京都市京セラ美術館では、開館1周年記念展「コレクションとの対話:6つの部屋」を、2021年10月9日(土)から12月5日(日)まで開催する。コレクションとの“対話”2021年にリニューアル開館1周年を迎える京都市京セラ美術館は、 1933年に「大礼記念京都美術館」として開館した。その所蔵品は現在約3,800点に及び、とりわけ国内有数の近代日本画コレクションを誇るほか、洋画・工芸・版画についても名品を有している。「コレクションとの対話:6つの部屋」展では、現代美術家や建築家など、ジャンルや時代を超えたスペシャリストが、京都市京セラ美術館のコレクションと“対話”。6つの部屋で、同館の歴史や所蔵品に着想を得た新作の制作や展示空間の構成などを展開し、コレクションに新たな光を投げかける。青木淳:日本画下絵と建築が織りなす空間建築家で京都市京セラ美術館館長の青木淳は、これまで作家として作品を発表するのみならず、建築家として空間構成も手がけてきた。今回着目するのは、日本画の下絵。日本画の素描や下絵には、完成作に至るまでの過程が凝縮されている。そこに建築図面との類似性を見てとる青木は、本展では所蔵品の日本画下絵を用いた展示空間を構成する。宮永愛子:過去・現在・未来の出会い一方、ナフタリンや塩などを用いて時の可視化を試みるアーティスト、宮永愛子は、歴史ある京都の陶芸家の家系という自身の出自をたどり、過去の時間の新たな捉え方を提示。宮永自身の出自に深く関わる1900〜30年代の京都の工芸、幼少期より親しんできた京都市美術館の建築空間や建築部材にも着目し、過去・現在・未来が合流する場をつくりだす。同時代美術としての西洋絵画と日本の洋画などにも着目そのほか本展では、同館の洋画コレクションで重要な位置を占める黒田重太郎が師事した画家、アンドレ・ロートを取り上げ、同時代の美術としての西洋絵画と日本の洋画について考察。さらに、詩人や文筆家として活躍しつつ、同館の活動を支えた学芸職員、竹内勝太郎と加藤一雄の文章に着目して、所蔵作品に新たなアプローチを試みる。展覧会概要京都市京セラ美術館開館1周年記念展「コレクションとの対話:6つの部屋」会期: 2021年10月9日(土)〜12月5日(日)会場:京都市京セラ美術館 本館 北回廊1F住所:京都府京都市左京区岡崎円勝寺町124開館時間:10:00〜18:00(最終入場は17:30)休館日:月曜日(祝日の場合は開館)料金:一般 1,000円(800円)、大学・高校生 500円(400円)、中学生以下 無料※( )内は前売・20名以上の団体料金※京都市内に在住・通学の高校生・高等専門学校生は無料、障害者手帳などの提示者は本人および介護者1名無料(確認できるものを持参のこと)※前売券は、8月中旬から美術館ウェブサイトにて販売予定■対話者竹内勝太郎(学芸職員・詩人)、加藤一雄(学芸職員・文筆家)、アンドレ・ロート(画家)、青木淳(建築家・京都市京セラ美術館館長)、宮永愛子(現代美術家)、ひろいのぶこ(繊維造形作家)、髙橋耕平(現代美術家)【問い合わせ先】京都市京セラ美術館TEL:075-771-4334
2021年06月28日幅広いシーンでオンラインツールが活用されるようになり、非対面でのコミュニケーションが日常となっている昨今。次に繋がる対話力を身につけ、「この人ともっと話したい」と思われることができれば、距離はグッと縮まる。対話力のみならず、細かい気配りができる人も好感を持ってもらいやすい。そこでここでは、“対話”に注目した“オンラインの印象強化法”について、人材育成コンサルタント・片桐あいさんが伝授!1、「さん」と名前で呼びかけて質問する。質問をする時は、誰に問いかけているのかを明確にするために、名前を呼ぶのは、オンラインの基本。「名前を呼ぶ行為には、呼ばれた側に特別感が生まれるというメリットがあります。加えて、その場に“参加している”という自覚を促す効果も。個人的な話をするのが苦手な人に対しては、先に自分の話をして。相手にとって共感するポイントがあれば、話を引き出しやすく、また親近感を持ってもらいやすくなります。問いつめないよう口調に注意!」2、聞き取れなかったら「回線のせい」にして、あいまいなままにしない。相手の声が聞き取りづらかったり、回線が途切れたりするのは、オンライン上ではよくあること。そんな時、瞬時に対応できるか否かで人間性が垣間見られる。「こんな時は相手に恥をかかせず、もう一度気持ちよく話してもらうために、ネット環境のせいにするのが得策です。『さん、ここまでは聞こえていたんですが、回線の状態が良くなかったので、もう一度よろしいですか?』と低姿勢でお願いしましょう」。話を遮るのは勇気がいるが、早めの対応が吉。3、感想を後からメールして、アフターフォローを。相手と良い関係を築きたいなら、オンライン会議終了後のコミュニケーションが重要。メールなどでアフターフォローすると、距離が一気に近づく。「仲良くなりたい人やお世話になった人に、具体的な内容に伴って感謝の言葉を伝えると、印象が格段に良くなります。またオンライン会議中も周りの人の様子をうかがい、あまり会話できなかった人や、元気がなさそうだった人などにもメールを送ると、気にかけてもらえたと思い、絆が生まれやすくなります」4、キーフレーズを活用する。相手との距離を縮めたいなら、意識的に信頼してもらえるキーフレーズを覚えておくとよい。「これらのフレーズは、すぐに使えて効果があるものです。日常的に使用して、自分のものにしておくと、とっさの時にも言葉を発することができます。オンラインコミュニケーションは、言葉を選択しながら、さまざまな技法を試していくことで磨かれていき、どんな場面であっても理想的な関係を築きやすくなります。可能性を広げて、自分の存在感を高めましょう」・お任せください「任せる・任せられる」という関係性が構築しやすくなる。・ご安心くださいストレスの多いオンラインだからこそ、安心という言葉が心に響く。・期待しています相手への期待を言葉にすれば、それに応えようと努力してくれる。・伝わっています伝わっているかが見えにくいので、あえて言葉にすることも大切。・私が対応します瞬発力に加え、自分ならできることをアピールする上でも有効。・さんのおかげです名前を呼んで感謝を伝えることで、その人の存在意義が増す。・相談させてもらっていいですかオンラインだと相談しにくいからこそ、ほかの人と差をつけられる。・ご意見ください信頼から生まれる言葉。後日、事の顛末を報告することも忘れずに。片桐あいさん人材育成コンサルタント、産業カウンセラー。『オンラインコミュニケーション35の魔法』『これからのテレワーク』(共に自由国民社)など、著書多数。※『anan』2021年4月21日号より。イラスト・伊藤ハムスター取材、文・鈴木恵美(by anan編集部)
2021年04月17日書籍『うた/ことばラボ 「うた」と「ことば」についての14の対話』が本日4月14日に発売された。この度、本書の発売を記念して、5月30日(日)、東京・SHIBUYA TSUTAYA 8F イベントスペースにて、「『うた/ことばラボ 「うた」と「ことば」の 14の対話』出版記念 水野良樹トークショー」の開催が決定した。本書は、いきものがかりのリーダー、水野良樹が「聞き手」となって14人の音楽家・表現者と語りあってきた対話シリーズを書籍化したもの。時代が多様化し、音楽を取り巻く環境も変容する現在、さまざまな影響を受容しつつも「ことばと伴走するおと」「おとを導くことば」はいまだ人々の心を豊かさへと誘う。日日、「うた」と「ことば」に向きあい、表現を紡ぎだす実作者でもある水野良樹は、14 人とどう対峙し、それぞれの創作の核心に迫るのか。対話の相手は、水野の問いかけにいかに手のうちを明かし、共振していくのか。なお、新藤晴一(ポルノグラフィティ)との顔合わせは、本書の出版を記念して行われた書籍限定の特別対話となる。イベントゲストは関取花。本書にまつわるエピソードをはじめ、タイトルにもなっている「うた」「ことば」などについてトークを展開予定。限定40名が参加可能です。受付は、本日 4月14日(水)20時~5月23日(日)23:59 まで、Yahoo!ショッピング SHIBUYA TSUTAYA 店にて。なお、イベントは新型コロナウイルス感染拡大対策を講じた上で行われる。「『うた/ことばラボ 「うた」と「ことば」についての14の対話』出版記念 水野良樹トークショー」●日時:2021年5月30日(日)●会場:SHIBUYA TSUTAYA 8F イベントスペース●時間:14:00 スタート(受付 13:00)●対象商品 『うた /ことばラボ 「うた」「ことば」についての 14 の対話』価格 1,700 円 ※別途送料がかかります●販売期間2021年4月14日(水)20:00~2021年5月23日(日)23:59 まで※定員40名に達した時点で受付を終了致します●販売受付URL参加券のお申込みは Yahoo!ショッピングのみでの受付となります。※商品は、発売日以降に順次発送させていただきます。※上記サイト内の「イベント開催に際しての大切なお願い」を必ずすべてお読み頂き、参加をお願いいたします。【コンテンツ】●第一章 あたらしい才能と「ことば」に向きあう(1)中村佳穂との対話(2)関取花との対話(3)吉澤嘉代子との対話(4)塩塚モエカ(羊文学)との対話(5)橋口洋平(wacci)との対話●第二章 「ことば」の魔法についてひもといてみる(6)KREAVA との対話(7)松井五郎(作詞家)との対話(8)尾形真理子(コピーライター)との対話●サウンドマスターに「ことば」の不思議を聞きにいく(9)Kan Sano との対話(10)本間昭光との対話●同時代の伴走者と「ことば」を交わしあう(11)一青窈との対話(12)秦基博との対話(13)堀込高樹(KIRINJI)との対話●出版記念 特別対話新藤晴一(ポルノグラフィティ)との対話【商品概要】『うた/ことばラボ 「うた」と「ことば」についての14の対話』定価:1,700円(本体 1545 円+税)発売日:2021年4月14日(水)仕様:A5 判 224P 4C1C / 無線綴じ販売場所:全国書店、ネット書店、CD ショップ、いきものがかりライブ会場ほか予約:Amazon: 楽天ブックス: ほか公式サイト:
2021年04月14日12月23日(水)に発売されるヒップホップグループ・RHYMESTERの初めての書籍『KING OF STAGE ~ライムスターのライブ哲学~』の発売記念イベントと、サイン本などの購入特典が決定した。本書は、RHYMESTERが結成30周年を記念して行った全国ツアー「KING OF STAGE VOL. 14~47都道府県TOUR 2019~」と並行して「ぴあアプリ」にて連載した「RHYMESTER:One for the Road~47 都道府県ツアー日記~」を中心に、メンバーインタビュー、対談、鼎談などを新たに追加して書籍化。RHYMESTERが日本の音楽シーンで生きながらえてきた理由や、日本でヒップホップを表現することに向き合ってきた試行錯誤の歴史など、RHYMESTERの本質であるライブに関する哲学のすべてが詰まった一冊となっている。本書の発売を記念し、新型コロナウイルス感染拡大対策につとめたメンバーとの対面イベントを企画。タイトルはRHYMESTER自身が考案した『脱・濃厚接触!ライムスターがこんな時代なので、サインの代わりと言ってはなんですが、あなたの目の前でオリジナルスタンプを押し、楽しいひとときを演出する会。略して「ライムスター・スタンプ会」』。イベントでは、対象書籍にメンバーのオリジナルスタンプをそれぞれサイン代わりに押印する。受付は、明日12月15日(火)21:00~2021年1月24日(日)23:59まで。Yahoo!ショッピングSHIBUYA TSUTAYA店にて受付を行う。さらに、全国各地の書店にて数量限定でサイン本を発売することが決定。ジュンク堂書店池袋本店1階で行われる「アトロクブックフェア2020」でも本書を販売する。また既報の通り、タワーレコードで予約・購入者には限定「オリジナルステッカー」がプレゼントされる。【出版概要】『KING OF STAGE ~ライムスターのライブ哲学~』発行:ぴあ株式会社著者:RHYMESTER / 高橋芳朗発売:12月23日(水)定価:1,818円+税書店、ネット書店にて販売<コンテンツ(予定)>・ライムスター47都道府県ツアーグラビア(Photo by cherry chill will)・はじめに・ライムスター2万字インタビュー「King of Stageへの道」・RHYMESTER: One for the Road〜47都道府県ツアー日記〜・Mummy-D「チーム論」・DJ JIN×DJ松永(Creepy Nuts)×DJ DAISHIZEN「ライブDJ鼎談」・宇多丸×村上てつや(ゴスペラーズ)「対談:ライブ哲学」・ライムスター「King of Stage」全スケジュールほか<購入特典>(1)サイン本販売下記書店にて、冊数限定でサイン本を販売。青森八戸ブックセンター / 東京青山ブックセンター本店 / 東京文禄堂高円寺店大阪心斎橋スタンダードブックストア / 大阪ブックファースト梅田2階店ほか※サイン本取扱店舗は、ライムスターHP等で随時更新(2)タワーレコードステッカータワーレコード特典店舗、オンラインで予約・購入された方に先着で、限定「オリジナルステッカー」をプレゼント。オンライン予約: (3)イベント開催ライムスター初の書籍『KING OF STAGE ~ライムスターのライブ哲学~』の発売を記念し、2021年1月31日(日)にSHIBUYA TSUTAYA 8Fイベントスペースにて、発売記念イベントを実施。詳細は下記をチェック。<「アトロクブックフェア2020」>「アトロクブックフェア2020」にて『KING OF STAGE ~ライムスターのライブ哲学~』が販売決定!期間:12月22日(火)〜2021年1月24日(日)まで(予定)書店:ジュンク堂池袋本店(1階ブックタワー)内容:「高い本から売れていく...!?」と書店界に激震が走ったブックフェアが奇跡の復活!!TBSラジオ「アフター6ジャンクション」が11月にお送りした「アトロク推薦図書月間」でゲスト推薦人が紹介した本や関連書籍がジュンク堂池袋本店(1階ブックタワー)に集結!推薦人:ライムスター・宇多丸、宇垣美里、玉袋筋太郎、矢部太郎、Aマッソ加納愛子、和田彩花ほか。【発売記念イベント詳細】◆『脱・濃厚接触!ライムスターがこんな時代なので、サインの代わりと言ってはなんですが、あなたの目の前でオリジナルスタンプを押し、楽しいひとときを演出する会。略して「ライムスター・スタンプ会」』概要:SHIBUYA TSUTAYAの特典イベント専用サイトから、対象書籍を購入した方の中から先着200名にイベントの参加券が発行される。当日は購入した書籍と整理番号が必要。イベントでは新型コロナウイルス感染拡大対策のため、書籍にライムスターメンバーがイベント・オリジナルスタンプを、それぞれがサイン代わりに押印する予定。日時:2021年1月31日(日)会場:SHIBUYA TSUTAYA 8F イベントスペース時間:15:00スタート(整理番号順入場、番号によって集合時間が異なる)イベント告知ページ: 参加人数:先着200名様対象商品:『KING OF STAGE ~ライムスターのライブ哲学~』発売日:12月23日(水)本体価格:1,818円+税 ※別途送料が必要販売期間:12月15日(火)21:00~2021年1月24日(日)23:59まで販売受付: ※購入枠がある場合のみ、イベント当日にSHIBUYA TSUTAYA 6F BOOK売場レジカウンターにて当日券を販売。【ぴあアプリ連載<全48回>】「RHYMESTER:One for the Road~47都道府県ツアー日記~」常にシーンの先頭に立ってジャパニーズヒップホップを牽引し続けてきたライムスターも2019年でついに結成30周年。そんな大きな節目の年にキャリア初の47都道府県ツアーを敢行中の彼らが、日本全国津々浦々を巡りながら旅の所感を語るダイアリー型道中記。一見たわいないツアーのよもやま話の背後から浮かび上がってくる、「キングオブステージ」のライブ哲学、そして30年の長きにわたって第一線に踏み止まってきた3人の「辞めない理由」。PC版紹介ページ: 【その他リリース情報】ライムスター結成30周年記念ツアーLive Blu-ray&DVD(2枚組)『KING OF STAGE VOL. 14 全国47都道府県TOUR 2019』発売中◆Blu-ray(2枚組)5,800円+税◆DVD(2枚組)5,000円+税
2020年12月14日旬を揚げる、大衆天ぷらの魅力食材の味を最大限に引き出す“揚げ”の技新しい食材を天ぷらにすれば、新しい哲学が生まれる旬を揚げる、大衆天ぷらの魅力かつては大衆食として親しまれた料理も、歴史を経るごとに技が磨かれ、哲学に溢れた食文化となることがある。江戸前天ぷらもその一つ。江戸前天ぷらの特徴といえば、江戸前=東京近郊で獲れた魚介類をごま油でカラッと揚げること。油のかぐわしい風味と、季節によって変わる食材から旬を味わえることが何よりの魅力だ。「江戸前天ぷら」を受け継ぐ店は東京の街に数多くあるが、ひときわ名店の呼び声高い店がある。それは“天ぷらの神様”と呼ばれる料理人・早乙女哲也さんがはじめた【みかわ 是山居】だ。1976年に日本橋・茅場町で店を開いて以来、各界の著名人たちの舌をも喜ばせてきた。店内はカウンター席のみ。谷口さんの揚げの技術を目の前で眺めることができるそんな【みかわ 是山居】から独立した店【天ぷら やぐち】が人形町にオープン。22年間もの年月をみかわで過ごした店主・谷口ー樹さんによる、江戸前天ぷらのコースをいただくことができる。「修行したのは“みかわ”だけ。生え抜きと言えばいいのか、食材選びから揚げ方、仕上がりのイメージに到るまで、“みかわ”での教えが胸の奥にいつもあります」そう語る谷口さんの天ぷらは、食材ひとつひとつとの向き合い方にも哲学があった。食材の味を最大限に引き出す“揚げ”の技揚げる具材はどれも新鮮な魚介類“みかわ”での教えは数多くあれど、美学として強くあるのが、揚げる前に細工を施すことはなく“揚げ”と言う調理のみで食材の味を引き出し、仕上げることだ。そのために、食材によって捌き方や打ち粉の量、揚げ時間を考える。「みかわでもそうでしたが、揚げる前から『このエビはこう仕上げよう』という完成形が頭の中にあります。そこまで持っていくために、逆算して調理のやり方を考えていくんです」身と頭を別々に揚げたエビの天ぷら例えば、エビは他の食材よりも高い温度で揚げる。水分量が多いので、油の中でしっかりと脱水させるためだ。「衣にも気をつかいます。理想的な衣って顕微鏡で見ると網の目状になっていて、その間から食材の水分が抜けてカラッと揚がるんです」。一方、水で溶いて時間が経つとどうしても粘り気が出る。「天ぷらは脱水作業」との言葉の通り、谷口さんが仕上げた天ぷらはどれも軽く、衣をほとんど感じさせない。薄い衣を纏ったエビの頭からは、エビ本来の風味が強く香り立つ。少しの塩でいただけば、ボイルや鮨とは全く違ったエビの味が体験できる。新鮮な大ぶりの穴子をそのまま揚げるそして、人気の天ぷらのひとつが、3枚おろしをそのまま揚げる大ぶりな『穴子』だ。「穴子は皮目と身の間に独特のクセがあるんです。これを、揚げ具合によってクセではなく“香ばしさ”に変えられるかが勝負です」。揚がった穴子の身はホロホロと細かい食感となり、その変化に驚かされる。無論クセはなく、皮目の香ばしさもアクセントだ。皿に載せ、鉄箸で切った時に揚がる湯気を眺めるのはなんとも食欲をそそる体験だ夜には、こうした天ぷらが8品のコース(12,000円・税別)で楽しめる。提供する間、谷口さんは、1900200℃の温度に熱した油の中に次々と食材を入れ、それぞれの最適な秒数をカウントしながら揚げ上がりを待つ。もちろん、お客さんとの会話にも応じながら。新しい食材を天ぷらにすれば、新しい哲学が生まれる料理人の谷口一樹さん「良い材料を揃えたら、そこそこの天ぷらは作れる。でも、江戸前天ぷらの哲学は“どううまくできるか”にあるんです」そう語る谷口さんは、天ぷらに使う新しい食材の探求にも強い関心を持つ。【みかわ 是山居】で学んだ天ぷらの哲学は、語りつくせるものではないという。「食材がひとつあれば、その食材に対する考え方があります。全ての食材に対して哲学があるわけですから……。全て話そうと思ったら、ここじゃなくバーにでも行かないと(笑)」食材ごとに哲学がある一方で、谷口さんは「天ぷらにする意義のある食材は、限られている」と語る。全ての調理の中で天ぷらが一番向いている食材でないと、“揚げる意味”はないと言う。「ただ、魚を獲る海の状況も僕が修行をはじめた20数年前とは変わっています。昔はよく使っていたのに、今では見なくなった魚だってありますね」。『ししゃも』の天ぷらは、身はホロホロと細かく、独特の旨味が感じられるだからこそ、新しい食材を探求するのだと言う。秋のコースに提供される『ししゃも』は、修行時代のみかわでは扱うことのなかった食材だ。「これまでのやり方をただ単に踏襲するだけじゃなく、自分で開拓していかないと」。それは江戸前天ぷらの流儀を受け継ぐためでもあり、そこにまた新しい哲学が生まれる。伝統ある天ぷらの技術を受け継ぐ谷口さんの元に通えば、新しい料理を体験することができるかもしれない。【天ぷら やぐち】店舗情報住所:東京都中央区日本橋人形町2-9-7 大江戸アクセス2-1F電話:03-3527-3701アクセス:東京メトロ日比谷線「人形町」駅 徒歩4分、都営浅草線「人形町」駅 徒歩4分
2020年11月14日昨今のベストセラーリストに必ず食い込んでいるのが現代の哲学書や思想書。そのブームを分析し、おすすめの本を選書してくれたのは、2015年からロングセラーを続けている『哲学用語図鑑』の編集者で自著も持つライターの斎藤哲也さん。クールな思想家たちが牽引する、イケてて面白い哲学&思想書に注目。「日本の将来の不透明さがもたらす危機感や不安から、物事を根本的に問い、考えようとする書物に手を伸ばす人が多くなったように感じています。メジャーなビジネス誌が哲学特集を組むのもその表れでしょう」昨今の思想家たちはイケメン揃いなところもハートをくすぐられる。「最近は、ハラリやガブリエルのようなテレビによく登場するスター思想家が出てきました。佇まいもカッコいい彼らの本は総じて読みやすく、語られている内容も刺激的です」『21 Lessons21世紀の人類のための21の思考』ユヴァル・ノア・ハラリ著柴田裕之訳河出書房新社2400円世界的なベストセラーとなった『サピエンス全史』で人類の過去を、『ホモ・デウス』で人類の未来を説いた著者が、現在に焦点を当てて書いた最新刊。「雇用、自由、平等、ナショナリズム、移民、ポスト・トゥルースなど、現代人が直面している課題を明晰に整理する手さばきが見事です。と同時に、本書は、ハラリ自身のエピソードや世界観について多くを語っている点も読みどころ。既出作と併せて読めば、その語り口に魅了されることうけあいです」『世界は贈与でできている―資本主義の「すきま」を埋める倫理学』近内悠太著ニューズピックス1800円お金では買えないものやその移動に「贈与の原理」という概念を用いる著者。贈与は人や社会にどう影響しているのか。「若き在野の哲学研究者が書いたデビュー作。私たちが普段何気なく行う贈与という行為はとても不思議なものです。人はなぜお返しを求めず贈り物をするのか。交換と贈与は何が違うのか。著者が親しんできた哲学や思想を渉猟しながら贈与の秘密に迫っていく本書を読むと、いままでとは違う世界の景色を発見できるかもしれません」『世界史の針が巻き戻るとき 「新しい実在論」は世界をどう見ているか』マルクス・ガブリエル著大野和基訳PHP研究所960円著者は、ポスト・トゥルースの時代における「新しい実在論」の提唱者であり、“哲学界のロックスター”と称される。「ガブリエルの主著『なぜ世界は存在しないのか』は、硬派な哲学書としては異例といっていいほどヒットしました。が、それでもけっこう難解なので、語りおろしで言葉も平易な本書から入るのがおすすめ。気候変動やグローバル資本主義、AI、GAFAなど時事的なテーマも多く、哲学者ならではの挑発的かつ反常識的な議論を楽しめます」※『anan』2020年7月8日号より。写真・中島慶子文・三浦天紗子(by anan編集部)
2020年07月02日“対話”を通じて、哲学する。アメリカ発、新感覚SFアニメ『ミッドナイト・ゴスペル』とは?舞台は、どこか遠くの星。小さな小屋に住むひとりの青年が、広い宇宙に向かってポッドキャストを配信している。その番組名は「ミッドナイト・ゴスペル」。このアニメ作品自体のタイトルにもなっている。主人公のクランシーが暮らす部屋中に張り巡らされた、カラフルな配線やディスプレイの数々。これらは《多元宇宙シミュレーター》につながっている。このサイケデリックなメカが叶えるのは、仮想の宇宙旅行。「こんにちはマスター、今日はどの仮想世界に入りますか?」。AIが提案するクールなアバターを選び、シミュレーターに入れば、意識は宇宙へ。クランシーは、マイクを持って飛び込んだ星の先々で、そこに暮らす生き物と対話し、その音声をポッドキャストとして配信している。このアニメの構成のほとんどを占めるのは、まさにその“対話”。主なテーマとなるのは、生きるうえで抱えうる恐怖、不安、寂しさ…といったネガティブ感情との向き合い方。そして、時にスピリチュアルに、哲学するためのヒントをくれる。制作は、ペンデルトン・ウォード。言わずと知れた米アニメ『アドベンチャー・タイム』の総監督で、今作では大人向けの作品に初挑戦する。そこに名を連ねるのは、ダンカン・トラッセル。コメディアンであり、自身でもポッドキャストを配信。実は、彼がその番組内で様々な人にインタビューした“対話”の音声そのものをこのアニメ作品に用いている。計算された映像は、まるで視覚と聴覚の双方から瞑想の世界へ引きずりこまれるよう。最新の話題シリーズ作を見尽くし、物足りなさを感じる人にこそおすすめしたい異色作だ。ポッドキャスト「ミッドナイト・ゴスペル」の配信者クランシー。仮想宇宙で出会った人にインタビューし、番組を作る。Netflixオリジナルシリーズ『ミッドナイト・ゴスペル』独占配信中※『anan』2020年6月24日号より。(by anan編集部)
2020年06月22日人にあたってしまったり、関わり自体を持つのが面倒だったり…。人間関係を築くのが苦手なら、心の内を見つめる読書で、自分と対話してみて。ライター、ブックカウンセラーの三浦天紗子さんが、“セルフコミュニケーション”に役立つ本をご紹介!世間の物差しに迎合して人も自分もジャッジしない。対人関係が苦手な人は、そもそも主体となる自分自身とのコミュニケーションに問題があるのかも。その場合、自分との対峙を促す本が、自分への理解を深める一助になってくれそう。「自分で本を選び、意識的に読み進めないと進まない読書は、能動的な行為です。書かれている意味を意識的に掴もうとするので、自然と自分の感情や体験と向き合うことになります」と、三浦さん。内面を見つめるきっかけとして選んでくれた本が、韓国のイラストレーターが自問自答を繰り返す『あやうく一生懸命生きるところだった』。「韓国では、“お金持ちになってください”というCMのキャッチコピーが流行語になり、著者は“お金持ちになりさえすれば、あとはすべて上手くいく”と視野狭窄に陥ります。そして、本当に大切な、自分はどう生きたいのかということを見落としていたことに気づきます。世間が言う“当たり前”に自分を押し込めず、他人も、自分の枠に当てはめてジャッジしない。基本中の基本ではありますが、それが、いい人間関係を築くのには肝心です」三浦さんが自らにも問いかけたいというフレーズが、「仮に後れをとったとして、それはそんな大ごとだろうか」。「スピード感が求められる時代ですが、“なぜ、もっと効率よくできないのか”と自分の至らなさを責めても、意味がないんですよね。その人なりの速度を大事にしてほしいです」『あやうく一生懸命生きるところだった』ハ・ワン岡崎暢子・訳自分らしい生き方を見つける韓国エッセイ。韓国で25万部超えのベストセラー。イラストレーターと会社勤めのダブルワークをしていた著者が、40歳を目の前に突然、退社。自分を見つめ直し、自己嫌悪から抜け出す。ダイヤモンド社1450円三浦天紗子さんおすすめのもう3冊『やらない理由』カレー沢 薫自虐で人気の漫画家が自己肯定!?「32ある全エッセイが、“自分は浮気したいが、されるのは嫌”など、自己中心的なわがままから始まります。誰もが“理想の自分”を描きますが、著者は皆が理想に挫折することを見越し、努力すべきではない理由を読者に代わり発見。逃げ出すことを肯定してくれます。同時に、なぜ自分は“そうあるべき”だと考えるのか、思考実験もできます」。マガジンハウス1100円『まとまらない人坂口恭平が語る坂口恭平』坂口恭平さまざまな顔を持つ著者の自伝。建築家、作家、アーティストと、多方面で活躍する著者。「ご本人は自分の好きなものを何でもやる方式で、ひとつに集中することなく片っ端からやり、“やりたいことやったら、人付き合いとかいらないことに気づく”のです。“人に認められないほうがいい。…自分で認めてあげればいい”など、他人の評価が気になる人に刺さる言葉が見つかります」。リトルモア1500円『僕は僕のままで』タン・フランス安達眞弓・訳Netflixの人気者によるエッセイ集。『クィア・アイ』のファッション担当として人気を博す著者が幼少期から振り返り、自分を信じる強さを手にするまでを記す。「ゲイでパキスタン系移民3世。人種差別や性差別に傷つくたびに、自分の心に徹底的に向き合い、ベターな方法を模索します。そうした自分との対話が、本心を見つけ、自分自身と仲良くなるためにも大切なのだと感じます」。集英社2100円三浦天紗子さんライター、ブックカウンセラー。本誌のほか、『CREA』『サンデー毎日』や文芸誌などで著者インタビューや書評を担当。漫画にも詳しい。著書に『そろそろ産まなきゃ』(CCCメディアハウス)などがある。※『anan』2020年6月3日号より。写真・大内香織取材、文・小泉咲子(by anan編集部)
2020年05月29日伊勢丹新宿店では、新進気鋭のクリエーターの哲学に触れられる「TOKYO解放区 “知る”」を、2月26日から3月10日まで、本館2階=TOKYOクローゼット/リ・スタイルTOKYOにて開催。注目の4ブランドが集まる。「TOKYO解放区 “知る”」は、ニューカマーのクリエーターのインキュベーション企画。作り手の哲学やクリエーションの背景を知ることで、商品のその先にある思いを感じながら服を選ぶことをテーマに、これからのTOKYOのファッションシーンを飾る4ブランド、コール(koll)、ルリ(RURI.W)、スリュー(SREU)、ベルパー(BELPER)を紹介する。メインビジュアルは、マヤ ヌマタ グラフィック(Maya Numata Graphic)による作品。会期中は、マヤ ヌマタ グラフィックのアートワークの他、一つ一つに物語のタイトルのような名前の付いたアクセサリーや花瓶なども販売する。コールトップス(5万円)、パンツ(6万円)女性デザイナー楠原麻由によるコールは、母のクローゼットの中に残っている服から着想を得たコレクションを展開する、ブルーの色使いが印象的なウィメンズブランド。今回は、同じくブルーが印象的な陶芸家のナナカミオ(nanakamio)とコラボレーションし、コレクションで使用したレースを焼きこんだ花瓶など陶器も展開する。ルリトップス(3万1,000円)、ボトムス(2万9,000円)ルリは、“受け継がれたものを繋ぐ”をコンセプトに、デザイナー渡邊瑠璃の実の祖父を今期のミューズとし、過去を紐解き未来へ繋ぐコレクションを展開している。今回は、アクセサリーブランド、ルミゴーシェ(lumgo,se)とコラボレーションし、コレクションの端切れやボタンを使ったピアスも展開する。スリューデニムジャケット(3万6,000円)2020年春夏シーズンよりスタートしたスリュー。シーズンテーマは設けず、一点物の既製服をコンセプトに掲げ、リメイクをベースにしたサステナブルな服作りを目指している。今回の企画では、既存の古着だけではなく、ラコステ(LACOSTE)の古着を使ったコレクションを展開。会期中にスリューの商品を1点以上購入すると、3月に開催予定の2020年秋冬コレクションショーのインビテーションが数量限定でプレゼントされる。ベルパー左:ジャケット(4万3,000円)、ボトムス(3万9,000円)右:トップス(3万9,000円)、ボトムス(4万3,000円)男性デザイナー尾崎雄一が手掛けるベルパーは、映画グレートギャッツビーをテーマに完成度の高いコレクションを展開する。会期中、各ブランドのクリエーションの裏側を知れるよう、デザイン画やポートフォリオ、制作の着想に関わった品など、コレクションの背景を展示。また、各ブランドが日替わりで担当し、それぞれの世界観を表現するクローズアップも実施する。トップバッターを飾るコールの装飾では、“花とあなたが出会う場所”をコンセプトに、“ファッション×花”をテーマに活動するグイフラワー(gui flower)も装飾に参加し、デザイナーの世界観に色を添える。クローズアップ日程は、2月26日から29日が「コール×ナナカミオ×グイフラワー」、3月1日から3日まで「ルリ×ルミゴーシェ」、3月4日から10日が「ベルパー」となる。それぞれのブランドの哲学に、より触れられるインタビュー記事が伊勢丹新宿店の公式サイトにて現在公開中だ。また今回の企画に合わせて、マヤ ヌマタ グラフィックによる限定のTOKYO解放区のロゴも登場。会期中、三越伊勢丹アプリにログインし、クーポンの画面を店頭スタッフに提示すると、数量限定で「TOKYO解放区」ロゴステッカーのプレゼントも行われる。“今”の“TOKYO”の“旬”である新しい価値・事象を、世界に向けて、独自の目線で発信し続けるTOKYO解放区。2019年8月まで常設店舗だったが、今回の企画からプロジェクトとして生まれ変わった。さまざまなテーマをもとにしたコンテンツから、「たのしんで生きていく」きっかけになることを目指し、さまざまな事象における「哲学」や「過程」を発信していく。【イベント情報】TOKYO解放区 “知る”会期:2月26日〜3月10日会場:伊勢丹新宿店本館2階=TOKYOクローゼット/リ・スタイルTOKYO
2020年02月20日企画展「柳宗理デザイン 美との対話」が、2020年1月24日(金)から3月23日(月)まで、島根県立美術館にて開催される。戦後日本を代表するプロダクトデザイナー、その全貌戦後日本を代表するプロダクトデザイナー、柳宗理。生活のなかに美を見出す“民藝運動”の指導者・柳宗悦の家庭に育った彼は、第二次世界大戦後、本格的にデザインの仕事を始め、柳工業デザイン研究会を設立。日本におけるプロダクトデザインの確立と発展に大きく貢献した。生活用品から公共の構造物までいたる多彩なデザイン「柳宗理デザイン 美との対話」では、代表作である《バタフライスツール》をはじめ、柳宗理がデザインを手掛けた家具、食器、キッチンツール、グラフィックデザインなど600点以上を展示する。また、東京オリンピックの聖火トーチや、東名高速道路の防音壁といった公共構造物の写真、そして実現は到らなかった建築物の模型なども展示。小さな生活用品から大型の構造物にいたるまで、生涯にわたり幅広い分野で活躍した仕事の全貌へと迫る。山陰の民藝との関わりさらに、柳宗理がとり結んだ山陰の民藝との関わりも紹介。島根出身で、やはり民藝運動を先導した陶芸家・河井寬次郎の窯でつくった《黒土瓶》などを展示する。概要企画展「柳宗理デザイン 美との対話」会期:2020年1月24日(金)〜3月23日(月)休館日:火曜日(ただし2月11日(火)は開館)、2月12日(水)開館時間:1月・2月 10:00~18:30(展示室への入場は18:00まで)、3月 10:00~日没後30分(展示室への入場は日没時刻まで)会場:島根県立美術館住所:島根県松江市袖師町1-5料金:一般 1,000円(800円)、大学生600円(450円)、小中高生 300円(250円)※( )内は20名以上の団体料金※ 身体障害者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳の所持者、およびその付添の方は観覧無料【問い合わせ先】島根県立美術館TEL:0852-55-4700
2019年11月23日「安倍晋三首相は北朝鮮との外交を、圧力から“前提条件なしでの対話”に方針転換をしましたが、永田町では、すでに北朝鮮との首脳会談実現に向けて、水面下で動いているという話も出ています」(政治部記者)5月6日、金正恩朝鮮労働党委員長と首脳会談実現に向けて、それまで使っていた「圧力」という言葉を引っ込めて、“無条件対話”を呼びかけた安倍首相。さらに、5月27日には、来日したトランプ米国大統領と拉致被害者家族との面会を演出するなど、拉致問題解決に向けて活発な動きを見せている。「選挙前に、安倍さんが平壌に電撃訪問するというシナリオが囁かれています。金正恩委員長と会い、最低でも政府認定拉致被害者の12人の安否確認だけははっきりさせるのではないかと。『会って話をしました』だけで、手ぶらで帰ってきたら、国民から『何しに行ったんだ!』と反発を食らうことになる。大きなリスクを伴うので、結果ありきでしか、安倍首相は金委員長と会うことはないでしょう。いま、その交渉を水面下で行っているということでしょう」(自民党関係者)だが、一方で安倍首相の“アピール”に過ぎないという冷ややかな見方も存在する。10月には消費税増税を予定しているのに加え、北方領土問題でのロシアとの交渉は暗礁に乗り上げた。衆参ダブル選挙も噂されている中、「国民に対しインパクトを与えるカードは拉致問題しか残っていない」(前出・政治部記者)というのだ。政府関係者はこう言い切る。「現在、北京にある日朝両国の大使館ルートで交渉しているのは間違いない。いま、関係者の間で言われている日朝交渉の落としどころは、北朝鮮が“横田めぐみさんの生存確認も含めて12人の再調査をする”という内容。拉致被害者を日本に帰しはしないが、消息について調べる。つまり、北朝鮮が取っていた“すでに解決済み”というスタンスを下げさせる。結局、安倍政権の延命のための策にすぎないのです」さらに、別の政府関係者はこう語る。「いま囁かれているウルトラCは、次にトランプ大統領が金委員長と第三国で会うときにトランプ大統領の仲介で安倍首相も同席するというシナリオ。安倍首相は1人で会うとは言っていませんからね。実現しなくても7月の参院選挙までにそういうことを匂わせるようなことはするかもしれません。今のところ拉致問題で解決するネタはない。ただし、『解決に向かって先導できるのは私だけ』と見せられれば、それだけでいいと思っている。安倍首相という人物は絶対論で話すのではなく、相対論で話す人。『あの悪夢の民主党政権に戻していいんですか?』と、よく発言しますが、今が絶対いいとは言わない。『以前よりはましでしょ?』と、何でもそういう感じです。拉致問題も、私の他に全力を注ぐ人が誰かいますか?というスタンスです」「拉致問題については私の内閣で全面解決に向けて全力を尽くしてまいります」と安倍首相が国会で宣言したのは2013年のこと。それから6年近く経っても、一向に前進しない交渉に、安倍首相も焦っているという。6月2日、北朝鮮の朝鮮アジア太平洋平和委員会の報道官は、“前提条件なしでの対話”という安倍晋三首相の方針について「厚かましさはこの上ない」と突き放した。「北朝鮮が拉致被害者たちを帰さなくても『再調査する』と言ってくれれば御の字だ、という話も出ています。安倍首相は条件なしで会談すると言っていますが、北朝鮮は必ず条件を付けてきます。現在、日本政府は朝鮮総連の幹部が一度出国したら再入国させない措置を取っているのですが、第一の条件として、この再入国禁止の制裁措置を外せと言ってくるでしょう」(政治部デスク)さらに、問題になってくるのが、2020年の東京五輪だ。「恐らく平昌五輪の時と同じように、統一コリアでやって来るでしょう。そして北朝鮮は喜び組を大量に入国させる際に、万景峰号で入国させろと迫るはず。当然、出国するときに、万景峰号内で大量の現金を積み込み、日本に対してそれを黙認しろという条件を付ける。つまり喜び組を連れていくという名目で万景峰号を入国させて資金調達をする、それを認めろと。日本は『前提なし』と言っても、交渉権は北朝鮮にあるんです。それを受けるか受けないか。そういう交渉が、いま水面下でおこなわれていると思います」(前出・政治部デスク)高齢化していく家族のためにも、一刻も早い拉致被害者家族の帰国が求められている。北朝鮮には“政治的駆け引き”の道具としてではなく、人道問題として拉致問題と向かい合ってほしい。
2019年06月08日道徳の授業が教科化されるなど、学校や社会で子どもたちの「心の教育」に力を入れるなか、思考力と対話する力を育てるもっとも効果的な方法として、『こども哲学』が注目されていることをご存知ですか?これからの時代、求められる能力は思考力とコミュニケーション能力ーー。よく耳にする言葉ですね。しかし問題は、「どうやってその能力を育てるの?」ということです。『こども哲学』はみんなが自由に自分の考えを話し、人の意見に耳を傾け、積極的に議論して「自分で考える力」と「自己表現」が身につく対話活動です。そのメソッドは、親子の会話にも取り入れることができるので、ぜひ参考にしてみてくださいね。道徳の教科化で「哲学対話」=「こども哲学」にも注目集まるまず、“哲学”と聞いて何を思い浮かべますか?「難解」「変わり者の学問」「実社会では役に立たない」「成績に結びつかない」……、このように、わたしたちの日常とはあまり縁がないように感じている方も多いのではないでしょうか。たしかに、大学で専門的に学ぶいわゆる“学問としての哲学”には、そのようなイメージがありますね。しかし、ここでご紹介する『こども哲学』は、哲学対話と呼ばれる対話活動を意味します。それは決して難しいことではなく、いくつかのシンプルなルールを守っていれば、「どんな発言もOK」といった自由なものです。最近では、有名小学校や私立中学校・高等学校で教科として導入されたり、国際バカロレアのプログラムにある「哲学」との関連性で語られたりと、教育プログラムとしての側面にもスポットがあたっています。また、2018年度から教科化された道徳の教科書にも哲学対話が紹介されるなど、「心の教育」を重視し始めたここ日本でも注目が集まっているのです。『こども哲学』の歴史は意外にも古く、1920年代にドイツで萌芽し、アメリカの哲学者であるマシュー・リップマンによって1970年代に大きく躍進しました。その後世界各地に広まり、さまざまな教育機関で実践されるようになりましたが、ここまで広く知れ渡るようになったのは、ある映画がきっかけであると言われています。それは、フランスのドキュメント映画『ちいさな哲学者たち』(2011年公開)です。舞台はフランスのある幼稚園。3歳~5歳の子どもたちと哲学対話を行った2年間の記録を集約したこの映画は、「こども哲学」の真髄とも言える要素がふんだんに詰まっています。「愛とは何か」「賢いとはどういうことか」「どういう状態を自由と呼ぶか」、さらに貧富の差や人種問題に関係する問いを子どもたちが話し合うのですが、びっくりするほど世界を鋭く観察し、物事について深く考えている子どもたちの対話の様子は、観客を大変驚かせたといいます。「こども哲学」は大人も変える!哲学・哲学教育を専門とする立教大学の河野哲也教授は、「『こども哲学』では、哲学的なテーマについて子ども同士で対話をすることで、他人と合理的に議論する力、自分自身で自律的に考える力を養うことができます」と述べています。議論といっても、哲学対話はただの意見交換とは違います。子どもたちが同じテーマについて異なった意見を関連づけて対話を広げて深めていくことが目的です。普段の授業では、子どもたちは唯一の正解を求められますが、この『こども哲学』では自分の考えを素直に述べることが求められるのです。ここで、実際にどのようなことがテーマになるか、例を挙げていきましょう。河野教授が監修を務めたNHK Eテレの子ども向け哲学番組『Q〜こどものための哲学』では、次のような「子どものギモン」をテーマにしていました。・ふつうってどういうこと?・なんで勉強しなきゃいけないの?・なんでお母さんはいつも怒るの?・カッコイイってどういうこと?普段お子さんから「ねえねえ、これってどういうこと?」と聞かれるような内容ばかりですね。ここで「お母さん忙しいから、あとでお父さんに聞いて」と子どものギモンに向き合うことを避けてしまっては、思考力と対話力は身につきません。それはお子さんだけではなく、親御さんも同じです。逗子で「こども哲学教室」を主宰し、親子で哲学対話することをテーマにした『自信をもてる子が育つこども哲学ー“考える力”を自然に引き出す』(ワニブックス)の著者である川辺洋平氏は、「『こども哲学』は親子の相互理解を深めます」と述べています。なぜなら、哲学対話を通して、子どもは物事を深く考える思考力が身につき、親は子どもの発言や考えていることを理解できるようになるからです。子どもの思考力と対話力を引き出すだけではなく、親にとっても子どもとの関係性を見つめ直すよいきっかけになる「哲学対話」。ご家庭でも取り入れてみたいと思いませんか?子どもたちと哲学対話をするときの注意点川辺氏が代表を務めるこども哲学教室・アーダコーダでは、子どもたちと哲学対話をするにあたって、次のようなルールを決めています。・ひとが話しているときはきく・自分が考えているときは待つ・自分の思ったことを言う・ひとの嫌がることはしない・何も言わなくてもいいこうしたルールを守ることで、「ちゃんと聞いてもらえる」「ゆっくり考えても待ってもらえる」「何を言っても怒られない」「ひどいことをされない」「何も言わなくても怒られない」という安心感を得ることができ、考えることの楽しさを感じられるようになります。河野教授も、哲学対話でもっとも気をつけなければならないことは「セイフティ=安心」であると述べます。セイフティとは、自分の意見を言うことに躊躇を覚えずにすむ状態のこと。子ども同士が哲学対話をするときにも、その場にいる進行役としての大人は、子どもたちが自由に発言し、気楽に質問や反論ができる雰囲気を作り出すことを心がけなくてはなりません。グループで対話をする場合、基本的には丸い円になって座ります。それは、お互いの顔が見え、誰が何を言っているかがわかる「相互理解」や「安心感」を与えるという理由からです。全員がリラックスした状態であることが好ましいので、必ずしも円であることにこだわる必要はないでしょう。自分の意見を堂々と言える子もいれば、緊張したり恥ずかしかったりしてなかなか発言できない子もいるかもしれません。そんなときは「コミュニティボール」(毛糸を巻きつけてボールにしたもの)を使い、ボールを手にした人が発言し、次に発言する人にそのボールを渡す、という方法を取り入れましょう。「ボールを持っているから話してもいいんだ」「あの子がボールを持っているから黙ってちゃんと聞こう」という意識をもつことが大切なのです。哲学対話では、ディベートのように相手を言い負かすのではなく、いろいろな考えを認めることを重視します。そして、対話を深めるためにも「みんな考えが違って面白いね」で終わらず、相手の意見でわからないところがあれば「どうして?どんなときにそう思うの?」など、どんどん質問しましょう。最終的にひとつの結論が出る必要はありません。30分なら30分と時間を決めて、終わりの時間になったら終了とします。親子でやってみよう!家庭でできる哲学対話ここまでは、グループで行う哲学対話の方法や概念についてお伝えしてきました。ここからは、家庭でも簡単にできる哲学対話についてご説明します。まず、『こども哲学』の入り口は“受け止めること”です。子どもが言っていること、やっていることの奥にある、本当に伝えようとしていることは何かな?どうしてその表現になったのかな?ということに、保護者が思いを巡らせましょう。■テーマを決めようテーマはなんでも構いません。できれば子ども自身に決めさせるといいでしょう。最初は「友だち」「学校」「勉強」など、子どもにとって身近なテーマがいいかもしれませんね。(例)・友だちは必要?・優しさってどういうこと?・なぜ学校へ行かなきゃいけないの?■対話してみよう大人は「正しい答え」や「立派な答え」を考えてしまいますが、答えを出すことが目的ではありません。思考力と対話力を伸ばすためには、子どもの発言をさらに広げることを心がけましょう。(例)親:「誰にでも優しくしなきゃいけないと思う?」子:「もちろん!」親:「でも世の中には悪い人もいるよね。悪い人にも同じように優しくするべきかな?」子:「うーん、悪い人には優しくしなくてもいいかな」親:「じゃあその悪い人が本当に困っていたらどうする?」子:「その人が本当に反省していたら助けてあげる」このように、子どもからどのような発言が飛び出すかはわかりません。しかし、どんな答えが返ってきても決して否定しないでください。まずは受け止めて、どんどん対話を深めていきましょう。***哲学対話は、今すぐにでも始められるとても簡単なコミュニケーションです。子どもは意外と物事をしっかりと考えているものです。対話を進めていくうちに、「本当はこんな風に考えていたの!?」と驚かされることになるでしょう。ぜひ親子で挑戦してみてくださいね。(参考)川辺洋平(2018年),『自信をもてる子が育つこども哲学』,ワニブックス.河野哲也(2018年),『じぶんで考え 自分で話せる こどもを育てる哲学レッスン』,河出書房新社.NHK for School|Q ~こどものための哲学特定非営利活動法人 こども哲学 おとな哲学 アーダコーダSHINGA FARM|子どもの学びのコト|「こども哲学」川辺洋平氏×伸芽会 飯田先生のスペシャル対談!「『こども哲学』ってなに? 幼児のうちから身につけたい“力”とは」
2019年02月01日こんにちは、伶奈です。大学院まで哲学を専攻してしまったわたしが、読者から日常の悩みや社会への疑問、憤りを募り、ぐるぐる考えたことを書き綴る連載の第8弾。一方通行ではなくみんなで協働的に考えられるようにしたいので、時に頷き、突っ込みながら読んでくださると嬉しいです。人間は考える葦であるだから大事なのは、意見を持つこととか表現することよりも、考えることや意見に至るプロセスだということになります。本当はみんな、あなたの主張よりも「あなたがなぜそう考えるのか?」を知りたいのだから。SNSの世界には、「はい論破〜」という幼稚な言葉や、意見の対立を極端に恐れた「それな〜」という安易な共感が並んでいます。夜中に覗くと、深い海に沈んだように滅入ってしまう。極端だなあ。相手を批判することや「なんでそう思うの?」と問うことは、個人攻撃でも優位に立つための手段でもないのに。もちろん、完璧な理由を持って意見を主張できるわけもないから、言葉が不十分でも仕方がないと思います。だからこそ考え、疑い、その不十分さに気が付いたなら、その意見に固執するのではなく、一回その意見から解放されて、新たな考えを見つければいいと思います。大事なのは、考えること。パスカルの『パンセ』から、この言葉を。「人間は一本の葦(あし)であり、自然のうちでもっとも弱いものにすぎない。 しかし、それは考える葦である」▶︎これまでの『REINAの哲学の部屋』・#007 「校則は厳しい必要ある?」自分で考える機会を奪う“中身のないルール”は、日本の未来をも奪う・#006 「ハラスメントはなぜ起こるの?」男の子でも女の子でも立場は関係なく、“誰でも加害者になる”可能性・#005 「愛と執着ってなにがちがうの?」この問いを哲学的に考えたら気づいた、現代人の恋愛に足りないこと・#004 「レディファーストって古くない?」でも、嬉しくない?“男性が女性を丁寧に扱う文化”を哲学的に考える・#003 「死ぬのが怖いんです」。ある高校生の普遍的な悩みに、28歳の彼女が出した答えとは▶︎オススメ記事・「アートか、わいせつか」の議論から離れ、“性表現の規制”をかいくぐって遊ぶフォトグラファー・「男なら筋肉をつけるべきなの?」21歳の写真家が“男性解放”をテーマに写真展を企画した理由All photos by Chihiro Lia OttsuText by Reina TashiroーBe inspired!
2018年07月04日こんにちは、伶奈です。大学院まで哲学を専攻しちゃったわたしが、読者から日常の悩みや社会への疑問、憤りを募り、ぐるぐる考えたことを書き綴る連載の第7弾。一方通行ではなくみんなで協働的に考えられるようにしたいので、時に頷き、突っ込みながら読んでくださると嬉しいです。自由とは、ルールの王様になること校則という城壁を前に中高生のわたしたちが選べる道は、二つ。従うか破るかしかありません。管理する側は、ルールを作ることで、従う者を褒め称え破る者を罰するという単純な基準を掌握することができるし、ルールを守る側は考えなくていいので楽チン。胸張って生きられるし。ルールを破る、一見自由に飛翔しているように見えるひとも、目の前でダメと言われたことを行えばいいだけなので、どちらにせよ、楽なのだ。みんなルールに圧倒され、縛られている。どちらに転んでも、ルールの奴隷だ。中学のわたしは、小ちゃい反抗なんかでは目の前にそびえ立つ絶対的なルールは落城しないと考えたのだ。自由は、そんなに簡単じゃない。ドイツの大哲学者カントは、人間の自律(=自由)は「自己立法」だと言います。誰かからあれこれ言われたことを無批判に行うのではなく、理性を行使し自ら立てた規則(ルール)に従うことこそ自由だと。ルールの奴隷になるのではなく、自らに課すルールをつくることだと。自由とは、ルールの王様になることなのだ。王様にも奴隷にもならず好きに生きればええやん、とも思いたいけど、やっぱりルールは必要。無法地帯では、ひとはひとと一緒にいられないから。他者と共存できないから。家族や友達関係や学校といった小さなコミュニティでも、大きな社会でも、ひとがひとといる限り、ルールは存在し続けます。「ひとを殺したいひと」「殺したくないひと」「殺されたくないひと」が共存するためには、まあ殺しちゃダメだろという決まりがないと、社会は成り立たない。決まりに従いながらも自由に生きるためには、「なんで殺しちゃいけないのか?」という理由を他者とともに考え、共有することが大事。奴隷制度を産み出してしまう原因は、ルールそのものにあるのではなく、押し付けがましさ思慮のなさ、そして、ルールの理由をそこで生きる他者と共有していないことにあるのではないでしょうか。「なんでスカートの長さを短くしちゃいけないの?」と勇気をもって先生に聞いたときに「校則だから」と言われたあの理不尽さを思い出します。先生も理由を知らない校則が学校に存在する状況は、ふつうに考えて、恐ろしい。学校も、生徒が納得できる校則を、生徒と一緒に作ればいいのにね。みんなで理由を考えながら。四月からの哲学対話の授業で、そんな授業もできたらいいなと、ふと考えました。▶︎オススメ記事・ある母親が“皆勤賞”を取った息子を授賞式に出席させなかった“優しい”理由・「メイクはマナー」という日本社会の“理不尽な常識”に反抗する日本人女性たち。All photos by Junko KobayashiText by Reina TashiroーBe inspired!
2018年03月15日西野亮廣(37)が3月7日、自身の“アンチ”として活動をしていたという男性と対話したことをブログで明かした。 飲食を共にしながら親交を深める「交流会」を開催している西野。その会場に“アンチ男性”は現れた。自ら「アンチをしてました」と名乗る男性に西野は、どんなことをしていたのかと逆インタビューを開始。するとAmazonにある西野の商品レビューページを「☆1つ」で埋め尽くし、「ボロカスに書いてました」と男性は明かした。しかし男性は「そうすることでファンがさらに結束し、結果宣伝力を高めてしまう」と気づいたという。 男性がアンチを辞めるキッカケになったのは、アンチ・コメントを西野に拡散されたときだという。 「『あ、完全に利用されてるな』と確信して、『この人の邪魔をしようと思ったら、アンチを辞めた方が絶対にイイ』と思って、西野さんを潰す為にアンチを辞めました」 「一番の邪魔は、『無視』ということに気がついた」という男性。だがいっぽうで、「無視をすると、コチラが無視活動していることに気づかれない」「無視活動が誰からも評価されない」という“葛藤”も生まれたという。 「だから悔しくて、『あなたにこれだけ時間を費やしているんだぞ』ということを直接伝えたくて、今日こうして、時間とお金を使って西野さんに会いにきた」 「一体、この僕の肩書きは何ですか?」と男性に問いかけられた西野は、こう回答した。 「おそらく、一番近いのが『ファン』だと思います」 西野は当日の感想として、「男性のイチイチがキュートで、こういう人との対話は本当に楽しいです。『交流会』は今後も続けていきます」と綴った。そして、呼びかけた。 「引き続き、応援活動やアンチ活動を宜しくお願い致します」 ネットでは西野の“ファン”との交流が描かれた同ブログを《誰からのことを叩きたくでしょうがない人は読んでみるといいですよ。考え方が1度変わるかもしれないです》《ほんとにすごい。これはちょっとした教科書です》と勧める声が上がっている。 実際、同ブログの読者も「アンチとはなにか?」についてそれぞれ見解を口にしている。 《好きな女の子にいじわるするのと、同じ原理じゃない?》《アンチになるにも情報が必要なんだろね》《雨降って地固まる的な。アンチもガチだとファンになるって一週回っていい話》 イヤよイヤよも、好きのうち?
2018年03月08日こんにちは、伶奈です。大学院まで哲学を専攻しちゃったわたしが、読者から日常の悩みや社会への疑問、憤りを募り、ぐるぐる考えたことを書き綴る連載の第6弾。一方通行ではなくみんなで協働的に考えられるようにしたいので、時に頷き、突っ込みながら読んでくださると嬉しいです。最初に「ハラスメントはなぜ起こるのか?」ということを考えてみます。(今回は、パワハラやセクハラ、スメハラを含むハラスメント全般について考えたいと思います )ハラスメントが起こるのは、端的に「弱いから」でしょう。有無を言わせない様子から一見強そうに見える加害者は、「欲望を抑えられない」「人を支配してしまう」という「人間の弱さ」が露呈している、とても惨めな姿だと思います。本当は「人間関係にお前の幼稚さ持ち込まれても知らんがな」の一言に尽きるのだけど、怒りや欲望や暴力を剥き出しにする圧倒的幼稚さを前に、わたしたちは抵抗できず、被害者は常に弱い立場に置かれてしまうのです。理性、想像力、そしてコミュニケーション人間はみんな、他者を支配、吸収してしまおうとする弱さを持っています。けれど、人間を他の動物と隔てる「理性」という機能で、そのどうしようもなさを制御しています。この「弱さ」は、理性の欠如に起因すると同時に、他者と自分との線引きができなくなる「土足問題」でもあると思います。言い換えると、他者を他者だとわかる「想像力」の乏しさ。わたしだって、急に思い出すことがある。「そっか、あなたはわたしじゃないんだ」。わたしたちは、つい自分の見ている範囲を他者の基準にしがちだ。まじで、しがちなのだ。ハラスメントあるある文言、「え〜別にされても良いって顔してるよ〜」「NOと言わなかったからYESだろ」「なんでこれもできないんだよ」「やれって言っただろ」。おい、落ち着いてくれ。わたしの心や気持ちや意図、少しは想像してくれ。ところが、想像力には限界があります。表情を読み、相手の言わんとしていることを想像することは大事だけど、想像力を完全に働かせることはできないから。想像はあくまでわたしのなかに保存され、あなたの脳内とわたしの脳内が触れ合うことは一生ないのだから。だからこそ大事になるのは、「コミュニケーション」だと思うのです。ハラスメントは「言った、言わなかった」「嫌だった、嫌がっているなんてわからなかった」と、二者が永遠にすれ違いを繰り返す、圧倒的コミュニケーション不足の問題でもあるからです。もしかしたらわたしも、加害者になりうるかもしれないでも正直、わたしはとても怖い。無意識のハラスメントが。誰をどこでどう傷つけているかわからないということが。共感を求めたはずの被害者意識が肥大し「わたしの方が大変だった」というマウンティングを繰り広げそうになることが。そして人間が、実は理性や想像力やコミュニケーションをうまく使いこなせないということが。たとえ「死ね」と直接言わなくても、ディナーにしつこく誘わなくても、お尻を触らなくても、すべての言葉や行為が、それが発せられた瞬間、毒矢になる可能性をもつ。街で聞く誰かの「幸せだな」という声が、大切な人を亡くしたばかりの人の背中を刺すかもしれない、世界はそんな不安定な場所なのです。だから、もしかしたらわたしも、加害者になりうるかもしれない。なっているかもしれない。そう自覚し、隣りの人に想像力を持って接することができるかどうかで、世界は違って見えるのかもしれません。そして、誰かを傷つけていたと知ったときに、これまでの自分を捨て、変わる勇気を持てるかどうかが、このどうしようもないわたしたち人間を救う、唯一の道だと思います。みんなで血相を変えて絶対的な正しさや他者を攻撃する言葉を探すよりも、かっこいい理念やイデオロギーにしがみつくよりも、自分自身の弱さに気づき、人と人とのコミュニケーションのなかで、言葉を積み上げながら生きたいなと、わたしは思います。続きは一緒に考えてくれたら嬉しいです。意見や批判、感想をお待ちしています。Twitterハッシュタグ「#REINAの哲学の部屋」で。3月の連載のテーマ募集します!読み込んでいます…田代 伶奈Twitterベルリン生まれ東京育ち。上智大学哲学研究科博士前期課程修了。「社会に生きる哲学」を目指し、研究の傍ら「哲学対話」の実践に関わるように。現在自由大学で「未来を創るための哲学」を開講。Be inspired!ライター。
2018年02月26日ももいろクローバーZの百田夏菜子(23)が2月19日、都内で行われた映画「ブラックパンサー」の吹き替え版完成披露試写会に出席。壇上では、百田の“リーダー哲学”がうかがえる一幕があった。 本作の主人公が「国王」であることにちなみ、「リーダーに必要な心得」との質問を受けた百田。ももクロのリーダーでもある彼女は「みんなの声を聞くこと」と答えていた。 「私がベラベラ話すよりもみんなの声を聞きたいなと思うので、いったん待ったり。取材でも『どうですか?ももクロさん』と聞かれたとき、リーダーとして答えないといけないなと私が感じること以外はひと呼吸待って……」 百田の「みんなの声を聞くこと」という“一歩引いた”リーダー哲学。それは同じく“アイドルグループのリーダー”である嵐の大野智(37)も語っていたことだった。 突然ももクロのリーダーに任命された百田だが、大野が嵐のリーダーに任命されたのもじゃんけんで決まったという。どこか似た境遇を持つ2人は、13年発売の「クイック・ジャパン」Vol.109で対談を果たしている。 「リーダーに向いていない」と自認する百田に、大野も「リーダーであることには消極的」と告白。前に出ることが、どちらも苦手なようだ。しかし大野は、こう語っている。 「好きじゃなきゃできないでしょ。仕切るとか、まとめるとか。だから、無理してやらなくていいと思うよ」 大野のリーダーであり続ける秘訣は、“ムリして仕切らないこと”。百田も「いいんですよね?自然で!」と感心していた。 このときから“一歩引いた”リーダー哲学をすでに持っていた百田。10年に渡るももクロの活躍は、こうした“自然体”な姿勢があるからなのかもしれない。
2018年02月21日こんにちは、伶奈です。大学院まで哲学を専攻しちゃったわたしが、読者から日常の悩みや社会への疑問、憤りを募り、ぐるぐる考えたことを書き綴る連載の第5弾。一方通行ではなくみんなで協働的に考えられるようにしたいので、時に頷き、突っ込みながら読んでくださると嬉しいです。「あなたがいないと生きられない」は、ダメだ友達に相談される「別れたいけど、でも…」のあとは必ずといっていいほど執着話。でも7年間も一緒にいた、でもいい人、でも好き、でも相手は変わると言った、etc…。人間、一筋縄ではいかぬ。複雑すぎる。「なるほどそっかー」と頷きながら、頭のなかでは別のことを考える。わたしたちは、一体なにに執着しているのだろうか。もしかして、相手に執着しているようで、実は自分に執着しているのではないか。7年もあなたと一緒にいたわたし、こんなあなただったけど一緒にいたわたし、わたしのために変わると言ったあなた。結局どこまでもわたし。わたしがわたしを縛っているだけで、その目にあなたは映っていない。めうさんが言うように、「今までかけてきた時間」の呪縛はとくに恐ろしいと思います。もはや自分でも相手でもなく、宙に浮いてしまった「関係性」を必死に捉えようとしている。でもこの関係性だって、実は相手に共有されていない自分だけのものかもしれない。相手の意志が配慮されている感じはしません。あと、孤独が辛いから執着してしまうということもよくある。でも、相手はわたしの孤独解消の手段なんかじゃない。人格だ、人格。これら執着に共通するのは、世界が自分のものになってしまっている、他者不在の自己愛だということ。「あなたがいないと生きられない」みたいな、他者を自己に還元してしまう、依存だ。自戒を込めて、他者と世界はお前のものじゃねえよ、と言いたくなる。そういう意味では、愛と執着をちゃんと分ける必要はある気がします。いや、もっと相手に執着したら?でもそのうえで(←これ大事)、執着なんてし合わないで「あなたの好きにして」も、なんか違う気がする。束縛しちゃだめ、所有欲は罪だ、みたいな恋愛観って一見正しいけれど欺瞞的だとも思います。前提に「人間ひとりで生きられる」的な、行き過ぎた個人主義が潜んでいる気がするから。18世紀に活躍したドイツの哲学者イマヌエル・カントは、「自律」と「他律」を分けて、「大人だったら自律して理性的に生きろ」と言います。カントの世界観では、関係性や他者よりも「自己」が先立っていて、自律した大人たちがそれぞれ理性的に結びついている。イメージは、きちんとした大人同士の恋愛。(カント研究者たち、雑な解釈で本当にすみません)でも、わたしたちは本当にそういう世界で生きているのでしょうか。そういう人間像を理想としているのでしょうか。わたしは、自律した個人が点在しているのではなく、網の目のなかにすでに人間は存在してしまっている、つまりネットワーク的な関係性を持ってしまっていると思います。そして、この世界や存在はすでに「ある」ものではなく、「つくっていく」動的なものだとも思います。人間関係は、乾いた砂のようにサラサラしたものではない。ここは、誰かがいるからこそ生きていける世界。だからといってベタベタだけでも自己愛に回収される執着ごっごでもない。孤独だし、孤独じゃないし。誰でもいいようで、誰でもよくないし。なんか言ってそうで、何も言ってない…?いや、そうなんだけど、その揺れ動きのなかで、どうしようもなさのなかで、ひとは生きているのだなあ、と思うのです。わたしの敬愛する20世紀ドイツの実存哲学者、カール・ヤスパースがこんなことを言っています。私自身であることは孤独だということである。私もまた自立者として独立して自分自身でないならば、私は全く他者のなかに自分を失う。このとき私自身がなくなると同時に、コミュニケーションが破棄される。私は、コミュニケーションへ入ることがなければ、自分になることができず、孤独でなければコミュニケーションに入る事ができない。どっちだよ、というツッコミはさておき、ヤスパースがいうコミュニケーションは、「おはよ」「ういーっす」ではなく、「心を本気で見せあおうぜ」みたいなヤバイやつで、「愛しながら戦い」と言い換えられたりもします。コミュニケーションが、戦いかよ。生半可な執着じゃない、キングオブ執着。ヤスパースは、人間は孤独とコミュニケーションの「両極性」のうちに存在する。ひとは、「他者へのコミュニケーション的態度と、自己の絶対的独立性という緊張関係のうちに存在するのである」と続けます。でも思うのは、いまこの世界で圧倒的に足りていないのは、コミュニケーションのほうではないでしょうか。だからもっと「相手」に執着したら?と思う。もっともっとコミュニケーションをとって相手を知ろうとしたり、応答し合ったり、感情を出し合ったり、愛を持って戦ったりすればいいのに。そしたら世界は、孤独でバラバラで壊れそうな人間がへばりついているところじゃなくて、同質さも異質さも共有して「あなたがいるから生きられる」空間になるのにな。All photos by Junko KobayashiText by Reina TashiroーBe inspired! この記事を読んでいる人はこの記事も読んでいます!#004 「レディファーストって古くない?」でも、嬉しくない?“男性が女性を丁寧に扱う文化”を哲学的に考える| “社会の普通”に馴染めない人のための『REINAの哲学の部屋』 こんにちは、伶奈です。大学院まで哲学を専攻しちゃったわたしが、読者から日常の悩みや社会への疑問、憤りを募り、ぐるぐる考えたことを書き綴る連載の第4弾。一方通行ではなくみん...
2018年01月17日こんにちは、伶奈です。大学院まで哲学を専攻しちゃったわたしが、読者から日常の悩みや社会への疑問、憤りを募り、ぐるぐる考えたことを書き綴る連載の第4弾。一方通行ではなくみんなで協働的に考えられるようにしたいので、時に頷き、突っ込みながら読んでくださると嬉しいです。レディファーストは嬉しいレディファーストに対し、「そもそもの起源が女性蔑視だからダメ」とか「女性が何も出来ないから男性がしてあげるという風潮が女性を見下す女性差別だ」と批判することができると思う。逆に「女性の優先権を認めるのは男性差別だ」と反論する人もいるでしょう。欧米ではこのような理由から、時代に合わないレディファーストが見直されているという話も聞きます。どれもわかる気がするんだけど、喉に何かがへばりついて飲み込めない。「素直にどう思いますか?」という問いかけなので、わたしの意見を書きます。わたしは、レディファーストされたら嬉しいし、好きな人が奢ってくれたらふつーに喜ぶ。けど、この喜びは「女性は奢られるべきだ」という信念や「相手が男性だから」という理由に基づくものではありません。いや、むしろもっと浅はかで、その相手に優しくされたらうれぴー! ジェントルマンってステキー!程度のものかもしれない。だって、レディファースト、誰も損してないじゃん、とか思っている。やばい、フェミニズムの波に乗り遅れている。なんとかイズムにとらわれずにもう少し考えてみます。「男性はこうすべき」「女性はこうすべき」という性別を根拠にした規範を、社会や他者が押し付けるのは間違っていると思います。間違っていると思う理由は、そうできない(したくない)人の自由を奪うから。そして、「女ー男」社会の終焉を迎えるべきこのご時世で「性別」を主張の根拠に持ち出すのは愚かだから。というか、「男だったら荷物を持てよ」とか「女だから払わなくていいよ」は、差別というか、根拠不十分なハラスメントって感じ。女性の解放を求めて戦った20世紀フランスの哲学者ボーヴォワールの言葉を紹介します。女性を優先し、責任を解放することで、結局相手の自由を奪うことになっているという指摘。どうでもいいときには男が女を立てて一等席を譲るべきなのはお決まりのこと。原始社会のように女に重い荷物を背負わせる代わりに、つらい仕事や心配事の一切を急いで女から取り除く。それは同時に、女を一切の責任から解放することである。こうして女は自分の立場の安易さにだまされ、心をそそられて、男が女を閉じ込めたがっている母や主婦の役割を受けいれるよう期待されるのだ。田代 伶奈ベルリン生まれ東京育ち。上智大学哲学研究科博士前期課程修了。「社会に生きる哲学」を目指し、研究の傍ら「哲学対話」の実践に関わるように。12月から自由大学で「未来を創るための哲学」を開講。Be inspired!ライター。Twitter: photos by @hello.itsnoemiText by Reina Tashiro ーBe inspired! この記事を読んでいる人はこの記事も読んでいます!#003 「死ぬのが怖いんです」。ある高校生の普遍的な悩みに、28歳の彼女が出した答えとは。| “社会の普通”に馴染めない人のための『REINAの哲学の部屋』 こんにちは、伶奈です。大学院まで哲学を専攻しちゃったわたしが、読者から日常の悩みや社会への疑問、憤りを募り、ぐるぐる考えたことを書き綴る連載の第3弾。一方通行ではなくみん...
2017年12月14日アンリアレイジ(ANREALAGE)が富山県美術館で行われる「素材と対話するアートとデザイン」展に参加。会期は、2017年11月16日(木)から2018年1月8日(月)まで。「素材と対話するアートとデザイン」展は、木や金属から最先端のものまで、様々な「素材」の魅力や可能性を探るもの。4つのセクションを通して、素材の魅力とそれに触発されて生まれるアートとデザインを紹介する。アンリアレイジのアイテムが展示されるのは「革新×素材」、「素材のきほん」の2パート。2016年春夏コレクション「REFLECT」のドレスが「革新×素材」に登場する。受けた光を跳ね返し色や柄が現れるという再帰性反射を応用した特殊な素材を使用したものだ。「素材のきほん」に展示されている「PHOTOCHROMIC AGING PANTS」は、光を浴びると新品のホワイトデニムが古着のインディゴブルーデニムの表情に変化する、フォトクロミック技術を採用したデニムパンツ。高岡伝統産業青年の為に製作をした特別な逸品だ。本来は時間をかけて経年変化し古着になっていく過程を見せることで、古着と新品の境界線を越えるような表現に挑戦した。同展示会にはリアリティ・ラボ イッセイ ミヤケ(REALITY LAB. ISSEY MIYAKE)やゴールドウイン(GOLDWIN)なども参加する。【展示会概要】「素材と対話するアートとデザイン」展会場:富山県美術館住所:富山県富山市木場町3-20TEL:076-431-2711会期:2017年11月16日(木)~2018年1月8日(月)時間:9:30〜18:00(入館は17:30まで)入場料:当日券一般1,300(1,000)円/大学生950(750)円/前売券一般1,000円※高校生以下無料、括弧内は20名以上の団体料金
2017年11月20日こんにちは、伶奈です。大学院まで哲学を専攻しちゃったわたしが、読者から日常の悩みや社会への疑問、憤りを募り、ぐるぐる考えたことを書き綴る連載の第3弾。一方通行ではなくみんなで協働的に考えられるようにしたいので、時に頷き、突っ込みながら読んでくださると嬉しいです。人間は自由だからこそなにものにでもなれるよ生まれながらにして死刑囚である人間は同時に、何にも規定されていない自由な存在でもあります。「人間は自由の刑に処されている」という有名な言葉を残した哲学者サルトルは、人間は自由だからこそなにものにでもなれるよ、と言ってくれます。優しい。人間は最初は何ものでもない。人間は後になってはじめて人間になるのであり、人間は自らが造ったところのものになるのである。人間の本質は存在しない。その本性を考える神が存在しないからである。人間は、自らそう考えるところのものであるのみならず、自ら望むところのものであり、実存して後に自ら考えるところのもの、実存への飛躍の後に自ら望むところのものであるにすぎない。「ところのもの」が多過ぎて頭が痛くなりそうですが、サルトルが言わんとしていることは、自分で自分の人生を自由にデザインして生きていくしかない、ということです。神みたいな超越的な存在から「あなたの人生はこうだ」みたいな本質を与えられていないからです。だから人間はとても孤独だし、自由と引き換えに全責任を背負わなければいけない。わたしのちっぽけな人生には「あなたはジェダイだ」「人類を救う宿命だ」なんていうシナリオはない。でも、だからこそ人間は、100年間の牢獄の中で、自分の人生を設計できるし、そこに意味や価値を創造していくことも、喜びを見出すこともできるのです。神の前でも、サクラダファミリアの前でも、生の脆さの前でも、わたしは「自分でつくったところのもの」でしかないからです。そして人間は、わたしとあなたと地球と宇宙がいつか消えてしまうというやばすぎる事実に無力さを感じる以上のことができます。わたしたちは、どうしようもない死への恐怖が頭を駆け巡った次の瞬間、お笑いを見ながら爆笑できる。恋をして胸がドキドキしたり、バーゲンでお気に入りのものがゲットできたり、美味しいご飯を食べたり。日常の小さなことに大きな大きな幸せを見つけ、人生の意味を噛みしめることができる。死への恐怖が消えることはないけれど、なにも哲学して賢者になったり悟りを開いたりしなくても、恐怖に人は勝つことができるのです。これが、生きているということの事実だし、人間の偉大さなのだと思います。最後に谷川俊太郎の『質問箱』という本を紹介します。死ぬのがいやだと言う6歳のさえちゃんへの答えです。詩人、すごいなあ。質問どうして、にんげんは死ぬの?さえちゃんは、死ぬのはいやだよ。(追伸:これは娘が実際に母親である私に向かってした質問でした。正直、答に困りました〜)ぼくがさえちゃんのお母さんだったら、「お母さんだって死ぬのはいやだよー」と言いながらさえちゃんをぎゅーっと抱きしめて一緒に泣きます。そのあとで一緒にお茶にします。あのね、お母さん、言葉で問われた質問に、いつも言葉で答える必要はないの。こういう深い問いかけにはアタマだけじゃなく、ココロもカラダも使って答えなくちゃね。 今回のお悩みも一緒に考えてくれたら嬉しいです。意見や批判、感想をお待ちしています。Twitterハッシュタグ「#REINAの哲学の部屋」で。読み込んでいます…
2017年11月15日こんにちは、伶奈です。大学院まで哲学を専攻しちゃったわたしが、読者から日常の悩みや社会への疑問、憤りを募り、ぐるぐる考えたことを書き綴る連載の第2弾。一方通行ではなくみんなで協働的に考えられるようにしたいので、時に頷き、突っ込みながら読んでくださると嬉しいです。伶奈って誰?▶︎「当たり前」を疑わない人へ。「哲学」という“自由になる方法”を知った彼女が「答えも勝敗もない対話」が重要だと考える理由。前回の連載▶︎#001 「なんで複数の人と恋人関係になっちゃいけないの?」28歳の彼女が“社会の理不尽な恋愛ルール”に物申す。他者を手段としてだけでなく同時に目的として扱え「人と人の関係ではなく、モノとして見られているとさえ感じる」というKさんの気持ち、よくわかります。食に限った話ではなく、これもまた現代の病がもたらす恐怖感なのかもしれません。18世紀に活躍したドイツの哲学者イマヌエル・カントは、すごぶるカッコイイ言葉を残しています。人間および一般にすべての理性的存在者は、目的自体として存在し、誰かの意志の任意な使用のための手段としてのみ存在するのではなく、自己自身の対する行為においても、また他のすべての理性的存在者に対する行為においても、常に同時に目的として見られねばならない。2017年日本から突然1785年プロイセン王国。寿司からカントかよ。カント大先生の目眩がするような言葉を要約すると「自分や他人を単に手段として扱ってはならず、 常に同時に目的自体として扱わねばならない」ということ。人間を交換可能な「モノ」のようにだけ扱ってSNSや評価のための手段にしたり、「お前の寿司じゃなくても別にいいし」みたいな態度で蔑ろにしてはいけません。相手をきちんと人間と見なして尊敬しましょうというお話です。それが、生きるうえでなによりも大事だと。食が人と人との関係だとすれば、カウンターでお寿司を食べるときにわたしたちが享受しているのは、寿司そのものだけでなく、寿司を握るまさにその人。それに加え、質感や雰囲気などその人が醸し出す全てに一万円以上の対価を払っているのではないでしょうか。だから作り手に感謝しながら感謝しながら食を楽しんでほしいと願うのは当然。写真を撮り怖い顔で評価しながらお寿司を食べることは、食に生きる人への冒涜だから。ああ、でも「お金払ってんだからこっちの自由やん」って言う人もいそう。学費払ってるんだから授業休んでもええやん、給料払ってるんだからもっと働けや、と。最近よく聞くこういう論調に「ちょっと待ったー!」をして締めたいと思います。なぜだか人間って、人間関係の中で生きていることを忘れがちだと思う。人間は、代替可能なモノではないし、他者不在の自由なんてない。他者がいなかったらお寿司出てこないのに、ね。だから「僕が売っているのはそれじゃないっす!」「自分も人間っす!」「目的として扱ってくれ!」って呼びかける権利はどこまでもあると思うのです。 なのでKさんの「対価をもらう以上、そういった関係になってしまうことは仕方ないのでしょうか?」に対して言いたいのは、仕方なくないよ!ということ。あまりにもモノ化してくる人が現れたら、カウンター越しに「“食”ってなんでしょうね」って問いを投げかけ、ドヤ顔でカント大先生の話をしながらお客さんと一緒に考えてみてください(お洒落な寿司屋でそんな野暮ったいことしないかな(笑))。田代 伶奈ベルリン生まれ東京育ち。上智大学哲学研究科博士前期課程修了。「社会に生きる哲学」を目指し、研究の傍ら「哲学対話」の実践に関わるように。現在自由大学で「過去に向き合うための哲学」を開講中。Be inspired!ライター。Twitter: photos by @hello.itsnoemiText by Reina Tashiro ーBe inspired! この記事を読んでいる人はこの記事も読んでいます!#001 「なんで複数の人と恋人関係になっちゃいけないの?」28歳の彼女が“社会の理不尽な恋愛ルール”に物申す。| “社会の普通”に馴染めない人のための『REINAの哲学の部屋』 こんにちは、伶奈です。今日から連載を始めることになりました。月に一回読者から、最近悩んでいることや、社会に対して疑問に思っていることを募り、わたしなりに哲学的に考えたこと...
2017年10月31日乳がんを経験し、講演などの活動を行う女優の音無美紀子さん(67)と「がん哲学外来」理事長で、がん患者やその家族と対話し、生きる希望を与えている順天堂大学医学部の樋野興夫教授(63)。2人に1人が罹患する時代に、がんやがん患者とともに生きてきたお2人が、病いにどう向き合えばいいかを語り合った。 音無さんは’88年に乳がんが見つかり、当時標準治療だった全摘手術を受けた。手術後は、うつになり「死にたい」と苦しんだという。 音無「10時間に及ぶ手術、その後のリハビリと奮闘しましたが、抗がん剤の点滴治療のミスをきっかけに心を閉ざしてひきこもり状態に」 樋野「がん告知を受けた人の約3割に音無さんと同じようにうつ的な症状が現れます」 音無「眠れない、食べられない、何もできない。当時、そういうのは、心が弱い人がなる“ノイローゼ”だと思い込んで、恥ずかしくて病院にも行けなかった。告知されてからの闘病の苦しみ、『なぜ私が?』という恨みや未練も重なり、つらかった。いくら医療技術は進歩しても、人間の“心”は同じ気がしますね」 樋野「はい。医師には最先端の治療を確立することと、もう一つ『人間的な責任で手を差し伸べる』という使命がありますが、それが失われようとしています。そこで私は’08年に『がん哲学外来』を立ち上げました。患者さんとご家族に、『病気であっても病人ではない』『がんも単なる個性である』というような言葉の処方箋を出しています」 音無「言葉といえば、ある日、当時小学生だった娘の『ママなんで笑わないの?』の言葉にハッと気づかされたんです。左胸を全摘してから自分の体もそうですが、いっさい鏡を見られなくなったんです。鏡を見てみると口角も上がらないし、どう笑えばいいのかさえ忘れてしまっていて。娘に言われてから意識して鏡で笑顔をつくるようになりました。少しすると口紅もつけてみよう。美容室にも行こうと、徐々に元気になれました」 樋野「家族の『言葉の処方箋』に助けられましたね。私の哲学外来では一人1時間、カルテもなし。お茶を一緒に飲みながら話を聞いて対話するだけです。どんな病気なのか。なぜここに来たのかをじっくり聞くうちに本音を吐露していきます。自殺を考えていた人に『あなたには役割がある。存在には意味がある』と伝えると、自分ができることを探し始めます。その患者さんが自ら『メディカルカフェ』を開き、同じ苦悩する人の悩みに耳を傾ける人もいるんです」 音無「私自身、“心が重い日々”が続きましたが、一歩を踏み出すことで変わりました。うつで、夏休みに娘をどこにも連れていけないとき、『絵日記を書く材料がない』って言われたんです。娘は『ママと、目玉焼きをつくりたい』と言うから『それならできるかも』と、勇気を出してやってみたら『ママすごい』と娘が喜んでくれました。翌日、『じゃあ、おにぎりをつくろうか』と言って三角おにぎりをむすんだ私に『すごい』と娘が言ってくれて。本当に小さな一歩でしたが、これをきっかけに気持ちが回復していきました」 樋野「家族の接し方では、懸命に尽くすつもりが、気持ちの押し付けになる“よけいなおせっかい”が多い。ふだんは話もしないのに病気になると、途端に世話を焼く。それが患者の悩みや負担につながっています。そんな人に私は『偉大なるおせっかいであれ』と伝えます。同じ部屋にいて寄り添うだけでいいんです。夫婦でリビングに無言で1時間一緒にいる。“よけいなおせっかい”だと思われないように、お互いが一緒にいることで安心できる関係をふだんからつくっておきましょう。大事なのは相手に関心を持つこと。『後ろからじっと見守る』イメージです」 音無「私たちも仕事が忙しく、ふだんは対話の時間が多かったわけではないのですが、主人(俳優の村井國夫さん)は私が病気のことを人に言えずに苦しんでいることを見てくれていたようです。『もうさらけだせば』という思いが助けになりました。がんになって13年後、’01年に主人がテレビ番組でポロッと私のことを話したところ大反響で、それをきっかけに私も『徹子の部屋』に出演して闘病について告白でき、ようやくラクになりました」
2017年07月22日「超越論的統覚」「普遍妥当性」「現象学的還元」。脳みそが痒くなるような文字が永遠に並ぶ哲学書を手にしていると、自分がちゃんと存在している感じがする。哲学者の、世界に密着している感じがたまらない。自分から、他者から、社会から逃げたくなるような世界で、言葉を通してそれらを眼差し続ける哲学は、恥ずかしくなるくらい、誠実だ。あるとき哲学書を読んでいたら、わたしが3年くらいかかって掴みかけていたことが「愛しながらの闘争」とかいうエモい概念でサクッと語られていた。哲学、やばい。 やばすぎて、上智大学の哲学研究科で修士過程まで哲学を研究した。 はじめまして、田代伶奈です。
2017年06月20日「木々との対話―-再生をめぐる5つの風景」が東京都美術館で開催。会期は2016年7月26日(火)から10月2日(日)まで。開館90周年を記念した本展のテーマは「木と再生」。再生や希望の象徴としての「木」をキーワードに、國安孝昌、須田悦弘、田窪恭治、土屋仁応、そして舟越桂ら日本を代表する美術家5名による木彫とインスタレーション、「5つの風景」を紹介する。会場内に入ると、國安による木と陶を使ったインスタレーションが圧倒的な存在感で私たちを魅了する。木と陶ブロックを積み上げた仮設の構築物は、精神性や伝承を象徴し、空間にスピリチュアルな緊迫感と力強い生命力を与える。さらに、会場では須田による、本物と見まがうほどリアルな草花の彫刻が様々な場所に置かている。普段着目しないような意外な場所に、存在するはずのない植物を出現させるという須田の試みは、私たちの常識に縛られたまなざしを解放し拡張する。前川國男が設計した当館の建築との競演も見どころだ。さらに、土屋による、独特な形態、質感、色を持った木彫の動物たちは、無常さや脆さ、そして生命の喜びを感じさせるある種の幻想的な美しさをもっている。そのほかに、田窪の廃材に金箔を貼った作品や、舟越の人間の存在そのものを肯定するような半身彫刻など、「木」に対する5人それぞれのアプローチは、私たちの日常を問い直し、生命の持つ力を感じさせるだろう。【開催概要】木々との対話――再生をめぐる5つの風景会期:2016年7月26日(火)~10月2日(日)開催場所:東京都美術館 ギャラリーA・B・C住所:東京都台東区上野公園8-36休室日:月曜日 ※ただし9月19日(月・祝)、9月20日(火)は開室開室時間:9:30~17:30 (入室は閉室の30分前まで)夜間開室:毎週金曜日は20時まで。 ※ただし、8月5日(金)、6日(土)、12日(金)、13日(土)、9月9日(金)10日(土)は21時まで。9月23日(金)30日(金)は17時30分まで(入室は閉室の30分前まで)観覧料:一般800円、団体(20名以上)600円、65歳以上 500円、大学生・専門学校生 400 円※高校生以下無料(要証明)※特別展「ポンピドゥー・センター傑作展―ピカソ・マティス・デュシャンからクリストまで―」のチケット(半券可)を会場入口で提示で(1枚につき1人)、一般当日料金から300円引き※8月20日(土)、21日(日)および9月17日(土)、18日(日)は「家族ふれあいの日」により、18歳未満の子を同伴する保護者(都内在住、2名まで)は一般当日料金の半額(要証明)※8月17日(水)、9月21日(水)は「シルバーデー」により、65歳以上の方は無料(要証明)※10月1日(土)は「都民の日」により、どなたも無料※身体障害者手帳、愛の手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳、被爆者健康手帳を携帯者とその付添(1名)は無料(要証明)
2016年07月26日今年開館90周年を迎える東京都美術館にて、5人の作家による企画展「木々との対話ー再生をめぐる5つの風景」が開催される。家屋などの建造物や仏像、家具、工芸品の材料としてや、長い美術の歴史の中で伝統的な素材として大切に使用されてきた「木」に改めて着目する同企画展。「木と再生」をキーワードに、各世代の現代日本を代表する美術家5名による木彫作品やインスタレーションが展示される。木彫作品には、実在の動物や、神話や伝説の生き物を、仏像彫刻の技法を取り入れて彫刻する土屋仁応や、気品と格調の高い木彫による肖像彫刻と「スフィンクス・シリーズ」など異形の人物像で人気の高い舟越桂の作品が展示される。インスタレーションの出展作家には、ダイナミックなスケール感のあるインスタレーションを展開する國安孝昌をはじめ、雑草や花の精緻な彫刻作品を展示する須田悦弘、廃材の上に金箔を貼るアッサンブラージュのシリーズの作品を手掛ける田窪恭治がラインアップされている。いずれの作家も、過去作とともに本展のための新たな作品が展示される。また、出展作家による講演や、いとうせいこうが登壇するトークショーなどの関連プログラムも実施される。「木々との対話ー再生をめぐる5つの風景」は、7月26日(火)~10月2日(日)東京都美術館にて開催。(text:cinemacafe.net)
2016年07月15日ソクラテスといえば、だれもが知る古代ギリシアの哲学者。いまから2400年前、生まれ故郷であるアテナイの街に出て、若者に質問を投げかけて対話をしていたということで知られています。本人すら気づかない「本当の考え」を引き出す「ソクラテス式問答法」という対話法を得意としていたことも有名な話。『ソクラテスに聞いてみた 人生を自分のものにするための5つの対話』(藤田大雪著、日本実業出版社)は、そんなソクラテスが登場人物として活躍するユニークな書籍。現状に不安や不満、疑問を感じる27歳の青年と、いきなり目の前に現れたソクラテスとの対話を軸に、ストーリーが展開されていくのです。きょうはそのなかから、第4章「お金お金との「ちょうどいい距離」とは?」に注目してみたいと思います。■投資は確実に富をもたらすものではない将来の生活を不安に思っていたサトルは、その打開策として「投資」に注目し、その重要性をソクラテスに説きます。ところが意見は噛み合わず、ソクラテスはサトルに「投資をする人の人生を吟味しよう」と提案します。将来の生活を憂えて投資をはじめようとしているということは、投資によって将来の生活不安を和らげたいと願う心が宿っているということ。では、その心は、それが宿った人間の魂を全体としてどのようなものにつくり変えていくものなのか?すなわち、投資家のメンタリティを持つことが、人間の生き方にどういう影響を与えるのか?ここで重要なのは、投資が必ず儲かるものではなく、不確実性が伴うものであるという事実。どんなに優秀な投資家であっても、損をする可能性はゼロではないということ。つまり投資は、確実に富をもたらす性質のものではないとソクラテスはいうのです。■備えあれば本当に「憂いなし」でもないだとすれば、投資によって将来の生活不安を和らげたいと願う投資家たちは、自分の意のままにならない事柄に自らの運命を委ねているということになるはず。ところで、自分の意のままにならない事柄に運命を委ねる人は、内面的になにかの不安を抱え込みやすくなるのではないか? ソクラテスはそう疑問を投げかけます。サトルはそれに対して「備えあれば憂いなし」と反論しますが、ソクラテスはそこを指摘します。本当に「憂いなし」なのか?ほかならぬ「備え」のために、ずっと大きな憂いを抱えているように見えると。■なにを愛し求めるかで人の価値が決まる次にソクラテスはサトルに対し、一般的にいって、「なにかを追い求めようとする場合、そのなにかの点で不安になったとすれば、それについて考えることはいっそう多くなる」と指摘します。だとすれば、財産の点で不安を感じやすい投資家は、お金のことを気にしやすく、お金に執着した人間になりやすいということになるとも。つまり、お金に執着した人間になることは恐ろしいということをサトルに伝えたかったわけです。そして、このような趣旨のメッセージを伝えます。・人間の値打ちは、「なにを愛し求めるか」によって決まる。・立派なものを愛し求め、徳のために最善を尽くす人は、もうそれだけで立派で幸せな人である。・逆にお金の魔力にとらわれた人は、心が狭く、お金以外の価値を信じられない人間になる。・その結果、幸福な人ならだれもが持っている大らかさや朗らかさをうしなっていく。だからこそ私たちは、自分の心にお金への執着が生まれないように気をつけなければならないというのです。金儲け以外のことにはいっさい心を向けず、ただ「できるだけたくさんお金がほしい」と願いながら一生を送るなどということは、恥ずべきことだと。なぜならそれは、たった一度しか生きられない人生の価値を、自分自身の手によって、小さく、みすぼらしく、つまらないものにしてしまうことだから。■ソクラテスの考える正しいお金の使い方そしてお金は、「いい使い方」をすることが大切。そう主張するソクラテスは、自分が考える「いい使い方」とは、大切な人のために使ったり、立派で美しいことのために使ったりする、そういうお金の使い方だといいます。そういう使い方ができない人は、いくらお金を持っていても不幸せだというのです。なぜなら、友だちや恋人よりもお金のことを気にかけるような人は、決して「幸せ」ではないはずだから。*ここでは簡略化していますが、実際のサトルとソクラテスとの対話は、まるで禅問答のよう。つまりは堂々巡りの連続であるわけですが、だからこそ最終的には“真理”へとつながっていくことになるわけです。ソクラテスをホームレスのようなキャラクターに設定しているなど、見方によってはかなり強引な部分もありますが、そこが本書のおもしろさだともいえそうです。(文/作家、書評家・印南敦史) 【参考】※藤田大雪(2016)『ソクラテスに聞いてみた人生を自分のものにするための5つの対話』日本実業出版社
2016年04月12日アサヒグループホールディングス、アサヒ飲料と野村総合研究所(NRI)は、訪日外国人向けに、音声認識技術を活用した「対話型自動販売機」の実証実験を開始すると発表した。アサヒグループホールディングスのお客様生活文化研究所は、5月から「インバウンド消費実態調査プロジェクト」を立ち上げ、訪日外国人の消費実態等の調査を進めてきたが、その中で、訪日する外国人は、気軽に飲料水が購入できる自動販売機への関心や利用意向は高いものの、日本語表示を理解できないため商品特性がわからず、購入を躊躇したり、自国で馴染みのある特定商品の購入に偏ってしまったりする傾向があることがわかったという。そこで、最新の音声認識技術を活用し、訪日外国人に対して英語による日常会話のような感覚で詳細な商品情報を提供することで、商品に対する理解を促進するため、「対話型自動販売機」の実証実験を開始する。自動販売機は、2016年1月6日から2016年2月(予定)までの期間、東京・浅草の雷門近くに「対話型自動販売機」を1台設置し、利用者の行動データを蓄積・分析することで、訪日外国人のニーズを検証し、アサヒグループ商品の購買とファン化を促進するための施策を見出すことを目指す。具体的には、既存の自動販売機の横に設置したタブレット端末に向かって話した音声が、クラウド上で提供される音声認識サービスによってテキストに変換され、テキストの構文解釈により文章として意味づけられ、それに対する回答が再度音声に変換されて端末に返り、自動販売機の前にいる人とリアルタイムで会話を行う仕組み。自動販売機で商品の購入を検討している訪日外国人に対し、英語による音声コミュニケーションを通じて、お茶やコーヒーなどの商品カテゴリーを選択してもらい、糖分や炭酸の有無、カロリー量などを含む商品情報を提供し、さらには“日本で人気のある商品”“寒いときにぴったりな商品”など、お勧め商品の紹介を行い販売促進につなげていく。今回の実証実験において、NRIは機械学習およびAI技術において、その技術を容易に活用可能とするクラウドサービスに注目し、Microsoft Project Oxfordの音声処理機能(Speech APIs)、自然言語処理機能(Language Understanding Intelligent Service:LUIS)を活用した実証機を開発した。今後は、中国語の対応に加えて、音声対話による効果の検証と、商品の購買、および購買者のファン化を促進するための施策の検討を共同で行っていくという。○アプリの画面展開と会話例①自販機:How would you like to select your drink?Tap the microphone and say the number (1, 2, 3) you’d like to start with.顧客:“No.1”(or“Type”)②自販機:Tap the microphone and say the type of drink you’re interested in.顧客:“No.3”(or “Coffee”)③自販機:If you’d like more information about any of the coffee shown on the screen, tap the microphone and say the product name.顧客:“Sugar sweetened Coffee”④自販機:We developed this iced coffee just for mornings!But it is just as delicious in the afternoon or evening.
2015年12月21日日本の道100選にも選ばれる哲学の道は、京都を代表する、散歩道。南禅寺や永観堂禅林寺から銀閣寺までを結ぶ、魅力的なコースです。疎水沿いに石畳の道がつづき、ずっと桜の木が寄り添う。満開に咲いた春はもちろん、夏の緑も、秋の紅葉も見事。小さなお地蔵さんたちと出会ったり、品の良いうつわ屋さんを見つけたり、道々の思いがけない発見にもときめきます。哲学の道をちょっと北へはずれて、自然が身近に感じられる、安楽寺や法然院のある通りを歩くのもおすすめ。また最近、注目のお店がオープンラッシュの浄土寺エリアもすぐそば。「くろだにさん」と呼ばれて親しまれる金戒光明寺から、紅葉の名所でもある真如堂や吉田神社、はたまた、平安神宮や美術館のある岡崎エリアへ向かっても。ルートに縛られず行ってみたいところを目指し、気の向くまま散歩を楽しんで、自分の目で「京都らしさ」を発見する。新旧さまざまな出会いが待っている、歩いてこそ楽しいエリアです。■南禅寺鎌倉時代、亀山法皇の離宮を無関普門が禅寺に改め開山。石川五右衛門の「絶景かな」で知られる三門は、眺望はもちろん、柱越しに見る屏風絵のような緑も絶景。紅葉の水路閣もロマンティック。左京区南禅寺福地町868:40~17:00、12/~2/28は~16:30(受付終了は閉門20分前)12/28~31休拝観料 方丈庭園500円、三門500円■金戒光明寺法然が結んだ草庵が始まり。五劫思惟(ごこうしゅい)阿弥陀仏像がアフロ仏像の愛称で人気に。運慶作、文殊菩薩像の凛々しい姿も必見。左京区黒谷町1219:00~16:00拝観料志納11/1~12/6秋の特別公開 御影堂・大方丈・庭園600円、山門800円、セット券1200円夜間拝観(御影堂・大方丈・庭園)800円(17:30~20:30)■銀閣寺喜み家名物の豆かんは塩っ気も食感もほどよい赤えんどう豆、なめらかな寒天、波照間島の黒糖で作るまろやかな黒蜜が抜群のバランス。シンプルに堪能するもよし、アイスクリームや白玉をのっけて楽しんでも。冬場の京風白味噌雑煮も心待ちにするご贔屓多し。店主の北村礼子さんの美意識を感じる名店。左京区浄土寺上南田町37-110:30~17:30不定休※『anan』2015年11月4日号より。写真・仲尾知泰文・宮下亜紀
2015年11月01日NTTコミュニケーションズ(NTT Com)は10月8日、米国IPsoftと提携し、人間の自然な会話や書き言葉を高い精度で解析する人工知能(AI)を活用した対話業務支援サービス「Virtual Assistant」を2016年夏より提供開始すると発表した。同サービスにより、コールセンターの一次受付や店頭窓口、アウトバンド要員をクラウド上のAIに置き換えることが可能で、オペレーター/販売員の後方支援としても利用できる。また、自動応答に加え、請求書発行業務やメール送信、資料の発送など、応対に伴って発生するビジネスプロセスの処理も行いながら、一人称で応対を完了することができる。例えば、コンタクトセンターなら、エンドユーザーの予約受付/トラブル相談/各種手続きなどを、自然言語による対話を通じて一人称で応対し、曖昧な質問には最適な問い直しを行い、問題を特定できる。問い直しは同サービスが自動的に判断して行うため、従来必要だった問い直し部分のシナリオの作成は不要となるという。解決できない問題や複雑な要請は人間のオペレーターに自動エスカレーションするとともに、オペレーターの応対を自動学習し、次回以降の応対に生かす。同社は商用サービスの提供に先立ち、2016年2月より開始予定のPoC(Proof of Concep)における参加企業を募集し、さまざまな利用シーンでの活用実証実験を重ねることで、サービス品質の向上を進める。
2015年10月09日