人形町にある焼肉屋で結婚3年目の知人男性が、奥さんからつきつけられた離婚届けの写メを見せてくれました。絶品の赤身肉を頬張りながら「うわー、本物だ」と笑った私の横で彼はため息をつきました。「いや、本当に自業自得なんだけどさ」結婚後も独身時代と変わらぬペースで遊び続ける彼に奥さんが愛想をつかせたらしい。「他に好きな人ができたとかならまだ諦めがつくんだけどな」箸が進まない彼の分まで肉を奪いつつ、私は頷きました。「確かにそうかもね。他に好きな人ができたなら・・・」そこまで言ってはたと気づきました。あれ?私、今まで何度もフラれているのに、この台詞を言われたことがありません。憶えているのは「もうついていけない」「もう無理」「もう勘弁して」というギブアップの言葉ばかり。改めて考えたらフラれた理由が全て「私」だ。これはひょっとして相当まずいのではないだろうか。ここをクリアにしておかなければ恋をしたところで再び同じ結果になりかねない。これまでギブアップしたアモーレたちに詳しく話を聞いたことがないので正解はわかりませんが、自己分析をしてみると、まず私といると心が休まらないだろうなとは思います。だってさ、好きな人と一緒にいると幸せでテンションあがっちゃうんだもん。好きな人に楽しんで欲しいから、変なことしたくなっちゃうんだもん。公園の鉄棒でポールダンスをするとか(彼、どん引き)、出張先のパリに突然現れるとか(彼、スーパー迷惑)。こういうことをしている時って、自分の中ではもうストーリーが出来上がっているので、彼が思い通りのリアクションを示さないと「なんで!?私がここまでしてるのに!?」ってむかつくわけですよ。やだ、本当に厄介な女だわ、私。でもね、それは若い頃の話なので今ではきっと大丈夫です。そう書いておかないとますます恋が遠のいちゃう。だって先日、このコラムの担当編集者さんに『それでも恋がしたいんだ!』が実は男性からも人気があると教えていただいたから。うん。キアヌ・リーブスが読んでいるかもしれないから、ちゃんとアピールしておく。西山繭子は、あなたのために心休まる場所を作ります。作ろうと思います。いや、作れるように努力します。できる範囲で。
2017年03月03日先日『おとなの事情』というイタリア映画を観ました。とある夜、ホームパーティーに集まった三組の夫婦たちと独身男。そのうちの一人が「ねえ、それぞれのスマホを見せ合わない?今からかかってくる電話やメールをみんなに見せるの」と提案します。そこで「イヤだ」と拒否すると「あら?何かやましいことでも?」となり、結局みんながそのゲームに参加することになったのですが、まあそこからは言わずもがなとんでもない展開に。わかりきっていることですが、恋人の携帯電話を覗き見して良いことなんて一つもありゃしません。一度見たことのある私が言うのだから間違いなし!(見たのかよ!)しかも見ている姿を彼氏に見られるという、最悪の経験をしています。彼の携帯には元カノとの逢瀬の痕跡がびっしりだったのですが、彼は携帯を見られたことに大激怒していたので私はただただ自分の愚行を反省し、平謝りするしかありませんでした。それ以降、恋人の携帯電話に触れたことはありません。以前友人が「女って絶対に男の携帯を見るよね」と言っていましたが、それは男女関係なく、見る人は見ます。実際に私も見られたことがあります。私の携帯を見なければ知り得ぬ情報を彼がポロリ。「携帯見たの?」と問い詰めると「ごめんなさい」と即答。たいしてまずいメールもなかったし、面倒だったので「今度から見たかったら言って」と男らしく彼に伝えましたが、そんな台詞を彼が言う間もなく別れました。自分を棚にあげまくって言いますが、そんな男イヤだもの!しかし今ではほとんどの人がスマホにロックをかけているので覗き見ができなくなりましたね。私はガラケーなので覗き見し放題ですが、今ざっと見てみたところ、この2週間でメールを送ってきたのは母、姉、マネージャーのみです。あまりの人気のなさに涙が出そう。しかし私は、姉の名前を大谷翔平で登録しているので、私の携帯を覗き見した人は『今日、オオゼキで鶏もも肉がグラム73円だよ!‐大谷翔平』というメッセージを見て困惑すること間違いなしでしょう。
2017年02月17日先日行った映画の試写会で、私が一番デートをしたい有名人、手嶋龍一さんをお見かけしました。手嶋さんは言わずと知れた外交ジャーナリストであります。その手嶋さんをテレビで拝見するたびに、ああ素敵!デートしたい!と思うのです。ワインを傾けながらあのソフトな語り口で、無知な私に世界のことを教えて欲しい。試写会が終わり、私は手嶋さんに声をかけるべきか迷いました。さすがにデートに誘うことはできないけれど、何か一言でもいいから手嶋さんと言葉を交わしたい。あの穏やかな声を目の前で聞きたい。あのとろんとした目で見つめられたい。でも手嶋さんは芸能人ではないから「ファンです」って声をかけるのも変だし、スポーツ選手じゃないから「頑張ってください」ってのもなあ。そんなことをうじうじ考えていた私は、結局手嶋さんの背中を見送ることしかできませんでした。自分の勇気のなさにがっかりです。この『勇気』というもの、これは潤い同様、加齢と共に減っていくものなのでしょうか。なにしろここ最近の私は恋愛において、とんと勇気がありません。昔は何度フラれても「了解!でも好き!」と半年ねばって(ストーカー気質)恋を成就させたこともありました。それが今ではすぐに諦めてしまう。数ヶ月前、仲良くなりたいなと思う男性に「またご飯行きましょうね」とメールをして「ぜひぜひ!」と返信をもらいました。しかしそこに、いつだったら空いていますみたいな具体的な内容は書かれておらず、そのまま放置。一ヵ月後、何てことのない用事を作って再び彼にメールをしました。「またご飯行きましょうね」という私の言葉に「ぜひぜひ!」の返信。そこにもちろん日程の提案などはなし。ああ、こりゃ完全に私に興味ないなと誘うのをやめてしまいました。昔の私だったら「ぜひぜひ!」の返信のあとに間髪入れず「いつにしますか?」と訊いていたはず。相手の出方を見ている自分が情けないったら、ありゃしない!これではますます恋が遠のいてしまう!やっぱり、好きな人にはちゃんと好きって伝えなきゃダメですよね。相手がどう思っているかなんて関係ない!今度、手嶋さんに会うことがあったら、ちゃんと「好きです!」って言おう!うん、そうしよう!たぶん手嶋さん、超困惑。
2017年01月20日Grapps読者のみなさま、あけましておめでとうございます!全力で寝正月を過ごした西山繭子です。おかげでお肌ぴっかぴか。大晦日の昼時、テレビでやっていた映画『スピード』を観て(たぶん10回目ぐらい)、2017年はなるべくバスで移動しようと心に誓いました。立て続けにやっていた『スピード2』にはキアヌ・リーブスが出ていなかったので、まあ船には乗らなくてもいいかなと思った次第です。そんな2017年の恋に向けてやる気まんまんな私、初詣で「素敵な出逢いがありますように」とお願いし、おみくじを引きました。結果は中吉。うん、なかなか良いぞと思っていたのですが【結婚】のところを見てみると「まだ早い。二、三年待て」と書いてあり、危うく代々木八幡宮の境内で卒倒するところでした。今月で39歳になるというのに、まだ早い。わりかしほうれい線も出てきたというのに、まだ早い。ど、ど、ど、どういうこと?胸をばくばくさせながら【待ち人】のところに目を向けると「最終列車は過ぎ去った」とぴしゃり。え?「二、三年待て」にはまだ希望が残っていたけど、こちらに至ってはもう終了ではないですか!しかも、私の最終列車ってどれだったの!?そう考えた時に、数ヶ月前に結婚した男友達の顔が頭をよぎりました。15年来の友人で、頻繁に会うわけではないけど何だかいつもそばにいるような存在だった彼。その彼が結婚し、2日間ぐらいはショックでご飯が喉を通らなかったのですが3日目には王将でラーメンと餃子を食べていたし、お会計の時にはお持ち帰りで生餃子も買ったので、さほど痛手ではなかったはずなんだが。しかしその彼が最終列車だったのだろうか?そんなことを考えたら何だかもう元旦から絶望的になってしまいました。ああ、今年も西山繭子は恋ができないのか……。としょんぼりしていたところ、テレビからその昔、一世を風靡した聞き覚えのあるメロディーが。画面の向こうではヨン様ことペ・ヨンジュン氏がマフラーを巻いて微笑んでいました。おお、これがかの有名な!今まで観たことがなかった私は、寝正月がてら『冬のソナタ』を観てみることに。するとまあ大変!西山繭子38歳、今さらヨン様に夢中!そして絶望的になっていた新たな恋への希望がふつふつと!2017年、西山繭子は『冬のソナタ』のような恋をします!今のところ、マフラーと眼鏡をしてれば誰でもいいよ!
2017年01月06日前回のコラムで久しぶりに洋服を買ったことを書きましたが、数週間経った今もそれらを着る機会がないことに絶望している西山です。ああ、お洒落してデートしたいなあ。そうかと言って、デート相手がお洒落をして来たらドン引きしてしまいます。私は、あからさまにお洒落な男性がとっても苦手です。ハットとか、丸い眼鏡とか、ロング丈のトップスとか。どんなに顔がタイプでも好きになることはないなあ。その格好が受け入れられないのではなく、その人がお洒落に費やしている時間とお金を想像してしまうのです。ファッション雑誌を見たり、ZOZOTOWNを検索したり、バーゲンに並んだり。それらは決して悪いことではありません。でもそこにどうしても知性を感じられない。何万円もする服飾品を買うのであれば、本を読んだり旅に出たりして見聞を広げて欲しい。そう思うのです。数年前、母校の女子大で新入生を前に講演をした時「大学時代、私もブランドのバッグを買ったりしましたが、結局のところバーキンやケリー以外、数年経てばゴミみたいなものです。バックを買うお金で旅に出ましょう」とアドバイスをしました。男性はシンプルで清潔感のある服装をしていればそれで充分に思います。以前、お寿司屋さんでデートをしていた時、美味しくて楽しくて興奮していた私は、伊勢海老でおだしをとった椀をひっくり返してしまいました。白木のカウンターから彼の太腿に滴るお味噌汁。ああ!もったいない!という思いを胸に秘め、店主と彼に謝ったのですが、彼は太腿を拭いながら苦笑いを浮かべ「これ、ドリス・ヴァン・ノッテンなんだけど」とぽつり。「え?ばってん荒川?」彼は冷たい目で「ドリス・ヴァン・ノッテン」ともう一度言いました。もちろんお味噌汁をこぼした私が完全に悪いのですが、途端に「この人、無理」と思いました。いや、もちろん向こうも無理と思ったでしょうけど。これ以来、お洒落な人がますます苦手になった私なのでありました。
2016年12月09日久しぶりに洋服を買いました。私が使っている家計簿アプリは、細かに項目が分かれていて「食費」「光熱費」「交通費」といった必須項目はもちろんのこと、「バレエ」「勉強」「コスメ」などオリジナルの項目も作ることができます。その中で「ファッション」という項目があるのですが、年末が近づき「ファッション」の年間支出を見て絶句。10月までの支出が25000円。そのうち6000円がクリーニング代だったので、2016年に私がこれまでに使った額は19000円。少なっ!しかし、これには自分なりの理由があるのです。実は年始に『トゥルー・コスト』という映画を観まして、その映画はファストファッションの裏側で起きている問題を描いたドキュメンタリーだったのですが、それを観た私もぼんやりと考えるところがありまして、今年一年はファストファッションを買うのをやめみようと思ったのです。すると途端に洋服を買わなくなり、今までどれだけファストファッションしか着ていなかったのだろうと落ち込みもしました。20代の頃はお洒落をするというのは息をすることと同じように当然のことだと思っていました。そしてまた、私は基本的に自分というものがない人間なので、好きな男にファッションを左右されるダメな女です。しかもその左右のされ方が少し妙で、彼のファッションに合わせるのではなく、彼になろうとしてしまうのです。ステューシーのパーカー、クロムハーツのドッグタグ、エシュンのレースアップシューズ等々、彼になろうと買った過去の遺物たち。だから私のクローゼットの中には、何だかたくさんの人格(しかも男)がいるみたいです。それが、とんと増えないここ数年。さすがに古い服ばかりでは、新しい出逢いも舞い込まないであろうと、今回は新しい洋服を買ったのでした。家計簿に記されていた19000円以来のお買い物。ちなみにその19000円で買ったものは、私がこよなく愛するワコールの下着でした。美しいサルートシリーズ。それってファッションの項目か?という意見もありましょうが、ワコール崇拝者の私にとって下着は立派なファッションであります。しかし恋もしていないのに勝負下着だけは揃えているあたり、アラフォーの鼻息が聞こえてきそうですね。
2016年11月25日長谷部誠選手がクリスマスに挙式&披露宴というネットニュースを見て、長谷部の心が整っていないと感じた西山です。まあおめでたい席ですから良いのでしょうけど、クリスマスはそれぞれ予定があるんじゃないかな?と勝手に危惧。ちなみに西山は何の予定もありませんので、出席させていただきますに○をつけ・・・・・・たいところですが、そもそもお呼ばれしておりません。サッカー選手とモデルの結婚式なんて、さぞや華やかで楽しい宴なのでしょうね!サッカー選手はモデルが、モデルはサッカー選手が大好きでありますから(これは万国共通)、出逢いの場としては合コンよりも聞こえが良くて言うことなし。そういえば昔『噂の真相』という雑誌の一行情報に「伊集院静の娘がJリーガーをとっかえひっかえ」と書かれたことがあります。それを当時一緒に仕事をしていた映画監督に指摘された時、「とっかえひっかえなんて事実無根です。とっかえぐらいです。」と答えて監督に「おまえ、バカだな」と褒められました。もちろん本当はとっかえすらしていないです。したかったけど。喉から足が出てフリーキックを決めるぐらいしたかったけど。あーあ!とっかえひっかえしたいなー!今日は大谷くん、明日は栗山監督、その次の日は大谷くん。そのまた次の日も大谷くんで、もうあとはずっと大谷くん・・・・・・。無理だ!一途な私にはやっぱり、とっかえひっかえなんて無理だ!ちなみに私の携帯に一番電話をかけてくるのは姉なのですが、私は、その姉の番号を『大谷翔平』と登録しています。姉から電話がかかってくるたびに液晶には『大谷翔平』の文字。電話を鳴らしているのは姉なのですが、毎回幸せな気分になります。もう西山さん、ビョーキです。それを姉に話すと「え?私も、まーたんの番号、大谷くんで登録してるよ」と。どちらが電話をしても大谷くん。大谷翔平から大谷翔平にリンリンリン。もう姉妹でビョーキです。はあ。恋愛をする前に、まずは心を整えないといけませんな。
2016年11月11日好きな人のSNSを覗いてみる。多くの人がやったことあるのではないでしょうか。その人がどんな人たちと仲良しで、どんな食べ物が好きで、どんな映画を観ていて、どんなことで笑うのか。ひたすら、ふむふむと遡りすぎて気づけばこんな時間!ということも珍しくないと思います。便利な時代ではありますが、妄想力がたくましい私の場合、SNSの些細な一言に対して眠れない夜を過ごしかねない事態になります。「おなかすいた」という一言に「これって、私が読んでいることを前提に書いていて、ひょっとして誘ってるのか?」とすこぶるおめでたい解釈をしたりします。また以前、気になる人がSNSで「何事も一生懸命な人って可愛いなと思う」と書いているのを読んで、次に会った時、私が前日の節分でいかに全力で豆まきをしたかを嬉々として語ったのですが、彼の琴線には触れなかったようです。便利な時代ではありますが、カップルの場合、半ば監視されているような感じにもなりますよね。以前もここに、舞台公演中の私の共演者のブログをくまなくチェックするストーカー男のことを書きましたが、その当時にツイッターがあったらと考えると末恐ろしい。「なう」って恐ろしいですよね。奴の場合、お店の前で待っているとかやりかねない。私はもうSNSを一切辞めたので今後、彼氏に監視されるようなことはありませんが、彼氏がSNSをやっていたら絶対に覗いちゃうだろうなと思います。そして「忙しいから会えないって言ってたのに、何で女友だちと吞んでるの?」とか「一緒に行こうねって言ってた寿司屋、何で女友だちと行ってんの?」とか、もう私じゃなくて、その女友だちが本命だろ!ということになりかねない。私にとってSNSは恋愛において不安分子にしかならなそうです。というか、そもそも私はSNSをやっている男が好きではない(きっぱり)。しかし今のご時世、そんな殿方、なかなかいないですよね。
2016年10月28日「あなた、恋愛小説は書かないの?」先日、伊集院静センセイと食事をした際に訊かれました。「うーん、ここ最近は恋愛からとんと離れてて、この先もう二度と誰かを好きになったり、誰かに好きになられたりもなく死んでいくのかなと思うと、恋愛小説なんて書けないですよね」と答えると「あのさ、父親の前で、そういう悲しいこと言わないでもらえる?」とやんわり叱られました。ちなみに父が描いた恋愛小説は一冊しか読んだことがありません。何だか、こっ恥ずかしい。もちろん小説でありますから、実体験のみを書くわけではありません。とはいえ実際の恋愛で体験したことや感じたことは、どうしても影響するんですよね。自著の短編集『色鉛筆専門店』に登場するいくつかの恋愛物語、男性のキャラクターはそれぞれまったく違いますが、書いていた時はどれも一人の人を思い浮かべながらキーボードを叩いていました。その人とはもう連絡をとっていないので、私の本を読んだかはわかりません。ただ三年間ほど一緒にいた中で、本を読んでいる姿は見たことがなかったなあ。だからきっと読んでいないはず。それなのに、驚くことにこれを読んだ別の男から「あれって俺のことだろ?」と連絡があったのです。なんて自意識過剰なんだ!あんたじゃないよ!しかし、恋愛でイヤなことがあった時、例えば浮気されたとか、フラれたとか、あっさりフラれたとか、こっぴどくフラれたとか(私、フラれてばっかりだな!)、そういった経験をすると哀しみの中にありながら「これ、何かで書けるかも」と思ってしまう自分がいます。ここでもいくつか体験談を書いていますしね。だからこのコラムのためにも、小説のためにも、やはり恋愛をしなくてはと思うのです。ちなみに数年前、文芸誌に載せるために短い恋愛小説を書いたことがあります。それを読んだ編集長は「うーん、悪くはないんですが、何か違うものをもう一本お願いします」とまるまるボツになりました。恋愛小説家への道は、とても険しそうであります。
2016年10月14日つい最近、その日初めて会った人とキスをした。文字にすると、かなりやり手のように映りますが、残念ながら仕事でのキスでした。あれ?これまた文字にすると危険な香りがするなあ。まあ確かに女優という仕事は、少し普通ではないところがありますね。そう、キスをしたのはドラマでの1シーンでした。人に「ラブシーンって恥ずかしくないの?」と訊かれますが、実際の撮影はすこぶるプロ的で事務的であります。顔の角度とか、タイミングとか。この時も相手役の方に「テスト(本番前には何度もリハーサルをします)からしちゃって大丈夫ですか?」とあっけらかんと訊くと「はい!大丈夫です!」との返答。何とも色気のないやりとりでありました。それにしてもキスって誰が考えたんですかね。どうして唇と唇を合わせようと思ったのだろう。物心ついた時には、すでにキスは愛情表現という認識で、少女漫画で眺めては、自分のファーストキスはどんな感じだろうとドキドキしていました。しかし実際の私のファーストキスは、ほとんど事故みたいなもので、味も素っ気もありませんでした。16歳の夏、私は都内ホテルでCDを片手に某海外アーティストを待っていました。いわゆる追っかけってやつですね。しばらくすると正面玄関に到着したタクシーからメンバーの一人とスタッフが降りてきました。一斉に群がる追っかけ少女たち。彼は私が一番好きなメンバーではなかったのですが、せっかくだからサインを貰おうとその輪に加わりました。順番を待っていると、私の前にいた女の子が彼に「Hug me」と言いました。彼は「OK」と笑顔で彼女を抱きしめました。あ、いいなと思った私もサインをもらってから彼女の真似をして「Hug me」と言いました。すると何ということでしょう!(劇的ビフォーアフター!)彼は私に突然キスをしてきたのです。あまりの不意打ちに、私はぽかんとその場に立ちつくしました。帰りの電車の中でもずっと茫然としていたし、帰宅してから何だかお母さんの顔をまともに見られなかったことを憶えています。ファーストキスはレモンの味なんて言いますが、そんなのは直前までレモンを齧っている奴しかありえないわけで、私のファーストキスは無味無臭でした。ただ、彼の唇がすごく薄くて冷たかったのが印象的でした。四年前、その彼がロンドンオリンピックの閉会式でたくさんの聴衆を前に歌を歌っていました。スターの彼は、22年前の夏に日本人の追っかけ少女のファーストキスの相手だなんて知るよしもないのだろうな。
2016年09月30日先日、一足お先に映画『ブリジット・ジョーンズ』の最新作を観た。32歳だったブリジットも43歳。いまだ独身である。役柄よりも少々年上のレニー・ゼルウィガーがスクリーンに現れた瞬間「うわ、すごいおばさん。ちょっときつい」と思ったのだが、5分もすると慣れてくる。そこからは2時間、笑いっぱなし。大満足で帰路についた。映画は恋をしていない私の心に潤いを与え、そして恋をするぞという力をくれる。ちなみに映画を観る時はいつも一人である。隣に誰かがいると気になってしまうので、友人はおろか、今では映画デートなんて考えられない。もちろんこれまでに何度かはある。初めての映画デートは高校生の時。1つ年上の不良と『ショーシャンクの空に』を観に行った。言わずと知れた大名作。しかし当時、『グーニーズ』や『インディー・ジョーンズ』といった類の映画が好きだった私は、やけに暗い映画だなとあまり楽しめなかった。そして映画館の明かりがついて、隣の彼を見た私はびっくり。彼は目を真っ赤にして震えていた。男が泣くのを初めて見た私はドン引きだったのだが、今考えたら、彼は少年院あがりの自分に何かを重ねていたのかもしれない。そんな彼も今では一児の良きパパである。20代の頃は、アスリートの彼氏と『マイノリティ・リポート』を観に行った。デートにはもってこいの泣きどころのないSFアクション。観賞後、感想を尋ねると「字幕で読めない漢字があった」と言われドン引きした。彼は頭まで筋肉だった。そんな彼も今では良き3児のパパである。そして、そろそろ三十路になろうかという時、知り合ったばかりのIT社長から「映画に行きましょう」とメールがきた。「何か観たいのありますか?」と返信すると『愛の流刑地』と返ってきた。え?初めて2人で会うのに『愛の流刑地』?濡れ場満載の?何だか怖かったので丁重にお断りした。そんな彼も今では・・・・・・、何をしているかわからない。名前も忘れてしまったから検索さえできない。こんな紆余曲折を経て、今では映画に誘われても「映画は一人で観るので」と断るようになった。だってポップコーンだって独り占めしたいもん。しかし、こんなんだから恋が遠ざかる一方なのだろうなあ。
2016年09月20日私がよく行くスーパーの青果担当ナガイさんは、みんなから愛されている。「今日は小松菜が安いよ!小松菜、持って行っちゃってー!」と元気な声を出すナガイさん。本当に持って行っちゃったら万引きになってしまうのだけど、ナガイさんの声にのせられたお客さんたちは、次々と小松菜をカゴに入れる。ナガイさんの周りには、いつも人がいる。奥様方に料理方法の質問をされて丁寧に答えるナガイさん、小さな少女に「ナガイさん、お母さんが呼んでるから、こっち来て!」と手を引かれるナガイさん。逆に、一人のおばあちゃんに「久しぶりだね!最近来てなかったから心配したよ!」と声をかけているナガイさんを見かけたこともある。30代前半、いたって普通の容姿。しかしナガイさんはすごく魅力的だ。メディアでは『モテ』というキーワードをやたらと目にする。モテるための服装、モテるためのメイク、モテるためのしぐさ。確かにその瞬間はモテるかもしれない。しかしモテると、愛されるはまったく違うものである。モテるのは努力で何とかできるけど、愛されるのは生まれながらにしてもった素質が必要なんじゃないかと思っている。私の母は、とても綺麗な人だ。料理も上手だし、よく働くし、頑張り屋さんだ。でも彼女は、私の父に愛されなかった。一方、女優の夏目雅子さんは、私からすると私たち家族から父を奪った人という認識だけど、亡くなった今でも人々に愛されている。きっと天国でもたくさんの人に囲まれて、あの美しい笑顔をみせているのだろう。これは、もう天性のものなのだと思う。するとふと、その愛されない遺伝子を自分が母から受け継いでいるのではないかと思う時がある。何だか絶望的な話しになっているが、私は愛されるよりもむしろ愛したいので、私にはそれが合っているような気もする。生まれながらに愛される素質をもっている人は、たぶんそのことには気づいていない。もしナガイさんに「どうやったら人に愛されますか?」と尋ねたら、きっとナガイさんのことだから笑顔で「旬の野菜!旬の野菜を食べちゃってー!」と言うんじゃないかしら。そんなナガイさんの薬指にはきらりと指輪が光っている。ナガイさんはやっぱりたくさんの人から愛されている。
2016年07月22日読んでいた小説にすごく強引な男がでてきた。主人公の女は少し腹を立てながらも、結局は男に言いくるめられる形で彼の欲求に応えてしまう。それを読んでふと、最近、強引な男が少なくなったなあと思った。前にコラムでも書きましたが、NYでデートをした男性がいました。最初に話しかけられた時、私は冷たく彼をあしらいました。彼は去って行きましたが、美術館のベンチに腰かけている私を見つけて再びやって来ました。誘いを断り続ける私に対して「本当に美味しいレストランなんだ」「食事だけでも」「日本語を勉強してから行くよ」と諦めない彼。強引だなあと思いつつも、NYでずっと一人だった私は「じゃあ食事だけ」ということで翌日に彼と待ち合わせることになったのです。ここ最近知り合った男性はみな穏やかで優しくて気遣いができるけど、強引さとは無縁。食事を終えて「もう一軒行く?」という問いに「うーん」と難色を示すと、すぐに引き下がります。彼らは絶対に粘りません。こちらを尊重しつつも、自分が傷つきたくないんだろうなとも思います。粘って粘って、玉砕というのはイヤなんでしょうね。明らかに好意をもっているのに「好きです」とか「付き合ってください」とか、決定的な言葉を絶対に言わないのも自己保身。なあなあでなんとなく付き合っている感じにもっていけたら、という魂胆がみえみえで、白黒つけたい私としては、そんな男性に魅力を感じるはずもないのです。この前も数人で食事をしていた時に、居合わせた年下の男性が27歳だと知って、私が「10歳も違う」と苦笑いすると(正確には11歳。サバよんだ)、彼が少し真剣な顔で「10歳しか変わらんやん」と私を見ました。まったく興味がない男の子だったけど、その瞬間はドキっとしましたよね。やはり男は優しさと気遣いだけでは物足りない。強引な男性求む!なのであります。しかし、一説には強引な男がいないなあと思うのは『強引にされるほどの女じゃない』ということであるのかもしれません。仕方がない。こっちから強引にいくしかないな!待ってろ、野郎ども!
2016年07月08日話題のオンラインストリーミング「Netflix」にて配信中の桐谷美玲主演ドラマ「アンダーウェア」が、11月13日(金)より4週連続で地上波にて放送。本ドラマに元宝塚歌劇団トップスター・蘭寿とむがドラマ初出演を果たしており、同じく元宝塚歌劇団トップスター・大地真央と“元宝塚トップスター夢の共演”が実現することが分かった。本作は、桐谷さん演じるファッションに全く興味のない、“繊維オタク”の田舎娘のヒロイン・繭子が銀座の高級ランジェリーメーカー“Emotion”に就職。これまで自分が接したことがない価値観に触れ、戸惑い、失敗を繰り返しながらも、成長し、夢をつかんでいくさまを描くお仕事ドラマ。大地真央演じる日本のランジェリー業界を引っ張るアイコン的存在の女性社長や、一流ブランドを背負って立っている同僚たちに、繭子がどんどん刺激を受けていく様子は女子の“共感度100%”だ。宝塚歌劇団を退団して1年半、本作で“ドラマ初出演”を果たした蘭寿さんが演じるのは、日本で人気のファッション誌「コンシャス」の新任編集長・永井千香。社内で大抜擢され編集長に就任したため、若くして社内で強い権力を握り、雑誌の人気をキープするために紙面の充実に努力するが、実は社内調整に苦労している面も。桐谷さん演じる下着ブランド「エモーション」の新人・時田繭子と、大地さん演じる「エモーション」社長・南上マユミとの出会いにより、徐々に永井の内面に変化が起きていく、という役どころだ。本作でいきなりの宝塚歌劇団先輩・大地さんとの共演となった蘭寿さんは、最初すごく緊張したそうだが、「大地さんが『大丈夫よ』と優しく声をかけてくださったり、『兵庫県出身で一緒だね』と気さくに話しかけてくださったりしたのがうれしかった」と撮影をふり返り、「優しくして、キレイで、スタイルもよろしくて、憧れの人です」と大地さんの印象を述べた。また、ドラマ初出演については「舞台とは違う緊張感がありました」と明かし、「宝塚では舞台から遠くにいるお客様には双眼鏡で見ていただいたりしていましたが、映像作品は撮影カメラが近づいてくれるので体で表現するよりも“感じること”を大事にしました」とドラマならでは工夫した点を語った。「アンダーウェア」は11月13日(金)より4週連続で21時~フジテレビにて放送。(text:cinemacafe.net)
2015年11月11日桐谷美玲を主演に迎えて贈る、Netflixとフジテレビがタッグを組んだプロジェクトの第1弾となるオリジナルドラマ「アンダーウェア」。この度、桐谷さんの上司役に元宝塚歌劇団トップスターで、退団後も、第一線で活躍中の大地真央が出演することが決定した。大学時代に繊維の研究をしていた“繊維オタク”の繭子(桐谷美玲)。繊維メーカーに就職を希望するも、ひょんなことから、銀座にあるオーダーメイドの高級ランジェリーメーカー“Emotion”で働くことに。そこでは、創業25年にして日本のランジェリー業界を引っ張るアイコン的存在のemotion社長・南上マユミ(大地真央)のもと、スタッフたちがそれぞれの仕事にプライドを持って働いていた。田舎から出てきた繭子は、ファッションに全く興味がなく、これまで接したことのない価値観に戸惑いながらも、次第にこの仕事に魅せられ、周りに助けられながら成長し、夢をつかんでいく――。「リッチマン、プアウーマン」「失恋ショコラティエ」の脚本家・安達奈緒子が紡ぎだす、華やかな世界の裏に隠された女性たちの本音が満載の本作。今回大地さんが演じるのは、桐谷さん演じる主人公・時田繭子が働くことになる創業25年の高級ランジェリーメーカーEmotionの社長・南上マユミ。女性が美しく着飾ることに対し疑問を持ち、仕事に面白さを見いだせない繭子と最初はぶつかり合いながらも、やさしく見守り、働くことの面白さを教えていく本作のキーパーソン的な役所だ。公開されたビジュアルは、ボブカットの髪型とファッショナブルな衣装に身を包んだ大地が、真っ赤なイスに座っている、カリスマ敏腕社長の貫録がたっぷりのショットに仕上がっている。女性の“美”をストイックに追求していく南上を演じるに当たり、大地さんは「忘れ難い過去も乗り越え、美にこだわり完璧を目指して25年間トップを守り続けてきた女社長だからこそ、才能を見込んだ繭子に厳しく、プロフェッショナルとしての生き様を教え込んでいる。でもその実、気さくでチャーミングな所も垣間見える。そんな南上として生きる事が出来れば…と、大きな遣り甲斐を感じています」とコメント。「美術、照明、カメラワーク…全てにこだわり丁寧に創っている最高のチームに参加することが出来て、とても光栄です。このドラマが、世界の方々に愛されますよう、心を込めて演じたいです」と意気込みを語った。そのほか、Emotionで働くメンバーたちに、南上の右腕でデザイン補佐をしている西沢瑞希役に酒井若菜、南上と一緒にEmotionを立ち上げた田中麗子役に千葉雅子、全体の業務のサポート役でデザインアシスタントもこなす飯田史香役にマイコが、男性メンバーとしてEmotionを引っ張る猿橋仁役に海東健、猿橋とともにEmotionを支える男性メンバーで、職場のムードメーカーでもある姫路宗介役に桜田通が出演。さらに繭子と同郷で、ウェディングドレス・アドバイザーを目指す親友役の鴻野由梨役に河北麻友子、売れない時代を経てトップへと上り詰めていきながら、繭子と友情を育んでいくモデルの町田沙里衣に石田ニコルと、豪華俳優陣が個性豊かなキャラクターを好演する。「アンダーウェア」は今秋、Netflixにて独占プレミア配信。(text:cinemacafe.net)
2015年08月01日