」「Galapagos II」とシリーズ続けて演奏する後ろではあらゆるオマージュを散りばめたアニメーションが目まぐるしく展開されていて、ただでさえ情報量の多い楽曲なのに色々詰め込まれ過ぎていて、ここにもチーム04 Limited Sazabysの本気を見た。1秒たりとも退屈させない仕掛けの連続。織田信長やゴリラ、マツケンからLa Vie en Crisisまで、時代も生態系もジャンルの壁も超えた各界の著名人から届いたお祝いコメントにも沢山笑わせてもらった。思えば少し前まで、ライブハウスで声を出して笑うことも我慢していたんだから、みんなで乗り越えてきたんだなと、泣くポイントなんて1ミリもない映像を見ながら涙腺が緩んでしまう。本当の意味での涙を誘ったのは10月にリリースされたセルフカバー・アルバム『Re-Birth』から演奏された「Re-monolith」「Re-midnight cruising」「Re-swim」だった。この15年間を一緒に走り続けてきた楽曲たちが日本武道館でおめかししているようで、その姿に子供の成長を見ているような気分になった。だって考えてみて欲しい。日本武道館でストリングスを迎えあの4人が演奏するなんて、想像もしていなかったでしょ。この15年でフォーリミがどれだけ経験を積んで、どれだけ沢山の音楽に触れ、色んな人に出逢って、今日ここに立っているのか。新たな表現方法を手に入れたフォーリミはきっとこれからもまだまだ進化するだろうし、あっと驚かせてくれると思う。15年でこれなんだもん。30年、50年先のフォーリミにだってきっとずっとワクワクしている自信がある。あの頃からずっと歌ってきた「Buster call」はまるで走馬灯のようにこの15年間が蘇るけれど、それだけじゃなく、これからの未来を見せてくれるのがフォーリミだ。いつだって彼らが見据えているのは先のこと。勿論全部持っていく。歴史があって、積み重なって、その上で既成概念にとらわれないで新し色を塗っていく。それはフォーリミが「Buster call」で歌ってきたことだ。この曲を聴くときにはいつだって思い出がよぎるけれど、それ以上にこれからを予感させるフォーリミが誇らしくて仕方ない。「discord」なんて既成概念をぶっ壊して作った賜物だと思う。「夕凪」じゃないけれど、進行方向を見失ったって何度でも軌道修正すればいい。回り道だと思っても、ひとつの山を登ってフォーリミはここまできたんだから。「バンドは人に幸せを与える職業」だってこれまでのライブでもGENは何度も口にしてきたけれど、続けて「どんな仕事も人に幸せを与える職業だ」と語っていた。日本武道館に集まった人たちが普段どんな生活をしていて、どんな仕事をしているか知ることは出来ないけど、ひとりひとりの人生があって、今この瞬間、04 Limited Sazabysという共通点をもってその人生が交わっている。この数年、「hello」を一緒に歌えなかった時期があったでしょ。それでもあの瞬間はみんなの声が聴こえていた。それはコロナ禍のライブハウスで起きた奇跡の魔法だとずっと思いながらこの数年を過ごしていた。そしてコロナが明け、みんなで歌った「hello」。あの瞬間だけはいつも永久に永久に感じる。みんなの歌声はきっと、フォーリミの4人を幸せにしている。そうやって寄り添って歩いていく。7年前の武道館で謳う為に書いたという「eureka」を7年経って同じ場所で聴きながら、まだ見ぬ未来へと続く道を、みんなで一緒に進んでいきたいと心から思った。不安がないといったら嘘になるけれど、日々は確実に色付き始めていて、音楽が、フォーリミが、僕らの人生を豊かなものにしてくれる。「Harvest」を共有することで安心も感動もこれからきっとありふれるように降り注いでくる。くしゃくしゃになった地図を広げて、何度も立ち上がって、前に進む。不安なんて「Squall」が流してくれた。こんな時代だけど、そんな時代にフォーリミがいることで僕らの時代は変われる。進める。アンコール1曲目で歌った「Feel」はまだまだ続く夢の先を期待させるものであったし、そんなフォーリミだから一生かけて共に歩いていきたいと思えるのだと思う。この日最後に演奏されたのがフォーリミからのラブレターのような「Give me」だったこと。これがフォーリミを愛したくなる秘訣なのかもしれない。15周年を記念した日本武道館2DAYSで改めて気付かされたのは、結局ずっと君たちが好きだってこと。あと、バンドが最高ってこと。文=柴山順次(2YOU MAGAZINE)撮影=ヤオタケシ/ヤマダマサヒロ<公演情報>04 Limited Sazabys 15th Anniversary『THE BAND OF LIFE』11月11日(土) 日本武道館■セットリスト01. monolith02. knife03. Finder04. escape05. days06. climb07. in out08. Chicken race09. Milestone10. Grasshopper11. kiki12. Alien13. Re-fiction14. Re-Squall15. Re-swim16. Standing here17. Now here, No where18. Warp19. midnight cruising20. Lost my way21. Night on22. imaginary23. milk24. soup25. eureka26. Horizon27. Justen1. Terminalen2. swim11月12日(日) 日本武道館■セットリスト01. Keep going02. message03. fiction04. fade05. Every06. My HERO07. Brain sugar08. Kitchen09. Jumper10. Galapagos11. Galapagos II12. nem...13. Re-monolith14. Re-midnight cruising15. Re-swim16. Buster call17. discord18. 夕凪19. mahoroba20. labyrinth21. Cycle22. medley23. Honey24. hello25. eureka26. Harvest27. Squallen1. Feelen2. Give meセットリスト プレイリストDAY1:: Limited Sazabys HP:(旧Twitter):
2023年11月14日東京・紀伊國屋ホールにて上演中の、尾上松也、吉岡里帆、和田琢磨、渡辺えりが出演する『ガラスの動物園』『消えなさいローラ』。今回渡辺は、自身が演劇を志すきっかけにもなったという憧れの作品である、テネシー・ウィリアムズの出世作『ガラスの動物園』と、別役実がその後日譚として書いた『消えなさいロ ーラ』両作品の上演台本と演出を手がける。世界初となる二本立て上演としても注目を集める本公演のオフィシャルレポートと舞台写真が到着した。テネシー・ウィリアムズ『ガラスの動物園』と、その後日譚として描かれた別役実『消えなさいローラ』の連続上演という異例の企画が、ついに開幕した。上演時間は3時間45分(休憩15分)と聞いて少し身構えたが、杞憂に終わる。観終わった瞬間、切なさと晴れやかさが同時に湧き上がり、胸が熱くなって感涙。作品から感じられる優しさや温かみや匂い、俳優・演奏者・スタッフの懸命な姿から、辛く哀しい日々を慰められたような、疲れた魂を鎮められたような気持ちにもなった。この豪快なプランを渡辺えりに提案したという尾上松也に感謝したい。常軌を逸した松也の提案を真に受けた渡辺も正気の沙汰ではない。妥協を許さない渡辺は、いつにも増してのこだわりの演出でその期待に応える。さまざまな趣向が細部にまで行き届き、また何層にも重ねられていて、渡辺がこれまでの人生で得た計り知れない知識・知恵・経験を余すところなく盛り込んでいるのがわかる。渡辺が16歳の時に「本当に笑えて、本当に泣けた」と感激した長岡輝子演出『ガラスの動物園』(1971年、文学座)、そして作家のテネシー・ウィリアムズと別役実への心からの敬意もあちらこちらに感じられる。その演出によって、1971年に16歳の少女が味わった深い感動を追体験することができた。『ガラスの動物園』左より)渡辺えり、吉岡里帆、尾上松也『ガラスの動物園』と『消えなさいローラ』をつづけて観劇すると、一度の観劇では味わい尽くせないほど見どころが数多にある。誰かと話し合いたいくらいだ。母親アマンダと息子トムの笑ってしまうような親子の言い争い、アマンダと娘ローラの優しい時間、ジム登場の楽しいドタバタ、『消えなさいローラ』の3バージョンの演出や演技の違い……など、挙げ始めたら切がない。ここでは特に深く印象に残ったものをいくつか挙げてみる。まっさらな気持ちで観劇されたい方はご観劇後に、少しでも見逃したくない方はご観劇前の参考に。※※※ここからネタバレを含みます※※※吉岡・和田・渡辺が演じる三者三様の《女》の魅力開演前に流れていた伝説のロックバンドPYGの「花・太陽・雨」、ヘルマン・ヘッセの詩を曲にしたロックバンド頭脳警察の「さようなら世界夫人よ」から渡辺の意思表明を感じることができ、『ガラスの動物園』は遠くアメリカの昔の物語ではなく身近な家族の悲喜劇である、と導かれたように思う。また、社会情勢を思い起こす効果音では、忘れてはいけない痛みを胸に刻み付けられた感覚を得た。『ガラスの動物園』は《追憶の劇》であると作家は明確にしているが、さらに《トムの脳内》であると強く打ち出した渡辺の演出は愉快だった。戯曲ではトムが登場しないシーンにも、松也は舞台に居る。ミュージシャンへ指揮をしたり、物を書いていたり、登場人物の様子を眺めていたり、思わず微笑んでしまうチャーミングなシーンも。それは回想するトムの姿でもあり、作家ウィリアムズの姿でもあり、観客の一人でもあり。松也の豊かな表現を堪能できるうえに、作品をより立体的に感じられる。『ガラスの動物園』尾上松也非常に繊細で情緒不安定な姉ローラに明るさを加えた吉岡里帆の表現はとても良かった。ハイスクール時代に憧れていたジムと思いがけず楽しい時間を過ごしたあとのシーンの表情が夢見る少女そのもので、だからこそ切なさを感じた。話し掛けることすら容易ではなかった《推し》と会話できただけで幸せ、というローラの気持ちに共感。あの表情を思い出すと、今でも胸が苦しくなる。『ガラスの動物園』吉岡里帆和田琢磨が演じるジムの明るさや軽快さも良い。明るければ明るいほど彼の闇が見え、軽ければ軽いほどトムやローラの切ない感情が浮き彫りになる。ローラとのワルツからタンゴ、トムとのタンゴからローラとのワルツへと夢と現実が入り混じるようなダンスシーンは見事。ジムはトムにとっても憧れの存在であったことをタンゴで表現するとは。優しいエスコートと強いステップに目を奪われた。『ガラスの動物園』左より)和田琢磨、吉岡里帆渡辺えりによるアマンダは肝っ玉母さん。お嬢様育ちだった彼女が生活と愛する二人の子どもたちを守るために、強く生きることを選んだ女性だ。口うるさいけれど実は思いやりに溢れ、心根の優しい女性であることは口跡からも明らか。『ガラスの動物園』左より)尾上松也、渡辺えり音楽監督とコントラバスを担う川本悠自、ヴァイオリンの会田桃子、バンドネオンの鈴木崇朗の存在は本当に大きい。二作品をつなぐ重要なファクターでもあるからだ。『消えなさいローラ』劇中歌「夢を創る」にはカタルシスを感じた。『消えなさいローラ』の《女》は3バージョン。吉岡の回では『ガラスの動物園』の後日譚であることがダイレクトに伝わってくる。また彼女の巧みな間合いは、シニカルな笑いを生む。渡辺の回は《女》はローラなのかアマンダなのか、二重三重にも惑わされ、サスペンス色が強い。情熱的で強い歌唱は胸を打つ。男性である和田琢磨の回は滑稽かと思いきや、最も哀愁を誘う。ローラとアマンダの幻影が現れる演出で追憶の中に生きる女の像が色濃く映し出されるからだ。時間が許すならば、3人の《女》を味わってほしい。魅力はそれぞれ、松也の《男》も相手によって変わる。そのうえ別役実作品の懐の深さも体感することができる。『消えなさいローラ』吉岡里帆『消えなさいローラ』渡辺えり『消えなさいローラ』和田琢磨最後に、本公演プログラム掲載の古木圭子氏(『ガラスの動物園』)、内田洋一氏(『消えなさいローラ』)による作品解説もお勧めしたい。文=金田明子撮影=細野晋司<公演情報>COCOON PRODUCTION 2023『ガラスの動物園』 『消えなさいローラ』作:テネシー・ウィリアムズ(『ガラスの動物園』 翻訳:田島博)、別役実(『消えなさいローラ』)上演台本・演出:渡辺えり出演:尾上松也 / 吉岡里帆 / 和田琢磨 / 渡辺えりミュージシャン:川本悠自(コントラバス)/ 会田桃子(ヴァイオリン)/ 鈴木崇朗(バンドネオン)2023年11月4日(土)~11月21日(火)会場:紀伊國屋ホールチケットはこちら:公式サイト:
2023年11月10日東京、大阪と続いて、11月9日(木) の名古屋公演でFINALを迎えた、GLIM SPANKY『Velvet Theater 2023』。8月5日に開催された『Velvet Theater 2023』東京公演のオフィシャルライブレポートが到着した。GLIM SPANKYが2013年にリリースした初のEP『MUSIC FREAK』は、60年代~00年代のリヴァイバルも含めたブルース/ガレージロックからの影響が色濃いストレートで荒々しい作品だった。あれから約10年。松尾レミ(Vo/Gt)、亀本寛貴(Gt)の二人が歩んできたキャリアをあらためて辿ると、その音楽性はときにゆるやかで、ときにめまぐるしい変化と拡張を繰り返してきたことがわかる。そこには、自身の成長、メジャーに移籍したことにより環境が変わったこと、時代の移り変わりなど、さまざまな要因があったことだろう。いずれにせよ人はただ息をしているだけでも時とともに変わっていくもの。そう考えるとごく当然のことだと考えられるが、2020年にリリースした5thアルバム『Walking On Fire』や最新6thアルバム『Into The Time Hole』で、ネオソウルやR&Bを前面に打ち出してくるところまでは予想できなかった。しかしそこに違和感はまったくない。とにかく柔軟で自由、しかしある部分ではそれと同じくらい頑固。だから何をやってもそれはGLIM SPANKYのロックになる。では、そのGLIM SPANKYをGLIM SPANKYたらしめる理由は何なのか。その答えの一つは、主にサイケデリックカルチャーに由来する“GLIM=幻想的な世界観”と、聴く者の感情をダイレクトに揺さぶる“SPANKY=アグレッシブな姿勢”という、バンド名が示す二つの軸を表現の源に持っていることだと思う。私はGLIM SPANKYの、それらの間にあるグラデーションや、それらを起点にした変化や開拓精神に魅せられ続けてきた。『Velvet Theater』は、そんなGLIM SPANKYの“GLIM”な側面にフォーカスしたコンセプトライブで、2015年から不定期開催されており今回で4回目となる。松尾はサイケデリックロック、アシッドフォーク、スウィンギングロンドン、ビートニクスや幻想文学といったレトロカルチャー/ムーブメントから受けた刺激を、作詞作曲だけでなくマーチャンダイズのデザインなどのさまざまなワークスに落とし込み、自身のSNSアカウントでもファッションやライフスタイルを発信し続けている。亀本はそんな松尾の世界観を現在進行のロックやポップという概念と融合させる、重要な役割を担い続けてきた印象が強い。すなわちこのパーティーには、二人のオールタイムアティチュードの深みを表現するという、ワンマンライブやフェス、対バンイベントとはまた異なる、並々ならぬ思いが込められているのだ。今回の会場はいつもの東京キネマ倶楽部ではなく、恵比寿The Garden Hall。キネマ倶楽部は、昭和のグランドキャバレーの風情を残した内装、キャパ600人という中規模ならではのパーティー感、鶯谷という都心から離れた立地など、あらゆる要素がGLIM SPANKYフリークスが集う『Velvet Theater』とマッチしていた。それだけにオールマイティーなホールでキャパも3倍近くに膨れ上がったThe Garden Hallでの公演に対して、期待と若干の不安もあったが、結論から言うと素晴らしいステージだった。松尾と亀本をサポートするバンドメンバーは、GLIM SPANKYを初期から支えるベーシスト、その静かな佇まいが若き日のビル・ワイマンと重なる栗原大、「私が言葉で伝えた抽象的なイメージを音にしてくれる」と松尾が紹介したキーボードの中込陽大、GLIM SPANKYの二人と兼ねてから交流のある同世代の売れっ子ドラマーで、サイケデリックという共通のルーツを持つ大井一彌(DATS / yahyel)。映像は『Velvet Theater』だけでなく『フジロックフェスティバル』などにも帯同していた、GLIM SPANKYのサイケデリックな世界観の演出には欠かせないOverLightShow~大箱屋~の大場雄一郎とVJ石榴が担当した。まさに盤石。松尾と亀本の精神の奥深くから湧き上がるイマジネーションがビッグなスケール感で鳴らされる。ステージ奥ビッグなスクリーン。そこに、60年代のリキッドライトを踏襲しつつ独自の技法でアナログの可能性を突き詰める大場と、デジタルからレトロもモダンも捉えた石榴のアシッドな映像が映し出され、バンドのサウンドに輪をかけて没入感とトリップ感を煽っていた。メンバーが静かに登場し、1曲目は「Velvet Theater」。アーシーなサイケデリックロックからブリッジでテンポアップして超自然的なサウンドスケープへ。そこからテンポを戻して亀本の泣きのギターソロに繋がる流れがたまらない。続いては最新アルバム『Into The Time Home』から「レイトショーへと」。R&Bやジャズとサイケデリックロックの融合によって生み出されるグルーヴに体が揺れる。松尾は肝の据わったハスキーボイスに注目が集まりがちだが、高音域の地声からファルセットへと移るグラデーションの繊細な美しさにもうっとりする。そして『アーヤと魔女 SONGBOOK ライムアベニュー13番地』収録の「A Black Cat」と、続けて横ノリを演出しフロアを温めた。「今日は最高のパーティーにして、最高な夜の世界にみんなで迷い込もうと思います」と松尾が話し、「NIGHT LAN DOT」へ。そしていよいよGLIM SPANKYのディープな世界観が炸裂する。大陸が音を上げているような大井のドラムと東洋的な亀本のギターフレーズ、松尾の砂漠に対する想像力が溢れる言葉とメロディのシナジーが凄まじい「MIDNIGHT CIRCUS」は、シルクロードの過酷な旅の途中に見る夢のようだ。続いて松尾がアカペラで<夜景画の山肌に月が顔出して>と風景を歌う始まりからサイケデリックな世界の深みへと誘う「闇に目を凝らせば」。リキッドライトというアナログパフォーマンスだからこその生命力や色彩と、VJのデジタルが描く神秘の世界が入り混じる映像もリンクして、東京都渋谷区の夕刻という感覚が飛ぶ。そしてタイトルからして挑発的なガレージロック「ダミーロックとブルース」、松尾のポエトリーリーディングから入るタイトル未定曲、柔らかでドリーミーなフォーク「AM06:30」と、一言で“幻想的”と言ってもさまざまなアプローチをみせる。そこから120BPMのディスコ「In the air」、さらにテンポと温度を上げた「吹き抜く風のように」と、サイケデリックに根差しながらフロアにダンスの魔法をかけた。大きな歓声と拍手とともにMCへ。松尾が「『Velvet Theater』なんでね、特別ですよ今日」と話していたように、GLIM SPANKYが8曲も立て続けに演奏することは珍しい。「ガーデンホールってね、こっからみるとわりとZeppっすね」と、ここでようやく亀本のアットホームな言葉が飛び出し観客からも大きな笑い声が。松尾はサブスクリプションサービス/プレイリスト時代に入り聴かれにくくなったアルバム曲について、「そうならないように1曲1曲を同じレベルの愛情で作っている」と話し、続けて「今回はそれをタイトルにしました。1曲1曲を、今まで以上に開けた感じの曲も作っているし、楽しく作っています」と、11月15日の発売に向けて絶賛制作中のニューアルバム『The Goldmine』への想いを語った。ガツンとくる“SPANKY”な楽曲も披露ステージは後半へ。GLIM SPANKYのオリジナル作品には未収録だが、「ずっと演奏したかった。アシッドフォークやバロックポップから影響を受けた趣味爆発の曲。『Velvet Theater』にはぴったりだと思う」と松尾が話し、『アーヤと魔女 SONGBOOK ライムアベニュー13番地』から「The House in Lime Avenue」を演奏。のどかな田園にサイケデリックの風が吹くようなナンバーで会場を優しく包み込む。松尾レミ(Vo/Gt)続いてコロナ禍で外出制限のあった時期に作った宅録音源がベースになっているR&B調の「こんな夜更けは」、夢見心地でほのぼのしたサウンドとアンセミックなサビのメロディのマッチングが印象的な「美しい棘」と、『Velvet Theater』な世界観から生まれた代表曲を続けた。そして亀本が「GLIM SPANKYのライブですから、ロックなやつ?(中略)やっぱやりてえよなっ。どうでしょうか!」とガツンとくる“SPANKY”なロックを演奏することを示唆し、「Breaking Down Blues」を演奏。そのキャリア中もっともヘビーなリフとビートが鳴った瞬間、フロアには揺れる頭と突き上がる拳の波が。これまでのパフォーマンスとのコントラストで松尾のエッジーなボーカルもさらに鋭さを増して聞こえてくる。そして最速の代表曲「怒りをくれよ」で場内のエモーションは爆発。爽快なロックンロールもボトムの低いブルースも、サイケデリックな色彩感も併せ持つ最新曲「Odd Dancer」でフィジカルな盛り上がりがさらに高まり、最後はライブでのビッグアンセム「大人になったら」。好きなことを突き詰める人たちの背中を押すような曲だけに、松尾と亀本のパーソナルな側面の強い『Velvet Theater』で浴びるとひとしおだ。亀本寛貴(Gt)アンコールはシンセベースを惜しげもなく鳴らして宇宙を描くようなサイケデリアと、ビッグスケールなダウンビートで20年代のGLIM SPANKYの新機軸を示し、目に見える盛り上がりという意味では速い曲が目立っていたライブにも風穴を開けた「Circle Of Time」。その魅力は健在。圧倒的に深く強く熱狂的な動きとムードに満ちたフロアは絶景だった。そして最後の最後は30代に入った二人が高校生の頃に作った曲で、2014年にリリースしたメジャーデビューEPのタイトル曲「焦燥」を演奏。ヘビーなブルース、ガレージサイケと疾走するオルタナティブロックが感情を絞り出したようなメロディとともにめくるめく展開する、GLIM SPANKYワールドの原石のような曲が、観客のテンションを引っ張り、フロアに激震を起こしてこの日は幕を閉じた。MCで亀本がフロアに向かって「『Velvet Theater』が初めてのGLIM SPANKYのライブだという人?」と訊くと、予想以上の数の手が上がったことに驚いていたが、それこそが今のGLIM SPANKYなのだと思う。二人は世界的にロックの存在感が薄まっていく10年代をロックバンドとして生きてきた。そんな時代の流れを見据えながらも決して迎合することなく、なおかつかつて隆盛を誇ったロックにしがみつくこともなく、自らの信じるロックと向き合い、その魅力を拡張させてきた。その結果生まれた多彩な作品群が、サブスクリプションサービスの台頭によりリスナーが多様化する時代にフィットしているように思う。ジャンル特化型のリスナーから、ロック云々関係なくただGLIM SPANKYが好きなリスナーまで、この場所に集まった人々の理由もさまざまだったのではないだろうか。だからこそ、11月15日にリリースされるニューアルバム『The Goldmine』が世の中にどう響くのか、GLIM SPANKYがこれからどのような道を歩むのか、楽しみで仕方がない。Text:TAISHI IWAMIPhoto:上飯坂一<公演情報>GLIM SPANKY『Velvet Theater 2023』8月5日(土) 東京・恵比寿The Garden Hallセットリスト01. Velvet Theater02. レイトショーへと03. A Black Cat04. NIGHT LAN DOT05. MIDNIGHT CIRCUS06. 闇に目を凝らせば07. ダミーロックとブルース08. タイトル未定曲09. AM06:3010. In the air11. 吹き抜く風のように12. The House in Lime Avenue13. こんな夜更けは14. 美しい棘15. Breaking Down Blues16. 怒りをくれよ17. Odd Dancer18. 大人になったらencore101. Circle Of Timeencore202. 焦燥<リリース情報>GLIM SPANKY 7thアルバム『The Goldmine』11月15日(水) リリース●初回限定盤(CD+DVD):5,280円(税込)●通常盤(CD):3,080円(税込)GLIM SPANKY『The Goldmine』初回限定盤ジャケットGLIM SPANKY『The Goldmine』通常盤ジャケット【CD収録内容】1. The Goldmine2. Glitter Illusion3. 光の車輪4. ラストシーン ※Paravi『恋のLast Vacation 南の楽園プーケットで、働く君に恋をする。』主題歌5. 真昼の幽霊(Interlude)6. Summer Letter7. Odd Dancer ※NHK放送技術研究所『技研公開2023』体験展示起用曲8. 愛の元へ9. 不幸アレ ※BS-TBS『サワコ~それは、果てなき復讐』主題歌10. Innocent EyesBonus track11. 怒りをくれよ (jon-YAKITORY Remix)【DVD収録内容】※初回限定盤のみ■『Into The Time Hole Tour 2022』@昭和女子大学 人見記念講堂(2022.12.21)・シグナルはいらない・ドレスを切り裂いて・褒めろよ・HEY MY GIRL FRIEND!!・It’s A Sunny Day・美しい棘・Breaking Down Blues・時代のヒーロー・LOOKING FOR THE MAGIC・Velvet Theater・レイトショーへと・怒りをくれよ・ワイルド・サイドを行け・愚か者たち・不幸アレ・NEXT ONE・Sugar/Plum/Fairy・形ないもの・EN ウイスキーが、お好きでしょ・EN By Myself Again・EN 大人になったら・EN Gypsy【封入特典】『The Goldmine』スペシャル応募企画Aコース:応募者全員「ライブ会場ミート&グリート」(メンバー直筆サイン入りフォトカード付)Bコース:応募者全員「メンバー直筆サイン入りフォトカード」Cコース:応募抽選「The Goldmine Release Party」ライブご招待 100組200名様※CDに封入のシリアルナンバーを使用することで応募可能。※“シリアルナンバー付応募券”は初回限定盤、通常盤共に初回生産分のみに封入いたします。※上記いずれかのコースを1つ選んでご応募ください。詳細はこちら:【店舗別先着購入特典】■TOWER RECORDS:クリアファイル(A4)■HMV:クリアポスター(A4)■Amazon.co.jp:缶バッチ(75mm)■楽天ブックス:アクリルキーホルダー(60×60mm)■UNIVERSAL MUSIC STORE:クリアファイル(A4)■その他一般店:ポストカード【注意事項】※一部お取扱いのない店舗・インターネット販売サイトもございます。詳しくはご購入ご希望の店舗へお問い合わせ下さい。※一部インターネット販売サイトでは特典付き商品のカートがございます。特典をご要望のお客様は詳細をご確認の上、特典付き商品をお買い求め下さい。※購入特典は先着の特典です。なくなり次第終了となります。※アルバムの初回限定盤または通常盤、いずれか1枚購入につき1つ特典を差し上げます。※オリジナル特典対象店舗では共通特典は対象外となります。※ライブ会場など、上記のインターネット販売サイト及びCDショップ以外でご予約済、特典をお受け取りの場合、店舗別購入特典は対象外となります。予約リンク:<ツアー情報>7th Album『The Goldmine』Release Tour「The Goldmine Tour 2024」11月30日(木) 東京・恵比寿LIQUIDROOM “The Goldmine Release Party”■2024年1月20日(土) 神奈川・横浜ベイホール1月27日(土) 高知・X-pt.1月28日(日) 愛媛・松山サロンキティ1月30日(火) 香川・高松DIME2月1日(木) 滋賀・滋賀U☆STONE2月3日(土) 鹿児島・CAPARVO HALL2月4日(日) 熊本・熊本B.9 V12月6日(火) 静岡・浜松窓枠2月9日(金) 千葉・柏PALOOZA2月10日(土) 福島・郡山HIPSHOT JAPAN2月15日(木) 鳥取・米子AZTiC laughs2月17日(土) 岡山・YEBISU YA PRO2月18日(日) 広島・広島CLUB QUATTRO2月20日(火) 京都・磔磔2月24日(土) 新潟・NIIGATA LOTS2月25日(日) 石川・金沢EIGHT HALL3月1日(金) 北海道・札幌PENNY LANE243月3日(日) 宮城・仙台Rensa3月8日(金) 福岡・DRUM LOGOS3月10日(日) 愛知・名古屋市公会堂 大ホール3月20日(水・祝) 大阪・NHK大阪ホール3月24日(日) 東京・日比谷野外大音楽堂3月30日(土) 長野・長野市芸術館 メインホール【チケット料金】■2023年11月30日(木) 恵比寿LIQUIDROOM〜2024年3月8日(金) 福岡DRUM LOGOSオールスタンディング:5,000円(整理番号あり/別途ドリンク代必要)■2024年3月10日(日) 名古屋市公会堂〜2024年3月30日(土) 長野市芸術館全席指定:5,500円※未就学児入場不可(小学生以上チケット必要)※学割あり(当日学生証提示で1,000円バック)チケット情報:()関連リンクオフィシャルサイト:オフィシャルモバイルサイト「FREAK ON THE HILL」:ユニバーサルミュージック オフィシャルサイト::::::
2023年11月09日ACIDMANが、ワンマンライブ『This is ACIDMAN 2023』を10月30日(月) に東京・Zepp Hanedaで開催。そのオフィシャルレポートが到着した。『This is ACIDMAN』とは何か?それは25年以上にわたるバンドの歴史を振り返り、「これがACIDMANだ」と自他ともに認める代表曲で構成される特別なライブだ。「セットリスト事前公開」「ファン投票1位楽曲披露」という仕掛けも、通常のライブとは異なる期待感をさらに煽る。そして2021年の初開催から3年目の今年、10月30日の東京・Zepp Haneda公演は、ACIDMANのメジャーデビュー21年となる記念日。フロアは満員、熱気は十分、祝祭の準備は万端だ。「This is ACIDMANへようこそ。最高の夜にしましょう!」─大木伸夫(Vo,G)わかっていても体が動く、心が躍る。1曲目から「to live」「造花が笑う」「FREE STAR」と、いきなりのキラーチューン3連発。佐藤雅俊(B)、浦山一悟(Ds)のリズム隊は鉄壁の安定感、そして大木伸夫の存在感は圧巻。最後までもつのか?と思うほど激しく叫び、弾き、多彩なエフェクターを操り、スリーピースの枠を超えた豊かな音像を紡ぎだす。しばらくACIDMANのライブは見ていない、という人に教えてあげたい。ライブバンド・ACIDMANのステータスは、未だかつてない高みへ到達している。Photo:西槇太一「自由に楽しんで、最後は一つになって、音楽っていいなと思う、そんな夜をみんなと紡げたら最高だなと思います。楽しんでいってください」続いてのセクションは、「Rebirth」から「スロウレイン」へ、さらに「赤橙」から「リピート」へ。軽やかに踊れる曲から、メロディアスで劇的な曲調を連ねて、オーディエンスを大きく包み込む。「リピート」のアウトロ、3つの楽器が激しくぶつかり溶け合う展開は、まさに音の化学反応と呼ぶにふさわしい。クライマックスは、アコースティックギターの爪弾きが、息を呑む劇的なロックバラードへと展開する「季節の灯」と、一人でゆっくりと歩きだすようなリズムが、力強い行進へと進化する「アルケミスト」だ。まばゆく白い光がステージから溢れ出す。シンプルで強い演出が、壮大な楽曲によく映える。Photo:西槇太一一つの音階、一つのコードから生まれた曲が、どうしてここまで豊かになれるのか。「彩-SAI-(前編)」も「Λ-CDM」も、「一つの響きから曲が生まれる」という大木の曲作りのプロセスを、目の前で辿り直すような興奮を味わえるインストゥルメンタル曲だ。「彩-SAI-(前編)」はゴッホを思わせる激しい色彩のアニメーションが、「Λ-CDM」では「素粒子を可視化したイメージ」という、動く抽象画のような不思議な映像がビジョンに現れる。何回見ても新鮮なのだから、初めて観る人にとっては視覚も聴覚も相当に刺激的なはずだ。ちなみに「彩-SAI-(前編)」は昨年行われたACIDMAN presents『SAITAMA ROCK FESTIVAL “SAI” 2022』のテーマソングであり、ACIDMANのステージを中心に構成された映像作品『SAI 2022 Live & Documentary FILM』のリリースも11月26日に決定した。併せてチェックしてほしい。Photo:西槇太一「広い宇宙の中で、あなたはあなたしかいない。それは奇跡だと思います。苦しい時には、自分は自分しかいないと思ってください。ただ生きてるだけでいい。毎日感謝しながら、この命を大事に生きていってほしいと思います」Photo:西槇太一僕らがいる銀河には3000億個の恒星があって、宇宙には銀河が二兆個あるんです。――またいつもの大木の宇宙話が始まったと、笑いも起きていた客席が、思わず引き込まれて静かになる。それもまたいつもの出来事だが、変わらぬメッセージを伝え続けることがACIDMANの大きな魅力。大木伸夫の創作の源泉である宇宙観と生命観を固体化した結晶のように、時代を超えて揺るぎない輝きを放つ、「ALMA」はそんな曲だ。ビジョンに映る広大な星空が限りなく美しい。続く「ファン投票リクエスト枠」で選ばれたのは、およそ8年振りに演奏するという「EVERLIGHT」。もちろん大好きな曲だが、「今ぐらい盛り上がると思ってた」と、当時はライブであまり手ごたえを感じられなかったと、歌い終えた大木が笑う。演奏される機会が減ってしまった楽曲がファンの手で蘇る、これもまた『This is ACIDMAN』ならではの名場面。Photo:Victor Nomoto - Metacraft後半戦に入る前、大木のMCは感動的だった。楽曲に合わせる映像に歌詞を乗せる、タイポグラフィという技法の専門家だったスタッフへの追悼の言葉。誰にでも必ず死は訪れる。だったら思い切り生きてみよう。――大木の気持ちを乗せた「世界が終わる夜」は、これまで聴いたどの「世界が終わる夜」よりエモーショナルで、ビジョンに現れては消えるタイポグラフィの一つ一つが心に沁みた。大木の声が感極まって震えているように感じた。珍しいことではないが、ここまで感情が入った姿は久々に見た気がする。たとえ同じセットリストでも伝わるものがまったく違う、This is LIVE、This is ACIDMAN。「たった一瞬の命。あなたのために、自分自身のために、もっともっと輝いてください」最後のセクションは、完全にスイッチが入った大木を先頭に、「夜のために」「ある証明」「飛光」の爆速ロックチューン3連発で完全燃焼。普通のライブならここでフィナーレだが、まだ重要な曲が残っている。「廻る、巡る、その核へ」だ。それは壮大な命の輪廻の物語を、短編映画に匹敵するハイクオリティのアニメーション映像と音だけで描き切る、約11分の黙示録的大曲。ACIDMANのライブを見たことがない、という人に教えてあげたい。この曲を体験するだけでもACIDMANのライブに来る意味がある。Photo:西槇太一「楽しい時間はあっという間。それでも人生は続きます。もっともっと上を目指していくので、これからもACIDMANをよろしくお願いします」アンコールは2曲。「式日」と「Your Song」の2曲を全力でやりきって、2時間半を超えるライブは笑顔と拍手の中で幕を下ろした。来年も『This is ACIDMAN』をやる計画があることと、今年は福岡と東京の2公演のみだったが、数を増やすことも考えていると、大木は約束してくれた。昔からライブに通い続けているファンも、しばらくご無沙汰していた人も、今ACIDMANに興味を持った新しいリスナーも、みんなに教えてあげたい。ACIDMANは進化し続けている。彼らのベストライブは常に、まだ見ぬ次のライブだ。Photo:西槇太一関連リンクオフィシャルサイト:モバイルサイト:::::
2023年11月08日11月5日(日) 東京・銀座の丸の内TOEIにて、映画『法廷遊戯』の先行上映が行われ、上映後に主演の永瀬廉(King & Prince)が舞台挨拶に登壇。King & Princeによる主題歌「愛し生きること」(LIVE TOUR 2023~ピース~STAGE Ver.)の映像も上映され、会場は大きな盛り上がりを見せた。大歓声に迎えられた永瀬。この日は3連休の最終日となったが、普段から土日祝日など関係なく仕事をしていることもあってか「祝日を意識することがあまりない……」とのことで「世の中、3連休だったんですか?」と驚いた表情を見せ「(映画を観て)良い締めくくりになったんじゃないかと」と笑顔を見せる。この日の舞台挨拶の模様は全国の映画館119館にて同時生中継されたが、“119”という数字に永瀬は「やばっ!すごっ!!」と驚愕しつつ「ありがとうございます」と劇場に足を運んだファンに感謝の思いを口にする。撮影は約1年前となるが、本作への出演が決まった時の気持ちや準備期間、撮影の日々について尋ねると「(自身が演じた)セイギは、過去にいろんなことを抱えていて、それが紐解かれていくんですが、その流れを原作でも読んで、(幼なじみの)美鈴や馨との距離感の部分が大事になってくるなと思ったのを覚えています」と振り返る。その美鈴を杉咲花、そして馨を以前も共演した経験のある北村匠海が演じているが「嬉しかったです。花ちゃんは『はじめまして』でしたが、いろいろな作品を見させていただいていて、一緒にお芝居できるのが嬉しかったし、匠海くんは(ドラマ『FLY! BOYS, FLY! 僕たち、CAはじめました』以来)4年ぶりの共演でしたけど、会った時、昔の関係性にすぐに戻れて、匠海くんは何も変わってなくて安心しました」と明かす。クランクインの日は、セイギが墓参りをするシーンでスーツ姿だったが「(ズボンの)チャックが開いていたのを今思い出しました(笑)」と告白。クランクイン時にスタッフ陣の前に立つ前に、自ら気づいたそうで、スタッフの前でチャック全開という危機は何とか回避できたそうだが「ムッチャ開いてて、危なかったです。避けられて良かったです」と安堵の表情。普段、チャックの部分がボタンになっているズボンを着用することが多く、しかも「めんどくさい(笑)」という理由で、ボタンを外すことなくズボンを着脱するようにしているとのことで「(チャックの)上げ下げをするクセがないので、スーツだと忘れるんですね」と弁明し、会場は笑いに包まれる。永瀬廉(King & Prince)一方、クランクアップの日は、高校時代の回想シーンで、電車の車両を借り切って撮影が行われており「他の電車の兼ね合いもあって、時間が決まっていて、ミスれない状況で、ヒリヒリした環境でやらせていただきました」と明かす。また、劇中で学生たちが模擬法廷のゲームに興じる“無辜ゲーム”のシーンについても言及。「無辜ゲームの撮影をした洞窟のシーンはメチャクチャ苦労しました。太陽も見えないので昼か夜かもわからないし、寒くて吐く息も白くて、どこを歩いても(洞窟内なので)景色も同じで、精神的にウッとなる部分もあったけど、みなさんと乗り切って印象に残っています。僕がいない無辜ゲームのシーンの撮影が押した時、洞窟の外の小屋が支度部屋になっていたんですけど、そこで待っている間の夜空の星のキレイさが忘れられないです。メッチャきれいで、芝生のスロープに寝転んで、おにぎりを食べながら星を見ていました」とふり返った。杉咲との共演シーンについては「美鈴との接見室のシーンは、美鈴が感情をぶつけてくるシーンなので、そこは何も言わずとも、お互いの空気感を感じて、待ち時間も距離を取りながら、良いバランスを見ながらやっていました。日を追うごとに阿吽の呼吸で相手の間とかもわかるようになっていって、それは撮影の醍醐味だと思いながらやっていました」と充実の表情を見せる。一方、北村との共演については「匠海くんの持っている雰囲気、空気感が妙に馨にハマっていて、初めて一緒にお芝居した時も、既に馨として見えていました。逆に学校内で(友人同士として)しゃべる姿は、普段の俺と匠海くんの関係性があってできたという手応えもありました」と述懐。さらに「今回、匠海くんとガッツリ共演できるのをメチャメチャ楽しみにしてたんですけど、蓋を開けてみたら、匠海くんの撮影は全部で5日くらいで、その内、一緒にいられたのは3日か4日だけだったんです。その3~4日はすごく濃い時間でしたけど、もしまた一緒にやる機会があったら、次はもっとガッツリやりたいし、もっと一緒にいて刺激を受けたかったです」とちょっぴり残念そうに語る。もし再び共演するならどんな役柄で?という問いには「前の作品も今回も大まかにいうと“友達”というくくりの関係性だったので、ケンカしたいです。バッチバチに殴り合いたいです!こないだ、匠海くんと遊んだ時に格闘ゲームをして、ボコボコにされたんです(苦笑)。それが悔しかったので、作品でボコボコにしたいです。(北村さんはゲームが)うまかったですねぇ……、僕もうまいほうだったけど、力及ばずだったので、作品でやっつけてやりたい!」とリベンジ(?)を誓っていた。そして、この日は主題歌としてエンドロールでも流れたKing & Princeの歌う「愛し生きること」の【LIVE TOUR 2023~ピース~STAGE Ver.】の映像が会場に集まったファンのために上映された。永瀬はこの楽曲の収録時、自ら録り直しを志願したという。OKが出ているにもかかわらず、自ら再収録を志願した真意について永瀬は「1回目の収録の音源を聴かせてもらって、歌い方も含め『やり直したい』というのがありました。主題歌──特にこういうトーンの作品ということで、いつものような、笑って楽しく歌う作品でもないですし、僕の息づかいが繊細に、より聴こえてくる楽曲でもあったので、もう一度、お時間を取っていただいて、録らせていただきました。『まだいけるな』『この歌で法廷遊戯をさらに良くできるな』と思ったのでお願いしました。普段はあまり言わないんですけど」と楽曲、そして映画に懸ける熱い思いを吐露してくれた。この日、上映されたステージ映像は、現在開催中のKing & Princeのツアー新潟公演の開始前に撮影・収録されたものだったが、白い衣装に身を包んだ永瀬と髙橋海人が幻想的な雰囲気の中で熱唱する姿が収められており、上映が終わると劇場は温かい拍手に包まれた。スクリーン横で見ていた永瀬も、初めて完成した映像を目にしたそうで「すごっ!なんか、本当にいい歌っすね!」と興奮した面持ち。「スタッフさんはわざわざ、この曲のパフォーマンスのためだけに映像も照明も準備してくださったんです。幻想的で感動的な雰囲気に仕上げていただいて、感謝の気持ちがより強まりました。素敵なものをありがとうございます」と感謝の思いを口にする。歌唱中にステージがせり上がり、白い紙吹雪が舞うという美しい演出もあったが「あそこ良かったですね!落ちサビの一番良い時に白い紙吹雪が舞って最高でしたよね。感動しました!」と満面の笑みで語る。演出については「海人と俺と振付師で相談して決めました」と明かし「せっかく巡り合えた楽曲ですので、これからも大切にしていきたいと思います」と語っていた。こうして、あっというまに舞台挨拶は終わりの時間を迎えたが、全国119館への生中継が「残り2分」との知らせを受けると、永瀬は「2分?カップラーメンも作られへん?ヤバいよ、ヤバいよ!どうしましょ?」と慌てつつ「もうすぐ『法廷遊戯』がみなさんの元に届きます。この作品は、自分が持ってる正義感とは何か?ということを含め、自分の中のものを貫くことの難しさや苦しさは共感できる部分だと思います。僕自身も含め、考えたことなかったようなこと──『自分の正義とは何か?』ということを、みなさんに問いかける余白をだいぶ残している作品です。何より主題歌によって、救いのある、主題歌の最後の1秒まで見逃せない作品になっていると思います。ぜひ観終わったら、友達と感想を言い合っても面白いと思います。今日は本当にありがとうございました」と完璧な挨拶!ここで「残り20秒」と知らされると「上手じゃなかったっすか?手を振る時間を残してたんで」と余裕の笑みでカメラに向かって手を振り、ファンの歓声を浴びていた。<作品情報>『法廷遊戯』11月10日(金) 公開関連リンク公式サイト:::
2023年11月06日10月28日(土)、大阪・大阪城野外音楽堂にて馬場俊英のワンマンライブ『野音でピース! 2023』が開催された。本公演は2007年の初開催以来、東京・日比谷公園大音楽堂を含め、“野音でピース!”シリーズとして定期的に開催してきたもの。2年前の5月にも予定されていたが、コロナ禍の影響で開催3日前に急遽中止に。今回、7年ぶりに大阪でのステージを迎えることとなった。“野音”は彼自身はもちろん、ファンにとっても聖地ともいえる場所。この日は指定席のチケットが発売初日に完売するなど、開催前から大きな話題を集めていた。待ちに待った本番は見事な秋晴れ!野音でのライブは雨の降る確率が非常に高かった彼だが、久しぶりの『野音でピース』に音楽の神様も祝福をしてくれているよう。会場では『大阪レイニーナイト』のCD&DVDも発売。大阪は2012年からラジオ局・FM COCOLOで番組DJを担当。現在は根本要(スターダスト☆レビュー)、KANとともに『Wabi-Sabi レディオ・ショー』(毎週土曜18:00~19:00)を担当するなど、大阪の地は彼にとって第二の故郷ともいえる場所。同曲はそんな大阪での活動やファンへの想いを綴ったもので、これまでライブでのみ披露されていたが、今回ついにパッケージ化されたとあって、観客は早くから会場に駆けつけ、音源や限定グッズを手にして嬉しそうな表情を見せていた。この日のライブに向け、馬場はSNSで「馬場俊英ライブ決定版」と綴っていたこともあり、セットリストはオールタイムからのセレクションで構成。また、ステージはツインギターをフィーチャーしたバンドスタイルに。馬場BABI一嘉(Gt)、神佐澄人(Key)、菊島亮一(Ds)、柳原旭(Ba)と、ライブでおなじみのメンバーに加え、10数年ぶりに後藤秀人(Gt)も参加。定時ちょうど、大きな拍手に迎えられるなか「みなさん、こんばんは。馬場俊英です」と、軽く挨拶を告げると、序盤は野外ライブでの定番曲からスタート。「明日へのフリーウェイ」から華やかなバンドサウンドが鳴るなか、伸びやかな歌声が空高く響きわたる。アコギを力強く奏でる「風になれ」ではバンドサウンドの心地よい音圧が体に響き、それに比例するように馬場の歌声も一層声量が増していく。ライブの定番曲なだけあって、観客もライブのテンションをばっちり理解していて、続く「クロノス」では手拍子の勢いもさらにヒートアップ。馬場も観客の熱量に負けじと、ステージにぐっと足を踏ん張って声高らかに歌い上げる。「草野球」では野球少年だった馬場ならではの、まるで青春映画や物語の一部を切り取ったようなストーリー性の高い歌詞に心を掴まれてしまう。嘘がないというか、日々の何気ない暮らしが思い浮かぶ言葉の数々。楽曲に自分自身を投影する人も多く、なかにはグローブを掲げるファンの姿も。誰もが嬉しそうな表情を浮かべて楽曲に聞き入っているのがとても素敵だ。「たくさんの拍手をもらって感無量です。心待ちにしていたライブだけど、(ライブを)やれば終わりが来るからもう寂しくて……」と、この日のライブを待ちわびていたと語る馬場。直前まで不安を抱えていたらしいが、それが全てぶっ飛ぶほどのたくさんの観客の姿を目の前にし、安堵の笑みを浮かべる。「神聖な場所にまた立てたことがうれしい。時間の許す限り、この空の下で風を感じ、一緒に音楽を楽しみましょう!」と、続いて披露したのは馬場俊英流のラブソングだ。特に印象が強かったのが「一瞬のトワイライト」。華やかで優しさに満ちたメロディと、感情を大いに揺さぶる歌声。太陽が沈み、会場が夜の色へと染まる美しい時間にぴったりとハマって、より一層楽曲の世界観が胸に染みこんでくる。かと思えば、「怪物達の古戦場」「ケムシのうた」といった、マイナーキーのロックナンバーを連投。ツインギターが唸り、迫力を増すバンドサウンドに観客は大興奮。馬場は低音を効かせた迫力ある歌唱で、雄々しさを見せつける。普段見せている温和な表情もがらりと変わり、ぐっと男らしい表情も見える。アップテンポなロックサウンドに乗せる、泥臭い歌詞も表現豊かで、改めて彼のソングライティングの多彩さに触れることができ、まだまだライブは序盤だというのにすでに満足度が高い。ライブ中盤には「ラジオのうた」を弾き語りで披露。バンド編成だけでなく、弾き語りでのステージも観たいという声に応え、これまであまり披露してこなかった楽曲をピックアップしたという。ラジオ局・FM COCOLOで交流のあるDJヒロ寺平氏の還暦を祝うライブのために制作したというこの曲。ラジオ好きだった少年時代に洋邦様々な曲に出会い、今ではラジオを通じて自身の楽曲や声を届けるようになった彼ならではのセレクトだ。「ファンのみんなから愛され、時を経てさらに力が沸いてくる曲もある。この曲も人と人を繋げてくれた曲」と、披露したのは「スタートライン~新しい風」。彼が描く詞世界はどれも喜怒哀楽の心情がとてもリアルだけれど、この曲はひときわ優しく、心に寄り添う作品。この曲に心励まされたという人はどれだけいるだろうか。じっくりと丁寧に想いを紡ぐ馬場、ダイナミックに迫力を増していくギター、琴線を揺さぶるキーボードの音色。ステージで奏でられる音のすべてに心が惹かれてしまう。夜と風の匂い、景色も重なり、この日のステージの思い出が色濃く残った人も多いだろう。ライブ後半は頑張る大人たちへエールを贈る、メッセージ色の強い楽曲陣で盛り上げていく。馬場曰く、“体を温める盛り上がりタイム”ということもあって、まずは「ラーメンの歌」で観客みんなで拳を突き上げ、一体感マシマシの大声で“ラーメン!”を叫ぶ。「陽炎」「向かい風は未来からの風」と、沸々と熱量を高めていく彼の声に呼応し、バンドのグルーヴはより一層ご機嫌になっていく。「一緒に集まって音楽ができることがうれしい」と、集まってくれた観客に改めて感謝の気持ちを伝える。そして今後の活動について「まだまだ頑張っていきたい。時代ごとにいろんな風が吹く。時の風に吹かれて道を見失うこともあるけれど、歩き続けたらどこかにたどり着くはず。今日より明日、明後日。来週、来月と良くなっていくことを信じて。いつかこの風を待っていた!と思える日がくるはず。この曲を歌う瞬間を待ちわびていた!」と、「勝利の風」からライブはラストスパートへ駆けていく。馬場は大開脚しながらギターをかき鳴らし、大熱唱。観客もともに歌い、拳を握りしめ、中には涙をにじませる人の姿も。それでも誰もがみんな素敵な笑顔を見せている。勢いにのった馬場は「もっといこう!」と観客を煽り、全身にその歓声を浴びる。本編ラストは名曲「ボーイズ・オン・ザ・ラン」。溢れる想いをぎゅっと詰め込んだ楽曲に魅せられ、会場いっぱいにピースサインが掲げられる。この景色を待っていたんだと、馬場も力強い歌声と破顔の笑顔を届ける。アンコールでは「野音でピース!」の定番になっているジェット風船が会場いっぱいに舞い上がった。コロナ禍の影響で風船を飛ばす行為に規制があったものの、エアポンプで空気を入れて飛ばすことで問題を解消。「明日が良い日に、そしてまたここで集まれるように。思い出の景色を作ろう!」と願いを込め、ライブはそのまま「君はレースの途中のランバー」へと続いていく。ピースフルな空気に包まれるなか、馬場の歌声はまだまだ強さを増していく。「最後まで」では手を大きく広げ、観客ひとりひとりに思いを届けるように歌う彼。歌詞にある「ここにいるよ♪」の言葉の通り、ステージに立つ彼の姿がひときわ大きく感じる。この日はダブルアンコールも飛び出し、1996年のデビューシングルのカップリング曲「恋をするなら~ムーンライトランデブー~」など、最後までピースフルなステージを展開。最終曲はアンコールの定番曲「君の中の少年」で渾身の歌声と、この日一番の大合唱を響かせ、全21曲、2時間50分にわたるステージの幕が閉じた。終演前、今後も2年に一度は『野音でピース!』を開催したいと熱意を語ってくれた彼。来年、再来年は2026年の活動30周年のメモリアルイヤーを迎えるために、精力的に活動していくことを約束。なかでも、2026年のデビュー日に大阪・フェスティバルホールでライブができれば……という話も飛び出し、思わず客席から歓喜の声が漏れ聞こえるシーンも。この日の『野音でピース! 2023』も今後の活動に向けてのキックオフイベントとなり、ここから先、新作のリリースやコンサートツアーも予定されているとのこと。歩みを止めることなく、精力的に活動を続ける彼の姿を追い続けたい。文=黒田奈保子撮影=今井俊彦
2023年10月29日2000年代生まれのベッドルームアーティスト・とたが、初のワンマンライブ『とた oneman live 2023 bloomin’』を10月24日(火) に東京・WWWで開催。そのオフィシャルレポートが到着した。2000年代生まれ、ベッドルームポップを奏でるシンガーソングクリエイター、とた。ピアノ、ギター、ベースなどの様々な楽器とDAWを駆使したセルフプロデュースによる楽曲制作に加え、ハッとさせられる物語性ある歌詞によって令和時代のポップミュージックを拡張する新しい才能だ。2023年10月24日、初のワンマンライブ『とた oneman live 2023 bloomin’』を、渋谷WWWにて開催した。創作の秘密基地だった自宅ベッドルームを飛び出してのワンマンライブだ。開演前からオーディエンスも、とたを見守るあたたかな雰囲気でいっぱいである。19時20分。バンドメンバー4人とともにステージにとたがあらわれた。枕元にあるようなベッドサイドランプを“パチっと”付けてキーボードへ。ライブのはじまりの合図だ。これは、SNSでの音楽発信を通じて拡散された彼女の音楽性を示すキーワード、ベッドルームポップをあらわしているのかもしれない。オープニングを飾ったのは「薔薇の花 (bloomin’)」。TikTokLiveで開催された『1st Online Live - Bedroom Session- 」でも1曲目に披露されたナンバーだ。まさにベッドルームから生まれた楽曲を、たくさんのオーディエンスの前でプレイするという感動。しかも本作はライブごとに楽曲とサブタイトルを更新していくスペシャルなナンバーだ。実は、開演前、入り口では今日のための歌詞が書かれた、本人によるスマホで手書きされた淡い紫色の花のイラストカードが配布されていた。続いて、「小説みたいな恋をしよう」という、粋な歌い出しが胸を弾ませてくれる「君ニ詠ム。」。跳ねるビート、きらびやかなサウンドと溶け合うように、透き通っているのに凛とした歌声が響き渡る。一言、「今日は楽しんでいきましょう!」と挨拶しながらクラップでフロアを煽り、軽快なギターポップ「ブルーハワイ」では、バンド編成のライブに見事に馴染むアグレッシブなとたを垣間見た。もちろん、まだライブ経験も少なく慣れていないはずだ。だが、ステージを楽しんでいる様子が伺えたのが微笑ましかった。第一声のMCは「今日は来てくれてありがとうございます。遠くから来てくれた人も。近くから来てくれた人も、初めてのワンマンライブに足を運んでくれた私にとって大切な人です。ありがとうございます。ライブのタイトルのbloomin’というのは、花が咲くという意味のブルーミングからとりました。今日は花に水をやるように音楽が流れて、明日からの生活になにか少しでも繋がるものがあったらいいなと思っています。楽しんでいってください!」と、落ち着きながらトーク。ギターをテレキャスに変えて、アッパーかつパンキッシュな「こうかいのさき」を披露。ギターロックナンバーが続いて「せーかいせかい」では、とたによる軽快なカッティングが印象的であり、裏声を使ったボーカリゼーションがせつなさを刺激する。歌詞にある、「花が咲きそうです」のフレーズは、ライブに通じる言葉であり突き刺さった。空気は一変して、アコースティックな「一弦」では、アコギ片手に、淡いサウンド感が紅葉色の照明とシンクロ。ギターの弦を擬人化しながら、自らの心情と重ね合わせる歌に心を震わされる。続いて、緑のギターへと持ち替え、ピアノのイントロダクションから配信されたばかりの新曲「コワレモノ」へ。泣きのせつなポップの披露だ。ライブで映えるギターポップチューン「あしたてんき」は、寝室=陽の当たらないベッドルームに閉じこもる繊細な心情を歌ったナンバーだ。誰もが知る“明日天気になーれ”というフレーズから展開されていく孤独と葛藤。しかしながら、ネガティブとポジティブの狭間をたゆたうポップセンスの妙。遊び心ある歌詞のギミックがとたの真骨頂を表現していく。ここで、ネット上ではショートバージョンが上がっていたが、未発表曲「押して」を初披露。ハンドマイク片手に「リリースしていない曲をやります。好きに踊ってください!」と語り、軽快なビートが心地よいディスコチューンでフロアを盛り上げる。ミラーボールが眩く、飛び跳ねながら歌うキュートな佇まいが愛らしい。メンバーがはけてロングなMCタイムへ。「今の曲はだらしない恋愛を歌った曲です。作ったのは、活動をはじめた最初の頃で。もしかしたら知っている人もいるんじゃないかなと思うんですけど、ライブで楽しめる曲になったらいいなと思っています。次に歌う曲は、いなくなってしまった人を思いながら、でも、少しだけ前を向こうとしている曲です」。新曲「右手のネイル」をキーボード弾き語りで歌い出す。没入感高い物語性のある切なくも狂おしいナンバーだ。ふたたびバンドメンバーがステージに登場。メンバー紹介へ。初ライブとなった『SUMMER SONIC 2023』から一緒の気心知れたメンバーだ。続く、「カメラロール」では、「楽しかった思い出を見返して、寂しくなっちゃう気持ちを歌った曲です。電車に乗りながら作ったので揺られている感覚を思い出しながら歌います」と、ハンドマイクで座りながら歌う。途中立ちあがり、エモーショナルに歌いあげていく。ライブ終盤。ふと、波の音が聞こえてきた。映像が投影され、本編ラストに奏でられたのは、TikTokやSNSを通じてオーガニックに広まった、とた代表曲である「紡ぐ」。当初はショートバージョンしかなかった本作。SNSでのリスナーの反応を鑑みて、追加の展開が増やされていったというフルバージョン。ギター片手に、今にも泣き出しそうな心情を吐露するせつなき歌。バンドならではのカタルシスを感じるエモーショナルな演奏に胸がいっぱいだ。「とたでした。また会いましょう。ありがとうございました!」深々と礼をして、ベッドサイドランプの電気を“パチっと”消してステージを去っていく。エンディングには、とたが撮影したであろうリリック付き映像とともに「寝言」がSEとして流れた。今晩のライブはとたの夢だったのかな?なんて思わせてくれるまさに、一期一会の夢見心地なベッドルームポップだった。Text:ふくりゅう(音楽コンシェルジュ)Photo:垂水佳菜<公演情報>『とた oneman live 2023 bloomin’』10月24日(火) 東京・WWWセットリスト1. 薔薇の花 (bloomin’)2. 君ニ詠ム。3. ブルーハワイ4. こうかいのさき5. せーかいせかい6. 一弦7. コワレモノ8. あしたてんき9. 押して10. 右手のネイル11. カメラロール12. 紡ぐSE. 寝言<リリース情報>とた「コワレモノ」配信中とた「コワレモノ」ジャケット配信リンク:関連リンクYouTube::::
2023年10月27日9月29日(金) 新代田FEVERにて、koboreとthe dadadadysによる『FREAKY & GROOVY』のvol.3が開催された。vol.1にはWiennersとtelephones、vol.2にはネクライトーキーとサバシスターが出演し、熱狂の化学反応を起こし大盛況のうちに幕を閉じたツーマンイベント『FREAKY & GROOVY』。3回目の開催となったこの日は、音楽性も年代も異なるが、特有のサウンドで支持を集めている2組がフロアをそれぞれ色に染め上げた。『FREAKY & GROOVY vol.3』の幕を開けたthe dadadadys。「怪獣のバラード」のSEで登場し、Vo / Gt 小池が「金曜日の夜のdadadadysのライブ is 無法地帯!どうにかなっちゃえ!」と言い放ち、Dr yuccoの力強いドラムサウンドから「光るまち」がスタート。1曲目からthe dadadadysらしさ全開で、オーディエンスは拳を突き上げ、歓声も鳴り響き、会場を盛り上げた。次の「(許)」では、小池がフロアにダイブをしながらオーディエンス1人1人に言葉を訴えかけているように見えた。曲が終わり、小池が上着を脱ぎ捨て「にんにんにんじゃ」、続けて「ROSSOMAN」を披露し、会場の熱が徐々に上がっているのが分かった。その後、小池が「koboreのみんなとは初めましてだけど、今日いっぱい言葉を交わして楽しんでいきたい」と胸の内を語り、「青二才」を披露。フロアのムードがガラッと変わり、会場の黄色い照明も楽曲を引き立てているように思えた。次に「あっ!」で再び力強いサウンドで会場の温度を上げたかと思いきや、teto時代の楽曲「忘れた」で落ち着いた雰囲気を作りしっかり曲を届けた。続けて「拝啓」でモッシュが起こり、会場のボルテージは一気に上昇。「らぶりありてぃ」でまたムードが一変し、心地よいサウンドについ体が自然と横に揺れ、手を上げるフロアとの一体感を魅せた。そして「9月になること」で熱気が最高潮の中締め括られた。そして、後攻のkobore。1曲目「爆音の鳴る場所で」からスタートし、ガラッとフロアの色を変えた。次に「HEBEREKE」「リバイブレーション」と爽快で疾走感のある曲が続き、フロアではモッシュが起こるほど冒頭から会場のボルテージを上げた。その後、「OITEKU」「るるりらり」を披露。歌詞はもちろんだが、Vo / Gt 佐藤が曲の間に放つ一つ一つの力強い言葉が胸に刺さる。曲が終わり、自己紹介をして「夜に捕まえて」「SUNDAY」を披露し、心地よく爽やかで光が差すようなサウンドでオーディエンスを魅了していく。MCでは、the dadadadys 小池とのエピソードで笑いを誘いパーソナルな部分も交えながら、「この2マンが面白そうだと思ってライブハウスに足を運んで来てくれたことは俺たちにとって何より嬉しいことです。」とオーディエンスに感謝を伝えた。その後、代表曲「ヨルノカタスミ」を披露しフロアをエモーショナルな雰囲気に包んでいった。そして「幸せ」でオーディエンスからの “幸せだ” コールでフロアとの一体感を魅せ、次の「君にとって」ではオーディエンスと目を合わせながらしっかりと曲を届けた。その後、音源未発表の新曲「熱狂」で会場のボルテージはマックスに。最後に「この夜を抱きしめて」を披露し、佐藤の熱いメッセージやGt/cho 安藤がバーカウンターでパフォーマンスをしフロアを掻き立てるシーンもあり、最高の夜を締めくくった。本当に何から何まで異なる2組だが、どちらも彼ららしい勢いのあるサウンドで会場を盛り上げ、冒頭からそれぞれの世界観に包み込んだ。誰もが予想しなかったこの2組の対バンこそがまさに “化学反応” と言うのだろう。3回目となる本イベントも大盛況のうちに幕を閉じた。Photo:石村燎平FREAKY & GROOVY vol.39月29日(金) 新代田FEVERセットリスト■the dadadadys1. 光るまち2. (許)3. にんにんにんじゃ4. ROSSOMAN5. 青二才6. あっ!7. 忘れた8. 拝啓9. らぶりありてぃ10. 9月になること■kobore1. 爆音の鳴る場所で2. HEBEREKE3. リバイブレーション4. OITEKU5. るるりらり6. 夜に捕まえて7. SUNDAY8. ヨルノカタスミ9. 幸せ10. 君にとって11. 熱狂12. この夜を抱きしめて関連リンクthe dadadadys 公式サイト: 公式サイト:
2023年10月26日“KISHOW”こと声優の谷山紀章と、ギタリストとして活躍中の“e-ZUKA”こと飯塚昌明による2人組ロックユニット・GRANRODEOが、全国ツアー『GRANRODEO LIVE TOUR 2023 “Escape from the Iron cage”』を開催中だ。ここでは、10月20日(金) に開催されたZepp DiverCity公演 DAY1の模様をお届けする。※以下、ツアーのネタバレが含まれているため、今後の公演に参加する人はご注意を。TVアニメ『文豪ストレイドッグス』第5シーズンのOP主題歌となった最新シングル「鉄の檻」を引っさげ、9月より全国6都市で現在開催中の全国ツアー『GRANRODEO LIVE TOUR 2023 “Escape from the Iron cage”』。その折り返し地点となる東京公演 DAY1が、2023年10月20日(金)、東京・Zepp DiverCityで行われた。「Escape from the Iron cage」=「鉄の檻からの脱出」と名付けられたツアータイトル、ツアーロゴにも、GRANRODEOからの特別な意味が授けられた。コンスタントにライブで実力を見せつけてきた彼らだが、全国ツアーとしては、2019年の『GRANRODEO LIVE TOUR 2019 “FAB LOVE”』以来の声出し解禁。約3年間、まるで何かに閉じ込められていたかのような閉塞感を、もみくちゃになってはしゃげるライブハウスだからこそ全て吐き出し、檻の中から蝶が羽ばたくように自由になろう!という想いが込められた。そんな想いをしっかりと受け止めたロデオボーイ&ロデオガールのはやる気持ち、抑えきれない熱気が、開演前からZepp DiverCityの隅々まで充満していた。開演時間の18時。セピア色の時計の針が巻き戻され、荘厳な鐘の音が開演時間に合わせて6つ打ち鳴らされる。シンフォニックなBGMの中、KISHOW(Vo)とe-ZUKA(Gt)、サポートメンバーの瀧田イサム(Ba)とSHiN(Dr)に大きな拍手で贈られ、迎えた1曲目は、GRANRODEOにしか出せないグルーヴを聴かせるルーズでゴージャスなロックンロールナンバー「Don’t worry be happy」だった。今回のツアーを意識して、ファンとの掛け合いや合いの手をリッチに盛りこんだこの粋な新曲に始まり、オープニングブロックにはコール&レスポンスがたっぷり楽しめる賑やかなナンバーが居並ぶ。KISHOWが客席にマイクを向け、手を振り上げて叫び、e-ZUKAがギターのネックを客席に突き出して煽るたびに、オーディエンスが突き上げる拳とジャンプもどんどん激しく、高くなる。今日は、そしてこのツアーは、俺たちに負けずにお前らも声出して、全身全霊思い切り騒ぐんだぜ!というメッセージが、彼らが選んだ楽曲によって、雄弁に語られていた。「東京こんばんは!お待たせしました、GRANRODEOです!」と挨拶したKISHOWは、前公演の大阪から約1カ月のインターバルがあったことに触れ、「今日が2回目のツアーの初日のつもりでやっていきたいと思います!」と笑顔で語る。その1カ月の間、「暇で寂しくなるかと思ったらそんなことはなかった!皆さんに会うのだけが唯一の楽しみでした。張り切ってやります!」とe-ZUKAが声を張ると、オーディエンスもうれしそうな顔を見せる。アルバムツアーと違い、今回のツアーはセットリストのバラエティに富んだチョイスも、お楽しみのひとつだ。これまで巡ってきた福岡、大阪の2DAYS公演はもちろん、東京2DAYSだけでも、初日と2日目ではセットリスト全20曲中、8曲が日替わりナンバー。今日はどの曲が聴けるのだろう?という楽しみもあり、各楽曲のイントロが流れた瞬間、オーディエンスからどよめきが起こる。しかも選曲されているレンジも広い。リリースから14年を経ているという事実を感じさせないグラマラスな「カナリヤ」や「BRUSH the SCAR LEMON」は今も輝きを失わず、腰に響くサウンドを響かせる。ミラーボールの演出も華やかな「Y・W・F」では客席に扇子が舞い、ステージではKISHOW、e-ZUKA、瀧田の3人がアドリブでダンスを披露。1曲ごとに纏う空気を変えながら、そのどれもがオーディエンスの体を揺らす。GRANRODEOが長いキャリアで培ってきたライブバンドとしての実力と、“愛され曲”の多さを物語る。イベントライブでは味わえない、ゆったりした愉快なMCで笑いを誘うのも、ワンマンツアーならでは。e-ZUKAが、KISHOWが楽屋で弁当を3つ食べていたと密告したりと、サポートメンバーの瀧田、SHiNとKISHOW、e-ZUKAが冗談交じりの和やかなトークを繰り広げていたかと思えば、楽器隊の3人がテクニカルなソロを聴かせるジャムセッションから、KISHOWのフェイクを会場が一体になって声で追い掛けるコール&レスポンスでさらに気持ちを盛り上げる。すかさず放たれるのは、重みのあるグルーヴを軽やかに熱く聴かせる「Treasure Pleasure」と「Punky Funky Love」。KISHOWの分厚い歌声が先導するキレのいいファンクも、GRANRODEOの得意技だ。今年3月の日本武道館公演を"Rodeo Jet Coaster"と命名していたGRANRODEOだが、とくに今回のツアーは、彼らのワンマンこそが、絶対にお客さんを飽きさせないアトラクションに次々と誘う、テーマパークそのものなのだと実感させてくれる。軽やかで華やかなライブ前半の熱狂の中で、楔のように激しく打ち込まれたエポックな楽曲。それはやはり「鉄の檻」だった。スクリーンに映し出されたのはモノクロの重い風景。そこに流れたアルバム『BRUSH the SCAR LEMON』に収録されていた現代音楽風のアバンギャルドなインストゥルメンタル「cage」は、次の楽曲への序章。続くBGMは次第にエスニックな匂いを立ち上らせる。ミステリアスなブルーのライトがステージを包み、新たな衣装に着替えたKISHOWとe-ZUKAが怒涛のような「鉄の檻」を放つと、一気にシリアスな空気が広がり、「背徳の鼓動」へと世界を繋ぐ。ダイナミックなバンドサウンドと、おそらく今年一番、絶好調を極めたKISHOWの歌声が、Zepp DiverCityを完全に支配した。全公演、1日ごとに異なる楽曲が歌われるアコースティックコーナーでは、トークも絶好調。e-ZUKAが流行のショート動画の話題をしたり、“ライブハウスのスタンディング席は背が低いと大変”という話題から、KISHOWが“前の人の背中の一点を見つめると必ずそこを掻く説”をテーマに見事な即興ソングを歌ったり、漫談さながらの楽しいMCに全員が大爆笑。しかし、いざKISHOWの歌とe-ZUKAのアコギだけで届けられた「delight song」が始まると、身じろぎもせず聴き入る客席は温かな静寂に包まれる。天上から降り注ぐような美しいメロディーと2人の息の合ったハーモニー。その緩急もGRANRODEOらしさだ。ひとときの安らぎの後には、またも激しい嵐が襲い来る。ここからは、振り上げた拳を下ろす暇などないハードチューンを連発。1曲1曲のイントロに再び歓声とどよめきが沸き上がる。日替わりナンバーだった「愛のWarrior」「The Other self」ではオーディエンスもKISHOWに負けじと大声を挙げながら、高々とジャンプ。「NO PLACE LIKE A STAGE」では全員が跳ね、Zepp DiverCityを波打たせた。自分も汗だくになりながら「Zepp、倒れてないですか?酸欠とか大丈夫?」とファンを気づかうKISHOWは、未だ元気なオーディエンスを見回して「すげーな、キミら!」「皆さん最高です!」と笑顔を見せる。e-ZUKAも「いや~楽しいですね!こんな歳までライブをやらせてもらえて、ありがとうね」と感謝し、「自分で作っていて自信のなかった曲もありますが、KISHOWさんという方に歌っていただいて、昔の曲も未だにライブでできる。本当に嬉しいことです」と自分達を振り返る。そして、こうしてみんなとライブができることが、「必然のようにも感じるけど、偶然が結集して今ここにいます」と語るKISHOW。「そんな偶然のひとつひとつ、1本1本のライブと出会いの大切さを、心から感じていきたい。そんな心持ちで作った曲です」と紹介されたのは、KISHOWが歌詞にロデオボーイ、ロデオガールへの愛を詰めたミドルバラード「どこかで知った偶然と」。KISHOWの想いを込めた歌声に導かれ、Zepp DiverCityに響き渡るアカペラのシンガロング。幾束にも連なったライトが客席に降り注ぎ、幾重にも重なった歌声が、光の中に溶けていった。止まないアンコールの声を受けとって、再びステージに登場した4人。鮮やかなライトを浴びて、“一番いいのはZepp DiverCityだろ!”とKISHOWが叫んだ「メモリーズ」が、もう一度、会場の熱を上昇させる。MCでは、ファンクラブ限定のアコースティックライブシリーズが『TEAM RODEO SPECIAL PROGRAM GRANRODEO Acoustics 2024 マッタナシ!プラグナシ!』と題して、2024年1月20日(土) に神奈川県民ホール 大ホールで開催されることが告知され、大きな歓声が挙がる。そして最高のクオリティで届けられた東京公演 DAY1を締めくくったのは、GRANRODEOのライブアンセムの1曲「modern strange cowboy」。ステージを走り回り、跳び回るKISHOW、e-ZUKAとバンドの熱は、激しくうごめくフロアを吹き抜ける熱い熱い風となって吹き上がった。新旧の名曲を詰め込んで、古参ファンから新たなファンまで全員を満足させるセットリストを届けている“Escape from the Iron cage”ツアーは、11月11日(土)・12日(日) は宮城・Sendai PIT、11月18日(土) は北海道・Zepp Sapporo、12月1日(金)・2日(土) はワンマンのファイナルを飾る愛知・Zepp Nagoya公演へとまだまだ続く。さらに、11月5日(日) にはTVアニメ『文豪ストレイドッグス』の主題歌アーティストの3組――GRANRODEO、SCREEN mode、ラックライフが初めて一同に介する対バンライブ『GRANRODEO LIVE TOUR 2023 "Escape from the Iron cage" meets 文豪ストレイドッグス』が東京・Zepp Hanedaで。12月10日(日) には海外でも注目を集めるASH DA HEROとの2マンライブが、神奈川・KT Zepp Yokohamaで開催される。キャリアを重ねて今もなお、“最高のライブ”を更新し続けるGRANRODEOのステージを、ぜひその目に焼き付けて欲しい。文=阿部美香撮影=キセキミチコ<ライブ情報>『GRANRODEO LIVE TOUR 2023 “Escape from the Iron cage”』11月11日(土) 宮城・Sendai PIT開場 17:00 / 開演 18:0011月12日(日) 宮城・Sendai PIT開場 15:00 / 開演 16:0011月18日(土) 北海道・Zepp Sapporo開場 17:00 / 開演 18:0012月1日(金) 愛知・Zepp Nagoya開場 17:00 / 開演 18:0012月2日(土) 愛知・Zepp Nagoya開場 15:00 / 開演 16:00【チケット料金】■Zepp会場1Fスタンディング:8,000円(税込 / 入場整理番号付)2F指定席:8,000円(税込)■仙台PITオールスタンディング:8,000円(税込)※枚数制限:一人1公演につき2枚まで※別途ドリンク代『GRANRODEO LIVE TOUR 2023 "Escape from the Iron cage" meets 文豪ストレイドッグス』11月5日(日) 東京・Zepp Haneda開場 17:30 / 開演 18:30出演:GRANRODEO / SCREEN mode / ラックライフ【チケット料金】1Fスタンディング:8,800円(税込 / 入場整理番号付)※枚数制限:一人1公演につき2枚まで※別途ドリンク代『GRANRODEO LIVE TOUR 2023 "Escape from the Iron cage" meets ASH DA HERO』12月10日(日) 神奈川・KT Zepp Yokohama開場 17:00 / 開演 18:00出演:GRANRODEO/ ASH DA HERO【チケット料金】1Fスタンディング:8,800円(税込 / 入場整理番号付)2F指定席:8,800円(税込)※枚数制限:一人1公演につき2枚まで※別途ドリンク代チケットはこちら:公式サイト:
2023年10月26日声優・アーティストとして活躍している逢田梨香子の全国ツアー・RIKAKO AIDA LIVE TOUR 2023『Act 2』が10月22日(日)、東京・豊洲PITでファイナルを迎えた。逢田は2015年『ラブライブ!サンシャイン!!』の桜内梨子役で声優デビューし、同作品のスクールアイドルユニット・Aqours(アクア)としても活動。2019年に待望のソロデビューを果たし、今年9月には自身初のミニアルバム『Act 2』を発表した。最新作には、今春のTVアニメ『スキップとローファー』のエンディングテーマや、彼女の憧れの存在である・大塚 愛が手掛けたナンバーなどをパッケージ。声出し解禁後初となるツアーで、“第二幕/第二章”の意味合いが含まれた本作を色鮮やかに表現した。最新作の幕開けを飾るプレリュード「Act 2」が流れる中、キャンドル風のスタンドライトが並んだシックなステージに立った逢田梨香子。<“そこ"から私の姿が見えてますか? >と問いかける「My Trailer」で、その光が彼女を照らしだせば、ムードたっぷりの華やかな舞台へと変化する。ペンライトを持った腕が一斉に振り上がり、互いに笑顔を見せ合うと、TVアニメ『戦×恋(ヴァルラヴ)』OPテーマ「for…」へと続き、透明感のある歌声に熱が帯びていった。ドラマティックに立ち上がった序盤を終えて「名古屋、大阪を経て東京に戻ってきました〜!なんと言ってもツアーファイナルですよ!楽しみにしてましたか?今日はいっぱい声出せますか!?」と投げかける。観客からの元気な声に嬉しそうな笑顔を見せ「コロナ禍で声出しなしのライブが多かったんです。今回はみんなの声をたくさん聴いて帰れたらなと思っています」と瞳を輝かせた。「せっかくなので……」と、フロアの右、左と仕切って「こっちのみんな元気!?」とコミュニケーションを楽しむ一幕も。「ちなみに、今日が私のライブ初めてって人は……?」と投げかけると客席からたくさんの手が上がり「いっぱいいる!嬉しい!」と歓喜の声を上げた。「これは私がいつもお伝えしていることなのですが、この曲はペンライトでこの色を振らなければ、ここは決まったコールが、といった決まり事はないので」と、自由に楽しんで欲しいことを語り「初めての方も楽しんでいただけるように頑張りたいと思います」と決意を伝えた。また、名古屋・大阪のライブでは本編中に衣装のことを話しそびれていたと逢田。「今日は衣装について話させて下さい!」と、くるっと一周し「すごくない!?かわいくない!?」と白を貴重としたアシンメトリーの衣装と、シルバーのベールに合わせた靴やヘアメイクをアピールすると「かわいい〜!」という声が響いた。リラックスした雰囲気の中、「良ければクラップしてください!」とTVアニメ『スキップとローファー』EDテーマ「ハナウタとまわり道」へ。軽快にステージを歩いたり、<駐車場の地域猫>で猫のポーズをしたりと、歌詞に合わせて表情をくるくると変えていく。一方、「天使の記憶」では、<“大好き”をありがとうこの思いはずっと宝物>と優しい表情を見せた。ハートウォーミングなミディアムナンバーを続けて披露したあとは、アコースティックパートへ。アコースティックパートが設けられていることは、本ツアーの特色のひとつである。ミニアルバムの中に『Act 2』の中にリアレンジした「ブルーアワー(another blue ver.)」が収録されていることについて触れ「その楽曲も今日できたらと思っています」と、名古屋・大阪公演に引き続きギターの高慶"CO-K"卓史、東京公演のみ、キーボーディストの西村 奈央が登壇した。「奈央さんは『幻日のヨハネ SUNSHINE in the MIRROR』も作曲もされていて、しかも私が歌っている挿入歌も……」と、リコ役として出演している『幻日のヨハネ SUNSHINE in the MIRROR』の第6話挿入歌「Hey, dear my friends」の作曲を担っていることを明かす。また、「名古屋・大阪で気づいたんですけど、(客席の)前のほうにいる方って、後ろの方々が見えづらくなってしまうから手を低めに上げてません?皆さんの優しさを感じてほっこりしていました。そういう心遣いがありがたいです。ありがとう」と伝えた。そうした温かなムードの中、逢田もハイチェアに腰を掛けてミニアルバム「Act 2」のため新たなアレンジでレコーディングした「ブルーアワー(another blue ver.)」を歌唱。ライトの光が星空を彷彿とさせ、日の出前に発生する空が濃い青色に染まることを指したブルーアワーへとつながる。<私を生きる>という結びの言葉が力強く響いた。大きな拍手が降り注ぐと「名古屋・大阪でもキーボードの音と共にお届けしていたんですけど、こうして生で弾いていただく楽器たち、素敵ですね。染みます」と感慨深げな表情。3年前に歌詞を書いた時は「ひとりぼっちで外を見て、こういう気持ちでいる人は他にもいるんだろうなと思っていたんですけど、今、たくさんの方に見守られながら届けることができて、温かな気持ちになりました」と語りかけた。曲によって景色を変えながら、これまでの歌に新たな息吹を吹き込んだアコースティックパートは、デビュー曲「ORDINARY LOVE」(TVアニメ『川柳少女』EDテーマ)、「Dearly」と、前に進んでいくことを歌った曲たちで締められた。「皆さん良かったらクラップしてください」とはじまった「Dearly」では、客席を見つめながら“ありがとう”の気持ちを乗せ、観客と心を通い合わせる。歌い終えると「みんなと距離が近づいて、思いがひとつになっている感じがした」と表情をほころばせた。自身の背中を押してくれた大塚 愛の提供曲ここからは後半戦。真っ赤に照らし出すライトがガラリと雰囲気を変え、最新作からミディアムバラード「うまれる」、初めて歌詞を書いた「Lotus」と、市川淳と共に手掛けた楽曲を連続で披露。彼女の人生観を感じる2曲を聴き手の心に寄り添いながら、力強く、しなやかに歌ってみせる。そして「ラストスパート、まだまだ声出せますか?」というアジテートと共に繰り出したのは、ライブと共に成長している「FUTURE LINE」。さらに変則的なサウンドで展開するポップナンバー「Dream hopper」とポップに弾け「もっともっと!」と観客をリードしていった。声色を少し変えて「最後の曲にいく前に、ミニアルバム『Act 2』を制作することになった経緯をお話したいんですけど……」と切り出した逢田。素直な心境、自身の葛藤を吐露していく。「アーティスト活動をはじめて5年目になるんですが、最初のうちは自己嫌悪に陥ったり、自分の力不足でやりたいことができなかったり……悔しい思いや、もどかしい思いをすることが結構多くって。今回こうして新しい作品を皆さんに届けられるということで、“第二章/第二幕”というテーマでミニアルバムを作ることになりました。正直ね、そんなにすぐに変わったりとか、何かができるようになったりって難しいかなって思っていたんですけど……もがきたい、ちょっとでも違う姿を皆さんに届けたいという気持ちで、楽曲を制作しています。この1枚とライブツアーを通して、新しい自分にちょっとでも出会えたかなって。大きく変わったということはないかもしれませんが、名古屋、大阪をまわったという事実はたしかにあって。みんなと一緒に少しずつ前に進めたのかなって感じながら、今回ツアーをまわっていました」改めてファンに感謝を伝え「みんなが私の言葉に元気をもらってます、と言ってくださるんですけど……私も人間なので、時には落ち込むこともあります。今回のミニアルバムの制作をしている時も、“もう頑張れないかも”と思うことも正直あって。自分と対話しながら、ギリギリのところを言ったり来たりすることもありました。そんな中で、次に歌う大塚 愛さんに提供していただいた曲に背中を押されて、まだもうちょっと頑張ってみようかなって。私が曲を通してそう感じたように、この楽曲を歌うことで、優しく皆さんの背中を支えられたら」と、曲に込めたメッセージについても言及した。そのまっすぐな思いを本編最後の「プリズム」に乗せる。会場全体のライトが明るく彼女を照らし出す中、<優しさも悲しみも吸い込んで越えていけ>と、その思いを高らかに届けてみせたのだった。熱烈な“りきゃこ”コールに応えて、ツアーTシャツとタータンチェックのロングスカートに着替え、再びステージに舞い戻るとバラード「I will」をスタンドマイクで熱唱。1st EP『Principal』に収録された初のバラードだが、イベント以外のライブで披露するのは初となる。「アーティスト活動をはじめて、歌うのは2回目なんです。この曲は大好きで、素敵な曲なんですけど、思うように歌えず、苦い思い出もたくさんありました。今回のツアーの中でお届けすることで、成長した姿を見せられたらなと思って」と、アンコール1曲目にセレクトした理由を明かした。ライブを振り返って「改めて、本当に良い曲が多いなって自分自身で思って。素敵な皆様に携わっていただき、こうして素敵な曲を作ることができているんだなって。感謝の気持ちがこもったツアーになりました」と、何度も“ありがとう”を伝える。MCでは次の曲「ステラノヒカリ」の振り付けについても解説。ちなみに今回のツアーから、練習中の歌声はファンが担当。「名古屋公演は急に振ったのでぐちゃぐちゃって感じでしたけど(笑)、名古屋が40点だとしたら、大阪は70点!」とのこと(笑)。「東京公演は100点を目指していきたいと思います!」とはじまった振り付け練習では「上手〜!」と驚きの声を上げた。「名古屋、大阪、東京合わせて100点!ありがとうございます〜!」と、そのまま「ステラノヒカリ」へ。まるで宝石のような輝かしい眩しさを放ちながら、<星の明かりが消え去って空を見失っても君がくれた輝きで 私は光り続ける>と力強く歌い、ブライトな景色を描き出す。その輝きが、さらにきらめく。「毎日頑張ってるみんなに!」とラストを飾ったのは、ミニアルバムのエンディングを彩ったポップナンバー「Brush Me Up!」。コール・アンド・レスポンスで湧き上がる中、自分らしさに溢れた歌詞にありったけの愛とエールを込め、とびっきりの笑顔を見せる。歌い終えると大歓声に包まれた。高慶"CO-K"卓史と西村 奈央、そして3公演に帯同したマニュピレーターの柳 俊彰をステージに招きファンとの記念撮影を楽しんだあと、最後の挨拶。涙で言葉に詰まると、ファンから「がんばれ〜!」の声が。目を押さえながら「皆さんのおかげで本当に楽しかったです。またこうして皆さんとどこかで逢えるように、私も走っていきます。ぜひついてきてくれたらうれしいです。素敵な作品を届けられるように、ここから頑張っていきたいと思っています!」と宣言した。名残惜しそうに最後の最後まで観客に手を振る逢田。ライブ中、“君”という言葉の時、彼女は必ずファンに視線を送りながら手を向ける。そしてその彼女のまっすぐな思いに応えるように、ファンも声を上げたり、ペンライトを振ったりする。その思いの交換に、何度もグッときた1日であった。また、シンプルなセットだったからこそ、表現者として強い意志を持って舞台に立つ姿が際立っていたことも印象的であった。アーティスト活動5年目というひとつの節目を迎え、自分の殻を打ち破ること、“越えていく”ことを全身で表現しながら、“越えていけ”というファンへのエールを送った逢田梨香子。今回のツアーでより自由に羽を羽ばたかせたことが、次の旅につながっていくのだろう。Text:逆井マリPhoto:高田梓<公演情報>逢田梨香子『RIKAKO AIDA LIVE TOUR 2023「Act 2」』セットリスト01. My Trailer02. for...03. ハナウタとまわり道04. 天使の記憶05. ブルーアワー(another blue ver.)06. ORDINARY LOVE07. Dearly08. うまれる09. Lotus10. FUTURE LINE11. Dream hopper12. プリズムEncore01. I will(※愛知公演 ME/大阪公演 Adolescence)02. ステラノヒカリ03. Brush Me Up!<リリース情報>逢田梨香子 ミニアルバム『Act 2』発売中●初回限定盤【CD+Blu-ray】価格:5,280円(税込)逢田梨香子『Act 2』初回限定盤ジャケット●通常盤【CD only】価格:3,630円(税込)※トレーディングカード ランダム封入(5種類)※全5種の中から1種類がランダムで封入:初回プレス分のみ逢田梨香子『Act 2』通常盤ジャケット逢田梨香子『Act 2』通常盤封入特典 トレーディングカード【CD収録内容】01.Act 2作曲・編曲:田中隼人02. My Trailer作詞・作曲:音布遊編曲:PRIMAGIC03. プリズム作詞・作曲:aio編曲:aio × hiroo04. ハナウタとまわり道作詞:六ツ見純代作曲・編曲:田中隼人05. ブルーアワー (another blue ver.)作詞:逢田梨香子作曲:市川淳編曲:PRIMAGIC06. うまれる作詞:逢田梨香子作曲・編曲:市川淳07. Brush Me Up!作詞:六ツ見純代作曲・編曲:田中隼人【Blu-ray収録内容】※初回限定盤のみ・ハナウタとまわり道(Music Video)・“Act 2”Behind The Scene配信リンク:関連リンクRIKAKO AIDA OFFICIAL MEMBER「Us」:(Twitter)::
2023年10月24日あべのハルカス美術館で2023年11月12日(日)まで開催中の「安野光雅展」。本展の企画者で、フリーキュレーターの林綾野さんによるオフィシャルレポートが届きました。安野光雅展 チケット情報1926年(大正15年)、島根県津和野町に生まれた安野光雅。画家になるのが少年の頃からの夢だった安野は23歳で上京し、美術教員のかたわら本の装丁などを手がけます。デビューは遅く、42歳のとき。教え子の保護者が福音館書店の編集者で、「おもしろい美術教員がいる」とその才能を見出しました。そして生まれたデビュー作が『ふしぎなえ』です。林綾野:安野先生が今までにない絵本をつくりたい、文字のない、絵を見る絵本をつくりたいとお考えになってできたのが『ふしぎなえ』です。エッシャーの世界観に影響を受けて、安野風不思議ワールドにアレンジしてできたのがこの作品(《ふしぎな絵》1968年)です。林綾野:この絵に安野さんの魅力がいっぱい詰まっています。まず2冊の本を見てください。クイーンのトランプを見ると、本の厚みは同じなのに、奥を見ると高低差が出来ていますね。そして、トランプが切り取られて本のプールのコース台になっている。絵の中のはさみとテープを使ってこの楽しい世界観が出来上がっていますが、この不思議な世界は四角の線で囲まれた本の世界だけの空間なんです。林綾野:こちらは初期三部作のひとつ、『ふしぎな さーかす』です。この絵(《ふしぎなさーかす》1971年)は、ゆがみ絵というだまし絵の一種です。絵のこちらから見ると...林綾野:こどもたちが紙の絵本を実際に手に取ってめくりながら、いろんな角度で楽しめるように、という工夫をこらしてあるんです。そして林さんからもう1冊、『蚤の市』をご紹介いただきます。林綾野:『蚤の市』は、ある市場の様子を朝から夕方まで追ったものです。本当にありとあらゆる物が売られていまして、安野さんの本もあるんです。私、本当にこの本が好きで、安野光雅さんにどうやって描いたんですか?って聞いたことがあるんです。「左上から描き始めて、どんどんどんどん描き進めて、最後は右隅でピタッと終わるように描くんだ。これが職人技で醍醐味なんだ」っておっしゃっていました。全ページがそのように描かれているんですね。安野さんのそういう姿を思い浮かべながら、この作品を見ていただきたいです。特別出品:『旅の絵本Ⅹ』からも原画2点を展示しています。
2023年10月18日フランスの現代サーカス界を牽引する演出家ラファエル・ボワテルと、日本のサーカスアーティストによる共同制作『フィアース5』(2021年初演)が10月27日(金)~10月19日(日)、東京・世田谷パブリックシアターにて上演される。初演から引き続き、日本のことわざ「七転び八起き」をテーマに、台湾からも新たなメンバーを迎えてリクリエイションされる本作の稽古の様子をレポート。メインキャスト5名が揃ったリハーサル初日世田谷アートタウン関連企画 フランス×日本 現代サーカス交流プロジェクト『フィアース5』何やら長いタイトルだが、東京・三軒茶屋の秋の風物詩となっている「世田谷アートタウン『三茶de大道芸』」という大道芸フェスティバルの関連企画として毎年サーカス公演が行われていて、今年は日仏の国際共同制作からうまれた『フィアース5』が上演される。「サーカス」と言っても、いわゆる大きなテントに象やクラウンが登場する伝統的なものではなく、サーカスのテクニックを用いながら、ダンスや演劇などを織り交ぜて創作される「アートなサーカス」である。明確なストーリーや台詞はないが、サーカスの世界に生きる若いアーティスト達が、失敗を繰り返しながらも成長し、最後には舞台に立つまでを描いた、いわゆる「バックステージもの」であることが明かされている。そんな『フィアース5』のメインキャスト5名が揃うリハーサル初日の稽古場に潜入した。出演者は全員で7名だが、役割に合わせて段階的に合流することになっており、本作は2021年に初演されているが、メインキャストから2名が入れ替わっている。この日に集合したキャストとそれぞれの役割は以下の通り。アクロバット・ダンス=浅沼圭エアリアル・リング=長谷川愛実エアリアル・ストラップ=アンブローズ・フー(胡嘉豪)ジャグリング=目黒陽介タイトロープ=吉川健斗また、この日は不在のセカンダリーキャスト(スタッフ役)は、山本浩伸と安本亜佐美が務める。長谷川、目黒、吉川が初演から続投。浅沼とフーが新メンバーとなる。コンテンポラリー・ダンサーとして知られる浅沼だが、長谷川やリハーサル・アシスタントの吉田と共演経験があり、初日からチームにも打ち解けている。また、唯一台湾からの参加となったエアリアルアーティストのフーは、不安よりも一緒にサーカスを創る仲間がいることの喜びの方が大きそうな様子。初演の過酷さを知る長谷川、目黒、吉川は、更に1週間前から稽古場に来て調整を行っていたらしく、稽古場内は既に準備万端の状態だ。リハーサル初日と言っても、構成・演出のラファエル・ボワテルと技術監督のトリスタン・ボドワンは、2018年に世田谷パブリックシアターでも上演した『When Angels Fall/地上の天使たち』のリヨン公演のため、まだフランスにいる。そのため、リハーサル・アシスタントの吉田亜希が事前にボワテルと打合せを行い、1~2週目のリハーサルメニューを作成・進行していく。まずは振付や段取りの確認、新メンバーへの引継ぎなどを中心に行い、数日おきにボワテルにリハーサル映像を送り、フィードバックをもらいながら進めていく。この日はメインキャスト5名が揃う初日ということで、ウォームアップも兼ねて吉田によるワークショップから始まった。簡単なゲームを通してお互いのキャラクターを知り、信頼関係を構築していく。身体と心が温まったところで、リハーサル開始。初日は、細かい振付や段取りが多い2シーンが行われた。5人(+本来はセカンダリーキャストの2名も)で行う複雑な動きを、初演の映像を観ながら一つひとつ確認していく。とはいえ、新メンバーも含め各自が、合流前に自主稽古を行ってきており、進行は非常にスムーズだ。大まかな動きを全員が把握したうえで、映像で確認できない細かい動きや、その動きが発生する理由などを初演からの続投メンバーが説明して補っていく。道具の転換も全て演技中にキャストの手によって行われ、シーンによっては動線や順番を間違えると大事故になりかねないため、映像で確認→声を掛け合いながらゆっくり動く→音楽に合わせて動く、という作業を不安がなくなるまで繰り返す。腑に落ちないところがあれば、話し合いをして動きを変えることもあるらしい。個々の超人的な動きばかりに目を奪われがちだが、あちらこちらから「頭がパンクする」という声が聞こえてくるとおり、これはなかなか頭をつかう作業も多そうだ。実際にはセカンダリーキャストが動かす器具や小道具、照明などもあるため、手が足りないところは舞台監督や吉田がカバーする。ボワテルからのメッセージリハーサル終了後には、フランスにいるボワテル、セカンダリーキャストの山本、安本とZoomを繋ぎ、顔合わせおよび打ち合わせを行った。ボワテルからは、・作品のテーマは「粘り強さ」であり、失敗しても根気よく続けることで成功にたどり着く姿を描いていること。また、それは、日本のことわざ「七転び八起き」からきていること。・自分が合流するまでに、振付と全体の流れを全員が覚えること。そのうえで、ボワテルが合流したあとに演出をつけていくこと。しかし、なぜ、その動きが発生するのか、各自シチュエーションを想像しながら取り組むこと。・自身が持つテクニックに合わせて、振付を変化させても良いこと。・伝統的なサーカスをオマージュした現代サーカス作品であり、作品の最後に着るサーカスの衣裳は、女性初のクラウン、アニー・フラテリーニから譲り受けた大切なものであること。などが熱い口調で伝えられた。ボワテルは「早く日本に行きたい」と何度も口にしていたが、今や、2024年のパリ五輪・パラリンピックに向けた大規模文化プログラム「カルチュラル・オリンピアード(Cultural Olympiad)」をも任されるようになった彼女の忙しさが、それを許さなかった。とは言え、ボワテルが来日したあとは、2週間みっちり劇場の舞台を使って稽古をするという。今日のリハーサルを1日覗いただけでも初演からの成長や変化が見て取れるこの作品が、本番までの1か月でどれだけ進化するのか楽しみだ。<公演情報>世田谷アートタウン2023関連企画フランス×日本 現代サーカス交流プロジェクト『フィアース5』構成・演出:ラファエル・ボワテル出演:アンブローズ・フー、浅沼圭、⻑谷川愛実、目黒陽介、吉川健斗/山本浩伸、安本亜佐美2023年10月27日(金)〜10月29日(日)会場:東京・世田谷パブリックシアターチケット情報:公式サイト:
2023年10月16日戯曲翻訳家たちが集い、2021年に設立されたグループ「トランスレーション・マスターズ」。ディレクター(理事)として、小川絵梨子、小田島創志、木内宏昌、小山ゆうな、髙田曜子、常田景子、広田敦郎が名を連ねる同グループの上演プロジェクト第2弾『エミリア・ガロッティ/折薔薇(おりばら)』が10月14日(土)~26日(木)に上演される。ドイツ古典にして最初の市民悲劇と言われる『エミリア・ガロッティ』を、約130年前の森鴎外による翻訳『折薔薇』と現代語翻訳を融合させた、実験的とも言える台本で上演するという同公演の稽古場レポートが到着した。『エミリア・ガロッティ/折薔薇』稽古場より『エミリア・ガロッティ/折薔薇』の稽古場見学に伺った。もともと、トランスレーション・マターズの活動、そして平原慎太郎さんのムーヴィングに興味があった。下調べは公演のホームページくらい、森鴎外(+トランスレーション・マターズ)の翻訳で、タイトルがかっこいいなという知識ほぼゼロの状態での参加だ。稽古場には脚をつけた木材(「椎」と呼ばれていたよう)がいくつか置かれていた。シンプルながら味わい深い存在感。これらがセットの役割を果たす。演出の木内宏昌さんが「では○場をやります」と言うと、キャストの皆さんが全員でヨイショと動かす。場面によって執務室の壁、椅子、ベッドなどのさまざまなものとして見立てられるのが面白い。多分、古材を使っているのだろう。これが噂のグリーンプロダクション(環境に配慮した演劇作品)か! と取り組みに感心してしまう。上手と下手にはキャストたちが座るボックスが並んでいる。稽古は冒頭の場面から始まった。ゴンザーガ(ガスタッラ公)が書記官ロータとやりとりした後、画工(画家)のコンティがやってくる。ゴンザーガはコンティが持ってきた肖像画の一枚、エミリアの美しさに夢中になり、そこからドラマが大きく展開する。コンザーガ役・村岡哲至の堂々とした品格ある佇まい、コンティ役・関根麻帆の芸術家らしい、しかしお仕えする身でもある振る舞いが見事だ。コンザーガは「……じゃ」とクラシックな口調で、それが時代、人物の立場や雰囲気を伝えていて何とも耳に心地よい。このあたりは森鴎外訳を生かしているのだろうか? 私は言葉の響きがその時代、物語へと誘ってくれる感じが好きなので、とても楽しく台詞を聞けた。休憩時間に、木内さんが見学者に「インタビューさせてください。言葉のゴツさは大丈夫ですか?」と、この古めかしい言い回しについて意見を求められた。特に海外物だと翻訳の時点で意味を伝えるのが先か、言葉の情感が先か、悩まれることも多いのだろう。個人的には、理屈以前の訳のわからないことを目撃できるのが演劇の魅力のひとつだと思っている。だが、観客を置いてきぼりにできない気持ちもよくわかる。そのバランスを探りながら、クリエイションは進むのだ。休憩後は場面は飛んで、ゴンザーガに仕える書記官マリネッリと賊のアンジェロとのシーン。古河耕史さんが演じるマリネッリはゴンザーガの前にいる時とは見え方が全然違い、おやおや? そんな人物の役だったのね? となった。ここで、木内さんがアンジェロ役の荒井正樹さんに、金貨袋を掌で受け取り、それをもう片方の手でつまみながら台詞を喋るようにと新たなリクエスト。「自分と道具の関係を途切れさせないで」とも。その場で初めてやった荒井さんは何度か試みた末、見学者に「ごめんなさい」と謝ることに。芝居では凄みをきかせていた荒井さんのチャーミングな素が垣間見られた。木内さんも「僕が急に言ったから、ごめんね」と言い、場は笑いに包まれた。いやいや、誰も謝る必要ないんです。稽古場は挑戦と失敗の場。逆にナイスチャレンジ! と拍手したい気分だ。最後は、キャスト全員による長くダイナミックなムービングのある場面。このムービングがあることで、諸々が腑に落ちる仕掛けといえるだろう。予想のつかない驚きがあり、口で言うのは簡単だけど身体で表現するのはかなり複雑に違いない。一通りやった後、木内さんが「キャスト同士でなければわからないことを話し合ってください」と、そんな時間を丁寧にとっていたのが印象的だった。見学といっても、キャストたちと同じ場、それもかなり近い距離から観ることができる。時には感想を求められたりして参加感もたっぷり。そうか、観客も作品の一部だもの。演劇をより身近に体験できるチャンス、楽しかったし本番への期待がガッツリ高まった。取材・文:三浦真紀<公演情報>トランスレーション・マターズ上演プロジェクト 2023『エミリア・ガロッティ/折薔薇』作: ゴットホルム・エフライム・レッシング翻訳:森鴎外+トランスレーション・マターズ翻案・演出:木内宏昌ムーブメント・ディレクター:平原慎太郎出演:上原実矩 / 菊池夏野 / 大沼百合子 / 関根麻帆 / 森島美玖 / 高畑こと美 / 齋藤直樹 / 村岡哲至 / 古河耕史 / 荒井正樹 / 近藤隼 / 片岡正二郎2023年10月14日(土)〜10月26日(木)会場:東京・すみだパーク シアター倉チケット情報:公式サイト:
2023年10月13日東京・天王洲運河一帯で開催された、国内最大級のアートとカルチャーの祭典「MEET YOUR ART FESTIVAL 2023」にて開催された森山未來がMCを務めるMEET YOUR ARTの公開収録・トークセッションに、10月9日(月・祝)、イスラエルの振付家インバル・ピントがゲストとして参加した。森山は、インバルが振付・演出を務めた「100万回生きた猫」(2013年)に出演以降、インバルが率いるダンスカンパニーに1年間参加するなど、ふたりは多くのクリエイションを共にしてきた。今回、演出・振付・美術を担当する舞台『ねじまき鳥クロニクル』の稽古のために来日中のインバルと、森山とのトークセッションが実現した。インバルは「母のような人でもあり、大きな愛に溢れた人」であるという森山。インバルへの最初の印象は、「振付家というより総合芸術的に作品を制作する。色々な視点で作品を構築していくところに刺激を受けた」と語ると、インバルも森山を「彼の血管には芸術が流れている」とその稀有な才能を絶賛した。「体をひとつの素材として捉えている」というインバルは、舞台『ねじまき鳥クロニクル』の創作についても、原作である村上春樹の同名小説を初めて読んだ時に、自分の体を駆け巡った衝撃をもとに作り始めたと語った。「主人公は、自分を外に置いて、その自分と対話する必要があると感じたので、ふたりで一役にすると直感的に決めた」とその一例を挙げた。(主人公の岡田トオルは成河と渡辺大知のふたりが演じる)「舞台に限定せず、様々な媒体での表現を積極的に試みてきた」と語るインバルに対し、森山は「アート作品を見せる真っ白な空間をホワイトキューブと呼ぶのに対し、劇場はブラックボックスと呼ばれている」として、「閉鎖空間に観客と演者が対峙し、虚構を共有することを前提とする」舞台芸術は、インバルのやりたい表現に繋がるのではと問いかけた。インバルは「観客は全てを再現しなくても、想像力で補ってくれる。観客と演者の間にある同意。それが舞台芸術の素晴らしさで、美しさ」だと頷いた。「年1で日本に来ているんじゃない?」と森山が話すほど、近年日本でのクリエイションが増えているインバル。日本のクリエイターは「献身的で、芸術と美への理解が深い」と称賛した。さらに「日本にはすでにコミュニティーができていて、例え言葉が通じなくても共通言語を持つ、ものづくりをするファミリー」がいると語った。そして「日本のクリエイターたちのように芸術を大切にすることは、このご時世には特に必要だと感じる」と付け加えた。11月7日(火)から始まる舞台『ねじまき鳥クロニクル』の稽古は、すでに1週間が経過。「再演でも、新たなデベロップメントがあるのでは?」と問う森山に対し、インバルは「再演とは作品を深めること」だとし、「(初演で)やるべきだったことが明確になってきている」と自信を見せた。「原作者に対して忠誠でありつつも、なぜ私がやるのかという意味、新しい側面を届けたい。才能豊かなアーティストたちが一堂に会し、色んなアートの形が結集した世界を、是非体験してほしい」と熱を込めて語った。文:吉田真由子
2023年10月11日