歌舞伎俳優・市川猿之助が四代目を襲名後、東京・明治座に初登場する舞台『十一月花形歌舞伎』が11月3日に開幕した。明治座『十一月花形歌舞伎』チケット情報明治座は、1993年に再開場した際、当時の三代目猿之助(現市川猿翁)の宙乗り用に天井にレールが取り付けられた、猿之助縁の劇場。その劇場に襲名後、初めて立つ猿之助は「三代目の伯父(猿翁)は、明治座でたくさんの復活通し狂言を初演してきました。その様子をずっと見て来ましたから、明治座は私にとっても非常に思い出深い劇場です。今回は明治座の特別な宙乗り機構も駆使して、大仕掛けあり、早替りありの澤瀉屋(おもだかや=猿之助の屋号)らしいスケール感あふれる演目で臨みます。伯父が創り上げた“四十八撰”があるからこそ、それを受け継ぎ練り直すことができる。これは非常に有り難いことだと思っています。新たな“猿之助歌舞伎”の始まりとして、まずはこの1か月、お客様に喜んでいただける舞台になるよう精一杯つとめさせていただきます」とコメントを寄せた。猿之助は、昼の部の変化舞踊『蜘蛛絲梓弦(くものいとあずさのゆみはり)』で、童や薬売りなどさまざまな役に六変化する。めまぐるしく変わる役を早替わりでみせるのが最初のみどころ。その後、女郎蜘蛛の精が本性を現す場面では、対峙する源頼光たちとの立廻り、そして蜘蛛の糸が舞台いっぱいに放たれる圧巻のクライマックスと観客を楽しませる工夫が随所にある。また夜の部では、通し狂言『天竺徳兵衛新噺(てんじくとくべえいまようばなし)』で日本転覆を目論む異国帰りの天竺徳兵衛を演じる。奇抜な発想と斬新な仕掛けでみせる本作は、蝦蟇(がま)の妖術を駆使して徳兵衛が活躍する物語に、歌舞伎の怪談話でおなじみの小幡小平次の幽霊譚を織り交ぜた大胆な展開で、早替りや葛籠抜けの宙乗りがみどころ。澤瀉屋が得意とするケレン味あふれる演出が堪能できる。公演は11月27日(火)まで、明治座にて上演。チケットは一部を除き発売中。
2012年11月06日歌舞伎俳優の市川猿之助が9月22日、都内で会見を行い、出演する『明治座十一月花形歌舞伎』への意気込みを語った。『明治座十一月花形歌舞伎』チケット情報今年6月と7月に東京・新橋演舞場で襲名披露興行を行なった猿之助は襲名後、初めて東京・明治座に登場する。昼公演では6役を早替わりで演じる『蜘蛛絲梓弦(くものいとあずさのゆみはり)』に、夜公演では宙乗りを勤める『天竺徳兵衛新噺(てんじくとくべいまようばなし)』に出演する。会見で猿之助は「明治座は子どものころ、一番楽屋で遊んでいた劇場なので個人的な思い入れはすごくあります」と語り「(3代目の)猿之助さんから(歌舞伎で使う)蜘蛛の糸をもらった覚えがあります」と想い出話を披露。また襲名後、初の東京公演で『天竺徳兵衛新噺』を選んだ理由として「明治座は、今はあまり歌舞伎が浸透していないので、定着させるためにもコンパクトな演目が良いと思い選びました」と説明しつつ、「劇場の中では一番お弁当が美味しいので、お芝居を観てご飯を食べて楽しんで欲しい」と気軽さをアピールしていた。『蜘蛛絲梓弦』については、「セリ(舞台の一部が上下に動く機構)に飛び込むなど色々工夫をしてやりつくした結果、工夫しすぎない方がいいと思ったので、今回はシンプルにやります」と構想を明かす。明治座の設備の中にあるワイヤーについては「宙乗りのワイヤーが見えないようになっているんです。(3代目)猿之助の宙乗りのために造ってくれたようなものだったんですけど、(1993年に建て替えて)新装になってから猿之助は出演していないんです」と語った。さらに、明治座の歌舞伎公演にはこんな工夫も。「ほかの歌舞伎公演に比べると値段を安くしていただきました。2幕構成になっているので、若い方でも見やすくなっていると思います」。舞台のみならず映像でも幅広く活躍する猿之助だが「テレビなどで僕を知っていただいた人が、『歌舞伎をやっている人なんだ』と思って見に来ていただけたら嬉しいです」と話していた。公演は11月3日(土・祝)から11月27日(火)まで明治座にて上演。チケットは9月28日(金)より一般発売開始。
2012年09月25日2009年度のアカデミー賞外国語映画賞を受賞した『おくりびと』の滝田洋二郎監督最新作『天地明察』が、日本全国の夜空の写真を一般公募するプロジェクトを映画公式サイトで実施。 6日に、全国から寄せられた写真約2000点を東京スカイツリー内のコニカミノルタプラネタリウム“天空”で投影するイベントが開催され、滝田監督と主演の岡田准一が出席した。思い思いに撮影された夜空が高さ18メートルの半球体のスクリーンに映し出されると、岡田は「みなさんの思いがこもった写真がこうして集まると、思わずウルっときますね」と感激していた。その他の写真本作は、第31回吉川英治文学新人賞、2010年本屋大賞に輝いた同名小説の映画化。江戸時代前期を舞台に、それまで800年にわたり使用されてきた暦の誤りを見抜き、日本独自の暦“大和暦”を作り上げた安井算哲(後の渋川春海)の青春物語を、滝田監督の視点で再構築していく。岡田演じる算哲は江戸時代に日食の日付を言い当てたとされる実在の人物だ。滝田監督は「この作品をきっかけに、僕自身も夜空を見上げることが増えた」そうで、天井いっぱいに広がる夜空に「やはり宇宙は未知なる世界なんだあ」とやはり感激しきり。「映画作りは星をつかむようなもの。算哲もまた天に手を伸ばし続けた、謎に満ちた人物で、それを岡田さんが恰好よく演じてくれた」とアピールしていた。イベントでは岡田と滝田監督をはじめ、共演する宮崎あおい、佐藤隆太、市川猿之助、笹野高史、岸部一徳、渡辺大、横山裕、中井貴一らが撮影した夜空の写真もお披露目された。金環日食、金星の太陽面通過、金星食など、天文現象で沸いた2012年。人々が空を見上げるきっかけ作りを目指し、日本全国から夜空の写真を集める“夜空を作ろう!プロジェクト”では、映画の公式サイト内の特設ページで投稿された写真とコメントを見ることができる。『天地明察』9月15日(土)全国ロードショー
2012年09月06日2010年の本屋大賞に輝いたベストセラー小説を映画化した『天地明察』の完成披露試写会が8月30日(木)、都内で開催され、主人公・安井算哲役の岡田准一を始め、共演する宮﨑あおい、中井貴一、佐藤隆太、市川猿之助、横山裕、渡辺大、原作者の冲方丁、滝田洋二郎監督が舞台挨拶に登壇した。江戸時代の前期に、それまで800年にわたって使用されてきた暦の誤りを見抜き、日本独自の暦を作り上げた天文歴学者・安井算哲(後の渋川春海)の奮闘を描く。美しく気丈な武家の娘で、算哲の妻・えんを宮﨑さんが演じた。岡田さんと宮崎さんは『陰日向に咲く』(’08)に続いての共演となる。岡田さん演じる算哲は実在の人物とあって「独特のプレッシャーがありました」とふり返る。それでも「プロフェッショナルなみなさんとご一緒でき、僕自身も30歳の転機として真剣に取り組んだ。少年が男へと成長する物語です」と作品への思いは格別の様子。一方の宮﨑さんも「私が参加したのは最後の2週間でしたが、とても温かい現場だった。映画を愛するみなさんが集まった現場に参加できて、嬉しく幸せでした」としみじみ語っていた。えんの兄である算術家の村瀬義益を演じる佐藤さんは、「准一くんとも久しぶりだし、滝田監督は憧れの監督だったので光栄」と感無量。「魂が響きあった現場」(猿之助さん)、「算哲は男が惚れる男。本来難しい役柄を、岡田さんがあふれる人間性で演じられた」(渡辺さん)、「この映画を観て、改めて日本人で良かったなと実感した」(横山さん)とキャスト陣が挨拶する中、最年長の中井さんは「いつの間にか、挨拶の順番が最後になる年齢になったと思うと感慨深い。後輩たちが素晴らしい挨拶をするので、『この映画には助さんも角さんも出てきません』なんて言おうとしていた自分が恥ずかしい」と笑いを誘っていた。そんなキャスト陣に対し、第81回アカデミー賞で外国語映画賞を受賞した『おくりびと』以来のメガホンとなった滝田監督は、「原作の精神を映像にするのに苦労したが、素晴らしいキャストのみなさんが作品に“色”と“息吹”を吹き込んでくれた」と手放しで絶賛。原作者の冲方さんも「原作の息吹と、映画ならではの感性を同時に感じた。まるで同じ星を違う場所から見たような思い」と感激しきりだった。『天地明察』は9月15日(土)より丸の内ピカデリーほか全国にて公開。■関連作品:天地明察 2012年9月15日より丸の内ピカデリーほか全国にて公開© 2012「天地明察」製作委員会
2012年08月30日歌舞伎俳優の市川海老蔵が、東京・新橋演舞場の『八月花形歌舞伎』(夜の部)にて、約50回もの早替りや宙乗りで人気の演目『伊達の十役』に再び挑戦する。海老蔵が公演を前に現在の心境を語った。新橋演舞場の『八月花形歌舞伎』チケット情報『伊達の十役』は仙台・伊達家のお家騒動をもとに創られた作品で、1815年、七代目市川團十郎が江戸河原崎座で初演した。その後上演が途絶えていたが、三代目市川猿之助(現猿翁)が1979年、実に165年ぶりに復活上演した伝説的舞台。これを海老蔵が2010年1月に初演、歌舞伎のエンタテイメント性あふれる演出で大当たりを取った。今回、2年7か月ぶりに務める海老蔵は「もっと早く再演したかった」と話す。「セリフが300以上もあって、専門的な言葉や古い言葉も多いですから。早くやって身につけておきたかった。みなさんはどうか判りませんが、僕の場合は完全に忘れているんで」とはにかむ海老蔵。演出は三代目猿之助が最後に上演したもの(1999年)とほぼ同じにするという。口上も團十郎家は柿色の裃を着るが、猿翁の希望で浅葱の裃に鬘も袋付(後ろがふっくらと袋状になっている髪型)でと考えている。「夏ということもありますし、面白い試みなのでやろうかと」。今月はその猿翁と共演している。「ご一緒させていただいて(猿翁の)情熱や思いをひしひしと感じています。先日、舞台が終わった後に『伊達の十役、君ね』とおっしゃってくださって、これはヤバいぞと、感動ですよ」。海老蔵にとって猿翁の存在は、歴史に名を残した名優と同列だと語る。「九代目團十郎や五代目菊五郎といった方々と同じくらい。絶対共演できないと思ってましたが、まさかご一緒できるなんて。本当に嬉しくて言葉に表せない喜び。日々勉強させてもらってます」。昼の部では『桜姫東文章』の釣鐘権助を演じる。桜姫の寝所に忍び操を奪うが、その後姫と夫婦になる。だが実は姫の父と弟を殺した悪党という男の役だ。「権助は(自分と)ちょっと似てるところがあると感じますね。父(市川團十郎)に教わっています。父の権助は色気があって、よいところを吸収したい」。一昨年の暴行事件から昨年復帰するまで、休んでいた期間の心境については「必要じゃない経験は与えられないと考えています。残った命があって、僕はこの体験をどういう風にとらえ歌舞伎に取り組んでいくのかって、自然と考えました」と明かす。今は「やりたい事が増えた」と歌舞伎への思いを語った。『八月花形歌舞伎』公演は8月4日(土)から23日(木)まで東京・新橋演舞場にて上演。チケットは発売中。なお、チケットぴあでは桟敷席+うな重セットのチケットを限定発売する。
2012年07月19日歌舞伎俳優の市川亀治郎が四代目市川猿之助を、俳優の香川照之が九代目市川中車を襲名する『六月大歌舞伎』が6月5日、東京・新橋演舞場で開幕した。新橋演舞場のチケット情報本興行では、同時に当代猿之助が二代目市川猿翁に、香川の長男政明君も五代目市川團子(だんこ)を襲名。昼の部の『口上』では、猿翁、猿之助、中車、團子と幹部俳優が揃って襲名披露の挨拶を行った。満員の客席から大きな拍手が沸き起こる中、まずは猿之助が挨拶。関係者をはじめ、先祖にも感謝したいと気持ちを述べたあと「亀治郎という名にまだまだ愛着がございます」と前置きし、『ヤマトタケル』の作者でもある梅原猛から「フリードリヒ・ニーチェという大哲学者が『運命愛』ということは外に起こった運命、外側から降りかかった運命をさも自分が欲したかのように愛すること。君はその『運命愛』に従ってこれから生きなくちゃいかん」という言葉をもらったと明かした。「今までは色々なインタビューなどでまだまださみしさ6分、嬉しさ4分と申しましたが、今日、猿之助を襲名致しまして、嬉しさ100%でございます」と挨拶。続いて中車が「この(中車の)名跡は、戦前に大活躍なさいました七代目、私の曽祖父の初代猿翁の弟、私の大叔父にあたる八代目が幅広い役柄を演じてきました由緒ある名前です。この大きな名前を曽祖父、祖父の50回忌追善で襲名させていただきますことは誠にありがたく感無量の思いが致します。同時に歌舞伎の舞台に初めて御目見えいたす私は、生涯をかけ精進し、九代目中車を名乗らせていただきます責任を果たしてまいりたい」と終始頭を深々と下げて挨拶。感極まった表情で、目には涙を浮かべていた。團子は、緊張した面持ちながら「猿翁のおじい様よりずっと立派な俳優になる事が私の夢でございます」と大きな声で挨拶すると、客席から笑いと拍手も。そこへ台座に座り登場した猿翁が口上を述べると、客席の中には目頭を押さえる人の姿も見られた。また、夜の部の『ヤマトタケル』でもスーパー歌舞伎では初めてとなる劇中での口上が行われ、猿之助と中車が登場。猿之助が「前例がなければ作ればいいというのがモットーで、不可能を可能にするのが『澤瀉屋』(猿之助の屋号)」と一門を立て、スーパー歌舞伎の創始者である三代目猿之助は「偉大な存在」と語った。中車は1986年の初演を学生時に見た記憶を話し、「まさか『ヤマトタケル』で初めて歌舞伎の舞台に御目見得させて頂くことになるとは、本当に有難く夢のようです」と、熱のこもった口上を述べた。『ヤマトタケル』の舞台では、きらびやかな衣裳を纏った中車が威厳のある帝を演じ、続いて小碓命役の猿之助が颯爽と登場。同じ舞台での共演を果たした。團子はワカタケル役を堂々と演じていた。クライマックスのヤマトタケルの宙乗りでは、観客も大興奮。劇場は感動のるつぼと化していた。最後のカーテンコールには、作者の梅原と猿翁も登場し、会場はスタンディングオベーションとなり熱気と興奮に包まれた。公演は6月29日(金)まで同劇場にて上演。
2012年06月06日6月と7月に東京・新橋演舞場の『六月大歌舞伎』と『七月大歌舞伎』で四代目市川猿之助を襲名する市川亀治郎と、九代目市川中車(ちゅうしゃ)を襲名する俳優の香川照之らが、5月11日、東京・浅草寺で襲名披露興行の成功を祈願してお練りを行った。平日にもかかわらず、浅草寺には大勢のファンが詰めかけ、雷門前に亀治郎、香川と五代目市川團子(だんこ)を襲名する香川の息子政明君、二代目猿翁を襲名する当代市川猿之助が登場すると「おもだか屋!」と猿之助の屋号がそこかしこからかかり、大きな拍手と声援が飛んだ。亀治郎は襲名の実感はまだないそうだが、「わたくしはこの浅草で育てられたと思っております。10年間、浅草公会堂で大役をやらせていただきました。猿之助になっても一門全員でここでお芝居をやらせていただきたい」と浅草の地でのお練りに感慨もひとしおの様子。集まったファンや観光客には「今日写真を撮った方は新橋演舞場に来ていただきたい。twitterでも呟いてください。ぜひ『ヤマトタケル』を観に来てください」とまだチケットが買える6月の夜の部をアピールしていた。歌舞伎の舞台は初めてとなる香川は緊張した様子で、「まさかここでこのようなお練りをさせていただくとは夢にも思いませんでした。感謝しております。少しでも精進し、ご迷惑をおかけしませんように、この大名跡を継がしていただく責任を果たしていきたい」と決意を表していた。政明君は「市川團子を襲名しますけど、どうか宜しくお願いします」と挨拶した。襲名披露興行は6月5日(火)から29日(金)までの『六月大歌舞伎』と7月4日(水)から29日(日)までの『七月大歌舞伎』の2か月、新橋演舞場にて上演される。チケットは6月興行は発売中、7月興行は6月12日(火)より一般発売開始。
2012年05月11日1月2日、東京・浅草公会堂の正面玄関にて、初春の風物詩『新春浅草歌舞伎』の初日鏡開きが行われた。沿道には多くの報道陣と、一般客が集まり、出演の市川亀治郎、片岡愛之助、市川男女蔵、中村亀鶴らが登場、初日を賑やかに祝った。『新春浅草歌舞伎』チケット情報6月に四代目市川猿之助を襲名する亀治郎は「この浅草で“亀治郎”の名前でご挨拶するのは今月が最後です。10年間以上お世話になった浅草(歌舞伎)とも今年で一区切りです。長い間本当に育てていただいてありがとうございました」と挨拶。また「どうか僕らがいなくなってもこの若手に変わらぬ熱いご支援をお願いします。今度は彼らを育てていってください」と後輩たちを気遣う場面も。毎年のように出演している愛之助は「今回は、昼の部は犬飼現八と吉田屋の伊左衛門、夜の部は東間三郎右衛門を、力の限り務めたいと思います」と自身の役どころをアピール。また同じく浅草歌舞伎常連の男女蔵は「去年1年お休みで、また戻って参りました。オメッティーと呼んでください。1度ならず2度、3度と観に来ていただいて、オメッティーを探していただければ嬉しいです」とコメント。亀鶴は「皆さん、そろそろ亀鶴という名前覚えていただけましたでしょうか?まだメールが来る度に“つるかめさん”と読まれる方が多いのですが“きかく”と覚えておいてください」と話していた。今年は同じ浅草の地で『平成中村座』も上演されており、例年以上に賑わいを見せている中、「千秋楽まで盛り上げていきたい」と一座を代表して亀治郎が締めた。公演は1月26日(木)まで上演。チケットは発売中。
2012年01月04日歌舞伎俳優の市川亀治郎が9月27日、都内で会見を行い、来年6月と7月に東京・新橋演舞場の『初代市川猿翁(えんおう)・三代目市川段四郎五十回忌追善興行』で、四代目市川猿之助を襲名すると発表した。同時に、当代猿之助が二代目猿翁に、また猿之助の長男で俳優の香川照之が九代目市川中車(ちゅうしゃ)を襲名することが判った。さらに、香川の長男政明君も、五代目市川團子(だんこ)として初舞台を踏む。会見には亀治郎の父、市川段四郎も登壇した。亀治郎は、自身の人生計画の中では一生名前を変えるつもりはなかったと話したが、伯父・猿之助から「僕のやってきた事を継いで欲しい」という希望を受けて「伯父への恩返しになれば」と襲名を決意したいきさつを語った。隣に座っていた香川は緊張した様子ながら「歌舞伎の世界とは無縁に過ごしてきました。2004年に長男の政明が誕生した事で、この船に乗らなければならない」と140年に渡って続いている名跡を守っていきたいという強い思いがあったことを明かした。香川は現在、45年間無縁であった父・猿之助と今年の春から同居していることも打ち明けた。記者から母(浜木綿子)はどう思っているかと問われると「僕がやろうとしていることにたいしてはエールを送ってくれています。母が許してくれなければ前に進めなかったかもしれない。『ごめんね』と言いました。感謝しています」と答えた。会見の最後には、公の場が久しぶりとなる猿之助も登壇し、記者に手を振るなど愛嬌を振りまいた。弟、息子、甥、孫に囲まれた記念撮影でも、終始楽しげな様子の猿之助は「ありがとうございます。隅から隅まで、ずず、ずいーっと宜しくご宣伝ください」と大きな声で挨拶すると、記者たちから拍手が送られた。なお、同興行は東京公演のほか、2013年1月に大阪・松竹座、3月に名古屋・御園座、6月に九州・博多座、12月に京都・南座で上演される。
2011年09月27日新橋演舞場10月公演『芸術祭十月花形歌舞伎』夜の部にて、市川亀治郎が伯父・市川猿之助の当り狂言に挑むこととなった。演目は、猿之助四十八撰の内『當世流小栗判官』。猿之助スピリットあふれるこの舞台に、亀治郎が小栗判官、浪七、お駒の3役に初挑戦する。上演に先駆け、亀治郎が小栗伝説にゆかり深い遊行寺(神奈川県藤沢市)を初めて訪れ、舞台の成功祈願を行った。『芸術祭十月花形歌舞伎』チケット情報小栗判官の物語は中世の説経節の代表的な作品で、近世以降は浄瑠璃や歌舞伎に取り上げられてきた。今回上演する『當世流小栗判官』は、様々な〈小栗物〉の集大成として、昭和58年に当代猿之助により初演されたもの。時宗の総本山である遊行寺(清浄光寺)の法主は“遊行上人”ともいわれ、伝説や劇中においても、この藤沢の遊行上人が登場し、亀治郎扮する病みついた小栗を熊野で湯治し復活させる。現在も、遊行寺の山内には、小栗の死後、照手姫が小栗を弔うために仏門に入り建立したといわれる長生院(小栗堂)があり、長生院には、小栗の墓、照手姫の墓、そして小栗が乗りこなした荒馬の鬼鹿毛の墓と伝えられる遺跡も残っている。亀治郎は、補綴・演出を担当する石川耕士氏と共に遊行寺の山内にある長生院を訪れ、自身が演じる小栗判官、そして照手姫、鬼鹿毛の墓へ墓参りをした。続いて、遊行寺の本堂で成功祈願を行った。亀治郎は「『當世流小栗判官』は、いつかやるだろうと思っていました。この演目は『加賀見山再岩藤』、『伊達の十役』と合わせて猿之助四十八撰の中で3強と言われている作品で、小栗判官、浪七、お駒を3役早替りでやるのは、東京では初演以来です。脚本も演出も見直して、単なる再演ではなく、進化した再演にしたいと思っています。お芝居としてはお駒、役者ぶりとしては小栗判官、浪七は立廻りと、歌舞伎の面白さがそれぞれ具現化されているのが、この3役ですので、やりがいもありますし、頑張ってやっていきます。ここ藤沢も含め、遠いところからも観にいらしていただければと思います」と公演への思いと意気込みを語った。公演は東京・新橋演舞場にて10月2日(日)から10月26日(水)まで上演される。チケットは発売中。
2011年09月21日